説明

補正部材およびディスク装置

【課題】容易に装着できるとともに、衝撃に対して十分な剛性を保持することが可能な補正部材を提供する。
【解決手段】本発明の補正部材160は、ディスク装置100の回転機構に設けられ、回転体の回転バランスを補正する。かかる補正部材160は、弾性を有する複数の挟持部164、165を備え、挟持部164、165が押圧されたとき、補正部材160の大きさは回転機構に形成された補正部材160が挿入される挿入孔170の内部空間より小さくなり、挿入孔170に挿入された状態で挟持部164、165への押圧を開放したとき、補正部160材は挿入孔170の内周面を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置において回転体の回転バランスを補正する補正部材およびこれを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置や光ディスク装置等のように回転するディスク媒体を備えるディスク装置において、ディスク媒体の回転バランスが崩れると、振動や騒音が発生し、ディスク装置の正常な動作に影響を与える。ディスク媒体の回転バランスは、例えばディスク媒体を回転させる回転機構を構成する各部材の製作誤差や組み立て公差等によって崩れてしまう。そこで、ディスク媒体の回転バランスを補正する補正部材を当該回転機構に設ける技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、クランプの軸周りに形成された複数の開口部にラバー等の弾性部材で形成された補正部材が圧入され装着された磁気ディスク装置が開示されている。特許文献1に記載の磁気ディスク装置には、補正部材として、図23および図24に示すように、中心に貫通孔16が形成された筒状の釣り合い錘10がモータハブ20の開口部24およびクランプ30の開口部34に挿入されている。釣り合い錘10の本体部12の周面には凸部14が形成されている。このため、釣り合い錘10は、磁気ディスク装置に装着されると、第1の本体部12aは開口部34に収容され、第2の本体部12bは開口部24に収容され、凸部14はクランプ30とモータハブ20との間に係合する。
【0004】
このように、釣り合い錘10を圧入する構成としたことで、装着された状態における釣り合い錘10のガタつきが防止される。また、凸部14がクランプ30とモータハブ20との間に入り込んでいるため、高速回転時に釣り合い錘10が外れるのを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3987524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の釣り合い錘は弾性部材からなるため、製造精度上、高精度に部材を形成することが困難であり、衝撃耐性のばらつきが大きいという問題があった。また、衝撃に対するマージンを考慮する必要があるため、釣り合い錘をクランプの開口部の径より大きくしなければならず、大きな力で圧入しなければ装着できないという問題もある。さらに、装着された釣り合い錘は確実に開口部に固定される反面、開口部から取り出し難いという問題もある。
【0007】
また、補正部材の他の形状として、例えば図25および図26に示すような補正部材40が考えられる。補正部材40は、クランプ30の開口部34の内周面に向かって放射状に突出する6つの突起部41を備えており、図26に示すようにクランプ30の開口部34に装着される。このような形状の場合、衝撃に対する強度が弱く、また、クランプ30の開口部34にのみ装着されているため体積(すなわち、質量)も小さくなり、補正部材40によって補正可能なバランス量が小さくなる。このため、1つのディスク装置に対して補正部材40を複数個設けなければならないこともある。
【0008】
図25に示す補正部材40において、補正部材40の体積を増加させるための一方法として、クランプ30の開口部34の径を大きくすることも考えられる。しかし、クランプ30の開口部34の径を大きくすると、クランプ30の剛性が低下するという問題もある。クランプ30の剛性が低下すると、ディスクを保持する力が低下して衝撃等の耐性が悪化する。このため、クランプ30の開口部34の径を大きくする場合には、ディスクを保持する力を低下させないようにクランプ30のたわみ量を大きくする等の対応が必要であるが、そのためにはクランプ30をガイドする部材に制約が出てくるという問題が生じてくる。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、容易に装着できるとともに、衝撃に対して十分な剛性を保持することが可能な、新規かつ改良された補正部材およびこれを備えるディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、ディスク装置の回転機構に設けられ、回転体の回転バランスを補正する補正部材が提供される。かかる補正部材は、弾性を有する複数の挟持部を備え、挟持部が押圧されたとき、補正部材の大きさは回転機構に形成された補正部材が挿入される挿入孔の内部空間より小さくなり、挿入孔に挿入された状態で挟持部への押圧を開放したとき、補正部材は挿入孔の内周面を押圧することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、弾性のある補正部材において、複数の挟持部を押圧したり、押圧を開放したりすることによって、補正部材を変形させる。補正部材を取り付けるときには挟持部を押圧して補正部材を圧縮し、挿入孔に補正部材が接触しないように挿入することができる。また、挿入孔に補正部材を挿入した後は、補正部材の弾性によって挿入孔の内周面が押圧されるので、補正部材が挿入孔内に確実に固定される。
【0012】
また、補正部材は、挿入孔に挿入されたときに当該挿入孔の内周面を押圧する力ベクトルの和がゼロとなる形状に形成することができる。力ベクトルの和がゼロとなることにより、補正部材が安定して挿入孔の内周面を保持して、挿入孔の内周面をバランスよく押圧することができる。
【0013】
さらに、補正部材は、挿入孔に挿入されたとき、当該挿入孔の中心を通る所定の径方向の直線に対して対称となる形状を有するようにしてもよい。これにより、補正部材が挿入孔の内周面をバランスよく押圧することができる。
【0014】
補正部材は、挿入孔に挿入される挿入部と、挿入部の一側に設けられ、挿入孔を挿入孔に挿入したときに回転機構の一部と当接する翼部と、からなるように形成することができる。これにより、翼部によって補正部材を挿入孔へ挿入するときの位置決めができ、正しい状態で容易に補正部材を挿入孔へ挿入することができる。
【0015】
挟持部には、当該挟持部を挟み込む方向に窪んだ窪みを形成してもよい。これにより、道具を用いて補正部材を挟み込み、保持する作業を容易に行うことができる。
【0016】
