説明

袖パネル付きドアの枠構造

【課題】袖付きドア枠1の納まりにおいて、室内側見込み面域2a1を広幅に形成しなくとも、袖パネル31の背面側に収納スペース32の領域を大きく形成でき、遮音性や断熱性などが損うことなく、収納スペース32を大きく必要とする演出アイテムなどの採用を可能とし、各玄関先機能部の室内側からの保守点検や郵便物の出し入れ等を可能とする。
【解決手段】袖付きドア枠1に、ドア本体21表面を室内側に奥行きをもって面落ちさせる余剰延出面域2b2を形成し、袖部3を、余剰延出面域2b2と隣接する対向面域を、袖パネル31が装着される収容スペースとし、袖パネル31の背面側となるドア納まり面域2b1と隣接する対向面域を、部材等の収納スペース32として前後にスペース配分する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンションなどの集合住宅に採用される袖パネル付き玄関ドアにかかり、詳しくは、ドア枠内に、ドア本体が装着されるドア開口部と、任意に組み合せされる複数種類の玄関先機能部を備えたユニット型の袖パネルが装着される袖部とが一体的に隣接される袖パネル付きドアの枠構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マンションなどの集合住宅の各玄関ドアの袖壁面に、照明部、表札部、インターホン部、新聞受け部、郵便受け部等の各種玄関先機能部を備えたエントランスユニット単体品が採用されるが、近年におけるこのような集合住宅では、袖壁面に取り付けるものだけでなく、上枠と左右の袖側・錠前側縦枠(戸先側縦枠)、吊り元側縦枠からなるドア枠内に、ドア本体が装着されるドア開口部と、ユニット型の袖パネルが装着される袖部とを隣接した一体型の袖パネル付きドアが普及している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
ところで、これら従来における袖部は、何れも室内側において、その大半部分を覆う状態で吊り元側縦枠と対称に内壁仕上げされるが、防火性、断熱性、耐震性、遮音性、取付強度などを考慮して躯体への取付けは、特許文献1の図3に示すように、躯体を、上枠、左右縦枠の外周枠の幅全体に対応して開口するのではなく、近年では、特許文献2、3の図3に示すように、躯体の室内側部分を残してL字状に切欠開口し、できるだけ袖部が露出しないようその過半部(例えばサムターン部分)だけを外観させ、全体を飲み込む状態で固定したものとなっている。
そして、特許文献2、3のものでは、この様な躯体開口に固定される袖部の枠構造として、左右の袖側縦枠と吊り元側縦枠の間に錠前側縦枠(中間縦枠)を設け、袖側縦枠と錠前側縦枠との空間をモルタル仕上げや戸先側縦枠として一体化させるなどして塞ぐよう枠組みすることで、この袖側縦枠や戸先側縦枠の室外側面に、袖パネルを配置するためのパネル厚相当分の凹面部を形成させ、この凹面部に各種玄関先機能部の配線孔や装着開孔等を設けておき、袖パネルを、凹面部から僅かに離間した状態で開閉可能に取り付けすることで、ドア枠(戸先側縦枠)が取り付けられた後であっても各種玄関先機能部の配線等のメンテナンスが行えるようになっている。
【0004】
しかしながら、これらのものは、各種の玄関先機能部を装備させたユニット型の袖パネルが、住宅の玄関先を装飾し演出する演出アイテムとして機能し、その装飾機能の充実化が求められる昨今において、開閉可能な袖パネルの背面側を凹面部で塞ぐ構成となっているため、袖パネルの背面側におけるスペースを大きく利用した装飾物などの演出アイテムの採用や、袖パネルの背面側全体にスペースを確保して有効利用したいという要求に対応することができない構造的な問題がある。そこで、袖部だけを室内側に張出形成させてスペースを確保することも提案されるが、外周枠との枠組みや建付け納まりとの関係もあって、他の上下枠、縦枠も室内側に張出成形しなければならず、また、室内側の戸当り部から錠前側見込み面の幅が広幅になりすぎた状態で外観露出する結果となり、上記したように袖部を躯体に対してできるだけ露出させない取付け構造を維持することができず、袖パネル背面の遮蔽面がなくなり外周隙間から外気が進入して、室内側の錠前側見込み面域における遮音性や断熱性などが損なわれるだけでなく、下枠の沓摺り面も広幅になって傷跡がつき易くなり外観を損なう危惧がある。

【特許文献1】特開2007−32150号公報
【特許文献2】特開2007−92407号公報
