説明

被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法

【課題】より簡便且つ高精度に被膜の内部応力を測定可能な被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る試験片1は、表面10aに試験被膜が形成される平板状の被膜形成板10と、被膜形成板10を保持する保持部材20と、からなり、被膜形成板10は、保持部材20に固定される固定部と、保持部材20に固定されない非固定部と、を備えると共に、非固定部には、試験被膜が形成された後に被膜形成板10から切離される切離し部が設けられ、被膜形成板10から切離した切離し部の変形に基づいて試験被膜の内部応力を求めるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種部材の表面に形成した塗料やメッキ等の被膜の内部に残留する応力を測定する場合に使用される被膜の内部応力測定用試験片、および被膜の内部応力の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種素材の表面に、塗装、メッキ、蒸着または溶射等の手法によって被膜を形成し、素材表面の性質を向上させる表面改質技術が、様々な分野で広く利用されている。このような表面改質技術において形成される被膜の内部には、一般的に内部応力(残留応力)が生じていることが多い。
【0003】
この被膜の内部応力は、例えば塗装においては、塗料が乾燥固化する際の体積変化や、加熱乾燥時における素材の熱膨張等によって発生する。また、蒸着や溶射等においては、高温下で被膜形成した後の冷却過程における冷却速度の違いや、素材と被膜材料の熱膨張率差によって内部応力が発生する。
【0004】
このようにして、被膜内部に残留した内部応力は、被膜の密着力低下の原因となり、その大きさによっては被膜に亀裂や膨出、剥離が生じる等、表面改質処理の品質に大きく影響するため、適切に評価しておくことが必要である。このため、被膜の内部応力を特定する方法として、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−26944号公報
【特許文献2】特開2005−249608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1または2に示されるように、被膜の内部応力は、被膜を形成した試験片(基板)の変形量から算出することができる。しかしながら、従来の測定方法では、被膜の内部応力が小さい場合や被膜の膜厚が薄い場合には、試験片の変形量が小さくなるため、高精度な測定を行うことが難しいという問題があった。試験片の変形量を大きくするためには試験片の厚さを薄くすればよいが、この場合、試験片の強度および剛性が著しく低下するため、試験片の取り扱いおよび試験片への被膜の形成が非常に難しくなるという問題が生じていた。
【0007】
これに対し、上記特許文献2では、エッチングによって被膜形成後の試験片(基板)を薄くするようにしているものの、エッチング液から被膜を保護する必要がある等、測定に多大な手間と時間を要するという問題があった。また、エッチングによっては試験片を均一の厚さにすることが難しいだけではなく、試験片ごとの厚さにもばらつきが生じるため、高精度な測定を行うことが難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、より簡便且つ高精度に被膜の内部応力を測定可能な被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、表面に試験被膜が形成される平板状の被膜形成板と、前記被膜形成板を保持する保持部材と、からなり、前記被膜形成板は、前記保持部材に固定される固定部と、前記保持部材に固定されない非固定部と、を備えると共に、前記非固定部には、前記試験被膜が形成された後に前記被膜形成板から切離される切離し部が設けられ、前記被膜形成板から切離した前記切離し部の変形に基づいて前記試験被膜の内部応力を求めることを特徴とする、被膜の内部応力測定用試験片である。
【0010】
(2)本発明はまた、前記保持部材は、保持している前記被膜形成板の非固定部における裏面と当接する保持面を備えることを特徴とする、上記(1)に記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0011】
(3)本発明はまた、前記切離し部は、略矩形状に構成されることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0012】
(4)本発明はまた、前記切離し部は、前記被膜形成板が面内弾性異方性を示す場合に、前記被膜形成板の最小弾性率または最大弾性率を示す方向に対して自身のいずれかの辺が30乃至60度の角度で交差するように構成されることを特徴とする、上記(3)に記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0013】
(5)本発明はまた、前記被膜形成板は、圧延金属板から構成され、前記切離し部は、前記被膜形成板の圧延方向に対して自身のいずれかの辺が30乃至60度の角度で交差するように構成されることを特徴とする、上記(3)に記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0014】
