説明

補修用シール

【課題】経年等により変色した化粧基材に貼着した場合でも目立たず、化粧基材の外観を損なわないようにすることができる補修用シールを提供する。
【解決手段】施工後の化粧基材に使用される補修用シールAに関する。前記化粧基材の塗膜構成と同一の塗膜構成を有し、この塗膜6が前記施工後の化粧基材の塗膜の色と略一致するように変色させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材などの化粧基材を補修するために用いられる補修用シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外壁材や役物の外装材などの化粧基材を補修するにあたって、補修用シールが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような補修用シールは化粧基材の外面と同色に形成されており、化粧基材の傷ついた部分や釘頭が見える部分などを覆って化粧基材の表面に貼着されるものである。これにより、化粧基材の傷ついた部分や釘頭が見える部分を補修用シールで見えにくくし、化粧基材の外観を損なわれにくくするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−58617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような補修用シールは、施工前の化粧基材の外面と同色に着色されているため、施工後の数年を経た化粧基材に貼着した場合は、補修用シールと化粧基材の外面の色とが合致しないことがあった。これは、化粧基材が経年屋外に暴露されているため、紫外線等の影響で外面が初期状態から変色し、補修用シールとの色がずれてしまうことが原因と考えられる。従って、化粧基材の外面に貼着した補修用シールが目立ってしまい、外装材の外観が損なわれやすかった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、経年等により変色した化粧基材に貼着した場合でも目立たず、化粧基材の外観を損なわないようにすることができる補修用シールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る補修用シールは、施工後の化粧基材に使用される補修用シールであって、前記化粧基材の塗膜構成と同一の塗膜構成を有し、この塗膜が前記施工後の化粧基材の塗膜の色と略一致するように変色させて成ることを特徴とするものである。
【0007】
前記補修用シールは、促進耐候性試験機による処理で前記塗膜が前記施工後の化粧基材の塗膜の色と略一致するように変色させて成ることが好ましい。
【0008】
前記補修用シールは、厚さが20μm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、経年等により変色した化粧基材に貼着した場合でも目立たず、化粧基材の外観を損なわないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の実施の形態の一例を示す断面図、(b)は本発明の他の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)は化粧基材の一例を示す断面図、(b)は他の化粧基材の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
補修用シールAは、補修の対象となる化粧基材1が有する塗膜構成と同一の塗膜構成を有して形成される。例えば、図2(a)に示すように化粧基材1が基材本体2の表面に塗膜3としてエナメル層4とその表面に設けたクリヤー層5とを備えている場合は、図1(a)に示すように補修用シールAも塗膜6としてエナメル層7とその表面に設けたクリヤー層8とを備えて形成される。また、図2(b)に示すように化粧基材1が基材本体2の表面に塗膜3としてエナメル層4と印刷層9とクリヤー層5とをこの順で備えている場合は、図1(b)に示すように補修用シールAも塗膜6としてエナメル層7と印刷層10とクリヤー層8とをこの順で備えて形成されている。
【0013】
化粧基材1の基材本体2は、通常の建材として使用されるものであれば材質や形状は特に限定されない。例えば、基材本体2は、鉄板や鋼板などの金属板や木板、セメントを主成分とする窯業系基板などを用いることができる。また、基材本体2は平板であってもよいし、平板の表面に凹凸を有しているものであってもよいし、平板以外の各種形状であってもよい。
【0014】
基材本体2の表面に形成されるエナメル層4、7は、エナメル塗料の塗膜で形成することができる。エナメル層4、7はエナメル塗料に含まれている顔料等によって着色されている。また、エナメル層4、7により柄や模様が形成されている。化粧基材1のエナメル層4の厚みは10〜200μm、補修用シールAのエナメル層7の厚みは10〜200μmとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
