説明

被搬送物の搬送方法及び搬送装置

【目的】粘性の高低に影響を受けずに広範な種類の被搬送物を効率よく搬送できる搬送技術を提案すること。
【解決手段】両端に取込口2と排出口3を形成したオーガケーシング1内にスクリューオーガ4を回転自在に収容し、ケーシング1内の螺旋空間に連通する排出口3に負圧発生源10を接続し、スクリューオーガ4の羽根6との間の摩擦力に起因した押出力と、オーガケーシング1内の螺旋空間の全長に亘って作用する負圧吸引力との両方の力を被搬送物へ作用させて搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被搬送物の搬送方法及び搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掘削土の搬送方法としては、オーガ搬送方式とパイプ圧送式が知られている。前者はオーガケーシング内にオーガを内挿し、オーガの螺旋羽根との摩擦力を利用して搬送し、後者はポンプの圧送力を掘削土に伝えて搬送するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の掘削土の搬送技術には次のような問題点がある。
【0004】
<イ>オーガ搬送方式は粘土等の搬送には適するが、低粘性の砂質土等の場合は十分な摩擦力を確保できないため、搬送不能となる。またパイプ圧送方式は、低粘性土の搬送に適するが、高粘性土の搬送には適さない。したがって、搬送対象の土質によって搬送方式を使い分ける必要がある。
<ロ>パイプ圧送方式で搬送する場合は、掘削土が閉塞し易いことや清掃のためパイプを外す必要がある。また掘削土をスラリー化して搬送する方法も知られているが、掘削土が分離して閉塞を起こし易い難点がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、粘性の高低に影響を受けずに広範な種類の被搬送物を搬送できる搬送技術を提案することにある。
さらに本発明の他の目的は、被搬送物の閉塞事故を回避して効率よく搬送できる被搬送物の搬送技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に係る発明は、ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送方法において、両端に取込口と排出口を形成したケーシング内にスクリューオーガを収容してケーシング内部に螺旋空間を形成し、かつ、オーガケーシングの取込口側にスクリューオーガの軸と一体に回転するオーガーケーシングより大径の回転板を設け、前記回転板に、被搬送物を取込口へ掻き寄せる掻寄羽根を立設し、掻寄羽根の間を環状板で接続し、スクリューオーガの羽根との間の摩擦力に起因した押出力と、オーガケーシング内の螺旋空間の全長に亘って作用する負圧吸引力との両方の力を被搬送物へ作用させて搬送することを特徴とする、被搬送物の搬送方法である。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の被搬送物の搬送方法において、被搬送物が土砂であることを特徴とする、被搬送物の搬送方法である。
請求項3に係る発明は、ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送装置において、両端に取込口と排出口を形成したオーガケーシング内にスクリューオーガを回転自在に収容し、ケーシング内の螺旋空間に連通する排出口に負圧発生源を接続し、かつ、オーガケーシングの取込口側にスクリューオーガの軸と一体に回転するオーガーケーシングより大径の回転板を設け、前記回転板に、被搬送物を取込口へ掻き寄せる掻寄羽根を立設し、掻寄羽根の間を環状板で接続し、スクリューオーガの羽根との間の摩擦力に起因した押出力と、オーガケーシング内の螺旋空間の全長に亘って発生させた負圧吸引力とを被搬送物へ作用させるように構成したことを特徴とする、被搬送物の搬送装置である。
請求項に係る発明は、請求項3に記載の搬送装置において、オーガケーシングにアウタケーシングを外装し、両ケーシングの周面間にオーガケーシングの取込口へ向けて流体を噴射するノズルを配備したことを特徴とする、被搬送物の搬送装置である。
請求項に係る発明は、ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送装置において、前記請求項3乃至請求項の何れかに記載の搬送装置を掘削機の排土側に接続したことを特徴とする、被搬送物の搬送装置である。

【0007】
[発明の実施の形態1]
<イ> 搬送装置。
