説明

製本装置

【課題】従来のクランパーによって締め付けた本文をラウンド経路に沿って搬送しながら製本処理を実行する従来の製本装置による課題を一掃する。
【解決手段】2次元方向に移動部12aを移動自在とするX−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられて本文を保持するハンドユニット14と、ハンドユニット14の可動域において2次元的に配置され、製本のための各工程を実行する複数の製本ユニット16と、X−Yアクチュエータ12の制御を行う制御部と、を備え、制御部の制御に基づき、X−Yアクチュエータ12は、移動部12aを移動させて、本文を保持するハンドユニット14を、複数の製本ユニット16のうち必要な複数の製本ユニット16へと予め決められた順番で移動させると共に、ハンドユニット14を移動させた製本ユニットにおけるそれぞれの工程の実行のために必要な位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X−Yアクチュエータを用いて、例えば断裁、糊付け、表紙貼り付けといった様々な製本のための各工程を行うことができる製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の製本装置の1つの例としては、図9に示す無線綴機が知られている。無線綴機は、エンドレスにチェーンを配し、該チェーンに所定間隔毎にクランパーを取り付けて、チェーンをラウンド経路40に沿って一方向に回転駆動させている。
【0003】
そして、ラウンド経路40の一部に沿って、製本工程に必要な、ミーリングカッター42、ガリカッター44、横糊付け機46、背糊付け機48、表紙繰出し機50、同調機52、プレス成形締機54などの各ユニットが設置される。
【0004】
図示を省略する各クランパーは、固定クランプ板と可動クランプ板とからなっており、弾性体によって両クランプ板を付勢することで、両クランプ板で、丁合機にて丁合された折丁等からなる紙葉束(以下、「本文」という)を締め付けており、チェーンによって各ユニットを順番に移動するようになっている。例えば、ミーリングカッターによって本文背面を断裁して背面を揃え、ガリカッターによって本文背面に筋溝を入れ、その後、横糊付け機によって背面近傍の両脇に糊を塗布し、背糊付け機によって背面に糊を塗布し、その後に表紙繰出し機によって繰出された表紙Rと本文Pとを合わせて、プレス成型締め機により表紙を本文の背部分に圧着して成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3673510号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の製本装置では、以下のような問題がある。
・処理する本文の寸法や紙質等が異なると、それに応じて各ユニットの調整を行う必要がある。よって、同じ種類の製本を大量に行う場合には作業性に与える影響は小さいが、異なる種類の製本を少量行う場合には、各ユニットの調整が頻繁となり、作業性が悪くなる。
・クランパーによって締め付けられた本文は、搬送されながら各ユニットでの処理に供されるために、各ユニットの処理時間と搬送時間との同期をとる必要があり、その分、各ユニットの寸法及び隣り合うユニット間の間隔が大きく必要となり、装置全体が大型化する。
・各ユニットの処理時間と搬送時間、及び各ユニットの作動開始・終了と搬送タイミングとを同期させるための調整に手間がかかる。例えば、経年変化でチェーンの伸びなどによりクランパー間の距離が変化することもあり、調整が大変である。
・各クランパーはエンドレスに移動するために、その締め付け力を電気配線や油空圧路を伴う駆動手段で調整することが困難である。そのため、カムなどの機械的手段によって締め付け力を調整するより他なく、高精度な調整が困難である。
【0007】
また、各クランパーは、弾性体による付勢力によって本文に対する締め付け力を発生しており、本来的に締め付け力にばらつきが発生している。この締め付け力のばらつきによって製本の品質が変化し、品質にばらつきが生じる。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、クランパーによって締め付けた本文をラウンド経路に沿って搬送しながら製本処理を実行する従来の製本装置による課題を一掃することができる製本装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、2次元方向に移動部を移動自在とするX−Yアクチュエータと、
X−Yアクチュエータの移動部に設けられて本文を保持するハンドユニットと、
ハンドユニットの可動域において2次元的に配置され、製本のための各工程を実行する複数の製本ユニットと、
X−Yアクチュエータの制御を行う制御部と、