(6)本発明はまた、前記被膜形成板は、前記試験被膜の膜厚の60%以上の厚さに構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0015】
(7)本発明はまた、前記切離し部は、前記被膜形成板から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺の長さの2%以下となる寸法に構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0016】
(8)本発明はまた、前記被膜形成板は、前記切離し部を前記被膜形成板から切離した場合に、前記試験被膜の内部応力によって前記切離し部が300mm以下の曲率半径で湾曲するように構成されることを特徴とする、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片である。
【0017】
(9)本発明はまた、保持部材に保持された平板状の被膜形成板の表面に試験被膜を形成する第1のステップと、前記被膜形成板から前記保持部材に固定されていない部分の少なくとも一部を切離す第2のステップと、前記被膜形成板から切離した部分の変形の曲率半径を測定する第3のステップと、前記曲率半径から前記試験被膜の内部応力を算出する第4のステップと、を有することを特徴とする、被膜の内部応力測定方法である。
【0018】
(10)本発明はまた、前記第2のステップにおいて、略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、上記(9)に記載の被膜の内部応力測定方法である。
【0019】
(11)本発明はまた、前記被膜形成板が面内弾性異方性を示す場合に、前記第2のステップにおいて、前記被膜形成板の最小弾性率または最大弾性率を示す方向に対していずれかの辺が30乃至60度の角度で交差する略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、上記(10)に記載の被膜の内部応力測定方法である。
【0020】
(12)本発明はまた、前記第2のステップにおいて、前記被膜形成板から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺の長さの2%以下となる寸法の略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、上記(10)または(11)に記載の被膜の内部応力測定方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法によれば、より簡便且つ高精度に被膜の内部応力を測定可能という優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係る試験片の外観斜視図である。(b)試験片の分解斜視図である。
【図2】(a)試験片の平面図である。(b)試験片の断面図である。
【図3】(a)〜(c)試験被膜の形成後に被膜形成板から切離した切離し部の状態を示した写真である。
【図4】本発明の実施の形態に係る測定方法の手順を示した概略図である。
【図5】(a)曲率半径の測定方法の一例を示した概略図である。切離し部および試験被膜の応力状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る被膜の内部応力測定用試験片1(以下、単に試験片1と呼ぶ)の構成について説明する。図1(a)は、本実施形態に係る試験片1の外観斜視図であり、同図(b)は、試験片1の分解斜視図である。これらの図に示されるように、本実施形態の試験片1は、試験被膜が形成される被膜形成板10と、被膜形成板10を保持する保持部材20と、被膜形成板10を保持部材20に固定する固定部材30と、から構成されている。
【0025】
この試験片1は、保持部材20に保持された状態の被膜形成板10に試験被膜を形成した後に、試験被膜と共に被膜形成板10の一部を切離し、この切離した部分の変形量に基づいて試験被膜の内部応力(残留応力)を測定するためのものである。
【0026】
被膜形成板10は、試験被膜を形成するための部材であり、略矩形状の平板から構成されている。被膜形成板10は、保持部材20上に重ねて配置され、固定部材30によって外周部分を保持部材20に固定されている。そして、外部に露出している表面10aに試験被膜が形成される。
【0027】
被膜形成板10を構成する材料は、特に限定されるものではなく、試験被膜が形成可能であると共に、形成した試験被膜の内部応力によって弾性変形可能な材料であればよい。従って、被膜形成板10を構成する材料としては、例えばステンレス、鋼、燐青銅、チタンまたはアルミ等の金属や各種樹脂、セラミックス等の種々の材料を使用することができる。
【0028】
また、被膜形成板10の厚さは、特に限定されるものではなく、試験被膜の内部応力によって弾性変形可能な厚さであればよい。従って、被膜形成板10の厚さは、想定される試験被膜の内部応力および被膜形成板10を構成する材料の弾性率に応じて、適宜に設定すればよい。
【0029】
但し、試験被膜の膜厚に対して被膜形成板10の厚さが薄い場合には、切離した部分が試験被膜の内部応力によって変形する際に皺が生じてしまう場合があり、この場合には正確な変形量の測定が困難となる。このため、被膜形成板10の厚さは、試験被膜の膜厚と同等以上の厚さであることが好ましい。具体的には、被膜形成板10の厚さは、試験被膜の膜厚の少なくとも60%以上の厚さであることが好ましく、試験被膜の膜厚の80%以上の厚さであればより好ましく、試験被膜の膜厚以上の厚さであることが最も好ましい。
