説明

袋体およびその製法

【課題】縫製部における糸のほつれが生じない袋体およびその製法を提供する。
【解決手段】本発明の袋体1は、縫製部が融着層8により接着されてなるもので、表側生地2と裏側生地3との間に熱接着テープ4を配置する手順と、前記生地2、3の熱接着テープ4が配置された個所を縫製する手順と、縫製部を加熱して熱接着テープ4を溶融し、同縫製部を融着する手順とにより製作される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋体およびその製法に関する。さらに詳しくは、布団カバー、枕カバー、布団のおける外側生地などの布製の袋体であって、縫製時に生じた針穴が消失されてなる袋体およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、布団においては縫製時に布団側にできる針穴からのダニの布団内への侵入が問題とされ、その対策が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、図10に示すように、表地101と裏地102とで袋状に形成され、内部に羽毛または羽毛寝具を収納する羽毛寝具用袋体100において、表地101と裏地102の縫合に際して縫合部104に綿製または布製のテープ105、107を介在させてなるものが提案されている。
【0004】
この特許文献1における羽毛寝具用袋体100においては、綿製または布製のテープ105、107の弾力性を利用して縫合部104の気密性を確保してダニの出入りを防止する、という構成とされているところから、縫合部104における糸がほつれなどした場合には、縫合部104に部分的に隙間ができてダニの出入りが可能となる、という問題がある。
【0005】
なお、縫製をしない布団については、特許文献2および特許文献3に提案がなされている。
【特許文献1】特開平9−322845号公報
【特許文献2】特開2000−166729号公報
【特許文献3】実用新案登録第3132516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑みなされたものであって、縫製部における糸のほつれが生じない袋体およびその製法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の袋体は、縫製部が融着層により接着されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明の袋体においては、下糸に溶着糸または熱接着糸が用いられ、前記溶着糸または熱接着糸が溶着または熱接着されてなるのが好ましい。
【0009】
また、本発明の袋体においては、針穴が融着層により塞がれているのが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の袋体においては、針穴が溶着された溶着糸または熱接着された熱接着糸によっても塞がれているのが好ましい。
【0011】
本発明の袋体の製法は、縫製部が融着層により接着されてなる袋体の製法であって、表側生地と裏側生地との間に熱接着テープを配置する手順と、前記生地の熱接着テープが配置された個所を縫製する手順と、縫製部を加熱して熱接着テープを溶融し、同縫製部を融着する手順とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の袋体の製法においては、表側生地とファスナー生地との間に熱接着テープを配置する手順と、裏側生地とファスナー生地との間に熱接着テープを配置する手順と、前記生地の熱接着テープが配置された個所を縫製する手順と、縫製部を加熱して熱接着テープを溶融し、同縫製部を融着する手順とが付加されているのが好ましい。
【0013】
また、本発明の袋体の製法においては、下糸が溶着糸または熱接着糸とされ、熱接着テープを溶融時に前記溶着糸が溶着され、または熱接着糸が熱接着されるのが好ましい。
【0014】
しかして、本発明においては、袋体は、例えば、布団カバー、布団側または枕カバーとされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、縫製部における糸のほつれが生じないため、そのほつれた個所から袋体内にダニの侵入するおそれがないという優れた効果が得られる。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、針穴が塞がれるので、針穴から袋体内にダニの侵入するおそれがないという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではない。
【0018】
図1に、本発明の一実施形態の袋体を概略図で示す。本実施形態の袋体1は、具体的には、布団カバーや布団側(以下、布団カバーで代表する)とされ、図中、斜線を付した部分にファスナーが本縫い縫製により取付けられ、またその他の周囲はロック(インター)縫製により縫合されている。
【0019】
次に、図を参照しながら、かかる構成とされた布団カバー1の製法について説明する。
【0020】
手順1:図1に示す布団カバー1の左端部1a、上端部1b、下端部1cならびに右端部上部1dおよび下部1eに対応する表側生地2および裏側生地3の間に熱接着テープ4を配置して挟み込む(図2参照)。この熱接着テープ4は、共重合ポリアミド樹脂からなるものとされ、例えば、フューズテープ((有)フルネス社商品名)とされる。
【0021】
また、表側生地2および裏側生地3は、例えば、高密度織物生地、例えばアルファイン(東洋紡(株)社商品名)とされる。
【0022】
手順2:熱接着テープ4が挟み込まれた表側生地2および裏側生地3の左端部、上端部、下端部ならびに右端部上部および下部をロック(インター)縫製10により縫合する(図3参照)。図3に示すように、このロック(インター)縫製10においては、本縫い11と環縫い12とが同時になされる。この場合、本縫い11における下糸には、ナイロン糸とポリエステル糸とを縒り込んだ溶着糸(熱接着糸)、例えばメルター熱接着糸((株)フジックス社商品名)を用いる。
【0023】
