説明

装着式動作補助装置及び供給電力の制御方法

【課題】電力を必要とする状況において、適切な量の電力のみが使用されるようにして、省エネ効率を向上させることができる装着式動作補助装置、及び供給電力の制御方法を提供する。
【解決手段】補助力を付与するためのモータを有する補助力付与器具と、装着者の意思検出手段と、モータの制御信号を生成する補助力付与制御手段と、モータに対して指示信号を出力するモータ駆動回路と、を備えた装着式動作補助装置において、バッテリにより供給される電力を、意思検出手段、補助力付与制御手段及びモータ駆動回路に対して供給するための第1のDC/DCコンバータと、バッテリにより供給される電力を、モータに対して供給するための第2のDC/DCコンバータと、装着者が動作を行おうとする意思が検出されない期間にモータ側への電力供給回路が遮断されるように供給電力のオン/オフ制御を行う電力供給制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着されて装着者の動作を補助するために用いられる装着式動作補助装置、及びそのような装着式動作補助装置における供給電力の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、身体障害者や高齢者等の動作を補助するための装置として、下肢や腕、手などの関節部分の動作を補助する外骨格型ロボットや、歩行補助装置等、人体に装着されて用いられる種々の動作補助装置が知られている。この装着式動作補助装置は、けがや病気等にかかっている患者のリハビリテーションや、高齢者の介護の場面にも用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
図9は、このような装着式動作補助装置の回路図を概略的に示している。装着式動作補助装置は、人体の関節等に装着されて各関節等の動作を補助するための補助力付与器具101と、補助力付与器具101を駆動するDCモータ103と、装着者の動作に関する意思の検出に用いられる生体信号センサ105と、生体信号センサ105によって検出される生体信号に基づき推定される装着者の意思に従った補助力が付与されるようにDCモータ103の制御信号を生成する制御装置(CPU)107と、制御装置107の制御信号に基づいてDCモータ103に対して駆動信号を出力するモータ駆動回路109とを主要な構成要素として備えている。
【0004】
また、装着式動作補助装置は、電力の供給源としてのバッテリ111と、バッテリ111から供給される電力を生体信号センサ105や制御装置107、モータ駆動回路109に対して供給する第1のDC/DCコンバータ113と、バッテリ111から供給される電力をDCモータ103に供給する第2のDC/DCコンバータ115とを備えている。第1及び第2のDC/DCコンバータ113,115は、それぞれバッテリ111から供給される電圧V1の電力を所定の電圧V2,V3に変換して各構成要素に供給する。例えば、第1のDC/DCコンバータ113は5Vの電力を生体信号センサ105や制御装置107に対して供給し、第2のDC/DCコンバータ115は24Vの電力をDCモータ103に対して供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−95561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような装着式動作補助装置は、装着者によって装着されるとともにバッテリがオンにされている限り、装着者の動作に関する意思を検出できる状態にしておく必要がある。すなわち、装着者が動作を行っている場合はもちろんのこと、装着者が仮眠や休息を取っている間等、装着者が積極的に動作を行う意思がない場合においても、生体信号センサ105、制御装置107及びモータ駆動回路109からなる制御系については電力を供給し続け、生体信号に基づく演算処理を継続させる必要がある。
【0007】
一方、装着者が動作を行う意思がない場合においては、補助力を付与する必要がないために、基本的にはDCモータ103に対して電力を供給する必要が無い。しかしながら、DCモータ103は、モータが駆動していない待機状態においても電力が供給されるようになっているために、従来の装着式動作補助装置においては、補助力を付与する必要がない期間においてもDCモータ103では消費電力が発生している。例えば、DCモータ103がインバータ制御されるものである場合には、待機状態であっても制御ICに制御用の電圧を印加しておく必要がある。また、そのような場合には、第2のDC/DCコンバータ115内でも少なからず消費電力が発生することになる。