【0030】
本実施形態では、被膜形成部材10を厚さ0.1mm以下のステンレス箔から構成している。ステンレス箔は、適度な強度および弾性率を有しているため、厚さを薄く構成した場合にも容易に塑性変形や破壊を起こすことがなく、取り扱いが容易となっている。また、ステンレス箔は、耐食性に優れているため、長期保管が可能であると共に、腐食等の影響を排除した高精度な測定を行うことが可能となっている。
【0031】
厚さ0.1mm以下のステンレス箔は、隙間調整用のシムテープ(フィラーゲージ)として一般的に流通しており、例えば0.005〜0.1mmの範囲で各種厚さのものを容易に入手することができる。本実施形態では、一般に流通しているシムテープを切断して被膜形成板10を構成している。なお、被膜形成板10の形状は、矩形状に限定されるものではなく、例えば円形状等、その他の形状であってもよい。
【0032】
保持部材20は、試験片1をハンドリングする際や試験被膜を形成する際に被膜形成板10が変形や破壊等しないように保持するための部材である。本実施形態では、保持部材20を、被膜形成板10よりもやや大きい略矩形状の平板から構成しており、保持部材20の一方の面は、被膜形成板10の裏面10bと略当接する保持面20aとなっている。
【0033】
なお、保持部材20の形状は、特に限定されるものではなく、被膜形成板10を安定して保持可能な形状であればどのような形状であってもよい。また、保持部材20を構成する材料は、特に限定されるものではなく、各種金属や樹脂、セラミックス等を使用することができる。
【0034】
固定部材30は、被膜形成板10の外周部分を上から押えて保持部材20に固定するための部材である。本実施形態では、固定部材30を枠状に構成することにより、被膜形成板10の外周部分を全周にわたって保持部材20に固定するようにしている。固定部材30による被膜形成板10の固定方法は、特に限定されるものではなく、接着、溶接またはロウ付けや、ネジ締結、クランプまたは係合等、既知の各種手法を採用することができる。また、固定部材30を構成する材質は、特に限定されるものではなく、各種金属や樹脂、セラミックス等を使用することができる。
【0035】
本実施形態では、固定部材30を、ポリイミド樹脂フィルムを基材とする耐熱粘着テープから構成している。このように、固定部材30を粘着テープから構成することにより、試験片1の製作を容易にすることができる。また、耐熱性を有する粘着テープを使用することにより、例えば塗料の加熱乾燥やスパッタリング等、試験被膜を形成する際に熱が加えられる場合においても、試験片1を使用可能とすることができる。
【0036】
なお、固定部材30は、被膜形成板10の外周部分を全周にわたって固定するのではなく、部分的に固定するものであってもよい。また、固定部材30による固定は、被膜形成板10の外周部分のみに限定されるものではなく、例えば中央部等、その他の部分を固定するようにしてもよい。
【0037】
さらに、固定部材30を使用することなく、被膜形成板10を接着剤や溶接、ロウ付け等によって直接保持部材20に固定するようにしてもよい。この場合においても、被膜形成板10を固定する部分は、外周部分に限定されるものではなく、その他の部分を固定するようにしてもよい。
【0038】
図2(a)は、試験片1の平面図であり、同図(b)は、試験片1の断面図である。なお、同図(b)においては、厚さ方向の寸法を誇張して示している。これらの図に示されるように、試験片1において被膜形成板10は、固定部材30によって保持部材20に固定される固定部12と、保持部座20に固定されない非固定部14と、を備えている。そして、被膜形成板10の非固定部14には、試験被膜を形成した後に被膜形成板10から切離して変形量を測定する部分である切離し部16が設けられている。
【0039】
本実施形態では、このように、被膜形成板10に固定部12および非固定部14を備えると共に、切離し部16を保持部材20に固定されていない非固定部14に設けることにより、切離し部16を被膜形成板10および保持部材20から容易に切離すことを可能としている。
【0040】
また、被膜形成板10の裏面10bに保持部材20の保持面20aを当接させることにより、非固定部14を設けながらも安定して被膜形成板10を保持すると共に、被膜形成板10が不用意に変形や破壊等しないようにしている。特に、本実施形態では、被膜形成板10の外周部分の全周にわたって固定部12を設けているため、非固定部14の裏面10bを安定的に保持部材20aに当接させた状態で確実に被膜形成板10を保持することが可能となっている。
【0041】
なお、保持部材20の保持面20aは、本実施形態のように被膜形成板10の裏面10b全体と当接するのではなく、非固定部14における裏面10bのみと当接するように形成されるものであってもよい。さらに、保持面20aは、本実施形態のように被膜形成板10の非固定部14における裏面10b全体と当接するのではなく、非固定部14における裏面10bと部分的に当接するように形成されるものであってもよい。すなわち、必要に応じて、保持面20aに窪みや溝、孔等を設けるようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、被膜形成板10の外周部分に固定部12を設けることにより、非固定部14を1つの広い領域に構成することができるため、切離し部16の位置、大きさおよび個数を設定する際の自由度が向上している。なお、本実施形態では、3つの切離し部16を設けるようにしているが、切離し部16の個数が3つに限定されないことは言うまでもない。
