説明

装飾部材及びその装飾部材を設けた表示板とその製造方法。

【課題】 凹凸面上に設ける装飾部材に形状輪郭が鮮明に視認できる構造を提供する。
【解決手段】 ガラス繊維布13などの生地の凹凸面13c上に、同じ印刷版を用いてガイド層21、平面層22、表面層23の3層の積層からなる平坦な面を持った台座層24を設け、この台座層24の平坦な面上に部分的に、同じ印刷版を用いて下地層25と仕上げ層26との2層からなる指標やマークなどの装飾部材27を設ける。平面層22は粘度100ポアズ以下のUV硬化型樹脂のインクを用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指標やマーク、凹凸模様などの装飾部材、並びにその装飾部材を用いた時計などの表示板や各種計器類の表示板、各種の銘板類などに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯時計などは、古くから、時を表示する機能のみならず身飾品の一つとしての装飾機能を持ったものとして利用されてきている。そして、その携帯時計の構成部品の中にあっては、時の表示を行う表示板に特にその装飾性が強く求められてきて、色々な表示デザインが生まれてきている。これは、携帯時計に限らず各種のOA機器に用いられる銘板類や車載などの各種計器類の表示板においても同じ様な経過を辿ってきている。
【0003】
以下背景技術を説明するに当たり、携帯時計の表示板を例に取って背景技術を説明する。従来から、携帯時計の表示板に立体感を出現させることが高級感を生み出すと共に装飾的価値を非常に高めるものとして強く求められて来ていた。立体感を出現させるために表示板の表面に凹凸模様を設けたり、また更には、装飾的価値を高めるためにガラス繊維やモルフォ繊維などを表示板の表面に設けたりするデザインの表示板も現れてきている。その1つに、下記に示す特許文献1にガラス繊維布を用いた表示板の記載を見ることができる。
【0004】
【特許文献1】特願2004−088066号
【0005】
また、携帯時計の表示板に設ける時字を示す指標やマークなどにおいても同様で、一つの装飾部材としての仕様が求められ、指標やマークなどにも立体感や金属感などを持たせることが行われて来ている。
【0006】
以下、携帯時計用の表示板において、上記特許文献で示されたガラス繊維布を用いた表示板での従来技術を図7、図8を用いて説明する。図7は従来の携帯時計用表示板の平面図と断面図を示しており、図7の(a)は平面図、図7の(b)は図7の(a)におけるA−A断面図を示している。また、図8は図7の(b)におけるB部分の拡大図を示している。
【0007】
図7に示された表示板10は、表示基板1の中央部に設けられた凹部1bに平織り模様に編まれたガラス繊維布3が接着剤5を介して設けられており、そのガラス繊維布3の凹凸のある表面に透明な樹脂から成る台座層6を介してロゴマーク(図7の(a)において、ABCDなるマーク)7が印刷によって設けられている。また、表示基板1の外周部には時字なる指標2が設けられている。また、表示基板1の中心部には指針取付け用の小孔1aが設けられた表示板になっている。この表示板10は金属装飾で飾られた表示板の中にガラス繊維布から発するキラキラとした光沢感と綺麗なガラス繊維布の布目模様を外観に表現したいことからガラス繊維布を用いている。
【0008】
ここで、上記表示板10を構成する各々の構成部品の仕様は次のようになっている。表示基板1はリン青銅、洋白または黄銅板などからプレス加工にて基板ブランクを形成し、メッキなどの表面処理を施して用いられる。また、場合によっては梨地や目付などの微小な凹凸模様などを施こして用いることも行われる。中央部は切削加工などで凹部1bが設けられ、その凹部1bにガラス繊維布3が取付けられるようになっている。また、中心部には指針取付け用の小孔1aがブランク成形時にプレス加工にて形成される。
【0009】
ガラス繊維布3は、図8に示されるように、5μm位の細さのガラス繊維3aを丸で囲ったC部に示すように数十本から数百本束ね、図7の(a)に示すように平織り模様に編んだものを用いている。ガラス繊維3aは、細いものになると約0.4μmのものからあり、径が約4〜6μmのものを用いると布目がはっきり見えるのでこの径のものが良く用いられる。
【0010】
このガラス繊維布3は、バラケないようにするためにほぼガラス繊維3aの屈折率に近い透明な樹脂塗料3bを織目の中や表面に付着させて、四方から引っ張りながら織目を整えさせながら加圧・加熱の下で樹脂硬化をさせたものを用いている。そして、表示基板1の凹部1bに接着剤5を介して貼付ける。
【0011】
ガラス繊維布3の上面は非常に凹凸が大きい凹凸面3cをなしている。このため、平坦面を成す台座層6をガラス繊維布3の上に設け、その上にロゴマーク7を印刷している。台座層6は透明な樹脂を用いて重ね印刷を行い、厚く形成して平坦面を出している。また、ロゴマーク7は黒色インクなどを用いてパッド印刷方法などの印刷方法で形成している。
【0012】
時字なる指標2は電鋳メッキ方法などで形成した金属指標を接着剤を介して表示基板1の外周部所定の位置に貼付けている。また、仕様によっては、足付の金属指標をカシメ方法で取付けたり、インクを用いて印刷方法で指標を形成することも行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の様な仕様の構成部品を用いて表示板10を形成している。また、仕様によっては、表示基板の全面にガラス繊維布を設ける表示板もある。
【0014】
ガラス繊維布はその表面の凹凸が非常に大きい。凹凸の大きい表面に指標などを設ける場合は、その上に台座層を設けて平坦面を形成し、そして、その平坦面上に指標を設ける構成を取っている。しかしながら、このような構成は次のような問題が現れる。
【0015】
(1)台座層が指標やマークなどの色調に染められ、指標やマークなどの輪郭が鮮明に現れない。台座層が導光板的な機能を果たし、印刷で形成した指標やマークからの反射光や透過光が台座層に入射して導光され、台座層全体に指標やマークなどの色調が現れてくる。特に、指標やマークの周辺ではその色調が濃く現れる。台座層が透明であると顕著にこの現象が現れ、着色した台座層でも透過性を持っていればこの傾向が現れる。このため、指標やマークの輪郭が鮮明に現れず、指標やマークなどの外観品質が損ねてしまう。
