説明

被り物用消臭抗菌吸湿具

【課題】高い吸湿効果が得られ、これにより被り物の内部空間の蒸れを防止するとともに、消臭性および抗菌性を有した被り物用消臭抗菌吸湿具を提供する。
【解決手段】竹繊維を含む竹布袋14に複数の竹炭ブロック17を収納したので、被り物用消臭抗菌吸湿具10の使用時、頭皮から蒸散した汗や臭い成分を各竹炭ブロック17および表布12に吸着できる。よって、制帽11の内部空間aが蒸れ難く、消臭性、抗菌性が得られる。しかも、内部空間aを浮遊する雑菌などは、竹炭ブロック17、竹繊維、竹炭繊維と接触することで、竹、竹炭の抗菌作用により減菌される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は被り物用消臭抗菌吸湿具、詳しくは頭に被る帽子やヘルメットなど被り物の内部空間に装着され、かつ使用者の頭皮から蒸散した汗を吸着することで、この内部空間の蒸れを防ぎ、帽子への汗ジミを防止可能な被り物用消臭抗菌吸湿具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帽子やヘルメットなどの被り物の内部空間を吸湿する物として、例えば特許文献1の頭爽快具が知られている。これは、一面側の通気性シートと他面側の可撓性シートとの周縁部同士を接合して小袋体とし、その内部空間の全体に備長炭の粒体(平均5mm程度に破砕されて尖った角を面取りされた備長炭)を充填したものである。
【0003】
使用時には、例えば制帽(被り物)の天部分の内面に、粘着シートを介して、小袋体の他面(可撓性シート側の面)を貼着し、頭爽快具を帽子に固定する。そのため、制帽の着用時、頭皮から蒸散した汗は通気性シートを通して備長炭に吸着され、制帽の内部空間の蒸れが防止される。
【0004】
また、別の従来技術として、例えば特許文献2の帽子ヘルメット装着型乾燥・脱臭用具が知られている。これは、シリカゲルや活性炭といった乾燥剤を不織布により挟み、その外周部を密着させた乾燥剤シートである。これを、保管中の帽子内やヘルメット内に装着することで、帽子やヘルメットの内部空間の脱臭乾燥を行うものである。
【特許文献1】特開2000−303242号公報
【特許文献2】特開2005−305325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、備長炭の粒体が袋全体に充填された小袋体を制帽の天部分に貼着するため、小袋体の重量が嵩み、制帽の保管中に備長炭の重さで制帽が型崩れし易いとともに、制帽が重くて長時間の着用には不向きであった。
しかも、制帽の使用時には、制帽の天部分と使用者の頭頂部とが接触する。このとき、小袋体には、袋全体に粒体が充填されている。そのため、制帽を長時間被っていると、使用者の頭部、殊に小袋体の荷重が最も作用し易い頭頂部において、頭皮に粒体と接触した痕(方形痕)が残り易かった。さらに使用者の頭部が付形用の土台となり、備長炭の角張った形状が制帽の天部分に転写され、目的上、重視される制帽の外観を損ねていた。
また、特許文献2では、乾燥剤にシリカゲルや活性炭が採用されていた。これらの原料は、吸湿効果(乾燥効果)や脱臭効果は有しても、雑菌の繁殖を抑える抗菌効果までは備えていなかった。
【0006】
この発明は、高い吸湿効果が得られ、これにより被り物の内部空間の蒸れを防止するとともに、消臭性および抗菌性を有した被り物用消臭抗菌吸湿具を提供することを目的としている。
また、この発明は、竹炭ブロックや不織布パッドの紛失を防止することができる被り物用消臭抗菌吸湿具を提供することを目的としている。
さらに、この発明は、被り物の内部空間の通気性を高めることができ、かつ軽量化が図れることで、使用時に使用者の頭頂部に接触痕が付き難く、しかも被り物用消臭抗菌吸湿具を装着したまま被り物を保管した場合でも型崩れがし難い被り物用消臭抗菌吸湿具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、頭に被る被り物の内部空間に収納され、該内部空間の湿気を除去する被り物用消臭抗菌吸湿具において、竹繊維を含む布帛と、竹炭ブロックと、竹炭繊維を含む不織布パッドとのうち、少なくとも何れか1つを有した被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、被り物の使用時(着用時)、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分は、対応する竹繊維、竹炭ブロック、竹炭繊維にそれぞれ存在する多数の微細孔を通して、竹繊維、竹炭ブロック、竹炭繊維のうち、少なくとも1つに吸着される。これにより、被り物の内部空間の蒸れが防止されるとともに、消臭性および抗菌性を得ることができる。しかも、被り物の内部空間を浮遊する雑菌や、この内部空間の形成面に付着した雑菌は、竹繊維、竹炭ブロック、竹炭繊維の少なくとも1つと接触することで、竹繊維や竹炭の抗菌作用により減菌される。
【0009】
ここでいう吸湿とは、使用者の頭皮から蒸散した汗などを被り物の内部空間で吸着し、その内部空気を乾燥させることをいう。消臭とは不快な臭いを消すことをいう。抗菌とは細菌の繁殖を抑制することをいう。
被り物とは、使用者の頭頂部を含む頭部を被う物で、例えば各種の帽子(制帽、学生帽、キャップ、ハット、ハンチング、ベレー、2輪車用フルフェイスなど)、笠、ヘルメットなどを採用することができる。
被り物用消臭抗菌吸湿具には、竹繊維のみ、竹炭ブロックのみ、竹炭繊維のみが設けられてもよいし、これらのうち、何れか2つ(竹繊維と竹炭ブロック、竹繊維と竹炭繊維、竹炭ブロックと竹炭繊維)または3つ全てが設けられてもよい。例えば、竹繊維を原料とした表布と裏布とからなる布帛(織布など)の間に、所定厚さの竹繊維の綿をサンドイッチしたキルティング生地からなる被り物用消臭抗菌吸湿具でもよい。
