説明

裂傷評価用サンプル及び裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置

【課題】 人間の指が可動部に挟まれた際の裂傷の発生を模擬的におこなって可動部の安全性の評価することができる。
【解決手段】 把持部1から突出した人間の骨を模した骨部2と、骨部2に着脱自在に被嵌される被覆部3とで構成してある。被覆部3が、骨部2に被嵌した状態で骨部2の周囲を囲む骨部2よりも硬度が低い第1の弾性部4と、第1の弾性部4を被覆する第1の弾性部4よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部5の2層構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指を挟むような可動部に対する安全性評価を行うための裂傷評価用サンプル及び裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、手指を挟むような可動部に対する安全評価を行うための試験指として非特許文献1、非特許文献2が知られている。
【0003】
上記従来例に示された試験指は、危険源となる可動部への手指の接触の有無を評価するための人間の指を模した形状となる金属部と把持部とからなり、人間の指を模した形状の金属部が把持部から一体に突設したものであり、危険源となる可動部への手指の接触の有無を評価するためのものでしかなく、可動部などに挟まれたときの裂傷を測定することはできず、このため、危険源となる可動部に手指を挟まれた時の危険の大きさを知ることができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電機用品の技術基準の解説(通商産業省資源エネルギー庁公益事業部電力技術課編 電機用品の技術基準および取扱細則 平成10年7月25日 第9版発行 社団法人日本電気協会)の第184頁、第185頁の「別表第四 1.共通の事項」
【非特許文献2】玩具安全基準書ST−2002(社団法人日本玩具協会 2002年9月)の第31頁、第32頁、第33頁の「玩具の部品あるいは構成部品の接触可能度」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来にあっては、人間の指が可動部に挟まれた際の裂傷を模擬的におこなって危険源となる可動部の安全性評価を行うための人間の指に模した裂傷評価用サンプルはなかった。また、このような人間の指に模した裂傷試験を行うための裂傷サンプルの物性を設定するための装置もなかった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みて発明したものであって、危険源となる可動部に人間の指が挟まれた際の裂傷の発生を模擬的におこなって可動部の安全性の評価することができる裂傷評価用サンプルを提供すること、及び、簡単に裂傷評価用サンプルの物性を人間の手指の物性に近い状態に設定することができる装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような構成としている。
【0008】
本発明の裂傷評価用サンプルは、把持部1から突出した人間の骨を模した骨部2と、骨部2に着脱自在に被嵌される被覆部3とで構成してある。被覆部3は、骨部2に被嵌した状態で骨部2の周囲を囲む骨部2よりも硬度が低い第1の弾性部4と、第1の弾性部4を被覆する第1の弾性部4よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部5の2層構造となっていることを特徴としている。
【0009】
このような構成とすることで、把持部1を掴んで裂傷評価用サンプル6が、危険源となる可動部に挟まれる試験を行うことで、人間の指が可動部に挟まれた際の裂傷の発生を模擬的に行って可動部の安全性の評価をすることができる。また、被覆部3を、骨部2に被嵌した状態で骨部2の周囲を囲む骨部2よりも硬度が低い第1の弾性部4と、第1の弾性部4を被覆する第1の弾性部4よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部5の2層構造としているので、表皮を備えた人間の指を模すことができて、裂傷ばらつきを押えながら人間の指挟み込みを模擬的に再現することができ、また、骨部2と第2の弾性部5との間に第1の弾性部4が存在しているので、中の骨部2まで傷が付かないようにできる。また、被覆部3が骨部2に着脱自在に被嵌してあるので、被覆部3に裂傷が生じると、消耗品である被覆部3を交換するだけで、骨部2を突設した把持部1を繰り返し使って、可動部の安全性評価を行うことができる。
【0010】
また、第2の弾性部5の硬度が30ShoreA以上50ShoreA以下又は、伸びが160%以上300%以下、又は、引張強さが3.0MPa以上4.5MPa以下、又は引裂強さが3kN/m以上15kN/m以下の少なくとも1つ以上の条件を満たすシリコン樹脂により形成してあることが好ましい。
