説明

表面変性されたインジウム−スズ−酸化物

【解決手段】表面変性されたインジウム−スズ−酸化物は、酸化物を液体形又は蒸気形の表面変性剤と混合し、かつ混合物を熱処理することにより製造される。これらは塗装系を製造するのに使用されることができる。
【効果】本発明による表面変性されたインジウム−スズ−酸化物は、IR保護に優れている塗装系を製造するために使用されることができ、かつ、際立った透明度に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面変性されたインジウム−スズ−酸化物、それらの製造方法及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウム−スズ−酸化物は、独国特許(DE)第101 29 376号明細書から公知である。それらは、インジウム塩の溶液をスズ塩の溶液と混合し、この溶液混合物を噴霧し、かつ噴霧した溶液混合物を熱分解することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許(DE)第101 29 376号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
BET比表面積:0.1〜299m2/g
pH:2.5〜9.5
C含量:0.1〜15%
により特徴付けられる、表面変性されたインジウム−スズ−酸化物を提供する。
【0005】
本発明は、また、酸化物に表面変性剤を混合しながら噴霧し、ついで混合物を50〜400℃の温度で1〜6時間の期間にわたり熱処理することによって特徴付けられている表面変性されたインジウム−スズ−酸化物を製造する方法も提供する。
【0006】
本発明は、また、酸化物を蒸気形の表面変性剤で処理し、ついで混合物を50〜800℃の温度で0.5〜6時間の期間にわたり熱処理することによって特徴付けられている本発明による表面変性されたインジウム−スズ−酸化物を製造する他の方法も提供する。
【0007】
熱処理は、保護ガス、例えば窒素下に行われることができる。
【0008】
表面変性は、噴霧器を備えた加熱可能なミキサー及び乾燥器中で、連続的に又はバッチで実施されることができる。適した装置は、例えば:プラウシェアミキサー、プレート乾燥器、流動床乾燥器又は気流乾燥器であってよい。
【0009】
独国特許(DE)第101 29 376号明細書から公知のインジウム−スズ−酸化物が、酸化物として使用されることができる。
【0010】
次の物理化学的パラメーターにより特徴付けられているインジウム−スズ−酸化物が本発明により使用可能である:
TEMにより決定される平均一次粒度 1〜200nm
BET表面積(DIN 66131) 0.1〜300m2/g
XRD構造 立方晶酸化インジウム、正方晶酸化スズ
BJH法(DIN 66134)によるメソ孔 0.03ml〜0.30ml/g
マクロ孔(DIN 66133) 1.5〜5.0ml/g
かさ密度(DIN-ISO 787/XI) 50〜2000g/l。
【0011】
本発明による使用のためのインジウム−スズ−酸化物は、酸化物及び/又は元素金属の形の次の物質でドープされていてよい:
【表1】

その場合に、相応する塩が出発物質として使用されることができる。
【0012】
本発明による使用のためのインジウム−スズ−酸化物は、インジウム塩の溶液をスズ塩の溶液と混合し、場合により少なくとも1つのドーピング成分の溶液を添加し、この溶液混合物を噴霧し、噴霧された溶液混合物を熱分解し、かつ得られた生成物を廃ガスから分離することにより製造されることができる。
【0013】
無機化合物、例えば塩化物、硝酸塩、及び有機金属前駆物質、例えば酢酸塩、アルコラートが、塩として使用されることができる。
【0014】
溶液混合物は、さらに付加的に、場合により疎水化されていてよい、熱分解法により製造されたシリカの分散液、又はシリカゾルを含有していてよい。ここで、シリカが結晶化の核として作用し、かつそれ自体としてシリカの最大粒度が最終生成物の最大粒度により予め決定されることが顧慮されなければならない。
【0015】
溶液は、場合により、水、水溶性有機溶剤、例えばアルコール、例えばエタノール、プロパノール、及び/又はアセトンを含有していてよい。
【0016】
溶液は、超音波ネブライザー、超音波アトマイザー、二流体ノズル又は三流体ノズルを用いて噴霧されることができる。
超音波ネブライザー又は超音波アトマイザーが使用される場合には、得られるエーロゾルは、火炎に供給されるキャリヤーガス及び/又はN/O空気と混合されることができる。
【0017】
二流体ノズル又は三流体ノズルが使用される場合には、エーロゾルが火炎中へ直接噴霧されることができる。
【0018】
水に不混和性の有機溶剤、例えばエーテルが使用されることもできる。
【0019】
分離は、フィルター又はサイクロンを用いて実施されることができる。
【0020】
熱分解は、水素/空気及び酸素を燃焼することにより発生される火炎中で実施されることができる。メタン、ブタン及びプロパンは水素の代わりに使用されることができる。
【0021】
熱分解は、外部加熱される炉を用いて実施されることもできる。
流動床反応器、回転管又は脈動反応器も使用されることができる。
【0022】
実施例
本発明による使用のためのインジウム−スズ−酸化物を製造するためのプロセスパラメーターは次の表に挙げられている:
【表2】

