説明

表面実装コネクタ

【課題】補強金具等の別部品を用いることなく、1本のコンタクトのみで、種々の方向から外力を受けても絶縁ハウジングが転倒したり、半田付け部に大きな曲げ応力が発生することがない表面実装コネクタを提供する。
【解決手段】絶縁ハウジングの底板部の底面に前後方向に沿って配置する一対の帯状脚片の底面をプリント配線基板への半田付け面とし、コンタクトを、前後左右の異なる位置で半田付けする。絶縁ハウジングの底板部を、絶縁ハウジングに固定されるコンタクトの固定片と固定片の後端でU字状に折り返される一対の帯状脚片とで挟持し、各帯状脚片の前方から連設される一対の係合フックを、絶縁ハウジングの側壁部前方に突設された係合突部へそれぞれ上方から係合するので、絶縁ハウジングはコンタクトと一体化し、いずれの方向から外力を受けても転倒しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板上にコンタクトを半田付けして固定される表面実装コネクタに関し、更に詳しくは、種々の方向から外力を受けても絶縁ハウジングが転倒しない表面実装コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板上のランドパターンに絶縁ハウジングの一部から突出するコンタクトの脚部を半田付けし、プリント配線基板上に表面実装される表面実装コネクタは、相手側コネクタとの接続の際に、相手側コネクタから外力を受けたり、機器への組立中や移送中に他の電子部品が当接する等の予期しない外力を受けることがあり、これらの外力によりコンタクト脚部の半田接続部に大きな曲げ応力が発生し、絶縁ハウジングが転倒したり、コンタクトの半田接続部が剥離し、接続不良が発生する問題があった。
【0003】
特に常時相手側コネクタと接続する用途で用いられる車載用の表面実装コネクタは、高温下で、振動や相手側コネクタから常時接触圧を受けて半田付け部が破損しやすく、より強固に絶縁ハウジングをプリント配線基板上に保持する必要があった。
【0004】
そこで、多数のコンタクトを絶縁ハウジングに収容する従来の表面実装コネクタでは、絶縁ハウジングの長手方向に互いに絶縁して取り付けられる多数のコンタクトの各脚部を絶縁ハウジングの短手方向の前後に分けて突出し、各脚部の底面をプリント配線基板のランドパターンに半田付けする表面実装コネクタが知られている(特許文献1)。このコネクタによれば、絶縁ハウジングの長手方向と短手方向のいずれの方向についても一定距離離れた2箇所以上の位置で半田付けして固定されるので、絶縁ハウジングがいずれの方向の外力を受けても特定の半田付け部に大きな曲げ応力が発生しない。
【0005】
また、図7に示すように、絶縁ハウジング101の短手方向の一側(後方側)に複数のコンタクト102の脚部が引き出された表面実装コネクタ100では、絶縁ハウジング101の短手方向の他側(前方側)に補強金具103を取り付け、絶縁ハウジング101の転倒を防止している(特許文献2)。補強金具103は、断面L字状に形成され、その後端部を絶縁ハウジング101の前面に凹設された凹溝104へ圧入して固定される。
【0006】
この表面実装コネクタ100は、絶縁ハウジング101の後方に突出するコンタクト102の図示しない脚部をプリント配線基板上のランドパターンへ半田付けすると共に、各補強金具103もプリント配線基板上のダミーパターンに半田付けし、絶縁ハウジング101が短手方向の前後方向からの外力を受けても、転倒したり、脚部の半田付け部に大きな回転モーメントが働かないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−146728号公報
【特許文献2】特許第4203348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前者の従来の表面実装コネクタは、多数のコンタクトが絶縁ハウジングに取り付けられるコネクタにのみ採用できる構造であり、また、前方と後方に脚部を引き出す2種類のコンタクトが必要となり、2種類のコンタクトを絶縁ハウジングに取り付けることから、絶縁ハウジングの構造や組立も複雑になるという問題がある。
【0009】