を備え、制御部の制御に基づき、前記X−Yアクチュエータは、前記移動部を移動させて、本文を保持するハンドユニットを、前記複数の製本ユニットのうち必要な複数の製本ユニットへと予め決められた順番で移動させると共に、ハンドユニットを移動させた製本ユニットにおけるそれぞれの工程の実行のために必要な位置に移動させることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、前記ハンドユニットが製本ユニットに達したときに、前記制御部の制御に基づき該製本ユニットに応じて、前記X−Yアクチュエータは、本文を保持するハンドユニットを設けた移動部の位置及び速度を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のものにおいて、前記各製本ユニットは、製本のための作業を行う作動要素と、作動要素を駆動する駆動要素とを備え、制御部は、X−Yアクチュエータによる移動部の位置に応じて、適切な製本ユニットの駆動要素を駆動させることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のものにおいて、前記X−Yアクチュエータは、3次元方向に移動部を移動自在であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、前記X−Yアクチュエータは、3次元方向及び1軸周りにおいて移動部を移動自在であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ハンドユニットは、本文を挟み付ける一対のクランプ板と、該一対のクランプ板の間隔を可変にするクランプ用アクチュエータとを備え、前記制御部の制御に基づき、該クランプ用アクチュエータは、挟み付ける本文に応じてクランプ板の間隔を調整することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のものにおいて、前記制御部の制御に基づき、前記クランプ用アクチュエータは、製本ユニットに応じてクランプ板の間隔を調整することを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のものにおいて、前記製本ユニットは、着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、制御部の制御に基づき、X−Yアクチュエータが、移動部を移動させて、本文を保持するハンドユニットを、複数の製本ユニットのうち必要な複数の製本ユニットへと予め決められた順番で移動させると共に、ハンドユニットを移動させた製本ユニットにおけるそれぞれの工程の実行のために必要な位置に移動させるので、本文に対して必要な製本作業を施すことができる。
【0018】
各製本ユニットを密着して配置することができるため、製本装置全体を小型化することができる。
【0019】
また、各製本ユニットにおいて、各本文に適した処理を行うことができるために、オンデマンド出版(POD)のような多種類で少量の製本にも柔軟に対応することができる。
【0020】
各製本ユニットに応じて、X−Yアクチュエータは、本文を保持するハンドユニットを設けた移動部の位置及び速度を制御することができるため、製本ユニットに合わせた本文の動きをさせることができる。
【0021】
また、X−Yアクチュエータによる移動部の位置に応じて、適切な製本ユニットの駆動要素を駆動させることができるため、消費電力を節約することができる。
【0022】
また、X−Yアクチュエータの移動部を2次元方向または3次元方向に移動自在とすることにより、製本ユニットにおける位置調整の負担が低減するため、製本ユニットの構成を簡素化することができる。さらに、X−Yアクチュエータの移動部を3次元方向及び1軸周りにおいて移動自在とすることにより、高精度に処理を行うことができるようになる。
【0023】
また、制御部の制御に基づき、クランプ用アクチュエータは、挟み付ける本文または製本ユニットに応じてクランプ板の間隔を電力又は油空圧等を利用した駆動力により調整することで、本文の種類に応じて、高精度に締め付けることができるようになり、製本の精度、品質のばらつきを抑えることができるようになる。
【0024】
また、製本ユニットを着脱可能とすることで、製本要求に応じて、製本ユニットを交換することができ、柔軟に対応することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による製本装置の第1実施形態を示す概略平面図である。
【図2】本発明による製本装置の第2実施形態を示す概略平面図である。
【図3】本発明による製本装置の第3実施形態を示す概略平面図である。
【図4】製本ユニットの配列例を示す説明図である。
【図5】本発明の製本装置の制御系を表すブロック図である。
