説明

装置構成体位置決め方法、この方法を用いた複数の装置構成体からなる装置、同画像形成装置

【課題】専用の部品追加を行うことなく、装置構成体に外力が加えられても、その装置構成体が傾いたり、転倒したり、落下したりしてしまうのを抑制可能とする。
【解決手段】画像形成部11と給紙テーブル12の組み合わせに、外力Fを加えた時に画像形成部11が傾き始め、底板21がピン状部材32の溝41まで傾いた時に、長穴23とピン状部材32の径の差による隙間(D2−D3)だけ自由に移動でき、あるいは移動を阻害されないようになるため、外力Fに押されて移動し、確実にピン状部材32の溝41に引っ掛かる。ピン状部材32が決め穴22に入り込んだ状態を維持することができ、給紙テーブル12上で画像形成部11が転倒したり、画像形成部11が給紙テーブル12上から落下してしまうのを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の装置構成体からなる装置の装置構成体位置決め方法、この方法を用いた複数の装置構成体からなる装置、同じく複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の装置構成体(以下、装置の構成要素たるユニット、テーブル等を言う。)から構成される装置の安全規格のうちで装置構成体の転倒及び落下に関する項目があり、外力を受けた際に、テーブル(以下、テーブルというときは、給紙機構等のように特有の機能を示す要素の有無に関わらず、他の装置構成体が上部に設置されうる装置構成体のことを言う。)上で画像形成部のような装置構成体が傾いたり、転倒したり、落下したりすることがないように、と規定されている。
【0003】
そしてこの安全規格を満たす為、装置構成体の間を直接または他の部材を介してネジ締結することが一般的に行われ、既に知られている。また、プリンタなどユーザ設置の装置の場合には、このような装置構成体やテーブルの増設をユーザが行うため、締結部材による締結を忘れたり怠ったりすることがある。
【0004】
そのような場合、比較的小さな外力でも装置構成体間が分離して上側の装置構成体のみが傾き、転倒したり、テーブル上から落下するおそれがある。そのような装置では、装置構成体間の位置決めを行うよう下側の装置構成体やテーブルにピン状部材を設け、上側の装置構成体にこれと嵌合する部位を追加し、上側の装置構成体が傾いた時に引っ掛かり、転倒や落下を防止する構成にすることが一般的に行なわれ、既に知られている。
【0005】
特許文献1には、外力により装置構成体が傾いてテーブルから落下するおそれを少なくする目的で、装置の底板に円筒部材を取り付け、テーブル上に設けたピン状部材が円筒に入り込む構成としている。また、テーブルのピンには円筒のエッジが引っ掛かりやすいように係止溝を設ける構成が開示されている。しかしながら、このような構造は、着脱性が悪いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、従来公知の装置では、部品の追加を行っているため、コスト及び省資源化という観点から無駄が多い構成となっていた。また、テーブルに設けられたピン状部材に引っ掛かる部材の追加においては、着脱時におけるガタを極めて小さく抑えてしまっているため、上側の装置構成体を下側の装置構成体あるいはテーブルから取り外すときにも引っ掛かることがあり、着脱性を悪化させているという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、専用の部品追加を行うことなく、上側の装置構成体に外力が加えられたとしても下側の装置構成体上で上側の装置構成体が傾いたり、転倒したり、落下したりしてしまうのを抑制できる位置決め方法、装置、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の装置構成体位置決め方法のうち請求項1に係るものは、複数の装置構成体からなる装置の装置構成体位置決め方法であって、前記複数の装置構成体のうち下側の装置構成体の上面に設けた一対のピン状部材と嵌合する上側の装置構成体の底板に設けた決め穴と長穴のうち、決め穴を長穴よりも上側の装置構成体が転倒、落下しやすい方向から遠い側に配置し、前記下側の装置構成体の前記ピン状部材の外周面に溝を設け、前記上側の装置構成体に外力が加えられて傾いた状態で前記上側の装置構成体の底板の前記決め穴の縁が前記ピン状部材の前記溝に引っ掛かり、前記上側の装置構成体の転倒や落下を抑制することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係るものは、請求項1に記載の装置構成体位置決め方法において、前記決め穴の径を前記上側の装置