説明

表面起伏が減少する、成形可能な接着ウェハを有する造瘻装具用面板

造瘻装具用面板とその使用方法が開示され、この面板は、柔らかく、吸水性があり、記憶性を持たず、本質的に非弾性で、指による成形可能な接着皮膚保護材料の環状接着ウェハ(15)を有し、ウェハの遠位表面(17)にはウェハの外周で終結する外側領域と、外側領域の内側限界からウェハの内周のストーマ受容開口部まで内側に向かって延びる内側領域がある。面板はまた、外側領域を覆う撓み性の裏打ち層と、ウェハの近位身体側表面を剥離可能に覆う平滑表面を有する取り除き可能なカバー部材(25)を含む。内側領域の遠位表面には、複数の同心円状態の畝状隆起部(28)と谷部(29)によって画成される起伏があり、畝状隆起部の厚さは、各畝状隆起部における遠位表面と近位表面の間の距離によって測定した場合に、その連続がウェハの最厚部からストーマ受容開口部へと内側に向かうにつれて漸減する。使用方法には、予備成形ステップと二次成形ステップの両方が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、身体排泄物回収装具に関し、より詳しくは、装具の面板を装用者の身体のストーマ周辺に密着させるために成形可能な接着剤を使用する造瘻装具に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるワンピースおよびツーピースタイプの造瘻装具には一般に、装具を装用者のストーマ周囲皮膚の表面に接着により固定するための接着面板が設けられている。たとえば、英国特許第2290974号明細書は、連結リング12(回収パウチまたは袋が取り外し可能に連結されることになる)と、医療グレード接着剤の環状ウェハ18と、中央穴を有する記憶性のないパテ様の成形可能な塊状接着剤24とを有し、接着剤24が親水コロイドまたはヒドロゲル系であってもよい、ツーピース装具の面板を開示している。成形可能な塊状接着剤24は、指で扱い、ストーマ周辺の位置に押し込むことができるような稠度を有する。微孔性接着テープまたは発泡材の環状パッチ22によってウェハが裏打ちされ、ウェハの身体側の面は取り除き可能な剥離シート26によって覆われている。
【0003】
米国特許第5,496,296号明細書もまた、造瘻装具用面板を開示しており、これには複数の接着剤が用いられ、ある接着剤はストーマ周囲皮膚の表面と接触して荷重を負担する機能を果たし、別の接着剤は柔らかく、成形可能で、押出し可能である。成形可能な接着剤はストーマを取り囲んでストーマと接触し、ストーマに関してガスケットまたはシールの機能を果たす。後者の接着剤は、まず面板を装用者の身体に接着によって取り付けた後に、ストーマと直接接触させるように指で圧迫して成形することが可能である。ツーピース装具を取り付ける際、成形ステップは好ましくは、パウチを面板に連結する前に行うが、その一方で、ワンピース装具の場合の手順では、成形ステップの少なくとも一部を、装具を身体に接着させた後に、パウチの前側、すなわち遠位側の壁から指で圧迫することによって行う必要があるかもしれない。
【0004】
上記のようなパテ様の成形可能な接着剤は、ストーマに対して液密状態を作るガスケットまたはシールを形成する上では有利であるが、粘着力に欠け、低温流れが発生することが報告されている。それゆえ、上記の英国特許第2290974号明細書において開示されているような成形可能な接着剤には記憶性を持たないことが求められるために、周辺条件下または使用中に接着剤のクリープ現象や流動が起こりうるという欠点が生じると指摘されてきた。この問題には、このような接着剤の非親水コロイド部分の1つまたはそれ以上の成分を化学的または物理的に架橋させることによって対処されているが、架橋を導入すると、今度は、接着剤がかなりの弾性を有してしまうという欠点が生じることがある(米国特許出願公開第2007/0185464A1号明細書参照)。
【0005】
米国特許第6,332,879号明細書においては、塑性と弾性との「バランスがとれた」特性を有する密封部材を有する親水コロイド接着ウェハでは弾性または復元可能性が利点であると主張されており、その理由は、弾性または復元可能性によって、ウェハに開けられた穴を、その穴の周縁をめくりあげてそれ自体に重なるようにし、または丸めることによって一時的に拡大し、ストーマを収容することができるからである。ウェハをストーマの上方と周辺に取り付けると、ウェハはその弾性によって基本的に当初の形状に戻り、ストーマ周辺にぴったりとフィットすることが可能である。1つの実施形態において、密封部材には、中央のストーマ受容開口部を取り囲む溝が設けられ、周縁を外側方向に横に移動させて溝を圧縮することによってストーマ受容開口部を拡大させると、密封部材がその弾性によって拡張してストーマにぴったりとフィットするようになっている。