【0016】
(2)台座層は凹凸を消し去るために重ね印刷を行って厚く形成する。このため、台座層の表面に波打ちのうねりが発生し、印刷で形成した指標やマークの表面にもそのうねりが現れて、見る方角によって色艶が変わり、指標やマークが綺麗に視認されない。また、場合によっては指標やマークなどに切れが生じることもある。
【0017】
本発明は、上記の課題に鑑みて成されたもので、その目的とする所は、輪郭が鮮明に現れて綺麗に見え、且つ、表面にうねりがなく色艶にも変化のない指標やマークなどの装飾部材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
課題を解決するための手段として、本発明の装飾部材の特徴は、基板上に設けられる装飾部材であって、該装飾部材は前記基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層の印刷版と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の装飾部材の特徴は、前記の装飾部材は前記基板上に設けた平坦面を有する台座層の平坦面上に部分的に設けられていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の装飾部材の特徴は、前記台座層は同じ印刷版で形成した3層の樹脂層からなり、該3層の樹脂層は一番下にガイド層、真ん中に透明な平面層、一番上に表面層とからなることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の装飾部材の特徴は、前記台座層の平面層はUV硬化樹脂でもって形成したことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の装飾部材の特徴は、前記台座層は前記基板の凹凸面上に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の表示板の特徴は、表示基板と、該表示基板の表面の一部分に形成した装飾部材とからなり、該装飾部材は前記表示基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の表示板の特徴は、表示基板と、該表示基板の表面の一部分に形成した平坦面を有する台座層と、該台座層の平坦面上に部分的に設けた装飾部材からなり、前記台座層は同じ印刷版で形成した一番下のガイド層、真ん中の平面層、一番上の表面層の3層の樹脂層からなり、前記装飾部材は前記表示基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の表示板の特徴は、前記台座層の平面層はUV硬化樹脂でもって形成したことを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の表示板の特徴は、前記台座層は前記表示基板の凹凸面上に設けたことを特徴とするものである。
【0027】
また、本発明の表示板の特徴は、前記表示基板の凹凸面は凹凸の段差が25μm以上有することを特徴とするものである。
【0028】
また、本発明の表示板の特徴は、前記表示基板は凹凸のパターン模様を設けた表示基板、又はガラス繊維布又はモルフォ繊維布を貼付けた表示基板であることを特徴とするものである。
【0029】
また、本発明の表示板の特徴は、前記表示基板は透過性基板であることを特徴とするものである。
【0030】
また、本発明の表示板の特徴は、前記透過性基板は樹脂、ガラス、セラミックの中の少なくとも1つからなることを特徴とするものである。
【0031】
そしてまた、本発明の表示板の製造方法の特徴は、凹凸面を有する表示基板上の凹凸面上に同じ印刷版でガイド層と透明な平面層と表面層とを順次形成して3層の樹脂層からなる台座層を形成する工程と、該台座層の上面に部分的に同じ印刷版で下地層と仕上げ層とを順次形成して2層からなる装飾部材を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0032】
また、本発明の表示板の製造方法の特徴は、前記平面層はUV硬化樹脂でもって印刷形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0033】
発明の効果として、本発明の装飾部材は、基板と同系色又は白色の下地層と、この下地層の印刷版と同じ印刷版で形成した仕上げ層とから構成する。仕上げ層が装飾部材としての色調をなすものであるが、同じ印刷版で印刷形成することから、下地層の上に同一形状・同一大きさでもって仕上げ層が在る。従って、仕上げ層からは下地層が見えない。また、下地層があることにより仕上げ層を透過した光は下地層に反射され、或いは、下地層に吸収または規制されて下地層からの外へ(下地層の下面側とか下地層の周りへ)の光の浸透(出射)を少なく抑える。このため、仕上げ層の色調、即ち、装飾部材の色調が装飾部材の周りの部材ににじんで見えてくる現象を小さく抑える。そして、装飾部材の輪郭が鮮明になって視認されてくる。また、下地層からの反射によって装飾部材が明るくなって視認されてくる。
【0034】
また、下地層と仕上げ層からなる装飾部材は平坦面を有する台座層の平坦面上に部分的に設けられる。印刷方法で平坦面の上に装飾部材を形成すると、装飾部材の表面は波打やうねりなどのない滑らかで綺麗な表面が得られる。そして、どの方角から見ても装飾部材の綺麗な色彩が視認される。また、台座層は同じ印刷版で形成した3層の樹脂層から構成し、一番下にガイド層、真ん中に透明な平面層、一番上に表面層を設ける。ガイド層は平面層を印刷したときにガイド層の形状に沿って印刷ができるように、インクの流れ出しを防止するために設ける。平面層は印刷上面を平坦にするために設ける。そして、表面層はこの台座層を設ける基板などの色合いと色調合わせのために設ける。これにより、台座層は基板と同一色調を持って上面に平坦な面が形成される。従って、その上に設ける装飾部材の表面は綺麗に仕上がる。
【0035】