構成体が傾き得るように前記ピン状部材の直径よりごくわずかに大きくし、前記長穴の径は前記決め穴の径よりも大きくして、前記上側の装置構成体が自由にあるいは阻害されずに傾き得るようにすることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る複数の装置構成体からなる装置は、複数の装置構成体からなる装置であって、前記複数の装置構成体のうち下側の装置構成体の上面に設けた一対のピン状部材と嵌合する上側の装置構成体の底板に設けた決め穴と長穴のうち、決め穴を長穴よりも上側の装置構成体が転倒、落下しやすい方向から遠い側に配置し、前記下側の装置構成体の前記ピン状部材の外周面に溝を設け、該溝を、前記上側の装置構成体に外力が加えられて傾いた状態で前記上側の装置構成体の底板の前記決め穴の縁が引っ掛かり、前記上側の装置構成体の転倒や落下を抑制する位置に設けてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係るものは、請求項3に記載の複数の装置構成体からなる装置において、前記決め穴の径を前記上側の装置構成体が傾き得るように前記ピン状部材の直径よりごくわずかに大きく、前記長穴の径は、前記上側の装置構成体が自由にあるいは阻害されずに傾き得るように前記決め穴の径よりも大きくしてなることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係るものは、請求項3または4に記載の複数の装置構成体からなる装置において、前記上側の装置構成体が、開閉されるカバーまたは開閉されるカバーを備えるユニットであることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る画像形成装置は、請求項3から5のいずれかに記載の複数の装置構成体からなる装置が複数のユニット体からなることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る画像形成装置は、請求項6に記載の画像形成装置において、前記ユニット体のうち下側のユニット体を床置きするフロアータイプのものである。
【0015】
請求項8に係る画像形成装置は、前記画像形成装置が、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機又はインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つの機能を組み合わせた複合機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、専用の部品追加を行なうことなく、装置に外力が加えられたとしてもテーブル上で装置本体が傾き転倒したり、落下してしまうのを抑制できる画像形成装置及びテーブルを提供することができる。また、従来問題とされていた着脱性の悪さについては、着脱性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施対象となる縦搬送ユニットを開閉できる画像形成装置の模式図
【図2】図1の画像形成部の底板を上方から見て示す模式図
【図3】給紙テーブルの上面の斜視図
【図4】給紙テーブルに設けられたピン状部材の拡大図
【図5】外力を加えた時に画像形成部が傾き始めた状態の模式的断面図
【図6】本発明の実施例との比較例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、下側の装置構成体の上面に設けたピン状部材と嵌合する上側の装置構成体の底板に設けた決め穴と長穴のうち、決め穴を長穴よりも上側の装置構成体が転倒、落下しやすい方向から遠い側に配置すること、下側の装置構成体のピン状部材の外周面に溝を設けることの組み合わせにより、上側の装置構成体に外力が加えられたとしても、傾いた状態にてその底板の決め穴の縁がピン状部材の溝に引っ掛かる。その結果、ピン状部材が決め穴に入り込んだ状態を維持することができるので、下側の装置構成体上で上側の装置構成体が転倒したり、落下してしまうのを抑制できる。また、従来から存在する部品の形状及び配置により効果を得るものなので、専用の部品追加を行うことなく、上側の装置構成体に外力が加えられたとしても下側の装置構成体上で上側の装置構成体が傾いて転倒したり、落下してしまうのを抑制できる装置構造を提供することができる。また本発明の構造は、装置構成体間の着脱性が悪化することもない。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の実施対象となる画像形成装置の模式図であり、この装置は、縦搬送ユニットを開閉できるものである。図中10は自動給紙装置、11は画像形成部、12は給紙テーブル、13は縦搬送ユニットであり、それぞれユニット体化されて組み合わせられ、装置を構成している。一般的に縦搬送ユニット13が図中符号13aの位置にあるときは、縦搬送ユニット13の重心が画像形成装置の中心寄りにあり、転倒させるためには非常に大きな外力が必要である。しかし、紙詰まり等が発生した際に符号13bの位置に縦搬送ユニット13を開放することがある。その状態においては、閉じられた状態に比べて重心が画像形成装置の中心から外れる方向、図示の例では図中で右方向に移動する。そしてその状態になると、比較的小さな外力Fが加わることでも転倒してしまうことがある。