【0010】
竹繊維とは、竹を原料としたセルロース繊維系のものをいう。竹繊維から布帛をつくることができる。例えば、野村産業株式会社の「バンブール(主にウール混)」、東レ株式会社の「爽竹(合成繊維混)」、倉敷紡績株式会社の「凛竹または紫竹(綿・ウールなどの天然繊維混)」、日本毛織の「ニッケル・バンブール(主にウール混)」などがそれである。
【0011】
布帛としては、織布、不織布、編布を採用することができる。織布、不織布および編布の目付は任意である。
布帛の形状は任意である。例えば、袋状でもよいし、平面視して円形、楕円形、三角形以上の多角形を有した平布でもよい。その他、任意形状の平布でもよい。
布帛の大きさは、例えば被り物の内部空間の大きさと略同じでもよいし、それより小さくてもよい。
被り物(被り物の内部空間)への布帛の取り付け方法としては、例えば、接着、縫着などの分離不能な固定方法を採用してもよい。また、各種の掛止部材(クリップ、面状ファスナ、ピン、ホック、フックなど)による掛止でもよい。
【0012】
竹炭繊維とは、竹炭を少なくとも一部に含んだ繊維である。これは、例えば長さ2mの竹を圧力釜に入れ、10気圧で爆砕して得ることができる(バン株式会社製の「竹のソナタ」など)。竹炭繊維は不織布パッドとして利用される。
不織布パッドとは、竹炭繊維を少なくとも構成繊維の一部に含むパッドである。不織布パッドは、強度を高めるためにプレス加工を施して塊状としたものでもよい。
不織布パッドの大きさは任意である。例えば、被り物の内径と略同じ外径を有したものでもよい。また、それより小さくてもよい。
【0013】
竹炭ブロックの素材としては、600℃以下で熱処理された黒炭(黒色の竹炭)でもよいし、700℃以上で熱処理された白炭(白色の竹炭)でもよい。
竹炭ブロックは、竹(円筒姿焼きの竹炭)をその軸線に沿って縦割りしたものでもよいし、軸線に直交するように横割りしたものでもよい。横割りの竹炭ブロックは円弧形状であるため、複数の竹炭ブロックを環状配置する際に好適である。また、縦割りの竹炭ブロックは、繊維長方向が竹炭ブロックの長さ方向に揃うので、横割りのものに比べて高強度である。
竹炭ブロックの形状としては、例えば球、半球、円錐、三角錐以上の多角錐、立方体、直方体などが挙げられる。その他、任意の立体形状でもよい。
【0014】
竹炭ブロックの大きさは任意である。例えば、縦30〜50mm、横10〜15mm、高さ5〜10mmのブロックを採用することができる。
竹炭ブロックの使用個数は任意である。1個でもよいし、複数個でもよい。
布帛と竹炭ブロックとを使用する場合は、竹炭ブロックを布帛に分離不能に取り付けてもよいし、竹炭ブロックを布帛に着脱自在または可動自在に取り付けてもよい。布帛への竹炭ブロックの取り付け方法は任意である。例えば、袋形状に縫製した布帛の中に竹炭ブロックを投入してもよい。また、糸、紐、テープ、接着剤などで竹炭ブロックを布帛に固定してもよい。さらに、布帛にポケットを形成し、これに竹炭ブロックを挿入してもよい。竹繊維を含む布帛と、竹炭ブロックと、竹炭繊維を含む不織布パッドとのうち、少なくとも竹炭ブロックは、一定期間使用後、新しい竹炭ブロックと交換したり、煮沸消毒して再使用することもできる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記布帛は前記竹繊維を織った竹織布で、表布と裏布との少なくとも一方が前記竹織布で、前記表布と前記裏布とを袋形状に加工して竹布袋とし、該竹布袋には、前記竹炭ブロックおよび前記不織布パッドが収納された請求項1に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、使用時には、例えば被り物の内部空間側(使用時の使用者の頭部側)に竹織布を配置し、被り物用消臭抗菌吸湿具を被り物内に装着する。
竹布袋には、竹炭ブロックと竹炭繊維製の不織布パッドとが収納されているので、頭皮から被り物の内部空間へ蒸散した汗は、竹織布、竹炭ブロックおよび不織布パッドにより効率よく吸着される。しかも、布帛に竹炭ブロックを単に取り付けたときに比べて、竹布袋に収納された竹炭ブロックや不織布パッドは紛失し難い。
【0017】
竹織布としては、例えば、前記野村産業株式会社の「バンブール(主にウール混)」、東レ株式会社の「爽竹(合成繊維混)」などを採用することができる。竹織布は、竹布袋の表布だけに使用してもよいし、裏布だけに使用してもよい。さらには、表布と裏布との両方に使用してもよい。また、不織布パッドとしては、例えば板形状にプレス加工して高強度化したものを採用してもよい。この場合、不織布パッドを平面視してドーナツ形状に付形し、不織布パッドを竹布袋の外周部のみに配置してもよいし、不織布パッドを平面視して円形に付形し、不織布パッドを竹布袋の中央部のみに配置してもよい。
竹炭ブロックおよび不織布パッドは、竹布袋の中に位置決め状態で収納してもよいし、自由に移動可能な状態で収納してもよい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記竹布袋は空気を抜いた状態で円形を有し、かつ該竹布袋の外周部に前記空気を抜いた状態で円形状を保持する保形リングが設けられ、前記不織布パッドは、前記竹布袋のうち、前記被り物を使う使用者の頭頂部と対向する中央部に配置され、複数の前記竹炭ブロックが、前記不織布パッドの周囲に互いに離間して配置された請求項2に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、竹布袋が保形リングにより、空気を抜いた状態で円形状に展張されるので、竹布袋の中心部に不織布パッドが配置され、不織布パッドを中心とした周方向に、各竹炭ブロックが互いに所定間隔をあけて配置される。その結果、被り物用消臭抗菌吸湿具のデザイン性が高まる。