ここで、平面層はUV硬化樹脂で形成する。また、そのUV硬化樹脂から生成するインクの粘度は100ポアズ以下のものを使用する。インクの粘度が低いために印刷時や印刷後のインクの流れが良くなって平坦面が出易い。また、UV硬化樹脂を用いてUV硬化させることで、形状が崩れずに平坦面が確保できた状態で硬化させることができる。尚、平面層の下にガイド層があることによって、印刷時にガイド層からはみ出してガイド層の外にインクが流れ出すことがなくなる。
【0036】
この台座層や下地層と仕上げ層からなる装飾部材を凹凸面上に設けると非常にその効果を発揮する。凹凸面上に上記仕様の台座層を設けると台座層は綺麗な平坦面に仕上げることができる。しかも、凹凸の段差が25μm以上ある凹凸面にはその効果を十分発揮する。25μmより小さい凹凸面では1層の樹脂層で平坦面を出すことができ、敢えて2層設ける必要性はない。
【0037】
このような台座層と下地層と仕上げ層からなる装飾部材とを凹凸面のある表示基板上に設けた表示板にあっては、装飾部材の輪郭が鮮明に見えるようになる。また、装飾部材の色彩が周りの表示板の色彩とはっきりと区別できて、装飾部材の装飾性が高められる。また、3層からなる台座層と2層からなる装飾部材からくる厚みによってそこに肉盛り感が現れ、装飾部材に立体感が現れる。
【0038】
また、表示基板が凹凸のパターン模様を設けた表示基板やガラス繊維布やモルフォ繊維布を貼付けた表示基板であると台座層の効果が著しく現れ、綺麗な模様や色彩が現れた中に装飾部材の滑らかに色艶のある色彩が得られる。
【0039】
また、表示基板に透過性基板を用いると表示板に透過性が得られ、表示板の下面にソーラーセルを配設してソーラーセル付携帯時計の表示板として利用することができる。また同様に、表示板の下面にEL(エレクトロルミネッセンス)を配設してEL用表示板として用いることができる。
【0040】
また、その透過性基板の材料として樹脂(プラスチック)、ガラス、セラミックなどを用いると、材料費が安いことから安い製造コストで表示板を製作することができる。
【0041】
また、本発明の表示板の製造方法は、凹凸面を有する表示基板上の凹凸面上に同じ印刷版でガイド層と透明な平面層と表面層との3層の樹脂層からなる台座層を印刷形成する。そして次に、台座層の上面に部分的に同じ印刷版で下地層と仕上げ層からなる装飾部材を印刷形成する製造方法を取る。台座層となるガイド層、平面層、表面層の3層を同じ印刷版で形成すると、3層を同じ形状、同じ大きさで積層して形成できる。そしてその中で、平面層を粘度が100ポアズ以下のUV硬化樹脂インクを用いて印刷形成し、紫外線照射によって硬化処理を施せば、平面層に平坦面が得られる。また、その平坦面の形状を崩すことなく硬化させることができる。これにより、台座層に平坦面が得られる。そして、その上に印刷で形成する装飾部材にうねりなどのない綺麗な印刷表面が得られる。また、装飾部材となる下地層と仕上げ層を同じ印刷版で印刷形成すると、下地層と仕上げ層が同じ形状、同じ大きさで積層して形成できる。これにより、仕上げ層が直接台座層に接しないため、装飾部材としての色調をなす仕上げ層の色調が台座層に広く伝わることがなくなって、仕上げ層の色調が台座層ににじんで見える現象がなくなる。
【0042】
また、台座層の表面層は表示基板もしくは表示基板の下面側に設けた反射層と同系色または透明色で形成するのが好ましい。同系色で形成すると基板の色調や反射層の色調と調和が取れ、台座層に違和感が現れない。また、装飾部材の色調、即ち、装飾部材を構成する仕上げ層の色調が台座層ににじんでいく現象が多少現れても、その色調は殆ど目立たないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1、図2を用いて説明する。図1は本発明の実施形態に係る装飾部品の要部断面図を示している。また、図2は図1における装飾部品の作用を説明する説明図で、要部を拡大して示してある。
【0044】
図1において、27は装飾部材を示しており、数字や文字などの指標や記号、マーク、凹凸模様などが装飾部材の対象品として挙げられる。この装飾部材27は下地層25と、この下地層25の上に設けた仕上げ層26とから構成している。この下地層25と仕上げ層26は、樹脂からなって同じ印刷版を用いて印刷方法で形成する。樹脂としてはウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が用いられる。また、この下地層25と仕上げ層26の印刷方法としてはスクリーン印刷、パッド印刷などの公知の印刷方法で行う。同じ印刷版で形成することから同一形状・同一大きさに仕上がっている。仕上げ層26は装飾部材としての色彩を持っており、装飾部材としての求められる色彩の色調をもって形成される。従って、樹脂の中に顔料や金属粉などを混合して要求される色調に仕上げられる。下地層25は白色色調もしくは後述する凹凸面を持つ生地または基板の色と同系色の色調に仕上げるのが好ましい。下地層25が白色をなしていると仕上げ層の色彩が鮮やかに視認されてくる。また、凹凸面を持つ生地又は基板の色と同系色の色調に仕上げると下地層が全く目立たない。
【0045】
24は台座層である。この台座層24は装飾部材27を形成するのに平坦な面を確保するために設ける。この台座層24は、一番下のガイド層21と、真ん中の平面層22と、一番上の表面層23との3層の積層したもので構成している。何れも同じ印刷版を用いて印刷方法で形成するので同一形状・同一大きさで仕上がっている。
【0046】
一番下のガイド層21は、その上に印刷形成する平面層が平坦面を成して所望の形状に形成するために設ける。このガイド層21は10〜30μmの厚みの範囲内で設けるようにするが、後述する生地または基板の凹凸の段差の大きさによって調整すると良い。段差が大きいと厚目に形成し、段差が小さいと薄目でも良い。また、このガイド層21の色調は後述する凹凸面を持つ生地または基板の色と同系色または透明の色調に仕上げるのが好ましい。このガイド層21はウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂のインクを用いてスクリーン印刷方法などの印刷方法で形成し、加熱による硬化処理を施して仕上げる。
【0047】