【0008】
装着式動作補助装置において、補助力付与器具101はその目的に応じて複数の関節部分に沿って装着されるものであり、用いられるDCモータ103の数が多いほど、待機状態での消費電力は増大することになる。このような待機状態における消費電力は、一回の充電でのバッテリ101の使用期間を短縮させる原因になり得るため、装着式動作補助装置においては、待機状態での消費電力を低減することが極めて重要な問題となる。
【0009】
本発明の発明者らはこのような問題に鑑みて、装着者の動作に関する意思の検出に用いる意思検出手段の検出信号を、補助力を付与する制御に用いるだけでなく、モータ側への電力供給回路の遮断又は接続の制御にも用いるようにすることでこのような問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、電力を必要とする状況において、適切な量の電力のみが使用されるようにして、省エネ効率を向上させることができる装着式動作補助装置、及び供給電力の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、人体に装着されて装着者の動作を補助するために用いられる装着式動作補助装置であって、装着者に対する補助力を付与するためのモータを有する補助力付与器具と、装着者の動作に関する意思の検出に用いられる意思検出手段と、意思検出手段により検出された装着者の意思に従って補助力が付与されるようにモータの制御信号を生成する補助力付与制御手段と、制御信号に基づいてモータに対して指示信号を出力するモータ駆動回路と、を備えた装着式動作補助装置において、電力の供給源となるバッテリにより供給される電力を、意思検出手段、補助力付与制御手段及びモータ駆動回路に対して供給するための第1のDC/DCコンバータと、バッテリにより供給される電力を、モータに対して供給するための第2のDC/DCコンバータと、意思検出手段によって装着者が動作を行おうとする意思が検出されない期間にモータ側への電力供給回路が遮断されるように供給電力のオン/オフ制御を行う電力供給制御手段と、を備えることを特徴とする装着式動作補助装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
【0011】
すなわち、本発明の装着式動作補助装置によれば、装着式動作補助装置の使用期間中において、意思検出手段、補助力付与制御手段及びモータ駆動回路を含む補助力付与制御系には常に電力が供給される一方、装着者が動作を行う意思がない期間中にはモータ側への電力供給回路が遮断されるようになる。したがって、モータやバッテリの寿命を向上させることができるとともに、電力が必要な状況において、適切な量の電力のみが使用されるようになり、省エネ効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の装着式動作補助装置を構成するにあたり、電力供給制御手段は、意思検出手段の検出信号の値と、補助力の付与の要否の境界値として設定された閾値と、を比較し、検出信号の値が閾値以下のときに電力供給回路を遮断させることが好ましい。
【0013】
本発明において、電力供給制御手段が、意思検出手段による検出信号の値が所定の閾値以下のときに電力供給回路を遮断させることにより、意思検出手段や制御装置等の特性、あるいは装着者の動作の特性に応じて、モータへの供給電力の要否を正確に判定することができるようになる。
【0014】
また、本発明の装着式動作補助装置を構成するにあたり、電力供給制御手段は、検出信号の値が閾値以下となった状態で所定時間経過したときに電力供給回路を遮断させる一方、検出信号の値が閾値を超えたときには速やかに電力供給回路を接続させることが好ましい。
【0015】
本発明において、電力供給回路を遮断させる際にこのように制御することにより、モータ側への電力供給回路の遮断及び接続が短期間で繰り返されることを防ぐことができるとともに、電力供給回路の遮断後、検出信号の値が閾値を超えたときに速やかに電力供給回路を接続させることにより、装着者の動作に遅れることなく適切に補助力を付与することができる。