被り物用消臭抗菌吸湿具を被り物の内部空間に収納する際には、使用者の頭頂部との対向位置に不織布パッドを配置して収納する。これにより、被り物を被ると、使用者の頭頂部との対向位置に不織布パッドが配置される。しかも、各竹炭ブロックが、使用者の頭頂部の周囲との対向部分に互いに所定間隔をあけて配置される。その結果、隣接する竹炭ブロック間には通気用の隙間が形成され、被り物の内部空間の通気性が高まる。さらに、従来品(小袋体の全域に備長炭が充填)に比べて軽量化も図れる。
また、仮に使用者の頭頂部に竹布袋の中央部が接触しても、被り物用消臭抗菌吸湿具が軽量で、かつ不織布パッドとの接触になることから、使用者の頭頂部に接触痕が付き難い。そして、被り物用消臭抗菌吸湿具を装着したまま被り物を保管しても、被り物用消臭抗菌吸湿具が軽量であるため型崩れし難い。
【0020】
竹布袋の大きさ(直径)は、被り物の天部分の大きさと同じかそれより若干大きい方が好ましい。これは、使用時、保形リングにより展張された竹布袋が、被り物の内部空間に突っ張り状態で展張され、被り物から容易に離脱しなくなるためである。
保形リングの素材は任意である。例えば、各種の金属(ピアノ線など)、各種のプラスチック(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂など)を採用することができる。保形リングは剛体でもよいが、被り物の内部空間への被り物用消臭抗菌吸湿具の出し入れが容易な弾性体の方が好ましい。竹布袋の円形を保持するため、保形リングの形状は平面視して円形である。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、前記竹炭ブロックは、竹炭粉末とバインダとを混練し、その混練物をブロック状に付形して硬化させたものである請求項1〜3のうち、何れか1項に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、竹炭粉末とバインダとを混練し、その混練物を型などを用いてブロック状に付形し、その後、これを硬化させて人工の竹炭ブロックを作製する。このようにして竹炭ブロックを得るので、任意形状および任意サイズの竹炭ブロックが簡単に得られるとともに、竹の収穫時期などに拘わりなく、竹炭ブロックの大量生産も可能となる。例えば、この混練物からなる竹炭ブロックを、安全性を考慮してヘルメット内部に収納することができる。
【0023】
竹炭粉末の粉末度は5〜15μmである。5μm未満では、微量ながら竹炭粉末の塊が生じる。また、15μmを超えると、生産工程での作業性が低下する。竹炭粉末の好ましい粒径は10〜15μmである。
バインダとしては、例えばコラーゲン、布海苔、ニカワおよびこれらの混合物を採用することができる。また、竹炭粉末とバインダとを混練する際、粉砕した綿を添加してもよい。
混練方法としては、各種の混練装置による混練を採用することができる。
混練物の付形方法としては、例えば金型による圧縮法、トランスファー法、射出法、押出法などを採用することができる成形、射出成形などを採用することができる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記竹炭ブロックは、多孔質体である請求項4に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、竹炭ブロックを多孔質体としたので、着用時、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分を、竹炭ブロックに内部形成された多数の微細孔の内壁に吸着することができる。これにより、被り物の内部空間の蒸れが防止されるとともに、消臭性および抗菌性を得ることができる。
多孔質体の竹炭ブロックは、軟質素材からなるものが好ましい。これは、竹炭ブロックの角部などで頭皮を傷つけ難く、しかも剛体の竹炭ブロックに比べてバインダの粘性が高いので、例えば外部から衝撃力が加えられても竹炭粉末が竹炭ブロックから離脱し難いためである。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記バインダは、コラーゲン、布海苔、ニカワ、前記布海苔と前記ニカワとの混合物、前記布海苔と前記ニカワと綿との混合物、前記ニカワと前記綿との混合物のうち、何れかである請求項4または請求項5に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具である。
【0027】
竹炭粉末とバインダとの混合割合は、重量比で2:1〜21:1である。2:1未満では、竹炭粉末を使用した効果が低下する。また、21:1を超えると、バインダの使用量が不足して竹炭ブロックの形状を保持できないおそれがある。
コラーゲンとは、タンパク質の一種で、多細胞動物の細胞外基質(細胞外マトリクス)の主成分である。
布海苔とは、岩礁土や潮間帯に繁茂する一年草の海藻の一種である。布海苔としては、フクロフノリ、マフノリ、ハナフノリの何れを採用してもよい。
ニカワとは、動物の皮や骨から作られた接着剤である。
綿としては、最も効果が高い竹繊維から製造された綿を用することができる。綿を混入することで、竹炭ブロックの強度が高まるとともに、形状の保持性も高まる。
布海苔とニカワとの混合物において、布海苔とニカワとの混合比(重量比、以下同じ)は、例えば1:2〜1:4である。1:2未満では、バインダの硬化時間が長くなる。また、1:4を超えると、硬すぎて竹炭ブロックにクラックが生じやすい。
【0028】
