説明

装飾表示体

【課題】金属を使用することなく金属表面のような光沢感を表現することができる装飾表示体を提供する。
【解決手段】装飾表示体10は、透明素材11の表面に複数の集光素12aを各集光素12aの並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターン121が形成されるとともに、透明素材11の裏面に複数の線状画素13aを集光素パターン121とは異なる配列ピッチで平行に配列して線状画素パターン131が形成されている。該装飾表示体10は、透明素材11の裏面に拡大虚像現出領域R1〜R29が設けられ、該拡大虚像現出領域R1〜29に線状画素パターン131〜134が形成されるとともに、該線状画素パターン131〜134の線状画素13aは拡大虚像現出領域R1〜R29と同程度以上の拡大虚像Zを透明素材11の上方に現出させる線幅Wとなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機やゲーム機の外装パネル、包装箱、広告体、飾り品などの各種商品の装飾に用いられる装飾表示体、およびそれが設けられるフォトフレームなどのディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、遊技機やゲーム機の外層パネル、包装箱、広告体、飾り品あるいはデジタルフォトフレームなどのディスプレイ装置などといった種々の商品は、表面に文字や図柄などの装飾を施される場合が多い。こういった装飾においては、各種商品の表面から図柄などの拡大虚像を上方または下方に現出させて観る者の視覚を刺激することにより各種商品に興味を持たせる装飾表示体を採用するということが従来より知られており、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1の装飾表示体は、凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に透明素材の表面に配列させることにより形成される集光素パターンと、複数の画素を各画素の並びに集光素パターンと同じ方向性を持たせて2次元的に透明素材の裏面に配列させることにより形成される画素パターンとを備えており、集光素パターンの配列ピッチと画素パターンの配列ピッチとをずらして構成することにより、画素が描く図柄などの拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させる。
【0004】
また、上記した装飾表示体には、画素が線状であるものも知られており、例えば下記特許文献2に開示されている。この特許文献2の装飾表示体は、特許文献1と同様の集光素パターンと、該集光素パターンの一方向に倣いつつ2次元的に平行に線状画素を配列されることにより形成される線状画素パターンとを備えており、特許文献1と同様、線状画素が描く図柄などの拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させる。
【0005】
従来においては、上記した装飾表示体を各種商品の装飾に採用することにより、揺らぎの少ない静的な状態で画素または線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させて、観る者の視覚を刺激するようにしていた。
【0006】
一方、アルミや鉄などの金属を表面に有する商品は一般的に知られており、金属の部分が光沢を有している。該金属の表面においては光が反射する部分と反射しない部分との明暗のコントラストにより光沢が表現され、該光沢によって観る者の視覚が強く刺激されるため、観る者に対して該商品に興味を持たせるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−180198号公報
【特許文献2】特開2002−120499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の装飾表示体は、画素または線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させることができるが、金属表面のような光沢感を有するものではなかった。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであって、金属を使用することなく金属表面のような光沢感を表現することができる装飾表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る装飾表示体は、上記目的を達成するために、シート状または板状の透明素材の表面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターンが形成されるとともに、透明素材の裏面に、着色された複数の線状画素を集光素パターンと異なる配列ピッチで平行に配列して線状画素パターンが形成されることにより、線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させる。