クリヤー層5、8はエナメル層4、7の表面又は印刷層10の表面に形成されており、エナメル層4、7や印刷層10の色や柄・模様が視認できる程度の透明性を有することが好ましい。クリヤー層5、8はアクリル系樹脂塗料、アクリルシリコン系樹脂塗料、フッ素系樹脂塗料などの有機クリヤー塗料の塗膜で形成したり、無機系樹脂塗料などの無機クリヤー塗料の塗膜で形成することができる。化粧基材1のクリヤー層5の厚みは1〜100μm、補修用シールAのクリヤー層5の厚みは1〜100μmとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
印刷層9、10はエナメル層4、7の表面に形成されており、エナメル層4、7の色や柄・模様が視認できる程度の透明性を有することが好ましい。印刷層9、10はアクリル系樹脂エナメル塗料やインクなどの塗膜であって、印刷により形成することができる。化粧基材1の印刷層9の厚みは0.1〜30μm、補修用シールAの印刷層10の厚みは0.1〜30μmとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
ここで、「同一の塗膜構成」とは、化粧基材の塗膜3と補修用シールAの塗膜6とが同一の種類(組成)の層で同一の並び順の層で形成されることをいうが、各層の厚みは異なって形成することができる。
【0018】
補修用シールAにはさらに接着層11を設けることができる。接着層11はエナメル層7の片面(クリヤー層8とは反対側の片面)に形成されている。接着層11は補修用シールAを化粧基材1の表面に貼着するために設けられている。接着層11はアクリル系接着剤などで形成することができ、また、接着層11の厚みは10〜50μmとすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また、補修用シールAの厚みは20μm以上にすることが好ましい。これにより、補修用シールAが薄過ぎずに取り扱い性に優れるものとなる。補修用シールAの厚みは50μm以下にするのが好ましい。この場合、化粧基材1の表面に貼着しても目立ちにくくなって、化粧基材1の外観が損なわれにくいものである。
【0020】
そして、上記の補修用シールAを用いて施工後の化粧基材1の補修を行うにあたっては、次のようにして行うことができる。
【0021】
まず、補修の対象となる施工後の化粧基材1の塗膜3を測色する。塗膜3の測色する位置は、補修する部分(化粧基材1の傷ついた部分や釘頭が見える部分など)の周囲であることが好ましい。これにより、補修用シールAの貼着位置の周囲における塗膜3の色を基準として補修用シールAを変色させることができる。塗膜3の測色はL*値を測定する。L*値とは、JIS Z 8729に規定されるL*a*b*表色系のL*値のことである。L*値は市販の色彩計を用いて計測することができる。
【0022】
次に、補修用シールAの塗膜6の色を施工後の化粧基材1の塗膜3の色に近づけるように変色させる。すなわち、施工後の化粧基材1は屋外等で紫外線等に暴露され、施工前よりも変色している場合があるが、補修用シールAの塗膜6は施工前の化粧基材1の塗膜3と同色に形成されている。従って、施工後の化粧基材1の塗膜3と補修用シールAの塗膜6の色とが略一致するように、補修用シールAの塗膜6を変色させる。ここで、補修用シールAの塗膜6を変色させるにあたっては、化粧基材1の塗膜3の変色の原因と同じにするのが好ましい。このため、補修用シールAを促進耐候性試験機により処理して変色させるのが好ましい。促進耐候性試験機は補修用シールAに紫外線等を照射することにより、補修用シールAを長期間屋外に暴露したのと同様の効果を短時間で付与することができるものである。変色させた補修用シールAは、上記のようにして測色した塗膜3の色と同一であることが好ましい。ここで、変色させた補修用シールAの塗膜6の色と、化粧基材1の測色した位置の塗膜3の色とが同一であるためには、変色させた補修用シールAの塗膜6のL*値と、上記測色した塗膜3のL*値との差ΔL*値が0〜3であることが好ましい。この場合に、補修用シールAを化粧基材1の表面に貼着しても目立ちにくくなって、化粧基材1の外観が損なわれにくいものである。
【0023】
この後、図2(a)(b)に示すように、変色した補修用シールAを化粧基材1の補修する部分において塗膜3の表面に貼着する。この貼着は補修用シールAの接着層11を塗膜3の表面に接着するようにして行う。このようにして、化粧基材1の補修する部分を補修用シールAで覆って見えなくし、化粧基材1の補修を行うことができる。そして、補修用シールAは施工後の化粧基材1の塗膜3の色と略一致するので、目立たないようにすることができ、補修位置が判別しにくくなって、化粧基材1の外観を損なわないようにすることができる。また、補修用シールAは、化粧基材1の塗膜3の塗膜構成と同一であるために、化粧基材1に貼着された後は、補修用シールAの塗膜6と化粧基材1の塗膜3とが同様のストレス(紫外線の照射等)を受けて同様の色変化等を生じることになる。従って、化粧基材1の補修後も長期にわたって補修シールAが目立ちにくくなり、外観が損なわれにくいものである。また、補修用塗料を用いて化粧基材1の補修を行う場合に比べて、現場での塗装作業を少なくすることができ、補修作業の手間を軽減することができる。また、補修用塗料を用いて化粧基材1の補修を行う場合では、補修用塗料の塗りすぎにより化粧基材1の外観不良が生じることがあるが、上記補修用シールを用いた場合はこのような問題は生じないものである。さらに、補修用塗料を用いて化粧基材1の補修を行う場合では、色合わせのため現場で塗料を調合しなければならず、多色あるいは多彩色の塗膜3の補修が難しい。一方、上記補修用シールを用いた場合は現場で塗料を調合する必要が無く、このような問題は生じないものである。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0025】