【0043】
切離し部16は、同図(a)に示されるように、略矩形状に構成されている。本実施形態では、このように切離し部16を、4つの内角が略直角となる略矩形状に構成することにより、切離した後の切離し部16の変形状態を安定的に保つことを可能としている。なお、切離し部16は、同図(a)に示されるように、長辺16aおよび短辺16bを有する長方形状に構成してもよいし、正方形状に構成してもよい。
【0044】
図3(a)〜(c)は、試験被膜の形成後に被膜形成板10から切離した切離し部16の状態を示した写真である。試験被膜の形成後に被膜形成板10から切離された切離し部16は、固定部12および保持部材20の保持面20aによる規制が解除されるため、試験被膜の内部応力によって湾曲するように変形(弾性変形)することとなる。
【0045】
本実施形態では、切離し部16を略矩形状に構成することにより、切離し部16を長辺16aまたは短辺16bのいずれかに沿って湾曲させ、切離し部16の変形状態を図3(a)および(b)に示されるような形態、すなわち円筒を軸方向に切断した部分円筒状の形態に、安定的に保持することが可能となっている。
【0046】
但し、被膜形成板10を構成する材料が、例えば圧延金属板のように面内弾性異方性を示す場合、すなわち面内の方向によって弾性率が変化する場合には、切離し部16の設定によっては、同図(c)の左側に示されるように、変形状態が捩れた状態となることがある。
【0047】
このように、切離し部16の変形状態が捩れた状態となると、変形量の測定が困難となる場合がある。このため、本実施形態では、被膜形成板10を構成する材料が面内弾性異方性を示す場合に、図2(a)に示されるように、被膜形成板10の最小弾性率または最大弾性率を示す方向Dに対し、切離し部16の長辺16aまたは短辺16bのいずれか(この例では長辺16a)が所定の角度θで交差するように、切離し部16を構成している。このようにすることで、略矩形状の切離し部16において湾曲しやすい方向を適宜にバランスさせることができるため、切離し部16の変形状態を、上述の部分円筒状の形態に保つことが可能となる。
【0048】
ここで、最小弾性率または最大弾性率を示す方向Dに対する切離し部16の長辺16aまたは短辺16bの角度θは、捩れ量を低減するためには、少なくとも30〜60度の範囲内であることが好ましく、40〜50度の範囲内であればより好ましく、43〜47度の範囲内であることが最も好ましい。
【0049】
なお、被膜形成板10を圧延金属板から構成している場合には、切離し部16の長辺16aまたは短辺16bのいずれかが、被膜形成板10の圧延方向Dに対して所定の角度θで交差するようにしても同様の効果を得ることができる。この場合においても、角度θは、捩れ量を低減するためには、少なくとも30〜60度の範囲内であることが好ましく、40〜50度の範囲内であればより好ましく、43〜47度の範囲内であることが最も好ましい。
【0050】
本実施形態では、被膜形成板10を圧延金属板であるステンレス箔から構成しているため、被膜形成板10の(ステンレス箔の)圧延方向Dに対し、切離し部16の長辺16aおよび短辺16bがそれぞれ略45度の角度で交差するように、切離し部16を構成している。
【0051】
また、本実施形態では、試験片1(保持部材20)の平面視の形状を略矩形状に構成すると共に、圧延方向Dが試験片1(保持部材20)の平面視におけるいずれかの辺と略平行となるように、被膜形成板10を配置している。これにより、切離し部16を切離す際に、長辺16aおよび短辺16bの方向、すなわち切断方向を容易に判別することが可能となっている。
【0052】
なお、切離し部16の長辺16aおよび短辺16bの長さは、特に限定されるものではないが、変形量を高精度に測定するためには、自重による変形(撓み)の影響を無視できる寸法であることが好ましい。具体的には、前記被膜形成板から切離した場合の自重による撓みの最大変位が、長辺16aまたは短辺16bの長さの少なくとも2%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下となるように切離し部16を構成することが好ましい。
【0053】
すなわち、例えば試験被膜の内部応力によって切離し部16が短辺16bに沿って湾曲する場合には、自重による撓みの最大変位が短辺16bの長さの少なくとも2%以下となるようにすることが好ましく、試験被膜の内部応力によって切離し部16が長辺16aに沿って湾曲する場合には、自重による撓みの最大変位が長辺16aの長さの少なくとも2%以下となるようにすることが好ましい。
【0054】
自重による撓みの最大変位は、例えば次の式(1)または式(2)によって求めることができる。なお、式(1)は片持梁の撓みにおける最大変位の式であり、式(2)は両端支持梁の撓みにおける最大変位の式である。
【数1】

【0055】
ここで、ymaxは、撓みの最大変位であり、Eは、梁の弾性率であり、lは、梁の長さである。また、Iは、梁の断面二次モーメントであり、梁の幅をb、梁の高さ(厚さ)をhとすると、次の式(3)で表される。また、wは、単位長さ当りの荷重であり、梁の密度をρ、梁の幅をb、梁の高さ(厚さ)をhとすると、式(4)で表される。
【数2】