真ん中の平面層22は、台座層24を平坦面に仕上げるために形成する。透明なUV硬化樹脂のインクを用い、粘度を100ポアズ以下の低い粘度にしてインクの流れ性を良くしてスクリーン印刷などの印刷方法で形成する。印刷はガイド層21と同じ印刷方法を取り、印刷版もガイド層21の印刷版を用いて形成する。上記粘度のインクを用いて印刷すると、ガイド層21の形状からはみ出して形状の外に流れ出すことなく短時間によりガイド層21の上に平坦面をなして平面層が形成される。形成後は紫外線照射を行って硬化処理を施す。UV硬化処理を施すと平坦面になった表面が変形することなく、平坦面を維持した状態で硬化する。
【0048】
一番上の表面層23は、後述する凹凸面を持つ生地または基板の表面状態と合わせるために設ける。従って、生地または基板と同系色または透明の色調に仕上げるようにする。この表面層23はガイド層21、平面層22と同じ印刷方法を取り、印刷版もガイド層21、平面層22の印刷版を用いて形成する。また、この表面層23は、平面層22で得られた平坦面の平坦さを維持する状態で設けるので、5〜20μmの範囲内で形成するのが良い。ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂のインクを用いて形成する。
【0049】
以上の構成を取った台座層24は印刷の波打やうねりのない全くの平坦な表面に仕上がる。そして、この平坦面上に前述の装飾部材27を部分的に印刷方法で設けると、装飾部材27の表面は波打ちやうねりなどのない滑らかな綺麗な表面が得られる。そして、どの方角から見ても同じ色彩が視認される。
【0050】
次に、本実施形態においては、13は表面凹凸のあるガラス繊維布を示していて、台座層24の生地になっている。ガラス繊維布13は、5μm位の細さのガラス繊維13aを数十本から数百本束ね、従来技術で説明したと同じように、平織り模様に編んだものを用いている。ガラス繊維13aは、細いものになると約0.4μmのものからあり、径が約4〜6μmのものを用いると布目がはっきりと見えてくるのでガラス繊維布としての装飾性が高められる。
【0051】
このガラス繊維布13は、バラケないようにするためにほぼガラス繊維13aの屈折率に近い透明な樹脂塗料13bを織目の中や表面に付着させて、四方から引っ張りながら織目を整えさせながら加圧・加熱の下で樹脂硬化をさせたものを用いている。このガラス繊維布13の形成方法は、最初に、ガラス繊維布を樹脂塗料の液に浸漬する。この樹脂塗料の液は樹脂をシンナーなどの溶剤と混ぜ合わせて生成した塗料の液で、配合割合(重量%)は概ね樹脂1:溶剤10の割合にする。この配合割合は樹脂分が非常に少なくなっていて、ガラス繊維布の布目(織目や束ねたガラス繊維の隙間)の中に十分に樹脂が浸透して、しかも、ガラス繊維に付着する樹脂量を少なくなるようにしている。これは、ガラス繊維の表面に付着する樹脂量が多いとキラキラ感が損なわれることによる。約1〜3分程度浸漬した後、樹脂で被覆したガラス繊維布を取り出し、60°C以下の温度で低温乾燥する。これは、樹脂を低温乾燥で仮硬化させ、樹脂のベトベト状態を無くして取扱を容易にするために行うもので、自然乾燥でも良い。次に、樹脂を仮硬化させたガラス繊維布を平坦な2枚のシリコンゴム板の間に挟み、90°C以上の温度で加熱しながら加圧する。このとき、ガラス繊維布を四隅から少し引っ張って布目が綺麗に整うように緊張させた状態にして行う。樹脂はこのときの加熱によって再溶解し、十分に布目の中に入り込み、そして、硬化する。このような工程を取ることによって、樹脂塗料13bが布目の隅々まで入り込んでガラス繊維を被覆し、布目が綺麗に整形された平坦なガラス繊維布13が得られる。このようにして形成したガラス繊維布は一見平坦に見えるが、編みの繋ぎ目の所は可成り凹凸になっており、表面は50〜100μm近い段差の凹凸面13cを成している。
【0052】
11は基板を示している。ガラス繊維布13を貼付ける基板で、本実施形態においては金属板を用いている。この基板11は金属に限るものではなく、他に、樹脂、セラミック、ガラス、木、石などを用いることも可能である。表示板の仕様に応じて適宜に選択する。そして、基板11の表面に接着剤15を介してガラス繊維布13を貼付けている。
【0053】
本実施形態の装飾部材の構成は、金属なる基板11上にガラス繊維布13を設け。ガラス繊維布13の凹凸面13c上にガイド層21と平面層22と表面層23の3層からなる台座層24を設け、台座層24の上に下地層25と仕上げ層26の2層からなる装飾部材27を設けた構成を取っている。即ち、生地にガラス繊維布13を用いてキラキラ感を出した仕様の中に装飾部材27を設けて装飾性を高めている。ここでは、生地にガラス繊維布13を用いていることから、ガイド層21、表面層23、下地層25はガラス繊維布13から発するキラキラ感を損なわないために透明な樹脂でもって形成している。
【0054】
次に、上記構成の装飾部材27の作用・効果を図2を用いて説明する。図2において、下地層25と仕上げ層26とが積層して構成した装飾部材27が設けられており、その下に表面層23、平面層22などで構成された台座層24が設けられている。L1、L2、L3は装飾部材27に入射した光の進路を示している。
【0055】
ここで、装飾部材27の仕上げ層26が全く透過性を有していない場合は、仕上げ層26の上面26aに入射する光L1は仕上げ層26の上面26aで反射される。そして、仕上げ層26の反射光でもってその形状と色調が視認される。尚、図示はしていないが、仕上げ層26に吸収される光も発生する。次に、仕上げ層26に透過性と反射性を有していて、下地層に透過性を有しない場合は、仕上げ層26の上面26aに入射する光L2は仕上げ層26の上面26aで反射される光と下地層25の上面25aで反射される光が発生する。そして、それらの反射光で仕上げ層26の色調が視認される。尚、仕上げ層26、下地層25に吸収される光も発生するが、それは図示していない。上記のケースの場合は下地層25を白色色調に仕立てるのが好ましい。白色色調に仕立てると仕上げ層の色調に明るさが現れ、鮮やかさが現れてくる。以上の2つのケースの場合は、下地層25から直接台座層24に進入する光がないので、台座層24が仕上げ層26の色調や下地層25の色調で染められることはない。尚、図示はしていないが、仕上げ層26の側面26bや下地層25の側面25bからの反射光の一部が台座層24に進入するものが現れるが、仕上げ層26の側面26bや下地層25の側面25bは面積が小さいことから台座層24に進入する光量は非常に少ない。このため、台座層24が仕上げ層26の色調や下地層25の色調で染められる度合いは小さく、殆ど視認されることはない。