[化粧基材]
化粧基材としては窯業系建材を用いた。基材本体はセメントを主成分とする平板状の硬化物を用いた。また、塗膜構成の違いにより五種類の化粧基材を用意した。
【0026】
化粧基材K1は、基材本体の表面にエナメル層を形成し、エナメル層の表面にクリヤー層を設けて単色の塗膜が形成されている。エナメル層は、エナメル塗料(Vセラン#300−9SP4(DNT社製))の硬化塗膜で厚さ60μmである。クリヤー層は、有機クリヤー塗料(KKクリヤー(アクリル樹脂系塗料、DNT社製))の硬化塗膜で厚さ40μmである。
【0027】
化粧基材K2は、有機クリヤー塗料(ASクリヤー(アクリルシリコン樹脂系塗料、DNT社製))の硬化塗膜でクリヤー層を形成した以外は、化粧基材K1と同様である。
【0028】
化粧基材K3は、無機クリヤー塗料(セラミックコート(パナソニック電工化研製))の硬化塗膜でクリヤー層を形成した以外は、化粧基材K1と同様である。
【0029】
化粧基材K4は、無機クリヤー塗料(セラミックコート(パナソニック電工化研製))の硬化塗膜と、有機クリヤー塗料(MB200クリヤー(パナソニック電工化研製))の硬化塗膜とでクリヤー層を形成した。無機クリヤー塗料の硬化塗膜の厚みは10μm、有機クリヤー塗料の硬化塗膜の厚みは40μmであった。また、エナメル層とクリヤー層との間に印刷層を形成した。印刷層はインク(MB300(パナソニック電工化研製))の硬化膜で厚みは0.1μmである。塗膜はエナメル層及び印刷層により多彩色に形成されている。これら以外は、化粧基材K1と同様である。
【0030】
化粧基材K5は、無機クリヤー塗料(セラミックコート(パナソニック電工化研製))の硬化塗膜でクリヤー層を形成した。また、エナメル層とクリヤー層との間に印刷層を形成した。印刷層はエナメル塗料(Vセラン#300−9SP4(DNT社製))の硬化膜で厚さ10μmである。塗膜はエナメル層及び印刷層により多彩色に形成されている。これら以外は、化粧基材K1と同様である。
【0031】
[実施例1〜12]
表1に示すような塗膜構成を有する補修用シールを形成した。各実施例の塗膜構成は補修の対象の化粧基材と同一である。また、補修用シールは厚み40μmの接着層(アクリル系接着剤、セメダイン製)を有している。
【0032】
補修用シールは、施工後1年を経過した化粧基材の塗膜の表面に貼着した。補修シートは貼着する前に、促進耐候性試験機(サンシャインウェザォメーター(スガ試験機製))で100〜500時間処理して変色させた。施工後1年を経過した化粧基材の塗膜と促進耐候性試験機による処理後の補修用シールとは同色(色差ΔL*値3以内)とした。
【0033】
[比較例1]
補修用塗料(溶剤系エナメル塗料PKH(DNT製))を用いた。
【0034】
[比較例2]
補修用塗料(溶剤系エナメル塗料PKH(DNT製))とエナメル塗料(Vセラン#300−9SP4(DNT社製))を用いた。
【0035】
[比較例3]
クリヤー層を形成せず、表1のような塗膜構成にして補修用シールを形成した。
【0036】
[比較例4]
表1のような塗膜構成にして補修用シールを形成した。また、促進耐候性試験機による処理を行わなかった。
【0037】
[外観評価]
補修用シールを化粧基材の表面に貼着した後、又は補修用塗料を化粧基材の表面に塗布した後、3m離れた位置から目視により補修部分を観察した。そして、補修部分が目立たないものを○と、補修部分が判別できるが、実用上問題が無いものを△と、補修部分が目立つものを×と評価した。
【0038】
[ハンドリング性評価]
補修用シールを化粧基材の表面に貼着した後に再度剥がした場合に、破れなかったものを○と、少し破れるが、実用上問題が無いものを△と、破れて使用不能になったものを×と評価した。
【0039】
【表1】

【符号の説明】
【0040】
A 補修用シール
1 化粧基材
3 塗膜
6 塗膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工後の化粧基材に使用される補修用シールであって、前記化粧基材の塗膜構成と同一の塗膜構成を有し、この塗膜が前記施工後の化粧基材の塗膜の色と略一致するように変色させて成ることを特徴とする補修用シール。
【請求項2】
促進耐候性試験機による処理で前記塗膜が前記施工後の化粧基材の塗膜の色と略一致するように変色させて成ることを特徴とする請求項1に記載の補修用シール。
【請求項3】
厚さが20μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の補修用シール。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−23933(P2013−23933A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160497(P2011−160497)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)