【特許文献3】特開2009−30275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き問題点を一掃すべく創案されたものであって、ドア枠内にドア本体と隣接する袖部を備えるものでありながら、袖パネルの背面側に部材等の収納スペースを室内側に張出形成させても、当該スペースに連通して形成される室内側見込み面域が殊更広幅とならずに、袖パネルの背面側全体を大きく有効利用したスペースを形成することができ、袖パネル背面側スペースを大きく必要とする演出アイテムなどの採用を可能とし得るばかりか、各玄関先機能部の室内側からの保守点検や郵便物の出し入れ等を可能ならしめ、遮音性や断熱性などが損なわれることもなく、しかも、袖パネルとドア本体とが外周枠内に中間枠部材を挟んだ周縁で囲まれた態様で、それぞれが独立して装着された美的外観を得ることのできる袖パネル付きドアの枠構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の袖パネル付きドアの枠構造は、外周枠となる上枠と左右の袖側・吊り元側縦枠内に、ドア本体が装着されるドア開口部と、複数種類の玄関先機能部が装備されるユニット型の袖パネルが装着される袖部とを隣接して備える袖パネル付きドアの枠構造であって、前記上枠と両縦枠は、それぞれの室外側壁の仕上げ面から突出する外周見付け部が面一となるよう枠組し、前記ドア開口部と袖部間に、錠前側見込み部を形成する中間枠部材を、その中間見付け部が前記外周見付け部と略面一となるよう介在せしめて、それぞれの領域を区画すると共に、前記上枠と吊り元側縦枠と中間枠部材は、それぞれドア開口部の戸当り部から各見付け部間に形成される室外側見込み面の面域を、前記ドア本体が装着される納まり幅を有するドア納まり面域と、該ドア納まり面域から更に袖パネルを飲み込み収容可能な厚さ幅を存して室外側に延出され、前記各見付け部からドア本体表面を室内側に奥行きをもって面落ちさせる余剰延出面域とを有して形成せしめ、前記袖部は、前記余剰延出面域と隣接する対向面域を、前記袖パネルが装着される収容スペースとし、袖パネルの背面側となる前記ドア納まり面域と隣接する対向面域を、部材等の収納スペースとして、前後にスペース配分されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記のように構成したことにより、ドア枠内にドア本体と隣接する袖部を備えるものでありながら、袖パネルの背面側に部材等の収納スペースを室内側に張出形成させても、当該スペースに連通して戸当り部から室内側に形成される中間縦枠の室内側見込み面域が殊更広幅とならずに、袖パネルの背面側全体を大きく有効利用したスペースを形成することができ、袖パネルの限られた面域内において、その背面側スペースを大きく必要とする装飾物などの演出アイテムを、その前面側に突設することなく採用し得るばかりか、各玄関先機能部の室内側からの保守点検や郵便物の出し入れ等を可能ならしめ、遮音性や断熱性などが損なわれることもない。しかも、袖パネルは、その外周を上枠、袖側縦枠、中間枠部材の各見付け部が周縁となって囲まれて装着されるので、袖パネル表面に人造大理石板や凹凸面のある比較的板厚の装飾材を設けても角部が保護されて、出入りに際して不用意に傷つける危惧が回避されると共に、新聞受け部やディスプレイ機能部などを収納スペース内部に大きく窪ませて袖パネルの装飾表面と一体感をもたせ、袖パネル31自体を立体的に形成することができ、玄関先を装飾し演出する演出アイテムとしての機能を向上することができる。更に、ドア本体は、その外周を囲む各見付け部からドア本体表面に至る余剰延出面域が加えられた広幅な室外側見込み面域によって、室内側に奥行き感をもった立体的な外観納まりとすることができ、もって、袖パネルとドア本体とが外周枠内に中間枠部材を挟んだ周縁で囲まれた態様で、それぞれが独立して装着された美的外観を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を好適な実施の形態として例示する袖パネル付きドアの枠構造を図面に基づいて詳細に説明する。図1は袖パネル付き玄関ドアの全体正面図、図2はドア開口部の縦断面図、図3は袖部の縦断面図、図4は袖パネル付き玄関ドアの横断面図である。