補正部材は、例えば金属から形成することができる。比較的密度の高い金属を用いることで、ディスクの回転バランスを補正するのに必要な重さを十分に確保することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、ディスク媒体と、ディスク媒体を回転させる回転機構と、回転機構を支持するベースと、ディスク媒体に対してデータを記録および/または再生するヘッドを回転移動させるアクチュエータと、を備えるディスク装置が提供される。ディスク装置の回転機構は、ディスク媒体の回転軸となるシャフトと、略円盤状の部材であって、中心部に形成されたハブ貫通孔の内周面が当該ハブ貫通孔に挿通されたシャフト媒体の外周面に締結されるとともに、外周部に載置されたディスク媒体を支持するハブと、略円盤状の部材であって、中心部に形成されたクランプ貫通孔にシャフトを挿通させてハブに支持されたディスク媒体をハブに向かって押圧するクランプと、シャフトの中心部に形成された挿入孔に螺合され、クランプを固定するスクリューと、ハブおよびクランプを貫通する補正部材挿入孔に挿入され、回転体の回転バランスを補正する補正部材と、有する。そして、補正部材は、弾性を有する複数の挟持部を備え、挟持部が押圧されたとき、補正部材の大きさは補正部材挿入孔の内部空間より小さくなり、補正部材挿入孔に挿入された状態で挟持部への押圧を開放したとき、補正部材は補正部材挿入孔の内周面を押圧する。
【0018】
クランプには、補正部材挿入孔が形成された周方向に沿って、ハブ側に窪んだクランプ溝を形成してもよい。これにより、挿入孔に挿入された補正部材が挿入孔から突出するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、容易に装着できるとともに、衝撃に対して十分な剛性を保持することが可能な補正部材およびこれを備えるディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るディスク装置の構成を示す部分断面図である。
【図2】同実施形態に係るディスク装置のディスクおよびクランプを示す斜視図である。
【図3】同実施形態に係る補正部材が装着された状態のクランプを示す平面図である。
【図4】同実施形態に係る補正部材の構成を示す斜視図である、
【図5】図4に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図6】図4に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材が挿入孔に作用する力を示している。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る補正部材の構成を示す斜視図である。
【図8】図7に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図9】図7に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材が挿入孔に作用する力を示している。
【図10】同実施形態に係る補正部材の変形例を示す斜視図である。
【図11】図10に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る補正部材の構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分斜視図である。
【図14】図12に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図15】図12に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材が挿入孔に作用する力を示している。
【図16】クランプ溝を有するトップクランプの一例を示す斜視図である。
【図17】同実施形態に係る補正部材を、クランプ溝のないトップクランプの挿入孔に挿入した場合と、クランプ溝が形成されたトップクランプの挿入孔に挿入した場合とを示す部分端面図である。
【図18】同実施形態に係る補正部材の変形例を示す斜視図である。
【図19】図18に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図20】本発明の第4の実施形態に係る補正部材の構成を示す斜視図である。
【図21】図20に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材のつかみ方を示している。
【図22】図20に示す補正部材を補正部材挿入孔に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材が挿入孔に作用する力を示している。
【図23】従来の補正部材の形状を示す斜視図である。
【図24】図23の補正部材の装着状態を示す部分断面図である。
【図25】従来の補正部材の他の形状を示す斜視図である。
【図26】図25の補正部材の装着状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.第1の実施形態>
[1−1.ディスク装置の構成]
まず、図1〜図3に基づいて、本発明の第1の実施形態に係るディスク装置100の概略構成について説明する。なお、図1は、本実施形態に係るディスク装置100の構成を示す部分断面図である。図2は、本実施形態に係るディスク装置100のディスク102、104およびクランプ130を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る補正部材160が装着された状態のクランプ130を示す平面図である。以下では、z軸正方向をディスク装置100の上面側として説明する。
【0023】
本実施形態では、ディスク装置の一例として、ハードディスクドライブ等の磁気ディスク装置について説明する(説明においては、単に「ディスク装置」ともいう。)。なお、本発明のディスク装置はかかる例に限定されず、例えば光ディスク装置等も含まれる。本実施形態に係るディスク装置100は、ディスク102、104と、ディスク102、104を回転させる回転機構と、回転機構を支持するベース110と、ディスク102、104に対してデータを記録および/または再生するヘッド(図示せず。)を回転移動させるアクチュエータ(図示せず。)とを備える。ディスク装置100の回転機構は、図1に示すように、モータハブ120と、トップクランプ130と、シャフト140と、クランプスクリュー150と、補正部材160とを備える。
【0024】
ディスク装置100の筐体(図示せず。)上に設けられたベース110には情報を記憶するディスク102、104の回転軸となるシャフト140が設けられている。シャフト140には、モータハブ120およびトップクランプ130を固定するためのクランプスクリュー150が螺合されるスクリュー孔142が、ベース110と反対側の端部(上端部)に形成されている。また、トップクランプ130の固定部位はシャフト140に限らず、モータハブ120でもよく、固定方法もクランプスクリュー150によるねじ固定に限らず、その他の固定方法でもよい。
【0025】