【図6】本発明の製本装置の具体例を表す斜視図である。
【図7】図6の製本装置の平面図である。
【図8】本発明による製本装置を複数配置した例を表す説明図である。
【図9】従来の製本装置を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるX−Yアクチュエータを用いた製本装置の概略図である。図において、製本装置10は、概略、X−Yアクチュエータ12と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14と、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの可動域に配置されたテーブル部15と、テーブル部15に配置された複数の製本ユニット16と、X−Yアクチュエータ12及び各製本ユニット16の制御を行う制御部18(図5)と、必要に応じて1種類以上のセンサ20(図5)とを備える。
【0027】
X−Yアクチュエータ12は、例えばリニア誘導モータ型X−Yアクチュエータを用いることができ、図示において、X方向に沿ったX軸ステージ12xとY方向に沿ったY軸ステージ12yとZ方向に沿ったZ軸ステージ12zとを備え、移動部12aを高精度に位置決め可能である。尚、ここで、X軸、Y軸は水平面の直交2軸とし、Z軸は鉛直方向に沿った軸とする。
【0028】
Y軸ステージ12yが一対のX軸ステージ12xに対してX方向に沿ってスライド可能に取り付けられ、Z軸ステージ12zがY方向に沿ってスライド可能に取り付けられる。
【0029】
このように図1に示した例では、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZ軸の3軸方向に自由度があり、3次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0030】
図1に示した例に代えて、図2に示すように、最低限、X軸ステージ12x及びY軸ステージ12yのみを設けることにしてもよい。この場合、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XY軸の2軸方向に自由度があり、2次元上の任意の位置に移動可能となっている。
【0031】
または、図1に示した例に代えて、図3に示すように、さらにZ軸ステージ12zに対してZ軸の周りで回転可能となった回動軸12θを備えることもできる。これによって、移動部12aは、X−Yアクチュエータ12の作動によって、XYZθ軸の3軸及び1軸周りに合計4軸方向で自由度があり、4次元上の任意の位置に移動自在となっている。または、図示を省略するが、X軸及び/またはY軸の周りに自由度を持たせてもよく、5次元または6次元上の任意の位置に移動自在としてもよい。
【0032】
移動部12aに設けられるハンドユニット14は、本文を締め付ける2つのクランプ板14a、14bを備える。2つのクランプ板14a、14bは、弾性部材によって互いに接近するように付勢することも可能であるが、好ましくは、2つのクランプ板14a、14bの距離が電動モータ、油空圧シリンダ等のクランプ用アクチュエータ14cによって電力または油空等を利用して調整可能となっているとよい。
【0033】
X−Yアクチュエータ12の移動部12aに設けられたハンドユニット14の可動域に配置されたテーブル部15は、複数の区切りが設けられており、各区切りに製本ユニット16が配置される。また、テーブル部15の任意の所定の位置が入口IN、出口OUTとなっている。
【0034】
製本ユニット16としては、製本のための各工程を実行する任意のユニットとすることができる。好ましくは、各製本ユニット16の2次元寸法は同じになっているとよい。テーブル部15に設定される製本ユニット16としては、例えば、並製本の場合に、断裁カッターユニット、ガリカッターユニット、サンダーカッターユニット、横糊付けユニット、背糊付けユニット、表紙フィーダユニット、表紙同調ユニット、プレス成形締ユニット、三方断裁ユニット等を例示することができる。上製本の場合には、さらに、例えば、寒冷紗フィーダユニット、寒冷紗同調ユニット等を加えることができる。
【0035】
各製本ユニット16は、それぞれが実行する工程に応じてその構成は変わるが、基本的に本文に対して作動する作動要素(例えば、カッター、ローラ、プレス板等)と、作動要素を動作させるための駆動要素(例えば、電動モータ、油空圧シリンダ等)を備える。
【0036】
各製本ユニット16は、テーブル部15の各区切りに対して着脱可能に配置することができ、製本ユニット16はテーブル部15の各区切りの基準位置に対して位置決めされ、これによって結果としてX−Yアクチュエータ12に対して位置決めされる。
【0037】