また、後者の表面実装コネクタ100では、本来のコネクタとしての用途に不必要な補強金具103を用意し、絶縁ハウジング101に取り付ける必要があるので、コスト上昇の原因になるととともに、絶縁ハウジング10の前方にもプリント配線基板上の実装スペースが必要となり、高密度実装の障害となっていた。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、補強金具等の別部品を用いることなく、1本のコンタクトのみで、種々の方向から外力を受けても絶縁ハウジングが転倒したり、半田付け部に大きな曲げ応力が発生することがない表面実装コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、請求項1の表面実装コネクタは、絶縁ハウジングに位置決め固定されるコンタクトの絶縁ハウジングから突出する一部をプリント配線基板の表面に形成されたランドパターンに半田接続し、コンタクトに接触する相手側端子とランドパターンを電気接続するとともに、絶縁ハウジングをプリント配線基板上に固定する表面実装コネクタであって、プリント配線基板上に配置される底板部と、底板部の左右両側に沿って立設される一対の側壁部と、一対の側壁部の前方にそれぞれ突設された一対の係合突部とを有し、底板部と一対の側壁部との間に、底板部に平行な後方から挿入されるコンタクトを収容するコンタクト収容凹部が形成された絶縁ハウジングと、底板部の平面に沿って絶縁ハウジングに固定される固定片と、固定片の前端に片持ち支持され、相手側端子に弾性接触する接触片と、固定片の左右両側の後端からU字状に折り返され、前後方向を長手方向として固定片の底面に沿って配置される一対の帯状脚片と、一対の帯状脚片の前方から連設され、前記一対の係合突部の対応部位にそれぞれ形成される一対の係合フックとを一体に有するコンタクトとを備え、固定片と一対の帯状脚片間で底板部を挟持するとともに、一対の係合フックを上方から対応部位に突設された係合突部に係合し、帯状脚片の底面をランドパターンに半田接続することを特徴とする。
【0012】
前後方向を長手方向とする一対の帯状脚片の底面が半田付けされ、その前方から連設される係合フックが絶縁ハウジングの係合突部に上方から係合するので、絶縁ハウジングの前方がプリント配線基板に対して固定され、絶縁ハウジングが、後方に向かう外力を受けても、前方が浮き上がることがなく、帯状脚片の後方の半田付け部に曲げ応力が集中することもない。
【0013】
絶縁ハウジングに固定される固定片と底面が半田付けされる帯状脚片との間に底板部の後端が挟持されるので、絶縁ハウジングの後方がプリント配線基板に対して固定され、絶縁ハウジングが前方に向かう外力を受けても、後方が浮き上がることがなく、帯状脚片の前方の半田付け部に曲げ応力が集中することもない。
【0014】
また、左右に離れた一対の帯状脚片の底面が半田付けされ、係合フックと固定片により絶縁ハウジングはコンタクトに固定されているので、左右方向の外力を受けても絶縁ハウジングは傾くことがなく、左右の半田付け部に曲げ応力が集中することもない。
【0015】
請求項2の表面実装コネクタは、一対の係合突部が、コンタクト収容凹部に収容される位置まで前方に挿入されたコンタクトの係合フックの前面が係合突部の後面に当接し、係合突部と係合フックが係合する側壁部の部位に突設されることを特徴とする。
【0016】
コンタクトを後方からコンタクト収容凹部へ挿入する際に、係合フックの前面が係合突部の後面に当接する位置を目安に、コンタクトを絶縁ハウジングの適正位置へ収容できる。
【0017】
請求項3の表面実装コネクタは、係合フックが、側壁部の外側面に沿って起立するように、帯状脚片の前方から引き出して形成され、帯状脚片を半田接続する際に係合フックの側面に形成される半田フィレットを上方から目視可能とすることを特徴とする。
【0018】
係合フックは、側壁部の外側面に沿って起立するように、帯状脚片の前方から引き出して形成されるので、帯状脚片の底面を半田付けする際に、係合フックの外側面にも半田フィレットが形成され、より強固にコンタクトがプリント配線基板に固着される。
【0019】
係合フックの側面に形成された半田フィレットは、上方から目視可能であるので、半田接続状態を確認できる。
【0020】
請求項4の表面実装コネクタは、相手側端子から下方への接触圧を受ける接触片の前記端子との接触位置が、各一対の帯状脚片の前後方向での中央位置より後方にあることを特徴とする。
【0021】
コンタクトは、接触位置で相手側端子から下方への接触圧を受け、接触位置は、プリント配線基板に固定される帯状脚片の中央位置より後方にあるので、絶縁ハウジングとコンタクトの全体は、前方がプリント配線基板から浮き上がる方向の回転モーメントを受けるが、コンタクトは、前後方向を長手方向とする帯状脚片の底面がプリント配線基板に半田付けされることにより固定され、絶縁ハウジングは、帯状脚片の前方に形成される係合フックが係合突部の上方から係合するので、前方が上方に浮き上がることがない。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、補助金具を用いず、絶縁ハウジングに収容される1本のコンタクトによって絶縁ハウジングをプリント配線基板上に強固に固定でき、いずれの方向から外力を受けても絶縁ハウジングの一部が浮き上がったり、転倒することがない。