図1に搬送装置のモデル図を示す。
【0008】
符号1はオーガケーシングで、その一方に取込口2を形成し、他方に排出口3を形成している。
本例ではオーガケーシング1を縦置きした場合について示すが、横置きや斜めであってもよい。
【0009】
オーガケーシング1にはスクリューオーガ4が回転自在に内挿してある。スクリューオーガ4はオーガケーシング1を貫挿する軸5と、軸5の周面に螺旋状に形成した羽根6とよりなり、オーガケーシング1を貫通した軸5の端に回転駆動源7が接続していて、この回転力を受けて正逆転する。
【0010】
排出口3に接続した搬送管8には、モータ9で駆動するバキュームポンプ10が介装してある。
バキュームポンプ10で生起した負圧力が搬送管8を通じてオーガケーシング1内に画成された螺旋空間に作用するようになっている。
【0011】
<ロ>搬送原理。
以上の構成において、取込口2を掘削土等の被搬送物11内に位置させた状態で、回転駆動源5とバキュームポンプ10を駆動させると、オーガケーシング1内でスクリューオーガ4が回転を開始すると共に、オーガケーシング1内の螺旋空間に排出口3へ向けた負圧を発生する。
【0012】
その結果、取込口2から進入した被搬送物11には、スクリューオーガ4の羽根6との間の摩擦力に起因した押出力と、負圧吸引力の両方の力が作用する。殊にこれらの両方の力は、オーガケーシング1内の一部ではなく、図1に矢印で示す如く螺旋空間の全長に亘って作用する。これら両方の力を受けた被搬送物11は螺旋空間に沿って効率よく移送される。
【0013】
被搬送物11が例えば低粘性の砂質土や轢等である場合は、スクリューオーガ4による十分な摩擦力が確保できなくとも負圧吸引力を主体に排出口3へ向けて効率よく移送できる。
【0014】
<ハ>被搬送物。
被搬送物11が例えば高粘性の粘土等である場合は、スクリューューオーガ4の移送力だけでも移送可能であるが、負圧吸引力が加増することでスクリューオーガ4の駆動負担を軽減しながら効率よく移送できる。
【0015】
被搬送物11が例えば低粘性の砂質土等である場合、スクリューオーガ4との間で十分な摩擦力を確保できなくとも、負圧吸引力を主体として効率よく移送できる。
この場合でもスクリューオーガ4による移送力がまったく発揮されないことはなく、負圧吸引力と協働して被搬送物11に作用することは勿論である。
【0016】
また被搬送物11が上記の混合土砂である場合や、轢の混入した土砂、高含水率土砂であっても、同様に効率良く移送できる。
【0017】
一般に土砂が搬送困難な被搬送物の場合は、スラリー化して搬送しているが、スラリー化施設やスラリーからの被搬送物の分離回収施設を必要としていたが、本発明ではこのような施設が不要となる。
【0018】
また本例では被搬送物11が土砂である場合について説明するが、被搬送物11にはプラント用各種骨材、粉体、穀物等の粒状体、粘性を有する各種スラリー状物等を含むものであり、土砂に限定されるものではない。
【0019】
<ニ>閉塞について。
ここでオーガケーシング1内における閉塞性について考察する。
一般にパイプの閉塞は、被搬送物11から分離した塊体の噛み合いと、オーガケーシング1内の付着土の蓄積が主因となって発生する。
被搬送物11の分離は塊体に対する移送力不足に起因し、付着土の蓄積は長期間の使用に起因する。
【0020】
前述したように、本発明はスクリューオーガ4の摩擦力による押出力と負圧吸引力の性質の異なる二種類の力が、オーガケーシング1内の螺旋の全長に亘り略均等な移送力として作用する。
【0021】
そのため、塊体の噛み合いの原因となる移送力に不足にならないから、被搬送物11の分離は起き難くなる。
【0022】
さらに、スクリューオーガ4を構成する羽根6のオーガケーシング1対向面(端面)が、オーガケーシング1の内周全面を通過する際に付着土を掻き落とすから、長時間使用しても被搬送物の蓄積は起きない。
このように本発明は閉塞の原因を生起しないので、オーガケーシング1内で閉塞は起きない。
【0023】
[発明の実施の形態2]
以降に他の実施の形態について説明するが、その説明に際し、前記した実施の形態と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0024】
図2,3に被搬送物11の掻き集め手段を具備させた他の搬送装置を示す。
本例はオーガケーシング1の取込口2側にオーガケーシング1より大径の回転板11を設け、回転板11に立設した掻寄羽根12によってオーガケーシング1の取込口2へ向けて強制的に被搬送物11を掻き集めるようにしたものである。