これらの製本ユニット16の配置はX、Y方向に連なるように2次元的に配置され、その配置の順番は任意であるが、好ましくは、製本工程の順番に並ぶように配置されると効率的である。図4は、その一例を示す。
【0038】
図4(a)は、製造ユニット16がXY方向に沿って製本工程の順番に並び、X−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路がジグザグになるようにした例である。ここで、矢印はX−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路を表している。また、16−NのNは製造工程の順番を表している。このように配置することにより、次の工程への移動距離が短くてすみ効率的となる。
【0039】
また、図4(b)は別の例を表している。製本工程によっては、ある製本ユニット16による処理を複数回実行する場合もある。そのため、図4(b)では、X−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路を特定の製本ユニットを複数回経由するように設定している。
【0040】
または、図4(c)に示すように、X−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路がスパイラル状になるように、製本ユニット16を並べることも可能である。
【0041】
各製本ユニット16の作動要素の向きは、全ての製本ユニット16において同じ方向に揃っている必要はない。図4に例示したようなX−Yアクチュエータ12による移動経路によって、その向きを変えることも可能である。または、図3に示すような4軸の自由度を持ったX−Yアクチュエータ12を用いた場合には、ハンドユニット14で保持される本文の向き自体を変えることもできるので、製本ユニット16の向きを一定に揃えて、その代わりに本文の向きを製本ユニット16に応じて変えることも可能である。
【0042】
また、必ずしも図4に示したように、製本工程の順番に隣接して並べる必要はなく、例えば、作業員が調整、メンテナンス等のために頻繁にアクセスする必要のある製本ユニットに関しては、アクセスしやすい手前の位置に配置するようにして作業性を良好にすることも可能である。また、外部からの補充が必要なもの、例えば、表紙フィーダといった製本ユニットに関しては、アクセスしやすい手前の位置に配置するとよい。
【0043】
また、必ずしも図4に示したように、X−Yアクチュエータ12による移動部12aの移動経路が全ての製本ユニット16を経由する必要はなく、例えば、製本条件に応じて、いずれかの製本ユニット16を飛ばすようになっていてもよい。
【0044】
制御部18は、図5に示すように、制御信号によりX−Yアクチュエータ12を制御して移動部12aの位置を制御する。移動部12aを図4で例示するような予め決められた移動経路に沿って移動させて、ハンドユニット14を製本ユニット16へと搬送すると共に、各製本ユニット16において、決められた位置にハンドユニット14を固定するか、または予め決められた動き(位置、速度(速さ、向き))をハンドユニット14が行うように制御する。
【0045】
また、移動部12aの現在位置に応じて、制御信号により各製本ユニット16の駆動要素を駆動させて作動要素の作動の開始、終了を制御する。製本ユニット16は、同期して動作する必要はなく、制御部18からの制御信号に応じて独立的に動作を開始・終了することができる。
【0046】
また、制御部18には、外部から製本対象の製本情報(高さ、幅、厚み、紙質その他の製本条件)等を入力することもでき、製本情報に応じてX−Yアクチュエータ12の位置制御及び製本ユニット16における動きを制御することができる。
【0047】
センサ20は、製本ユニット16の状態を検出して、その検出信号を制御部18へと送出するものである。
【0048】
以上のように構成されるX−Yアクチュエータを用いた製本装置10においては、入口INに製本処理に供される本文Pが待機されている。本文Pは、丁合機によって丁合された折丁または紙葉類、印刷機または複写機によって作成された紙葉類、その他の既存の紙葉類(例えば年賀状束、アルバム用紙束)等とすることができる。
【0049】
制御部18は、X−Yアクチュエータ12によってその移動部12aをINの位置に移動させて、クランプ用アクチュエータ14cを制御して、ハンドユニット14によって待機された本文Pを把持させて、予め決められた締め付け力となるように締め付けさせる。そして、X−Yアクチュエータ12によって、予め決められた移動経路に沿って製本ユニット16に本文Pを搬送させる。
【0050】