図1〜4において、1はドア枠であって、該ドア枠1は、上枠11、下枠12、吊り元側縦枠13、中間縦枠14、袖側縦枠15とで枠組みされ、ドア本体21が開閉可能に装着されるドア開口部2と、袖パネル31が装着される袖部3とを隣接して備えるよう形成され、ドア開口部2の外周には、ドア本体21の外周と対面する戸当りゴム1bが取着される戸当り部1aが形成されている。ドア本体21は、開き戸であり、戸尻側をピボットヒンジ21aを用いて上枠11および下枠12に回動自在に装着することでドア開口部2を開閉する。ドア本体21の戸先側には、取手21bの回動操作や押操作に連動して戸先側端面より図示しない出没自在のラッチが設けられている。上枠11と両縦枠13、15は、それぞれの室外側壁の仕上げ面から僅かに突出する外周見付け部11a、13a、15aが面一となるよう躯体に取り付けられる
【0009】
ドア開口部2と袖部3との間には、中間縦枠14と共に図示しないラッチの出没面となる錠前側に中間見付け部14aと錠前側見込み部14bを形成する中間枠部材141が配設される。中間枠部材141は、中間見付け部14aが外周見付け部11a、13a、15aと面一となるよう介在され、ドア開口部2と袖部3との領域を区画し、上側見込み部11b、吊り元側見込み部13bと共に、ドア開口部2の内周面に戸当り部1aを境に室内側見込み面2aと室外側見込み面2bを形成して中間縦枠として機能している。また、中間枠部材141は、中間縦枠14と共に戸当り部1aの戸当りゴム1bを取着する戸当りポケットを過半ずつ形成するように中間縦枠14にビス固定されて取り付けられ、戸当りゴム1bを取り外した状態で、ビスの緊緩操作によりビス固定を解除すれば取り外せるようになっている。なお、本実施例では、袖パネル31に固定されているが、中間縦枠14として一体成形しても良い。
【0010】
上枠11と吊り元側縦枠13と中間枠部材141は、それぞれドア開口部2の戸当り部1aから各見付け部11a、13a、14a間に形成される室外側見込み面2bの面域が、ドア本体21が装着される納まり幅を有する通常のドア納まり面域2b1に加え、更に袖パネル31を飲み込み収容可能な厚さ幅分を室外側に延出せしめた余剰延出面域2b2を有して長幅に形成され、ドア本体21を、その表面が各見付け部11a、13a、14aから室内側に奥行きをもって大きく面落ちさせた状態で装着されている。なお、外周見付け部11a、13a、15aと中間見付け部14aは、金属板を180゜折曲して密着せしめた線状に形成されている。
【0011】
袖部3は、上下枠11、12、中間縦枠14および中間枠部材141、袖側縦枠15とからなり、中間縦枠14は、袖側縦枠15に延出固定する仕切り板142を介して一体化され、室外側が開口する凹状に形成され、その開口部前面に袖パネル31が装着され、その背面側に収納スペース32を備えて形成されると共に、室内側部分を残してL字状に切欠開口された躯体に、その過半部を飲み込む状態で、収納スペース32内の中間縦枠14に設けられた電気錠4(手動錠でも良い)のサムターン41の部分を外観露出させた状態で固定されている。
【0012】
つまり、袖部3は、余剰延出面域2b2と隣接する対向面域を、袖パネル31が装着される収容スペースとし、袖パネル31の背面側となるドア納まり面域2b1と隣接する対向面域を、各玄関先機能部の部材や配線等の収納スペース32として、ドア本体21と袖パネル31とが重合して対向隣接しない状態で、前後にスペース配分されて形成されている。この様にスペース配分すると、収納スペース32は、余剰延出面域2b2の延出幅の増加させると、その増加に伴って相対的にドア本体21の表面から室外側に及んでその領域を拡張され、余剰延出面域2b2に対向隣接した構成とすることができるので、余剰延出面域2b2の増減設定により、収納スペース32内の領域を変更することができる。また、袖パネル31を余剰延出面域2b2と隣接する対向面域に装着させた状態で、その背面側に形成される収納スペース32全体の領域を、戸当り部1aから下枠12の幅分(沓摺り幅分)までの一般的な室内側見込み面域2a1の幅分に加えて、ドア納まり面域2b1の幅分全域を割り当てでき、大きな領域として確保することができる。
【0013】
また、中間縦枠14の室内側に露出する面域には、任意の幅に縦方向全体を又は任意部分の複数カ所を切欠開口して、収納スペース32に連通する点検口321が形成され、点検口321を塞ぐ戸板33が躯体側の上下枠11、12にピボットヒンジ33aを介して開閉可能に取り付けられている。なお、本実施例における戸板33は平断面視C(コ)字状に形成され、必要において断熱材が設けられるよう所定の厚さを有し、上枠11、吊り元側縦枠13、中間縦枠14により形成される室内側見込み面2a’が、収納スペース32よりも室内側に、それぞれ略戸板33厚分だけ延出形成されている。これにより、戸板33を室内側から開閉操作して、収納スペース32内を、各玄関先機能部の保守点検や部材の収納が行える収納ボックスとして利用できるようになっている。
