説明

製本装置

【課題】 中頁シート束の一端部と表紙シートの背表紙となる部分とを確実に充分な位置精度で接着することのできる製本装置を提供する
【解決手段】 中頁シート束の背綴じ端部と表紙シートの背表紙部とを、加熱によって溶融する接着剤によって接着する製本装置は、クランプ部材によって中頁シート束を挟持させるクランプ手段と、接着剤が載置されている背表紙部が上載される平坦な載置面部と、背綴じ端部と載置面部とによって背表紙部が挟持されるように、クランプ部材を移動させる移動手段と、一対のニップ部材を移動させて、表紙シートを折るとともに、表紙シートで覆われた中頁シート束の背綴じ端部近傍をニップして、表紙シートを背折り成形するニップ手段と、接着剤を溶融させるための加熱部とを含み、ニップ手段は、背綴じ端部と載置面部とによって挟持されている表紙シートを背折り成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真プリントなどの表面が樹脂によってコーティングされた複数のシートを束状に部揃えした中頁シート束の一端部と、表紙シートの背表紙部とを、加熱によって溶融する接着剤を用いて強固に接着することができる製本装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどによって代表される携帯型撮像機器によって得られた画像データ、あるいはインターネットなどの情報通信網を通じて取得した画像データを、コンピュータに取り込んで任意に編集し、その画像データを印刷装置によって高速で印刷して出力する技術がハードウェアおよびソフトウェアの両面で普及しており、これに伴う製本装置の開発が求められている。
【0003】
典型的な従来技術は、特許文献1に記載されている。この従来技術の製本装置は、中頁シート束を接着剤塗布位置、表紙綴じ位置の順に移送し、接着剤塗布位置に配置され中頁シート束の背綴じ端面に接着剤を塗布し、表紙綴じ位置に配置された表紙綴じ手段によって前記中頁シート束と表紙シートの背部とを接着する。表紙綴じ手段は、表紙シートを背折りする背折りプレス手段を備え、この背折りプレス手段は、表紙シートを給送する経路における前記表紙綴じ位置の左右に配置され、互いに接近および離反自在な一対の背折りプレス部材によって構成され、この背折りプレス部材の少なくとも一方には加熱手段が設けられる。このような構成によって、背折り成形時に凹凸、皺、歪曲のない製本仕上げを可能とし、高速で製本処理することができるという効果を達成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−162178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1の従来技術では、各背折りプレス部材の先端に設けられる各プレス片を互いに離間させた状態で、その各背折りプレス部材における上面(ガイド面)の所定位置に表紙シートをセットし、中頁シート束を下方に移動させることによって、セットされている表紙シートの背表紙となる部分に対し、接着剤が塗布された中頁シート束の一端部を上方から突き当てて接触させている。そして、中頁シート束をさらに下方に移動させることによって、各プレス片の間に形成された空間を通過させながら表紙シートを折り、さらに各プレス片を互いに近接する方向に移動させることによって、表紙シートを背折り成形している。
【0006】
しかしながら、このように中頁シート束を表紙シートに突き当てた状態で下方に移動させると、中頁シート束を突き当てた時点における中頁シート束の一端部と表紙シートとの接触位置と、下方へ移動後の中頁シート束の一端部と表紙シートとの接触位置との間にずれが生じてしまうおそれがある。すなわち、表紙シートを背折り成形するための動作に伴って接触位置にずれが生じるおそれがあり、中頁シート束と表紙シートとを充分な位置精度で接着できないおそれがあるという問題がある。
【0007】
また特許文献1の従来技術では、接着剤が背表紙部以外に漏れ出さないように、背当てプレートが表紙シートから離間して配置されている。したがって、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に、溶融した接着剤を充分に流入させることができないという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1の従来技術では、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍を各プレス片の押圧面によってニップする際、各押圧面が中頁シート束の厚み方向に垂直な仮想平面と平行になるような姿勢で、各プレス片を互いに近接する方向に移動させ、該押圧面を面接触させながら押圧することによってニップしている。したがって、中頁シート束の一端部近傍において、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に空間が殆ど形成されず、溶融した接着剤を充分に流入させることができないという問題がある。
【0009】
