説明

裏込め用スペーサおよび裏込め用スペーサを用いた土留め方法

【課題】再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁と腹起し材との間の隙間を埋めることができると共に、切梁に軸力を付与することができる、裏込め用スペーサおよび裏込め用スペーサを用いた土留め方法を提供する。
【解決手段】本発明の裏込め用スペーサ1は、逆支弁付きメスカプラ11を介し水等の液体が注入され、注入された流体が漏れないように密封する流体密封用内袋部12と、流体密封用内袋部12の外側を被覆し、水等の流体が注入された流体密封用内袋部12の破裂を防止する破裂防止用外袋部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、鋼矢板や親杭等からなる土留め壁(山留め壁ともいう。)と、腹起し材との間の隙間に挿入される裏込め用スペーサ、および裏込め用スペーサを用いた土留め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地下構造物を構築する場合の土留め工法(山留め工法)として、例えば、切梁方式、アンカー方式、逆打ち方式等がある。切梁方式は、例えば土留杭の内側にH形鋼等からなる腹起し材を横設し、この腹起しに直交して切梁の端部を突き当てることにより、土留め壁にかかる土圧を支えるようにしている。このような腹起し材は土留杭に固定されていないため、切梁の長さに応じて切梁間等に油圧式等のプレロードジャッキ(切梁ジャッキともいう。)や、ジャッキカバーを挿入して、切梁に軸力を付与するようにしている。
【0003】
ここで、腹起し材と土留め壁土留杭との間の隙間に挿入する従来の裏込め用スペーサとして、従来は、例えば、一般に裏込めブロックないしはユニブロックと称される鋼製等の裏込め材を適宜挿入するか(例えば、特許文献1参照。)、または、透水性袋体の内部にドライ状態のプレミックスコンクリートを密封充填し、その透水性袋体に対する撒水によりプレミックスコンクリートを硬化させてその隙間を埋めるものがある(例えば、特許文献2参照。)その他、蛇腹上の袋を利用したものや(例えば、特許文献3参照。)、折り畳まれた袋体を利用したものがある(例えば、特許文献4,5参照。)。
【0004】
なお、裏込み材の注入圧力を検出して裏込注入管理を行う裏込注入圧計測装置も公知である(例えば、特許文献6参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−183622号公報
【特許文献2】特開2003−247235号公報
【特許文献3】特開2003−56286号公報
【特許文献4】特開2004−11134号公報
【特許文献5】特開平11−193692号公報
【特許文献6】特開2003−56286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年は、建築、土木分野でも、環境保護の観点から、裏込め材等の再利用可能性だけでなく、環境に悪影響を与えないことが要求されている。
【0007】
しかし、前記特許文献1に記載の裏込め用スペーサは、再利用が可能であり、その点で環境性は高いもの、所定の厚さを有するため、土留め壁と腹起し材との間の隙間を確実に埋めることは困難である、という問題がある。
【0008】
また、前記特許文献2〜6に記載の裏込め用スペーサは、袋体内部に、裏込材としてプレミックスコンクリートや、グラウト材等のモルタル等の時間が経過すると硬化ないしは固化する材料を用いているため、再利用が不可能であるとともに、強度発現、すなわち硬化ないしは固化まで時間がかかる、という問題がある。
【0009】
また、土留め工法の一つである切梁方式の場合、実績が多く信頼性が高いという利点があるもの、腹起し材間の切梁に軸力を付与する油圧式などのプレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の設置が必須であり、コストがかかると共に、プレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の設置や油圧付与に手間がかかる、という問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁と腹起し材との間の隙間を埋めることができると共に、切梁に軸力を付与することができる、裏込め用スペーサおよび裏込め用スペーサを用いた土留め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の裏込め用スペーサは、土留め壁と、腹起し材との間の隙間に挿入される裏込め用スペーサであって、注入孔を介し流体が注入され、注入された流体が漏れないように密封する流体密封用内袋部と、前記流体密封用内袋の外側を被覆し、注入された前記流体の内圧による前記流体密封用内袋の破裂を防止する破裂防止用外袋部と、を有することを特徴とする裏込め用スペーサである。ここで、本発明の裏込めスペーサに注入する流体としては、水等の液体の他、空気や不燃ガス等の気体等の時間が経過しても硬化ないし固化せずに、容易に排出できるものが相当する。従って、本発明の流体には、モルタルやグラウト材のように当初液状であっても、時間経過により硬化ないし固化する材料は、該当しない。なお、本発明の裏込めスペーサは、複数回の再利用を前提とするので、本発明の流体は、排出しても、周辺環境に悪影響を与えない水や空気等が最適である。これにより、再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁と腹起し材との間の隙間を埋めることができると共に、切梁に軸力を付与することができる。