【0014】
次に、袖部3の具体的構成について説明する。図5は袖パネルの内部構成を示す全体縦断面図、図6は照明部とディスプレイ機能部の正面図、図7はディスプレイ機能部の内部構成を示す横断面図、図8は照明部とディスプレイ機能部の内部構成を示す縦断面図である。なお、図7に示す実施例は、点検口321の開口幅を図4に示す実施例よりも広くした納まり例を示すものである。これらの図に示すように、袖パネル31には、各玄関先機能部として、一般的な照明部51、表札部52、インターホン部53、新聞受け部54が備えられる他、郵便受け部等を予め用意し、これらの中から任意のものを選択して組み付けると共に、これら各玄関先機能部に加え、ディスプレイ機能部55を備えたユニット型にて構成される。
【0015】
袖パネル31は、ブラケット板311に、各玄関先機能部がセットできるよう所定の開口が形成されており、各玄関先機能部と共に、その表面に人造大理石が設けられた化粧パネルとして形成され、上枠11と袖側縦枠15と中間枠部材141とにより形成される外周見付け部11a、15aと中間見付け部14aが周縁となって縁取りされて納められ、ピボットヒンジ31aを介して上下枠11、12に、通常時には開閉不能にビス固定され、ビス固定を解除することで保守時に開閉/着脱可能に装着されている。つまり、本実施例においる中間枠部材141は、ブラケット板311に取着されており、前記した戸当り部1aの戸当りゴム1bを取り外した状態で、ビスの緊緩操作によりビス固定を解除すれば、袖パネル31に追随して取り外せるようになっている。なお、中間枠部材141は、中間縦枠14に一体的に形成して、袖パネル31(ブラケット板311)だけを袖部3に室内側からビス固定し、これを解除することで開閉/着脱可能に構成しても良く、また、袖パネル31の材質は人造大理石に限定されず、任意の材質のものであっても良いことは勿論である。
【0016】
照明部51は、外灯用光源としてLED照明511が用いられ、LED照明511発光により玄関照明として機能するようになっており、ディスプレイ機能部55は、この照明部51の下面域となる袖パネル31に開口部551を形成し、この開口部551の奥行き方向となる収納スペース32内に突出形成される格納部552と、該格納部552のスペース内に着脱可能にセットされる所定のホルダ61に設けられる装飾物6とを備え、ホルダ61と共に格納部552内にセットされた装飾物6を、開口部551からその外面側周縁空間に臨ませて、或いは及ぶよう膨出させて、照明部51に設けられた反射板(図示しない)を介して照光される光源により、昼夜を問わずその存在を認識させ、光と影による演出効果が発揮できるよう構成される。格納部552の内周面には、袖パネル31の化粧面と同じ材質の人造大理石が用いられ、袖パネル31の表面と開口部551から奥行き方向に一体感をもって立体的に構成される。
【0017】
格納部552内の上部には、板材を側面視略し字状に折曲形成したフック片71が設けられ、装飾物6のホルダ61の上部には、板材を側面視略L字状に折曲形成した立上り部に係止孔が開孔された係止片72が設けられており、この係止片72がフック片71に対して係脱可能な係脱手段7として構成される。つまり、装飾物6を格納部552内にセットする際には、開口部551側からホルダ61を格納スペース内に入れて、係止片72をフック片71に係合させて装着セットし、また、一端セットされた装飾物6を取り替えたり、調整したい場合などには、ホルダ61を上方に持ち上げて、係止片72をフック片71から外し、下方を手前側に傾斜させるようにして取り出すことで、開口部551側から出し入れ操作できるようになっている。
【0018】
本実施例における装飾物6は、ホルダ61内に設けられる保水マット62に植栽される植物60により形成される。この保水マット62に植栽される植物60は、多種多様の草花などによる植栽パターンにより壁面に適用可能に造作された市販品であり、住居者の好みに応じて購入採用できるが、袖パネル31の背面側スペースを大きく利用する必要がある。また、格納部552の上方、即ち、収納スペース32内に突出する格納部552の上面ブラケット板311に、底部側に給水管631を有した給水容器63を載置して設け、給水管631の先端側を、格納部552の上方に穿設した挿入孔に挿通させ、ホルダ61の上部両側を開口形成させた水受け部611に臨ませて配設してある。この様に構成すると、室内側から戸板33を開戸して、給水容器63に給水することにより、給水管631を介して格納部552にセットされたホルダ61内に供給して、植物60を育成することができる。なお、袖壁面に取り付けした場合には、開口部551側からホルダ61の水受け部611に直接給水すれば良く、装飾物6としては、造花、工芸品、絡繰り時計などの立体的な造形物や造作物であっても良い。