【0023】
また、いずれの方向からコンタクトや絶縁ハウジングが外力を受けても、特定の半田付け部に過大な応力が発生せず、半田接続部のパターン剥離などによる接続不良の発生を防止できる。
【0024】
請求項2の発明よれば、係合突部を後方からコンタクト収容凹部へ挿入するコンタクトのストッパーとして兼用でき、コンタクトをコンタクト収容凹部内に正確に位置決め収容できる。
【0025】
また、底面がランドパターンとの半田接続部となる帯状脚片を絶縁ハウジングに対して正確に位置決めできる。
【0026】
請求項3の発明よれば、前縁ハウジング前方の浮き上がりを防止する為に作用する係合フックの側面に半田フィレットが形成される構成とし、より強固にコンタクトをプリント配線基板に固定できる。
【0027】
また、上方から半田フィレットの形成状態を目視確認できるので、自動カメラなどを用いてプリント配線基板への実装状態を確認できる。
【0028】
請求項4の発明によれば、相手側端子がコンタクトに接触し、接触圧により絶縁ハウジングに前方が浮き上がる方向の回転モーメントが発生しても、係合フックと係合突部が係合することにより、前記回転モーメントをうち消す反力が発生するので、車載用等、相手側コネクタが常時接触し、高温下で半田付け部が振動を受けるような劣悪環境で用いても、絶縁ハウジングの前方が浮き上がることがなく、半田接続部のパターン剥離が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表面実装コネクタ1をプリント配線基板10の表面に実装した状態を示す斜視図である。
【図2】表面実装コネクタ1を下方から見た斜視図である。
【図3】表面実装コネクタ1の分解斜視図である。
【図4】表面実装コネクタ1の平面図である。
【図5】絶縁ハウジング2の背面図である。
【図6】コンタクト3を下方から見た斜視図である。
【図7】従来の表面実装コネクタ100の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態について図1乃至図6を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る表面実装コネクタ1をプリント配線基板10の表面に実装した状態を示す斜視図、図4は、表面実装コネクタ1を上方からみた平面図であり、表面実装コネクタ1の各部の説明は、図4において、上方を前方、下方を後方、左右方向を左右方向として説明する。
【0031】
表面実装コネクタ1は、図3に示すように、絶縁ハウジング2と絶縁ハウジング2に収容されるコンタクト3とから構成される。絶縁ハウジング2は、リフロー炉内の高温下で変形しない耐熱性に優れた液晶ポリマー等の絶縁合成樹脂を用いて図3に示すように直方体状の箱形に一体に成形されたもので、底板部21と底板部21の左右両側から立設された一対の側壁部22、22によって、その内側に後方と上方の一部が開口するコンタクト収容凹部23が形成される。
【0032】
本実施の形態に係る表面実装コネクタ1は、図1に示すように、絶縁ハウジング2の底板部21がプリント配線基板10の表面に沿って配置され、ここでは、平板状にプレス成形されたバッテリーの端子である相手側端子が絶縁ハウジング2の上方から接近し、コンタクト収容凹部23から上方に突出するコンタクト3に接触する構成となっている。相手側端子と接触するコンタクト3の接触片31は、相手側端子から押し下げられることにより、後方側の斜め下方に撓むため、接触片31と干渉しないようにコンタクト収容凹部23の上方は、後方側が開口している。
【0033】
底板部21の左右両側縁部と側壁部22、22との間には、図5に示すように、後述するコンタクト3の係止突起35、35を圧入し、コンタクト3の固定片33を位置決め固定する固定溝24、24がそれぞれ形成されている。
【0034】
また、側壁部22、22の外側面前方下端の角部には、それぞれ後方に面した段部が形成された係合突部25、25が一体に突設されている。段部の上面25aは、底板部21に平行で、コンタクト3の後述する係合フック36の下面36aと係合する係合面となり、鉛直面の後面25bは、後方からスライドする係合フック36の前面36b当接する当接面となっている。