布海苔とニカワと綿との混合物において、布海苔とニカワとの混合物に対する綿の添加量は、布海苔とニカワとの混合物を100重量部として、10〜25重量部である。10重量部未満では、混合中に竹炭粉末と綿とにバラつきが生じやすい。また、25重量部を超えると、綿が玉になり易く、混合物中に綿を均一に分散させにくい。布海苔とニカワとの混合物に対する綿の好ましい添加量は、12〜20重量部である。この範囲であれば、混合物中への綿の均一混合が容易になるというさらに好適な効果が得られる。
ニカワと綿との混合物において、ニカワと綿との混合比は、例えば5:1〜5:3である。5:1未満では、混合中に竹炭粉末と綿とにバラつきが生じやすい。また、5:3を超えると、綿が玉になり易く、混合物中に綿を均一に分散させにくい。ニカワと綿との好ましい混合比は、5:1〜5:2である。この範囲であれば、混合物中への綿の均一混合が容易になるというさらに好適な効果が得られる。
これらのバインダのうち、最も好適なものは布海苔・ニカワの混合物である。
【発明の効果】
【0029】
この発明の請求項1に記載の発明によれば、竹繊維を含む布帛と、竹炭ブロックと、竹炭繊維を含む不織布パッドとのうち、少なくとも何れか1つを有しているので、被り物の使用時、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分を、竹繊維、竹炭ブロック、竹炭繊維のうち、少なくとも1つに吸着させることができる。これにより、被り物の内部空間の蒸れが防止され、消臭性および抗菌性が得られる。しかも、被り物の内部空間を浮遊する雑菌などは、竹繊維、竹炭ブロック、竹炭繊維と接触したとき、対応する竹や竹炭の抗菌作用により減菌される。
【0030】
特に、請求項2に記載の発明によれば、竹繊維を含む布帛製の竹布袋に竹炭ブロックと不織布パッドとを収納したので、被り物の内部空間に蒸散した汗を、竹織布、竹炭ブロックおよび不織布パッドによって効率よく吸着することができる。しかも、竹布袋に収納されることで、竹炭ブロックや不織布パッドが紛失し難い。
【0031】
また、請求項3に記載の発明によれば、竹布袋が保形リングにより円形に展張されるので、竹布袋の中心部に不織布パッド、および、その周囲に各竹炭ブロックが配置され、被り物用消臭抗菌吸湿具のデザイン性が高められる。
しかも、被り物を被ると、使用者の頭頂部との対向部分に不織布パッドが配置され、各竹炭ブロックが使用者の頭頂部の周囲との対向部分に互いに所定間隔をあけて配置される。その結果、隣接する竹炭ブロック間に通気用の隙間が形成され、被り物の内部空間の通気性が高まる。さらに、多量の備長炭の粒体を袋詰めした従来品に比べて軽量化が図れる。
そして、仮に使用者の頭頂部に竹布袋の中央部が接触しても、被り物用消臭抗菌吸湿具が軽量で、かつ頭皮と不織布パッドとの接触であることから、使用者の頭頂部に接触痕が付き難い。また、被り物用消臭抗菌吸湿具を装着したまま被り物を保管しても、被り物用消臭抗菌吸湿具が軽量であるため型崩れし難い。
【0032】
請求項4に記載の発明によれば、竹炭粉末とバインダとを混練し、その混練物を型などを用いてブロック状に付形し、その後、これを硬化させて竹炭ブロックを作製する。このようにして竹炭ブロックを得るので、任意形状および任意サイズの竹炭ブロックを得られるとともに、竹炭ブロックの大量生産も可能である。
【0033】
請求項5に記載の発明によれば、竹炭ブロックを多孔質体としたので、着用時、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分を、竹炭ブロックに内部形成された多数の微細孔の内壁に吸着することができる。その結果、被り物の内部空間の蒸れが防止されるとともに、消臭性および抗菌性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0035】
図1〜図5において、10はこの発明の実施例1に係る被り物用消臭抗菌吸湿具で、この被り物用消臭抗菌吸湿具10は、頭に被る制帽(被り物)11の内部空間aに収納され、内部空間aの湿気を除去するものである。
以下、その構成を具体的に説明する。
被り物用消臭抗菌吸湿具10は、竹繊維を織った竹織布からなる円形の表布(布帛)12と、レーヨン製の織布からなる円形の裏布(布帛)13とを袋状に縫着し、空気を抜いた状態で円形状の竹布袋14を本体としている。表布12および裏布13の直径は、被り物用消臭抗菌吸湿具10が装着される制帽11(図3)や、ヘルメット11A(図5)のサイズ(内周の長さ)に合わせて適宜変更される(例えば直径25cm)。表布12の素材としては、目が粗い織布(野村産業株式会社の「バンブール」)が採用されている。また、裏布13には、目が細かいレーヨン製の織布が採用されている。表布12および裏布13の色彩は白である。ただし、例えば表布12(裏布13)の色彩を赤、青、黄、緑、黒、銀、金などに変更し、被り物用消臭抗菌吸湿具10のデザイン性を高めてもよい。
【0036】
竹布袋14の外周部は全周にわたって袋縫いされ、この袋縫い部分に、竹布袋14の円形状を保持する保形リング15が収納されている。保形リング15は、ピアノ線を円形(直径は制帽11のサイズと略同じ)に湾曲させたものである。
竹布袋14のうち、使用者の頭頂部と対向する中央部には、竹炭繊維(バン株式会社製の「竹のソナタ」)を一部に含む不織布パッド16が収納されている。
また、不織布パッド16の周囲には、5個の竹炭ブロック17が、不織布パッド16の周方向へ等間隔(72°ピッチ)で、互いに間隔をあけて配置されている。竹炭ブロック17は、竹齢4年以上の孟宗竹(真竹)を800°〜900°で加熱し、得られた筒形状の竹炭を輪切りにし、竹炭の軸線を中心にして72°毎にカットした厚さ1cm程度の円弧形状のブロックである。
【0037】