特に、中頁シート束を構成する各中頁シートが樹脂によって表面が被覆されている樹脂コーティングシート(たとえば、写真プリントシート)である場合、樹脂コーティングシートはコシがあるとともに、接着剤によって接着し難いシートであるため、上記のように、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に溶融した接着剤の流入量が不足することによって、中頁シート束と表紙シートとの接着部において充分な接着強度が得られないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、中頁シート束の一端部と表紙シートの背表紙となる部分とを確実に充分な位置精度で接着することのできる製本装置を提供することである。また本発明の他の目的は、表面が樹脂によって被覆された複数のシートを束状に部揃えした中頁シート束であっても、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる製本装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数の中頁シートから成る中頁シート束の一端部と、冊子の表表紙、裏表紙および背表紙を構成する表紙シートの背表紙となる部分とを、加熱によって溶融する接着剤によって接着する製本装置であって、
クランプ部材を備え、該クランプ部材によって前記中頁シート束を挟持させるクランプ手段と、
前記接着剤が載置されている前記背表紙となる部分が上載される平坦な載置面部を有する載置台と、
前記中頁シート束の一端部と前記載置面部とによって前記背表紙となる部分が挟持されるように、前記クランプ部材および前記載置台の少なくとも一方を移動させる移動手段と、
一対の棒状のニップ部材を備え、該ニップ部材を移動させることによって、表紙シートを折るとともに、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍を中頁シート束の厚み方向に沿ってニップして、表紙シートを背折り成形するニップ手段と、
前記接着剤を溶融させるための加熱部とを含み、
前記ニップ手段は、前記中頁シート束の一端部と前記載置面部とによって挟持されている表紙シートを背折り成形することを特徴とする製本装置である。
【0012】
また本発明は、前記一対のニップ部材はそれぞれ平坦な押圧面部を有し、
前記ニップ手段は、中頁シート束の一端部近傍をニップするとき、前記押圧面部が前記載置面部に臨む姿勢で保持された各ニップ部材を、中頁シート束の厚み方向に対して傾斜する方向に表紙シートの背表紙となる部分に向かって移動させることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記ニップ手段は、前記一対のニップ部材を、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍において、接着剤が載置されている位置から離間した位置を、厚み方向に沿ってニップするように移動させることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記移動手段は、前記載置面部に上載されている表紙シートの背表紙となる部分に向けて、前記クランプ部材によって挟持された中頁シート束の一端部を移動させることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記接着剤が載置された表紙シートを、前記載置台における所定位置まで搬送するとともに、所定位置に位置決めされた表紙シートを挟持する表紙シート搬送手段をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、一対のクリース刻設部材を備え、該クリース刻設部材によって背表紙となる部分を規定する2本の平行な折り筋を表紙シートに対して刻設させるクリース刻設手段をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、クランプ手段は、一対の前記クランプ部材を備えるとともに、一方のクランプ部材を、他方のクランプ部材に対して近接および離反する方向へ変位させるクランプ変位手段をさらに含み、
一方のクリース刻設部材は、前記一方のクランプ部材の変位に連動して変位するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、クランプ手段は、一対の前記クランプ部材を備えるとともに、一方のクランプ部材を、他方のクランプ部材に対して近接および離反する方向へ変位させるクランプ変位手段をさらに含み、
一方のニップ部材は、前記一方のクランプ部材の変位に連動して変位するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記加熱部は、前記載置台を加熱するように構成されていることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記接着剤が加熱された後の表紙シートを冷却するための冷却台をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記中頁シートが、樹脂によってコーティングされたシートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、表紙シートを背折り成形する際に、クランプ部材によって挟持された中頁シート束の一端部と、載置台における平坦な載置面部とによって、該載置面部に上載された背表紙となる部分が挟持される。そして、このように背表紙となる部分が挟持されている状態で、ニップ部材を移動させることによって、表紙シートを折る処理、および、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍を中頁シート束の厚み方向に沿ってニップする処理が行われて、表紙シートが背折り成形される。
【0023】