この装飾表示体は、透明素材の裏面に拡大虚像現出領域が設けられ、該拡大虚像現出領域に線状画素パターンが形成されるとともに、該線状画素パターンにおける各線状画素は拡大虚像現出領域と同程度以上の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させる線幅となされていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、拡大虚像現出領域と同程度以上の線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させるため、観る位置によって線状画素の拡大虚像を明確に現出および消失させることができる。このため、線状画素の拡大虚像が現出した際の暗い部分と、線状画素の拡大虚像が消失した際の明るい部分とによる明暗のコントラストが生じ、この明暗のコントラストによって金属表面のような光沢感を疑似的に表現することができる。
【0012】
また、線状画素パターンは、各線状画素同士の間隔が該線幅以上で形成されているのが好ましい。これによれば、線状画素の拡大虚像の現出よりも消失の割合が増えるため、拡大虚像が現出した際の暗い部分よりも拡大虚像の消失した際の明るい部分が多くなり、金属表面のような光沢感を強調的に表現することができる。
【0013】
また、透明素材の裏面に複数の拡大虚像現出領域が設けられ、各拡大虚像現出領域に線状画素パターンが形成されているのが好ましい。これによれば、透明素材の複数箇所において金属表面のような光沢感を表現することができる。
【0014】
また、線状画素パターンは拡大虚像現出領域ごとに線状画素が異なる配列方向で配列しているのが好ましい。これによれば、ある拡大虚像現出領域において線状画素の拡大虚像の現出によって暗い部分が表現されているときに、他の拡大虚像現出領域においては線状画素の拡大虚像の消失によって明るい部分が表現されるため、各拡大虚像現出領域において明暗のコントラストの生じるタイミングを異ならせることができ、金属表面のような光沢感をより装飾的に表現することができる。
【0015】
また、拡大虚像現出領域に隣接する領域において、着色された複数の画素を各画素の並びに集光素パターンと同じ方向性を持たせて2次元的に配列して第2の画素パターンが形成されており、該第2の画素パターンにおける画素の拡大虚像が線状画素パターンの各線状画素の拡大虚像よりも低い位置で現出するのが好ましい。これによれば、該第2の画素パターンにおける画素の拡大虚像が線状画素パターンにおける各線状画素の拡大虚像よりも低い位置で現出するため、拡大虚像現出領域が隣接する領域に比べて浮遊しているように見え、金属表面のような光沢感をより強調的に表現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、拡大虚像現出領域と同程度以上の線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させるため、観る位置によって線状画素の拡大虚像を明確に現出および消失させることができる。このため、線状画素の拡大虚像が現出した際の暗い部分と、線状画素の拡大虚像が消失した際の明るい部分とによる明暗のコントラストが生じ、この明暗のコントラストによって金属表面のような光沢感を疑似的に表現することができる。従って、金属を使用することなく金属表面のような光沢感を表現することにより、観る者の視覚を強く刺激することができ、観る者の商品に対する購買意欲を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る装飾表示体が設けられたデジタルフォトフレームの斜視図である。
【図2】デジタルフォトフレームの分解斜視図である。
【図3】装飾表示体の断面図である。
【図4】画素層の正面図である。
【図5】第1拡大虚像現出領域の集光素と線状画素の関係を示す拡大正面図である。
【図6】(a)第2拡大虚像現出領域、(b)第3拡大虚像現出領域、および(c)第4拡大虚像現出領域の集光素と線状画素の関係を示す各拡大正面図である。
【図7】第1拡大虚像現出領域における拡大虚像の現出および消失の原理を示す概略模式図である。
【図8】(a)第2拡大虚像現出領域、(b)第3拡大虚像現出領域、および(c)第4拡大虚像現出領域における拡大虚像の現出および消失の原理を示す概略模式図である。
【図9】第2実施形態に係る装飾表示体の画素層における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