モータハブ120は、ディスク102、104を外周部で支持する部材であって、モータハブ120の中心部に形成されたモータハブ貫通孔122にシャフト140を挿通させて、シャフト140の上端部側に設けられる。なお、ディスク102は、モータハブ120の外周部に内周部が載置されるように設けられ、ディスク104は、ディスク102の内周部上に設けられたスペーサ105上にその内周部が載置されるように設けられる。このようにして、ディスク102、104はモータハブ120に支持される。なお、本実施形態に係るディスク装置100は、ディスク媒体として2つのディスク102、104を有しているが、本発明はかかる例に限定されず、ディスク媒体の数は1つでもよく複数であってもよい。
【0026】
トップクランプ130は、モータハブ120に支持されたディスク102、104を固定するための部材である。トップクランプ130は、図1に示すように、その外周部でディスク104の内周部をモータハブ120側へ押圧する。トップクランプ130の中心部には、クランプスクリュー150を挿通させるためのクランプ貫通孔132が形成されている。クランプスクリュー150は、クランプ貫通孔132を介して、シャフト140の回転中心に形成されたスクリュー孔142に螺合される。これにより、クランプスクリュー150のフランジ部でトップクランプ130のクランプ貫通孔132周りの上面部分が押圧され、ディスク102、104がモータハブ120およびトップクランプ130により挟持される。
【0027】
本実施形態に係るディスク装置100のトップクランプ130およびモータハブ120には、ディスク102、104の回転バランスを補正する補正部材160が挿入される挿入孔134、124が1または複数形成されている。モータハブ120の挿入孔124とトップクランプ130の挿入孔134とはz方向に対向するように形成され、一対の挿入孔124、134により1つの補正部材挿入孔170(以下、単に「挿入孔170」ともいう。)が形成される。補正部材160は、挿入孔170の内部空間を満たすように設けられる。
【0028】
本実施形態のディスク装置100には、図2に示すように、例えば4つの挿入孔170がディスク102、104の周方向に略等間隔に形成される。なお、補正部材挿入孔170の数は、かかる例に限定されず、1または複数形成することができる。これらの挿入孔170には、回転バランスの補正の程度に応じて、1または複数の補正部材160が装着される。挿入孔170に1つの補正部材160が装着された状態の一例を、図3に示す。なお、補正部材160は、挿入孔170のトップクランプ130側の開口部から補正部材160が大きくはみ出さないように設けるのがよい。トップクランプ130のz軸正方向側には、ディスク102、104を覆うベースカバー(図17の符号101)が設けられている。ベースカバーと回転体との隙間が狭いため、補正部材160がトップクランプ130の開口部から大きくはみ出してしまうと、補正部材160がベースカバーと接触、若しくは風の影響で脱落する可能性があるためである。
【0029】
本実施形態に係る補正部材160は、補正部材挿入孔170に装着し易く、かつ、衝撃に対しても十分に耐え得るように構成されている。以下、図4〜図6に基づいて、本実施形態に係る補正部材160の構成とその作用について、詳細に説明する。なお、図4は、本実施形態に係る補正部材160の構成を示す斜視図である。図5は、図4に示す補正部材160を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材160のつかみ方を示している。図6は、図4に示す補正部材160を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材160が挿入孔170に作用する力を示している。なお、図5、図6では、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0030】
[1−2.補正部材の構成とその作用]
本実施形態に係る補正部材160は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料を変形して形成された、弾性力を有する部材である。一般に、金属の密度はゴムの密度よりも大きいため(例えばステンレス鋼の密度:約7.8g/cm、ゴムの密度:約2〜3g/cm)、省スペースでありながら回転バランスの補正に必要な重さを十分に確保することが可能である。金属材料として、本実施形態ではステンレス鋼を用いた場合について説明するが、本発明はかかる例に限定されない。なお、補正部材160の材料は、トップクランプ130と同一材料とするのがよい。
【0031】
補正部材160にゴム材料を使用しないため、低アウトガス特性があり、ディスク装置100を構成する部品が汚染したり損傷したりする可能性を低下させることができる。また、金属は温度依存性も低いので、補正部材160を金属材料から形成することで、温度変化があっても部材の大きさの変化はほとんどない。したがって、補正部材160は、挿入孔170に挿入された後は温度に関係なく確実に挿入孔170内に固定され、補正部材160が挿入孔170から抜け出る可能性も低下する。さらに、補正部材160に金属材料を用いることで加工が容易となる。ゴム材料を用いた場合は高い精度が要求されるが、製造の問題として高精度での加工が困難である一方、金属材料では比較的容易に高精度加工を行うことができる。なお、補正部材160の精度はゴム材料を使用した他の実施例の場合と比較しても、高い精度は必要ではない。
【0032】
補正部材160は、例えば金属板をプレス加工することにより形成することができる。図4に示す補正部材160は、金属板の中央付近を円弧状に曲げた円弧部161と、円弧部161両端を円弧部161内へ入り込むように屈曲させた第1の屈曲部162および第2の屈曲部163と、第1の屈曲部162および第2の屈曲部163より先端部分を円弧部161内でさらに屈曲して形成された一対の挟持部164、165とからなる。補正部材160は、一対の挟持部164、165を近接させると円弧部161の両端が挟持部164、165により引っ張られて補正部材160の中心に向かって撓み、近接させた一対の挟持部164、165を離隔させると円弧部161の撓みが開放される。このように金属板を円弧状に曲げて形成された補正部材160は、弾性部材として機能することができる。
【0033】
一対の挟持部164、165は、補正部材160を挿入孔170に挿入する際に、補正部材160を保持するとともに挿入孔170に挿入し易くするために形成される。挿入孔170に対する補正部材160の出し入れは、例えばピンセット等の道具を用いて行うことができる。本実施形態に係る補正部材160は、図5に示すように、一対の挟持部164、165にピンセット等の道具の先端部分P1、P2を入れて挟むことにより挟持部164、165が近接し、補正部材160のサイズが挿入孔170の空間サイズより小さくなる。このように補正部材160を変形させることで、挿入孔170の内周面に接触させずに補正部材160を挿入孔170に挿入することができる。