ここで、前記裏込め用スペーサにおいて、前記流体密封用内袋部に注入する流体は、水であり、前記流体密封用内袋部は、ビニールまたはゴム等の水密性の高い素材からなり、前記破裂防止用外袋部は、炭素繊維シートを樹脂コーティングした素材からなる、ようにしても良い。このようにすれば、身近に入手可能な水やビニール、炭素繊維シート等から裏込め用スペーサを動作および構成することができる。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、前記流体密封用内袋部と、前記破裂防止用外袋部とは、それぞれ、別の素材から構成されている、ようにしても勿論よい。このようにすれば、前記流体密封用内袋部と前記破裂防止用外袋部の素材として、各種ものを使用することが可能となる。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、前記注入孔は、中央のワッシャ部を介して両側にそれぞれネジ溝が形成された袋外側連結部および袋内側連結部が形成された中空のユニオンアダプタの中心孔であり、前記流体密封用内袋部には、前記ユニオンアダプタの前記袋内側連結部の外径に相当する内袋連結孔が形成され、前記ユニオンアダプタの前記ワッシャ部裏面と、前記ユニオンアダプタの前記袋内側連結部に連結された袋内側ナットとにより前記流体密封用内袋部に形成された前記内袋連結孔周縁が挟まれ、かつ、溶着される一方、前記破裂防止用外袋部には、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部の外径に相当する外袋連結孔が形成され、前記ユニオンアダプタの前記ワッシャ部表面と、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部に連結された袋外側ナットとにより前記破裂防止用外袋部に形成された前記外袋連結孔周縁が挟まれ、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部の先端には、前記逆支弁付きカプラが連結される、ようにしても良い。このようにすると、内袋連結孔周縁の密封性を確実にすることができる。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、前記破裂防止用外袋部の重複部分に、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部の外径に相当する外袋連結孔が形成され、前記ユニオンアダプタの前記ワッシャ部表面と、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部に連結された袋外側ナットとにより前記破裂防止用外袋部の重複部分に形成された前記外袋連結孔周縁が挟まれる、ようにしても良い。このようにすると、ワッシャ部表面と袋外側ナットとにより破裂防止用外袋部の重複部分に形成された外袋連結孔周縁が挟まれるので、当該裏込め用スペーサが膨張した場合における破裂防止用外袋部の破断や剥がれ等を防止することができる。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、前記ユニオンアダプタの前記袋外側連結部に連結された袋外側ナットと、前記破裂防止用外袋部に形成された前記外袋連結孔周縁との間に、さらに、前記裏込め用スペーサの幅より長く、両側が前記裏込めようスペーサより突出する長尺状の吊具板が挟まれ、当該吊具板の長手方向両側の突出部分に前記腹起し材に引っ掛けるためのフックが取り付けられるフック取付け孔が形成されており、前記土吊具板の短手方向の幅は、少なくとも、前記ユニオンアダプタの前記ワッシャ部、前記袋内側ナット、または前記袋外側ナットの幅以上である、ようにしても良い。このようにすると、吊具板のフック取付け孔に腹起し材に引っ掛けるフックを取り付けることができる一方、吊具板の短手方向の幅が確保されているので、裏込め用スペーサを土留め壁と腹起し材との間の隙間に挿入した後でも、ホース等を逆支弁付きカプラに接続する際の作業性が向上する。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、当該裏込めスペーサは、前記逆支弁付きカプラが設けられるほぼ長方形の上側面と、その上側面に対向するほぼ同一形状の底面と、前記上側面と前記底面との間であって前記土留め壁と前記腹起し材とにそれぞれ対向するように設置される前側面および後側面と、前記前側面と前記後側面との間の左右側面との6面を有するほぼ直方体形状であり、前記上側面の長手方向の幅は、前記吊具板の長手方向の幅より短く、前記フック取付け孔が上側面の長手方向の両側に設けられる一方、前記上側面の短手方向の幅は、前記吊具板の短手方向の幅より長い、ようにしても良い。このようにすると、吊具板の長手方向両側の2箇所のフックにより確実に腹起し材に引っ掛けることが可能であると共に、当該裏込めスペーサの前側面および後側面を土留め壁と腹起し材との間の隙間に挿入すると、少なくとも吊具板の短手方向の幅から当該裏込めスペーサの上側面の短手方向の幅までは、常に、当該裏込めスペーサの前側面および後側面全体それぞれが土留め壁と腹起し材に全面接触するので、土留め壁と腹起し材、引いては腹起し材間の切梁に安定した軸力を付与することができる。