【0035】
側壁部22、22の各外側面には、更に、複数のスペーサブロック26が突設されている。本実施の形態では、キャリアで一体に連結された複数のコンタクト3を対応部位に配設した複数の絶縁ハウジング2へ一括して組み付けるが、その際に左右方向に整列して配置される絶縁ハウジング2間のスペーサブロック26が当接することにより、左右方向の間隔が保持され、側壁部22の外側面に沿って摺動する後述の係合フック36の摺動スペースが確保される。
【0036】
コンタクト3は、燐青銅等の導電性と弾性に優れた金属プレートを打ち抜いた後、折り曲げ加工し、図3、図6に示すように、細長帯状に屈曲形成してなるもので、その先端側から逆U字状の接触片31、連結片32、固定片33及び一対の帯状脚片34、34が一体に連続し、一対の帯状脚片34、34の前端からそれぞれ左右の側方に向かって係合フック36が一体に連設されている。
【0037】
逆U字状の接触片31は、前方に向かって湾曲する連結片31を介して固定片33の前端に片持ち支持されるもので、外力を受けない自由状態で図1に示すように、湾曲する上方の部分がコンタクト収容凹部23から突出して支持される。接触片31の湾曲する部位には、その幅方向の中央に長手方向に沿ったリブ31aが突設されている。リブ31aを湾曲面の外方に向かって突設することにより、対向して接触する平板状の相手側端子と線接触して接触の信頼性を得られ、また、湾曲する部位の強度が増して接触片31が外力を受けても変形しない。接触片31の湾曲する部位より後方側(リブ31aが形成されていない接触片31の先端側)には、左右の両端から内側に直角に折り曲げられたガイドプレート31b、31bが連設されている。ガイドプレート31bは、コンタクト3をコンタクト収容凹部23内に配置した際に、その開口縁の側壁部22と平行に配置され、相手側端子と接続する際に接触片31を下方へ案内すると共に、左右の方向から意図しない外力を受けた場合に側壁部22に当接し、接触片31の捻り変形を防止するように作用する。
【0038】
固定片33は、前述した絶縁ハウジング2の固定溝24の高さよりわずかに薄い厚さの長方形薄板状に形成され、その左右両側には、一対の係止突起35、35が突設されている。一対の係止突起35、35は、固定片33の左右両側を対応部位の固定溝24、24に沿って前方へ挿入する際に、固定溝24、24の内側面に係止して固定片33を後方に対して抜け止めするもので、所定位置まで前方に圧入した固定片33は、底板部21の平面上にそって配置された状態で絶縁ハウジング2に位置決め固定される。
【0039】
一対の帯状脚片34、34は、固定片33の後端の左右両側の部位にそれぞれ連設されている。各帯状脚片34は、固定片33との連結部位から固定片33の後面を囲うように180度折り返された湾曲部を介して、図2に示すように、後方から前方に向かって固定片33の底面の左右両側に沿って配置される。帯状脚片34の底面は、対向するプリント配線基板10上のランドパターンに半田接続する半田接続面となり、それぞれ前後方向を長手方向として配置され、左右に隔てられた一対の帯状脚片34の底面が半田付けされることにより、コンタクト3は、前後左右のいずれの方向の外力に対しても強固にプリント配線基板10に固着される。
【0040】
係合フック36は、帯状脚片34の前端から水平面に沿って左右の側方に引き出され、引き出された側縁を上方に直角に折り曲げて形成され、これにより、コンタクト3が絶縁ハウジング2に取り付けられた際に、底板部21の底面から側壁部22の外側面に沿って起立して配置される。係合フック36の側面に表れる段部は、係合突部25の段部と噛み合う相補する形状に形成され、前述したとおり、係合フック36の段部下面36aが係合突部25の上面25aと係合する係合面に、係合フック36の鉛直面である前面36bが係合突部25の後面24bに当接する当接面となっている。
【0041】
コンタクト3には、更に、一対の帯状脚片34、34の後方寄りの両側から左右の側方に引き出された後、上方に直角に折り曲げられ、側壁部22の外側面に沿って起立する一対のガイド片37、37が一体に形成されている。左右両側に配置されるガイド片37と係合フック36は、コンタクト3の固定片33を固定溝24へ前方へ圧入しながら組み込む際に側壁部22の外側面に沿って摺動し、細長で前端が自由端となっている一対の帯状脚片34、34が底板部21の前後方向に沿って移動するように案内する。
【0042】