【0034】
挟持部164、165を近接させて変形された状態で補正部材160を挿入孔170に挿入した後、ピンセットを挟持部164、165から離すと、補正部材160の弾性により、図6に示すように挟持部164、165が互いに離隔する方向に移動する。そして、円弧部161が挿入孔170の内周面に接し、挿入孔170の内周面を半径方向外側へ押圧する。ここで、補正部材160は、挿入孔170に挿入された際、挿入孔170の中心を通る所定の径方向に対して対称となるように、挿入孔170の内周面を押圧する。このように補正部材160が挿入孔170の内周面を押圧することで、補正部材160が挿入孔170の内周面を押圧する力のベクトルを足し合わせるとゼロとなる。これにより、挿入孔170に対する補正部材160の押圧力が挿入孔170の径方向にバランス良く加わり、補正部材160は安定して挿入孔170の内周面を保持する。これにより、補正部材160が挿入孔170から抜け出るのを防止することができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る補正部材160は、挿入孔170に対して圧入されるのではなく、円弧部161が挿入孔170の内周面に接触しないように挿入される。これにより、補正部材160を挿入孔170に挿入し易く、補正部材160と挿入孔170とが接触する際に発生するコンタミネーションの発生を抑制できる。また、挟持部164、165を形成することで、ピンセット等の道具で補正部材160を挿入孔170に容易に挿入することができる。
【0036】
以上、本発明の第1の実施形態に係るディスク装置100の補正部材160の構成とその作用について説明した。本実施形態の補正部材160は、金属板を屈曲して形成された弾性部材であり、その弾性を利用して、挿入孔170への取り付けおよび取り外しを容易にしている。これにより、作業効率を高めることができる。また、補正部材160の取り付けおよび取り外しの際に、補正部材160が挿入孔170の内周面に接触しないので、コンタミネーションの発生を抑制することができる。また、補正部材160が挿入孔170に挿入されたときには、補正部材160の有する弾性力により、補正部材160は挿入孔170の内周面を安定して保持し、バランスよく押圧する。したがって、挿入孔170に挿入された補正部材160は、挿入孔170内に確実に固定され、挿入孔170から脱落し難くなる。
【0037】
さらに、密度の高い金属材料を用いることで、補正部材160が挿入孔170の空間体積を占める割合が少なくても、ディスク102、104の回転バランスを補正するのに必要な重さを十分に確保することができる。また、補正部材160に金属材料を用いることで加工が容易となり、部材の性能を安定させることができる。
【0038】
<2.第2の実施形態>
次に、図7〜図11に基づいて、本発明の第2の実施形態に係るディスク装置の補正部材の構成とその作用について説明する。本実施形態に係る補正部材は、図1〜図3に示した第1の実施形態のディスク装置100に設けることができ、補正部材160と同様にディスクの回転バランスを補正する。このため、ディスク装置についての説明は省略し、以下では、本実施形態に係る補正部材の構成とその作用について詳細に説明する。
【0039】
[2−1.補正部材の基本構成]
まず、図7〜図9に基づいて、本実施形態に係る補正部材260の基本構成について説明する。なお、図7は、本実施形態に係る補正部材260の構成を示す斜視図である。図8は、図7に示す補正部材260を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材260のつかみ方を示している。図9は、図7に示す補正部材260を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材260が挿入孔170に作用する力を示している。なお、図8、図9では、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0040】
本実施形態に係る補正部材260も、第1の実施形態に係る補正部材160と同様、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料を変形して形成された、弾性力を有する部材である。したがって、ゴム材料を用いる場合と比較して、省スペースでありながら回転バランスの補正に必要な重さを十分に確保することが可能であり、低アウトガス特性があり、また、温度依存性も低く、温度変化があっても部材の大きさはほとんど変化しないので挿入孔170に挿入された後は温度に関係なく確実に挿入孔170内に固定させることができる。さらに、補正部材260に金属材料を用いることで加工が容易となる。ゴム材料を用いた場合は高い精度が要求されるが、製造の問題として高精度での加工が困難である一方、金属材料では比較的容易に高精度加工を行うことができる。なお、補正部材260の精度はゴム材料を使用した他の実施例の場合と比較しても、高い精度は必要ではない。
【0041】
図7に示す補正部材260は、金属板を3箇所(第1の屈曲部261、第2の屈曲部262、第3の屈曲部263)で屈曲して形成された、W形状の部材である。補正部材260のうち、第2の屈曲部262から金属板の一端までの部分(湾曲部264)、および第3の屈曲部263から金属板の他端までの部分(湾曲部265)は、挿入孔170の内周面に沿うように湾曲している。これにより、挿入孔170に挿入されたときに補正部材260が挿入孔170の内周面に接触する部分が増加し、補正部材260が挿入孔170の内周面を安定して押圧するようになる。
【0042】
第1の屈曲部261から第2の屈曲部262および第3の屈曲部263までのV形状部分により、補正部材260の第2の屈曲部262と第3の屈曲部263とを近接させたり離隔させたりすることができる。具体的には、第2の屈曲部262の内側部分と第3の屈曲部263の内側部分とを、一対の挟持部266、267として機能させる。補正部材260は、一対の挟持部266、267を近接させると湾曲部264、265が補正部材260の中心に向かって引っ張られて圧縮される。一方、近接させた一対の挟持部266、267を離隔させると、湾曲部264、265は補正部材260の中心から離れ、補正部材260の圧縮が開放される。このように金属板を屈曲して形成された補正部材260は、弾性部材として機能することができる。
【0043】
一対の挟持部266、267は、補正部材260を挿入孔170に挿入する際に、補正部材260を保持するとともに挿入孔170に挿入し易くするために形成される。挿入孔170に対する補正部材260の出し入れは、第1の実施形態と同様、例えばピンセット等の道具を用いて行うことができる。本実施形態に係る補正部材260は、図8に示すように、一対の挟持部266、267にピンセット等の道具の先端部分P1、P2を入れて挟むことにより挟持部266、267が近接し、補正部材260のサイズが挿入孔170の空間サイズより小さくなる。このように補正部材260を変形することで、挿入孔170の内周面に接触させずに補正部材260を挿入孔170に挿入することができる。
