説明

補助ラグ装置

【課題】様々な種類の後輪に取付けて使用できるだけでなく、補助ラグの大きさを任意に設定可能な補助ラグ装置を提供する。
【解決手段】乗用型田植機用の後輪6に取付けて使用される補助ラグ装置14であって、側面視で羽根ラグ13の内側に並列状に配置される補助ラグ15と、該補助ラグ15をスポーク11に取付けるための取付部材16とを備え、該取付部材16は、スポーク11に取付けられるスポーク取付部16aと、補助ラグ15を着脱自在に装着可能な補助ラグ装着部16bとを有し、該補助ラグ装着部16bは、側面視で羽根ラグ13と直交するように傾斜状に配置される回動支軸17を介して補助ラグ15を支持し、該補助ラグ15を、羽根ラグ13に沿う回動に基づいて、車輪部12よりも外側方に突出する使用姿勢と、車輪部12の内側に収納される収納姿勢とに変姿可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機用の後輪に取付けて使用される補助ラグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機用の後輪としては、ハブから放射方向に延出して車輪部を支持する複数のスポークと、車輪部の側部に側面視傾斜状に突設される複数の羽根ラグ(ゴムラグ)とを備えるものが知られている。このような後輪は、羽根ラグによって車輪部の沈み込みが抑制されるので、比較的軟弱な圃場でも良好な走行性を確保することが可能であるが、後輪に多くの荷重が作用する畦越え時などにおいては、羽根ラグが変形して機能しないことがある。この場合、後輪が土中に沈み込んでスリップし、脱出が困難になる可能性があった。
【0003】
そこで、乗用型田植機用の後輪に取付けて使用される補助ラグが提案されている。例えば、特許文献1に示される補助ラグ(土掻き部材)は、スポークから外側方に突出する使用姿勢と、スポークに沿う収納姿勢とに回動変姿可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−253202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される補助ラグは、側面視で放射方向に回動するので、羽根ラグを備える後輪では、補助ラグが既設の羽根ラグに干渉する惧れがあり、その結果、後輪の種類によって補助ラグの取付けが困難になったり、補助ラグの大きさが制限されるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ハブから放射方向に延出して車輪部を支持する複数のスポークと、車輪部の側部に側面視傾斜状に突設される複数の羽根ラグとを備える乗用型田植機用の後輪に取付けて使用される補助ラグ装置であって、側面視で羽根ラグの内側に並列状に配置される補助ラグと、該補助ラグをスポークに取付けるための取付部材とを備え、該取付部材は、スポークに取付けられるスポーク取付部と、補助ラグを着脱自在に装着可能な補助ラグ装着部とを有し、該補助ラグ装着部は、側面視で羽根ラグと直交するように傾斜状に配置される回動支軸を介して補助ラグを支持し、該補助ラグを、羽根ラグに沿う回動に基づいて、車輪部よりも外側方に突出する使用姿勢と、車輪部の内側に収納される収納姿勢とに変姿可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、補助ラグは、羽根ラグに沿う回動に基づいて使用姿勢と収納姿勢とに変姿するので、羽根ラグに干渉する惧れがなく、その結果、様々な種類の後輪に取付けて使用できるだけでなく、補助ラグの大きさを任意に設定することができる。しかも、補助ラグは、スポークに取付けられる取付部材と別々に構成され、取付部材に対して着脱自在に装着されるので、畦越え時の傾斜や土質などに応じて適切な形状の補助ラグに交換できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】(A)は補助ラグ装置の正面図、(B)は補助ラグ装置の側面図である。
【図3】補助ラグの使用状態を示す後輪の要部側面図である。
【図4】補助ラグの収納状態を示す後輪の要部側面図である。