【0020】
なお、図1は画像形成装置の例であるが、他にも大型冷蔵庫の扉や引き出しを開いた状態での背面からの外力、キャビネットボックスや机の引き出しを開いた状態での引き出し方向対面側からの外力なども同様である。また装置構成体であるユニット等を開閉する方向は、図1のような形態ではなく、図2以下に示すような上下方向であっても良い。また本発明は画像形成装置に使用する例には限定されない。
【0021】
図2は図1の画像形成部11の底板21を上方から見て示す模式図である。底板21には決め穴22と決め穴22を中心とする回転方向を位置決めする長穴23が設けられている。決め穴22は長穴23よりも図1の縦搬送ユニット13の開放により転倒しやすい右側から遠い側に配置されている。
【0022】
図3は給紙テーブル12の上面の斜視図である。給紙テーブル12の上面31には、画像形成部11側の穴22、23位置に合わせてピン状部材32が2つ設置されている。なおこの実施例では、2つのピン状部材32の両方に溝が設けられているが、本発明では決め穴22に対応するピンのみ溝を設ければよい。
【0023】
図4は給紙テーブル12に設けられたピン状部材32の拡大図である。ピン状部材32の途中部位の外周面には溝41が設けられている。
【0024】
図5は図1の画像形成部11と給紙テーブル12の組み合わせに、外力Fを加えた時に画像形成部11が傾き始めた状態の模式的断面図である。外力Fにより、画像形成部11が傾き(円弧の軌跡51)、底板21は、符号21aで示すから符号21bで示す位置まで持ち上げられるが、ピン状部材32の高さhの位置に設けられた溝41に長穴23の縁が引っ掛かる。このため、画像形成部11の傾きは高さhまでに規制される。
【0025】
さらに詳細に述べると、決め穴22は、画像形成部11が傾き得るように、ピン状部材32の直径D1よりごくわずかに大きい。外力Fにより底板21がピン状部材32の溝41まで傾いた時に、長穴23とピン状部材32の径の差による隙間(D2−D3)だけ自由に移動でき、あるいは移動を阻害されないようになるため、外力Fに押され、図中右方向に移動し確実に溝41に引っ掛かる。その結果、ピン状部材32が決め穴22に入り込んだ状態を維持することができるので、給紙テーブル12上で画像形成部11が転倒したり、画像形成部11が給紙テーブル12上から落下してしまうのを抑制できる。
【0026】
図6は本発明の実施例との比較例を示す断面図である。本例は、画像形成部11の底板21の図中右側の穴を決め穴63とし、左側を長穴62としてある。そして、決め穴63の径は、実施例1の決め穴22と同様に、画像形成部11が傾き得るようにわずかにピン状部材32の直径D1より大きくしてある。
【0027】
すなわち、この実施例において決め穴63の縁にピン状部材32の溝41を引っ掛けようとした場合、決め穴63を高さhまで傾ければ溝41の縁に引っ掛けることができるが、大型の装置や、高さのある装置の場合、傾きが大きくなることにより、載置状態の品質感が悪いだけでなく、転倒の危険性も大きくなることを回避できない。たとえ溝41までの高さhを小さくしても、大型の装置等ではテコ比により、上側の画像形成部11に対して力Fが掛かる図中左側を決め穴にした場合に比べ、ピン状部材32及び底板21に非常に大きな負荷が掛かり、図中に矢印64で示すようなピン状部材32の変形や破損の危険性が増大する。
【0028】
また、転倒方向から遠い側に設けられた長穴62をピン状部材32の溝41に引っ掛けようとした場合、図中右側の穴が決め穴63(ピン形状の直径D1よりごくわずかに大きい)であるため、ピン状部材32との隙間が殆ど無く、そのため画像形成部11の移動を規制してしまう。
【0029】
その結果、上側の画像形成部11が傾いた時の長穴62の軌跡は決め穴部63を中心とした円弧の軌跡61となり、図中高さhの位置に溝41を設けても引っ掛からないことが分かる。すなわち、溝41までの高さhを大きくすることで円弧軌跡により引っ掛かる位置とすることができるが、本発明の実施例の場合よりも画像形成部11が大きく傾くことになり、載置状態の品質感が悪いだけでなく、ともすれば転倒の危険性を回避できない。また、ピン状部材が長くなることとなり、装置内部の構成に影響を及ぼす可能性が増大することがわかる。換言すれば、本発明によれば外力による傾きを小さくでき、載置状態の品質感も向上させることができることが分かる。