本文Pがある駆動開始条件を満足すると、制御部18は、製本ユニット16に応じて駆動要素を駆動して、作動要素を作動させる。駆動開始条件としては、例えば、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの現在位置により(またはセンサ20からの位置検出信号により)、本文Pが前の製本ユニット16の処理を終了したこと、または該当する製本ユニットに接近したこと若しくは到達したことが、制御部18において判定されたこと、とすることができる。
【0051】
そして、制御部18の制御に基づき、X−Yアクチュエータ12によって移動部12aのXY座標、XYZ座標、またはXYZθ座標が制御されて、作動要素に対する本文Pの位置決めが行われる。X−Yアクチュエータ12によって本文Pの座標を高い自由度で調整することができるために、製本ユニット16の作動要素自体の位置決めが不要となる。各製本ユニット16において、決められた位置に本文Pを固定するか、または予め決められた動き(位置、速度(速さ、向き))を本文Pが行うように制御する。各製本ユニット16に適した動きを本文Pにさせることができる。
【0052】
本文Pがある駆動終了条件を満足すると、各製本ユニット16の駆動要素の駆動は停止される。駆動終了条件としては、例えば、X−Yアクチュエータ12の移動部12aの現在位置により(またはセンサ20からの位置検出信号により)、本文Pがその製本ユニット16の処理を終了したことが制御部18で判定されたとき、とすることができる。
【0053】
製本ユニット16の駆動要素は、本文Pが前述のある駆動開始条件を満足したときに駆動を開始し、本文Pが駆動終了条件を満足したときに駆動を終了することができるので、消費電力を節約することができる。但し、製本ユニット16の種類によっては、本文Pの位置にかかわらず、連続的に駆動要素が駆動して、作動要素が作動していてもよい。
【0054】
こうして順次決められた製本ユニット16を経て、所定の製本のための工程を実行して、出口OUTにまで達すると、制御部18は、ハンドユニット14による本文Pの保持を解除させ、次の本文Pの処理のために再び入口INへと移動部12aを移動させる。
【0055】
図6及び図7は、本発明によるX−Yアクチュエータを用いた製本装置の具体例である。この例では、断裁カッターユニット16A、ガリカッターユニット16B、サンダーカッターユニット16C、横糊付けユニット16D、背糊付けユニット16E、表紙フィーダユニット16F、同調ユニット16G、プレス成形締ユニット16Hがテーブル部15のそれぞれ適当な位置に配置されている。
【0056】
断裁カッターユニット16Aは、本文の背面を断裁するためのミーリングカッターを作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素がミーリングカッターを回転させるようになっている。
【0057】
X−Yアクチュエータ12によって、カッターに対する本文Pの高さを調整することで、適切な断裁を行うことができる。
【0058】
断裁カッターユニット16Aとしては、ミーリングカッターの代わりに押し刃を作動要素として用いることも可能である。押し刃の使用が望まれる場合には、押し刃を備えた別の断裁カッターユニットに交換することで、簡単に要求に対応することができる。従来の製本装置においては、本文が常に一定の速度で移動しているため、押し刃で断裁を行うのは困難であるが、本発明によれば、本文を固定した状態にすることができるため、押し刃で断裁することも可能になる。
【0059】
また、本発明によれば、ハンドユニット14による締め付け力をクランプ用アクチュエータ14cによって製本ユニットに応じて強くしたり弱くしたりすることができるので、断裁時のように強い締め付け力が要求される場合に、適切な締め付け力で本文Pを把持することができる。
【0060】
ガリカッターユニット16B及びサンダーカッターユニット16Cは、それぞれ本文の背面にガリ溝を形成するガリカッター、本文の背面の研磨を行うサンダーカッターを作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素がガリカッター、サンダーカッターをそれぞれ回転させるようになっている。
【0061】
ガリカッターによって形成するガリ溝の向き、またはその深さは、製本条件によって異なる。よって、X−Yアクチュエータ12によって、カッターに対する本文Pの高さを調整することで、本文Pに適切な深さの溝を形成することができる。
【0062】
また、サンダーカッターの回転方向は、製本条件によって異なる。よって、X−Yアクチュエータ12によって、サンダーカッターに対する本文Pの移動方向を変えることで、簡単に製本条件に対応することができる。
【0063】
または、異なる種類の刃を使うことが要求される場合には、その要求に応じて、所望のカッターを有する別のユニットに交換することで、簡単に製本要求に対応することができる。
【0064】