【0056】
次に、仕上げ層26、下地増25に透過性と反射性を有する場合は、仕上げ層26の上面26aに入射した光L3は、仕上げ層26の上面26aで反射される光と、下地層25の上面25aで反射される光と、下地層25を透過する光が発生する。下地層25を透過する光で下地層25の側面25bに入射する光は側面25bで反射されて、その反射光は内側の方向に進行方向を変え、下地層25を透過して台座層24に向かって進む。更に、仕上げ層26を透過した光が下地層25を透過して台座層24に入射する時には波長変換が行われ、下地層25の色調を持った光が台座層24に入射する。例えば、下地層25を白色で形成すると白色の波長を持った光が台座層24に入射するようになる。以上のことによって、仕上げ層26、下地層25に透過性と反射性を有する場合は下地層25の側面25bでの影響を受けて、台座層24に入射する光はその領域が制限され、台座層に広く広がらない。このため、装飾部材27の周辺の台座層24は仕上げ層26の色調で強く染められることがない。更にまた、台座層24に入射する光は波長変換されて下地層25の色の波長を持った光となるため、仕上げ層26の色調は現れない。以上の作用によって、装飾部材27の周辺の台座層24は装飾部材27の色調に影響を受けることが少なくなり、台座層24の色調と装飾部材27との色調のコントラストが高まって装飾部材27の輪郭がはっきりと鮮明に視認されてくる。
【0057】
本実施形態においては、ガラス繊維布13の凹凸面13c上に、ガラス繊維布13の発するキラキラ感を損なわないために透明なガイド層21、透明な平面層22、透明な表面層23を積層して台座層24を構成し、その台座層24の平坦な面の一部分に白色の下地層25と装飾部材としての色調を持った仕上げ層26を積層して装飾部材27を構成している。装飾部材27の周りの台座層24は、上記で説明した作用により、装飾部材27の色調に強く染められることなく、台座層24の上面からはガラス繊維布13のキラキラ感を伴った色調が視認される。そして一方、装飾部材27からはその輪郭を鮮明にして明るい装飾部材27の色調が視認される。
【0058】
また、凹凸のあるガラス繊維布13の凹凸面上に粘度の低いUV硬化型樹脂のインクで平面層22を設けた台座層24を形成したことで、台座層24の上面は平坦な面に形成され、そして、その平坦な面上に装飾部材27を形成したので、装飾部材27の表面は波打ちやうねりなどのない滑らかな綺麗な表面が得られる。そして、どの方角から見ても同じ色彩が視認される。
【0059】
次に、上記の構成を取る装飾部材の製造方法を説明する。最初に、基板11に接着剤15を介して貼付けたガラス繊維布13の凹凸面13c上にガイド層21をスクリーン印刷機を用いスクリーン印刷方法で印刷形成する。用いる印刷インクは、本実施形態においては、透明なウレタン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの樹脂インクを用いて形成する。尚、必要に応じて2回、3回の重ね印刷を行って所要の厚みを確保する。印刷後は80°〜140°の加熱乾燥を施して硬化させる。次に、ガイド層21を印刷した印刷版を用いて、ガイド層21の上に平面層22をガイド層21と同じ印刷方法で印刷形成する。用いる印刷インクは、透明なUV硬化型樹脂をアセトンなどの溶剤に溶解して粘度100ポアズ以下に生成したインクを用いる。インクの粘度が低いので流れ性が良く、1回の印刷で平坦な平面層22が形成される。印刷後は紫外線照射を行って平面層22を硬化させる。UV硬化型樹脂としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂などがあるのでそれらの樹脂を使用する。次に、平面層22の上に、平面層22を印刷した印刷版を用いて平面層22と同じ印刷方法で表面層23を印刷形成する。本実施形態においては、透明なウレタン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの樹脂インクを用いて所要の厚みに形成する。印刷後は80°〜140°の加熱乾燥を施して硬化させる。以上の製造工程を経ることによって、ガイド層21、平面層22、表面層23の3層が積層した台座層24が得られる。そして、台座層24の上面は平坦な面が形成される。
【0060】
次に、台座層24の平坦な面の上に部分的に下地層25をスクリーン印刷機を用いてスクリーン印刷方法で所要の厚みに印刷形成する。用いる印刷インクは、本実施形態においては、白色またはガラス繊維布と同系色の色調を持つウレタン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの樹脂インクを用いて形成する。印刷後は80〜140°の加熱乾燥を施して硬化させる。次に、下地層25を印刷した印刷版を用いて、下地層25の上に仕上げ層26を下地層25と同じ印刷方法で印刷形成する。用いる印刷インクは、所要の色に着色を施したウレタン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの着色樹脂インクを用いて形成する。印刷後は80°〜140°の加熱乾燥を施して硬化させる。以上の製造工程を経ることによって下地層25と仕上げ層26とが積層した装飾部材27が得られる。
【0061】
本実施形態においては、凹凸表面を成すガラス繊維布13の上に台座層24を設け、その台座層24の上に装飾部材27を設けたが、凹凸の表面があるものとしてガラス繊維布に限るものではなく、モルフォ繊維布やその他の繊維布を貼付けた基板や凹凸模様を設けた樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、金属基板などを用いても同様な効果を奏する。
【0062】
また、本発明の装飾部材の構成は凹凸の段差が25μm以上有すると著しい効果を奏する。段差が25μmより小さいと1層の台座層で粘度などを調整することによって平坦面を得ることが可能となるが、25μm以上大きいと波打やうねりの表面となって平坦な表面が得られない。本発明の3層からなる構成の台座層を用いると可成り段差の大きい凹凸でも平坦面を形成することができる。