次に、本発明に係る装飾表示体10の一実施形態について図1〜図8を参照しつつ説明する。
【0019】
本実施形態に係る装飾表示体10は、図1に示すように、ディスプレイ表示部Iに写真データを表示するいわゆるデジタルフォトフレーム(ディスプレイ装置)1に採用されており、該ディスプレイ表示部Iの周縁部に設けられている。この装飾表示体10は、図2に示すように、アクリル板など板状あるいはシート状の透明素材11と、透明素材11の表面に設けられ、無着色または着色の透明インキを用いて複数の凸レンズ状の集光素12aを印刷してなる集光素層12と、透明素材11の裏面に設けられ、着色された不透明インキを用いて線状画素13aを印刷してなる画素層13と、画素層13を透明素材11と挟む態様で設けられる背景層14とを備えており、図3に示すように、集光素層12、透明素材11、画素層13、背景層14が順に積層される態様で一体化している。
【0020】
前記集光素層12は、図5に示すように、複数の集光素12aを各集光素12aの並びに方向性を持たせて2次元的に配列させることにより形成される集光素パターン121を備えている。この集光素パターン121は、水平に対して45°の角度だけ傾斜したx方向とこれに直交するy方向に、同じ配列ピッチpで各集光素12aをマトリクス状に等配列させて規則正しく形成されている。なお、本実施形態において、集光素12aの直径は1.0mmであり、配列ピッチpは1.10mmである。
【0021】
前記画素層13は、図4に示すように、所定の面積を有する領域(以下「拡大虚像現出領域」という)R1〜R29が設けられており、該拡大虚像現出領域R1〜R29には、黒色に着色された複数の線状画素13aを平行に配列させることにより線状画素パターンが各々形成されている。また、各拡大虚像現出領域R1〜R29は、狭い幅の拡大虚像現出領域R30で各々つなぎ合わせられて、全体として「つる植物」が形取られている。
【0022】
前記拡大虚像現出領域R1〜R29に形成されている線状画素パターンは、拡大虚像現出領域R1〜R29ごとに線状画素13aが異なる配列方向で配列しており、本実施形態では4パターンある。すなわち、線状画素パターンは、線状画素13aが上下方向に平行に配列している第1線状画素パターン131と、線状画素13aが左右方向に平行に配列している第2線状画素パターン132と、線状画素13aが斜め右上がりの方向(y方向)に平行に配列している第3線状画素パターン133と、線状画素13aが斜め左上がりの方向(x方向)に平行に配列している第4線状画素パターン134とからなる。
【0023】
なお、以下の説明においては、第1線状画素パターン131が形成されている拡大虚像現出領域R1〜R8を総じて「第1拡大虚像現出領域群R1〜R8」といい、第2線状画素パターン132が形成されている拡大虚像現出領域R9〜R14を総じて「第2拡大虚像現出領域群R9〜R14」といい、第3線状画素パターン133が形成されている拡大虚像現出領域R15〜R21を総じて「第3拡大虚像現出領域群R15〜R21」といい、第4線状画素パターン134が形成されている拡大虚像現出領域R22〜R29を総じて「第4拡大虚像現出領域群R22〜R29」という。
【0024】
これら第1〜第4拡大虚像現出領域群に該当する各拡大虚像現出領域R1〜R29が透明素材11の裏面に形成されていることにより、線状画素13aの拡大虚像Zを各拡大虚像現出領域R1〜R29において現出させることが可能になる。
【0025】
第1拡大虚像現出領域群R1〜R8において、図5に示すように、第1線状画素パターン131は、線状画素13aが集光素パタ−ン121のx方向について時計方向に45°の角度だけ回転させた方向(上下方向)と平行になるように配列ピッチqで配列している。この線状画素13aの配列ピッチqは、集光素12aの配列ピッチpより大きい。従って、該第1拡大虚像現出領域群R1〜R8において、上下方向の線状画素13aの拡大虚像Z1を透明素材11の上方に現出させることができる。なお、本実施形態において、線状画素13aの配列ピッチqは1.11mmである。
【0026】
第2拡大虚像現出領域群R9〜R14において、図6(a)に示すように、第2線状画素パターン132は、線状画素13aが集光素パタ−ン121のx方向について反時計方向に45°の角度だけ回転させた方向(左右方向)と平行になるように配列ピッチqで配列している。すなわち、第2線状画素パターン132は、第1線状画素パターン131を90°の角度だけ回転させたパターンと同様である。この線状画素13aの配列ピッチも集光素12aの配列ピッチpより大きいため、該第2拡大虚像現出領域群R9〜R14において、左右方向の線状画素13aの拡大虚像Z2を透明素材11の上方に現出させることができる。
【0027】