このように、竹布袋14の中心部に不織布パッド16が配置され、かつ各竹炭ブロック17が不織布パッド16の周囲に互いに離間して配置されるように構成したので、被り物用消臭抗菌吸湿具10のデザイン性を高めることができる。しかも、従来品(小袋体の全域に備長炭が充填されたもの)に比べて、被り物用消臭抗菌吸湿具10の軽量化が図れる。また、各竹炭ブロック17の配置位置を、使用者の頭部の各指圧つぼと対向する位置とすれば、制帽11の使用により、つぼ指圧効果も得られる。
【0038】
表布12および裏布13のうち、不織布パッド16の周辺部分は縫着され、不織布パッド16を収納する円形小袋14aが形成されている。また、表布12および裏布13のうち、不織布パッド16の各竹炭ブロック17の周辺部分も縫着され、それぞれ円弧小袋14bが形成されている。各円弧小袋14bの一端部には、竹炭ブロック17の出し入れ用のスリット14cがそれぞれ形成されている。
【0039】
次に、実施例1の被り物用消臭抗菌吸湿具10の使用方法を説明する。
図3に示すように、制帽11への着用時には、制帽11を着用した使用者の頭頂部との対向位置に不織布パッド16を配置し、かつ裏布13を天部分11aの裏側に接触させた状態で、被り物用消臭抗菌吸湿具10を制帽11の内部空間aに挿入する。その際、竹布袋14が、制帽11のサイズと略同じ直径の保形リング15により内部空間aで展張されるため、被り物用消臭抗菌吸湿具10はちょうど内部空間aで膜を張るように弾性的に保持され、仮に制帽11を振っても被り物用消臭抗菌吸湿具10は脱落し難い。なお、加圧プレスにより高強度化された板形状の不織布パッド(図示せず)を平面視してドーナツ形状にカットし、竹布袋14の外周部のみに配置してもよい。この場合、高強度化した不織布パッドが保形リング15を兼用するため、保形リング15の省略が可能となる。
【0040】
使用者が制帽11を被ると、使用者の頭頂部に不織布パッド16が配置される。しかも、各竹炭ブロック17が、使用者の頭頂部の周囲に互いに所定間隔をあけて配置される。その結果、隣接する竹炭ブロック17間に隙間が形成され、制帽11の内部空間aの通気性は高められる。
【0041】
また、仮に使用者の頭頂部に、被り物用消臭抗菌吸湿具10のうち、最もその荷重が作用し易い竹布袋14の中央部が接触しても、被り物用消臭抗菌吸湿具10が軽量で、かつ不織布パッド16との接触になることから、頭頂部に接触痕が付き難い。しかも、このような制帽11の場合、不織布パッド16の周囲に配置された各竹炭ブロック17は、略平坦な天部分11aのうち、頭部と接触しない外周部に配置される。そのため、各竹炭ブロック17は使用者の頭部に接触し難く、頭部に竹炭ブロック17を原因とした接触痕が付き難い。また、被り物用消臭抗菌吸湿具10を装着したまま制帽11を保管しても、被り物用消臭抗菌吸湿具10が軽量であることから、型崩れし難い。
【0042】
使用時、竹織布からなる表布12を制帽11の内部空間a側(頭頂部との接触側)に向け、被り物用消臭抗菌吸湿具10を制帽11内に収納したので、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分は、竹織布である表布12の織り目を透過しながら、その一部が表布12の竹繊維に吸着される。その後、各竹炭ブロック17、および、不織布パッド16の竹炭繊維にそれぞれ吸着される。具体的には、表布12に含まれた各竹繊維、不織布パッド16に含まれた各竹炭繊維および各竹炭ブロック17において、各個体全域に内在された多数の微細孔に汗や臭い成分が浸入し、その後、各微細孔の形成壁に吸着(捕獲)される。
【0043】
これにより、制帽11の内部空間aの蒸れが防止されるとともに、消臭性および抗菌性を得ることができる。しかも、制帽11の内部空間aを浮遊する雑菌や、この内部空間aの形成面に付着した雑菌は、各竹繊維、竹炭ブロック17および竹炭繊維と接触することで、竹および竹炭の抗菌作用により減菌される。特に竹炭のpHは7〜8のアルカリ性を示す。そのため、酸性を好む微生物(好気性菌)は着生し難い。しかも、竹布袋14に不織布パッド16や竹炭ブロック17を収納したので、単に1枚の布帛にこれらを縫着したり接着した場合に比べて、不織布パッド16や竹炭ブロック17が布帛(竹布袋14)から離脱し難く、竹炭ブロック17や不織布パッド16が紛失し難い。
また、帽子11(ヘルメット11Aも同じ)の庇の取り付け部分、すなわち帽子11の腰の裏およびすべり(頭の皮膚に直接当接する部分)には、竹繊維と、竹炭繊維と、竹繊維の綿とを有した額当て布18を展張してもよい(図3および図4)。額当て布18は、竹繊維を原料とした織布である横長な表布30と裏布31との間に、短冊状の竹炭繊維のパッド32と、台形状の竹繊維の綿33とをそれぞれサンドイッチしたキルティング生地である。額当て布18は、パッド32の収納部分と、綿33の収納部分との境界部分のステッチを中心にして二つ折りにし、帽子11の庇の取り付け部分(帽子11の腰の裏およびすべり)に装着される。額当て布18は、竹繊維と竹炭繊維と竹繊維の綿からなるので、上述した被り物用消臭抗菌吸湿具10と同等の効果が得られる。
【0044】
また、実施例1の被り物用消臭抗菌吸湿具10は、図5に示すようにヘルメット11Aに装着してもよい。ヘルメット11Aは、その内部空間aに合成樹脂製のハンモック20が宙吊り状態で収納されている。被り物用消臭抗菌吸湿具10は、ハンモック20の隙間からヘルメット11Aの内部空間aの奥部へ挿入される。そして、被り物用消臭抗菌吸湿具10の中央部が、ヘルメット11Aの天部分11aとハンモック20と間に配置された状態で、被り物用消臭抗菌吸湿具10が内部空間aに展張される。このとき、被り物用消臭抗菌吸湿具10は、保形リング15の弾性力により、ヘルメット11Aの内周壁に突っ張った状態で支持(位置決め)される。