また、前記裏込め用スペーサにおいて、前記逆支弁付きカプラに、さらに、前記流体密封用内袋部に注入された流体の圧力を計測する圧力計と、前記圧力計が計測した流体の圧力を、無線により、複数の裏込め用スペーサの圧力を収集するデータ収集装置へ送信する無線通信部と、が設けられるようにしても良い。このようにすると、データ収集装置に対し各裏込め用スペーサが離れた位置に設置されていても、データ収集装置に簡単に各裏込め用スペーサの内圧を収集することができる。
また、本発明の裏込め用スペーサを用いた土留め方法は、前述の裏込め用スペーサを、土留め壁と腹起し材との間に設置する裏込め用スペーサ設置工程と、前記土留め壁と前記腹起し材との間に設置された前記裏込め用スペーサに対しポンプにより注入孔を介し流体を注入して、前記裏込め用スペーサを膨張させ、前記土留め壁と前記腹起し材との間の隙間を埋める裏込め工程と、前記土留め壁と前記腹起し材との間の隙間を埋めた後、さらに、前記土留め壁と前記腹起し材との間に設置された前記裏込め用スペーサに対しポンプにより注入孔を介し流体を注入してさらに前記裏込め用スペーサを膨張させ、前記腹起し材の間にかけられた切梁に所定の軸力を付与する軸力付与工程と、を有することを特徴とする裏込め用スペーサを用いた土留め方法である。これにより、裏込め工程と、軸力付与工程とを裏込め用スペーサを用いて実行することが可能となり、切梁に所定の軸力を付与するプレロードジャッキ(切梁ジャッキ)が不要となり、コストが低減すると共に、軸力付与作業が容易になる。
ここで、前記裏込め用スペーサを用いた土留め方法において、前記流体は、水であり、前記逆支弁付きカプラには、前記流体密封用内袋部に注入された流体である水の水圧を計測する圧力計を設け、前記軸力付与工程では、前記圧力計が示す水圧を参照して、前記腹起し材の間にかけられた前記切梁に所定の軸力を付与する、ようにしても良い。このようにすると、裏込めスペーサを用いて、裏込め工程と連続して正確な軸力付与工程が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の裏込め用スペーサ、および裏込め用スペーサを用いた土留め方法によれば、裏込め用スペーサは、注入孔を介し流体が注入され、注入された流体が漏れないように密封する流体密封用内袋部と、流体密封用内袋部の外側を被覆し、注入された流体の内圧による流体密封用内袋部の破裂を防止する破裂防止用外袋部と、を有するので、流体の注入と排出とを繰り返して膨張と収縮とを繰り替えすことにより再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁と腹起し材との間の隙間を埋めることができると共に、さらに膨張させることにより、小さな工事現場であればプレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の代わりに切梁に軸力を付与することもでき、コストが低減すると共に、軸力付与作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a),(b)それぞれ、本発明の実施の形態1の裏込め用スペーサを土留め壁と腹起こし材との間に設置する土留め方法全体を示す平面図、断面図である。
【図2】本発明の実施形態1である裏込め用スペーサの外観の一部分を破断して示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1である裏込め用スペーサを構成する流体密封用内袋部の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態1である裏込め用スペーサを膨張させた状態の一例を示す斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態1の流体密封用内袋部の構成例を示す平面図、正面図、側面図である。
【図6】実施形態1の裏込め用スペーサの注入孔周辺の拡大断面図である。
【図7】実施形態1の裏込め用スペーサの逆支弁付きメスカプラに、耐圧ホース先端に設けられた逆支弁付きオスカプラを連結して水を注入する例を示す図である。
【図8】実施形態1の裏込め用スペーサの破裂防止用外袋部の表面(炭素繊維の編み方)の一例を拡大して示す図である。
【図9】(a),(b)それぞれ、実施形態1の裏込め用スペーサの破裂防止用外袋部の他の例の表面(炭素繊維の編み方)の一例を拡大して示す図である。
【図10】(a)〜(d)それぞれ、実施形態2の裏込め用スペーサの外観の一例を示す平面図、正面図、右側面図、吊具板の要部拡大図である。
【図11】実施形態2の裏込め用スペーサの注入孔周辺の拡大断面図である。
【図12】実施形態2の吊具板に取り付けられるフックの平面図、正面図、使用状態を示す斜視図である。
【図13】(a),(b)それぞれ、裏込め用スペーサの他の形状の一例を示す図である。
【図14】実施形態1,2の裏込め用スペーサを使用した実施形態3の土留め方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明にかかる裏込め用スペーサを実施形態1,2として、本発明の裏込め用スペーサを用いた土留め方法を実施形態3として説明する。
【0015】
実施形態1.