【0011】
このような構成とすることで、人間の指の皮膚とほぼ等しい裂傷評価が可能となる第2の弾性部5をシリコン樹脂で形成できる。
【0012】
また、第2の弾性部5は長さ1mmの繊維を0.5%以上1.0%以下混合してあることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることで、第2の弾性部5の裂傷強度の調整が容易で、よりいっそう人間の指の皮膚の裂傷強度に近づけるようにできる。
【0014】
また、本発明の裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の裂傷評価用サンプル6の物性を決定するための装置であって、裂傷評価用サンプル6を支持する支持部7と、裂傷評価用サンプル6に直接加圧する先端が所定角度の鋭角なエッジ部8を備えた裂傷用治具9とを備え、エッジ部8で裂傷評価用サンプル6を加圧した際の裂傷評価用サンプル6の裂傷開始時の荷重を測定するようにして成ることを特徴とするものである。
【0015】
このような構成とすることで、物性の異なる多種類の裂傷評価用サンプル6を作成してこの中から人間の指の裂傷強度に近い物性の裂傷評価用サンプル6を選定するに当たって、各裂傷評価用サンプル6をエッジ部8で直接加圧した際の裂傷評価用サンプル6の裂傷開始時の荷重を測定して、人間の指の裂傷開始と同じ荷重で裂傷が開始するような物性の裂傷評価用サンプル6を選定することができる。
【0016】
また、エッジ部8は、先端角度αが30度で、最先端の曲率半径が0.2mmとなっていて、裂傷評価用サンプル6が裂傷開始し始める強度が略30Nであることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることで、人間の大人の女性の指の裂傷開始とほぼ同じ荷重で裂傷が開始するような物性の裂傷評価用サンプル6を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の裂傷評価用サンプルは、上記のように、把持部から突出した人間の骨を模した骨部と、骨部に着脱自在に被嵌される被覆部とで構成され、被覆部が骨部に被嵌した状態で骨部の周囲を囲む第1の弾性部と、第1の弾性部を被覆する人間の表皮を模した第2の弾性部の2層構造となっているので、簡単な構成で、人間の指が可動部に挟まれた際の裂傷の発生を模擬的におこなって可動部の安全性の評価を行うことができる。しかも、被覆部を、骨部に被嵌した状態で骨部の周囲を囲む骨部よりも硬度が低い第1の弾性部と、第1の弾性部を被覆する第1の弾性部よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部の2層構造としているので、表皮を備えた人間の指を模すことができて、裂傷ばらつきを押えながら人間の指挟み込みを再現することができる。また、骨部と第2の弾性部との間に第1の弾性部が存在しているので、人間の指が可動部に挟まれた際の裂傷の発生を模擬的に行った際に骨部まで傷が付かないようにできる。また、被覆部が骨部に着脱自在に被嵌してあるので、消耗品である被覆部を交換するだけで、骨部を突設した把持部を繰り返し使って、上記可動部の安全性評価を行うことができる。
【0019】
また、第2の弾性部の硬度が30ShoreA以上50ShoreA以下又は、伸びが160%以上300%以下、又は、引張強さが3.0MPa以上4.5MPa以下、又は引裂強さが3kN/m以上15kN/m以下の少なくとも1つ以上の条件を満たすシリコン樹脂により形成してあると、人間の指の皮膚とほぼ等しい裂傷評価が可能となる第2の弾性部をシリコン樹脂で簡単に形成できる。
【0020】
また、第2の弾性部は長さ1mmの繊維を0.5%以上1.0%以下混合するものにおいては、第2の弾性部5の裂傷強度を、よりいっそう人間の指の皮膚の裂傷強度に近づけるようにできる。
【0021】
また、本発明の裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置は、上記のように裂傷評価用サンプルを支持する支持部と、裂傷評価用サンプルに直接加圧する先端が所定角度の鋭角なエッジ部を備えた裂傷用治具とを備え、エッジ部で裂傷評価用サンプルを加圧した際の裂傷評価用サンプルの裂傷開始時の荷重を測定するものであるから、人間の指の裂傷強度に近い物性の裂傷評価用サンプルを得るに当たって、各裂傷評価用サンプルをエッジ部で直接加圧した際の裂傷評価用サンプルの裂傷開始時の荷重を測定することで、簡単な構成で人間の指の裂傷開示とほぼ同じ荷重で裂傷が開始するような物性の裂傷評価用サンプルを特定することができる装置を提供できる。
【0022】