次に、このように構成される表面実装コネクタ1を組み立て、プリント配線基板10上に表面実装するまでの工程を説明する。上述したように、表面実装コネクタ1は、複数のコンタクト3のピッチに合わせて左右方向に整列させた複数の絶縁ハウジング2対して後方から一括して複数のコンタクト3を圧入し、対応配置された絶縁ハウジング2へ組み付ける。
【0043】
コンタクト3の組み付けは、図3に示すように、コンタクト収容凹部23の後方から、固定片33を底板部21の平面に沿って、その両側の係止突起35、35が固定溝24、24内に挿入されるように、コンタクト3を前方へ挿入する。
【0044】
コンタクト3をコンタクト収容凹部23内に前方へ挿入するに伴って、一対の帯状脚片34の側方で起立する係合フック36、36とガイド片37、37が側壁部22の外側面に沿って摺動することにより、各帯状脚片34は、底板部21の底面に沿って前方に移動するように案内される。
【0045】
コンタクト3が所定の収容位置まで挿入されると、一対の係合フック36、36の各前面36bが対向する係合突部25の後面25bに当接し、コンタクト3の前方への挿入が規制される。この挿入位置では、係止突起35、35が固定溝24、24の内側面に係止し、係合フック36の前面36bと係合突部25の後面25bが当接することにより、コンタクト3が絶縁ハウジング2に対して前後方向に位置決めされ、固定片33の両側及び/又は係止突起35が固定溝24内に挿入されることにより、コンタクト3の固定片33が絶縁ハウジング2に対して上下左右方向に位置決めされる。更に、係合フック36の下面36aが係合突部25の上面25aに係合することにより、一対の帯状脚片34に対して絶縁ハウジング2前方の浮き上がりが規制されるとともに、絶縁ハウジング2の底板部21が、一対の帯状脚片34と固定片33との間に挟持されるので、コンタクト3と絶縁ハウジング2が一体化される。
【0046】
各コンタクト3を絶縁ハウジング2へ組み付けた後、各コンタクト3間が切断され、コンタクト3と絶縁ハウジング2が一体化した表面実装コネクタ1毎に分離される。その後、表面実装コネクタ1は、チップマウンターによって、一対の帯状脚片34をクリーム半田が塗布されたランドパターン上に載置されるようにしてプリント配線基板10上に配置される。その後、リフロー炉を通してクリーム半田を溶融させ、一対の帯状脚片34とランドパターン間を半田付けする。この表面実装工程において、帯状脚片34の底面から漏れ出す半田の一部がガイド片37、37と係合フック36、36の各外側面に沿って上昇し、半田フィレットが形成される。その結果、コンタクト3は、一対の帯状脚片34の底面が半田付けされてプリント配線基板10に固定されるのに加え、前後左右に離れた各ガイド片37と係合フック36の位置に半田フィレットが形成され、更に強固にプリント配線基板10に対して固着される。
【0047】
この表面実装工程を経てプリント配線基板10上に実装された表面実装コネクタ1は、いずれの方向から外力を受けても、絶縁ハウジング2が傾いたり、基板10から浮き上がることによる半田付け部のパターン剥離が発生することがない。すなわち、左右に隔てられた一対の帯状脚片34がそれぞれ前後方向を長手方向として配置され、その底面を対向するプリント配線基板10へ半田接続するので、コンタクト3は、前後左右のいずれの方向の外力に対しても強固にプリント配線基板10に固着され、このコンタクト3を前後左右の各方向で一体となるように位置決めした絶縁ハウジング10は、各方向から外力を受けても傾斜せず、特定の半田接続部に外力による曲げ応力が集中しない。
【0048】
特に、本実施の形態に係る表面実装コネクタ1のように、高温や振動を受ける環境の下で、平板状の相手側端子とコンタクト3が常時接続し、その接触圧から常に絶縁ハウジング2の一部が浮き上がる方向の力を受ける場合であっても、絶縁ハウジング2の傾斜を確実に防止できる。上述の表面実装コネクタ1では、相手側端子により押し下げられる接触片31の相手側端子との接触位置が、図1に示す自由状態より後方に移動する。従って、その接触位置は、表面実装コネクタ1をプリント配線基板10に対して固定する固定領域の中央位置、すなわち、目安として前後方向を長手方向とする一対の帯状脚片34の中央位置より後方の位置となり、常時コンタクト3を押し下げる相手側端子の接触圧により、コンタクト3を介して絶縁ハウジング2は、前端が上方に移動する方向の曲げモーメントを受ける。しかしながら、一対の帯状脚片34の前方や前方の係合フック36が半田付けされるとともに、その係合フック36に絶縁ハウジング2前方の係合部25が下方から係合するので、上述の環境下で連続して回転モーメントを受けていても、絶縁ハウジング2が後方に傾斜したり前方の半田接続部がパターン剥離することがない。
