説明

被服形の電位治療器

【課題】 外出の際に気軽に着ることができ、電位発生体の配置場所を利用者の希望に応じて簡単かつ自在に変えることができる被服形の電位治療器を提供する。
【解決手段】 人又は動物の身体に着脱自在に装着する被服形の電位治療器において、被服本体11の所定位置に配置され、前記身体と絶縁状態で高電圧が負荷される可撓性のある導電体及びこの導電体を被覆する絶縁体とからなる電位発生体10と、被服本体11に取り付けられ、電位発生体10に印加する高電圧を発生させる高電圧発生手段14と、電位発生体10を前記身体側に押し付ける押圧手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や動物の身体近傍に高電圧を印加した電位発生体を配置することで肩こり等の治療を行う電位治療器に関し、特に、前記電位発生体を人や動物の身体に着脱自在に装着できるようにした被服形の電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電位治療器については従来から種々のものが提案されており、本願出願人も、電位発生体である導電性シートを絶縁材で挟んだマット形のものを提案している(特許文献1,2参照)。
しかし、マット形の電位治療器は利用者とともに持ち運ぶことが困難で、一定時間の治療が行いにくいという欠点がある。
また、下着等の衣類に電位発生体である導電性繊維を組み込んだ被服形の電位治療器も提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
しかし、この文献に記載の被服形の電位治療器は、導電性繊維で形成された可撓性を有する電位発生体を利用者の身体に密着させることを目的としたものであり、身体の形状に応じた形を維持できるように金属プレートを用い、この金属プレートをハトメで導電性繊維に取り付けている。そのため、ハトメを含めた電位発生体が肉厚になって嵩張り、被服の外から目立ってファッション上好ましくなく、利用者が外出の際に気軽に着て出掛けられるものではないという問題がある。また、電位発生体は被服に織り込まれているため、利用者の身体の特定部位に固定されることから、利用者の治療希望位置に応じて電位発生体の位置を変えることが容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−244449号公報
【特許文献2】特開2008−79582号公報
【特許文献3】特許第4697687号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、嵩張らず、身体に装着しても外から目立たず、外出の際に気軽に着ることができる被服形の電位治療器を提供すること、また、電位発生体の配置場所を利用者の希望に応じて簡単かつ自在に変えることができる被服形の電位治療器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の被服形の電位治療器は、人又は動物の身体に着脱自在に装着する被服形の電位治療器において、被服本体の所定位置に配置され、前記身体と絶縁状態で高電圧が負荷される可撓性のある導電体及びこの導電体を被覆する絶縁体とからなる電位発生体と、前記被服本体に取り付けられ、前記電位発生体に印加する高電圧を発生させる高電圧発生手段と、前記電位発生体を前記身体側に押し付ける押圧手段とを有する構成としてある。
絶縁性の高い靴などを履く場合には、請求項2に記載するように、前記身体と大地とを導通させるアース手段を設ける。
また、前記押圧手段としては、請求項3に記載するように、伸縮性のあるニット等で被服本体を形成して、被服本体が押圧手段として機能するようにしてもよいし、請求項4に記載するように、ベルトや帯などを被服本体の外側から装着するようにしてもよい。
なお、この明細書において「被服本体」は、人や動物の胴部や腰部を覆うものの他、腕や脚,手足を覆うものを含む広い概念である。
この構成によれば、電位発生体と高電圧発生手段とを装着した被服本体を人や動物の身体に着せることで、電位発生体が身体に密着し、高電圧発生手段から供給された高電圧を身体の特定部位に印加することができる。
【0007】
本発明の別の態様は、請求項5に記載するように、前記被服本体の所定位置に一つ又は複数のポケットを設け、このポケットの内部に前記電位発生体を挿入した構成としてある。この場合、請求項6に記載するように、ファスナーやボタン、面ファスナー等を用いて、ポケットの位置を自在に変更できるようにしてもよい。