このように、表紙シートの背表紙となる部分が、中頁シート束の一端部と載置面部とによって挟持されているので、表紙シートを背折り成形する際に、表紙シートが所定の位置からずれることを防止することができる。したがって、中頁シート束の一端部と表紙シートの背表紙となる部分とを確実に充分な位置精度で接着することができる。
【0024】
さらに、接着剤が載置された背表紙となる部分を中頁シート束の一端部と載置面部とによって挟持させた状態で、加熱部によって該接着剤を溶融させるので、溶融した接着剤を、表紙シートの背表紙となる部分だけでなく、中頁シート束の一端部近傍において、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に容易に流入させることができ、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる。
【0025】
また本発明によれば、それぞれ平坦な押圧面部を有する一対のニップ部材によって、中頁シート束の一端部近傍をニップするときに、各押圧面部が載置面部に臨む姿勢で保持されている各ニップ部材を、中頁シート束の厚み方向に対して傾斜した方向に沿って、表紙シートの背表紙となる部分に向かって移動させている。したがって、中頁シート束の一端部近傍において、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に、接着剤が充分に流入される空間を形成することができ、この充分な量の接着剤によって、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる。特に、表面が樹脂によって被覆された樹脂コーティングシートによって中頁シート束が構成されている場合であっても、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる。
【0026】
さらに本発明によれば、ニップ手段は、接着剤が載置されている位置から離間した位置を、厚み方向に沿ってニップするように各ニップ部材を移動させるので、中頁シート束の一端部近傍において、表紙シートの表表紙となる部分および裏表紙となる部分と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に、適度な大きさの空間を形成することができ、溶融した接着剤を該空間に流入させることで、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、移動手段は、中頁シート束の一端部と載置面部とによって背表紙となる部分を挟持させるために、中頁シート束を挟持するクランプ部材を載置面部に向かって移動させるように構成されている。このように、表紙シートの背表紙となる部分が位置決めされて上載された載置台を移動させずに、中頁シート束を移動させるので、背表紙となる部分を挟持する際に、表紙シートの背表紙となる部分が所定の位置からずれてしまうことを効果的に防止することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、接着剤が載置された表紙シートを載置台における所定の位置まで搬送する表紙シート搬送手段を備えているので、表紙シートの背表紙となる部分を容易に所定の位置に配置することができる。また表紙シート搬送手段は、所定の位置に配置された表紙シートを挟持するように構成されているので、中頁シート束の一端部と載置面部とによって背表紙となる部分が挟持される前に、表紙シートの背表紙となる部分が、所定の位置からずれてしまうことを防止することができる。
【0029】
さらに本発明によれば、製本装置はクリース刻設手段を備えているので、2本の平行な折り筋を表紙シートに刻設することにより、ニップ部材によって表紙シートを折り易くすることができる。
【0030】
さらに本発明によれば、一方のクランプ部材と一方のクリース刻設部材とが一体的に変位するように構成されているので、中頁シート束を一対のクランプ部材によって挟持させると同時に、表紙シートに2本の折り筋を刻設するための一対のクリース刻設部材を、その中頁シート束の厚みに応じた間隔で互いに離間するように、自動的に配置させることができる。したがって、クリース刻設部材を適切な間隔に配置する工程を省略することができるので、製本作業に要する時間を短縮し、効率的に製本を行うことができる。
【0031】
さらに本発明によれば、一方のクランプ部材と一方のニップ部材とが一体的に変位するように構成されているので、中頁シート束を一対のクランプ部材によって挟持させると同時に、表紙シートを背折り成形するための一対のニップ部材を、その中頁シート束の厚みに応じた間隔で互いに離間するように、自動的に配置させることができる。したがって、ニップ部材を適切な間隔に配置する工程を省略することができるので、製本作業に要する時間を短縮し、効率的に製本を行うことができる。
【0032】
さらに本発明によれば、加熱部によって載置台が加熱されるように構成されているので、背表紙となる部分に載置された接着剤を容易に溶融させることができる。
【0033】
さらに本発明によれば、接着剤が加熱された後の表紙シートを冷却するための冷却台を備えているので、溶融された接着剤を効果的に冷却することができる。
【0034】
さらに本発明によれば、中頁シートが樹脂によってコーティングされたシートであるので、中頁シート束と表紙シートとが充分な接着強度で接着されたフォトブックを製本することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る製本装置1を示す斜視図である。