【0023】
得られる生成物の物理化学的パラメーターは以下の表に挙げられている:
【表3】

【0024】
本発明による使用のための生成物は、立方晶酸化インジウム及び正方晶酸化スズを有する。
【0025】
シランは、表面処理剤として使用されることができる。そのようなシランは、個々に及び混合されて使用されることができる、次のシランであってよい:
a) (RO)Si(C2n+1)及び(RO)Si(C2n−1)型のオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル
n=1〜20
b) R′(RO)Si(C2n+1)及びR′(RO)Si(C2n−1)型のオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル
R′=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル
R′=シクロアルキル
n=1〜20
x+y=3
x=1、2
y=1、2
c) XSi(C2n+1)及びXSi(C2n−1)型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
n=1〜20
d) X(R′)Si(C2n+1)及びX(R′)Si(C2n−1)型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
R′=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル
R′=シクロアルキル
n=1〜20
e) X(R′)Si(C2n+1)及びX(R′)Si(C2n−1)型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
R′=アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル
R′=シクロアルキル
n=1〜20
f) (RO)Si(CH−R′型のオルガノシラン
R=アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル
m=0.1〜20
R′=メチル、アリール(例えば−C、置換されたフェニル基)
−C、OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)
−SH
−NR′R′′R′′′(R′=アルキル、アリール;R′′=H、アルキル、アリール;R′′′=H、アルキル、アリール、ベンジル、CNR′′′′R′′′′′、ここでR′′′′=H、アルキル及びR′′′′′=H、アルキル)
g) (R′′)(RO)Si(CH−R′型のオルガノシラン
R′′=アルキル
=シクロアルキル
x+y=3
x=1、2
y=1、2
m=0.1〜20
R′=メチル、アリール(例えば−C、置換されたフェニル基)
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)、ここでRはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってよく、かつx=1又は2
−SH
−NR′R′′R′′′(R′=アルキル、アリール;R′′=H、アルキル、アリール;R′′′=H、アルキル、アリール、ベンジル、CNR′′′′R′′′′′、ここでR′′′′=H、アルキル及びR′′′′′=H、アルキル)
h) XSi(CH−R′型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
m=0.1〜20
R′=メチル、アリール(例えば−C、置換されたフェニル基)
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH
−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)、ここでRはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってよく、かつx=1又は2
−SH
i) (R)XSi(CH−R′型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
R=アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル
m=0.1〜20
R′=メチル、アリール(例えば−C、置換されたフェニル基)
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)、ここでRはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってよい
−S−(CHSi(OR)、ここでRはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってよく、かつx=1又は2
−SH
j) (R)XSi(CH−R′型のオルガノハロシラン
X=Cl、Br
R=アルキル
m=0.1〜20
R′=メチル、アリール(例えば−C、置換されたフェニル基)
−C、−OCF−CHF−CF、−C13、−O−CF−CHF
−NH、−N、−SCN、−CH=CH、−NH−CH−CH−NH
−N−(CH−CH−NH
−OOC(CH)C=CH
−OCH−CH(O)CH
−NH−CO−N−CO−(CH
−NH−COO−CH、−NH−COO−CH−CH、−NH−(CHSi(OR)
−S−(CHSi(OR)、ここでRはメチル、エチル、プロピル、ブチルであってよく、かつx=1又は2
−SH
k) 次の型のシラザン
【化1】