横糊付けユニット16D及び背糊付けユニット16Eは、それぞれ本文の横側面及び背面に糊を塗布するローラを作動要素として備えており、本文PがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素がローラを回転させるようになっている。
【0065】
塗布する糊の厚みは、製本条件によって異なる。X−Yアクチュエータ12によって、ローラに対する本文Pの高さを調整することで、本文Pに適切な厚みの糊を塗布することができる。
【0066】
糊はEVA(Ethylene Vinyl Acetate)系ホットメルトが一般的に使用されるが、近年は、ウレタン系ホットメルトであるPUR(Polyurethane Reactive)系ホットメルトなども使用されるようになってきており、異なる種類の糊の使用が望まれる場合には、別のユニットに交換して、異なる糊を貯留する釜を持つユニットにすることで、簡単に要求に対応することができる。また、必要に応じて、ローラを備えたユニットに代えて糊噴射ノズルを備えた別のユニットに交換することもできる。
【0067】
1度の塗布では足りない場合、X−Yアクチュエータ12によって本文を複数回ローラに通すように、繰り返すことができる。従来の製本装置においては、同じユニットによる処理を繰り返すことは不可能であるから、同じ処理を繰り返す場合には、同じ種類のユニットを複数個、ラウンド経路に沿って配置しなければならない。本発明においては、複数個の製本ユニットを配置する必要がないため、製本装置を小型化することができる。
【0068】
また、背糊を塗布した後、横糊を塗布し、さらに背糊を塗布する場合には、X−Yアクチュエータ12によって本文Pを、背糊付けユニット16Eに搬送した後、横糊付けユニット16Dに搬送し、再び背糊付けユニット16Eに搬送することができる。このような場合、従来の製本装置においては、背糊付け機または背糊付け用ローラを横糊付け機または横糊付け用ローラの前後に2つ配置する必要がある。本発明においては、このような場合においても、背糊付けユニット16Eは1つでよく、製本装置を小型化することができる。
【0069】
表紙フィーダユニット16Fは、図示しないが、積層された表紙Rから一枚の表紙Rを取り出す吸着機を作動要素として備える。
【0070】
同調ユニット16Gには、表紙フィーダユニット16Fによって供給される表紙Rがセットされる。同調ユニット16Gには、セットされる表紙Rの向きなどを検出するCCDイメージセンサといったセンサ20を設けることができる。例えば、表紙フィーダユニット16Fによって供給された表紙が傾いて供給された場合、従来の製本装置においては、その補正が困難である。しかしながら、本発明においては、センサ20によって検出された画像から制御部18で傾きを計算し、その傾きに応じて、X−Yアクチュエータ12のZ軸周りでハンドユニット14を回転させることでθ軸を調整して、傾いて供給された表紙Rに合わせて本文Pを傾けて同調させることが可能になる。
【0071】
プレス成形締ユニット16Hは、一対のプレス板を作動要素として備えており、本文Pと該本文Pに貼り合わされた表紙RがX−Yアクチュエータ12によって搬送されると、駆動要素が、一対のプレス板を互いに接近する方向に移動させて、本文と表紙とを合わせて横側から押し付けるようになっている。従来の製本装置においては、横側からプレス板で押し付けるだけでなく、下側から下板を上方に移動させて、本文と表紙の背面も押し付ける必要がある。しかしながら、本発明においては、X−Yアクチュエータ12のZ軸方向下向きに移動部12aを移動させて、本文Pと表紙Rとを固定の下板に押し付けるようにすることができる。このため、下板を上方に移動させるための駆動機構を不要とすることができる。
【0072】
以上のように、本発明によればX−Yアクチュエータ12を用いて本文Pを搬送させることで、クランパーで締め付けた本文を一方向に搬送する従来の製本装置と比較して様々な利点が得られることが理解されるであろう。
【0073】
図6及び図7に示した製本装置の製本ユニット16の組み合わせは一例であり、任意の組み合わせとすることができる。
【0074】
本発明によれば、製本ユニット16を密着して配置することができる。例えば、各製本ユニット16のXY寸法としては、400mm×400mm程度のものとして構成すれば、図示した3×3の9ユニットで、製本装置として、1200mm×1200mm程度の大きさで実現することができる。こうして、従来の製本装置に比較して本発明の製本装置は、格段に小型化することができる。
【0075】
また、X−Yアクチュエータ12による搬送及び各製本ユニット16の動作を制御部18で制御することで、オンデマンド出版(POD)のような多種類で少量の製本にも柔軟に対応することができる。
【0076】