【0049】
本実施の形態では、図4に示すように、ガイド片37、37と係合フック36、36の配置部位の上方にスペーサブロック26が形成されず、上方から目視できるようになっている。従って、コンタクト3を後方から圧入する際に、所定の収容位置で係合フック36の下面36aが係合突部25の上面25aに係合しているか否かを、上方から撮像する自動カメラなどを用いて確認できる。また、表面実装工程後は、ガイド片37、37と係合フック36、36の外側面に半田フィレットが正しく形成されているか否かも、自動カメラなどを用いて半田接続状況を確認できる。
【0050】
上述の実施の形態では、相手側端子が上方から下降してコンタクト3に接触する例で説明したが、接続方向は上下方向に限らず、絶縁ハウジング2の前方から相手側端子が接続される表面実装コネクタであってもよい。
【0051】
また、係合突部25と係合フック36は、係合突部の上方から係合フックに係合するものであれば、任意の係合形状とすることができる。
【0052】
また、スペーサプロック26やガイド片37、37は、必要に応じて任意に絶縁ハウジングやコンタクトに形成するものであり、本発明を実施するために必ずしも必要なものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、プリント配線基板の表面でコンタクトの一部を半田付けする表面実装コネクタに適し、特に、電池パックに設けられた平面上端子の接続用途、あるいは、金属フレームに設けられた端子の接続用途など、相手側端子が常時接続する表面実装コネクタに適している。
【符号の説明】
【0054】
1 表面実装コネクタ
2 絶縁ハウジング
3 コンタクト
10 プリント配線基板
21 底板部
22 側壁部
23 コンタクト収容凹部
25 係合突部
31 接触片
33 固定片
36 係合フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ハウジングに位置決め固定されるコンタクトの絶縁ハウジングから突出する一部をプリント配線基板の表面に形成されたランドパターンに半田接続し、コンタクトに接触する相手側端子とランドパターンを電気接続するとともに、絶縁ハウジングをプリント配線基板上に固定する表面実装コネクタであって、
プリント配線基板上に配置される底板部と、底板部の左右両側に沿って立設される一対の側壁部と、一対の側壁部の前方にそれぞれ突設された一対の係合突部とを有し、底板部と一対の側壁部との間に、底板部に平行な後方から挿入されるコンタクトを収容するコンタクト収容凹部が形成された絶縁ハウジングと、
底板部の平面に沿って絶縁ハウジングに固定される固定片と、固定片の前端に片持ち支持され、相手側端子に弾性接触する接触片と、固定片の左右両側の後端からU字状に折り返され、前後方向を長手方向として固定片の底面に沿って配置される一対の帯状脚片と、一対の帯状脚片の前方から連設され、前記一対の係合突部の対応部位にそれぞれ形成される一対の係合フックとを一体に有するコンタクトとを備え、
固定片と一対の帯状脚片間で底板部を挟持するとともに、一対の係合フックを上方から対応部位に突設された係合突部に係合し、
帯状脚片の底面をランドパターンに半田接続することを特徴とする表面実装コネクタ。
【請求項2】
一対の係合突部は、コンタクト収容凹部に収容される位置まで前方に挿入されたコンタクトの係合フックの前面が係合突部の後面に当接し、係合突部と係合フックが係合する側壁部の部位に突設されることを特徴とする請求項1に記載の表面実装コネクタ。
【請求項3】
係合フックは、側壁部の外側面に沿って起立するように、帯状脚片の前方から引き出して形成され、帯状脚片を半田接続する際に係合フックの側面に形成される半田フィレットを上方から目視可能とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面実装コネクタ。
【請求項4】
相手側端子から下方への接触圧を受ける接触片の前記端子との接触位置が、各一対の帯状脚片の前後方向での中央位置より後方にあることを特徴とする請求項1に記載の表面実装コネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−256563(P2012−256563A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129904(P2011−129904)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】