【0016】
また、本発明の装着式動作補助装置を構成するにあたり、第2のDC/DCコンバータが、入力される指示信号に応じて電力供給回路の遮断又は接続を切り換え可能なオン/オフ制御部を備え、電力供給制御手段は、オン/オフ制御部に対してリモート信号を出力することが好ましい。
【0017】
本発明において、電力供給制御手段が、第2のDC/DCコンバータ内のオン/オフ制御部に対してリモート信号を出力することでモータ側への電力供給回路の遮断又は接続が切り換えられるようにすることにより、構成部品を増やすことなく、モータ側への電力供給回路の遮断又は接続を制御することができる。
【0018】
また、本発明の装着式動作補助装置を構成するにあたり、補助力付与制御手段と電力供給制御手段とが一つの制御装置として構成されることが好ましい。
【0019】
本発明において、補助力付与制御手段と電力供給制御手段とが一つの制御装置として構成されることにより、既存の制御装置に電力供給制御の機能を追加することにより、モータ側への電力供給回路の遮断又は接続を制御可能な装着式動作補助装置を容易に構成することができる。
【0020】
また、本発明の装着式動作補助装置を構成するにあたり、意思検出手段が、人体の筋電位信号を検出する手段、あるいは、人体の関節の角度、角速度、又は回転速度を検出する物理量センサであることが好ましい。
【0021】
本発明において、意思検出手段が所定の手段又は物理量センサであることにより、装着者の動作に関する意思が比較的正確に検出され、モータ側への電力供給回路の遮断又は接続を正確に制御することができる。
【0022】
また、本発明の別の態様は、人体に装着されて装着者の動作を補助するために用いられる装着式動作補助装置における供給電力の制御方法であって、装着者に対する補助力を付与するためのモータを有する補助力付与器具と、装着者の動作に関する意思の検出に用いられる意思検出手段と、意思検出手段により検出された装着者の意思に従った補助力が付与されるようにモータの制御信号を生成する補助力付与制御手段と、制御信号に基づいてモータへの指示信号に対して指示信号を出力するモータ駆動回路と、電力の供給源となるバッテリにより供給される電力を、意思検出手段、補助力付与制御手段及びモータ駆動回路に対して供給するための第1のDC/DCコンバータと、バッテリにより供給される電力を、モータに対して供給するための第2のDC/DCコンバータと、を備えた装着式動作補助装置における供給電力の制御方法において、意思検出手段による検出信号の値を所定の閾値と比較するステップと、検出信号の値が閾値以下のときにモータ側への電力供給回路を遮断するステップと、を備えることを特徴とする供給電力の制御方法である。
【0023】
すなわち、本発明の装着式動作補助装置の供給電力の制御方法によれば、装着式動作補助装置の使用期間中において、意思検出手段、補助力付与制御手段及びモータ駆動回路を含む補助力付与制御系には常に電力が供給される一方、装着者が動作を行う意思がない期間中にはモータ側への供給電力回路を遮断させることができる。したがって、モータやバッテリの寿命を向上させることができるとともに、電力が必要な状況において、適切な量の電力のみが使用されるようになり、省エネ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態にかかる装着式動作補助装置の回路図である。
【図2】補助力付与制御系の信号の流れについて説明するための図である。
【図3】電力供給制御系の信号の流れについて説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる供給電力の制御方法の具体例を示すフローチャート図である。
【図5】供給電力の制御方法の変更例を示すフローチャート図である。
【図6】装着式動作補助装置の変更例の回路図である。
【図7】本発明の実施例にかかる下肢補助用外骨格型ロボットの回路図である。
【図8】本発明の実施例にかかるDCモータ、モータ駆動回路、筋電位センサの仕様を示す図である。