【0056】
式(3)および式(4)を式(1)および式(2)に代入すると、次の式(5)および式(6)となる。
【数3】

【0057】
この式(5)または式(6)を用いて、自重による最大変位が長辺16aまたは短辺16bの長さの少なくとも2%以下となるように設定することができる。すなわち、lを設定する長辺16aまたは短辺16bの長さ、hを切離し部16(被膜形成板10)の厚さとし、被膜形成板10を構成する材料の弾性率Eおよび密度ρに応じてymaxがl(長辺16aまたは短辺16bの長さ)の少なくとも2%以下となるように、l(長辺16aまたは短辺16bの長さ)およびh(被膜形成板10の厚さ)を設定すればよい。
【0058】
なお、式(1)および式(2)以外の自重による撓みの式に基づいて切離し部16の寸法を決定するようにしてもよいことは言うまでもない。また、式(1)、式(2)またはその他の式のいずれを使用するかは、切離し部16の変形量の測定方法や、測定時における切離し部16の支持方法等に応じて決定すればよい。
【0059】
次に、本実施形態に係る被膜の内部応力測定方法(以下、単に測定方法と呼ぶ)について説明する。
【0060】
図4は、本実施形態に係る測定方法の手順を示した概略図である。本実施形態の測定方法の第1のステップでは、試験片1の被膜形成板10の表面10aに試験被膜100を形成する。この試験被膜100の形成は、刷毛やスプレー等による塗布であってもよいし、めっき、蒸着、スパッタリングまたは溶射等であってもよい。なお、この第1のステップには、被膜の乾燥工程や冷却工程も含まれる。
【0061】
本実施形態の試験片1は、固定部材30が保持部材20および被膜形成板10の固定部12をマスクするようになっているため、試験被膜100は、被膜形成板10の非固定部14に形成されることとなる。また、保持部材20には試験被膜100は形成されないため、保持部材20は再利用可能となっている。
【0062】
次に、第2のステップでは、試験被膜100が形成された被膜形成板10の非固定部14から切離し部16を切離す。上述のように、本実施形態では、切離し部16は、被膜形成板10の圧延方向Dに対して各辺がそれぞれ略45度の角度で交差するように設定されている。また、被膜形成板10は、圧延方向Dが略矩形状の試験片1(保持部材20)の平面視におけるいずれかの辺と略平行となるように配置されている。従って、ここでは、試験片1に対して略45度の角度で傾いた略矩形状の部分を非固定部14から切離せばよい。
【0063】
また、上述のように、被膜形成板10の材料および厚さに応じた適宜の寸法で略矩形状の部分を切離すことにより、自重による影響を排除した高精度な測定を行うことができる。すなわち、ここでは、被膜形成板10から切離した場合の自重による撓みの最大変位がいずれかの辺の長さの少なくとも2%以下となる寸法の略矩形状の部分を非固定部14から切離すことが好ましい。なお、切離し部16の切離しは、カッター等を用いて容易に行うことができる。
【0064】
次に、第3のステップでは、被膜形成板10から切離した切離し部16の変形の曲率半径rを測定する。本実施形態では、切離し部16を略矩形状に構成しているため、被膜形成板10から切離した切離し部16は、同図に示されるように、例えば短辺16bに沿って湾曲した形態となる。従って、ここでは、この短辺16bに沿った湾曲の曲率半径rを測定する。
【0065】
図5(a)は、曲率半径rの測定方法の一例を示した概略図である。湾曲の曲率半径rは、同図に示されるように、所定の幅2aにおける高さの差をδとした場合、次の式(7)から求められる。
【数4】

【0066】
幅2aおよび高さの差δは、例えば定盤40上に切離し部16を上に凸となるように載置して撮像した画像(例えば、図3(b)に示した画像)を画像処理することにより、測定することができる。このような画像処理による曲率半径rの測定方法は、液滴を撮像して行う接触角の測定方法と類似しているため、既存の接触角計等を活用することができる。曲率半径rの測定は、この他にもレーザ変位計等を用いて行うことができる。すなわち、切離し部16の変形の曲率半径rを測定する曲率半径測定装置として、既存の接触角計やレーザ変位計等を使用することができる。
【0067】
なお、測定する曲率半径rが大きい場合、幅2aに対する高さの差δの値が小さくなると共に、重力による影響が大きくなるため、測定誤差が大きくなる。このため、高精度な測定を行うためには、曲率半径rは、なるべく小さいことが好ましい。具体的には、測定する曲率半径rは、測定誤差を許容範囲内に収めるためには、少なくとも300mm以下であることが好ましく、200mm以下であればより好ましく、100mm以下であることが最も好ましい。曲率半径rの大凡の設定は、被膜形成板10を構成する材料の弾性率に応じて、被膜形成板10の厚さを適宜に設定することにより、行うことができる。
【0068】
次に、第4のステップでは、測定した曲率半径rから試験被膜100の内部応力Pを算出する。本実施形態では、切離し部16におけるモーメントの釣り合いから内部応力Pを算出するようにしている。図5(b)は、切離し部16および試験被膜100の応力状態を示した概略図である。
【0069】
被膜形成板10から切離した切離し部16は、試験被膜100内に生じた内部応力P(残留応力)が引張り応力である場合、同図に示されるように、試験被膜100側に凹となるように湾曲(曲げ変形)する。この湾曲の中立面を切離し部16と試験被膜100の界面Bと仮定すると、湾曲によって切離し部16の内部に発生する応力分布P(x)は、次の式(8)で表される。また、試験被膜100の内部の応力分布P(x)は、湾曲によって試験被膜100の表面100aにおける応力が0となるため、式(9)で表される。
【数5】

【0070】
ここで、xは、界面Bからの厚さ方向の距離である。また、Eは、切離し部16の(すなわち、被膜形成板10を構成する材料の)弾性率であり、Eは、試験被膜100の弾性率である。
【0071】
試験被膜100の弾性率Eは、例えば試験被膜100が形成された他の切離し部16について引張り試験等を行い、被膜形成板10を構成する材料と試験被膜100の複合弾性率Gを測定することによって求めることができる。複合弾性率Gは、次の式(10)で表されるため、試験被膜100の弾性率Eは、式(11)から求めることができる。なお、試験被膜100の弾性率Eが既知である場合には、その値を使用すればよい。
【数6】

【0072】
中立面である界面Bの両側のモーメントMおよびMは釣り合っているため、次の式(12)が成立する。そして、切離し部16の(すなわち、被膜形成板10の)厚さをd、試験被膜の厚さ(膜厚)をdとした場合、モーメントMおよびMは、それぞれ次の式(13)および式(14)で表される。
【数7】

【0073】
式(13)および式(14)を式(12)に代入すると、次の式(15)となる。式(15)を変形すると、式(16)を経て式(17)となり、この式(17)から試験被膜100の内部応力Pが求められる。また、試験被膜100の内部歪みεは、式(18)から求められる。
【数8】

【0074】
以上の式に基づき、被膜形成板10から切離した切離し部16の変形の曲率半径r、被膜形成板10を構成する材料の弾性率E、試験被膜100の弾性率E、被膜形成板の厚さd、および試験被膜100の厚さdから、試験被膜100の内部応力Pおよび内部歪みεを算出することができる。この内部応力Pおよび内部歪みεの算出は、既存のコンピュータ等の演算装置を使用することにより、容易に行うことができる。
【0075】
なお、第4のステップにおける内部応力Pの算出は、上述の式以外の式に基づくものであってもよい。例えば、従来提案されている次の式(19)または式(20)によっても、曲率半径rから内部応力Pを求めることができる。
【数9】

【0076】
ここで、νは、切離し部16の(すなわち、被膜形成板10を構成する材料の)ポアソン比であり、νは、試験被膜100のポアソン比である。
【0077】
本実施形態の測定方法では、以上の手順により、試験被膜100の内部応力Pを測定する。なお、上記第1〜4のステップは、測定者が手動により行ってもよいし、専用の装置により自動的に行ってもよい。また、試験片1と、被膜形成板10から切離した切離し部16の変形の曲率半径rを測定する曲率半径測定装置と、曲率判定測定装置によって測定した曲率半径rから試験被膜100の内部応力Pを算出する演算装置と、から被膜の内部応力測定装置を構成するようにしてもよい。さらに、この被膜の内部応力測定装置は、所定の切断器具によって試験片1から切離し部16を切離す切離し装置を備えるものであってもよい。
【0078】
以上説明したように、本実施形態に係る試験片1は、表面10aに試験被膜100が形成される平板状の被膜形成板10と、被膜形成板10を保持する保持部材20と、からなり、被膜形成板10は、保持部材20に固定される固定部12と、保持部材20に固定されない非固定部14と、を備えると共に、非固定部14には、試験被膜100が形成された後に被膜形成板10から切離される切離し部16が設けられ、被膜形成板10から切離した切離し部16の変形に基づいて試験被膜100の内部応力Pを求めることを特徴とする、被膜の内部応力測定用試験片である。
【0079】
このような構成とすることで、より簡便且つ高精度に被膜の内部応力Pを測定することができる。具体的には、保持部材20によって保持することにより、試験被膜100を形成する被膜形成板10の取り扱いが容易となる。また、被膜形成板10に固定部12と、非固定部14を備えることにより、被膜形成板10を確実に保持しながらも、変形量を測定する切離し部16を容易に被膜形成板10から切離すことができる。これにより、測定を簡便且つ迅速に行うことが可能となる。また、試験被膜100を薄く構成することができるため、測定精度を高めることが可能になると共に、微小な内部応力Pであっても測定することが可能となる。
【0080】
また、保持部材20は、保持している被膜形成板10の非固定部14における裏面10bと当接する保持面20aを備えている。このようにすることで、被膜形成板10を安定的に保持することが可能となるため、試験被膜100の形成時や切離し部16の切離し時等における被膜形成板10の不用意な変形や破壊を防止することができる。
【0081】
また、切離し部16は、略矩形状に構成されている。このようにすることで、被膜形成板10から切離した後の切離し部16の弾性変形の状態を安定的に保つことが可能となるため、切離し部16の取り扱いを容易にすると共に、測定精度を高めることができる。
【0082】
また、切離し部16は、被膜形成板10が面内弾性異方性を示す場合に、被膜形成板10の最小弾性率または最大弾性率を示す方向Dに対して自身のいずれかの辺(長辺16aまたは短辺16b)が30乃至60度の角度で交差するように構成されている。このようにすることで、被膜形成板10から切離した後の切離し部16の弾性変形における捩れを解消することが可能となるため、測定精度を高めることができる。