【図2】図1に示す製本装置1を背後から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る製本装置1で製本される冊子Cを構成する各構成要素C1〜C3を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る製本装置1を示す断面図であり、図1の切断面線IV−IVから見た断面を示す。
【図5】クリースユニットU1を下方から見た斜視図である。
【図6】クリースユニットU1およびクランプユニットU4が取り外された状態の製本装置1を示す斜視図である。
【図7】クランプユニットU4を上方から見た斜視図である。
【図8】移動側ニップ機構31、固定側ニップ機構51およびニップ駆動機構71を示す平面図である。
【図9】移動側ニップ機構31および固定側ニップ機構51を示す断面図であり、図8の切断面線IX−IXから見た断面を示す。
【図10】本発明の一実施形態に係る製本装置1を示す側面図である。
【図11】移動側ニップ機構31、固定側ニップ機構51およびニップ駆動機構71を示す側面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る製本装置1による製本処理手順を示すフローチャートである。
【図13】製本処理手順を説明するための製本装置1の内部構造を簡素化して示す図である。
【図14】製本処理手順を説明するための製本装置1の内部構造を簡素化して示す図である。
【図15A】表紙シートC1の背折り成形工程を説明するための図である。
【図15B】表紙シートC1の背折り成形工程を説明するための図である。
【図15C】表紙シートC1の背折り成形工程を説明するための図である。
【図15D】表紙シートC1の背折り成形工程を説明するための図である。
【図16】押圧面部825p,825qによってニップされている状態の背綴じ端部C31近傍を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明の一実施形態に係る製本装置1を示す斜視図であり、図2は図1に示す製本装置1を背後から見た斜視図である。なお、図1および図2において、図解を容易にするため、製本装置1のハウジングは省略している。
【0037】
本実施形態の製本装置1は、クリースユニットU1、接着剤載置ユニットU2、ニップユニットU3、クランプユニットU4、固定ユニットU5、加熱冷却ユニットU6(図4参照)および基台3を備える。製本装置1は、矩形板状に形成された基台3の上面3aに前記各ユニットU1〜U6を搭載して構成され、テーブルおよび机などの平坦な作業台に基台3を水平に載置することによって、製本時の操作が安定して行われるように構成されている。
【0038】
本実施形態では、製本装置1は、各ユニットU1〜U6が搭載される基台3の上面3aが上方に臨み、かつ水平となるような姿勢で作業台に設置されているが、これに限らず、基台3の上面3aが水平面に対して傾斜するような姿勢で作業台に設置されてもよく、基台3の上面3aが下方に臨むような姿勢で作業台に設置されてもよい。
【0039】
図3は、本実施形態に係る製本装置1で製本される冊子Cを構成する各構成要素C1〜C3を示す分解斜視図である。冊子Cは、表紙シートC1と、加熱によって溶融する接着剤C2と、複数の中頁シートを束状に部揃えした中頁シート束C3とによって構成され、製本装置1によって、中頁シート束C3の背綴じされるべき一端部(以下、「背綴じ端部」と記す)C31と、表紙シートC1の背表紙となる部分(以下、「背表紙部」と記す)C12とを、短冊状に裁断されたシート状の接着剤(以下、「ホットメルトシート」と記す)C2を用いて接着することによって製本される。
【0040】
製本されたときに冊子Cの表表紙、裏表紙および背表紙を構成する表紙シートC1は、本実施形態に係る製本装置1によって、2本の平行な折り筋C11、すなわちクリースC11が刻設されてから、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と接着される。しかしながら、他の実施形態では、予め2本の平行な折り筋C11が刻設された表紙シートC1を用いることによって製本が実施されてもよい。
【0041】
なお、この2本の平行な折り筋C11の間が背表紙部C12として規定され、さらに、背表紙部C12の両側がそれぞれ、表表紙となる部分(以下、「表表紙部」と記す)C13および裏表紙となる部分(以下、「裏表紙部」と記す)C14として規定される。
【0042】
また、2本の平行な折り筋C11は、その間隔D1が、製本されるべき中頁シート束C3の厚み寸法D2よりも僅かに大きくなるように(すなわち、D1>D2)、表紙シートC1に対して刻設されている。これにより、本実施形態に係る製本装置1を用いて表紙シートC1を背折り成形する際に、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍において、表紙シートの表表紙部C13および裏表紙部C14と中頁シート束C3の厚み方向の各表面との間に、溶融した接着剤C2を流入させるための空間を効果的に形成することができる。
【0043】
また本実施形態では、中頁シート束C3と表紙シートC1とを接着するために、背表紙部C12の大きさに適合するように予め裁断されたシート状の接着剤C2が用いられている。しかしながら、中頁シート束C3と表紙シートC1とを接着するために用いられる接着剤C2は、これに限定されることなく、たとえばビーズ状の固形接着剤を用いることもできる。
【0044】