【0044】
挟持部266、267を近接させて変形された状態で補正部材260を挿入孔170に挿入した後、ピンセットを挟持部266、267から離すと、補正部材260の弾性により、図9に示すように挟持部266、267が互いに離隔する方向に移動する。そして、湾曲部264、265が挿入孔170の内周面に接し、挿入孔170の内周面を半径方向外側へ押圧する。ここで、補正部材260は、挿入孔170に挿入された際、挿入孔170の中心を通る所定の径方向の直線に対して対称となるように、挿入孔170の内周面を押圧する。これにより、挿入孔170に対する補正部材260の押圧力が挿入孔170の径方向にバランス良く加わり、補正部材260挿入孔170から抜け出るのを防止することができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る補正部材260は、挿入孔170に対して圧入されるのではなく、湾曲部264、265が挿入孔170の内周面に接触しないように挿入される。これにより、補正部材260を挿入孔170に挿入し易く、補正部材260と挿入孔170とが接触することで発生するコンタミネーションの発生を抑制できる。また、挟持部266、267を形成することで、ピンセット等の道具で補正部材260を挿入孔170に容易に挿入することができる。
【0046】
[2−2.変形例]
本実施形態に係る補正部材260の変形例を図10および図11に示す。図10は、本実施形態に係る補正部材260の変形例を示す斜視図である。図11は、図10に示す補正部材260Aを補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材260Aのつかみ方を示している。図10、図11においても、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0047】
図10および図11に示す補正部材260Aは、図7〜図9に示した本実施形態に係る補正部材260の挟持部266、267に、窪み268、269を設けたものである。窪み268、269は、挟持部266、267から互いに対向する方向に向かって窪んでいる。この窪み268、269は、補正部材260Aをピンセット等の道具でつかみ易くするために形成されており、道具の先端部分P1、P2を挟持部266、267に入れて挟んだ際、先端部分P1、P2が窪み268、269に入り込む。これにより、道具による補正部材260Aの扱いが容易となり、補正部材260Aを挿入孔170に対して出し入れし易くなる。
【0048】
以上、本発明の第2の実施形態に係る補正部材260とその作用について説明した。本実施形態の補正部材260は、金属板を屈曲して形成された弾性部材であり、その弾性を利用して、挿入孔170への取り付けおよび取り外しを容易にしている。これにより、作業効率を高めることができる。また、補正部材260の取り付けおよび取り外しの際に、補正部材260が挿入孔170の内周面に接触しないので、コンタミネーションの発生を抑制することができる。また、補正部材260が挿入孔170に挿入されたときには、補正部材260の有する弾性力により、補正部材260は挿入孔170の内周面をバランスよく押圧し、安定して挿入孔170の内周面を保持する。したがって、挿入孔170に挿入された補正部材260は、挿入孔170内に確実に固定され、挿入孔170から脱落し難くなる。
【0049】
さらに、密度の高い金属材料を用いることで、補正部材260が挿入孔170の空間体積を占める割合が少なくても、ディスク102、104の回転バランスを補正するのに必要な重さを十分に確保することができる。また、補正部材260に金属材料を用いることで加工が容易となり、部材の性能を安定させることができる。なお、本実施形態では、補正部材260、260Aは、金属板を3箇所屈曲させた形状としたが、本発明はかかる例に限定されず、さらに屈曲箇所を増やしてもよい。このとき、補正部材260、260Aは、挿入孔170の中心を通る所定の径方向の直線に対して対称となるように形成される。
【0050】
<3.第3の実施形態>
次に、図12〜図19に基づいて、本発明の第3の実施形態に係るディスク装置の補正部材の構成とその作用について説明する。本実施形態に係る補正部材は、図1〜図3に示した第1の実施形態のディスク装置100に設けることができ、補正部材160と同様にディスクの回転バランスを補正する。そこで、以下においても、ディスク装置についての説明は省略し、本実施形態に係る補正部材の構成とその作用について詳細に説明する。
【0051】
[3−1.補正部材の基本構成]
まず、図12〜図15に基づいて、本実施形態に係る補正部材360の基本構成について説明する。なお、図12は、本実施形態に係る補正部材360の構成を示す斜視図である。図13は、図12に示す補正部材360を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分斜視図である。図14は、図12に示す補正部材360を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材360のつかみ方を示している。図15は、図12に示す補正部材360を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材360が挿入孔170に作用する力を示している。なお、図13〜図15では、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0052】
本実施形態に係る補正部材360も、第1の実施形態に係る補正部材160と同様、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料を変形して形成された、弾性力を有する部材である。したがって、ゴム材料を用いる場合と比較して、省スペースでありながら回転バランスの補正に必要な重さを十分に確保することが可能であり、低アウトガス特性があり、また、温度依存性も低く、温度変化があっても部材の大きさはほとんど変化しないので挿入孔170に挿入された後は温度が変化しても補正部材360は挿入孔170に固定される。さらに、補正部材360に金属材料を用いることで加工が容易となる。ゴム材料を用いた場合は高い精度が要求されるが、製造の問題として高精度での加工が困難である一方、金属材料では比較的容易に高精度加工を行うことができる。なお、補正部材360の精度はゴム材料を使用した他の実施例の場合と比較しても、高い精度は必要ではない。
【0053】
図12に示す補正部材360は、所定の形状に切り出された1枚の金属板からなり、当該金属板を屈曲部361で屈曲してV形状に形成された挿入部360aと、挿入部360aの挿入孔170への出し入れ方向の一側に設けられた翼部360bとからなる。トップクランプ130への取り付けたとき、補正部材360の挿入部360aは挿入孔170内部に位置し、翼部360bは挿入孔170の挿入口側に位置する。
