説明

補強ファンブレードシム

本発明は、ターボジェットのファンブレード根元と、この根元が収容されるコンパートメントの底部との間に挿入されるように構成されるシムに関するものであり、コンパートメントは、ファンディスクによって画定され、このシムは、エラストマー材料で作られる少なくとも1つの外部要素を備える金属スティフナ(124)を有し、この外部要素の支持面(134)を備える。
本発明によれば、支持面(134)は、少なくとも1つの波形ゾーン(136)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に航空機用のターボジェットファンの分野、より詳細には、ファンブレードの根元とファンディスクによって画定されるコンパートメントの底部との間に挿入されるように構成されるシムに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなターボジェットファンの分解図が、図1に示されている。これは、全体的に、ファン軸4上に芯出しされるディスク2を備え、その上に周方向に間隔を置いて配置される歯6が、ディスクの周縁に形成され、各歯は、ほぼ長手方向および半径方向に延在し、軸4にほぼ平行である。周方向の2つの連続した歯6は、ファンブレード10の根元12を保持するそれらの間にコンパートメント8を画定する。各歯は、知られている方法で、半径方向外側方向にブレードを保持するように幅広ヘッドを有する。換言すれば、コンパートメント8は、ブレードの根元12よりも小さな部分を有する、ブレード10のステムが通過できる狭くされた外側半径方向端部を有する。したがって、結果として得られる組立体は、ダブテールまたは「モミの木状取付け」タイプの組立体である。
【0003】
さらに、ファン1は、各ブレード10と組み合わされ、かつブレード根元12の下端部と当該ブレードと組み合わされたコンパートメントの底部8aとの間に挿入されるシム20を備えている。
【0004】
図2でよりよく見ることができるように、シム20は、半径方向内側方向にブレード10を阻止し、また、根元12の接触面を歯6のエネルギー端と接触させるのに関与する。さらに、図1で見ることができるように、シム20は、その組み合わされたブレード用の軸方向保持ストッパ22を備え、このストッパ22は、ディスク2によって担持され、かつ軸4上に芯出しされる保持リング(図示せず)と接触して担持するように構成される。
【0005】
シム20は、従来、エラストマー材料で作られる1つまたはいくつかの外部要素26がその周りに配置される金属スティフナ24を備え、したがって、この要素26は、コンパートメントの底部8aおよびブレードの根元12の半径方向内部端と接触している。知られている方法では、各要素26は、金属スティフナの上に射出成形することによって作られ、この金属スティフナは、チタンで作られることが好ましい。使用される射出方法によるインサート成形は、スティフナ24に設けられる支持面の上にエラストマー材料で作られる外部要素26を接合する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この技術的解決策は、ターボジェットで非常に広範に使用されるが、これは、外部要素26の分離(層間剥離)の問題を生じる場合がある。この問題は、エンジンの取付け中に、および/またはシムを挿入するのに必要な取扱い作業中に、シム20が、根元12とコンパートメントの底部8aとの間に挿入されるときに、本質的に生じる。図1に概略的に示されるように、シムは、その長手方向30に沿ってシムを摺動させることによって専用スペースの中に挿入され、この長手方向30は、通常、僅かに湾曲されることに留意されたい。
【0007】
このタイプの剥ぎ取りが生じると、このシムに組み合わされたブレードの保持特性は、もはや満足されない場合がある。さらに、シムはまた、ブレード内で振動を低減させる機能も果たすので、シムの劣化は、運転中にこのファンブレードに生じる振動の減衰の低減をもたらす。
【0008】
したがって、本発明の目的は、先行技術による実施形態に関係のある、上述された欠点を少なくとも部分的に克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これを実現するために、本発明の目的は、請求項1または2によるスキンにある。
【0010】
シムは、長手方向に沿って延在するストリップの形をとり、波形ゾーンは、この同じ方向に沿って互いに後に続く複数の波部を備えることが好ましい。このように配置された波部は、シムが、ブレード根元とコンパートメントの底部との間に挿入される場合に、エラストマー材料で作られる外部要素の層間剥離に対するより良好な抵抗力になる。次いで、これらの波部は、スティフナと長手方向に沿ったシムの外部要素との間の相対変位に対する直接障害物を形成し、該長手方向は、通常、シムがブレードの下でその専用スペースの中に挿入される方向に対応する。
【0011】
エラストマー材料で作られる外部要素は、好ましくは高圧射出によって金属スティフナの上に成形されるインサートであることが好ましい。
【0012】
金属スティフナは、チタンで作られることが好ましい。
【0013】
本発明の他の目的は、複数のファンブレードと、その周縁の周りに複数のコンパートメントを画定するディスクとを備えるターボジェットファンであり、各ファンブレードの根元は、コンパートメントのうちの1つに収容され、上で説明したようなシムは、コンパートメントの底部と前記根元との間に挿入される。
【0014】
各シムは、その組み合わされたファンブレードの根元に沿って移動することが好ましい。
【0015】
各シムは、その組み合わされたファンブレード用の軸方向の保持ストッパを有することが好ましい。
【0016】
最後に、本発明の他の目的は、上で説明したようなファンを備える航空機ターボジェットである。
【0017】
本発明の他の利点および特徴は、下で与えられる非限定的な詳細な説明において明らかになるであろう。この説明は、添付の図面について行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】既に説明した、先行技術により知られている構成による航空機用のターボジェットファンの一部の分解斜視図である。
【図2】やはり先に説明した、図1に示されるファンの一部断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるターボジェットファン用のシムの斜視図である。
【図4】図3の斜視図と同様な図を示し、金属スティフナおよびその外部要素の支持面だけを示すために、エラストマー材料で作られる外部要素が取り外されている図である。