【図9】従来の装着式動作補助装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の装着式動作補助装置及び供給電力の制御方法に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、以下の実施の形態は、本発明の一態様を示すものであって本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものについては同一の部材が示され、適宜説明が省略されている。
【0026】
1.装着式動作補助装置の全体的構成
図1は、本実施形態の装着式動作補助装置(以下、単に「補助装置」と称する。)10の回路図を概略的に示している。図1において、破線の矢印は信号の流れを示しており、実線の矢印は電力の流れを示している。
【0027】
この補助装置10は、人体に装着されて用いられ、装着者の動作に従って、当該動作の作用方向への必要出力(以下、単に「補助力」と称する。)を適切に付与することで装着者の動作を補助するための装置である。このような補助装置10は、下肢や腕、手などの関節部分の動作を補助する外骨格型ロボットや、歩行補助装置等に例示されるものである。
【0028】
補助装置10は、装着者に付与する補助力を発生するDCモータ13を有する補助力付与器具11と、装着者の動作に関する意思の検出に用いられる意思検出手段15と、意思検出手段15により検出された装着者の意思に従った補助力が付与されるようにDCモータ13の制御信号Scを生成する補助力付与制御手段としての制御装置17と、制御装置17の制御信号Scに基づいてDCモータ13に対して駆動信号Sdを出力するモータ駆動回路19とを備えている。後述するように、制御装置17は、供給電力制御手段としての機能も有している。
【0029】
また、補助装置10は、電力の供給源となるバッテリ21と、それぞれバッテリ21から供給される電圧V1の電力を所定の電圧V2,V3に変換して供給する第1のDC/DCコンバータ23及び第2のDC/DCコンバータ25とを備えている。第1のDC/DCコンバータ23は、意思検出手段15、制御装置17及びモータ駆動回路19に対して、例えば5Vの電圧の電力を供給する。また、第2のDC/DCコンバータ25は、DCモータ13に対して、例えば24Vの電圧の電力を供給する。
【0030】
補助力付与器具11は、腰や膝、肘、指等の関節部分に装着される器具であって、例えば、関節部分に位置するジョイント部11cによって連結された第1のアーム11aと第2のアーム11bとを備えて構成される。第1のアーム11a及び第2のアーム11bはそれぞれ関節を挟んだ両側の部位に固定される。
【0031】
また、補助力を発生するDCモータ13は、DCモータ13が正方向又は逆方向に回転することで、第1のアーム11a及び第2のアーム11bがジョイント部11cを軸に回動するように、ジョイント部11cに取り付けられている。例えば、下肢用の補助装置10である場合には、左右の股関節及び膝関節それぞれにジョイント部11cが位置するように構成され、計四つのDCモータ13が備えられる。
【0032】
このDCモータ13は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって駆動制御が行われるものであり、一定の周期ごとに、補助力付与制御系から指示される駆動信号(DCレベル)Sdの大きさに応じてパルス幅のデュ−ティ・サイクル(パルス幅のHとLの比)を変えることで、DCモータ13の出力トルクが制御されるようになっている。このDCモータ13の出力トルクの大きさによって、装着者に付与される補助力の大きさが調節される。また、第2のDC/DCコンバータ25を介してDCモータ13に供給される電力は、供給電力制御系によってそのオン/オフが制御されるようになっている。
【0033】
意思検出手段15は、装着者の動作に関する意思に応じた検出信号Seを制御装置17に対して出力するものとして構成されている。例えば、装着者が動作を行う際に体内で発生する、筋に対する指令信号である筋電位信号(EMG信号)を検出する筋電位センサが意思検出手段15として用いられる。これ以外にも、関節の角度を検出する角度センサや、関節の動きの角速度を検出する角速度センサ、関節の回転速度を検出する回転速度センサ等に例示される、関節の動きを検出可能な物理量センサを用いることもできる。これらの筋電位センサや物理量センサの出力は、補助力付与器具11が装着された関節等の動作を生じる直前に、あるいは、動作に伴って変動するようになっている。
【0034】