第3拡大虚像現出領域群R15〜R21において、図6(b)に示すように、第3線状画素パターン133は、線状画素13aが集光素パタ−ン121のx方向について時計方向に90°の角度だけ回転させたy方向(斜め右上がり方向)と平行になるように配列ピッチqで配列している。すなわち、第3線状画素パターン133は、第1線状画素パターン131を時計方向に45°の角度だけ回転させたパターンと同様である。この線状画素13aの配列ピッチも集光素12aの配列ピッチpより大きいため、該第3拡大虚像現出領域群R15〜R21において、斜め右上がり方向の線状画素13aの拡大虚像Z3を透明素材11の上方に現出させることができる。
【0028】
第4拡大虚像現出領域群R22〜R29において、図6(c)に示すように、第4線状画素パターン134は、線状画素13aが集光素パタ−ン121のx方向(斜め左上がり方向)と平行になるように配列ピッチqで配列している。すなわち、第4線状画素パターン134は、第1線状画素パターン131を反時計方向に45°の角度だけ回転させたパターンと同様である。この線状画素13aの配列ピッチも集光素12aの配列ピッチpより大きいため、該第4拡大虚像現出領域群R22〜R29において、斜め左上がり方向の線状画素13aの拡大虚像Z4を透明素材11の上方に現出させることができる。
【0029】
また、各線状パターン131〜134における線状画素13aは、図5に示すように、それぞれ線幅Wで形成されている。この線幅Wは、上述した各拡大虚像現出領域R1〜29と同程度(拡大虚像現出領域R1〜R29の約90%〜100%程度)以上の拡大虚像Z1〜Z4を現出させる幅である。従って、線状画素13aの拡大虚像Z1〜Z4が現出した場合、拡大虚像Z1〜Z4となされる線状画素13aの黒色を各拡大虚像現出領域R1〜R29において表示することができる。なお、本実施形態において線状画素13aの線幅Wは0.35mmである。
【0030】
また、各線状画素パターン131〜134は、各線状画素13a同士の間隔(各線状画素13a間の白い部分)W’が線状画素13aの線幅Wより大きい。すなわち、各線状画素パターン131〜134は、各線状画素13a同士の間隔W’が線幅W以上で形成されている。従って、各拡大虚像現出領域R1〜R29において、線状画素13aにおける拡大虚像Z1〜Z4の現出よりも拡大虚像Z1〜Z4の消失の割合を増やすことが可能であるため、拡大虚像Z1〜Z4が現出した際に暗い部分となされる黒色よりも拡大虚像Z1〜Z4の消失した際に明るい部分となされる白色を多くすることができる。
【0031】
前記背景層14は、図2に示すように、透明素材11側の面が不透明な白色に着色されている。従って、背景層14は、画素層13において線状画素13aが形成されていない部分を白色に表示して、背景として画素層13により現出される拡大虚像Zを明確に表示させることができる。
【0032】
次に、装飾表示体10の作用について図7(a)〜(e)を参照しつつ説明する。以下の説明においては、まず第1拡大虚像現出領域群21における線状画素13aの拡大虚像Z1の現出および消失の原理について説明する。なお、図7(a)〜(e)においては、第1拡大虚像現出領域群R1〜R8のうちの拡大虚像現出領域R1を一例として図示する。
【0033】
第1拡大虚像現出領域群R1〜R8においては、第1線状画素パターン131が形成されている。従って、図7(a)〜(e)に示すように、上下方向の線状画素13aの拡大虚像Z1が第1拡大虚像現出領域群R1〜R8の各拡大虚像現出領域と同程度以上で透明素材11の上方に現出および消失することが可能である。
【0034】
ここにおいて、図7(a)に示すように、線状画素13aの拡大虚像Z1が拡大虚像現出領域R1の左側に位置している際に、装飾表示体10を観る位置が線状画素13aと直交する右方向に移動した場合、図7(b)に示すように、拡大虚像Z1が線状画素13aと直交する右方向に移動し、各拡大虚像現出領域内において現出し始める。また、装飾表示体10を観る位置が右方向にさらに移動した場合、図7(c)に示すように、拡大虚像Z1が右方向にさらに移動し、各拡大虚像現出領域R1〜R8を全て占めるように現出する。従って、観る位置が右方向に移動することによって、拡大虚像Z1を明確に現出させることができるため、拡大虚像Z1が現出した際に暗い部分となされる黒色が各拡大虚像現出領域R1〜R8において表現される。
【0035】
また、図7(c)の状態から、装飾表示体10を観る位置が右方向にさらに移動した場合、図7(d)に示すように、拡大虚像Z1が右方向に移動し、各拡大虚像現出領域R1〜R8において消失し始める。また、装飾表示体10を観る位置が右方向にさらに移動した場合、図7(e)に示すように、拡大虚像Z1が右方向にさらに移動し、各拡大虚像現出領域R1〜R8において消失する。従って、観る位置が右方向に移動することによって、拡大虚像Z1を明確に消失させることができるため、拡大虚像Z1が消失した際に明るい部分となされる白色が各拡大虚像現出領域R1〜R8において表現される。