【0054】
挿入部360aは、屈曲部361で屈曲されることによって弾性力を有するようになる。すなわち、V形状の挿入部360aを構成する平面部362、363の端部362a、363aを近接させたり離隔させたりすることにより、補正部材360は変形する。ピンセット等の道具の先端部分を、挿入部360aの平面部362、363の外面に当て挟み込むと、端部362a、363aが近接して補正部材360が圧縮される。一方、近接させた端部362a、363aを離隔させると、補正部材360の圧縮が開放される。このように金属板を屈曲して形成された補正部材360は、弾性部材として機能することができる。なお、端部362a、363aは、挿入孔170の内周面の形状に沿った形状にしてもよい。これにより、挿入孔170への挿入時に、補正部材360が挿入孔170の内周面と接触する際に面接触することで、接触圧力が集中することによる傷の発生、若しくはコンタミネーションの発生を防ぐことができ、かつ、安定して挿入孔170の内周面を押圧するようになる。
【0055】
翼部360bは、挿入部360aの出し入れ方向の一側に設けられた一対の部材であって、補正部材360をトップクランプ130に取り付けたときに、図13に示すようにその下面がトップクランプ130の上面に当接する。本実施形態に係る補正部材360の翼部360bは、平面部362、363の屈曲部361付近の外面から、平面部362、363から離隔するように延び、さらに屈曲部361と反対方向に向かって平面部362、363と略平行に延びる一対のプレート部364、365からなる。図14に示すように、平面部362とプレート部364との接続部分と、平面部363とプレート部365との接続部分とを一対の挟持部366、367とすることで、補正部材360を挿入孔170に挿入する際に保持し易くなり、挿入孔170に挿入し易くもなる。
【0056】
挿入孔170に対する補正部材360の出し入れは、第1の実施形態と同様、例えばピンセット等の道具を用いて行うことができる。本実施形態に係る補正部材360は、図14に示すように、一対の挟持部366、367にピンセット等の道具の先端部分P1、P2を入れて挟むことにより挟持部366、367が近接し、補正部材360の挿入部360aのサイズが挿入孔170の空間サイズより小さくなる。このように補正部材360を変形することで、挿入孔170の内周面に接触させずに補正部材360の挿入部360aを挿入孔170に挿入することができる。
【0057】
挟持部366、367を近接させて変形された状態で補正部材360の挿入部360aを挿入孔170に挿入した後、ピンセットを挟持部366、367から離すと、補正部材360の弾性により、図15に示すように挟持部366、367が互いに離隔する方向に移動する。そして、平面部362、363の端部362a、363aおよび屈曲部361が挿入孔170の内周面に接し、挿入孔170の内周面を半径方向外側へ押圧する。ここで、補正部材360は、挿入孔170に挿入された際、挿入孔170の中心を通る所定の径方向に対して対称となるように、挿入孔170の内周面を押圧する。これにより、挿入孔170に対する補正部材360の押圧力が挿入孔170の径方向にバランス良く加わり、補正部材360が安定して挿入孔170の内周面を保持するようになる。これにより、補正部材360が挿入孔170から抜け出るのを防止することができる。
【0058】
このように、本実施形態に係る補正部材360は、挿入孔170に対して圧入されるのではなく、挿入部360aが挿入孔170の内周面に接触しないように挿入される。これにより、補正部材360を挿入孔170に挿入し易く、補正部材360と挿入孔170とが接触することで発生するコンタミネーションの発生を抑制できる。また、挟持部366、367を形成することで、ピンセット等の道具で補正部材360を挿入孔170に容易に挿入することができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る補正部材360は、挿入部360aを挿入孔170へ挿入する際に、翼部360bをトップクランプ130に当接させるようにする。すなわち、翼部360bは、補正部材360挿入時の位置決め部として機能する。これにより、補正部材360を挿入孔170に対して傾きなく挿入することが容易にでき、ディスク102、104の回転時に挿入孔170から補正部材360が脱落するのを防止することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る補正部材360は、第1の実施形態に係る補正部材160および第2の実施形態に係る補正部材260と比較して、翼部360bを設けた分だけ補正部材360の重量を大きくすることができる。したがって、翼部360bの大きさを変化させることで、1つの補正部材360によって補正できる範囲が大きくなり、調整の幅を広げることができる。
【0061】
[3−2.クランプ溝を有するトップクランプ]
図12〜図15に示した補正部材360は、翼部360bを設けたため、図3に示したトップクランプ130に挿入されたときに、翼部360bがトップクランプ130の上面から突出する。このため、図17上図に示すように、クランプスクリュー150とディスク装置100のベースカバー101との間の距離に余裕がない場合には、補正部材360の翼部360bとベースカバー101とが接触してしまう可能性がある。補正部材360の翼部360bとベースカバー101とが接触すると、ディスク102、104が正常に回転できず、ディスク装置100の性能に悪影響を及ぼす。
【0062】
そこで、補正部材360の翼部360bとベースカバー101とが接触する可能性を低下させるため、図16に示すように、トップクランプ330にクランプ溝332を形成し、補正部材360を挿入孔170に挿入したときに翼部360bがベースカバー101側に突出しないようにすることもできる。図16に示すトップクランプ330は、図3に示したトップクランプ130と同様、中心部にクランプスクリュー150を挿通させるためのクランプ貫通孔132と、補正部材360が挿入される1または複数(図16では4つ)の挿入孔134が形成されている。挿入孔134は、ディスク102、104の周方向に略等間隔に形成されている。
【0063】
トップクランプ330には、挿入孔134が形成されている周に沿って、他の上面よりも窪んだクランプ溝332が形成されている。クランプ溝332の深さは、補正部材360の翼部360bの板厚や、ベースカバー101とトップクランプ330との距離等に応じて、挿入孔170に挿入された補正部材360がベースカバー101と接触しない程度とすることができる。すなわち、トップクランプ330にクランプ溝332を形成することで、図17下図に示すように、モータハブ120に接触しない程度に設けられたクランプ溝332に翼部360bが埋没し、補正部材360がベースカバー101と接触するリスクを低下させることができる。また、トップクランプ330にクランプ溝332を形成することにより、翼部360bのプレート部364、365の位置もクランプ溝332の周方向に沿って固定することができる。