【0016】
図1(a),(b)は、それぞれ、実施形態1の裏込め用スペーサ1の取り付け位置など示す平面図、断面図である。
【0017】
図1(a),(b)に示すように、本実施形態1の裏込め用スペーサ1は、土留め壁2と、腹起し材3との間の隙間に挿入して使用する。土留め壁2と、腹起し材3との間の隙間は、千差万別であり、裏込め用スペーサ1は、その厚みが自由に変えられることが必要である。本実施形態1の裏込め用スペーサ1では、水圧ポンプ等により水を注入し、その注入量により、その厚さを自由に変えられるようにしている。なお、図1において、4は切梁、5は火打ち梁である。
【0018】
図2は、本発明の実施形態1である裏込め用スペーサ1の外観の一部分を破断して示す斜視図である。また、図3は、本発明の実施形態1である裏込め用スペーサ1を構成する流体密封用内袋部12の一例を示す図、図4は、本発明の実施形態1である裏込め用スペーサ1を膨張させた状態の一例を示す斜視図である。
【0019】
図1でも説明したように、実施形態1の裏込め用スペーサ1は、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間に挿入して大きな圧力が作用することから「液体漏れ防止」および「破裂防止」の2つの条件を満たすことが絶対条件である。
【0020】
そのため、本実施の形態1の裏込め用スペーサ1は、例えば、逆支弁付きメスカプラ11を介し液体が注入され、注入された流体が漏れないように密封する流体密封用内袋部12と、流体密封用内袋部12の外側を被覆し、液体が注入された流体密封用内袋部12の破裂を防止する破裂防止用外袋部13と、を有する。なお、逆支弁付きメスカプラ11の代わりに、逆支弁付きオスカプラでも勿論よい。
【0021】
流体密封用内袋部12は、図3に示すように、約1mm厚のポリプロビレン系ビニールまたはポリエチレン系ビニール等のビニールや、またはクロロプレーンゴム布のゴム、さらにはシリコーン系コート布の水密性の高い素材が使用される。なお、水密性の高い素材であれば、これらの素材に限定されるものではない。ここで、裏込め用スペーサ1に注入する流体は、例えば、水とする。流体として水を使用するのは、水であればどこでも簡単に入手が可能であると共に、取り扱いも容易であり、さらには、土留めが終了し、土留めのための切梁や山留め壁等の支保工を解体する場合、裏込め用スペーサ1は、裏込め用スペーサ1に注入していた水を排出しても、何ら周辺環境に悪影響を与えないからである。
【0022】
また、破裂防止用外袋部13は、体密封用内袋部12の外側全体を被覆するもので、流体密封用内袋部12とは別の素材で、後述するように鉄の引張強度の10倍の引張強度を有する炭素繊維シートを樹脂コーティングした素材等から構成されている。そのため、流破裂防止用外袋部13は、膨張した流体密封用内袋部12が膨張しても、その破裂を防止することができる。ここで、破裂防止用外袋部13は、炭素繊維シートと樹脂との複合材である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等が望ましい。なお、破裂防止用外袋部13は、流体密封用内袋部12とは別の素材から構成されていることは任意であり、破裂防止用外袋部13の内側にポリプロビレン系ビニールまたはポリエチレン系ビニール等のビニールや、クロロプレーンゴム等のゴム等の水密性の高い素材を蒸着等して一体的に構成しても勿論よい。
【0023】
図5(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態1の流体密封用内袋部12の構成例を示す平面図、正面図、側面図である。また、図6は、実施形態1の裏込め用スペーサ1の注入孔周辺の拡大断面図である。
【0024】
図5(a)〜(c)に示すように、裏込め用スペーサ1の流体密封用内袋部12は、例えば、逆支弁付きメスカプラ11が設けられるほぼ長方形の上側面121と、その上側面121に対向するほぼ同一形状の底面122と、上側面121と底面122との間であって土留め壁2と腹起し材3とにそれぞれ対向するように設置される前側面123および後側面124と、前側面123と後側面124との間の左右側面125,126との6面を有するほぼ直方体形状である。
【0025】
ここで、図5に示す実施形態1の裏込め用スペーサ1の流体密封用内袋部12は、例えば、縦横寸法がそれぞれ300mm、200mmで、奥行き(厚さ)が150mmのほぼ直方体形状とする。
【0026】
そして、この裏込め用スペーサ1の注入孔として、図5に示すように、中央のワッシャ部127bを介して両側にそれぞれネジ溝が形成され、袋外に突出する袋外側連結部127aおよび袋内に突出する袋内側連結部127cを有する中空のユニオンアダプタ127の中心孔127dを利用する。
【0027】
そのため、図6に示すように、流体密封用内袋部12には、ユニオンアダプタ127の袋内側連結部127cの外径に相当する内袋連結孔12aが形成され、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b裏面と、ユニオンアダプタ127の袋内側連結部127cに連結された袋内側ナット128とにより流体密封用内袋部12に形成された内袋連結孔12a周縁が挟まれ、かつ、溶着される。これにより、袋内側ナット128が流体密封用内袋部12内に脱落することを防止できると共に、内袋連結孔12a周縁の密封性を確実にすることができる。
【0028】
また、図6に示すように、破裂防止用外袋部13には、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aの外径に相当する外袋連結孔13aが形成され、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b表面と、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aに連結された袋外側ナット129とにより破裂防止用外袋部13に形成された外袋連結孔13a周縁が挟まれ。なお、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127a先端には、逆支弁付きメスカプラ11が連結される。
【0029】
次に、実施形態1の裏込め用スペーサ1への水の注入方法の一例について説明する。
【0030】
図7は、実施形態1の裏込め用スペーサ1の逆支弁付きメスカプラ11に、耐圧ホース20先端に設けられた逆支弁付きオスカプラ21を連結して水を注入する例を示す図である。
【0031】