この場合、請求項7に記載するように、前記ポケットの内部に前記高電圧発生手段に接続された接続体を配置し、前記ポケット内に前記電位発生体が挿入されたときに前記導電体が前記接続体に接触して前記高電圧発生手段と前記導電体とが導通するように構成してもよい。
このようにすることで、電位発生体を挿入するポケットを変更したり、前記ポケットの位置を変えたりすることで、利用者の治療希望位置に応じて電位発生体の位置を変えることが容易になる。
【0008】
本発明においては、導電体を導電性繊維から形成してもよい。このようにすることで、請求項8に記載するように、前記導電性繊維を前記被服本体又は前記ポケットと一体に編成することができる。また、電位発生体の絶縁体は、被服本体やポケットと別体のものであってもよいが、請求項9に記載するように、絶縁性の糸で編成された被服本体やポケットを絶縁体として利用することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電位治療器は、可撓性のある導電体を用い、被服本体の伸縮性やベルト等の押圧手段により電位発生体を身体に密着させるので、電位治療器が被服本体とほぼ一体化して外から目立たず、ファッション性を損なうことなく、装着したままで気軽に外出することが可能になる。
また、電位発生体や導電体を挿入するポケットを設け、適宜に電位発生体や導電体の位置を変えることで、利用者の治療希望位置に応じて電位発生体を配置することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を以下に説明する。
[第一の実施形態]
図1及び図2は、本発明の電位治療器の第一の実施形態にかかる図で、図1は、本発明の電位治療器を犬や猫等のペット、豚や牛,馬等の家畜といった動物の胴部に着用させた状態を示す図、図2は人の胴部に着用させる電位治療器の一例を示す図で、(a)は正面を、(b)は背面を示している。
【0011】
図1の例において、電位治療器1は、動物の胴部に着用させることができるように円筒状に形成された被服本体11と、この被服本体11の電位治療を施そうとする箇所、例えば脊椎部分に配置された電位発生体10と、被服本体11に取り付けられ電位発生体10に高電圧を印加する高電圧発送装置14と、この高電圧発送装置14と電位発生体10とを電気的に接続するリード線15とを有している。
また、被服本体11には、動物の脚(図示の例では前脚)を通すことのできる孔が設けられている。
【0012】
図2においては、図1の電位治療器1と対応する部材、部位に同一の符号を付してある。
図2の例において人の身体に装着する電位治療器1の被服本体11は、チョッキ状又はベスト状に形成されている。もちろん、被服本体11はこれ以外の形態であってもよい。電位発生体10は、電位治療を施そうとする箇所、例えば脊椎部分や肩の部分に配置されている。
【0013】
[被服本体]
被服本体11は、絶縁性の基布から形成する。基布は、絹,綿,和紙などの天然繊維やポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレンといった樹脂繊維で編成したものを使用することができる。編成の組織は特に限定されず、弾性を有しない織物でもよいが、後述する電位発生体10の身体への密着性を考慮すると弾性を有する編物であるのが好ましい。
被服本体11は、スライドファスナーや紐、ボタン、面ファスナー等を用いて開閉自在とし、動物や人の身体に簡単に脱着できるようにするとよい。
【0014】
[電位発生体]
電位発生体10は、導電体を絶縁材で被覆して形成される。被服本体11に取り付けられることから、可撓性のあるものが好ましい。本発明に適用可能な電位発生体の形態としては以下のものが挙げられる。
(1) 導電性繊維を編成した導電体又は薄い金属板や金属箔から形成された導電体を絶縁シートで被覆したもの。
(2) 導電性繊維を絶縁性のある糸で編成された被服本体11に編み込んだもの。
(3) 導電性繊維を絶縁性のある布に編み込んだもの。
ただし、(2)(3)の場合は、導電性繊維が身体に直接触れないようにするために、被服本体11の少なくとも電位発生体を配置した部分を二層以上の複層構造にするとよい。
【0015】
[電位発生体の配置位置]
電位発生体10は、高電圧の印加により治療しようとする身体の箇所に合わせて被服本体11に配置する。電位治療が必要とされる一般的な部位は、肩部、首部、脊椎上部、脊椎下部及び腰部であることから、これらの位置に電位発生体10を配置するとよい。
【0016】
[高電圧発生装置及びリード線]
高電圧発生装置14は被服本体11の目立たない位置に取り付けるのが好ましい。この高電圧発生装置14は、乾電池やリチウム電池その他のバッテリを電源とし、この電源に昇圧回路を接続したものである。太陽電池や熱電対等の発電手段を被服本体11に設け、これらと前記バッテリ等とを接続して前記電源を構成してもよい。