【0006】
塑性と弾性のバランスがとれた特性を有する親水コロイド接着剤とは異なり、成形可能とだけみなされるかもしれないものは基本的に、記憶性と弾性回復性に欠ける。ある程度の歪み回復特性はあるかもしれないが、それは限定的であって、このような成形可能接着剤のパテ様の、記憶性を持たない特徴に大きな影響は与えない。それゆえ、国際公開第2007/076862号パンフレットは、皮膚と接触するように設計された層状接着剤構造を開示しており、この構造は2層(またはそれ以上)の親水コロイド接着剤を有する。第一の層だけが成形可能な接着剤と特定され、定義上、その「歪み回復」は、同開示の中で説明されているように測定された場合に、45%未満、好ましくは35%未満であることが必要とされる。これに対して、第二の層の親水コロイド接着剤は、成形可能とは特定されず、その「歪み回復」は55%より大きいことが必要とされる。
【0007】
最新技術が記されている他の特許と出願公開には、米国特許第6,840,925号明細書、米国特許出願公開第2006/0184145号明細書、米国特許第6,764,474号明細書、英国特許第2277031号明細書、国際特許出願公開第2006/038025号パンフレット、米国特許第6,652,496号明細書、米国特許第6,312,415号明細書、米国特許第5,074,852号明細書、欧州特許第0888760号明細書、米国特許第6,509,391号明細書、欧州特許第0991,382号明細書、米国特許出願公開第2005/054997号明細書、米国特許第3,683,918号明細書、米国特許第7,172,581号明細書、米国特許第6,589,222号明細書、米国特許第5,147,340号明細書、米国特許第3,667,469号明細書、国際公開第2007/076682号パンフレット、欧州特許第1164983号明細書がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の重要な態様は、親水コロイドを含む皮膚保護材料の接着ウェハを、先行技術による造瘻装具用面板の保護材料より効果的に、ストーマおよびストーマ周囲の皮膚表面と密着するように成形できる、改良された造瘻装具用面板と使用方法を提供することにある。接着ウェハの皮膚保護材料は柔らかく、指で容易に成形可能であり、基本的に弾性回復性と記憶性を持たない。「歪み回復」の数値が45%近くにもなりうる先行技術のいわゆる成形可能な保護材料とは異なり、この面板の接着ウェハのパテ様皮膚保護材料の「歪み回復」は25%を優に下回り、好ましくは15%未満である。「歪み回復」が比較的低く、また、実際に皮膚のほかストーマに容易に接着し、これらを密封する湿潤および乾燥粘着性の両方を有する、吸水性感圧接着剤であるため、それと同時に低温流れが少なく、高い凝集強さを有するものの、身体組織に付着させた後に、有意な弾性収縮は見られない。
【0009】
本願の接着ウェハは、近位身体側表面とその反対側の遠位表面を有し、遠位表面には、接着ウェハの外周で終結する外側領域と、外側領域から接着ウェハの内周のストーマ受容開口部へと内側方向に延びる同心円状の内側領域がある。撓み性の裏打ちが接着ウェハの遠位表面の外側領域を覆い、平滑なカバー部材が接着ウェハの近位身体側表面を取り除き可能に覆う。重要な点は、接着ウェハの遠位表面の内側領域に起伏があるという事実であり、この起伏は、同心円状の畝状隆起部と谷部の連続によって画成され、畝状隆起部の厚さは、各畝状隆起部における遠位表面と近位表面の間の距離によって測定した場合に、その連続が接着ウェハの最厚部からストーマ受容開口部の周囲の最薄部へと半径方向に内側に向かうにつれて漸減する。
【0010】
その結果、皮膚保護材料をカバー部材の平滑表面の上にスライド式に移動させることによって開口部を指で容易に拡大し、変形させて、開口部が装用者のストーマの形状と大きさとだいたい同じになるようにすることのできる接着ウェハが得られる。このような拡大と変形は、開口部の領域の保護材料が相対的に薄く、大きさが減少する同心円状の畝状隆起部と谷部が開口部の周囲でアコーディオン式に圧縮され、または寄せ集められることによって行いやすくなっている。カバー部材の上で保護材料をスライド式に移動させることによって開口部を変形させ、適当な大きさにした後に、カバー部材を取り除き、接着ウェハの近位表面をストーマの周囲の皮膚表面と密着状態に係合させるように位置付ける。最終ステップでは、指で圧迫することによって、保護材料を内側に移動させ、接着ウェハのストーマ受容開口部から延びるストーマと密着するように成形し、ウェハにテープ縁がある場合は、テープの接着コーティングを覆う剥離帯状片を剥がし取り、テープを装用者の皮膚に接着させて固定する。
