説明

装着部品用の固定装置

【課題】
固定装置に対して、特に固定装置の組立て工程を複数の組立てステップに分割することを可能にする改善された1つの実施形又は少なくとも1つの他の実施形を提供する。
【解決手段】
固定装置(1)が支持要素(2)と保持要素(3)を備え、組立て状態で支持要素(2)が見える側からボディ部品(5)に配設され、保持要素(3)が見えない側からボディ部品(5)に配設されている、ボディ部品(5)に固定するための装着部品(4)用の固定装置(1)において、保持要素(3)がアンダカット要素(6)を備え、このアンダカット要素を介して、保持要素が、組立て状態で見えない側からボディ部品(5)の相応の開口(7)を貫通し、保持部品が独自でボディ部品(5)に固定されるようにボディ部品側の保持輪郭(8)の背後を把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による、ボディ部品に固定するための装着部品用の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の車両の組立てでは、例えばエンブレムのような装着部品を係止もしくはクリップ結合部を介して付属のボディ部品と結合することが通例である。この場合、装着部品は、好ましくは自動車の最終組立ての最後の仕上げステップで車両もしくはボディ部品に固定される。この場合、固定部は、例えば盗難の際の装着部品の非当業者による後からの取外しを少なくとも困難にするように形成すべきである。
【0003】
特許文献1から、ボディ部品に固定するためのメーカプレートの形をした装着部品用の固定装置が公知である。この場合、固定装置は、本質的に、見える側からボディ部品に配設され、可視の型式名称をつけている支持要素と、見えない側からボディ部品に配設され、同時に支持要素に形成された係止要素用の相手係止要素を構成する保持要素から成る。この場合、支持要素の係止要素は、係止要素の相手係止要素へのほぼ無段階の係止を可能にする複数のかえしを備える。
【0004】
ボディ部品への装着部品用の別の固定装置は、例えば特許文献2及び特許文献3から公知である。
【特許文献1】国際公開第01/10681号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第37 04 190号明細書
【特許文献3】独国実用新案第8903289号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この種の固定装置に対して、特に固定装置の組立て工程を複数の組立てステップに分割することを可能にする改善された1つの実施形又は少なくとも1つの他の実施形を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば独立請求項の対象によって解決される。有利な実施形は、従属請求項の対称である。
【0007】
本発明は、支持要素及び保持要素を備える、装着部品をボディ部品に固定するための固定装置において、保持要素にアンダカット要素を設け、このアンダカットを介して、保持要素が後の見えない側からボディ部品の相応の開口を貫通し、ボディ部品に形成された保持輪郭により固定されるという一般思想に基づく。従って、保持要素は、第1の組立てステップでボディ部品に固定することができるのに対し、例えばエンブレム又は紋章をつけた支持要素は、別の組立てステップで、例えば他の作業で保持要素もしくはボディ部品と結合することができる。アンダカット要素により、保持要素は確実及び独自でボディ部品に固定することができるので、組立ての中断は問題なく可能である。
【0008】
合目的に、支持要素は少なくとも1つの第1の位置決め開口を備え、この位置決め開口に、装着部品の少なくとも1つの付属の位置決めノーズが係合する。従って、支持要素の位置決め開口と協働する装着部品の位置決めノーズは、支持要素に対する装着部品の正確な位置決めを保証し、これは、特にデザインに影響を与える隙間に関して大いに有利である。同時に、位置決めノーズは支持要素への装着部品の正確な取付けを容易にするので、組立て工程は、品質的に良好に短時間で実施することができる。
【0009】
本発明による解決策の有利な実施形では、支持要素が係止舌部を備え、この係止舌部が、ボディ部品に配設された相手係止輪郭と協働し、支持要素を不動にボディ部品に固定する。この場合、係止舌部は、アンダカット要素に加えて保持要素のボディ部品への固定部を生じさせるので、この固定部は、第1の作業ステップで位置を固定されてボディ部品に配設することができる。更に、係止舌部は、保持要素がその位置をボディ部品に対して変えてしまうことを防止するので、ボディ部品は、問題なく別の作業ステーションに移動させることができ、その間に保持要素がボディ部品に対してずれることを心配する必要はない。