【0019】
表札部52は、開口部551の中間域となる上側と下側のそれぞれに帯状の板材よりなる室名札部52aと室番号札部52bを配置して構成される。室名札部52aと室番号札部52bは、それぞれ表札として機能する面が袖パネル31の表面から上面視略コ字状に突出するよう、開口部551と略同幅の表札面521とその両側に折曲する折曲片522により形成され、両折曲片522の基端側を段差状に折曲させた部分を格納部552の裏面側の側板にネジ止めして取付けられている。
【0020】
つまり、表札面521は、袖パネル31の表面から突出する折曲片522の所定の長さ幅をもって離間配置され、格納部552のホルダ61の収容スペースと共に植物60を膨出させることのできる空間として機能し、装飾物6の不用意な落下を防止する機能も兼ね備え、植物60の育成を阻害することが無く、植物60が表札面521を覆い隠すことなく視認でき表札機能部の存在を阻害することもない。なお、表札部52は、コ字状に折曲形成したが湾曲状に形成しても良く、また、開口部551の中間域となる上下に配置したが、開口部551の近傍上側域または下側域に従来と同様の態様で設けても良い。
【0021】
インターホン部53は、図示しないインターホン装置(子機)が内装される箱状のインターホンベース531と、該インターホンベース531の前面を覆う前パネル532とを備えて構成されている。前パネル532には、インターホン装置の操作用ボタン533や、音声伝達用の孔534が穿設されており、孔534を介したインターホン装置の操作により、室内側に設置される親機との通話が可能になる。
また、インターホン部53には、カードキー操作部43と共に電気錠4が並設されており、前パネル532と材質を同じくして面一に設けられた前カバー411を開閉操作することで、シリンダ錠42の図示しないデットボルトを出没操作できるようになっている。
【0022】
新聞受け部54は、格納部552と同様、その内周面に、袖パネル31と同じ材質の人造大理石が用いられ、袖パネル31の化粧表面と開口部541から奥行き方向に立体感をもって一体的に新聞受け箱543を構成している。開口部541の中間域には、袖パネル31表面と同面位置に新聞受けバー542が懸架して設けられており、上部から投入された新聞を、新聞受けバー542で受け止めて、新聞受けスペースに収容できるようになっている。なお、新聞受け箱543の室内側底面板を傾斜開閉できるようにして、戸板33の開閉操作で室内側からの郵便物等の取り出しを行えるようにしても良い。
【0023】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、外周枠となる上枠11と左右の袖側・吊り元側縦枠15、13内に、ドア本体21が装着されるドア開口部2と、複数種類の玄関先機能部が装備されるユニット型の袖パネルが装着される袖部3とを隣接して備えるのであるが、本発明におけるドア枠1の構造は、上枠11と両縦枠13、15は、それぞれの室外側壁の仕上げ面から突出する外周見付け部11a、13a、15aが面一となるよう枠組し、ドア開口部2と袖部3との間に、錠前側見込み部14bを形成する中間枠部材141を、その中間見付け部14aが外周見付け部11a、13a、15aと略面一となるよう介在せしめて、それぞれの領域を区画すると共に、上枠11と吊り元側縦枠13と中間枠部材141は、それぞれドア開口部2の戸当り部1aから各見付け部11a、13a、14a間に形成される室外側見込み面2bの面域を、ドア本体21が装着される納まり幅を有するドア納まり面域2b1と、該ドア納まり面域2b1から更に袖パネル31を飲み込み収容可能な厚さ幅を存して室外側に延出され、各見付け部11a、13a、14aからドア本体21表面を室内側に奥行きをもって面落ちさせる余剰延出面域2b2とを有して形成せしめ、袖部3は、余剰延出面域2b2と隣接する対向面域を、袖パネル31が装着される収容スペースとし、袖パネル31の背面側となるドア納まり面域2b1と隣接する対向面域を、部材等の収納スペース32として、前後にスペース配分されて構成してある。
【0024】