つまり、実施形態1の裏込め用スペーサ1では、例えば、図7に示すように、裏込め用スペーサ1の逆支弁付きメスカプラ11に、耐圧ホース20の先端に設けられた逆支弁付きオスカプラ21を、例えば、ネジ込んで結合して、図示しないポンプにより耐圧ホース20、逆支弁付きオスカプラ21、逆支弁付きメスカプラ11、およびユニオンアダプタ127を介して、裏込め用スペーサ1の流体密封用内袋部12に水を注入すると、図4に示すように、裏込め用スペーサ1が膨張する。なお、逆支弁付きオスカプラ21、逆支弁付きメスカプラ11は、公知のもので、それぞれ、逆支弁が設けられている。
【0032】
これにより、図1に示すように、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋める裏込めと、切梁4への軸力付与とを、実施形態1の裏込め用スペーサ1を用いて連続して実行することが可能となる。その結果、切梁のスパンが小さい小さな工事では、切梁4に所定の軸力を付与するプレロードジャッキ(切梁ジャッキ)が不要となり、コストが低減すると共に、軸力付与作業が容易になる。
【0033】
特に、本実施形態1の裏込め用スペーサ1では、図5に示すように、奥行き(厚さ)が150mmもあり、収縮性に富むので、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127bの最大径である60mmから裏込め用スペーサ1の奥行き(厚さ)である150mmまで、膨張しても、常に、前側面123および後側面124の全面がそれぞれ土留め壁2と腹起し材3とに当り、接触面積がほとんど変わらないので、土留め壁2と腹起し材3、引いては腹起し材3間の切梁4に安定した軸力を付与することができる。また、土留め壁2と腹起し材3とに対する、前側面123および後側面124の接触面積がほとんど変わらないので、単位面積当りの圧力[P/cm]から、軸力[kN]への換算も簡単に行うことができる。
【0034】
図8は、本発明の実施形態1である裏込め用スペーサ1の破裂防止用外袋部13の表面(炭素繊維の編み方)の一例を拡大して示す図である。
【0035】
本実施形態1の破裂防止用外袋部13は、例えば、図8に示すように、炭素繊維13aを格子状等に編みこんだ炭素繊維シートからなる。図8の場合、裏込め用スペーサ1の流体密封用内袋部12や破裂防止用外袋部13の辺方向に対し炭素繊維13aの繊維方向が90度の直角になるように編みこまれている。破裂防止用外袋部13の素材として炭素繊維シートを使用した理由は、使用現場が、工事現場であることから、劣悪な環境であるため、まず、破裂防止用外袋部13の素材としては、耐摩擦、耐衝撃に優れた耐久性が必要である。また、耐燃性に優れていると共に難燃性である等の耐火性も必要である。さらに、ある程度の耐圧性も必要であり、しかも可能な限り、軽量性であることも必要である。従って、現時点では、破裂防止用外袋部13の素材として、例えば、比重が鉄の1/5程度、引張強度が鉄の約10倍、錆が発生せず水に強く、紫外線による強度劣化も少ない炭素繊維シートが最適である。ただし、炭素繊維シートに限定されるものではなく、引張強度が炭素繊維シートよりも2/3低下するもの、アラミド繊維シート等も使用可能である。その他、破裂防止用外袋部13として、切梁3に与える軸力に十分に耐える耐圧性を有すれば、アラミド繊維や、ケプラー、ターポリンやFRP(Fiber Reinforced Plastics)等のその他の素材でも勿論良い。
【0036】
また、図9(a),(b)は、それぞれ、本発明の実施形態1である裏込め用スペーサ1の破裂防止用外袋部13の他の例の表面(炭素繊維の編み方)の一例を拡大して示す図である。
【0037】
つまり、実施形態1である裏込め用スペーサ1では、図9(a)に示すように、炭素繊維13aを2列ずつ密接させて格子状に編みこんた破裂防止用外袋部13’でも良いし、さらには、図9(b)に示すように、裏込め用スペーサ1の流体密封用内袋部12や破裂防止用外袋部13の辺方向に対し炭素繊維13aの繊維方向が45度の斜め方向になるように編み込んだ破裂防止用外袋部13”でも良い。
【0038】
以上説明したように、本実施形態1の裏込め用スペーサ1によれば、逆支弁付きメスカプラ11からユニオンアダプタ127の注入孔127dを介し水が注入され、注入された水が漏れないように密封する流体密封用内袋部11と、流体密封用内袋11の外側を被覆し、注入された水の内圧による流体密封用内袋12の破裂を防止する破裂防止用外袋部13と、を有するので、再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋めることができると共に、裏込め用スペーサ1により直接、切梁4に軸力を付与することができる。
【0039】
特に、本実施形態1の裏込め用スペーサ1では、破裂防止用外袋部13,13’,13”は、炭素繊維13aを格子状等に編みこんだ炭素繊維シートから構成されているので、鉄等に比べ10倍近く引張強度が大きいため、切り梁4に従来のプレロードジャッキと同等の軸力を与えることができる。
【0040】
その結果、従来であれば、土留め壁2と腹起し材3との間に、特許文献1に記載された裏込め材や、特許文献2に記載されたモルタルを使用した裏込め材等を挿入すると共に、プレロード等のため切り梁4間に切梁4に軸力を付与するプレロードジャッキを設ける必要があったが、本実施形態1の裏込め用スペーサ1によれば、裏込め用スペーサ1が膨張することによりまず土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋める裏込め材としての機能を発揮するだけでなく、さらに膨張することにより切り梁4間のプレロードジャッキとしても機能するので、小さな工事現場であればプレロードジャッキを省略することが可能となり、コストを削減することができると共に、裏込め用スペーサ1の膨張により裏込めと軸力付与とを連続して行うことが可能となり、作業効率も向上する。なお、大きな工事現場であれば、切梁4間のプレロードジャッキを省略することができないが、プレロードジャッキの台数は減らすことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態1の裏込め用スペーサ1では、腹起し材3等を解体する場合には、逆支弁付きメスカプラ11から専用キャップを取り外して、中に注入されていた水を排出すれば、裏込め用スペーサ1は萎み簡単に取外すことができると共に、水が排出されるだけでなるので、何ら環境に悪影響を与えることはない。
【0042】
また、本実施形態1の裏込め用スペーサ1では、裏込め用スペーサ1において、流体密封用内袋部12に注入する流体は、水であり、流体密封用内袋部12は、ポリプロビレン系ビニールまたはポリエチレン系ビニール等のビニールや、またはクロロプレーンゴム布のゴム、さらにはシリコーン系コート布の水密性の高い素材からなり、破裂防止用外袋部13は、炭素繊維シートからなるので、容易に入手可能な材料ないし素材により、裏込め用スペーサ1を製造することができる。
【0043】
実施形態2.