【図4a】シムの長手方向を含み、かつ金属スティフナによって形成される支持面の波形ゾーンを示す、図4aの平面Pによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、図3は、本発明の好ましい実施形態によって作られるシム120を示している。また、図1および図2に示される先行技術によるシム20の形状と事実上同一または類似の外形を有するこのシムは、湾曲した形状からなる長手方向130に沿って延在する全体としてストリップの形状であり、この長手方向130は、その組み合わされたブレードの根元12およびコンパートメントの底部8aが同様に延在する方向に対応している。したがって、シム120は、常にブレードを保持する目的のために、およびブレードの振動を減衰させるために、図1に示されるブレード10とコンパートメント8の底部8aとの間に挿入されることを理解すべきである。
【0020】
図3は、好ましくはチタンで作られる金属スティフナ124には、このスティフナの外側表面を部分的に覆うエラストマー材料で作られる外部要素126が装着されることを示している。換言すれば、スティフナ124にエラストマー材料を高圧射出成形することによって作られる外部要素126は、このスティフナの外側表面の一部を自由にしておく。
【0021】
図4は、その外部要素126によってまだ覆われていない状態の同じスティフナ124を示している。これにより、この外部要素の支持面134が図4および図4aにおいて目で見えるようになり、これは、支持面134が、いくつかの波形ゾーン136を有することを示している。各波形ゾーン136は、その間に丸みのある谷間142が形成される、一連の波部140により実際に形成される。したがって、エラストマー材料の射出成形中に、エラストマー材料は、谷間142の中に貫入し、これは、スティフナ124への要素126の接合領域を増大させ、かつ外部要素の谷間にスティフナの波部の複数の機械的な噛み合いを生じ、逆もまた同様であるという二重の意義を有する。
【0022】
この点で、要素126の層間剥離という危険をさらに低減するために、各波形ゾーン136の波部140は、シム120がディスク2に対して通常移動し得る長手方向130に沿って次々と、ブレード根元12とコンパートメントの底部8aとの間に挿入されるべきであることが計画されている。図4に示されるように、2つの波形ゾーン136が設けられ、かつ反対の方向に方向付けられ、1つは、完成したシムの外表面の一部を形成するスティフナ124の部分によって、1つまたはいくつかの位置でおそらく中断される。いったんシムが、そのコンパートメントの適切な位置に設置されると、波部140は、それらの振幅の方向に、ファンディスク2の周方向に沿って延在する。
【0023】
さらに、2つの波形ゾーン136は、半径方向外側ゾーン146および半径方向内側ゾーン(図4では見えない)によって互いに接続され、これらの2つのゾーンは、平坦であり、方向130に平行であることが好ましい。また、これらは、いったん射出成形が完了すると、エラストマー材料126で作られる要素が接合する支持面134の一体部分を形成する。
【0024】
明らかに、本明細書において示されるシム120は、図1のシム20について示されるストッパ22と同じ幾何形状からなる、その組み合わされたファンブレード用の軸方向の保持ストッパ122をやはり有する。
【0025】
明らかに、当業者は、単に非限定的な例を通して説明されたばかりのように、本発明のさまざまな改変を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボジェットのファンブレードの根元(12)と前記根元が収容されるコンパートメント(8)の底部(8a)との間に挿入されるように構成されるシム(120)であり、前記コンパートメントが、ファンディスク(2)によって画定され、前記シムが、エラストマー材料で作られる少なくとも1つの外部要素(126)を備える金属スティフナ(124)を有し、前記金属スティフナが、エラストマー材料で作られる前記外部要素の支持面(134)を有する、シムであって、
前記支持面(134)が、少なくとも1つの波形ゾーン(136)を備えることを特徴とする、シム。
【請求項2】
前記支持面(134)が、反対の方向に方向付けられる2つの波形ゾーン(136)を有することを特徴とする、請求項1に記載のシム。
【請求項3】
前記シムが、長手方向(130)に沿って延在するストリップの形をとり、前記波形ゾーンが、前記長手方向(130)に沿って互いに後に続く複数の波部(140)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のシム。
【請求項4】
前記外部要素(126)が、金属スティフナ(124)の上に成形されたインサートであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシム。
【請求項5】
金属スティフナ(124)が、チタンで作られることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシム。
【請求項6】
複数のファンブレード(10)と、周縁の周りに複数のコンパートメント(8)を画定するディスク(2)とを備えるターボジェットファン(1)であり、各ファンブレード(10)の根元(12)が、コンパートメント(8)のうちの1つに収容され、請求項1から5のいずれか一項に記載のシム(120)が、前記コンパートメントの底部(8a)と前記根元(12)との間に挿入される、ターボジェットファン(1)。
【請求項7】
各シム(120)が、組み合わされたファンブレード(10)の根元(12)に沿って移動することを特徴とする、請求項6に記載のファン。
【請求項8】
各シム(120)が、組み合わされたファンブレード(10)用の軸方向の保持ストッパ(122)を有することを特徴とする、請求項6または7に記載のファン。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載のファン(1)を備える、航空機ターボジェット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【公表番号】特表2012−525530(P2012−525530A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507727(P2012−507727)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055689
【国際公開番号】WO2010/125089
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】