【符号の説明】
【0030】
10:自動給紙装置
11:画像形成部
12:給紙テーブル
13:縦搬送ユニット
F:外力
21:底板
22:決め穴
23:長穴
31:給紙テーブルの上面
32:ピン状部材
41:ピン状部材の溝
h:ピン状部材の溝の高さ
D1:ピン状部材の直径
D2:長穴の径
D3:ピン状部材の径
63:決め穴
62:長穴
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】特開2002−326424号公報
【特許文献2】特開2009−157042号公報
【特許文献3】特開平11−015225号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置構成体からなる装置の装置構成体位置決め方法であって、
前記複数の装置構成体のうち下側の装置構成体の上面に設けた一対のピン状部材と嵌合する上側の装置構成体の底板に設けた決め穴と長穴のうち、決め穴を長穴よりも上側の装置構成体が転倒、落下しやすい方向から遠い側に配置し、
前記下側の装置構成体の前記ピン状部材の外周面に溝を設け、
前記上側の装置構成体に外力が加えられて傾いた状態で前記上側の装置構成体の底板の前記決め穴の縁が前記ピン状部材の前記溝に引っ掛かり、前記上側の装置構成体の転倒や落下を抑制する、
ことを特徴とする装置構成体位置決め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の装置構成体位置決め方法において、
前記決め穴の径を前記上側の装置構成体が傾き得るように前記ピン状部材の直径よりごくわずかに大きくし、
前記長穴の径は前記決め穴の径よりも大きくして、前記上側の装置構成体が自由にあるいは阻害されずに傾き得るようにする、
ことを特徴とする装置構成体位置決め方法。
【請求項3】
複数の装置構成体からなる装置であって、
前記複数の装置構成体のうち下側の装置構成体の上面に設けた一対のピン状部材と嵌合する上側の装置構成体の底板に設けた決め穴と長穴のうち、決め穴を長穴よりも上側の装置構成体が転倒、落下しやすい方向から遠い側に配置し、
前記下側の装置構成体の前記ピン状部材の外周面に溝を設け、
該溝を、前記上側の装置構成体に外力が加えられて傾いた状態で前記上側の装置構成体の底板の前記決め穴の縁が引っ掛かり、前記上側の装置構成体の転倒や落下を抑制する位置に設けてなる、
ことを特徴とする複数の装置構成体からなる装置。
【請求項4】
請求項3に記載の複数の装置構成体からなる装置において、
前記決め穴の径を前記上側の装置構成体が傾き得るように前記ピン状部材の直径よりごくわずかに大きく、
前記長穴の径は、前記上側の装置構成体が自由にあるいは阻害されずに傾き得るように前記決め穴の径よりも大きくしてなる、
ことを特徴とする複数の装置構成体からなる装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の複数の装置構成体からなる装置において、
前記上側の装置構成体が、開閉されるカバーまたは開閉されるカバーを備えるユニットである、
ことを特徴とする複数の装置構成体からなる装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の複数の装置構成体からなる装置が複数のユニット体からなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、前記ユニット体のうち下側のユニット体を床置きするフロアータイプの画像形成装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の画像形成装置において、前記画像形成装置が、複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機又はインクジェット記録装置の何れか一つ、またはそれらの少なくとも二つの機能を組み合わせた複合機であることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−59199(P2011−59199A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206188(P2009−206188)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】