【0011】
本発明のその他の特徴、利点および目的は、明細書と図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施する造瘻装具用面板の遠位側から見た正面図である。
【図2】面板の近位側から見た正面図である。
【図3】図1の線3−3に沿って切断した拡大縦方向断面図である。
【図4】成形可能な接着ウェハをさらに拡大した部分断面図であり、大きさが減少するその表面起伏を示す。
【図5】本発明を実施する造瘻装具用面板の使用方法における継続的ステップを示す。
【図6】本発明を実施する造瘻装具用面板の使用方法における継続的ステップを示す。
【図7】本発明を実施する造瘻装具用面板の使用方法における継続的ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面の図1〜図3を参照すると、参照番号10は総じて、ツーピース造瘻装具の面板を指す。装具のその他の構成要素として、図3において想像線で示されている連結リング12を備える従来のパウチ11がある。パウチ要素は本発明の一部ではないため、この構成要素について本明細書でこれ以上説明することは不要と考える。しかしながら、図の連結システムの詳細については、米国特許第5,185,008号明細書を参照してもよい。理解すべき点として、図のような機械的連結の代わりに、連結要素は、接着により相互に連結するリングの形態であってもよく、好ましくは、パウチ要素だけを取り外し、交換することが望まれる場合に、部品を意図的に分離することもできるような接着固定による。
【0014】
面板10は、面板連結リング13と、接続ウェブ14と、接着ウェハ15とを備える。接着ウェハ15は、近位の略平坦な身体側表面16とその反対側の遠位表面17を有する。図3に示されるように、遠位表面17には、接着ウェハ15の外周18で終結する外側領域17aと、外側領域17aから接着ウェハ15の内周のストーマ受容開口部19へと半径方向に内側に向かって延びる同心円状の内側領域17bが含まれる。
【0015】
裏打ち層20は、接着ウェハ15の遠位表面17の外側領域17aを覆う。裏打ち層20は、薄い撓み性のファイバ、フィルムまたは発泡材であってもよいが、多孔質のヒートシール可能な材料で構成されることが特に好ましい。ポリオレフィンベースのファイバの微孔性不織テープを使用した場合に有効な結果が得られているが、他の柔らかい、通気性または非通気性の熱可塑性材料を使用してもよい。テープの近位面を、適当な感圧接着剤、たとえば従来の低刺激性医療グレードアクリル系接着剤等で被覆してもよく、これによってテープは接着ウェハ15の遠位表面17の外側領域17aにしっかりと結合する。重要なのは、接着コーティングを有するテープが、接着ウェハ15の外周18より外側まで延び、それによって、面板10が取り付けられたときに装用者の皮膚に接着によって接触して、装具とその体内排泄物の内容物にとって重要な荷重負担機能を果たすテープ縁20aが提供される事実である。テープ縁20aはまた、水との接触(装用者がシャワーを浴びる場合等)に対して接着ウェハ15の外周18を保護し、また、装具の装用時に気付かないうちに面板10が皮膚から剥がれる原因となりうる物体との接触を防止する。
【0016】
テープ縁20aの接着コーティングは、図1と図3において、1枚またはそれ以上の剥離帯状片によって覆われているように示されており、この剥離帯状片は、シリコン処理された紙またはその他適当な材料の略半円形の1対の剥離帯状片21、22の形態であってもよい。すると、面板10を装用者に固定する最終段階で、このような剥離帯状片21と22を剥がし取って接着剤を露出させ、テープ縁20aを皮膚に接着させてもよい。
【0017】
接続ウェブ14は、23と24において、面板連結リング13と裏打ち層20の両方にヒートシールされているように描かれている。これは、面板連結リング13の独立した運動を限定し、装用者または介護者が面板連結リング13と裏打ち層20の間に指を入れて、連結リング13と12を相互に取り付けやすくなるような方法で部品を接合し、それによって「フローティングフランジ」構造と呼ばれる装置が得られる。