【0010】
別の有利な実施形では、支持要素が、それぞれ1つの係止要素に配設された、反対側に位置する係止ノーズを備え、この係止ノーズは、支持要素が保持要素に組み立てられた時に保持要素の互いに向かい合っている相手係止要素によって係止されている。このような係止要素と相手係止要素の配設は、固定装置を解体するために、見えない側からの、即ち保持要素が配設されている側からの作業を前提とする。従って、装着部品の許されてないもしくは望ましくない取外しは、見えない側が別の部品、例えばボディ部品の取外しによってのみ作業可能となる場合に限って著しく困難となる。従って、係止は、装着部品のための高い盗難防止を提供する。
【0011】
合目的に、支持要素及び/又は保持要素は、それぞれ一体的な合成樹脂部品として形成されている。この場合、支持要素及び/又は保持要素を射出成形法で製造し、これにより、品質的に高価値で同時に安価な構造要素を製造することができる。
【0012】
本発明の更に重要な特徴及び詳細は、下位の請求項、図面、及び図面を基にした付属の図の説明から得られる。
【0013】
前記の特徴と以下で更に説明すべき特徴は、それぞれに記載した組み合わせだけでなく、本発明の枠を逸脱しなければ、他の組み合わせでも、単独でも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の好ましい実施例を図示した図面を基にして、本発明を以下で詳細に説明する。この場合、同じ又は同様の又は機能が同じ部品には同じ符号を適用する。
【0015】
図1に応じて、本発明による固定装置1は支持要素2と保持要素3を備える。この場合、固定装置1は、装着部品4、例えば紋章又はエンブレムをボディ部品5に固定するために使用される。支持要素2は、見える側からボディ部品5に配設されているのに対して、保持要素3は見えない側からボディ部品5に配設されている。固定装置1の組立て工程を複数の作業ステップに分けることができるように、保持要素3にアンダカット要素6が設けられており、このアンダカット要素を介して、保持要素3は、見えない側からボディ部品5の相応の開口7を貫通し、ボディ部品側の保持輪郭8の背後を把持する。この場合、アンダカット要素6の大きさは、保持要素3を、先ずボディ部品5の標準方向に開口7に差し込み、次に、アンダカット要素6がボディ側の保持輪郭8の周囲もしくは背後を把持し、これによりボディ部品5と不動に結合されるように、ボディ部品5の面に対して本質的に平行に変位させるよう、ボディ部品5の開口7の大きさに調整されている。
【0016】
付加的に、保持要素3には係止舌部9(図3参照)を形成することができるが、この係止舌部は、ボディ部品5に配設された示してない相手係止輪郭と協働するかもしくは相手係止輪郭により係止され、これにより保持部品3を不動もしくは脱落しないようにボディ部品5に固定する。従って、保持要素3は確実にボディ部品5によって係止されるので、ボディ部品5の見えない側から必要な全ての作業を終了することができ、固定装置1の更なる組立て、即ち支持要素2の挟持は、もっぱら見える側から行なうことができる。
【0017】
図1によれば、支持要素2はそれぞれ1つの係止要素10に配設された、反対側に位置する係止ノーズ11及び11’を備える。固定装置1が完全に組み立てられた時に、係止要素10の係止ノーズ11及び11’は、保持要素3の互いに向かい合っている相手係止要素12及び12’によって係止されている(図2及び3参照)。本発明によれば、保持要素3の相手係止要素12及び12’は、保持要素3の支持要素2とは反対の側に配設されているので、これら相手係止要素は、見えない側からのみ作業可能である。この場合、図3によれば、相手係止要素12が係止エッジもしくは係止輪郭として形成されているのに対して、保持要素3の相手係止要素12’はバネ弾性的な舌部として形成されている。反対側に位置する係止部は、固定装置1を取り外すために見えない側からの作業性が与えられていなければならないということを生じさせる。これは、さもなければ係止要素10が曲がった場合でもそれぞれ1つの係止ノーズ11又は11’が付属の相手係止要素12又は12’により係止されたままになるからである。従って、反対側に位置する係止部は高い盗難防止を提供する。
【0018】
互いに係止することを可能にするために、支持要素2の係止要素10は、ボディ部品5の相応の開口7と保持要素の相応の開口7’を貫通しなければならない。