この種の高電圧発生装置14に用いられる昇圧回路としては種々のものが知られているが、回路構成が簡素かつ小型なものとしては、半波倍電圧整流形のものとコッククロフト・ウォルトン形のものとが知られている。これら昇圧回路では、共振を利用したスイッチングを用いることでトランスを不要にして、小型にすることが可能である。
例えば、コッククロフト・ウォルトン形の高電圧発生装置としては、特開2011−139618号公報、特開2010−252465号公報、特開2009−4260号公報、特開2008−206317号公報、特開2005−245177号公報、特開001−16853号公報等に記載された公知のものを利用することができる。
【0017】
高電圧発生装置14で発生させた高電圧は、絶縁材で被覆されたリード線15を介して電位発生体10に接続される。リード線15は、被服本体11の伸縮性を維持するために、被服本体11を編成する繊維に対してジグザグ状に編み込むのが好ましい。
【0018】
[アース]
図1の例のような動物は通常は裸足であり、身体の一部が直接地面に接地していることから特段のアースを設ける必要はない。
しかし、図2の例のような人においては、靴を履いて外出するのが一般的であることから、別途アースを設ける必要がある。
利用者の脚に巻き付けたアース線を地面に接地させるようにしてもよいし、利用者が杖状のものを手に持つようにしてもよいが、身体に発生する静電気を逃すためにアース効果を有する靴を利用するとよい。
この種の靴は、例えば実開平6−77504号公報に記載されているように、靴底に導体を設けたり、靴底を導電性の樹脂で形成するなどして足を電気的に接地させるようにしたもので、種々のものが市販されている。
【0019】
[押圧手段]
電位発生体10を利用者の身体に押し付ける押付手段としては、伸縮性を有する被服本体11をそのまま利用することが可能である。また、補助的に、押さえのための伸縮性を有するベルトを被服本体11の上に巻き付け、電位発生体10を身体側に押さえ付けるようにしてもよい。
【0020】
[第二の実施形態]
次に本発明の第二の実施形態について、図3を参照しながら説明する。
被服本体11の基本構成は先の実施形態と同じであるが、この第二の実施形態においては、被服本体11に、電位発生体10を配置して治療を行いたいと利用者が希望する複数の位置に応じてポケット12が設けられている。
ポケット12は、被服本体11に縫いつけて固定してもよいが、スライドファスナーや面ファスナー、ボタン等を利用して被服本体11に着脱自在とし、かつ、被服本体11におけるポケット12の取り付け位置を変更できるようにしてもよい。
【0021】
[電位発生体]
この実施形態において電位発生体10はポケット12に挿脱自在に挿入される。
電位発生体10はとしては、先の実施形態のうちの(1)(3)を利用することができる。
ただし、(3)の場合は、導電性繊維が身体に直接触れないようにするために、被服本体11の少なくとも電位発生体を配置した部分を二層以上の複層構造にするか、ポケット12を袋状に形成するとよい。
【0022】
リード線15と電位発生体10の導電体とは、コネクタにより接続するようにしてもよいが、ポケット12の内部(例えば底部)に接触端子を設け、この接触端子にリード線15を接続して、前記導電体をポケット12に挿入したときに、電位発生体10の導電体と前記接触端子とが接触して高電圧が印加されるように構成してもよい。
【0023】
[第三の実施形態]
この実施形態では、絶縁性を有する被服本体11又はポケット12を電位発生体10の一部として利用するものである。
例えば、図4に示す例では、金属製の薄板や導電性繊維等で形成された導電体13を、絶縁性のある被服本体11とポケット12とで被覆し、電位発生体10を構成している。ポケット12の内部には、リード線15に接続された端子16が設けられ、ポケット12に導電体13を挿入したときに、導電体13と接触して高電圧発生装置14と電気的に接続される。
【0024】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の説明のものに限られない。
例えば、第二の実施形態では、電位発生体10として、導電性繊維を絶縁性のある糸で編成されたポケット12に編み込んだものを利用することができる。この場合は、ポケット12を被服本体11に着脱自在とし、電位発生体10の被服本体11における配置位置をポケット12とともに自在に変更できるようにするのが好ましい。