R=アルキル、ビニル、アリール
R′=アルキル、ビニル、アリール
l) D3、D4、D5型の環状ポリシロキサン、ここでD3、D4及びD5は−O−Si(CH−型の単位3、4又は5個を有する環状ポリシロキサンであると理解される、
例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン=D4
【化2】

m) 次の型のポリシロキサン又はシリコーン油
【化3】

R=アルキル、例えばC2n+1、ここでn=1〜20、アリール、例えばフェニル及び置換されたフェニル基、(CH−NH、H
R′=アルキル、例えばC2n+1、ここでn=1〜20、アリール、例えばフェニル及び置換されたフェニル基、(CH−NH、H
R′′=アルキル、例えばC2n+1、ここでn=1〜20、アリール、例えばフェニル及び置換されたフェニル基、(CH−NH、H
R′′′=アルキル、例えばC2n+1、ここでn=1〜20、アリール、例えばフェニル及び置換されたフェニル基、(CH−NH、H。
【0026】
次の物質は、表面変性剤として好ましくは使用されることができる:
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ジメチルポリシロキサン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン。
【0027】
オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びジメチルポリシロキサンが、特に好ましくは使用されることができる。
【0028】
本発明による表面変性されたインジウム−スズ−酸化物は、例えば、IR保護に優れている塗装系を製造するために、使用されることができる。
本発明による表面変性されたインジウム−スズ−酸化物は、際立った透明度に優れている。
【0029】
実施例
表面変性のためには、酸化物をミキサー中に装入し、激しく混合しながら、まず最初に場合により水を噴霧し、ついで表面変性剤を噴霧する。噴霧が終わった後に、混合をさらに15〜30分間続けることができ、ついで混合物を50〜400℃で1〜4時間、状態調節する。
使用される水を、酸、例えば塩酸で酸性化して7から1までのpHを得ることができる。使用されるシラン化剤は、溶剤、例えばエタノール中に溶解させることができる。インジウム−スズ−酸化物(VP AdNano ITO R 50)を、実施例の製造のために使用した。使用される酸化物(UB PH 13195)のための物理化学的データは、第1表から得ることができる。方法の詳細と表面変性される酸化物のデータは第2及び3表に挙げられている。
【0030】
【表4】

* SMA=表面変性剤
** 0.001N HClをHOの代わりに使用した。
【0031】
表面変性剤:
A=オクチルトリメトキシシラン
B=3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
C=ヘキサメチルジシラザン
D=ヘキサデシルトリメトキシシラン
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積:0.1〜299m2/g
pH:2.5〜9.5
C含量:0.1〜15%
により特徴付けられる、表面変性されたインジウム−スズ−酸化物。
【請求項2】
酸化物に混合しながら表面変性剤を噴霧し、ついで混合物を1〜6時間の期間にわたり50〜400℃の温度で熱処理する、請求項1記載の表面変性されたインジウム−スズ−酸化物を製造する方法。
【請求項3】
酸化物を、混合しながら蒸気形の表面変性剤で処理し、ついで混合物を0.5〜6時間の期間にわたり50〜800℃の温度で熱処理することを特徴とする、請求項1記載の表面変性されたインジウム−スズ−酸化物を製造する方法。
【請求項4】
塗装系を製造するための、表面変性されたインジウム−スズ−酸化物の使用。

【公開番号】特開2012−31060(P2012−31060A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207753(P2011−207753)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2007−541726(P2007−541726)の分割
【原出願日】平成17年10月29日(2005.10.29)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany