説明

被覆打圧チューインガム、その製造方法及び打圧チューインガムの酸化防止方法

【課題】酸化による打圧チューインガムの品質劣化を抑制し、長期保存性に優れた被覆打圧チューインガム及び打圧チューインガムの酸化防止方法、そして、打圧チューインガムの含有量に拘わらず、粒数当りのチューインガムの含有量を均等供給でき、表面に生じる亀裂(ヒビ)を防止し、透明感ある外観を呈する被覆打圧チューインガムを簡便に製造する被覆打圧チューインガムの製造方法を提供する。
【解決手段】打圧チューインガムをハードキャンディで被覆してなることを特徴とする被覆打圧チューインガムにより達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打圧チューインガムの酸化による品質劣化を防止することができる被覆打圧チューインガム、その製造方法及び打圧チューインガムの酸化防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チューインガムは、食品の中では比較的保存性に優れているが、長期保存したり、チューインガムを粉末化して表面積を大きくしたり、機能性成分を添加したりすると、酸化の影響が出やすく、ガムベースがぼろついて口中でまとまりにくく噛み心地を悪くしたり、酸化臭が出て風味を悪くしたり、機能性成分の効力が失われたりするという欠点がある。
【0003】
そこで、チューインガムを空気から遮断し、風味等の保存性を向上させる方法として、チューインガムを糖衣などでコーティングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、チューインガム表面で糖衣蜜(水分)を乾燥(温風)させるため、コーティング時にチューインガムが水分と温風に触れ、かつ空気も一緒に閉じ込めるため、残存酸素の影響を受ける等のチューインガムの劣化要因となる。また、通常、食感の良いコーティング層とするためには層を薄くする必要があり、充分な気密性、保存性が得られない。更に、水分と温風は、糖衣層の厚みにもよるが、通常30分〜1時間程度供給されるため、機能性成分が含有されている場合には、該成分の劣化が促進されるという問題点を有するものである。
【0004】
上記問題点を解決するには、糖衣よりも厚みを増しても食感の良いハードキャンディで被覆することが考えられる(例えば、特許文献2参照)。特に、ハードキャンディ生地は高温で煮詰めているため、溶存酸素も殆どなくコーティング層としては良好である。
しかしながら、特許文献2で用いられるチューインガムは、剤型について何ら言及されていないため、一般的な、チューインガム原料を混練して成形されるチューインガム生地であると考えられる。そして、上記の一般的なチューインガム生地を用いてハードキャンディ被覆チューインガムの製法では、温めたハードキャンディ生地をバッチフォーマーを用いてロープ状に押し出し供給し、そのセンターに同様にチューインガム生地をロープ状に押し出し供給して、サイジングカッターで任意の大きさに切断しているが、粘弾性の異なるチューインガム生地とハードキャンディ生地とでは、押し出し圧力が異なり、各々脈動して、一定量を安定して供給することが難しく、サイジングカッターで切断後の1粒あたりのチューインガムの量が異なるために、チューインガム中の成分量が変動し、特に機能性成分が含有されている場合には、所定量を摂取基準として設計しにくいという問題があった。
また、上記のようにして得られたハードキャンディ被覆チューインガムは、更にスタンピング成型して、形状を整える必要があるため、表面に無数の亀裂(ヒビ)が入り、酸素の出入りが自由となり酸化が促進されると共に外観上透明感が得られなかった。
【0005】
また、本件出願人は、打錠チューインガムを形成する打錠用粉末ガム粒子表面に被覆層を施すことにより、粉末ガムが酸化することによって発生する酸化臭や、粘弾性の低下や、喫食した際のぼろぼろとした纏まり感のない食感を防止することを既に提案している(特許文献3参照。)。
しかしながら、この方法は酸化防止に効果的であるが、粉末ガム粒子1粒ずつに被覆層を形成するという煩雑な工程が必要であった。
【0006】
【特許文献1】特表2005−531317号公報
【特許文献2】実公昭53−7356号公報
【特許文献3】特開平2006−1166791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、酸化による打圧チューインガムの品質劣化を抑制し、長期保存性に優れた被覆打圧チューインガム及び打圧チューインガムの酸化防止方法、そして、打圧チューインガムの含有量に拘わらず、粒数当りのチューインガムの含有量及び配合成分を均等供給でき、表面に生じる亀裂(ヒビ)を防止し、透明感ある外観を呈する被覆打圧チューインガムを簡便に製造する被覆打圧チューインガムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、打圧チューインガムをハードキャンディで被覆してなることを特徴とする被覆打圧チューインガムにより、上記目的を達成する。
【0009】
好ましくは、上記打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである。
【0010】
また、本発明は、下記工程を順次備えてなることを特徴とする被覆打圧チューインガムの製造方法により、上記目的を達成する。
(1)ハードキャンディ生地を、モールドに所定量充填する工程
(2)上記モールドに充填されたハードキャンディ生地上に、打圧チューインガムを充填する工程
(3)上記モールドに充填された充填物を冷却し、モールドから取り出すことにより被覆打圧チューインガムを得る工程
【0011】
好ましくは、更に、上記工程(2)と(3)の間に、上記打圧チューインガム上に、更にハードキャンディ生地を充填する工程を備える。
更に好ましくは、打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである。
【0012】
また、本発明は、打圧チューインガムをハードキャンディで被覆することを特徴とする打圧チューインガムの酸化防止方法により、上記目的を達成する。
【0013】
好ましくは、上記打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである。
【0014】
すなわち、本発明者らは、まず、チューインガムの酸化防止を顕著に防止し得る被覆層について検討を行なった結果、被覆層の厚みを増しても食感に影響を及ぼすことのないハードキャンディを用いることを見出した。
更に、ハードキャンディを被覆層として用いる場合の製造方法として、チューインガム中の機能性成分などに対する熱や水分の影響を最小限に抑制し、製品一粒あたりのチューインガム含有量及び配合成分を均等供給できる方法を検討した。その結果、従来のロープ成型によるキャンディ被覆方法ではなく、一粒ずつをモールドで成型するモールドキャンディ製造ラインを応用することはできないかと考えた。すなわち、モールドに所定量のハードキャンディ生地を充填し、その上から機能性成分等を含有するチューインガム生地を充填させると、短時間でハードキャンディ生地が冷却固化し、チューインガムへの熱伝導が最小限に抑制されるのではないかと想起した。そこで、更に検討を進めた結果、チューインガム生地を、打錠やスタンピング等の打圧チューインガムとして供給すると、その含有量に拘わらず、例えば極少量であっても均等量を供給することができること、更には打圧チューインガムが粉末ガムを打錠したものである場合には、機能性成分を含有させるこ
とができる等ガム成分を選ばず効果的であることを見出した。
また、モールドに所定量のハードキャンディ生地を充填し、打圧チューインガムを供した後、更にハードキャンディ生地を供給すると、打圧チューインガムが完全に被覆され、かつハードキャンディ層部分にひび割れも無く、意外にも、ハードキンディ生地による熱ダメージも少なく、打圧チューインガムの保存安定性に効果的であることを見出し本発明を完成した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被覆層の厚みを増しても食感に影響を及ぼさないため、打圧チューインガムを酸化による品質劣化から保護でき、長期間の保存が可能になる。
また、打圧チューインガムの含有量に拘わらず、例えば含有量が極少量であっても、正確に製品一粒ずつに所定量を供給することができる。従って、機能性成分を所定量摂取することを目的とするチューインガム製品であっても、ばらつきなく機能性成分を所定量配合させることが可能である。特に、粉末ガムを打錠した打錠チューインガムは、更に少量を一定量として成形するのが可能で、かつ色々な形状にばらつきなく成形できるため、外観上も優れたものが得られる。
詳述すると、本発明によれば、ハードキャンディ生地による打圧チューインガムの一部被覆(半被覆)の場合には、ハードキャンディの表層に打圧チューインガムが点在する興趣ある外観とすることができ、また、ハードキャンディ生地の全面被覆の場合には、ハードキャンディの中心部に打圧チューインガムが透けて見える等、ハードキャンディの被覆部位を自由に設定することができるため、外観変化に富んだ被覆打圧チューインガムとすることができる。
更には、打圧チューインガムを被覆するに当り、糖衣を行う必要がなく、糖衣工程のように長時間レボリングパンやコーティングマシンを稼動させる必要がなく、短時間で被覆打圧チューインガムが製造できる。
また、ハードキャンディの風味及び食感と、打圧チューインガムの風味及び食感とが同時に楽しめ、嗜好性に富んだ被覆打圧チューインガムとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の被覆打圧チューインガムは、打圧チューインガムとそれを被覆するハードキャンディとからなる。
【0017】
本発明に係る打圧チューインガムは、糖質甘味料とガムベースとを含有する。
【0018】
上記糖質甘味料としては、ぶどう糖などの単糖類、砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース等の二糖類、マルトトリオース、パノースなどの三糖類、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖、ソルビトール、キシリトール、還元パラチノース、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールなどの糖アルコール類等が挙げられ、適宜選択し、単独でも数種組合せて用いればよい。
好ましくは、糖質甘味料はシュガーレスであるのが、更に好ましくは還元パラチノースを用いるのが、特に糖質甘味料の80重量%以上に還元パラチノースを用いるのが、打圧適性、風味、食感及び口腔衛生の点から好ましい。
上記還元パラチノースは、打圧チューインガムが粉末ガムを打錠して成型される場合、粉末で用いられ、その粒度は還元パラチノース全体中90重量%以上が、好適には20メッシュパス〜200メッシュオン、更に好適には、60メッシュパス〜120メッシュオンであることが打錠製造適性の点で望ましい。
糖質甘味料の含有量は、打圧チューインガム全体重量中、好ましくは50〜80重量%であることが、打圧適性及び風味や食感の点で望ましい。
【0019】
次に、本発明の打圧チューインガムに用いられるガムベースは、従来から用いられているものであり、例えば、弾性体、樹脂類、ワックス類、乳化剤、無機物、BHT及びトコフェロール等の酸化防止剤等が適宜選択して使用される。
【0020】
弾性体は、ゴム様物質とも言われ、例えば、ポリイソブチレン(イソブチレン重合体)、ポリブテン、ブチルゴム、ポリイソプレン、天然ゴム等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせても良い。
【0021】
樹脂類としては、チクル等の天然樹脂、酢酸ビニル樹脂やエステルガム等の合成樹脂等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせても良い。
【0022】
ワックス類は、例えば、ライスワックス、キャンディリラワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせても良い。
【0023】
乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド等が挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせても良い。
【0024】
無機物としては、炭酸カルシウム、タルク、リン酸カルシウムなどが挙げられ、これらは単独でも複数組み合わせても良い。
【0025】
また、本発明の打圧チューインガムは、上記糖質甘味料、ガムベースの他に、副原料として、スクラロース、アセスルファムK等の非糖質甘味料、香料、調味料、色素、安定剤、各種機能性成分等を適宜添加しても良い。
【0026】
上記各種機能性成分は、公知の機能性成分を使用すれば良く、例えば、整腸作用を高める乳酸菌体粉末(ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)等)、セルロース,ヘミセルロース,リグニン,ペクチン,マンナン,アルギン酸,寒天,グアーガム,アラビアガムなどの食物繊維や、口腔環境を改善する卵黄抗体,歯垢分解酵素,ガロタンニン,パン酵母,マスティックオイルや、口臭予防効果がある茶抽出物,銅クロロフィル,シャンピニオンエキス,健胃漢方成分,フラボノイド,植物乾留成分,キナ酸,マメ科植物由来香気成分,米ぬか類発酵エキス,大豆発酵エキス,オレガノ粉砕物,ミネラル含有酵母や、アレルギー起因物質を低減するフコイダン、山査子エキスや、ヨモギエキス、植物体由来のアルコール脱水素酵素(以下、ADHと記す)、コエンザイムQ10(以下、CoQ10と記す)、下記に示す一般式(1)(但し、式中Rは水素原子、単糖類もしくは少糖類の残基、又は炭素数2〜20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分、下記に示す一般式(2)(但し、式中Rは水素原子、単糖類もしくは少糖類の残基、又は炭素数2〜20のアシル基である。)からなる脂肪分解促進成分、小麦抽出物、海藻抽出物、種子粘質、植物分泌粘質、果実粘質物、微生物粘質、蛋白質等が挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
上記ADHとは、別名アセトアルデヒド還元酵素、アルコールデヒドロゲナーゼとも言われ、アルコールのアルデヒドへの酸化を可逆的に触媒する酵素である。そして、このADHを含む植物体としては、例えばキュウリ、なす、大根、セロリ、トマト、ネギ等が挙げられる。
【0030】
上記CoQ10(補酵素Q−10)は、一般的にはビタミンQとも呼ばれ、ユビデカレノン、ユビキノン、ユビキノール−10とも呼ばれる強力な抗酸化物質であり、身体を最も望ましい状態で機能させるために細胞に与えるとよい栄養素の一つである。一般名はユビデカレノン(ubidecarenone)で、化学名は、2-(3,7,11,15,19,23,27,31,35,39−decamethyl−2、6,10,14,18,22,26,30,34,38−tetracontadecaenyl)−5,6−dimethoxy−3−methyl−1,4−benzoquinoneである。
CoQ10製品は、上記ユビデカレノンを主成分として含んでいればよく、例えば、日清ファルマ社製「コエンザイムQ10」等が挙げられる。
【0031】
上記小麦抽出物は、小麦から抽出した成分で、淡黄〜白色の粉末でアミラーゼ活性阻害を有し、ダイエット素材として知られており、製品としては、「Wheat Slimer−1」(協同乳業(株)製)等が挙げられる。
【0032】
上記海藻抽出物は、海中の藻類(主として胞子植物)から得られる物質で、例えばフコイダン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、プロピレングリコールエステル等が挙げられる。
【0033】
上記種子粘質は、例えばローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、クイン
スシードガム(マルメロ種子ガム質)、プシリウムガム(オオバコ種子ガム質)、フラックスガム(亜麻種子ガム質)、タラガム、愛玉子、オクラ粘質物等が挙げられる。
【0034】
上記植物分泌粘質は、例えばアラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガッティガム、アーモンドガム、ダムソンガム、サポートガム、カーヤガム等が挙げられる。
【0035】
上記果実粘質物は、例えばペクチン、アラビノガラクタン等が挙げられる。
【0036】
上記微生物粘質は、例えばキサンタンガム、プルラン、デキストラン、カードラン等が挙げられる。
【0037】
上記蛋白質は、例えばゼラチン、カゼイン、カゼインナトリウム、大豆蛋白、小麦蛋白、小麦抽出物、卵白粉末、乳性蛋白等が挙げられる。
【0038】
また、更に好適には、乳酸菌などの特に水分による劣化が著しい機能性成分の場合には、低水分活性成分を添加すると上記成分の劣化防止に好適である。具体的に、低水分活性成分としては、乾燥でん粉やデキストリン等が挙げられる。上記乾燥でん粉としては、乾燥殺菌コンスターチ、乾燥殺菌馬鈴薯でん粉、乾燥殺菌タピオカでん粉等が挙げられる。特に乾燥殺菌馬鈴薯でん粉はでん粉独特の風味がなく、打錠チューインガムの風味設計に支障を与えない点で好適である。製品例としては、松谷化学工業(株)製の「精製乾燥殺菌馬鈴薯でん粉」が挙げられる。
【0039】
上記打圧チューインガムの水分活性(AW)は、好ましくは、水分活性がAW0.3以下であることが、乳酸菌などの機能性成分を含有してもその活性を維持し得る点で好ましい。
【0040】
上記打圧チューインガムとは、瞬間的に高圧を加えて成形された打圧成形チューインガムを意味する。上記打圧としては、例えば、打錠、スタンピング等が挙げられる。打圧前のチューインガムの剤形は何ら限定するものではないが、打錠用粉末ガムが好適であり、特に該打錠用粉末ガムを打錠することにより打圧チューインガムとすることが、機能性成分を添加したときの熱や水分のダメージを最小限に抑えること、少量、小型の一定量の打圧チューインガムを得られる点で好適である。
【0041】
上記打錠用粉末ガムとは、一般的な粉末または顆粒状のガムであればよく、特に限定するものではない。好ましくは粒径5mm以下、更に好ましくは3mm以下、より好ましくは10メッシュパス(粒径1.7mm以下)であることが打錠適性の点で好ましい。これらは打錠用粉末ガム全体重量中70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上に揃っていることが良いという意味である。すなわち、粒度分布が狭く揃っているほど打錠時の成形性が良い。
なお、後述するように打錠用粉末ガム表面に被覆層を形成する場合には、上述の粒度は被覆層が形成されていない状態の打錠用粉末ガムの粒度を意味する。
【0042】
更に、打錠用粉末ガムの粒子を各種被覆成分で被覆した被覆打錠用粉末ガムにすると、ガムベースの酸化防止、及び機能性成分のガムベース吸着防止の点で好適である。被覆成分としては、上記糖質甘味料、非糖質甘味料、でん粉類(デキストリン、でん粉、化工でん粉、変性でん粉、でん粉分解物など)、アラビアガム、ゼラチン、シェラック、カルシウム、脱脂乳製品類、蛋白質、粉末呈味原料(粉末茶類、卵白粉末、調味料、粉末果汁等)、酸味料、安定剤、乳化剤、ゲル化剤、増粘剤、塩類、着色料、栄養素(食物繊維、水溶性ビタミン類、ミネラル、ビフィズス菌増殖因子等)、ガルシニア・カンボジアエキス粉末、ギムネマ粉末等が挙げられ、適宜選択し単独または複数組み合わせて用いればよい
。上記被覆成分で打錠用粉末ガムを被覆する方法は、特に限定するものではないが、ガムベースの酸化防止、及び機能性成分のガムベース吸着防止の観点から、被覆層が粉末ガム全体に略均一に形成されるような方法を採ることが望ましく、例えば、流動層造粒装置を用いた流動層コーティング法などが挙げられる。
上記被覆成分は、打錠用粉末ガム全体重量中、好ましくは0.05〜5重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%付着していることがガムベースの酸化防止、打錠用粉末ガムとは別個に準備された他の成分のガムベース吸着防止及び食感の点で好適である。
【0043】
上記のような原料を用いて、本発明の打圧チューインガムは、例えば次のようにして得られる。まず、打錠用粉末ガムを打錠することにより打錠チューインガムを製造する方法を説明する。
最初に打錠用粉末ガムを調製する。すなわち、公知の粉末ガム製造方法を用いればよいが、例えば、ガムベース、糖質甘味料、必要に応じて副原料を適宜添加したものを、加熱混合して均質化し、冷却した後、粉砕機(例えばハンマーミル、オシレーター等)で粉砕する。この後、粒度の均一化のため、ふるいにかけて粒度を分別してもよい。引き続き、必要に応じて、予め被覆成分を溶液化しておいた被覆溶液を、上記粉末ガムを空中に吹き上げたところに噴霧し、その後乾燥するという工程を適宜の回数繰返すことにより、粉末ガム表面に被覆層を形成した打錠用粉末ガムを得ることができる。上記乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、各種送風機等を用いればよい。乾燥条件は、噴霧と乾燥を繰返し行い、粉末ガムがダマにならない程度に行なえばよい。
なお、打錠チューインガムに、機能性成分等の中でも、生地に吸着したり、水の存在下で劣化する等の性質を有する成分を含有させる場合には、上記打錠用粉末ガムの副原料として用いるのではなく、打錠用粉末ガムを打錠する際に添加することが、該成分の劣化防止の点で望ましい。
【0044】
次いで、上記打錠用粉末ガムと、必要に応じて機能性成分や低水分活性成分等の副原料とを粉体混合して、打錠機に供給し、共に打錠することにより打錠チューインガムが得られる。
【0045】
次に、打錠用粉末ガムを用いずに、打錠チューインガムを製造する方法を説明する。
まず、ガムベース原料を溶融しながら混練し、糖質甘味料を添加し、更に加温しない状態で、香料、能性成分などの副原料を添加して混練すれば、チューインガム生地となる。次いで、これを圧延、切断、打錠することにより打錠チューインガムが得られる。
【0046】
本発明に係るハードキャンディは、公知のハードキャンディを用いればよい。
ハードキャンディは、糖質甘味料を含有してなる。糖質甘味料としては、上記の打錠チューインガムに記載の砂糖、ブドウ糖、糖アルコール(マルチトール、還元水飴、還元パラチノース等)等から適宜単独もしくは複数選択して用いればよい。
また、ハードキャンディには副原料を含有してもよく、該副原料も、上記の打錠チューインガムに用いる副原料を適宜単独もしくは複数選択して用いればよい。
【0047】
次に、ハードキャンディの製法は公知の製法により製造すればよく、例えば糖質甘味料に適宜副原料を添加し、加熱溶解し、減圧クッカーにて120〜160℃程度で水分3%以下程度に煮詰めて調整し、必要に応じて120〜150℃程度で熱に弱い香料、酸味料、着色料等の副原料を加え、混練すれば、ハードキャンディ生地が得られる。
【0048】
上記の打錠チューインガムとハードキャンディ生地とを用いて本発明の被覆打圧チューインガムである被覆打錠チューインガムは、例えば次のようにして製造される。
まず、一粒ずつ成型可能な所定のモールドに、120℃程度に加温したハードキャンディ生地を各々所定量充填する。
次いで、上記モールドに充填したハードキャンディ生地上に、打錠チューインガムを所定量充填する。
このまま冷却後、モールドから取り出せば、打錠チューインガムが一部被覆(半被覆)された被覆打錠チューインガムを得ることができる。なお、上記冷却方法は、特に限定しないが、放冷とすることが亀裂(ヒビ)を防止する点で好適である。
また、モールドから取り出し後、冷却媒体(冷風等)を吹き付けるなど熱交換を行うと、チューインガムへの熱ダメージを抑制する点で好適である。
【0049】
このようにして得られた一部被覆(半被覆)された被覆打錠チューインガムは、打錠チューインガムがハードキャンディ表層中に露出しているので、ハードキャンディからの熱履歴が最小限にとどめられ、かつ一部被覆(半被覆)状態であるため、酸化の影響を受けにくい。また、外観的にも、亀裂(ヒビ)のない透明感を有するハードキンディ表面に打錠チューインガムが散りばめられた興趣に富んだ外観を呈する。
【0050】
更に好適には、上記の一部被覆(半被覆)チューインガムにおいて、打錠チューインガムを充填後、該打錠チューインガム上に更にハードキンディ生地(120℃程度)を充填し、このまま放冷等の冷却をしてモールドから取り出せば、全面被覆の被覆打錠チューインガムが得られる。
【0051】
このようにして得られた全面被覆の被覆打錠チューインガムは、酸化が顕著に防止されると共に、意外にもハードキャンディ生地の放冷が早いために、熱履歴が少なく、機能性成分等が含有されている場合にはその活性が維持され、ハードキャンディ中に、打錠チューインガムが透けて見えるという、外観的にも優れた被覆打錠チューインガムである。
【0052】
本発明の被覆打圧チューインガムを製品化する際には、適宜包装紙、箱、缶、袋、パウチ、ボトル等で包装すればよく、従来の酸化防止方法のように、通気性の少ない材質で、更に好ましくは缶、パウチ、ボトル等の繰返し密封可能な開口部を有する容器で密封包装しなくても酸化による劣化防止を得ることができる。また、包装は、個包装でも、複数個収容して包装してもよい。
なお、シリカゲル等の除湿剤等を同封させてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づき例示する。
【0054】
〈実施例1〉
《打錠用粉末ガムの調製》
打錠用粉末ガム成分(ガムベース30重量%、還元パラチノース56重量%、ソルビトール14重量%)を加熱混合して均質化し、20℃に冷却した後、ハンマーミルで粒径8メッシュパス〜120メッシュオンの粉末状に粉砕することにより、打錠用粉末ガムを調製した。
【0055】
《打錠チューインガムの調製》
上記のようにして得られた打錠用粉末ガムを用い、表1に示す組成となるように原料を粉体混合した後、圧力0.4tonで共に打錠して、1.2g/粒、直径15mmの円盤状の打錠チューインガムを得た。
【0056】
【表1】

【0057】
《ハードキャンディ生地の調製》
表2中の香料以外の原料を鍋に計量し、150℃まで煮詰めた。その後、香料を添加した。
【0058】
【表2】

【0059】
《被覆打錠チューインガムの調製》
150℃に保温したハードキャンディ生地0.9gを、直径20mmの円盤状キャンディモールドに充填し、その上に、打錠チューインガム1粒を充填した。更に、その上から0.9gのハードキャンディ生地を充填し、打錠チューインガムの全面を被覆した。
次いで、モールド中の打錠チューインガムを全面被覆したハードキャンディを放冷後、モールドから取り出すことにより、被覆打錠チューインガムを得た。
このようにして得られた被覆打錠チューインガムは、打錠チューインガム4部に対し、ハードキャンディ層が6部の割合で被覆されていた。
【0060】
〈実施例2〉
表3に示す原料をニーダーにて混練した後、1.2g/粒となるようにスタンピング成形を施し、直径15mmの円盤状の打圧チューインガムを得た他は、実施例1と同様に被覆打圧チューインガムを得た。
【0061】
【表3】

【0062】
〈比較例1〉
実施例2の打圧チューインガムと同様にして打圧チューインガムを調製し、何も被覆は施さなかった。
【0063】
〈比較例2〉
実施例2と同様にして打圧チューインガムを調製した後、下記の方法で、打圧チューインガムに糖衣を施した。
即ち、打圧チューインガム350gを糖衣釜に投入し、25rpmで回転させながら、予め調製した表4に示す組成の糖衣シロップ(40℃)を約5〜8g/粒噴霧した後、30℃の温風を5分間供給することにより乾燥を行う作業を一過程とし、これを糖衣層全体の厚みが0.75mmになるまで繰り返し行うことにより、糖衣被覆チューインガムを得た。
【0064】
【表4】

【0065】
〈比較例3〉
表3に示す原料をニーダーにて混練することによりセンターガム部を調製した(打錠もしくはスタンピング成形は行なっていない)。また、ハードキャンディ生地は、実施例1と同様にして調製した。これらのセンターガム部、ハードキャンディ生地をそれぞれ用いて、下記の方法で、被覆チューインガムを得た。
即ち、上記ハードキャンディ生地を大理石上で約100℃まで冷却し、長方形の板状に延展した。その後、センターガム部40gを棒状に成型し、該センターガム部に上記延展したハードキャンディ生地60gを巻きつけた。これをロープサイジングで直径1.5cmとなるよう延伸しながら3.0g/粒となるよう切断し、その後、1粒ずつスタンピング成型を施した。
このようにして得られたチューインガム含有スタンピングキャンディは、センターガム部4部に対し、ハードキャンディ部が6部の割合で被覆されていた。
【0066】
上記のようにして得られた実施例1〜2品及び比較例1〜3品を、40℃の恒温槽に入れて4ヵ月間保存後、それぞれのガムの品質劣化度合いを、専門パネラー10名による風味の官能検査により実施した。また、同時に製品表面の外観状態を目視にて確認した。
その結果を表5に示す。
【0067】
【表5】

【0068】
上記の結果から、実施例1及び2品は、酸化の影響が少なく、不快な酸化臭を感じることのない風味良好であり、ハードキャンディとチューインガムのそれぞれの食感及び風味を味わうことができ、嗜好性に優れるものであった。更に、咀嚼時にも、一塊のまとまった噛み心地のよい食感であった。また、表面は、亀裂(ヒビ)のない、透明感のある美しい外観を呈していた。特に、実施例1品は、1粒当たりのビタミンC含有量のバラツキ誤差が所定値±5%以内で精度の高いものであった。
これに対し、比較例品は、酸化の影響により不快な酸化臭で風味が劣り、咀嚼時には口の中でボロボロと一体感のない食感であった。特に、比較例2品は、複数層の異なる食感を得ることができない、面白みのない食感であった。また、比較例3品は、表面に無数の亀裂が生じ、透明感に欠ける外観であった。更には、比較例1及び2品は、酸化によりビタミンCが劣化してしまい、特に比較例1品は顕著であった。比較例3品は、1粒当たりのビタミンC含有量のバラツキが激しく、均等な組成の製品を製造することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打圧チューインガムをハードキャンディで被覆してなることを特徴とする被覆打圧チューインガム。
【請求項2】
打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである請求項1記載の被覆打圧チューインガム。
【請求項3】
下記工程を順次備えてなることを特徴とする被覆打圧チューインガムの製造方法。
(1)ハードキャンディ生地を、モールドに所定量充填する工程
(2)上記モールドに充填されたハードキャンディ生地上に、打圧チューインガムを充填する工程
(3)上記モールドに充填された充填物を冷却し、モールドから取り出すことにより被覆打圧チューインガムを得る工程
【請求項4】
更に、上記工程(2)と(3)の間に、上記打圧チューインガム上に、更にハードキャンディ生地を充填する工程を備えてなる請求項3記載の被覆打圧チューインガムの製造方法。
【請求項5】
打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである請求項3又は4記載の被覆打圧チューインガムの製造方法。
【請求項6】
打圧チューインガムをハードキャンディで被覆することを特徴とする打圧チューインガムの酸化防止方法。
【請求項7】
打圧チューインガムが、粉末ガムを打錠したものである請求項6記載の打圧チューインガムの酸化防止方法。

【公開番号】特開2008−48674(P2008−48674A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228782(P2006−228782)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】