制御装置17は、公知のマイクロコンピュータや、RAM及びROM等の記憶素子を中心に構成されたものであり、意思検出手段15の検出信号Seに基づいて、補助力付与制御及び電力供給制御を行うように構成されている。制御装置17は、補助力付与制御に関する演算結果の制御信号Scをモータ駆動回路19に出力するとともに、電力供給制御に関する演算結果のリモート信号Srを第2のDC/DCコンバータ25に出力する。
【0035】
第1のDC/DCコンバータ23及び第2のDC/DCコンバータ25は、従来公知のDC/DCコンバータを適宜用いることができる。ただし、第2のDC/DCコンバータ25については、入力される指示信号に応じて電力供給回路を開閉(遮断/接続)するオン/オフ制御部としてのIC27を備えており、このオン/オフ制御用のIC27には、RCピン29を介して制御装置17のリモート信号が入力されるようになっている。
【0036】
2.補助力付与制御系
図2は、本実施形態の補助装置10における補助力付与制御系の信号の流れを示している。本実施形態の補助装置10において、補助力付与制御系は、意思検出手段15、制御装置17及びモータ駆動回路19によって構成される。
【0037】
制御装置17は、意思検出手段15の検出信号Seに基づいて、付与する補助力の大きさや向きを演算処理によって求め、モータ駆動回路19に対して出力する制御信号Scを生成する。例えば、意思検出手段15として筋電位センサを用いた場合、図2に示すように、制御装置17に筋電位信号Seが入力されると、この筋電位信号Seは増幅器によって所定の増幅率(例えば1000倍)で増幅されるとともにデジタル信号に変換される。また、デジタル化された筋電位の信号は、さらにローパスフィルタによって低帯域の信号が取り出されるとともにスムージング処理された後、ノーマライザによって基準化される。付与する補助力の大きさや向きは、このように処理された筋電位のデータ信号に基づいて求められる。ただし、筋電位信号Seの処理の方法はこの例に限られない。
【0038】
そして、モータ駆動回路19は、制御装置17から出力される制御信号Scに基づいてDCモータ13の駆動信号(DCレベル)Sdを生成し、DCモータ13に対して出力する。これにより、DCモータ13では駆動信号(DCレベル)Sdに基づいてその出力トルクや回転方向が制御され、装着者の動作に応じた補助力を発生させる。補助力付与制御において制御装置17によって行われる具体的な演算処理の方法についてはすでに公知の方法を採用することができるために、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0039】
3.電力供給制御系
(1)概略
図3は、本実施形態の補助装置10における補助力付与制御系の信号の流れを示している。本実施形態の補助装置10において、電力供給制御系は、意思検出手段15、制御装置17及び第2のDC/DCコンバータ25によって構成される。
【0040】
制御装置17は、意思検出手段15の出力に基づいて、電力供給回路の開閉の指示を演算処理によって求め、第2のDC/DCコンバータ25に対して出力するリモート信号Srを生成する。具体的には、上述の補助力付与制御系でも用いられた筋電位のデータ信号の値を閾値と比較し、データ信号の値が閾値を超えている場合には電力供給回路を接続するよう指示するリモート信号Srを生成し、データ信号の値が閾値以下の場合には電力供給回路を遮断するよう指示するリモート信号Srを生成する。
【0041】
このときの閾値は、それぞれの補助装置10の特性や、装着者の動作又は筋電位の特性等に応じて適宜設定、補正される値であり、通常、補助力付与制御系での演算処理において、DCモータ13によって装着者に付与する補助力を発生させるか否かの境界となる筋電位のデータ信号の値に相当する値に設定される。
【0042】
そして、第2のDC/DCコンバータ25では、制御装置17から出力されるリモート信号Srに基づいて、IC27によって、電力供給回路の開閉制御が行われる。これにより、装着者が動作を行おうとする意思がない期間においては、DCモータ13への電力の供給が遮断され、この期間でのDCモータ13での消費電力をゼロとすることができる。また、これに伴い、第2のDC/DCコンバータ25内においても、少なくとも電力供給回路を開閉する素子部分よりも下流側での消費電力もゼロとなる。