掻寄羽根12の設置枚数は被搬送物11の種類等に応じて適宜設定する。
掻寄羽根12を複数設ける場合は、各掻寄羽根12の間を環状板13で接続して補強することが望ましい。
【0025】
回転板11はオーガケーシング1を貫通したスクリューオーガ4の軸5に接続していて、スクリューオーガ4の回転を受けて回転する。
また掻寄羽根12は回転板11の回転中心に対し偏寄させて取り付けることで、掻き寄せ力を付与する。
【0026】
オーガケーシング1内に負圧吸引力とスクリューオーガ4による移送力の両方が作用することは、既述した実施の形態1と同様である。
【0027】
本例においては、回転板11が回転することに伴い、回転方向に対し斜めに向けた立設した掻寄羽根12が周囲の被搬送物11を掻き取り、取込口2へ向けて強制的に誘導することができる。
また回転板11の回転力をスクリューオーガ4から得るため、回転板11の回転駆動源を別途に必要としない。
【0028】
[発明の実施の形態3]
図4,5は前記実施例2に示した搬送装置に改良を加えた他の実施の形態を示す。
本例はオーガケーシング1の周囲に、取込口14を形成したアウタケーシング15を外装すると共に、両ケーシング1,15の周面間に複数のノズル16を配置して、各ノズル16からオーガケーシング1へ向けてエア等の流体を噴射し得るように構成した。
【0029】
本例によれば、アウタケーシング15の取込口14を通じて入り込んだ被搬送物11をオーガケーシング1へ流体の噴射力で移送できるので、オーガケーシング1内への取り込み性能がさらに良くなる。
【0030】
[発明の実施の形態4]
図6は既述した搬送装置を公知の掘削装置の排土側に接続して組込んだ他の実施の形態を示す。
図中符号17はアウタケーシング15の下端に接続したパイロット掘削装置、18はパイロット掘削装置17の上位でアウタケーシング15に外装した拡幅掘削装置である。
【0031】
パイロット掘削装置17はアウタケーシング15に一体に固着したケーシング19と、ケーシング19に揺動自在に設けたダウンザホールハンマ20とからなり、ダウンザホールハンマ20によりケーシング19の全断面を削孔できる構造になっている。
パイロット掘削装置17はスタビライザ装置21や図示しない反力装置、揺動手段を装備している。
【0032】
拡幅掘削装置18はスキンプレート22と、スキンプレート22の下部に回転自在に設けた拡幅掘削機23とを掃除していて、拡幅掘削機23の装備するビットにより大径の孔を先行できる構造になっている。
【0033】
そしてパイロット掘削装置17により発生した掘削土は、ケーシング19の外周へ排出された後、拡幅掘削装置18の内部に取り入れられる。
拡幅掘削機23で掘削した掘削土も機内に取り込まれ、取込口14を通じてアウタケーシング15内へ取り込まれる。
アウタケーシング15内に取り込んだ掘削土は、既述した掻寄羽根(図示せず)を介して、或いはノズル(図示せず)の噴射流体により、オーガケーシング1内に誘導される。
【0034】
オーガケーシング1内に作用する負圧吸引力とスクリューオーガ4による移送力の両方の力により移送することは、既述した通りである。
【0035】
掘削作業と並行してスキンプレート22の内側でライナプレート24を組立てて拡幅した孔壁を覆工する。
【0036】
以上のパイロット掘削装置17や拡幅掘削装置18は一例であり、その他公知の掘削装置と組み合わせて用いることが可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、次のような効果を得ることができる。
<イ> 被搬送物にスクリューオーガの羽根との間の摩擦力に起因した押出力と、負圧吸引力の両方の力が作用するため、被搬送物を螺旋空間に沿って効率よく移送できる。
<ロ> 被搬送物が低粘性の砂質土や轢等である場合は、スクリューオーガによる十分な摩擦力が確保できなくとも負圧吸引力を主体に排出口へ向けて効率よく移送できる。
<ハ> 被搬送物が低粘性の砂質土等である場合、スクリューオーガとの間で十分な摩擦力を確保できなくとも、負圧吸引力を主体として効率よく移送できる。
<ニ> 被搬送物が上記の混合土砂である場合や、轢の混入した土砂、高含水率土砂、粉体、穀物等の粒状体、粘性を有する各種スラリー状物等、あらゆる種類のものを効率良く移送できる。しかも垂直搬送用途だけでなく水平搬送用途にも適用できるので、あらゆる用途への適用が可能である。