【0083】
また、被膜形成板10は、圧延金属板から構成され、切離し部16は、被膜形成板10の圧延方向Dに対して自身のいずれかの辺(長辺16aまたは短辺16b)が30乃至60度の角度で交差するように構成されている。この場合においても、被膜形成板10から切離した後の切離し部16の弾性変形における捩れを解消することが可能となるため、測定精度を高めることができる。
【0084】
また、被膜形成板10は、試験被膜100の膜厚の60%以上の厚さに構成されることが好ましい。このようにすることで、被膜形成板10から切離した切離し部16が変形する際に皺等が発生するのを防止し、整った形状の円弧状に湾曲させることができる。これにより、曲率半径rの測定を容易にすると共に、測定精度を高めることができる。
【0085】
また、切離し部16は、被膜形成板16から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺(長辺16aまたは短辺16b)の長さの2%以下となる寸法(長辺16aの長さ、短辺16bの長さ、および厚さ)に構成されることが好ましい。このようにすることで、曲率半径rの測定および内部応力Pの算出の際に、切離し部16の自重による変形の影響を排除(無視)することができる。これにより、曲率半径rの測定および内部応力Pの算出を容易にすると共に、測定精度を高めることができる。
【0086】
また、被膜形成板10は、切離し部16を前記被膜形成板から切離した場合に、試験被膜100の内部応力Pによって切離し部16が300mm以下の曲率半径rで湾曲するように構成されることが好ましい。このようにすることで、曲率半径r等の変形量を測定する際の誤差要因を少なくすることが可能となるため、測定精度を高めることができる。
【0087】
また、被膜形成板10は、厚さが0.1mm以下のステンレス箔から構成されている。このようにすることで、適度な強度および弾性率を有する被膜形成板10を構成することができるため、被膜形成板10および切離し部16の取り扱いを容易にすると共に、測定精度を向上させることができる。また、市販のシムテープ等を活用して、被膜形成板10を容易に構成することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、切離し部16の変形の曲率半径rから試験被膜100の内部応力Pを測定する例を示したが、本実施形態の試験片1は、例えば反りの高さ等、曲率半径r以外の変形量に基づいて内部応力Pを測定する場合にも使用可能であることは言うまでもない。
【0089】
また、本実施形態に係る測定方法は、保持部材20に保持された平板状の被膜形成板10の表面10aに試験被膜を形成する第1のステップと、被膜形成板10から保持部材20に固定されていない部分(すなわち、非固定部14)の少なくとも一部(すなわち、切離し部16)を切離す第2のステップと、被膜形成板10から切離した部分(すなわち、切離し部16)の変形の曲率半径rを測定する第3のステップと、曲率半径rから試験被膜100の内部応力Pを算出する第4のステップと、を有することを特徴とする、被膜の内部応力測定方法である。
【0090】
このような構成とすることで、より簡便且つ高精度に被膜の内部応力Pを測定することができる。具体的には、保持部材20によって被膜形成板10を確実に保持しながらも、変形量を測定する部分を容易に被膜形成板10から切離すことができる。これにより、測定を簡便且つ迅速に行うことが可能となる。また、試験被膜100を薄く構成することができるため、測定精度を高めることが可能になると共に、微小な内部応力Pであっても測定することが可能となる。
【0091】
また、被膜形成板10から切離した部分の変形の曲率半径rを測定するため、既存の接触角計等で確立された測定技術を活用して、高精度な測定を簡便且つ迅速に行うことができる。
【0092】
また、本実施形態に係る測定方法は、第2のステップにおいて、略矩形状の部分(すなわち、切離し部16)を被膜形成板10から切離す。このようにすることで、被膜形成板10から切離した部分の弾性変形の状態を安定的に保つことが可能となるため、切離した部分の取り扱いを容易にすると共に、測定精度を高めることができる。
【0093】
また、本実施形態に係る測定方法は、被膜形成板10が面内弾性異方性を示す場合に、第2のステップにおいて、被膜形成板10の最小弾性率または最大弾性率を示す方向に対していずれかの辺(すなわち、長辺16aまたは短辺16b)が30乃至60度の角度で交差する略矩形状の部分(すなわち、切離し部16)を被膜形成板10から切離す。このようにすることで、被膜形成板10から切離した部分の弾性変形における捩れを解消することが可能となるため、測定精度を高めることができる。
【0094】
また、本実施形態に係る測定方法では、第2のステップにおいて、被膜形成板10から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺(すなわち、長辺16aまたは短辺16b)の長さの2%以下となる寸法(長辺16aの長さ、短辺16bの長さ、および厚さ)の略矩形状の部分(すなわち、切離し部16)を被膜形成板10から切離すことが好ましい。このようにすることで、曲率半径rの測定および内部応力Pの算出の際に、切離し部16の自重による変形の影響を排除(無視)することができる。これにより、曲率半径rの測定および内部応力Pの算出を容易にすると共に、測定精度を高めることができる。