【0043】
(2)具体的フロー
図4は、制御装置17によって実行される電力供給制御の具体例を説明するためのフローチャート図を示している。以下の例では、意思検出手段15として筋電位センサを用いた例を示している。
【0044】
このフローチャートの例では、まず、ステップS1において、制御装置17に筋電位センサの検出信号Seが入力されると、ステップS2において、制御装置17は、検出信号Seの増幅処理、デジタル化処理、フィルタ処理、スムージング処理、基準化処理等を行い、筋電位のデータ信号を得る。
【0045】
次いで、ステップS3において、制御装置17は、ステップS2で得られた筋電位のデータ信号の値が閾値以下であるか否かを判別する。ステップS3でYesと判定された場合には、装着者が動作を行おうとする意思を有していないものと判断することができるために、制御装置17は、DCモータ13への電力供給回路を遮断する指示信号を生成する。
【0046】
一方、ステップS3でNoと判定された場合には、装着者が動作を行う意思を有していると判断することができるために、制御装置17は、DCモータ13への電力供給回路を接続する指示信号を生成する。
【0047】
そして、ステップS6において、制御装置17は、電力供給回路の遮断又は接続を指示するリモート信号Srを第2のDC/DCコンバータ25に対して出力し、スタートに戻る。その結果、第2のDC/DCコンバータ25のIC27は、RCピン29を介して入力されるリモート信号Srに応じて、電力供給回路を開閉する制御を実行する。これ以降は、再びステップS1以降の各ステップが繰り返し行われる。
【0048】
このように本実施形態の補助装置10によれば、意思検出手段15の検出信号に基づいて電力供給制御を実行することにより、装着者が動作を行おうとする意思を有していない期間にはDCモータ13における消費電力をゼロとすることができる。併せて、第2のDC/DCコンバータ25における電力供給回路の開閉を行う素子部分よりも下流側での消費電力もゼロとなる。したがって、電力が必要な状況において、適切な量の電力のみが使用されるようになり、省エネ効率の向上が図られる。併せて、一回の充電によるバッテリの使用期間を拡張することができるとともに、DCモータ13やバッテリ21の寿命を向上させることができる。
【0049】
特に、本実施形態の補助装置10においては、意思検出手段15の検出信号Seの値が所定の閾値以下のときに電力供給回路を遮断させるようになっており、意思検出手段15や制御装置17等の特性、あるいは装着者の動作の特性に応じて、DCモータ13への供給電力の要否を正確に判定することができる。
【0050】
さらに、本実施形態の補助装置10では、第2のDC/DCコンバータ25に備えられたRCピン29及びIC27によって、DCモータ13側への電力供給回路の開閉を実行するようになっているとともに、補助力付与制御を行う制御装置17が電力供給制御も行うようになっているために、構成部品を増やすことなく、DCモータ13側への電力供給回路の開閉制御を実行可能な補助装置10を容易に構成することができるようになっている。
【0051】
4.その他の変更例
これまでに説明した本発明の実施の形態は、以下のように変更して構成することもできる。
【0052】
例えば、図5のフローチャート図に示すように、DCモータ13側への電力供給回路を遮断する場合に、筋電位のデータ信号の値が閾値以下となってからの経過時間が規定値を越えたか否かを判別するステップS7を設け、装着者が動作を行う意思を有していないと判断できる状態となってからの経過時間が規定値を超えた場合に、電力供給回路を遮断させるようにすることもできる。このようにすれば、極めて短時間の間だけ筋電位センサの出力がゼロになった場合においてDCモータ13への電力の供給が停止することがなくなり、電力の供給及び停止が短時間の間に繰り返されることを防ぐことができる。
【0053】
ただし、この場合であっても、DCモータ13側への電力供給回路を接続する場合には速やかに接続させることが好ましい。これにより、電力供給回路が遮断された状態から装着者が動作を行うときに、当該動作に遅れることなく適切な補助力を付与することができる。
【0054】