【0063】
また、本実施形態においては、装飾部材27を構成する下地層25は白色またはガラス繊維布と同系色、台座層24を構成するガイド層21と表面層23は透明な樹脂で形成したが、これらの層は基板の色調や繊維布の色調などに応じて適宜に選択しても良い。
【実施例1】
【0064】
以下、実施例を挙げる中で本発明の装飾部材並びに表示板の更に詳細な説明を行うことにする。最初に、実施例1に係る装飾部材並びに表示板について図3、図4を用いて説明する。ここで、図3は本発明の実施例1に係る時計用表示板の平面図と断面図を示していて、図3の(a)は平面図、図3の(b)は図3の(a)のA−A断面図を示している。また、図4は図3の(b)におけるB部を拡大した拡大図を示している。尚、図3の(a)において、格子状の模様は省略して一部分のみに描いてある。
【0065】
図3において、この時計用の表示板30は、全面に格子模様の凹凸面31cを持つ透明な表示基板31と、表示基板31の下面に配設した半透過反射膜32と、表示基板31の凹凸面31c上の所定の位置に設けた台座層44、及びこの台座層44の平坦面上に設けたロゴマーク47(図3の(a)においてはABCDの文字を示している)、並びに、表示基板31の外周域の凹凸面31cの所定の位置に設けた12個の台座層54、及び12個の台座層54の平坦面上に設けた時字なる指標57とから構成している。そして、図示はしていないが、この表示板30の下面側にソーラーセルが配設され、ソーラーセル用の表示板として用いられるようになっている。
【0066】
ここで、表示基板31は、透明なポリカーボネイト樹脂からなっていて、その中心部には指針取付け用の小孔と上面側には全面に凹凸面31cを有している。上面の凹凸面31cは格子模様状に設けられていて、その凹凸の段差は約50〜60μm位の段差を持っている。この表示基板31は射出成形方法で形成し、上面の凹凸面31cは金型から転写して形成する。
【0067】
半透過反射膜32は、透過性と反射性の両方の機能を持たせた膜で、本実施例1においては、透明なウレタン樹脂に白色顔料を5重量%配合して白色インクを生成し、スクリーン印刷方法で約10μmの厚みに形成し、約50%近くの透過率を持っている半透過反射膜である。この半透過反射膜32とその上の透明な表示基板31とで約40%強の透過率を確保し、ソーラーセルを駆動している。また、この半透過反射膜32を白色に仕立てたことで表示基板31が可成り強い白色色調を持って視認されてくる。
【0068】
台座層44は、図4に示すように、一番下のガイド層41、真ん中の平面層42、一番上の表面層43との3層を積層したものから構成している。何れもスクリーン印刷方法で同じ印刷版を用いて印刷形成し、印刷−硬化処理を順次繰り返して積層している。従って、台座層44を構成するガイド層41、平面層42、表面層43は同一形状・同一大きさになっている。
【0069】
本実施例1でのガイド層41は熱硬化性の透明なウレタン樹脂でもって形成している。透明なウレタン樹脂のインクを用いて2回の重ね印刷を行い約20μm位の厚みに形成し、その後に80°〜140°C、60〜90分の加熱処理を行って硬化処理を行っている。
【0070】
また、本実施例1での平面層42は透明なUV硬化型のアクリル樹脂でもって形成している。アクリル樹脂をアセトンなどの溶剤に溶かして粘度を100ポアズ以下にしたインクを用いて印刷形成する。100ポアズ以下のインクで印刷するとガイド層41からはみ出すことなく短時間で平坦面をなした平面層が得られる。印刷後は紫外線照射を施して硬化処理を行っている。
【0071】
また、本実施例1での表面層43は半透過反射膜32で用いた印刷インクと同じインクを用いて、即ち、透明なウレタン樹脂に白色顔料を5重量%配合して白色インクを用いて約10μmの厚みに形成している。印刷後は80°〜140°C、60〜90分の加熱処理を施して硬化処理を行っている。以上の仕様で構成した台座層44は平坦面42で得られた平坦な面がそのまま維持されて台座層44の上面は平坦な面が形成される。そして、台座層44は、一番上にある表面層43を半透過反射膜32と同じ白色インクで形成していることから、白色を呈する表示板の中で殆ど目立たない。
【0072】
次に、ロゴマーク47は、図4に示すように、下地層45と下地層45の上に設けた仕上げ層46とから構成している。何れもスクリーン印刷方法で同じ印刷版を用いて印刷形成し、印刷−硬化処理を順次繰り返して積層している。従って、下地層45と仕上げ層46は同一形状・同一大きさになっている。
【0073】
ここで、本実施例1での下地層45は、半透過反射膜32で用いた印刷インクと同じ白色インクを用いて2回の重ね印刷を行い約20μmの厚みに形成している。厚みが厚いために透過率は約20%前後しかなく、多くの光は反射する。印刷後は80°〜140°C、60〜90分の加熱処理を行って硬化処理を行っている。また、本実施例1での仕上げ層46は熱硬化型のウレタン樹脂に黒色顔料を15重量%配合したインクを用い2回の重ね印刷を行って約20μmの厚みに形成している。そして、この仕上げ層46の透過率は殆ど0に近い。印刷後は80°〜140°C、60〜90分の加熱処理を行って硬化処理を行っている。
【0074】
次に、指標57とその下に設けてある台座層54はロゴマーク47及び台座層44と同じ構成を取っている。この台座層54と指標57は、台座層44やロゴマーク47を形成する印刷工程で同時に印刷して形成する方法を取っている。従って、用いるインクや厚みは台座層44やロゴマーク47の構成のものと同じになっている。
【0075】
以上の構成を取った表示板30にあっては、ロゴマーク47や指標57を平坦な面に仕上げた台座層の上に、そして、下地層を設けた構成で形成していることから、ロゴマーク47や指標57の色調が台座層に移ることがなくなり、輪郭のはっきりしたロゴマーク、指標が視認される。ロゴマーク47や指標57は約40μmの厚みを持っており、印刷で形成していることからその表面は滑らかで丸味を持っている。このため立体感を伴って視認されてくる。また、表示板全体を白色基調で仕上げていることから、黒色で仕上げたロゴマーク47や指標57は鮮明に視認されてくる。更にまた、表示基板31の格子状の凹凸パターン模様が視認されて装飾性が高められる。尚、ロゴマーク47や指標57の色調が台座層に移らない理由については前述の実施形態の説明の中で詳しく説明しているのでここでの説明は省略する。また、ロゴマーク47や指標57は平坦面をなす台座層の上に形成していることからロゴマーク47や指標57の印刷表面に波打ちやうねりなどのない滑らかな綺麗な表面が得られる。そして、見る方角によって色艶が変わることのない一様に光沢をもったロゴマークや指標が視認される。