また、第二の実施形態において図3は、人用として図2に示した人用の電位治療器1を基本とするものであるが、図1に示した動物用の電位治療器1に対しても適用が可能である。
【0025】
また、上記の説明では、主として人や動物の胴部に着用するチョッキ状又はベスト状の被服本体11を例に挙げて説明したが、被服本体11は他の形態であってもよい。さらに、被服本体11は、胴部に着用する部分の他に腕部、脚部、腰部、手又は足に着用する部分を含んでいてもよいし、腕部、脚部、腰部、手又は足に着用する部分だけで構成されていてもよい。またさらに、これらの二以上の組み合わせで構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の被服形の電位治療器は、人に限らず、ペットや家畜等の動物にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電位治療器の第一の実施形態にかかる図で、本発明の電位治療器を犬や猫等のペット、豚や牛,馬等の家畜といった動物の胴部に着用させた状態を示す図である。
【図2】人の胴部に着用させる電位治療器の一例を示す図で、(a)は正面を、(b)は背面を示している。
【図3】被服本体にポケットを設け、このポケットに電位発生体を挿入した第二の実施形態を示す図である。
【図4】第三の実施形態における電位発生体の断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 電位治療器
10 電位発生体
11 被服本体
12 ポケット
13 導電体
14 高電圧発生装置
15 リード線
16 接触端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人又は動物の身体に着脱自在に装着する被服形の電位治療器において、
被服本体の所定位置に配置され、前記身体と絶縁状態で高電圧が負荷される可撓性のある導電体及びこの導電体を被覆する絶縁体とからなる電位発生体と、
前記被服本体に取り付けられ、前記電位発生体に印加する高電圧を発生させる高電圧発生手段と、
前記電位発生体を前記身体側に押し付ける押圧手段と、
を有することを特徴とする被服形の電位治療器。
【請求項2】
前記身体と大地とを導通させるアース手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の被服形の電位治療器。
【請求項3】
前記被服本体が伸縮性を有する基布から形成され、前記被服本体が前記押圧手段を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の被服形の電位治療器。
【請求項4】
前記押圧手段が、被服本体の上から装着されて前記電位発生体を前記身体の所定部位に押し付けることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被服形の電位治療器。
【請求項5】
前記被服本体の所定位置に一つ又は複数のポケットを設け、このポケットの内部に前記電位発生体を挿入したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の被服形の電位治療器。
【請求項6】
前記被服本体における前記電位発生体の配置位置を変更できるように、前記ポケットを前記被服本体に着脱自在に設けたことを特徴とする請求項5に記載の被服形の電位治療器。
【請求項7】
前記ポケットの内部に前記高電圧発生手段に接続された接続体が配置され、前記ポケット内に挿入された前記電位発生体の導電体が前記接続体に接触することで、前記高電圧発生手段と前記導電体とが導通することを特徴とする請求項5又は6に記載の被服形の電位治療器。
【請求項8】
前記電位発生体が導電性繊維を前記被服本体又は前記ポケットと一体に編成して形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被服形の電位治療器。
【請求項9】
前記絶縁体が前記ポケット又は前記被服本体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の被服形の電位治療器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75080(P2013−75080A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217586(P2011−217586)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(506087163)タイヨー電子株式会社 (10)
【Fターム(参考)】