次に、本発明の実施形態2の裏込め用スペーサについて説明する。なお、本実施形態2の裏込め用スペーサ1’は、実施形態1の裏込め用スペーサ1に対し、腹起し材3に引っ掛けるフックを取り付けるためのフック取付け孔が形成された吊具板を取り付けたものである。従って、フックおよび吊具板以外の構成は、前述の実施形態1と同様なので、説明を省略して説明する。
【0044】
図10(a)〜(d)は、それぞれ、実施形態2の裏込め用スペーサ1’の外観の一例を示す平面図、正面図、右側面図、吊具板の要部拡大図である。また、図11は、実施形態2の裏込め用スペーサ1’の注入孔周辺の拡大断面図である。また、図12(a)〜(c)は、それぞれ、吊具板6に形成されるフック取付け孔61に挿入されるフック7の平面図、正面図、使用状態を示す斜視図である。
【0045】
本実施形態2の裏込め用スペーサ1’は、図10および図11に示すように、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aに連結された袋外側ナット129と、破裂防止用外袋部13に形成された外袋連結孔13a周縁との間に、裏込め用スペーサ1’の横方向の幅より長く、両側が突出した長尺状の吊具板6を取り付けている。
【0046】
具体的には、図11に示すように、図6に示す実施形態1と同様に、ユニオンアダプタ127の袋内側連結部127cに緊張状態で取り付けられた袋内側ナット128と、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b裏面の間に、流体密封用内袋部12に形成された内袋連結孔12a121周囲が挟まれ、かつ、溶着される。
【0047】
また、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b表面と、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aに緊張状態で取り付けられた袋外側ナット129との間に、破裂防止用外袋部13の外袋連結孔13a周縁と、吊具板6とがずれないように強く挟まれている。
【0048】
ここで、本実施形態2では、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b表面と、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aに緊張状態で取り付けられた袋外側ナット129との間に、破裂防止用外袋部13の外袋連結孔13a周縁部分は、破裂防止用外袋部13の継ぎ目があり、破裂防止用外袋部13が重複している。これにより、ワッシャ部127b表面と袋外側ナット129とにより破裂防止用外袋部13の重複部分に形成された外袋連結孔13a周囲が挟まれるので、当該裏込め用スペーサ1’が膨張した場合でも、破裂防止用外袋部13の重複部分の破断や剥がれ等を防止することができる。
【0049】
また、裏込め用スペーサ1’の横方向より突出する吊具板6の両端部には、図10に示すように、それぞれ、腹起し材3に引っ掛けるフック7が取り付けられるフック取付け孔61が形成されている。なお、土吊具板6の短手方向の幅は、少なくとも、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b、袋内側ナット128、または袋外側ナット129の最大外径以上を確保しつつも、裏込め用スペーサ1’の奥行き(厚さ)より小さくしている。例えば、裏込め用スペーサ1’の奥行き(厚さ)が150mmであり、ユニオンアダプタ127のワッシャ部127b、袋内側ナット128、または袋外側ナット129の最大外径を60mmとした場合、吊具板6の短手方向の幅は、80mm程度としている。
【0050】
このようにすると、吊具板6のフック取付け孔61に腹起し材3に引っ掛けるフック7を取り付けることができる一方、吊具板6の短手方向の幅が確保されているので、裏込め用スペーサ1’を土留め壁2と腹起し材3との間の隙間に挿入した後でも、ホース等を逆支弁付きカプラに接続する際の作業性が向上する。
【0051】
また、本実施形態2の裏込め用スペーサ1’は、実施形態1の裏込め用スペーサ1と同様に、奥行き(厚さ)が150mmあり、収縮性に富むので、吊具板6の短手方向のである80mmから裏込め用スペーサ1の奥行き(厚さ)である150mmまで、膨張しても、常に、前側面123および後側面124の全面がそれぞれ土留め壁2と腹起し材3とに当るので、土留め壁2と腹起し材3、引いては腹起し材3間の切梁4に安定した軸力を付与することができる。
【0052】