このように小型化が可能であり、柔軟性が高まる結果として、本発明の製本装置10は、従来の製本専門工場に配置するのみならず、図書館、大学、研究機関、企業等の任意の施設にも導入することができるようになり、手軽に製本作業を行うことができるようになる。
【0077】
但し本発明は少量製本に限るものでなく、大量製本、高速製本に対応するために複数のX−Yアクチュエータ12を設けて、複数の製本ユニット16を幾つかのセクションに分割して、各X−Yアクチュエータでセクションを分担するようにしてもよい。または、図8に示すように複数の製本装置10を1つの搬送ラインに沿って配置して、搬送ラインに搬送される本文を複数の製本装置10で製本するようにしてもよい。
【0078】
各製本ユニットは、独立して動作させることができるため、装置全体の構成を簡素化することができる。各製本ユニットを電動駆動とする場合には、電気的接続だけでよいために、製本ユニットの着脱作業がより一層簡単になる。
【0079】
ハンドユニットの締め付け力をクランプ用アクチュエータによって発生する駆動力によって調整することができるようになるため、その締め付け力を高精度に調整することで、製本の品質のばらつきを低減させることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 製本装置
12 X−Yアクチュエータ
14 ハンドユニット
14a、14b クランプ板
14c クランプ用アクチュエータ
16 製本ユニット
18 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元方向に移動部を移動自在とするX−Yアクチュエータと、
X−Yアクチュエータの移動部に設けられて本文を保持するハンドユニットと、
ハンドユニットの可動域において2次元的に配置され、製本のための各工程を実行する複数の製本ユニットと、
X−Yアクチュエータの制御を行う制御部と、
を備え、制御部の制御に基づき、前記X−Yアクチュエータは、前記移動部を移動させて、本文を保持するハンドユニットを、前記複数の製本ユニットのうち必要な複数の製本ユニットへと予め決められた順番で移動させると共に、ハンドユニットを移動させた製本ユニットにおけるそれぞれの工程の実行のために必要な位置に移動させることを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記ハンドユニットが製本ユニットに達したときに、前記制御部の制御に基づき該製本ユニットに応じて、前記X−Yアクチュエータは、本文を保持するハンドユニットを設けた移動部の位置及び速度を制御することを特徴とする請求項1記載の製本装置。
【請求項3】
前記各製本ユニットは、製本のための作業を行う作動要素と、作動要素を駆動する駆動要素とを備え、制御部は、X−Yアクチュエータによる移動部の位置に応じて、適切な製本ユニットの駆動要素を駆動させることを特徴とする請求項1または2記載の製本装置。
【請求項4】
前記X−Yアクチュエータは、3次元方向に移動部を移動自在であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製本装置。
【請求項5】
前記X−Yアクチュエータは、3次元方向及び1軸周りにおいて移動部を移動自在であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製本装置。
【請求項6】
前記ハンドユニットは、本文を挟み付ける一対のクランプ板と、該一対のクランプ板の間隔を可変にするクランプ用アクチュエータとを備え、前記制御部の制御に基づき、該クランプ用アクチュエータは、挟み付ける本文に応じてクランプ板の間隔を調整することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製本装置。
【請求項7】
前記制御部の制御に基づき、前記クランプ用アクチュエータは、製本ユニットに応じてクランプ板の間隔を調整することを特徴とする請求項6記載の製本装置。
【請求項8】
前記製本ユニットは、着脱可能であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製本装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−56709(P2011−56709A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207032(P2009−207032)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【特許番号】特許第4604149号(P4604149)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(593048043)芳野マシナリー株式会社 (17)