【0095】
なお、曲率半径rの測定方法、および曲率半径rに基づく内部応力Pの算出方法は、本実施形態において示した例に限定されるものではなく、その他の既知の方法を用いてもよいことは言うまでもない。また、本実施形態では、切離し部16が試験被膜100側に凹となるように湾曲する場合を示したが、本発明は、切離し部16が逆方向に湾曲する場合にも適用可能であることは言うまでもない。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の被膜の内部応力測定用試験片および被膜の内部応力測定方法は、各種被膜の内部応力の測定の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 試験片
10 被膜形成板
10a 被膜形成板の表面
12 固定部
14 非固定部
16 切離し部
16a 切離し部の長辺
16b 切離し部の短辺
20 保持部材
20a 保持面
100 試験被膜
D 最小弾性率もしくは最大弾性率を示す方向または圧延方向
内部応力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に試験被膜が形成される平板状の被膜形成板と、
前記被膜形成板を保持する保持部材と、からなり、
前記被膜形成板は、前記保持部材に固定される固定部と、前記保持部材に固定されない非固定部と、を備えると共に、前記非固定部には、前記試験被膜が形成された後に前記被膜形成板から切離される切離し部が設けられ、
前記被膜形成板から切離した前記切離し部の変形に基づいて前記試験被膜の内部応力を求めることを特徴とする、
被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項2】
前記保持部材は、保持している前記被膜形成板の非固定部における裏面と当接する保持面を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項3】
前記切離し部は、略矩形状に構成されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項4】
前記切離し部は、前記被膜形成板が面内弾性異方性を示す場合に、前記被膜形成板の最小弾性率または最大弾性率を示す方向に対して自身のいずれかの辺が30乃至60度の角度で交差するように構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項5】
前記被膜形成板は、圧延金属板から構成され、
前記切離し部は、前記被膜形成板の圧延方向に対して自身のいずれかの辺が30乃至60度の角度で交差するように構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項6】
前記被膜形成板は、前記試験被膜の膜厚の60%以上の厚さに構成されることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項7】
前記切離し部は、前記被膜形成板から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺の長さの2%以下となる寸法に構成されることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項8】
前記被膜形成板は、前記切離し部を前記被膜形成板から切離した場合に、前記試験被膜の内部応力によって前記切離し部が300mm以下の曲率半径で湾曲するように構成されることを特徴とする、
請求項1乃至7のいずれかに記載の被膜の内部応力測定用試験片。
【請求項9】
保持部材に保持された平板状の被膜形成板の表面に試験被膜を形成する第1のステップと、
前記被膜形成板から前記保持部材に固定されていない部分の少なくとも一部を切離す第2のステップと、
前記被膜形成板から切離した部分の変形の曲率半径を測定する第3のステップと、
前記曲率半径から前記試験被膜の内部応力を算出する第4のステップと、を有することを特徴とする、
被膜の内部応力測定方法。
【請求項10】
前記第2のステップにおいて、略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、
請求項9に記載の被膜の内部応力測定方法。
【請求項11】
前記被膜形成板が面内弾性異方性を示す場合に、前記第2のステップにおいて、前記被膜形成板の最小弾性率または最大弾性率を示す方向に対していずれかの辺が30乃至60度の角度で交差する略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、
請求項10に記載の被膜の内部応力測定方法。
【請求項12】
前記第2のステップにおいて、前記被膜形成板から切離した場合の自重による撓みの最大変位が自身のいずれかの辺の長さの2%以下となる寸法の略矩形状の部分を前記被膜形成板から切離すことを特徴とする、
請求項10または11に記載の被膜の内部応力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−145352(P2012−145352A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1828(P2011−1828)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000162504)協和界面科学株式会社 (10)