また、エッジ部は、先端角度が30度で、最先端の曲率半径が0.2mmとなっていて、裂傷評価用サンプルが裂傷開始し始める強度が略30Nであることを特徴とする請求項4記載の裂傷評価用サンプルの物性を設定することで、人間の大人の女性の指の裂傷開始とほぼ同じ荷重で裂傷が開始するような物性の裂傷評価用サンプルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の裂傷評価用サンプルを示し、(a)は正断面図であり、(b)は平断面図であり、(c)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】(a)は同上の裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置を示す概略正面図であり、(b)は裂傷用治具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0025】
本発明の裂傷評価用サンプル6は、図1、図2に示すようなもので、手で掴むための棒状をした把持部1と、把持部1から突出した人間の骨を模した棒状をした骨部2と、骨部2に着脱自在に被嵌される被覆部3とで構成してある。
【0026】
棒状をした把持部1の一端部には鍔部10が一体に設けてあり、把持部1の鍔部10を設けた方の端面から棒状をした骨部2が突設してある。骨部2は把持部1と一体に成形したものであってもよいが、骨部2と把持部1とを別々に形成して骨部2の後端部を把持部1の前端部に任意の固着手段で固着してもよい。このように骨部2は把持部1と一体又は固着することで把持部1から突設してある。
【0027】
骨部2は人間の指の骨を模した長さ、断面形状に形成してあり、更に、その物性も人間の指の骨の物性を模して形成してある。
【0028】
被覆部3は上記骨部2に着脱自在に嵌め込まれる一端部が開口した有底筒状をしている。この被覆部3は、骨部2に被嵌した状態で骨部2の周囲を囲む骨部2よりも硬度が低い第1の弾性部4と、第1の弾性部4を被覆する第1の弾性部4よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部5の2層構造となっており、第1の弾性部4と第2の弾性部5とは一体物となっている。このように、被覆部3を、骨部2に被嵌した状態で骨部2の周囲を囲む骨部2よりも硬度が低い第1の弾性部4と、第1の弾性部4を被覆する第1の弾性部4よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部5の2層構造とすることで、表皮を備えた人間の指を模した構造とすることができる。
【0029】
上記第2の弾性部5は人間の表皮を模すため、例えば、シリコン樹脂により形成してある。
【0030】
また、第1の弾性部4としては、例えば、天然ゴム系のオープンセルスポンジにより形成してある。
【0031】
図1(a)(c)(c)には骨部2に有底筒状の被覆部3を被嵌した状態の裂傷評価用サンプル6の正面断面図、平面断面図、(a)にのX−X線断面図が示してある。
【0032】
図1(a)(b)において、各寸法は、例えば大人用は、手指の長さに相当する被覆部3の長さ寸法:a=80mm、手指の厚みに相当する被覆部3の厚み方向の寸法:b=14mm、手指の幅に相当する被覆部3の幅方向の寸法:c=17mm、手指の骨の長さに相当する骨部2の長さ寸法:d=76mm、手指の骨の厚みに相当する骨部2の厚み寸法:e=6mm、手指の骨の幅に相当する骨部2の幅寸法:f=9mmとなっている。また、子供用(例えば3歳児をモデルとする)は、a=46mm、b=10mm、c=12mm、d=43mm、e=5mm、f=7mmとなっている。
【0033】
ここで、本発明の裂傷評価用サンプル6を、建物のドアのような可動部、各種装置の扉のような可動部、あるいは、折り畳み装置における折り畳み可動部などに挟んで裂傷評価試験を行うに当たり、裂傷評価用サンプル6の外皮である第2の弾性部5の物性を、人間の指の皮膚とほぼ等しい裂傷評価ができるような物性に設定する必要がある。
【0034】
そこで、本発明においては、第2の弾性部5の物性を、人間の指の皮膚とほぼ等しい裂傷評価ができるような物性に設定するに当たって、次のようにして設定した。
【0035】
まず、一般に人間の大人の男子の皮膚に近いとされる豚の皮膚の裂傷強度を下記に説明する図3(a)に示す装置11により求める実験をおこなった。この実験によれば豚の皮膚の裂傷強度の平均値は44Nであった。このようにして求めた豚の皮膚の裂傷強度44Nを、人間の大人の男子の皮膚の裂傷強度と推定した。更に、文献(山田博、人体の強度と老化、日本放送協会、1979)によれば、人間の大人の女性は皮膚引張り破壊荷重が男子の2/3の強さとなることから、大人の女性の皮膚の裂傷強度を44×2/3=29Nと推定した。
【0036】
これに基づき、形成する大人用の裂傷評価用サンプル6の第2の外皮である弾性部5の裂傷強度の目標値を約30N程度に設定した。