<ホ> 本発明はスクリューオーガの摩擦力による押出力と負圧吸引力の性質の異なる二種類の力が、オーガケーシング内の螺旋空間に作用する。そのため、塊体の噛み合いの原因となる移送力不足にならないから、被搬送物の分離は起き難く、さらに、スクリューオーガの羽根が、オーガケーシングの付着土を掻き落とすから、長時間使用しても被搬送物の蓄積は起きない。したがって、オーガケーシング内での閉塞事故の発生率が極めて低い。
<ヘ> オーガケーシングの取込口側に掻寄羽根を設けると、この掻寄羽根によりオーガケーシングの取込口へ向けて強制的に被搬送物を掻き集めることができる。
<ト> オーガケーシングの周囲にアウタケーシングを外装し、両ケーシングの周面間に配置したノズルからオーガケーシングへ向けてエア等の流体を噴射すると、被搬送物をオーガケーシングへ向けて流体の噴射力で移送できるので、オーガケーシング内へ効率よく取り込むことができる。
<チ> 搬送装置を公知の掘削装置に組込んで、掘削土を効率よく搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】被搬送物の搬送原理の説明図
【図2】実施の形態2に係る搬送装置の説明図
【図3】図2におけるIII−III断面図
【図4】実施の形態3に係る搬送装置の説明図
【図5】図4におけるV−V断面図
【図6】実施の形態4の説明図。
【図7】図3の実施例の斜視図。
【図8】図4、5の実施例の斜視図
【符号の説明】
【0039】
1 オーガケーシング
2 取込口
3 排出口
4 スクリューオーガ
5 軸
6 羽根
7 回転駆動源
8 搬送管
9 モータ
10 バキュームポンプ
11 被搬送物
12 掻寄羽根
13 環状板
14 取込口
15 アウタケーシング
16 ノズル
17 パイロット掘削装置
18 拡幅掘削装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送方法において、
両端に取込口と排出口を形成したケーシング内にスクリューオーガを収容してケーシング内部に螺旋空間を形成し、
かつ、オーガケーシングの取込口側にスクリューオーガの軸と一体に回転するオーガーケーシングより大径の回転板を設け、
前記回転板に、被搬送物を取込口へ掻き寄せる掻寄羽根を立設し、
掻寄羽根の間を環状板で接続し
スクリューオーガの羽根との間の摩擦力に起因した押出力と、オーガケーシング内の螺旋空間の全長に亘って作用する負圧吸引力との両方の力を被搬送物へ作用させ、
搬送することを特徴とする、被搬送物の搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の被搬送物の搬送方法において、
被搬送物が土砂であることを特徴とする、被搬送物の搬送方法。

【請求項3】
ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送装置において、
両端に取込口と排出口を形成したオーガケーシング内にスクリューオーガを回転自在に収容し、
ケーシング内の螺旋空間に連通する排出口に負圧発生源を接続し、
かつ、オーガケーシングの取込口側にスクリューオーガの軸と一体に回転するオーガー ケーシングより大径の回転板を設け、
前記回転板に、被搬送物を取込口へ掻き寄せる掻寄羽根を立設し、
掻寄羽根の間を環状板で接続し、
スクリューオーガの羽根との間の摩擦力に起因した押出力と、オーガケーシング内の螺旋空間の全長に亘って発生させた負圧吸引力とを被搬送物へ作用させるように構成したことを特徴とする、
被搬送物の搬送装置。

【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置において、
オーガケーシングにアウタケーシングを外装し、
両ケーシングの周面間にオーガケーシングの取込口へ向けて流体を噴射するノズルを配備したことを特徴とする、
被搬送物の搬送装置。

【請求項5】
ケーシングの内空に沿って移送する被搬送物の搬送装置において、
前記請求項3乃至請求項の何れかに記載の搬送装置を掘削機の排土側に接続したことを特徴とする、
被搬送物の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−13289(P2010−13289A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242359(P2009−242359)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【分割の表示】特願平11−38341の分割
【原出願日】平成11年2月17日(1999.2.17)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】