【0076】
また、本実施例1においては、表示基板31の下に半透過反射膜32を設け、その半透過反射膜32の色調に合わせた色調でもって台座層44の表面層43、ロゴマーク47の下地層45を形成した。表示板が同一系統色で纏めてあることから違和感を感じさせない。尚、台座層の形状は特に限定するものではなく、マークや指標が十分に形成できる大きさで、しかも、印刷形成し易い形状でマークや指標の形状を考慮して適宜に設定するのが好ましい。
【0077】
尚、本実施例1においては、表示板30に半透過反射膜32を設けた構成を取って表示板の着色化とソーラーセルへの透過率確保を行ったものであるが、半透過反射膜を設けずに着色を施した表示基板を用いることによってもソーラーセルへの適用ができる。ポリカーボネイト樹脂に白色顔料を配合して約40%前後の透過率を確保すれば本実施例1のものとほぼ同じ作用・効果を得ることができる。尚、本実施例1では表示基板31をポリカーボネイト樹脂で形成したが、ポリカーボネイト樹脂に限るものではなく、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂などの樹脂も使用することができる。これらの樹脂は耐熱性、耐湿性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れているので表示板の材料として好ましく利用できる。また、表示基板に透過性を持ったセラミック材で形成しても良く、また、透明なガラスを用いても良い。ガラスを用いた場合の凹凸形成はエッチング液を用いてのエッチング方法で形成する。
【0078】
また、本実施例1においては、凹凸のパターン模様は格子模様のものを用いたが、他のパターン模様でも良く、例えば、サークル模様、ストライプ模様、ピアジェカット模様、幾何学模様、編目模様などであっても良い。これらの模様の凹凸は、凹凸の段差が25μm以上有すると3層から構成する台座層が効果的に作用する。25μm以上の凹凸があると粘度の調整した樹脂インクを用いても1層の樹脂層で平坦な面を出すのは難しい。本発明の3層からなる台座層の構成を取ると可成りの段差のある凹凸面でも平坦面にすることができる。
【実施例2】
【0079】
次に、本発明の実施例2に係る装飾部材と表示板について図5、図6を用いて説明する。図5は本発明の実施例2に係る時計用表示板の平面図と断面図を示していて、図5の(a)は平面図、図5の(b)は図5の(a)のA−A断面図を示している。また、図6は図5の(b)におけるB部を拡大した拡大図を示している。
【0080】
実施例2の表示板60は、時計用の表示板で、モルフォ繊維布を用いた表示板になっている。そして、モルフォ繊維布の上に本発明の装飾部材である時字なる指標77を設けた構造を取っている。図5に示すように、表示板60は金属からなる表示基板61の上に接着剤62を介してモルフォ繊維布63を貼付け、そのモルフォ繊維布63の上に、時字なる指標77が設けられる位置に平坦な面を持った台座層74を設けて、その台座層74の上に時字なる指標77を設けた構成を取っている。
【0081】
ここでの表示基板61はリン青銅板や黄銅板、または洋白板などの金属板が用いられ、プレス加工によってブランクを形成し、メッキなどの表面処理を施したものである。
【0082】
次に、モルフォ繊維布63は、モルフォ繊維63aを10本位束ねて編み込んだ布地のモルフォ繊維布で、150〜200μm位の厚みを持っている。また、モルフォ繊維63aは屈折率の異なるポリエステルとナイロンを数10nm単位の厚みで61層積み重ねた多層積層構造を取ったもので、1本の繊維63aの太さが厚み15〜20μm、幅60〜70μmの楕円形を成している繊維である。モルフォ繊維は光の反射、干渉などによってモルフォ蝶が発するような色彩を発し、非常に綺麗で美しい独特の外観色彩が得られる。このモルフォ繊維布は平坦に整形して使用する。
【0083】
成形方法は次のようにして行う。平滑な2枚のガラス板の間にモルフォ繊維布を良く伸張させた状態で挟み込み、加圧状態で略140°C、1時間の加熱処理を施す。この様にすると綺麗な織り目のモルフォ繊維布が出来上がる。しかしながら、非常に薄いが故に腰が弱く、取扱い難い問題があるので腰を強くするために補強処理を施す。補強処理は熱硬化型のアクリル樹脂を吹き付け塗装方法でモルフォ繊維布の片面に吹き付け、加熱処理を行って樹脂を硬化させることによって硬化したアクリル樹脂が補強材となって作用する。このように、図6において、63bがこの補強材である。補強材63bを付けることによって腰の強いモルフォ繊維布を得ることができる。
【0084】
次に、炭酸レーザを使って所要の形状にレーザカットし、表示板形状のモルフォ繊維布を得る。更に、モルフォ繊維布63の他方の片面にはモルフォ繊維のバラケ(繊維の集まりがほぐれてバラバラになること)を防止するために保護膜63dを設ける。保護膜63dはウレタン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの樹脂を用いて5μm以下の非常に薄い膜で形成する。この様な仕様にしたモルフォ繊維布63を補強剤63bが付いた面を下側にして接着剤62を介して表示基板61に貼り付ける。この様に形成したモルフォ繊維布63にも、その上面側には50〜100μm範囲での凹凸の段差が発生する。
【0085】
台座層74は、一番下にガイド層71、真ん中に平面層72、一番上に表面層73の3層でもって構成する。ガイド層71、平面層72、表面層73は、モルフォ繊維布の発する色彩が損なうことがないようにするために、前述の実施形態でのガラス繊維布を用いた場合と同様に、何れも透明な樹脂で形成する。ガイド層71、平面層72、表面層73の仕様については前述の実施形態でのガイド層、平面層、表面層の仕様と同じ仕様でもって形成する。
【0086】