【0036】
また、一方で、装飾表示体10を観る位置が線状画素13aと直交する左方向に移動した場合も上述と同様の原理で、拡大虚像Z1が線状画素13aと直交する左方向に移動して、各拡大虚像現出領域R1〜R8において拡大虚像Z1が現出および消失する。
【0037】
なお、上記においては、説明の便宜上、拡大虚像Z1の現出および消失について図7(a)〜(e)を用いて細かく状況を分割して説明したが、各拡大虚像現出領域R1〜R8に現出する拡大虚像Z1は相当な倍率で拡大されているため、拡大虚像現出領域R1〜R8における移動は高速である。従って、拡大虚像Z1による黒色と背景層14による白色とが素早く切り変わるため、拡大虚像現出領域がまるでキラキラしているように見える。
【0038】
以上より、第1拡大虚像現出領域群R1〜R8においては、観る位置が左右方向に移動することによって、拡大虚像Z1が現出した際に暗い部分となされる黒色と、拡大虚像Z1が消失した際に明るい部分となされる白色とによる明暗のコントラストを生じさせることができる。従って、この明暗のコントラストによって、金属表面のような光沢感を疑似的に表現することができる。
【0039】
なお、上記の説明においては、拡大虚像Z1が現出し始めてから消失するまで、観る位置が終始同一方向に移動する場合について説明したが、観る位置が途中で逆側に変更する場合も同様の原理により、拡大虚像Z1は現出および消失する。
【0040】
次に、第2拡大虚像現出領域群R9〜R14について図8(a)を参照しつつ説明する。ここにおいては、第2拡大虚像現出領域群R9〜R14のうちの拡大虚像現出領域R13を一例として図示する。
【0041】
第2拡大虚像現出領域群R9〜R14においては、上述した第1拡大虚像現出領域群R1〜R8の第1線状画素パターン131を90°の角度だけ回転してなる第2線状画素パターン132が形成されている。従って、第1拡大虚像現出領域群R1〜R8において説明した同様の原理により、装飾表示体10を観る位置が線状画素13aと直交する上方向または下方向に移動した場合、線状画素13aの拡大虚像Z2が上方向または下方向に移動して、各拡大虚像現出領域R9〜R14において拡大虚像Z2が現出および消失する。例えば、図8(a)に示すように、装飾表示体10を観る位置が下方向から上方向に移動した場合、拡大虚像Z2が下方向から上方向に移動して、拡大虚像現出領域R13において現出および消失する。
【0042】
次に、第3拡大虚像現出領域群R15〜R21について図8(b)を参照しつつ説明する。ここにおいては、第3拡大虚像現出領域群R15〜R21のうちの拡大虚像現出領域R17を一例として図示する。
【0043】
第3拡大虚像現出領域群R15〜R21においては、上述した第1拡大虚像現出領域群R1〜R8の第1線状画素パターン131を時計方向に45°の角度だけ回転してなる第3線状画素パターン133が形成されている。従って、第1拡大虚像現出領域群R1〜R8において説明した同様の原理により、装飾表示体10を観る位置が線状画素13aと直交する+x方向あるいは−x方向に移動した場合、線状画素13aの拡大虚像Z3が+x方向あるいは−x方向に移動して、各拡大虚像現出領域R15〜R21において拡大虚像Z3が現出および消失する。例えば、図8(b)に示すように、装飾表示体10を観る位置が+x方向から−x方向に移動した場合、拡大虚像Z3が+x方向から−x方向に移動して、拡大虚像現出領域R17において現出および消失する。
【0044】
次に、第4拡大虚像現出領域群24について図8(c)を参照しつつ説明する。ここにおいては、第4拡大虚像現出領域群R22〜R29のうちの拡大虚像現出領域R28を図示する。
【0045】
第4拡大虚像現出領域群R22〜R29においては、上述した第1拡大虚像現出領域群R1〜R8の第1線状画素パターン131を反時計方向に45°の角度だけ回転してなる第4線状画素パターン134が形成されている。従って、第1拡大虚像現出領域群R1〜R8において説明した同様の原理により、装飾表示体10を観る位置が線状画素13aと直交する+y方向あるいは−y方向に移動した場合、線状画素13aの拡大虚像Z4が+y方向あるいは−y方向に移動して、各拡大虚像現出領域R22〜R29において拡大虚像Z4が現出および消失する。例えば、図8(c)に示すように、装飾表示体10を観る位置が+y方向から−y方向に移動した場合、拡大虚像Z4が+y方向から−y方向に移動して、拡大虚像現出領域R28において現出および消失する。
【0046】