【0018】
接着ウェハ15の近位、すなわち身体側表面16は、図1と図3に最も明確に示されているような取り除き可能なカバー部材25によって覆われている。カバー部材25は略平坦で、円形の輪郭を有するが、好ましくは外側に突出するタブ25aを有しており、接着ウェハ15の近位表面16を露出させる際に使用者はそこをつまむことによってカバー部材25を容易に剥がせる。理想的には、カバー部材25は透明または半透明であるべきである。ポリエチレンテレフタレート等の透明なプラスチック材料が適当であることがわかっているが、同様の特性を有するその他の撓み性のプラスチック材料を使用してもよい。特に重要なのは、カバー部材25を接着ウェハ15に接着する力は、使用者が予備的な成形動作中にカバー部材25の遠位表面に沿って接着ウェハ15の保護材料をスライドさせ、またはシフトさせることができるような弱さであるべきであり、これについては後で詳しく説明する。そのために、カバー部材25の遠位表面は、初期成形ステップでのこのような滑動を可能にするシリコンまたはその他の離型剤でコーティングしてもよい。
【0019】
接着ウェハ15の親水コロイド保護材料は成形可能で、特に弾力特性を欠いていなければならず、塑性と弾性のバランスがとれた特性を有すると報告されている先行技術において周知の保護材料と対照的である。成形可能と考えられている先行技術の親水コロイド接着剤と比較しても、接着ウェハ15の接着剤の「歪み回復」ははるかに低い。それゆえ、その成形可能特性によって選択された国際公開第2007/076862号パンフレットの接着剤は、その出願公開の中で概説されている手順によって試験した変形後の「歪み復元」が40%を超える場合があると主張されており、これに対して、接着ウェハ15の成形可能な親水コロイド接着剤は、以下の例2に記載されたものと同様の試験によって測定した場合に、その「歪み回復」の数値が25%未満、好ましくは15%未満であるべきである。
【0020】
接着ウェハ15の接着剤は、最も有利な態様としては、2007年9月20日に公開された、本願と同じ所有者の米国特許出願公開第2007/0219287号明細書の教示に従って作製され、同出願の全体を参照によって本願に援用する。接着剤組成物には、表面積が少なくとも4m2/gの絡み合ったフィブリル化高分子ファイバの網状構造と、そのようなファイバをコーティングする連続的な感圧接着相と、その網状構造全体に分散された、液体を吸収し、膨張可能な1種類またはそれ以上の親水コロイドの粒子からなる不連続相が含まれる。感圧接着相はポリイソブチレン(PIB)であってもよく、フィブリル化ファイバはポリエチレン等のポリオレフィンからなっていてもよく、後者は組成物の総重量の約1%〜約5%を構成する(以下、重量%という)。親水コロイドは、有利な態様では、ペクチンとカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物を含み、これは組成物の約10%50重量%を構成してもよい。上記の出願公開に開示されているように、成分とその分子量の組成物における比率その他は、その組成物を(比較的粘度の高い)成形可能な皮膚保護材料として使用するか、または(比較的粘度の低い)ペーストとして使用するかに応じて変化させてもよい。それゆえ、本発明で使用する成形可能な皮膚保護は、中間分子量PIB(その平均分子量は約10,000〜40,000)を組成物の50〜65重量%の範囲と低分子量ポリイソブチレン(その平均分子量は約1,000〜4,000の範囲)を0〜約10重量%含む。
【0021】
実施例1
本発明に使用される例示的な成形可能な皮膚保護組成物は、36,000分子量のPIBを55重量%、フィブリル化ポリエチレンファイバ(表面積8m2/g、フィブリル長さ約0.55〜0.85mm、フィブリル径約15μ)を4重量%、ペクチンを13.7重量%、CMCナトリウムを27.3重量%用いて調製してもよい。組成物は、ブラベンダータイプREE6ミキサを用いて50℃で調製してもよい。成分は、上記の順序で添加してもよく、各成分の添加後に、混合物が均質になるまで混合する。最終的な混合期間が終了した後に、混合物をミキサから出し、室内条件下で平衡化する。
【0022】
実施例2
実施例1に記載した工程にしたがって、成形可能な皮膚保護組成物の3枚のサンプルディスクA〜Cについて、以下の試験パラメータにより、TA Instruments AR2000回転レオメータで「歪み回復」を分析した。