【0037】
また、上記文献により70歳以上の高齢者については30・40歳代の0.46倍になることから、高齢者の皮膚の裂傷強度は20N程度と考えられ、また、3歳の子供もこれに準じていると推定され、子供用の裂傷評価用サンプル6の第2の外皮である弾性部5の裂傷強度の目標値を約20N以下に設定した。
【0038】
そして、様々な物性のシリコン樹脂で第2の弾性部5を形成した大人用、子供用の多種類のテスト用サンプル6’を造り、このテスト用サンプル6’を図3(a)に示す装置11を用いて裂傷テストを行い、多種類のテスト用サンプル6’の中から、大人の女性の皮膚とほぼ等しい裂傷評価を可能とする物性の第2の弾性部5を有する大人用の裂傷評価用サンプル6、子供用の裂傷評価用サンプル6を選定して、これを本発明の大人用の裂傷評価用サンプル6、子供用の裂傷評価用サンプル6と設定した。
【0039】
次に、裂傷評価用サンプル6の物性を設定するための装置11を用いて、上記のように裂傷評価用サンプル6を設定する具体例につき説明する。
【0040】
裂傷評価用サンプル6の物性を設定するための装置11は、図3(a)に示すようなもので、テスト用サンプル6’(裂傷評価用サンプル6)を支持する支持部7に可動スタンド12を立設し、該可動スタンド12にダイヤル13の操作で上下移動する移動体14を取付け、この移動体14に下方に向けて裂傷用治具9を突出して設けると共に、裂傷用治具9の先端でテスト用サンプル6’(裂傷評価用サンプル6)を加圧した際の荷重を測定するための測定手段15と、測定結果を表示する表示部16とを備えて構成してある。
【0041】
裂傷用治具9はステンレス製で、図3(b)に示すように、先端が所定角度の鋭角なエッジ部8となっており、このエッジ部8は先端角度αが30度で、最先端の曲率半径が0.2mmに設定してある。また、上記エッジ部8の横幅pは、大人の女性の指の横巾にほぼ等しい約30mmに設定してある。
【0042】
上記装置11を用いて、まず、上記した豚の皮膚の裂傷開始強度を求めた。つまり、豚の足部の皮膚を上記装置11の支持部7に載置し、ダイヤル13を操作して、豚の足部の皮膚を裂傷用治具9の先端のエッジ部8で直接加圧し、豚の足部の皮膚が裂傷開始をし始める際の荷重を測定した。このようにして多数の豚の足部のサンプルで実施し、上記した豚の足部の皮膚が裂傷開始をし始める際の荷重の平均値44Nを求めた。
【0043】
次に、あらかじめ形成した多種類の大人用のテスト用サンプル6’、多種類の子供用のテスト用サンプル6’を用いて、上記装置110で大人用の裂傷評価用サンプル6、子供用の裂傷評価用サンプル6に適合するものを選定した。
【0044】
すなわち、多種類のテスト用サンプル6’の中から、大人用の裂傷評価用サンプル6を求めるには、大人用のテスト用サンプル6’を支持部7に載置し、ダイヤル13を操作して、裂傷用治具9の先端のエッジ部8で直接加圧し、テスト用サンプル6’が裂傷開始をし始める際の荷重を測定し、多種類のテスト用サンプル6’の裂傷開始をし始める際の荷重が前述のようにして推定した約30Nとなるものが大人の女性の指の裂傷評価用サンプル6としての合格品となる。
【0045】
そして、様々な物性のシリコン樹脂により第2の弾性部5を形成したテスト用サンプル6’を上記のようにテストした結果、上記エッジ部8で直接加圧した際に裂傷開始し始める際の荷重が略30Nという条件をほぼ満たすテスト用サンプル6’は、硬度が30ShoreA以上50ShoreA以下又は、伸びが160%以上300%以下、又は、引張強さが3.0MPa以上4.5MPa以下、又は引裂強さが3kN/m以上15kN/m以下の少なくとも1つ以上の条件を満たすシリコン樹脂により第2の弾性部5を形成することができることが判明した。
【0046】
ここで、第2の弾性部5は長さ1mmの繊維を0.5%以上1.0%以下混合することで、裂傷開始をし始める第2の弾性部5の裂傷強度の調整を行うことができ、これによりいっそう第2の弾性部5が裂傷を開始し始める際の荷重を略30Nに近づけることができて、人間の指の皮膚(大人の女性の指の皮膚)の裂傷強度に近づけるようにできる。使用する長さ1mmの繊維としては種々の繊維が採用できるが、一例としては人毛を挙げることができる。
【0047】
また、同様にして子供用の裂傷評価用サンプル6を求めるには、子供用のテスト用サンプル6’を支持部7に載置し、ダイヤル13を操作して、裂傷用治具9の先端のエッジ部8で直接加圧し、テスト用サンプル6’が裂傷開始をし始める際の荷重を測定し、多種類のテスト用サンプル6’の裂傷開始をし始める際の荷重が上記のようにして求めた約20N以下となるものが子供用の指の裂傷評価用サンプル6としての合格品となる。
【0048】