なお、吊具板6に形成されるフック取付け孔61は、図10(d)に示すように、単なる円形状ではなく、円形状に凸部61aが追加された形状である。
【0053】
フック7は、図12(a)〜(c)に示すように、短いフック先端部71と、腹起し材3の幅に合わせた長さを有するフック中継部72と、フック取付け孔61に挿入される長いフック挿入部73とを有するコの字形状に形成されており、フック挿入部73には、フック取付け孔61の突出部61aを通過する大きさで、回転することにより突出部61a以外のフック取付け孔61周縁裏面に引っ掛かる抜け止め片73a〜73cが設けられている。なお、抜け止め片73a〜73cの設置間隔は、引っ掛ける対象の腹起し材3の高さ、すなわち上下方向の長さ等に応じて3段階調整できるように設けられている。なお、フック挿入部73の下端には、ネジ溝部73dが形成されており、そのネジ溝部73dにフック取付け孔61の内径より大きい外形の抜止めナット74が取り付けられ、フック7の抜け止めを防止する。
【0054】
従って、本実施形態2の裏込め用スペーサ1’によれば、前記実施形態1の裏込め用ペーサ1と同様に、再利用可能であり、強度発現までに時間を要さずに、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋めることができると共に、裏込め用スペーサ1’により直接、切梁4に軸力を付与することができる。
【0055】
特に、本実施形態2の裏込め用スペーサ1’では、ユニオンアダプタ127の袋外側連結部127aに連結された袋外側ナット129と、破裂防止用外袋部13に形成された外袋連結孔13a周縁との間に、裏込め用スペーサ1’の横方向の幅より長く、両側が突出した長尺状の吊具板6を取り付け、吊具板6の突出する両端部にフック取付け孔61を設けるようにしたので、簡単にフック7を取り付けて、腹起し材3に引っ掛けることが可能となる。
【0056】
なお、前記実施形態1,2の裏込め用スペーサ1,1’では、裏込め用スペーサ1に流体を注入して所定圧に達した後は、専用キャップによりその逆支弁付きメスカプラ11に蓋をして密閉するものと説明したが、本発明では、これに限らず、常時、ホース20を介してポンプを接続しておき、裏込め用スペーサ1に流体を注入して常に圧力を加えることができるようにしても勿論よい。
【0057】
また、前記実施形態1,2の裏込め用スペーサ1,1’では、裏込め用スペーサ1へ注入する流体として、水を一例に説明したが、本発明では、水に限定されるものではなく、水以外の液体、例えば、油でも良いし、空気や二酸化炭素、窒素等の不燃ガスでも勿論よい。ただし、油の場合、排出されると、環境に悪影響を与えるので、回収する必要があり、排出されても環境に悪影響を与えず、安全性の高い流体、すなわち液体または気体であれば良い。
【0058】
また、前記実施形態1,2の裏込め用スペーサ1,1’では、裏込め用スペーサ1,1’側に圧力計を設けずに、図示しないポンプ等の圧力計により裏込め時および軸力付与時の内圧を計測するように説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、裏込め用スペーサ1,1’側の逆支弁付きメスカプラ11に、さらに、流体密封用内袋部11に注入された流体の圧力を計測する圧力計と、圧力計が計測した流体の圧力を、無線により、複数の裏込め用スペーサの圧力を収集するデータ収集装置等へ送信する無線通信部と、を設けるようにしても勿論よい。このようにすれば、データ収集装置等に対し各裏込め用スペーサ1,1’が離れた位置に設置されていても、データ収集装置に簡単に各裏込め用スペーサ1,1’の内圧を簡単に収集することができる。
【0059】
また、前記実施形態1,2の裏込め用スペーサ1,1’では、図2等に示すように、縦長のほぼ立方体形状により説明したが、本発明では、これに限らず、例えば、図13(a)に示すように、全体の形をほぼ正方形とする一方、さらに逆支弁付きメスカプラ11を設ける位置を変えたことを特徴としている。つまり、図2等に示す実施形態1,2の裏込め用スペーサ1,1’では、流体密封用内袋部12短辺の中央に逆支弁付きメスカプラ11を設けているが、図13(a)に示す裏込め用スペーサ1”の破裂防止用外袋部13の例では、全体の形をほぼ正方形とし、正方形の一の角部に逆支弁付きメスカプラ11を設けている。また、図13(b)に示すように、裏込め用スペーサ1” ’を構成する流体密封用内袋部12および破裂防止用外袋部13の形状を円形に構成しても勿論よい。このように円形に構成すれば、均等に内圧が流体密封用内袋部12および破裂防止用外袋部13にかかることになるので、この点で効率の良い裏込め用スペーサ1” ’を構成することができる。
【0060】
実施形態3.