あるいは、電力供給回路を遮断する際の閾値と接続する際の閾値とを異ならせることによっても、DCモータ13への電力の供給及び停止が繰り返されることを防ぐことができる。具体的には、電力供給回路を遮断する際の閾値を、接続する際の閾値よりも低くすることにより、DCモータ13への電力の供給及び停止が繰り返されることを防ぐことができる。
【0055】
また、電力供給回路を開閉する手段に関して、第2のDC/DCコンバータ25とは別に、DCモータ13側への電力供給回路上にリレー素子を設けることもできる。図6は、第2のDC/DCコンバータ25の上流側にリレー素子31を設け、制御装置17のリモート信号によってリレー素子31を開閉するように構成した補助装置50を示している。このように構成された補助装置50によっても、装着者が動作を行おうとする意思を有していない期間にDCモータ13側への電力供給回路が遮断され、電力が必要な状況において、適切な量の電力のみが使用されるようにすることができる。この場合、リレー素子の配置位置は、第2のDC/DCコンバータ25の下流側であってもよい。
【0056】
さらに、補助装置10に複数のDCモータ13が備えられている場合において、一つの第2のDC/DCコンバータ25からすべてのDCモータ13に対して電力を供給するように構成し、すべてのDCモータ13によって補助力を付与する必要がないときに電力供給回路を遮断するように制御することができる。あるいは、DCモータ13ごとに独立して第2のDC/DCコンバータ25から電力を供給するように構成し、それぞれのDCモータ25ごとに電力供給回路を遮断するように制御することもできる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明にかかる装着式動作補助装置の実施例について説明する。
【0058】
図7は、本発明の装着式動作補助装置の実施例としての下肢補助用外骨格型ロボット(以下、単に「外骨格型ロボット」という。)10Aの回路図を示している。図7において、破線の矢印は信号の流れを示しており、実線の矢印は電力の流れを示している。
【0059】
この外骨格型ロボット10Aは、左右の股関節及び膝関節の動作を補助するためのものであり、意思検出手段としての4個の筋電位センサ15A,15B,15C,15Dと、それぞれの関節部分に補助力を付与するための4個のDCモータ13A,13B,13C,13Dと、それぞれのDCモータを駆動する4個のモータ駆動回路19A,19B,19C,19Dと、1台の制御装置17とを備えて構成されている。
【0060】
このうち、4個の筋電位センサ15A,15B,15C,15Dと、4個のモータ駆動回路19A,19B,19C,19Dと、1台の制御装置17とには、第1のDC/DCコンバータ23により電力が供給される。主電源となるバッテリ21の供給電圧は30Vであり、第1のDC/DCコンバータ23は5Vの直流電圧を供給する。また、4個のDCモータ13A,13B,13C,13Dには第2のDC/DCコンバータ25により電力が供給される。第2のDC/DCコンバータ25は24Vの直流電圧を供給する。
【0061】
この実施例の外骨格型ロボット10Aで用いられているDCモータ13A,13B,13C,13D、筋電位センサ15A,15B,15C,15D、モータ駆動回路19A,19B,19C,19Dそれぞれの仕様は、図8に示すとおりである。
【0062】
この外骨格型ロボット10Aは、DCモータ13A,13B,13C,13Dの出力トルクがゼロの状態においてもDCモータ13A,13B,13C,13Dへの電力の供給を遮断しない場合には、1個当たり約1.5ワットの電力消失を生じていた。
【0063】
一方、DCモータ13A,13B,13C,13Dすべての目標出力トルクがゼロの状態において第2のDC/DCコンバータ25によって電力供給回路を遮断した場合には、1個当たり約1.5ワット、全体で約6ワットの省エネルギーを達成できた。
また、この場合に、DCモータ13A,13B,13C,13Dの目標出力トルクがゼロを超えた場合において、DCモータ13A,13B,13C,13Dの作動開始までの遅れ時間は約10msであり、補助力の付与に遅れが出ないことも確認された。
【符号の説明】
【0064】
10:装着式動作補助装置、11:補助力付与器具、13:DCモータ、15:意思検出手段(筋電位センサ)、17:制御装置、19:モータ駆動回路、21:バッテリ、23:第1のDC/DCコンバータ、25:第2のDC/DCコンバータ、27:IC、29:RCピン、31:リレー素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着されて装着者の動作を補助するために用いられる装着式動作補助装置であって、