以上で説明した装飾表示体10によれば、各拡大虚像現出領域R1〜R29と同程度以上の線状画素13aの拡大虚像Zを各拡大虚像現出領域R1〜R29において透明素材11の上方に現出させることができるため、観る位置によって線状画素13aの拡大虚像Zを明確に現出および消失させることができる。このため、線状画素13aの拡大虚像Zが現出した際に暗い部分となされる黒色と、線状画素13aの拡大虚像Zが消失した際に明るい部分となされる白色とによる明暗のコントラストが生じ、この明暗のコントラストによって金属表面のような光沢感を疑似的に表現することができる。従って、金属を使用することなく金属表面のような光沢感を表現することができるため、観る者の視覚を強く刺激することができ、観る者の商品に対する購買意欲を向上させることが可能となる。
【0047】
また、第1〜第4拡大虚像現出領域群R1〜R29のいずれにおいても、各線状画素13a同士の間隔W’は線状画素13aの線幅Wより大きいことより、線状画素13aにおける拡大虚像Zの現出よりも線状画素13aにおける拡大虚像Zの消失の割合を増やすことができるため、拡大虚像Zが現出した際に暗い部分となされる黒色よりも拡大虚像Zの消失した際に明るい部分となされる白色を多くすることができる。従って、金属表面のような光沢感を強調的に表現することができる。
【0048】
また、透明素材11の裏面に複数の拡大虚像現出領域R1〜R29が設けられていることより、透明素材11の複数箇所において線状画素13aの拡大虚像Zを透明素材11の上方に現出または消失させることができるため、透明素材11の複数箇所において金属表面のような光沢感を表現することができる。
【0049】
また、拡大虚像現出領域R1〜R29には、配列方向が各々異なる各線状画素パターン131〜134が形成されていることにより、ある拡大虚像現出領域において線状画素13aの拡大虚像Zの現出によって暗い部分が表現されているときに、他の拡大虚像現出領域においては線状画素13aの拡大虚像Zの消失によって明るい部分が表現されるため、各拡大虚像現出領域R1〜R29において明暗のコントラストの生じるタイミングを異ならせることができ、金属表面のような光沢感をより装飾的に表現することができる。
【0050】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る装飾表示体(以下「装飾表示体」という)の他の実施形態について図9を参照しつつ説明する。本実施形態と第1実施形態との相違点は、画素層の構成である。従って、以下においては該画素層についてのみ説明し、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
本実施形態の画素層23は、図9に示すように、第1実施形態における画素層13の第1〜第4拡大虚像現出領域群R1〜R29に隣接する領域において、着色された複数の点状画素13bを各点状画素13bの並びに集光素パターン121と同じ方向性を持たせて2次元的に配列して点状画素パターン135が形成されている。この点状画素パターン135は、点状画素13bが集光素の配列ピッチpより小さい配列ピッチrで配列している。従って、該点状画素パターン135による点状画素13bの拡大虚像は、透明素材11の下方において現出するため、各線状画素パターン131〜134の各線状画素13aの拡大虚像Zよりも低い位置で現出する。
【0052】
以上より、点状画素パターン135における点状画素13bの拡大虚像が各線状画素パターン131〜134における各線状画素13aの拡大虚像Zよりも低い位置で現出するため、線状画素13aが形成されている第1〜第4拡大虚像現出領域21〜24が点状画素パターン135の領域に比べて浮遊しているように見えるため、金属表面のような光沢感をより強調的に表現することができる。
【0053】
なお、上記した第1および第2実施形態において、線状画素13aの拡大虚像Zは、透明素材11の上方に現出および消失する場合について説明したが、透明素材11の下方に現出および消失するようにしてもよい。なお、この場合、集光素12aの配列ピッチpと各線状パターン131〜134の線状画素13aの配列ピッチqとの関係は「配列ピッチq<配列ピッチp」である。
【0054】
また、拡大虚像現出領域R1〜R29は、つる植物の葉の部分である場合について説明したが、その他の部分も線状画素13aの拡大虚像Zを現出させる拡大虚像現出領域であってもよい。
【0055】
また、拡大虚像現出領域R1〜R29は、幅の狭い拡大虚像現出領域R30を含めた全体として「つる植物」に形取られている場合について説明したが、任意の形状でもよい。
【0056】
また、拡大虚像現出領域R1〜R29は、透明素材11の裏面において部分的に形成されている場合について説明したが、透明素材11の裏面の全てに形成されてもよい。
【0057】
また、線状画素13aの線幅Wは、全て同一である場合について説明したが、線状画素の線幅を適宜変更してもよい。
【0058】