ギャップ:1000μm
試験モード:粘度測定
器具:25mm Parallel Plate,MELT
温度:32℃
【0023】
各サンプルディスクを、所定の温度に予熱した回転レオメータの固定具の上に設置した。固定具の上部を指定されたギャップまで下げ、サンプルのトリミングを行い、分析を実施した。
【0024】
15%と5%(合計20%)のせん断変形を、変形のオーバーシュートを防止するために2段階に分けて加えた。変形のオーバーシュートは22%を超えなかった。変形の総時間は90秒未満であった。応力が除荷されると、残留弾力により、加えられた変形の一部が回復した。1000秒経過後に、変形からの回復結果を測定した。
【0025】
「歪み回復」は、大きなステップ状の歪みからの回復パーセンテージとして定義され、以下のように計算される。
「歪み回復」=(γ−γ1000)/γ。式中、γは0.20、γ1000は1000秒後のせん断変形である。
【0026】
【表1】

【0027】
サンプルAの組成は以下のとおりとした。
PIB(分子量51,000) 55重量%
ポリエチレンファイバ 4重量%
ペクチン 13.7重量%
CMC 27.3重量%
【0028】
サンプルBは、上記の例1の例示的組成として具体的に示されたものと同じ組成とした。
【0029】
サンプルCの組成は以下のとおりとした。
PIB(分子量36,000) 55重量%
液体PIB(平均分子量は約1,000〜4,000の範囲) 5重量%
ポリエチレンファイバ 2重量%
ペクチン 13重量%
CMC 25重量%
【0030】
米国特許出願第2007/0219287号明細書により詳細に開示されている上記のフィブリル化高分子ファイバを用いた親水コロイドを含む接着剤組成物は、成形のしやすさ、低い回復性、記憶性の欠如、低い低温流れおよび高い凝集力によって高く評価されており、したがって、本発明で使用するのに特に適していると考えられるが、同じ特性の少なくともいくつかを有する他の成形可能な皮膚保護組成物を調製してもよく、またそれは接着ウェハ15のための調合物に適しているかもしれないと理解されるべきである。
【0031】
図4は、接着ウェハ15の半径方向の断面形状を示す。接着ウェハ15は、外側領域17aにおいて厚さが最大で、また均一であり、その一方で内側領域17bでは、接着ウェハ15の厚さが、接着ウェハ15のストーマ受容開口部19に向かう半径方向に内側の位置に対応して漸減し、また、その遠位表面には、一連の、または複数の同心円状の畝状隆起部28と谷部29によって画成される起伏があり、畝状隆起部28の厚さまたは幅は、その連続が外側領域17aからストーマ受容開口部19に向かうにつれて漸減するように示されている。起伏と、内側方向への畝状隆起部28の厚さの漸減との組み合わせには、いくつかの重要な効果がある。畝状隆起部28の間の谷部29は、接着ウェハ15の撓み性を増進させ、装用者の動きに伴う身体形状の変化に接着ウェハ15を適応させるのに役立つ。谷部29はまた、圧縮領域としても機能し、それによって初期成形作業中、ストーマ受容開口部が装用者のストーマの大きさと形状に合うように拡大され、および/または変形されると、畝状隆起部28をより近づくように移動させる。このような初期成形ステップでは、図5の矢印30と31によって示される方向に指で力が加えられ、成形可能な保護材料を、ストーマ受容開口部19を直に取り囲むカバー部材25の平滑な遠位表面に沿ってスライド式に移動させて、その保護材料の厚さを増大させ、それと同時に、ストーマ受容開口部19の付近での比較的薄い保護材料の持ち上がりまたは捲れ上がりを避ける。ストーマ受容開口部19に最も近い畝状隆起部28の厚さまたは幅が外側領域17aに近いものと比較して小さいという事実は、開口部付近の保護材料をカバー部材25の上にスライド式に移動させて、開口部のすぐ周囲で畝状隆起部を寄せ集めたときに、そのような動作による保護材料の累積がそれほど大きくならず、移動された材料の持ち上がりや捲れ上がりが発生しないために、特に重要である。したがって、図5と図6に最も明確に示されているように、ストーマ受容開口部19は、予備成形ステップで、開口部の周囲での保護材料の好ましくない持ち上がり、折れ曲がりまたは巻き上がりを発生させずに拡大することができる。
【0032】