前記装着者に対する補助力を付与するためのモータを有する補助力付与器具と、
前記装着者の動作に関する意思の検出に用いられる意思検出手段と、
前記意思検出手段により検出された前記装着者の意思に従って補助力が付与されるように前記モータの制御信号を生成する補助力付与制御手段と、
前記制御信号に基づいて前記モータに対して指示信号を出力するモータ駆動回路と、
を備えた装着式動作補助装置において、
電力の供給源となるバッテリにより供給される電力を、前記意思検出手段、前記補助力付与制御手段及び前記モータ駆動回路に対して供給するための第1のDC/DCコンバータと、
前記バッテリにより供給される電力を、前記モータに対して供給するための第2のDC/DCコンバータと、
前記意思検出手段によって前記装着者が動作を行おうとする意思が検出されない期間に前記モータ側への電力供給回路が遮断されるように供給電力のオン/オフ制御を行う電力供給制御手段と、
を備えることを特徴とする装着式動作補助装置。
【請求項2】
前記電力供給制御手段は、前記意思検出手段の検出信号の値と、前記補助力の付与の要否の境界値として設定された閾値と、を比較し、前記検出信号の値が前記閾値以下のときに前記電力供給回路を遮断させることを特徴とする請求項1に記載の装着式動作補助装置。
【請求項3】
前記電力供給制御手段は、前記検出信号の値が前記閾値以下となった状態で所定時間経過したときに前記電力供給回路を遮断させる一方、前記検出信号の値が前記閾値を超えたときには速やかに前記電力供給回路を接続させることを特徴とする請求項2に記載の装着式動作補助装置。
【請求項4】
前記第2のDC/DCコンバータが、入力される指示信号に応じて前記電力供給回路の遮断又は接続を切り換え可能なオン/オフ制御部を備え、前記電力供給制御手段は、前記オン/オフ制御部に対してリモート信号を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装着式動作補助装置。
【請求項5】
前記補助力付与制御手段と前記電力供給制御手段とが一つの制御装置として構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装着式動作補助装置。
【請求項6】
前記意思検出手段が、人体の筋電位信号を検出する手段、あるいは、人体の関節の角度、角速度、又は回転速度を検出する物理量センサであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の装着式動作補助装置。
【請求項7】
人体に装着されて装着者の動作を補助するために用いられる装着式動作補助装置における供給電力の制御方法であって、
前記装着者に対する補助力を付与するためのモータを有する補助力付与器具と、前記装着者の動作に関する意思の検出に用いられる意思検出手段と、前記意思検出手段により検出された前記装着者の意思に従った補助力が付与されるように前記モータの制御信号を生成する補助力付与制御手段と、前記制御信号に基づいて前記モータへの指示信号に対して指示信号を出力するモータ駆動回路と、電力の供給源となるバッテリにより供給される電力を、前記意思検出手段、前記補助力付与制御手段及び前記モータ駆動回路に対して供給するための第1のDC/DCコンバータと、前記バッテリにより供給される電力を、前記モータに対して供給するための第2のDC/DCコンバータと、を備えた装着式動作補助装置における供給電力の制御方法において、
前記意思検出手段による検出信号の値を所定の閾値と比較するステップと、
前記検出信号の値が前記閾値以下のときに前記モータ側への電力供給回路を遮断するステップと、
を備えることを特徴とする供給電力の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−125477(P2012−125477A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281151(P2010−281151)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)