【0045】
このように、ヘルメット11A内で使用する場合には、上述した制帽11の場合のように、使用者の頭頂部に被り物用消臭抗菌吸湿具10が直接接触しないものの、頭皮から蒸散した汗や臭い成分は、ハンモック20とヘルメット11Aの内周壁との隙間を通過し、表布12の各竹繊維、不織布パッド16の各竹炭繊維および各竹炭ブロック17に効果的に吸着される。
【0046】
次に、図6および図7を参照して、この発明の実施例2に係る被り物用消臭抗菌吸湿具10Aを説明する。
図6および図7に示すように、実施例2の被り物用消臭抗菌吸湿具10Aは、それぞれ竹織布からなる平面視して角張った梅の花形状の表布12と裏布13の間に、厚さ3〜5mmの竹繊維の綿20をサンドイッチしたキルティング生地タイプのものである。被り物用消臭抗菌吸湿具10Aがキルティング生地であるので、使用感がソフトで、しかも帽子11の天部分11aへの形状のなじみがよい。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるので説明を省略する。
【0047】
次に、この発明の実施例3に係る被り物用消臭抗菌吸湿具を説明する。
実施例3の被り物用消臭抗菌吸湿具は、竹炭ブロックとして、竹炭粉末とバインダとを混練し、その混練物を多孔質のブロック状に付形し、その後、所定時間放置して硬化させた竹炭ブロックの合成品を採用したものである。
バインダとしては、コラーゲン、布海苔、ニカワ、布海苔とニカワとの混合物、布海苔とニカワと綿との混合物、ニカワと綿との混合物の6種類を用途に応じて適宜選択して使用する。
【0048】
竹炭ブロック17Aの作製に際しては、図8に示すように、粉末度10μmの竹炭粉末21と、上記6種類から選出されたバインダ22とを4:1で混練機23に投入し、ここで所定の回転速度で所定の時間混練する。この竹炭粉末21は、竹齢4年以上の孟宗竹を800°〜900°で加熱して得た竹炭を粉砕機により粉砕して作製されたものである。混練機23から排出された混練物24は、その後、圧縮成形型25に投入され、長さ35mm、幅12mm、厚さ5mmの多孔質の合成された竹炭ブロック17Aとして付形され、それから所定時間放置して硬化される。
【0049】
このように、竹炭粉末21とバインダ22とを混練し、その混練物24を型入れしてブロック状に付形するので、任意形状および任意サイズの竹炭ブロック17Aが簡単に得られるとともに、竹の収穫時期などに拘わりなく、竹炭ブロック17Aを大量生産することができる。
また、竹炭ブロック17Aを多孔質体としたので、被り物用消臭抗菌吸湿具の着用時、天然の竹炭ブロック17Aと同程度またはそれ以上に、使用者の頭皮から蒸散した汗や臭い成分を、竹炭ブロック17に内部形成された多数の微細孔の内壁に吸着することができる。これにより、帽子11の内部空間の蒸れが防止されるとともに、消臭性および抗菌性を得ることができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0050】
ここで、実施例1の被り物用消臭抗菌吸湿具10に対して、実際に消臭試験、抗菌性試験および吸湿試験を実施したときの試験結果を報告する。
1.検査機関;財団法人日本紡績検査協会(近畿事業所)
2.検査項目;消臭試験、抗菌性試験および吸湿試験
【0051】
3.消臭試験について(試験項目;アンモニア、酢酸、イソ吉草酸)
(a)アンモニアの消臭試験(機器分析、検知管法)
試験方法
試料(不織布パッド入りの竹布袋)を調温(20℃)・調湿し、5リットルのテドラーバッグに入れる。その後、テドラーバッグを密封し、その内部空気を抜いて真空状態とした。次いで、テドラーバッグ内に、初期濃度(アンモニア40.0ppm)に調整したアンモニアガスを3リットル注入した。2時間後、テドラーバッグ内のガス濃度を検知管などで測定した。
一方、テドラーバッグに試料を入れず、同様の空試験を行った。空試験とは、成分ガスの自然分解やテドラーバッグに対する吸着などを確認するものである。表1にアンモニアの消臭試験の結果を示す。
【0052】
【表1】

【0053】
試験結果
表1に示すように、アンモニアに関する2時間後の濃度は、空試験が36.0ppmであったのに対して、試料では0.2ppm未満とわずかだった。これにより、試料は悪臭成分の一種であるアンモニアに対する消臭効果が高いことがわかった。
【0054】
(b)酢酸の消臭試験(機器分析、検知管法)
試験方法
試料(不織布パッド入りの竹布袋)を調温(20℃)・調湿し、5リットルのテドラーバッグに入れた。その後、テドラーバッグを密封し、その内部空気を抜き真空状態とした。次いで、テドラーバッグ内に、初期濃度(酢酸100ppm)に調整した酢酸ガスを3リットル注入した。それから2時間後および24時間後、テドラーバッグ内のガス濃度を検知管などで測定した。そして、アンモニアの場合と同様に空試験を行った。空試験直後および空試験から2時間後の酢酸濃度は100ppm、24時間後の空試験の酢酸濃度は76.0ppmだった(表1)。
【0055】
試験結果
一方、試料の場合、同じく表1に示すように、2時間後の酢酸濃度は2.0ppm、24時間後の酢酸濃度は0.5ppmとわずかだった。これにより、試料は悪臭成分の一種である酢酸に対しても高い消臭効果を有していることが判明した。
【0056】
(c)イソ吉草酸の消臭試験(機器分析、ガスクロマトグラフィー法)
試験方法