摩擦を制限する遠位表面を有するカバー部材25は初期成形ステップ中ずっと所定の位置に留まるが、これは、ストーマ受容開口部19の大きさと形状が変化している間に接着ウェハ15を支持するスライド面となるからである。これまでに、初期成形ステップでストーマ受容開口部19を変形させて、自分のストーマの寸法と形状により密接に合わせられる器用で経験豊富な装用者がいることがわかっている。他の装用者は、開口部19をスライド式に拡大させて、自分のストーマより大きくしてから、第二の成形ステップ(図7)でストーマ受容開口部19をストーマの外寸に合わせて小さくするほうが容易であると思うかもしれない。
【0033】
カバー部材25は、接着ウェハ15のストーマ受容開口部19と同心円状であるが、これより小さい開口部25bを有することがわかるであろう。開口部25bは、カットすることによってストーマ受容開口部の形状を成形し、大きくすることに慣れているかもしれない装用者にとって、スタート時の開口部となる。このような場合、開口部25bとストーマ受容開口部19は、上記のような初期ステップでの指による成形ではなく、はさみで所定の大きさにカットしてもよい。しかしながら、開口部25bが図のように面板の開口部19より小さいという事実もまた、予備成形手順に従うほうを好む装用者にとって有利であり、それは、開口部のすぐ周囲で露出しているカバー部材の遠位表面が、予備成形ステップの開始時に保護材料と指の接触を導き、制御するための平滑なスライド面となるからである。
【0034】
図には5つの畝状隆起部28と谷部29の連続が示されているが、主に面板の大きさに応じて、数はこれより多くても少なくてもよいと理解されるべきである。一般に、畝状隆起部28と谷部29の数は2〜10の範囲である。最も外側の畝状隆起部28は、外側領域17aに沿った接着ウェハ15の最大厚さに対応する、またはこれと同等の厚さ「x」を有していてもよく、その厚さ「x」は、約0.04〜約0.10インチの範囲内であるべきである。谷部29では、厚さ「y」は、接着ウェハ15の最大厚さの約10%〜約60%、好ましくは約20%〜約40%の範囲内であるべきである。連続の中の一連の畝状隆起部は、半径方向に測定した場合に約0.05〜約0.20インチ、好ましくは約0.08〜約0.15インチの距離「z」だけ離間されていてもよい。畝状隆起部28の厚さは、外側領域17aに最も近い最大厚さの畝状隆起部28から、開口部19に最も近い畝状隆起部28の約0.02〜約0.06インチの厚さまで漸減し、最も薄い畝状隆起部は最大厚さの畝状隆起部28の厚さの40%〜80%、好ましくは50%〜70%である。
【0035】
接着ウェハ15の遠位表面17は、パウチ11に面する起伏のある接着面17bを覆い、接着ウェハ15の成形可能接着剤とパウチ11の内壁とが直接接触することを防止する、粘着性のない、デッドストレッチ性のフィルムまたはコーティング34(図4の破線で示される)によって保護されてもよい。「デッドストレッチ性」とは、伸縮性は高い(小さな負荷での降伏点を有する)が、認識しうる弾性回復がないフィルムまたはコーティングを意味する。このようなフィルムはまた、等方性であるべきであり、すなわち、その機械的特性はすべての方向に基本的に同等であるべきである。イリノイ州シカゴのPechiney Plastic Packaging社製Parafilm(登録商標)M等のフィルムは、保護フィルム34に適したフィルム材料であるが、同様のデッドストレッチ等方性を有するその他のフィルム材料を使用してもよい。
【0036】
保護フィルム34は、パウチの開口部から露出するパウチ11の遠位壁(図示せず)と接着ウェハ15の間の接着を防止し、それは、このような接着がパウチ11の中への排泄物の進入の障害となるという影響があるかもしれないからである。フィルム34はまた、接着ウェハ15の成形可能接着剤がストーマSからの排泄物および/またはパウチの内容物、たとえばストーマからの流出物と接触しないように保護し、この接触から保護しないと、成形可能接着剤が腐食する可能性がある。同じ理由により、保護フィルム34は、成形作業中およびその後、接着ウェハ15の遠位側で損傷を受けずに留まり、接着ウェハ15が、図5に示される予備成形作業中およびその後、折れ曲がり、巻き上がり、またはその他変形して、その粘着性のある接着材料が遠位方向に露出しないことが好ましい。
【0037】