また、線状画素パターン131〜134は、各線状画素1a同士の間隔W’が該線幅W以上で形成されている場合について説明したが、線状画素13aの線幅W未満の配列ピッチであってもよい。
【0059】
また、各線状画素パターン131〜134は、線状画素13aが同一の配列ピッチqで配列している場合について説明したが、配列ピッチを適宜変更してもよい。
【0060】
また、透明素材11の裏面に複数の拡大虚像現出領域R1〜R29が設けられている場合について説明したが、1つでもよい。
【0061】
また、各線状画素パターン131〜134は、第1〜第4拡大虚像現出領域群R1〜R29ごとに線状画素13aが異なる配列方向で配列している場合について説明したが、全て同一の方向でもよいし、全て異なる方向でもよい。
【0062】
また、集光素パターン121はx方向とy方向が直交している場合について説明したが、直交してなくてもよい。要は、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列していればよい。
【0063】
また、線状画素13aが黒色で背景層14が白色である場合について説明したが、任意の色であってもよい。要は、拡大虚像Zが現出した際の暗い部分と消失した際の明るい部分とにおいて明暗のコントラストが生じる色であれば任意の色でよい。
【0064】
また、装飾表示体10はデジタルフォトフレーム1といったディスプレイ装置に採用される場合について説明したが、遊技機やゲーム機の外層パネル、包装箱、広告体、飾り品などの種々の商品に採用してもよい。
【0065】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…デジタルフォトフレーム
10…装飾表示体
11…透明素材
12…集光素層
121…集光素パターン
12a…集光素
13、23…画素層
131…第1線状画素パターン
132…第2線状画素パターン
133…第3線状画素パターン
134…第4線状画素パターン
13a…線状画素
135…点状画素パターン
13b…点状画素
14…背景層
R1〜R29…拡大虚像現出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状または板状の透明素材の表面に、複数の凸レンズ状の集光素を各集光素の並びに方向性を持たせて2次元的に配列して集光素パターンが形成されるとともに、前記透明素材の裏面に、着色された複数の線状画素を前記集光素パターンと異なる配列ピッチで平行に配列して線状画素パターンが形成されることにより、前記線状画素の拡大虚像を透明素材の上方または下方に現出させる装飾表示体であって、
前記透明素材の裏面に拡大虚像現出領域が設けられ、該拡大虚像現出領域に前記線状画素パターンが形成されるとともに、該線状画素パターンにおける各線状画素は前記拡大虚像現出領域と同程度以上の拡大虚像を前記透明素材の上方または下方に現出させる線幅となされていることを特徴とする装飾表示体。
【請求項2】
前記線状画素パターンは、各線状画素同士の間隔が該線幅以上で形成されている請求項1に記載の装飾表示体。
【請求項3】
前記透明素材の裏面に複数の拡大虚像現出領域が設けられ、各拡大虚像現出領域に前記線状画素パターンが形成されている請求項1または請求項2に記載の装飾表示体。
【請求項4】
前記線状画素パターンは、前記拡大虚像現出領域ごとに前記線状画素が異なる配列方向で配列している請求項3に記載の装飾表示体。
【請求項5】
前記拡大虚像現出領域に隣接する領域において、着色された複数の画素を各画素の並びに前記集光素パターンと同じ方向性を持たせて2次元的に配列して第2の画素パターンが形成されており、該第2の画素パターンにおける前記画素の拡大虚像が前記線状画素パターンの各線状画素の拡大虚像よりも低い位置で現出する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の装飾表示体。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の装飾表示体がディスプレイ表示部の周縁部に設けられていることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224010(P2012−224010A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94722(P2011−94722)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【特許番号】特許第4794697号(P4794697)
【特許公報発行日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(599144859)美濃商事株式会社 (7)