【0019】
支持要素2のボディ部品5もしくは保持要素3に対する位置決めを容易化するために、支持要素2は、ボディ部品5に面した少なくとも1つの位置決めノーズ13を備え(図2参照)、この位置決めノーズが、装着部品4を組み立てる際に、この装着部品に対して相補的に形成されたボディ部品5の位置決め凹部14に係合する(図1参照)。
【0020】
更に、支持要素2がボディ部品5に面した少なくとも位置決め溝15を備え、この位置決め溝は、ボディ部品5に配設された位置決め突起16と協働する。この場合、更に、位置決めノーズ13が、ボディ部品5に対してX方向に支持要素2を位置決めするために設けられているのに対して、支持要素2の位置決め溝15は、ボディ部品5に対するY方向の位置決めのために使用される。
【0021】
装着部品4を容易かつ位置正確に支持要素2に位置決めもしくは固定することができるように、支持要素2は少なくとも1つの第1の位置決め開口17を備え(図1参照)、この位置決め開口に、装着部品4の少なくとも1つの付属の位置決めノーズ13’が係合する。これに対して、ボディ部品5は、支持要素2の少なくとも1つの第1の位置決め開口17に対して整列するように配設されている第2の位置決め開口18を備える(図1参照)。第3の位置決め開口19は、保持要素3に設けられ、同様に支持要素2の少なくとも1つの第1の位置決め開口17に対して整列するように配設されている。この場合、装着部品4の位置決めノーズ13’は、支持要素2の第1の位置決め開口17とボディ部品5の大2の位置決め開口18に係合するか、3つ全ての位置決め開口17,18及び19に係合するかのいずれかである。
【0022】
固定装置1をできるだけ安価に少ない部品コストで製造することができるように、支持要素2及び/又は保持要素3は、それぞれ一体的な合成樹脂部品として形成されており、例えば射出成形法で製造されている。
【0023】
以下で、本発明による固定装置1の特徴的な特徴を簡潔に説明する。
【0024】
固定装置1の保持要素3は、見えない側からそのアンダカット要素6をボディ部品5の開口7に差し込まれ、次にボディ部品の面に対して本質的に平行に延在する方向に、アンダカット要素6がボディ側の保持輪郭8を背後から把持するまで移動される。保持要素3が完全にその最終状態にまで移動された場合、保持要素3に配設された係止舌部9がボディ部品5に配設された示してない相応の相手係止輪郭によって係止されるので、保持要素3が不動にボディ部品5に固定される。ボディ部品5は、例えば自動車と結合することができ、しかもボディ部品5の見えない側がもはや作業可能でないように結合することができる。その上に装着部品4、例えばマークエンブレムが配設された支持要素2は、見える側から簡単に押し込むことによって保持要素3により係止し、これにより、不動にボディ部品5に固定することができる。反対側に位置する2つの係止ノーズ11及び11’を有する係止要素10の特殊な形成により、相応に向かい合っている相手係止要素12及び12’を得ることができるので、装着部品4の取外しは、見える側からしかもはや可能でなく、これにより、固定装置1を破壊しない装着部品4の盗難を排除することができる。ボディ部品5への保持要素3の独自での固定により、支持要素2のボディ部品5への最終的な取付けは、後の時点でも、即ち後の作業ステップでも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ボディ部品に固定するための装着部品用の本発明による固定装置を概略的に示す。
【図2】I−I平面で切断した固定装置の横断面図を概略的に示す。
【図3】ボディ部品とは反対の側から見た保持要素の図を概略的に示す。
【符号の説明】
【0026】
1 固定装置
2 支持要素
3 保持要素
4 装着部品
5 ボディ部品
6 アンダカット要素
7 ボディ部品の開口
7’ 保持部品の開口
8 保持輪郭
9 係止舌部
10 係止要素
11,11’ 係止ノーズ
12,12’ 相手係止要素
13 位置決めノーズ(支持要素)
13’ 位置決めノーズ(装着部品)
14 位置決め凹部
15 位置決め溝
16 位置決め突起
17 第1の位置決め開口(支持要素)
18 第2の位置決め開口(ボディ部品)
19 第3の位置決め開口(保持要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定装置(1)が支持要素(2)と保持要素(3)を備え、組立て状態で支持要素(2)が見える側からボディ部品(5)に配設され、保持要素(3)が見えない側からボディ部品(5)に配設されている、ボディ部品(5)に固定するための装着部品(4)用の固定装置(1)において、