接着ウェハ15の近位表面16からカバー部材25を取り除くと、図6に示されるように、近位表面26がストーマSの付近で装用者の身体Bと接触する。接着ウェハ15を矢印35の方向に圧縮して、ストーマ周辺の皮膚面と密着させてもよく、その後、指で接着ウェハ15の内周部に加え(図7の矢印36と37)、保護材料を移動させ、変形させ、成形し、ストーマSのすぐ周辺に存在するあらゆる隙間の中に入れ、それによって接着ウェハ15を第二の成形ステップでストーマSに密着させる。最終ステップは、テープ裏打ち層20の接着コーティングから剥離帯状片21と22を剥がすステップと、テープ縁20aを皮膚に接着させるステップを含み、その後、パウチ要素の結合リング12を、それと嵌合する面板連結リング13に取り付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔らかく、吸水性があり、指で成形可能な、基本的に非弾性の皮膚保護材料の略環状の接触ウェハであって、
近位身体側表面と反対側の遠位表面を有し、
前記遠位表面には、前記ウェハの外周で終結する外側領域と、前記外側領域から前記ウェハの内周のストーマ受容開口部へと内側に延びる同心円状の内側領域とがある接触ウェハと、
前記遠位側表面の前記外側領域を覆う、撓み性の裏打ち層と、
前記ウェハの前記近位身体側表面を剥離可能に覆う円滑面を有する取り除き可能なカバー部材と、
を備える造瘻装具用面板であって、
前記内側領域の前記遠位表面には、同心円状の畝状隆起部と谷部の連続によって画成される起伏があり、前記畝状隆起部の厚さは、各畝状隆起部における前記遠位表面と近位表面の間の距離によって測定した場合に、前記連続が前記ウェハの最大厚さから前記ウェハの前記ストーマ受容開口部へと内側に向かうにつれて漸減する、造瘻装具用面板。
【請求項2】
前記連続は前記畝状隆起部を2〜10含む、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項3】
厚さが漸減する前記谷部と前記畝状隆起部は、略デッドストレッチ等方性を有する伸縮性の非粘着性フィルムによって覆われている、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項4】
前記ウェハの最大厚さは、約0.04〜約0.10インチ(約0.10〜約0.25cm)の範囲内である、請求項2に記載の造瘻装具用面板。
【請求項5】
前記ウェハの前記谷部の厚さは、前記ウェハの最大厚さの約10%〜約60%の範囲内である、請求項4に記載の造瘻装具用面板。
【請求項6】
前記範囲は約20%〜約40%である、請求項5に記載の造瘻装具用面板。
【請求項7】
前記連続の中の一連の同心円状の畝状隆起部は、半径方向に測定した場合に約0.05〜0.20インチ(約0.13〜約0.50cm)の範囲の距離だけ離間されている、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項8】
一連の畝状隆起部は、半径方向に測定した場合に約0.08〜約0.15インチ(約0.20〜約0.38cm)の範囲の距離だけ離間されている、請求項7に記載の造瘻装具用面板。
【請求項9】
前記畝状隆起部の厚さは、各畝状隆起部における前記遠位表面と近位表面の間の距離によって測定した場合に、前記外側領域に最も近い前記畝状隆起部についての約0.04〜約0.10インチ(約0.10〜約0.25cm)の範囲の厚さから、前記ストーマ受容開口部に最も近い前記畝状隆起部についての約0.02〜約0.06インチ(約0.05〜約0.15cm)の範囲の厚さまで漸減し、最も薄い前記畝状隆起部は、最大厚さの前記畝状隆起部の厚さの約40%〜80%の範囲である、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項10】
前記最も薄い畝状隆起部は、前記最も厚い畝状隆起部の厚さの約50%〜70%である、請求項9に記載の造瘻装具用面板。
【請求項11】
前記接着ウェハは、表面積が少なくとも4m2/gの絡み合ったフィブリル化高分子ファイバの網状構造と、そのファイバをコーティングする連続的感圧接着相と、前記網状構造全体に分散された、吸水性があり、膨張可能な1種類またはそれ以上の親水コロイドの粒子を含む不連続相を含む組成物を有する、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項12】
前記高分子フィブリル化ファイバはポリエチレンからなり、前記組成物の約1重量%〜約5重量%を占める、請求項11に記載の造瘻装具用面板。
【請求項13】
前記連続相は、平均分子量が約10,000〜40,000の範囲内の中間分子量ポリイソブチレンを含む、請求項12に記載の造瘻装具用面板。
【請求項14】
前記親水コロイドは、ペクチンとカルボキシメチルセルロースの混合物を含む、請求項13に記載の造瘻装具用面板。