手順3:図1に示す布団カバー1のファスナー取付位置1fに対応する表側生地2の端部と、ファスナー生地5の一端部との間に熱接着テープ4を配置して挟み込む(図4参照)。
【0024】
手順4:熱接着テープ4が挟み込まれた表側生地2の端部とファスナー生地5の一端部とを本縫い21縫製する(図5参照)。この場合も、下糸には、ナイロン糸とポリエステル糸とを縒り込んだ溶着糸(熱接着糸)を用いる。
【0025】
手順5:図1に示す布団カバー1のファスナー取付位置1fに対応する裏側生地3の端部と、ファスナー生地5の他端部との間に熱接着テープ4を配置して挟み込む。
【0026】
手順6:熱接着テープ4が挟み込まれた裏側生地3の端部と、ファスナー生地5の他端部とを本縫い21縫製する。この場合も、下糸には、ナイロン糸を縒り込んだ溶着糸(熱接着糸)を用いる。
【0027】
手順7:縫製により袋状とされた布団カバー1の縫製部を140〜160℃によりアイロンがけし、熱接着テープ4および溶着糸を溶融させて表側生地2と裏側生地3、表側生地2とファスナー生地5、および裏側生地3とファスナー生地5とを融着層8により接着する(図7参照)。
【0028】
これにより、図6に示すように、表側生地2と裏側生地3、表側生地2とファスナー生地5、および裏側生地3とファスナー生地5との間に生じていた隙間6が、図7に示すように、表側生地2と裏側生地3、表側生地3とファスナー生地5、および裏側生地3とファスナー生地5とが密着することにより消失する。また、図8に示すように、縫製時に表側生地2と裏側生地3、表側生地2とファスナー生地5、および裏側生地3とファスナー生地5との間に生じた針穴9が、図9に示すように、溶着糸および熱接着テープ4が溶融することにより塞がれる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、生地と生地との間に隙間6が生ずることはなく、また針穴9も塞がれているので、縫製部からダニが侵入するおそれはまったくない。また、使用中に糸がほつれるようなことがあっても、縫製部に隙間が生ずるおそれはない。
【0030】
したがって、本実施形態の布団カバー1はダニ対策に優れているといえる。
【0031】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はかかる実施形態のみに限定されるものではなく、種々改変が可能である。
【0032】
例えば、本実施形態では、袋体として布団カバーや布団側を例に取り説明されているが、本発明の適用は布団カバーや布団側に限定されるものではなく、ダニ対策が必要とされる各種袋体に適用でき、例えば枕カバーにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ダニ対策が必要とされる布団カバーや布団側などの袋体に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る袋体の一例の概略図である。
【図2】本発明の袋体の製法の手順を示す説明図であって、側生地の間に熱接着テープを配置して挟み込んだ状態を示す。
【図3】同説明図であって、側生地をロック(インター)縫製により縫合した状態を示す。
【図4】同説明図であって、側生地とファスナー生地との間に熱接着テープを配置して挟み込んだ状態を示す。
【図5】同説明図であって、側生地を本縫い縫製により縫合した状態を示す。
【図6】縫製部に隙間が生じている状態を模式的に示す図である。
【図7】縫製部が融着層により密着されて隙間が消失した状態を模式的に示す図である。
【図8】縫製により針穴が生じた状態を模式的に示す図である。
【図9】針穴が融着層により塞がた状態を模式的に示す図である。
【図10】特許文献1の提案に係る袋体の要部断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 布団カバー
2 表側生地
3 裏側生地
4 熱接着テープ
5 ファスナー生地
6 隙間
8 融着層
9 針穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製部が融着層により接着されてなることを特徴とする袋体。
【請求項2】
下糸に溶着糸または熱接着糸が用いられ、前記溶着糸または熱接着糸が溶着または熱接着されてなることを特徴とする請求項1記載の袋体。
【請求項3】
針穴が融着層により塞がれていることを特徴とする請求項1記載の袋体。
【請求項4】
針穴が溶着された溶着糸または熱接着された熱接着糸によっても塞がれていることを特徴とする請求項3記載の袋体。
【請求項5】
袋体が、布団カバー、布団側または枕カバーとされてなることを特徴とする請求項1記載の袋体。
【請求項6】
縫製部が融着層により接着されてなる袋体の製法であって、
表側生地と裏側生地との間に熱接着テープを配置する手順と、
前記生地の熱接着テープが配置された個所を縫製する手順と、
縫製部を加熱して熱接着テープを溶融し、同縫製部を融着する手順
とを含むことを特徴とする袋体の製法。
【請求項7】
表側生地とファスナー生地との間に熱接着テープを配置する手順と、
裏側生地とファスナー生地との間に熱接着テープを配置する手順と、
前記生地の熱接着テープが配置された個所を縫製する手順と、
縫製部を加熱して熱接着テープを溶融し、同縫製部を融着する手順
とが付加されていることを特徴とする請求項6記載の袋体の製法。
【請求項8】
下糸が溶着糸または熱接着糸とされ、熱接着テープを溶融時に前記溶着糸が溶着され、または熱接着糸が熱接着されることを特徴とする請求項6または7記載の袋体の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−119194(P2009−119194A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299484(P2007−299484)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(507068350)日の本寝具株式会社 (1)
【Fターム(参考)】