上記のようにして求めた、本発明の大人用の裂傷評価用サンプル6や子供用の裂傷評価用サンプル6は、人間の指(人間の大人の女性の指、あるいは、子供の指)が危険源となる可動部に挟まれた際の裂傷の発生を模擬的におこなって、建物のドアのような可動部、各種装置の扉のような可動部、あるいは、折り畳み装置における折り畳み可動部などの可動部の安全性の評価するために使用する。
【0049】
評価試験を行う人が本発明の裂傷評価用サンプル6の把持部1を手で掴んだ状態で、可動部を閉じる操作をして可動部で骨部2に被嵌した被覆部3を挟む試験を行うことで、可動部を閉じた際に人間の指を挟んだ場合、裂傷が生じるか否かの安全評価を模擬的に行うことができる。
【0050】
例えば、上記可動部に挟んだ場合の試験で、大人用の裂傷評価用サンプル6の被覆部3が裂傷すると、実際の人間の大人の女性が可動部を閉じる際に指を挟むと裂傷し、安全性に問題があるという評価ができ、一方、被覆部3が裂傷しなかった場合は、実際の人間の大人の女性が可動部を閉じる際に指を挟むと裂傷しなく安全であるという評価ができる。ここで、女性の指を挟んだ際に安全であるということは、当然裂傷強度が大人の女性よりも強い大人の男性にとっても安全であるという評価ができる。
【0051】
また、同様にして子供用の裂傷評価用サンプル6を用いて、危険発生源となる可動部を閉じた際に子供が指を挟んだ場合に、裂傷が生じるか否かの安全評価を模擬的に行うことができる。
【0052】
ところで、上記のようにして可動部を閉じた際に大人又は子供の指を挟んだ場合に、裂傷が生じるか否かの安全評価を模擬的に行うのであるが、裂傷が生じると、被覆部3を次の安全評価試験に使用することができない。
【0053】
しかしながら、本発明においては、骨部2と第2の弾性部5との間に第1の弾性部4が存在しているので、中の骨部2まで傷が付かないようにでき、したがって、被覆部3に裂傷が生じると、骨部2から裂傷が生じた被覆部3を外し、新しい被覆部3を骨部2に被嵌することで、可動部に挟まれた際に裂傷が生じるが否かの安全性評価試験に使用することができる。このように被覆部3のみを交換するだけで、骨部2を突設した把持部1を繰り返し使って、上記可動部の安全性評価ができて、経済的である。
【0054】
なお、上記のように本発明の裂傷評価用サンプル6の把持部1を手で掴んで、可動部を閉じる操作をして可動部で骨部2に被嵌した被覆部3を挟む試験を行う際、鍔部10を設けることで、把持部1を持つ作業者の手が可動部に誤って挟まれることがないようにしている。
【符号の説明】
【0055】
1 把持部
2 骨部
3 被覆部
4 第1の弾性部
5 第2の弾性部
6 裂傷評価用サンプル
7 支持部
8 エッジ部
9 裂傷用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部から突出した人間の骨を模した骨部と、骨部に着脱自在に被嵌される被覆部とで構成され、被覆部が骨部に被嵌した状態で骨部の周囲を囲む骨部よりも硬度が低い第1の弾性部と、第1の弾性部を被覆する第1の弾性部よりも硬度が高く且つ人間の表皮を模した第2の弾性部の2層構造となっていることを特徴とする裂傷評価用サンプル。
【請求項2】
第2の弾性部の硬度が30ShoreA以上50ShoreA以下又は、伸びが160%以上300%以下、又は、引張強さが3.0MPa以上4.5MPa以下、又は引裂強さが3kN/m以上15kN/m以下の少なくとも1つ以上の条件を満たすシリコン樹脂により形成してあることを特徴とする請求項1記載の裂傷評価用サンプル。
【請求項3】
第2の弾性部は長さ1mmの繊維を0.5%以上1.0%以下混合して成ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の裂傷評価用サンプル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の裂傷評価用サンプルの物性を決定するための装置であって、裂傷評価用サンプルを支持する支持部と、裂傷評価用サンプルに直接加圧する先端が所定角度の鋭角なエッジ部を備えた裂傷用治具とを備え、エッジ部で裂傷評価用サンプルを加圧した際の裂傷評価用サンプルの裂傷開始時の荷重を測定するようにして成ることを特徴とする裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置。
【請求項5】
エッジ部は、先端角度が30度で、最先端の曲率半径が0.2mmとなっていて、裂傷評価用サンプルが裂傷開始し始める強度が略30Nであることを特徴とする請求項4記載の裂傷評価用サンプルの物性を設定するための装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−185717(P2010−185717A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28833(P2009−28833)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】