【図5】補助ラグの使用状態及び収納状態を示す後輪の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は乗用型田植機の走行機体であって、該走行機体1は、エンジンが搭載されるエンジン搭載部2、エンジン動力を変速するミッションケース3、オペレータが乗車する操作部4、操舵輪及び駆動輪を兼ねる前輪5、駆動輪である後輪6などを備える乗用型の四輪車両であり、機体後部には、昇降リンク機構7を介して植付作業機8が連結されている。
【0010】
後輪6は、後輪車軸9に外嵌状に連結されるハブ10と、ハブ10から放射方向に延出する複数のスポーク11と、スポーク11の先端部で支持される車輪部12と、車輪部12の側部に側面視傾斜状に突設される複数の羽根ラグ(ゴムラグ)13とを備えている。このような後輪6は、羽根ラグ13によって車輪部12の沈み込みが抑制されるので、比較的軟弱な圃場でも良好な走行性を確保することが可能であるが、後輪6に多くの荷重が作用する畦越え時などにおいては、羽根ラグ13が変形して機能しないことがある。この場合、後輪6が土中に沈み込んでスリップし、脱出が困難になる可能性があった。
【0011】
本発明の実施形態に係る補助ラグ装置14は、後輪6に取付けることにより、上記のような状況を回避可能とするものである。以下、本発明の実施形態に係る補助ラグ装置14について、図1〜図5を参照して説明する。
【0012】
補助ラグ装置14は、側面視で羽根ラグ13の内側に並列状に配置される補助ラグ15と、該補助ラグ15をスポーク11に取付けるための取付部材16とを備えて構成されている。取付部材16は、スポーク11に取付けられるスポーク取付部16aと、補助ラグ15を着脱自在に装着可能な補助ラグ装着部16bとを有しており、補助ラグ装着部16bは、側面視で羽根ラグ13と直交するように傾斜状に配置される回動支軸17を介して補助ラグ15を支持し、該補助ラグ15を、羽根ラグ13に沿う回動に基づいて、車輪部12よりも外側方に突出する使用姿勢と、車輪部12の内側に収納される収納姿勢とに変姿可能としてある。
【0013】
具体的に説明すると、補助ラグ15は、略正方形の金属板からなる。補助ラグ15の内側面の一端部には、直立方向を向く回動支軸17が一体的に溶着されている。また、補助ラグ15の内側面の中央部分には、使用姿勢において補助ラグ15の回動を規制するための丸棒18が内側面に沿って一体的に溶着されている。
【0014】
取付部材16は、ブラケット19と固定板20からなる。ブラケット19は、スポーク11が入り込む凹部19aを有し、ここにスポーク11が入り込んだ状態で固定板20をブラケット19に重合状に固定することにより、取付部材16がスポーク11に取付けられる。つまり、前述したスポーク取付部16aは、ブラケット19の凹部19aの周辺部分と固定板20で構成されている。なお、スポーク11に対する取付部材16の径方向の取付位置は、ブラケット19の一端部がスポーク11の段差部11aに当接することにより規定される。
【0015】
ブラケット19は、所定間隔を存して外側方に突出する一対の軸支片19bを備えている。各軸支片19bには、回動支軸17が貫通可能で、かつ、回動支軸17を回動自在に支持する軸支孔19cが形成されている。つまり、前述した補助ラグ装着部16bは、一対の軸支片19bで構成されている。
【0016】
次に、補助ラグ装置14の使用方法について説明する。
【0017】
まず、取付部材16を構成するブラケット19及び固定板20をスポーク11に取付ける。この取付けは、ブラケット19の凹部19aにスポーク11を入り込ませた状態で固定板20をブラケット19に重合状に固定することにより行われる。このとき、スポーク11に対する取付部材16の径方向の取付位置は、ブラケット19の一端部がスポーク11の段差部11aに当接することにより規定される。
【0018】
次に、取付部材16に補助ラグ15を装着する。この装着は、ブラケット19に設けられる一対の軸支片19bの軸支孔19cに対し、補助ラグ15に突設された回動支軸17を後輪6の外周側から貫通状に挿通すると共に、回動支軸17の先端部にナット21を螺着することにより行われる。
【0019】