次に、前述の実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’を使用した実施形態3の土留め方法、すなわち土留工法の一例について説明する。
【0061】
図14は、前述の実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’を使用した実施形態3の土留め方法の一例を示すフローチャートである。
【0062】
(裏込め用スペーサ設置工程)
つまり、まずは、裏込め用スペーサ設置工程により、水を注入していない裏込め用スペーサ1を、図2(a),(b)に示すように、実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’は、土留め壁2と、腹起し材3との間の隙間に挿入する。
【0063】
(裏込め用スペーサ第1膨張行程(裏込め工程))
次に、裏込め工程により、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間に挿入された実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’の逆支弁付きメスカプラ11から水を注入して、裏込め用スペーサ1を膨張させ、裏込め用スペーサ1をそれぞれ設置した場所の土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋める。その際、注入ポンプや、逆支弁付きメスカプラ11に圧力計が備え付けられている場合には、各裏込め用スペーサ1にてその圧力がほぼ一定になるように水を注入する。このように、各裏込め用スペーサ1における圧力を一定にできるので、バランスの良い、裏込めが可能になると共に、注入する水の量を変えるだけで、各裏込め用スペーサ1の圧力を変更することができるので、圧力の微調整も簡単に行うことができる。
【0064】
(裏込め用スペーサ第2膨張行程(軸力付与工程))
次に、裏込め工程により土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋めた後は、軸力付与工程により、さらに、土留め壁2と腹起し材3との間に設置された裏込め用スペーサ1にポンプにより逆支弁付きメスカプラ11を介しさらに水を注入して、さらに裏込め用スペーサ1を膨張させ、腹起し材3間にかけられた切梁4に所定の軸力を付与する。
【0065】
(蓋閉め工程)
その後、裏込め用スペーサ1の逆支弁付きメスカプラ11からポンプを取外して、専用キャップ(図示せず。)等により、逆支弁付きメスカプラ11を塞ぐ。
【0066】
(取外し工程)
そして、裏込め用スペーサ1を用いた土留め作業が完了し、本実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’を取り外す場合には、逆支弁付きメスカプラ11から専用キャップを取り外して、中に注入されていた水を排出する。すると、裏込め用スペーサ1は、萎むので簡単に取外すことができると共に、水が排出されるだけとなるので、何ら環境に悪影響を与えることはない。
【0067】
従って、前述の実施形態1,2の裏込め用スペーサ1〜1”’を用いた土留め方法では、土留め壁2と腹起し材3との間の隙間を埋める裏込め用スペーサ第1膨張行程である裏込め工程と、さらに腹起し材3間にかけられた切梁4に所定の軸力を付与する裏込め用スペーサ第2膨張行程である軸力付与工程とを、土留め壁2と腹起し材3との間に設置した裏込め用スペーサ1〜1”’を膨張させることにより連続して行うことができる。
【0068】
その結果、本実施形態の裏込め用スペーサ1を用いた土留め方法によれば、小さな工事現場であれば、腹起し材3間の切梁に軸力を付与する油圧式などのプレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の設置が不要になる一方、大きな工事現場であれば、プレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の設置台数を減らすことができるので、プレロードジャッキ(切梁ジャッキ)の操作の手間を省略することができ、作業性が向上する。
【符号の説明】
【0069】
1,1’,1”,1”’ 裏込め用スペーサ
11 逆支弁付きカプラ
111 逆支弁
112 圧力計
113 無線通信部
114 電源部
12 流体密封用内袋部
12a 内袋連結孔
121 上側面
122 底面
123 前側面
124 後側面
125 左側面
126 右側面
127 ユニオンアダプタ
127a 袋外側連結部
127b ワッシャ部
127c 袋内側連結部
127d 中心孔
128 袋内側ナット
129 袋外側ナット
13,13’,13” 破裂防止用外袋部
13a 外袋連結孔
131 外袋連結孔
2 土留め壁
3 腹起し材
4 切り梁
5 火打ち梁
6 吊具板
7 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土留め壁と、腹起し材との間の隙間に挿入される裏込め用スペーサであって、
注入孔を介し流体が注入され、注入された流体が漏れないように密封する流体密封用内袋部と、
前記流体密封用内袋の外側を被覆し、注入された前記流体の内圧による前記流体密封用内袋の破裂を防止する破裂防止用外袋部と、
を有することを特徴とする裏込め用スペーサ。
【請求項2】
請求項1記載の裏込め用スペーサにおいて、
前記流体密封用内袋部に注入する流体は、水であり、
前記流体密封用内袋部は、ビニールまたはゴム等の水密性の高い素材からなり、
前記破裂防止用外袋部は、炭素繊維シートを樹脂コーティングした素材からなる、
ことを特徴とする裏込め用スペーサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の裏込め用スペーサを、土留め壁と腹起し材との間に設置する裏込め用スペーサ設置工程と、
前記土留め壁と前記腹起し材との間に設置された前記裏込め用スペーサに対しポンプにより注入孔を介し流体を注入して、前記裏込め用スペーサを膨張させ、前記土留め壁と前記腹起し材との間の隙間を埋める裏込め工程と、
前記土留め壁と前記腹起し材との間の隙間を埋めた後、さらに、前記土留め壁と前記腹起し材との間に設置された前記裏込め用スペーサに対しポンプにより注入孔を介し流体を注入してさらに前記裏込め用スペーサを膨張させ、前記腹起し材の間にかけられた切梁に所定の軸力を付与する軸力付与工程と、
を有することを特徴とする裏込め用スペーサを用いた土留め方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−202046(P2012−202046A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65540(P2011−65540)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(311002300)あおい開発株式会社 (1)
【出願人】(311002311)