【請求項15】
前記撓み性裏打ち層は、多孔質高分子ファブリック、フィルムまたは発泡材のシートからなる、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項16】
前記裏打ち層は、前記ウェハの前記外周より外まで延びるテープを含み、その前記近位表面に感圧性接着コーティングを有して、前記ウェハを取り囲む接着テープ縁が設けられる、請求項15に記載の造瘻装具用面板。
【請求項17】
円周方向に配置され、個別に取り除き可能な少なくとも2枚の剥離帯状片によって、前記ウェハを取り囲む前記テープ縁の前記感圧接着コーティングが覆われる、請求項16に記載の造瘻装具用面板。
【請求項18】
前記面板を造瘻装具用パウチに取り外し可能に連結するように、結合リングが前記撓み性裏打ち層に取り付けられている、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項19】
前記取り除き可能なカバー部材は撓み性で透明であり、撓んでいない状態で略平坦である、請求項1に記載の造瘻装具用面板。
【請求項20】
前記取り除き可能なカバー部材の前記平滑表面は、前記ウェハの前記近位表面とスライド式に係合する、請求項19に記載の造瘻装具用面板。
【請求項21】
前記カバー部材は、その外側縁辺部に、前記カバー部材を前記ウェハから剥がし取るための指掛け用タブを有する、請求項20に記載の造瘻装具用面板。
【請求項22】
前記カバー部材は、前記ウェハの前記ストーマ受容開口部と同心円状で、これより小さい開口部を有する、請求項20に記載の造瘻装具用面板。
【請求項23】
造瘻装具用面板を装用者に接着する方法であって、前記面板は、柔らかく、指で成形可能で、記憶性がなく、親水コロイドを含む皮膚保護材料の、それを貫通する略中央の開口部を有するウェハであって、近位身体側表面と反対側の遠位表面を有するウェハと、前記近位表面と接触し、これを覆う平滑表面を有する剥離可能なカバー部材とを有し、前記ウェハの前記遠位表面は、同心円状の畝状隆起部と谷部の連続によって画成される起伏を有し、前記畝状隆起部の厚さが、各畝状隆起部における前記遠位表面と近位表面の間の距離によって測定した場合に、前記連続が前記開口部へと内側に向かうにつれて漸減し、この方法は、
予備成形ステップにおいて、前記カバー部材の前記平滑表面の上方で前記皮膚保護材料を外側に向けてスライド式に移動させて、前記開口部がそこに通されるべきストーマの概略的形状および大きさと略同じになるようにすることによって、前記開口部を変形させるステップと、
前記カバー部材を前記ウェハから取り除き、前記ウェハの前記近位表面をストーマ周囲の皮膚表面と密着状態で係合させるように位置付けるステップと、
第二の成形ステップにおいて、前記ウェハの前記保護材料を内側に移動させ成形して、前記ウェハの開口部から延びる前記ストーマと密着状態で接触させるステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記ウェハの前記遠位表面は、前記ウェハの外周で終結する外側領域と、前記外側領域から前記中央開口部へと内側方向に延びる同心円状の内側領域と、前記外側領域を覆う撓み性の裏打ち層を有し、前記裏打ち層は前記ウェハの前記外周より外側まで延びて、前記ウェハの周囲に円周方向の縁部を画成し、前記縁部は少なくとも1枚の剥離帯状片によって覆われた感圧接着コーティングを持つ近位表面を有し、さらに、前記少なくとも1枚の剥離帯状片の各々を前記縁部の前記接着コーティングから剥がし取り、前記縁部を前記装用者の皮膚に接着によって密着させるステップを含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−530546(P2012−530546A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516292(P2012−516292)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/038969
【国際公開番号】WO2010/148182
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(591000414)ホリスター・インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】HOLLISTER INCORPORATED
【Fターム(参考)】