畦越えを行わない通常作業時には、補助ラグ15が邪魔になる可能性があるため、補助ラグ15を収納姿勢に保持する。このとき、補助ラグ15は、図4及び図5に示すように、側面視でスポーク11間に位置し、かつ、正面視で羽根ラグ13の左右幅内に収まるように収納される。
【0020】
畦越えを行う場合、補助ラグ15を収納姿勢から使用姿勢に回動変姿させる。この回動変姿は、ナット21を緩め、回動支軸17を支点として補助ラグ15を外側方に回動させることにより行われる。このとき、補助ラグ15は、羽根ラグ13に沿って回動するので、羽根ラグ13に干渉する惧れがない。これにより、様々な種類の後輪6に取付けて使用できるだけでなく、補助ラグ15の大きさを任意に設定することが可能になる。なお、使用姿勢の補助ラグ15は、丸棒18がブラケット19の軸支片19bに当接することにより使用姿勢を維持するようになっている。
【0021】
また、補助ラグ15は、スポーク11に取付けられる取付部材と別々に構成され、取付部材16に対して着脱自在に装着されるので、畦越え時の傾斜や土質などに応じて適切な形状の補助ラグ15に交換することも可能となっている。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ハブ10から放射方向に延出して車輪部12を支持する複数のスポーク11と、車輪部12の側部に側面視傾斜状に突設される複数の羽根ラグ13とを備える乗用型田植機用の後輪6に取付けて使用される補助ラグ装置14であって、側面視で羽根ラグ13の内側に並列状に配置される補助ラグ15と、該補助ラグ15をスポーク11に取付けるための取付部材16とを備え、該取付部材16は、スポーク11に取付けられるスポーク取付部16aと、補助ラグ15を着脱自在に装着可能な補助ラグ装着部16bとを有し、該補助ラグ装着部16bは、側面視で羽根ラグ13と直交するように傾斜状に配置される回動支軸17を介して補助ラグ15を支持し、該補助ラグ15を、羽根ラグ13に沿う回動に基づいて、車輪部12よりも外側方に突出する使用姿勢と、車輪部12の内側に収納される収納姿勢とに変姿可能としたので、補助ラグ15が羽根ラグ13に干渉する惧れがなく、その結果、様々な種類の後輪6に取付けて使用できるだけでなく、補助ラグ15の大きさを任意に設定することができる。しかも、補助ラグ15は、スポーク11に取付けられる取付部材16と別々に構成され、取付部材16に対して着脱自在に装着されるので、畦越え時の傾斜や土質などに応じて適切な形状の補助ラグ15に交換できるという利点もある。
【符号の説明】
【0023】
1 走行機体
6 後輪
10 ハブ
11 スポーク
12 車輪部
13 羽根ラグ
14 補助ラグ装置
15 補助ラグ
16 取付部材
16a スポーク取付部
16b 補助ラグ装着部
17 回動支軸
19 ブラケット
19b 軸支片
19c 軸支孔
20 固定板
21 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブから放射方向に延出して車輪部を支持する複数のスポークと、車輪部の側部に側面視傾斜状に突設される複数の羽根ラグとを備える乗用型田植機用の後輪に取付けて使用される補助ラグ装置であって、
側面視で羽根ラグの内側に並列状に配置される補助ラグと、該補助ラグをスポークに取付けるための取付部材とを備え、該取付部材は、スポークに取付けられるスポーク取付部と、補助ラグを着脱自在に装着可能な補助ラグ装着部とを有し、該補助ラグ装着部は、側面視で羽根ラグと直交するように傾斜状に配置される回動支軸を介して補助ラグを支持し、該補助ラグを、羽根ラグに沿う回動に基づいて、車輪部よりも外側方に突出する使用姿勢と、車輪部の内側に収納される収納姿勢とに変姿可能としたことを特徴とする補助ラグ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−168068(P2011−168068A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30833(P2010−30833)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)