【0064】
なお、本例では、クランプ溝332は、挿入孔134が形成されている周に沿って環状に形成されたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、挿入孔134が形成されている部分のみ段差を設け、補正部材360挿入時に翼部360bがトップクランプ330の上面から突出しないようにしてもよい。
【0065】
[3−3.変形例]
本実施形態に係る補正部材360の変形例を図18および図19に示す。図18は、本実施形態に係る補正部材360の変形例を示す斜視図である。図19は、図18に示す補正部材360Aを補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材360Aのつかみ方を示している。なお、図19でも、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0066】
図18および図19に示す補正部材360Aは、図12〜図15に示した本実施形態に係る補正部材360の挟持部366、367に、窪み368、369を設けたものである。窪み368、369は、挟持部366、367から互いに対向する方向に向かって窪んでいる。この窪み368、369は、補正部材360Aをピンセット等の道具でつかみ易くするために形成されており、道具の先端部分P1、P2を挟持部366、367に入れて挟んだ際、先端部分P1、P2が窪み368、369に入り込む。これにより、道具による補正部材360Aの扱いが容易となり、補正部材360Aを挿入孔170に対して出し入れし易くなる。
【0067】
以上、本発明の第3の実施形態に係る補正部材360とその作用について説明した。本実施形態の補正部材360は、金属板を屈曲して形成された弾性部材であり、その弾性を利用して、挿入孔170への取り付けおよび取り外しを容易にしている。これにより、作業効率を高めることができる。また、補正部材360の取り付けおよび取り外しの際に、補正部材360が挿入孔170の内周面に接触しないので、コンタミネーションの発生を抑制することができる。また、補正部材360の挿入部360aが挿入孔170に挿入されたときには、補正部材360の有する弾性力により、補正部材360は挿入孔170の内周面をバランスよく押圧し安定して保持する。したがって、補正部材360は、挿入孔170内に確実に固定され、挿入孔170から脱落し難くなる。
【0068】
さらに、密度の高い金属材料を用いることで、補正部材360が挿入孔170の空間体積を占める割合が少なくても、ディスク102、104の回転バランスを補正するのに必要な重さを十分に確保することができる。また、補正部材360に金属材料を用いることで加工が容易となり、部材の性能を安定させることができる。
【0069】
さらに、本実施形態に係る補正部材360は、挿入部360aを挿入孔170へ挿入する際に、翼部360bをトップクランプ130に当接させるようにする。これにより、補正部材360を挿入孔170に対して傾きなく挿入することが容易にでき、ディスク102、104の回転時に挿入孔170から補正部材360が脱落するのを防止することができる。
【0070】
なお、補正部材360の翼部360bの形状は図12等に示したものに限定されず、翼部360bの下面がトップクランプ130の上面と当接して位置決めできるように形成されていればよい。したがって、図12では翼部360bのプレート部364、365の長さは挿入部360aの平面部362、363と同程度であるが、これより長くても短くてもよい。また、プレート部364、365は挿入部360aの屈曲部361付近から延びる片持ち状態で設けられているが、プレート部364、365の先端が挿入部360aの端部362a、363a付近で平面部362、363と連結されていてもよい。このとき、挟持部366、367として、プレート部364、365に開口を形成してもよい。
【0071】
<4.第4の実施形態>
次に、図20〜図22に基づいて、本発明の第4の実施形態に係るディスク装置の補正部材の構成とその作用について説明する。本実施形態に係る補正部材は、図20〜図22に示した第1の実施形態のディスク装置100に設けることができ、補正部材160と同様にディスクの回転バランスを補正する。以下では、本実施形態に係る補正部材の構成とその作用について詳細に説明する。なお、図20は、本実施形態に係る補正部材460の構成を示す斜視図である。図21は、図20に示す補正部材460を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材460のつかみ方を示している。図22は、図20に示す補正部材460を補正部材挿入孔170に挿入した状態を示す部分平面図であって、補正部材460が挿入孔170に作用する力を示している。なお、図21、図22では、挿入孔170をトップクランプ130の挿入孔134として示している。
【0072】
本実施形態に係る補正部材460も、第1の実施形態に係る補正部材160と同様、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料を変形して形成された、弾性力を有する部材である。したがって、ゴム材料を用いる場合と比較して、省スペースでありながら回転バランスの補正に必要な重さを十分に確保することが可能であり、低アウトガス特性があり、また、温度依存性も低く、温度変化があっても部材の大きさはほとんど変化しないので挿入孔170に挿入された後に抜け出し難くなる。さらに、補正部材460に金属材料を用いることで加工が容易となり、ゴム材料を用いた場合のように高い精度が要求されず、部材の性能を安定させることができる。
【0073】
図20に示す補正部材460は、中空の金属部材を中空部分の形状が略三角形となるように変形させた部材である。補正部材460は、3つの頂点部461、462、463と、3つ頂点部のうち2つを連結する連結部464、465、466とからなる。連結部464、465、466は、補正部材460を挟み込み易いように、中心に向かって湾曲している。各連結部464、465、466の、当該補正部材460の最も中心に近接している部分は、道具を用いて補正部材460を把持するときの挟持部となる。挟持部にて補正部材460を中心に向かって押圧すると補正部材460は変形し、また、補正部材460への押圧力を開放すると補正部材460は元の形状となる。このように、本実施形態に係る補正部材460も弾性部材として機能することができる。
【0074】
補正部材460は、図21に示すように、例えば3つの先端部分P1、P2、P3を有する把持部材によって挟持部を挟み込むことにより変形し、補正部材460のサイズが挿入孔170の空間サイズより小さくなる。このように補正部材460を変形することで、挿入孔170の内周面に接触させずに補正部材460を挿入孔170に挿入することができる。