この様に構成すると、ドア枠1内にドア本体21と隣接する袖部3を備えるものでありながら、袖パネル31の背面側に部材等の収納スペース32を室内側に張出形成させても、当該スペース32に連通して戸当り部1aから室内側に形成される中間縦枠14の室内側見込み面域2a1が殊更広幅とならずに、袖パネル31の背面側全体を大きく有効利用したスペースを形成することができ、袖パネル31の限られた面域内において、その背面側スペースを大きく必要とする装飾物6などの演出アイテムを、その前面側に突設することなく採用し得るばかりか、各玄関先機能部の室内側からの保守点検や郵便物の出し入れ等を可能ならしめ、遮音性や断熱性などが損なわれることもない。しかも、袖パネル31は、その外周を上枠11、袖側縦枠15、中間枠部材141の各見付け部11a、14a、15aが周縁となって囲まれて装着されるので、袖パネル31の表面に人造大理石板や凹凸面のある比較的板厚の装飾材を設けても角部が保護されて、出入りに際して不用意に傷つける危惧が回避されると共に、新聞受け部54やディスプレイ機能部55などを収納スペース32内部に大きく窪ませて袖パネル31の装飾表面と一体感をもたせて袖パネル31自体を立体的に形成することができ、玄関先を装飾し演出する演出アイテムとしての機能を向上することができる。更に、ドア本体21は、その外周を囲む各見付け部11a、13a、14aからドア本体21表面に至る余剰延出面域2b2が加えられた広幅な室外側見込み面2bによって、室内側に奥行き感をもった立体的な外観納まりとすることができ、もって、袖パネル31とドア本体21とが外周枠内に中間枠部材を挟んだ周縁で囲まれた態様で、それぞれが独立して装着された外観を得ることができる。
【0025】
また、袖パネルの背面側に形成される収納スペース32は、余剰延出面域2b2の延出幅の増加に伴って相対的にドア本体21の表面から室外側に及んで、余剰延出面域2b2に対向隣接して配置されるので、余剰延出面域2b2の増減設定により、ドア枠1や中間枠部材141を形成するだけで収納スペース32内の領域を変更することができるだけてなく、袖パネル31を余剰延出面域2b2と隣接する対向面域に装着させた状態で、その背面側に形成される収納スペース32全体の領域を、戸当り部1aから下枠12の幅分(沓摺り幅分)までの一般的な室内側見込み面域2a1の幅分を変更することなく、当該幅分に加えて、ドア納まり面域2b1の幅分全域を割り当てでき、大きなスペース領域として確保することができる。
【0026】
また、袖パネル31は、上枠11と袖側縦枠15と中間枠部材141とにより形成される各見付け部11a、13a、14aが周縁となって装着されるので、袖パネル31を各見付け部11a、13a、14aから隙間をもって僅かに面落ちした状態で装着することができ、バランスのとれた納まりの外観を得ることができ、しかも、凹凸のある装飾面で造作された袖パネル31の適用が可能となり、そのバリエーション化が図られて観賞性を高めることができる。
【0027】
中間枠部材141は、袖パネル31に取着されて別部材で構成されているので、中間縦枠14に一体的に形成した場合に比し、施工後に損傷等の不足の事態によって外観を損ねても、その補修や取り替え作業を容易に行うことができる。
【0028】
袖パネル31は、通常時には開閉不能にビス固定され、該ビス固定を解除することで保守時に開閉/着脱可能に装着されているので、その取り付け工事の際に、各玄関先機能部の装着や配線工事に時間的ズレを生じても、室外側から容易に作業を行うことができる。
【0029】
外周見付け部11a、13a、15aと中間見付け部14aは、金属板を180゜折曲して密着せしめた線状に形成されているので、ドア本体21と袖パネル31とを、中間見付け部14aを介して近接させた状態で隣設配置することができ、建付け開口に制約を受ける袖パネル付きマンションドアであっても、戸建て住宅に採用される方立て枠と同様に両者の区画機能を得ることができる。
【0030】
袖パネル31は、複数種類の玄関先機能部51〜54に加え、さらにディスプレイ機能部55を備えて構成され、袖部3には、収納スペース32の室内側を塞ぐ戸板33が開閉可能に設けられ、これら機能部を室内側から保守点検可能に構成されているので、施工完了後においてもメンテナンス作業を行うことができるだけでなく、郵便物の取り出しも室内側から行うことを可能ならしめている。特に、給水容器63内への水供給作業が室内側から行え、踏み台などを持参してわざわざ室外に出て給水作業を行う煩わしさが解消され、給水作業を何時でも安易に行うことができる。なお、戸板33の幅や個数は任意である。
【0031】