試料(被り物用消臭抗菌吸湿具1個分の竹布袋)を調温(20℃)・調湿し、500mlの三角フラスコに入れた。その後、三角フラスコの口をシールで塞ぎ、密封した。ガスの基となる試薬(液体のイソ吉草酸)を、初期濃度(38ppm)になるように調整して注入し、容器内で気化させた。同様の試験を試料を何も入れずに行い、空試験とした。2時間後、試料を入れた容器と空試験の容器とからそれぞれ所定量のガスを抜き取り、それぞれガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0057】
試験結果
表1に示すように、両ガスを対比して得たイソ吉草酸の減少率は96.9%であった。その結果、実施例1の被り物用消臭抗菌吸湿具10は、悪臭成分の一種であるイソ吉草酸に対して、高い消臭効果を有していることが判明した。
【0058】
4.抗菌性試験について
(a)使用菌株
黄色ぶどう球菌(Staphlococus ATCC 6538P)
(b)試験方法
JIS 1902 定量試験(菌液吸収法)
菌液吸収法とは、抗菌消臭加工および制菌加工を施した繊維製品の細菌に対する抗菌性を、静菌活性値または殺菌活性値で評価する方法である。
【0059】
〔試料〕
加工試料、無加工試料(標準綿布)を約18mmの正方形でそれぞれ0.4gをバイアル瓶に採取する。試料が入ったバイアル瓶とキャップはアルミホイルに包んで別々にオートクレープ滅菌後、アルミホイルを外し、クリーンベンチ内で60分間乾燥した後、キャップを締める。
〔試験菌摂取と培養〕
1/20濃度のニュートリエント培土で1±0.3×10個/mlに調整した試験菌懸濁液0.2mlをそれぞれ接種してキャップを締め、37±1℃で18±1時間培養する。
【0060】
〔菌数計測〕
所定時間放置後、バイアル瓶に洗い出し液を加えて菌を振蘯分散する。
混釈平板培養法
それぞれの洗い出し液を適宜希釈し、シャーレ中で寒天培土を混合後、平板にして37±1℃で24〜48時間培養する。生育したコロニーを計測し、希釈倍数を乗じて生菌数を算出する。
【0061】
発光測定法
ATP(アデノシン三リン酸)とは、あらゆる生物の細胞内に普遍的に存在する物質で、細菌にも固有のATP量が含まれている。このATP量を測定し、生菌数に換算する。ここでは、それぞれの洗い出し液に所定の試薬を加え、細胞内から注出したATPと発光試薬(ルシフェラーゼ)を反応させ、発光光度計によりその発光量を測定してATP濃度、さらに生菌数に換算する。
【0062】
〔計算〕
〔A〕無加工試料の接種直後に回収した菌数(LogA)
〔B〕無加工試料の18時間培養後に回収した菌数(LogB)
〔C〕加工試料の18時間培養後に回収した菌数(LogC)
〔試験の成立〕
LogB−LogA > 1.5
【0063】
静菌活性値;抗菌消臭加工および制菌加工を施した繊維製品と無加工品に細菌を接種し、培養後の生菌数を測定して無加工品に対する加工品の生菌数の差を示す。
LogB−LogC
殺菌活性値;抗菌防止加工および制菌加工を施した繊維製品と無加工品に細菌を接種し、培養後の生菌数を測定して接種菌数に対する加工品の生菌数の差を示す。
LogA−LogC
JIS 1902 定量試験(菌液吸収法)での黄色ぶどう球菌に対する抗菌消臭効果の基準値は、静菌活性値で2.0以上である。
【0064】
(c)試験結果
植菌数〔A〕 17000個 LogA=4.2
無加工布菌数〔B〕 4800000個 LogB=6.7
LogB−LogA=6.7−4.2=2.5>1.5(試験成立)
殺菌活性値;LogA−LogC=4.2−1.3=2.9
静菌活性値;LogB−LogC=6.7−1.3=5.4
抗菌性の試験結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から明らかなように、竹布袋の袋のみの部分では、生菌数〔C〕<20、菌数はLogC(=1.3以下)、殺菌活性値は2.9以上、静菌活性値は5.4以上であった。
また、竹布袋の不織布パッドを含む部分(中央部)では、生菌数〔C〕<20、菌数はLogC(=1.3以下)、殺菌活性値は2.9以上、静菌活性値は5.4以上であった。このように、JIS 1902 定量試験(菌液吸収法)での黄色ぶどう球菌に対する抗菌消臭効果の基準値が、静菌活性値で2.0以上であるのに対して、本発明での静菌活性値は5.4以上であり、高い抗菌消臭効果が得られることが判った。
【0067】
5.吸湿性試験について
試験方法
試料(ワイヤを外した実施例1の被り物用消臭抗菌吸湿具10)を乾燥機に入れて4時間乾燥後、シリカゲル入りのデシケータ内で一晩放置した。このときの試料の質量(W)を測定する。次に、試料を恒温恒湿器に挿入し、高温多湿状態(温度40℃、湿度90%)で4時間放置して吸湿後の質量(W1)を測定し、次式により吸湿率(%)を求めた。 吸湿率(%)=(W1−W)/W×100
その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示すように、本発明の試料の吸湿性は8.5%で、一般的に吸湿効果が得られると言われる綿と同等の吸湿効果を有していることがわかった。
【0070】
ここで、実施例3の被り物用消臭抗菌吸湿具に用いられる合成された竹炭ブロックに対して、物性試験(保湿性)での水分率の測定試験を実施したときの試験結果を報告する。
1.検査機関;財団法人日本紡績検査協会(近畿事業所)
2.検査項目;水分率試験
【0071】
3.水分率試験について(試験項目;(1)実施例1の竹炭ブロック(窯出し品)、(2)竹炭粉末+コラーゲン品(2:1)、(3)竹炭粉末+布海苔品(10:1)、(4)竹炭粉末+ニカワ品(4:1)、(5)竹炭粉末+布海苔とニカワとの混合物品(8:1:2)、(6)竹炭粉末+布海苔とニカワと綿との混合物品(12:1:3:0.5)、(7)竹炭粉末+ニカワと綿との混合物品(8:1:0.4)
試験方法