保持要素(3)がアンダカット要素(6)を備え、このアンダカット要素を介して、保持要素が、組立て状態で見えない側からボディ部品(5)の相応の開口(7)を貫通し、ボディ部品側の保持輪郭(8)の背後を把持することを特徴とする固定装置。
【請求項2】
支持要素(2)が、それぞれ1つの係止要素(10)に配設された、反対側に位置する係止ノーズ(11,11’)を備えること、係止要素(10)の係止ノーズ(11,11’)が、組立て状態で保持要素(3)の互いに向かい合っている相手係止要素(12,12’)によって係止されていること、支持要素(2)の係止要素(10)が、組立て状態でボディ部品(5)と保持要素(3)の相応の開口(7’)を貫通すること、保持要素(3)の相手係止要素(12,12’)が、保持要素(3)の支持要素(2)とは反対の側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
支持要素(2)が、ボディ部品(5)に面した少なくとも1つの位置決めノーズ(13)を備え、この位置決めノーズが、組立て状態でこの位置決めノーズに対して相補的にボディ部品(5)に形成された位置決め凹部(14)に係合すること、及び/又は支持要素(2)が、ボディ部品(5)に面した少なくとも1つの位置決め溝(15)を備え、この位置決め溝が、組立て状態でボディ部品(5)に配設された位置決め突起(16)と協働することを特徴とする請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項4】
支持要素(2)が少なくとも1つの第1の位置決め開口(17)を備え、この位置決め開口に、組立て状態で装着部品(4)の少なくとも1つの付属の位置決めノーズ(13’)が係合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項5】
ボディ部品(5)に第2の位置決め開口(18)が設けられており、この位置決め開口が、組立て状態で支持要素(2)の少なくとも1つの第1の位置決め開口(17)と整列するように配設されていることを特徴とする請求項4に記載の固定装置。
【請求項6】
保持要素(3)に第3の位置決め開口(19)が設けられており、この位置決め開口が、組立て状態で支持要素(2)の少なくとも1つの第1の位置決め開口(17)と整列するように配設されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の固定装置。
【請求項7】
装着部品(4)の位置決めノーズ(13’)が、組立て状態で第2の位置決め開口(18)に係合すること、又は装着部品(4)の位置決めノーズ(13’)が、組立て状態で第2及び第3の位置決め開口(18,19)に係合することを特徴とする請求項6に記載の固定装置。
【請求項8】
支持要素(2)及び/又は保持要素(3)が、それぞれ一体的な合成樹脂部品として形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項9】
保持要素(3)の相手係止要素(12’)の少なくとも1つがバネ弾性的な舌部として形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項10】
装着部品(4)がエンブレムを備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項11】
保持要素(3)が係止舌部(9)を備え、この係止舌部が、組立て状態でボディ部品(5)に配設された相手係止輪郭と協働し、保持要素(3)を不動にボディ部品(5)に固定することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−1359(P2008−1359A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161128(P2007−161128)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(390009335)ドクトル インジエニエール ハー ツエー エフ ポルシエ アクチエンゲゼルシヤフト (123)
【氏名又は名称原語表記】Dr.Ing.h.c.F.Porsche  Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1,D−70435 Stuttgart,Germany
【Fターム(参考)】