ディスプレイ機能部55は、照明部51の下面域となる袖パネル31に開口部551を形成し、この開口部551の奥行き方向に収納スペース32内に突出形成される格納部552と、該格納部552内に着脱可能にセットされる所定のホルダ61を有する装飾物6とを備え、ホルダ61と共に格納部552内にセットされた装飾物6を、開口部551から袖パネル31表面の周縁空間に臨ませて膨出せしめ、照明部51による照光演出を可能とすべく構成されている。
【0032】
そのため、ドア枠1内という限られた領域に形成される袖部3であっても、袖パネル31の背面側スペースを大きく必要とする装飾物6などの演出アイテムを、従来、照明部51の下面域に配置されていた表札部52の専有領域に、その前面側に突設された花台などの突出物を何ら存在させることなく、装飾物6となる植物60などの観賞用となる部分側だけを袖パネル31の前面側に膨出させた状態で、収納スペース32内に形成した装飾物6のホルダ61を格納部552内に着脱自在にセット保持し得て、ドア本体21の開戸振動などによる倒れや落下が防止できるようになるだけでなく、人の出入りの際などに、謝って接触してしまう危惧を確実に回避できる高さ位置に、表札部52と共に、或いは表札部52と並設してディスプレイ機能部55を配置することができる。その結果、インターホン部53などの各玄関先機能を何ら妨げることなく、訪問者が最も注視する表札部52域やその周縁の観賞性を高めることができるようになり、しかも、照明部51の外灯用光源を利用して、袖パネル31の前面側に膨出した装飾物6を直接的に照らすことができるので、装飾物6自体の存在感を奥行き感をもたせて一層際立たせる態様で視認させることができ、かつ、開口部551の周縁や下面域に及ぶ袖パネル31面域に対しても装飾機能を拡張せしめて光と影による演出効果を発揮することができ、さらに、格納部552内にセット可能な植物、造花、工芸品、絡繰り時計などの立体的な造形物や造作物を装飾物6として任意に選択し、住居者の好みに応じた採用の自由度を高めることができる。
【0033】
また、前記ホルダ61は、収納スペース32内を利用することで、開口部551側からの出し入れ操作で格納部552のスペース内にセット可能に構成されているので、格納部552内にセット可能な植物、造花、工芸品、絡繰り時計などの立体的な造形物や造作物であれば、住居者の好みに応じた装飾物6を選択してセットでき、植物60が枯れた際に取り替えてディスプレイ機能を、常に最善な形態で維持することができ、外観を損なうことがない。
【0034】
また、前記照明部51は、その光源としてLED照明511を備える一方、装飾物6を、ホルダ61内に設けられる保水マット62に植栽される植物60で形成し、該植物60を、LED照明511の照射により育成可能に構成してあるので、照明部51の外灯用光源を、袖部3の前面側に膨出した植物60に照射させて、照明部51による照光演出と共に、植物60を育成するための光源として利用することができるので、マンションなどの日光の当たらない玄関先であっても、ディスプレイ機能部55に植物60を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】袖パネル付き玄関ドアの全体正面図である。
【図2】ドア開口部を示す全体縦断面図である。
【図3】袖部を示す全体縦断面図である。
【図4】袖パネル付き玄関ドアの全体横断面図である。
【図5】袖パネルの内部構成を示す全体縦断面図である。
【図6】照明部とディスプレイ機能部の正面図である。
【図7】ディスプレイ機能部の内部構成を示す横断面図である。
【図8】照明部とディスプレイ機能部の内部構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ドア枠
1a 戸当り部
1b 戸当りゴム
11 上枠
11a 上側見付け部
11b 上側見込み部
12 下枠
13 吊り元側縦枠
13a 吊り元側見付け部
13b 吊り元側見込み部
14 中間縦枠
14a 中間見付け部
14b 錠前側見込み部
141 中間枠部材
142 仕切り板
15 袖側縦枠
15a 袖側見付け部
2 ドア開口部
2a 室内側見込み面
2a1 室内側見込み面域
2b 室外側見込み面
2b1 ドア納まり面域
2b2 余剰延出面域
21 ドア本体
21a ピボットヒンジ
21b 取手
3 袖部
31 袖パネル
31a ピボットヒンジ
311 ブラケット板
32 収納スペース
321 点検口
33 戸板
33a ピボットヒンジ
4 電気錠
41 サムターン
411 前カバー
42 シリンダ錠
43 カードキー操作部
51 照明部
511 照明