5個1組の試験片(長さ35mm×幅10mm×厚み5mm)を、高温多湿状態(40℃、湿度90%RH)に4時間(吸湿工程)、続いて標準状態(20℃、湿度65%RH)に4時間(放湿工程)それぞれ放置する。その間、経時的に質量を測定し、時間経過毎の水分率(%)を求め、その結果を図9のグラフに示した。
【0072】
試験結果
図9のグラフから明らかなように、高温多湿状態での4時間経過時において、(2)竹炭粉末+コラーゲン品(水分率10.9%),(3)竹炭粉末+布海苔品(水分率14.0%),(5)竹炭粉末+布海苔とニカワとの混合物品(水分率16.0%),(6)竹炭粉末+布海苔とニカワと綿との混合物品(水分率15.2%),(7)竹炭粉末+ニカワと綿との混合物品(水分率12.2%)の5つの合成された竹炭ブロックの方が、(1)実施例1の竹炭ブロック(窯出し後にカットのみ、水分率10.1%)に比べて水分率が高く、吸湿効果に優れていた。また、(4)竹炭粉末+ニカワ品(水分率9.9%)は、(1)の竹炭ブロックとほとんど差異がなかった。
また、標準状態での4時間経過時において、(2)、(3)、(5)、(6)の各竹炭ブロックの方が、(1)実施例1の竹炭ブロックに比べて水分率が低く、放湿効果に優れていた。また、残りの(4)、(7)の竹炭ブロックは、基準となる(1)の竹炭ブロックに比べて、若干水分率が高い程度であった。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施例1に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の一部切欠部分を含む斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の拡大断面図である。
【図3】この発明の実施例1に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の使用状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施例1に係る他の被り物用消臭抗菌吸湿具の展開図である。
【図5】この発明の実施例1に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の別の使用状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施例2に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の平面図である。
【図7】この発明の実施例2に係る被り物用消臭抗菌吸湿具の要部拡大断面図である。
【図8】この発明の実施例3に係る被り物用消臭抗菌吸湿具に組み込まれた竹炭ブロックの製造工程を示すフロー図である。
【図9】この発明の実施例1および実施例3に係る被り物用消臭抗菌吸湿具に使用される各竹炭ブロックの経過時間と水分率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
10,10A 被り物用消臭抗菌吸湿具、
11 制帽(被り物)、
11A ヘルメット(被り物)、
12 表布(布帛)、
13 裏布(布帛)、
14 竹布袋、
15 保形リング、
16 不織布パッド、
17,17A 竹炭ブロック、
21 竹炭粉末、
22 バインダ、
24 混練物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭に被る被り物の内部空間に収納され、該内部空間の湿気を除去する被り物用消臭抗菌吸湿具において、
竹繊維を含む布帛と、竹炭ブロックと、竹炭繊維を含む不織布パッドとのうち、少なくとも何れか1つを有した被り物用消臭抗菌吸湿具。
【請求項2】
前記布帛は前記竹繊維を織った竹織布で、
表布と裏布との少なくとも一方が前記竹織布で、前記表布と前記裏布とを袋形状に加工して竹布袋とし、
該竹布袋には、前記竹炭ブロックおよび前記不織布パッドが収納された請求項1に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具。
【請求項3】
前記竹布袋は空気を抜いた状態で円形を有し、かつ該竹布袋の外周部に前記空気を抜いた状態で円形状を保持する保形リングが設けられ、
前記不織布パッドは、前記竹布袋のうち、前記被り物を使う使用者の頭頂部と対向する中央部に配置され、
複数の前記竹炭ブロックが、前記不織布パッドの周囲に互いに離間して配置された請求項2に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具。
【請求項4】
前記竹炭ブロックは、竹炭粉末とバインダとを混練し、その混練物をブロック状に付形して硬化させたものである請求項1〜3のうち、何れか1項に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具。
【請求項5】
前記竹炭ブロックは、多孔質体である請求項4に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具。
【請求項6】
前記バインダは、コラーゲン、布海苔、ニカワ、前記布海苔と前記ニカワとの混合物、前記布海苔と前記ニカワと綿との混合物、前記ニカワと前記綿との混合物のうち、何れかである請求項4または請求項5に記載の被り物用消臭抗菌吸湿具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−7927(P2008−7927A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142482(P2007−142482)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(506184347)
【Fターム(参考)】