また、指標77は下地層75と仕上げ層76とで構成する。下地層75は白色の樹脂で形成し、仕上げ層76は黒に着色した樹脂でもって形成する。下地層75、仕上げ層76の仕様についても前述の実施形態での下地層、仕上げ層の仕様と同じ仕様でもって形成する。
【0087】
上記の構成を取った表示板60にあっては、モルフォ繊維布63からのモルフォ蝶が発するような美しい色彩の中に輪郭を鮮明にして滑らかな表面で光沢を持った黒の指標77が視認され、装飾性の高い表示板として視認される。
【0088】
本実施例2においては、台座層74は棒状の指標77の形状に沿った形で略長円形状に形成した。この台座層の形状は指標の形状によって適宜な形状を選択するのが好ましい。
【0089】
以上、実施例1、実施例2は何れも時計用の表示板について説明したものであるが、本発明の装飾部材、並びに表示板は時計用の表示板に限らず各種の計器類の表示板や各種の銘板類などの表示板に適用できるものである。また、身飾品や置物などの装飾品にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る装飾部品の要部断面図である。
【図2】図1における装飾部品の作用を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施例1に係る時計用表示板の平面図と断面図を示していて、図3の(a)は平面図、図3の(b)は図3の(a)のA−A断面図である。
【図4】図3の(b)におけるB部を拡大した拡大図である。
【図5】本発明の実施例2に係る時計用表示板の平面図と断面図を示していて、図5の(a)は平面図、図5の(b)は図5の(a)のA−A断面図である。
【図6】図5の(b)におけるB部を拡大した拡大図である。
【図7】従来の携帯時計用表示板の平面図と断面図を示しており、図7の(a)は平面図、図7の(b)は図7の(a)におけるA−A断面図である。
【図8】図7の(b)におけるB部分の拡大図である。
【符号の説明】
【0091】
11 基板
13 ガラス繊維布
13a ガラス繊維
13b 樹脂塗料
13c、31c 凹凸面
15、62 接着剤
21、41、71 ガイド層
22、42、72 平面層
23、43、73 表面層
24、44、54、74 台座層
25、45、75 下地層
25a、26a 上面
25b、26b 側面
26、46、76 仕上げ層
27 装飾部材
30、60 表示板
31、61 表示基板
32 半透過反射板
47 ロゴマーク
57、77 指標
63 モルフォ繊維布
63a モルフォ繊維
63b 補強材
63d 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられる装飾部材であって、該装飾部材は前記基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とする装飾部材。
【請求項2】
前記装飾部材は前記基板上に設けた平坦面を有する台座層の平坦面上に部分的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装飾部材。
【請求項3】
前記台座層は同じ印刷版で形成した3層の樹脂層からなり、該3層の樹脂層は一番下にガイド層、真ん中に透明な平面層、一番上に表面層とからなっていることを特徴とする請求項2に記載の装飾部材。
【請求項4】
前記台座層の平面層はUV硬化樹脂でもって形成したことを特徴とする請求項3に記載の装飾部材。
【請求項5】
前記台座層は前記基板の凹凸面上に設けられていることを特徴とする請求項2、3、4のいずれか1項に記載の装飾部材。
【請求項6】
表示基板と、該表示基板の表面の一部分に形成した装飾部材とからなり、該装飾部材は前記表示基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とする表示板。
【請求項7】
表示基板と、該表示基板の表面の一部分に形成した平坦面を有する台座層と、該台座層の平坦面上に部分的に設けた装飾部材からなり、前記台座層は同じ印刷版で形成した一番下のガイド層、真ん中の平面層、一番上の表面層の3層の樹脂層からなり、前記装飾部材は前記表示基板と同系色又は白色の下地層と、該下地層の上に下地層と同じ印刷版で形成した仕上げ層とからなることを特徴とする表示板。
【請求項8】
前記台座層の平面層はUV硬化樹脂でもって形成したことを特徴とする請求項7に記載の表示板。
【請求項9】
前記台座層は前記表示基板の凹凸面上に設けたことを特徴とする請求項7又は8に記載の表示板。
【請求項10】
前記凹凸面は凹凸の段差が25μm以上有することを特徴とする請求項9に記載の表示板。
【請求項11】
前記表示基板は、凹凸のパターン模様を設けた表示基板、又はガラス繊維布又はモルフォ繊維布を貼付けた表示基板であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の表示板。
【請求項12】
前記表示基板は透過性基板であることを特徴とする請求項6乃至11のいずれか1項に記載の表示板。
【請求項13】
前記透過性基板は樹脂(プラスチック)、ガラス、セラミックの中の少なくとも1つからなることを特徴とする請求項12に記載の表示板。
【請求項14】
凹凸面を有する表示基板上の凹凸面上に同じ印刷版でガイド層と透明な平面層と表面層とを順次形成して3層の樹脂層からなる台座層を形成する工程と、該台座層の上面に部分的に同じ印刷版で下地層と仕上げ層とを順次形成して2層からなる装飾部材を形成する工程とを有することを特徴とする表示板の製造方法。
【請求項15】
前記平面層はUV硬化樹脂でもって印刷形成したことを特徴とする請求項14に記載の表示板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−64696(P2007−64696A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−248487(P2005−248487)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000124362)シチズンセイミツ株式会社 (120)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)