【0075】
一方、把持部材を挟持部から離し、補正部材460に対する押圧力を開放すると、補正部材460はその弾性により元の形状に戻る。そして、頂点部461、462、463が挿入孔170の内周面に接し、挿入孔170の内周面を半径方向外側へ押圧する。ここで、図22に示すように、補正部材460の各頂点部461、462、463が挿入孔170に対して与える力を足し合わせるとゼロとなる。このように、挿入孔170に対する補正部材460の押圧力を挿入孔170の径方向にバランス良く加えることで、補正部材460は安定して挿入孔170の内周面を保持する。これにより、補正部材460が挿入孔170から抜け出るのを防止することができる。
【0076】
本実施形態に係る補正部材460は、挿入孔170に対して圧入されるのではなく、補正部材460が挿入孔170の内周面に接触しないように挿入される。これにより、補正部材460を挿入孔170に挿入し易く、補正部材460と挿入孔170とが接触することで発生するコンタミネーションの発生を抑制できる。また、連結部464、465、466を中心に向かって撓ませて挟持部を形成することで、把持部材で補正部材460を挿入孔170に容易に挿入することができる。
【0077】
以上、本発明の第4の実施形態に係る補正部材460とその作用について説明した。本実施形態の補正部材460は、金属板を屈曲して形成された弾性部材であり、その弾性を利用して、挿入孔170への取り付けおよび取り外しを容易にしている。これにより、作業効率を高めることができる。また、補正部材460の取り付けおよび取り外しの際に、補正部材460が挿入孔170の内周面に接触しないので、コンタミネーションの発生を抑制することができる。また、補正部材460が挿入孔170に挿入されたときには、補正部材460の有する弾性力により、補正部材460は挿入孔170の内周面をバランスよく押圧し安定して保持する。したがって、補正部材460は、挿入孔170内に確実に固定され、挿入孔170から脱落し難くなる。
【0078】
さらに、密度の高い金属材料を用いることで、補正部材460が挿入孔170の空間体積を占める割合が少なくても、ディスク102、104の回転バランスを補正するのに必要な重さを十分に確保することができる。また、補正部材460に金属材料を用いることで加工が容易となり、部材の性能を安定させることができる。
【0079】
なお、本実施形態に係る補正部460は3つの挟持部を有するが、本発明はかかる例に限定されず、例えば4以上の挟持部を有するように形成することもできる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
例えば、上記実施形態では、補正部材は金属からなるものとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、補正部材はゴム等の弾性材料を用いて形成してもよい。この場合、補正部材の厚みを十分に取り、回転バランスの補正に必要な重量を確保するのがよい。
【符号の説明】
【0082】
100 ディスク装置
102、104 ディスク媒体
105 スペーサ
110 ベース
120 モータハブ
124 挿入孔
130 トップクランプ
134 挿入孔
140 シャフト
150 クランプスクリュー
160、260、360、460 補正部材
164、165、266、267、366、367 挟持部
170 補正部材挿入孔
360a 挿入部
360b 翼部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク装置の回転機構に設けられ、回転体の回転バランスを補正する補正部材であって、
弾性を有する複数の挟持部を備え、
前記挟持部が押圧されたとき、前記補正部材の大きさは前記回転機構に形成された補正部材が挿入される挿入孔の内部空間より小さくなり、
前記挿入孔に挿入された状態で前記挟持部への押圧を開放したとき、前記補正部材は前記挿入孔の内周面を押圧することを特徴とする、補正部材。
【請求項2】
前記挿入孔に挿入されたときに当該挿入孔の内周面を押圧する力ベクトルの和がゼロとなる形状に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の補正部材。
【請求項3】
前記挿入孔に挿入されたとき、当該挿入孔の中心を通る所定の径方向の直線に対して対称となる形状を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の補正部材。
【請求項4】
前記補正部材は、
前記挿入孔に挿入される挿入部と、
前記挿入部の一側に設けられ、前記挿入孔を前記挿入孔に挿入したときに前記回転機構の一部と当接する翼部と、
からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の補正部材。
【請求項5】
前記挟持部には、当該挟持部を挟み込む方向に窪んだ窪みが形成されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の補正部材。
【請求項6】
前記補正部材は、金属からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の補正部材。
【請求項7】
ディスク媒体と、
前記ディスク媒体を回転させる回転機構と、
前記回転機構を支持するベースと、
前記ディスク媒体に対してデータを記録および/または再生するヘッドを回転移動させるアクチュエータと、
を備え、
前記回転機構は、
ディスク媒体の回転軸となるシャフトと、
略円盤状の部材であって、中心部に形成されたハブ貫通孔の内周面が当該ハブ貫通孔に挿通された前記シャフト媒体の外周面に締結されるとともに、外周部に載置された前記ディスク媒体を支持するハブと、
略円盤状の部材であって、中心部に形成されたクランプ貫通孔に前記シャフトを挿通させて前記ハブに支持された前記ディスク媒体を前記ハブに向かって押圧するクランプと、
前記シャフトの中心部に形成された挿入孔に螺合され、前記クランプを固定するスクリューと、
前記ハブおよび前記クランプを貫通する補正部材挿入孔に挿入され、回転体の回転バランスを補正する補正部材と、
を有し、
前記補正部材は、
弾性を有する複数の挟持部を備え、
前記挟持部が押圧されたとき、前記補正部材の大きさは前記補正部材挿入孔の内部空間より小さくなり、
前記補正部材挿入孔に挿入された状態で前記挟持部への押圧を開放したとき、前記補正部材は前記補正部材挿入孔の内周面を押圧することを特徴とする、ディスク装置。
【請求項8】
前記クランプは、前記補正部材挿入孔が形成された周方向に沿って、前記ハブ側に窪んだクランプ溝を有することを特徴とする、請求項7に記載のディスク装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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