52 表札部
52a 室名札部
52b 室番号札部
521 表札面
522 折曲片
53 インターホン部
531 インターホンベース
532 前パネル
533 操作用ボタン
534 孔
54 新聞受け部
541 開口部
542 新聞受けバー
543 新聞受け箱
55 ディスプレイ機能部
551 開口部
552 格納部
6 装飾物
60 植物
61 ホルダ
611 水受け部
62 保水マット
63 給水容器
631 給水管
7 係脱手段
71 フック片
72 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周枠となる上枠と左右の袖側・吊り元側縦枠内に、ドア本体が装着されるドア開口部と、複数種類の玄関先機能部が装備されるユニット型の袖パネルが装着される袖部とを隣接して備える袖パネル付きドアの枠構造であって、
前記上枠と両縦枠は、それぞれの室外側壁の仕上げ面から突出する外周見付け部が面一となるよう枠組し、
前記ドア開口部と袖部間に、錠前側見込み部を形成する中間枠部材を、その中間見付け部が前記外周見付け部と略面一となるよう介在せしめて、それぞれの領域を区画すると共に、
前記上枠と吊り元側縦枠と中間枠部材は、それぞれドア開口部の戸当り部から各見付け部間に形成される室外側見込み面の面域を、前記ドア本体が装着される納まり幅を有するドア納まり面域と、該ドア納まり面域から更に袖パネルを飲み込み収容可能な厚さ幅を存して室外側に延出され、前記各見付け部からドア本体表面を室内側に奥行きをもって面落ちさせる余剰延出面域とを有して形成せしめ、
前記袖部は、前記余剰延出面域と隣接する対向面域を、前記袖パネルが装着される収容スペースとし、袖パネルの背面側となる前記ドア納まり面域と隣接する対向面域を、部材等の収納スペースとして、前後にスペース配分されていることを特徴とする袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項2】
前記袖パネルの背面側に形成される収納スペースは、前記余剰延出面域の延出幅の増加に伴って相対的にドア本体の表面から室外側に及んで、余剰延出面域に対向隣接することを特徴とする請求項1に記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項3】
前記袖パネルは、前記上枠と袖側縦枠と中間枠部材とにより形成される各見付け部が周縁となって装着されることを特徴とする請求項1または2に記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項4】
前記中間枠部材は、前記袖側縦枠と吊り元側縦枠間に設けられた中間縦枠に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項5】
前記中間枠部材は、前記袖パネルに取着されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項6】
前記袖パネルは、通常時には開閉不能にビス固定され、該ビス固定を解除することで保守時に開閉/着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項7】
前記外周見付け部と中間見付け部は、金属板を180゜折曲して密着せしめた線状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項8】
前記袖パネルは、前記複数種類の玄関先機能部に加え、さらにディスプレイ機能部を備えて構成され、前記袖部は、前記収納スペースの室内側を塞ぐ戸板が開閉可能に設けられ、これら機能部を室内側から保守点検可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の袖パネル付きドアの枠構造。
【請求項9】
前記ディスプレイ機能部は、照明部の下面域となる袖パネルに開口部を形成し、該開口部の奥行き方向に前記収納スペース内に突出形成される格納部と、該格納部内に着脱可能にセットされる所定のホルダを有する装飾物とを備え、前記ホルダと共に格納部内にセットされた装飾物を、前記開口部から袖パネル表面の周縁空間に臨ませて膨出せしめ、前記照明部による照光演出を可能とすべく構成されていることを特徴とする請求項8に記載の袖パネル付きドアの枠構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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