本実施形態の製本装置1は、後述するように、中頁シート束C3を構成する各中頁シートが、写真プリントなどに用いられるRC(Resin Coated)ペーパーなどのように表面が樹脂によってコーティングされた枚葉の加工紙である場合にも、中頁シート束C3と表紙シートC1とを充分な接着強度で接着することができるように構成されている。すなわち、本実施形態の製本装置1は、中頁シート束C3が写真プリントシートで構成されたフォトブックなどの冊子を製本するために好適に用いることができるように構成されている。
【0045】
なお、以下の説明において、図中矢符Xで示す方向を前後方向、図中矢符Yで示す方向を左右方向、図中矢符Zで示す方向を上下方向とする。これらの前後方向X、左右方向Yおよび上下方向Zは、互いに直交する3軸線にそれぞれ平行であり、各ユニットU1〜U6が搭載される基台3の上面3aは、前後方向Xに平行な前後軸線および左右方向Yに平行な左右軸線を含む仮想一平面に平行であるものとする。また、処理対象の表紙シートC1は、前後方向Xの一方側に沿って搬送されるものとし、表紙シートC1が搬送される方向を「搬送方向」と記す。
【0046】
図4は、本実施形態に係る製本装置1を示す断面図であり、図1の切断面線IV−IVから見た断面を示す。図5は、クリースユニットU1を下方から見た斜視図である。なお、図4において、参照符Vは、処理対象の表紙シートC1が搬送される経路(以下、「シート搬送経路」と記す)を示しており、シート搬送経路Vは、本実施形態では、基台3の上面3aと平行となるように設けられている。また、製本装置1を表紙シートC1の搬送方向上流側から見て左右両側に設けられる部分には、同一の数字に添え字m、nを付す。
【0047】
以下、図面を参照して、各ユニットU1〜U6について説明する。
クリースユニットU1は、基台上面3aにおける前後方向Xの一側部寄りの位置に搭載され、主として、処理対象の表紙シートC1を搬送方向下流側に搬送するための第1の表紙シート搬送手段と、表紙シートC1に対して、表紙シートC1の短辺方向に沿って2本の平行な折り筋C11を刻設するためのクリース刻設手段とを備えている。
【0048】
クリースユニットU1は、一対の第1側壁10m,10n(総称する場合には、添え字m、nを省略し、「第1側壁10」と記す)と、第1の表紙シート搬送手段である第1ローラ対11と、第1操作片12と、シート案内プレート13と、クリース刻設手段であるクリース機構14と、第2操作片15とを有する。
【0049】
一対の第1側壁10は、基台上面3aにおける左右方向Yの両側部近傍から、互いに間隔をあけて平行に立設されている。各第1側壁10の下端部には、フランジがそれぞれ形成されており、各フランジが、ボルトなどの締結手段によって基台3に締結されている。これによって、各第1側壁10は、基台3に対して垂直に固定されている。
【0050】
第1ローラ対11は、図4に示すように、回転駆動力が付与される第1駆動ローラ11aと、第1駆動ローラ11aの鉛直下方から適度な接触圧で第1駆動ローラ11aに対して接触する第1従動ローラ11bとを有する。各ローラ11a,11bは、シート搬送経路Vを挟むように配置されている。
【0051】
第1駆動ローラ11aは、左右方向Yに平行に各第1側壁10に亘って架設され、その軸線方向両端部は、各第1側壁10に軸受を介して回転可能に支持されている。また、該両端部は、各第1側壁10から外側へ突出している。
【0052】
第1従動ローラ11bは、その軸線方向寸法が、各第1側壁10間の距離よりも短く、かつ処理対象の表紙シートC1の短辺の寸法よりも長くなるように形成されており、その軸線方向両端部には、レバー部材11cがそれぞれ取り付けられている。
【0053】
このとき、第1従動ローラ11bの軸線方向両端部は、各レバー部材11cの遊端部によって、第1従動ローラ11bの軸線まわりに回転自在に軸支されている。この第1従動ローラ11bは、各第1側壁10間に、各レバー部材11cを介して、第1駆動ローラ11aと平行に設けられる。
【0054】
各レバー部材11cの基端部は、各第1側壁10の内側において、支軸11dによってそれぞれ枢支されており、各レバー部材11cは、支軸11dの軸線まわりに角変位可能に設けられている。また、各レバー部材11cの遊端部には、各第1側壁10の所定位置に一端部が係止された引張コイルばね11eの他端部が装着されている。このようにして、第1従動ローラ11bは、この引張コイルばね11eのばね力によって、第1駆動ローラ11aに近接する方向にばね付勢されている。
【0055】
これによって、第1従動ローラ11bの外周面は、適度な接触圧で第1駆動ローラ11aの外周面に対して、鉛直下方から弾発的に当接し、線接触している。このような構成によって、第1ローラ対11は、第1駆動ローラ11aを、第1駆動ローラ11aの軸線まわりに回転方向R1に回転させることによって、第1駆動ローラ11aと第1従動ローラ11bとの間に挿入された平坦な展開状態の表紙シートC1を、水平に製本装置1内へ送り込んで搬送方向下流側へ搬送することができる。
【0056】
図2に示すように、第1駆動ローラ11aの軸線方向一端部は、第1側壁10nから外側に突出し、その第1駆動ローラ11aの一端部には、略短円柱状の部材から成る第1操作片12が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されている。したがって、操作者は、第1ローラ対11によって表紙シートC1を搬送させるために、この第1操作片12を把持して、第1駆動ローラ11aをその軸線まわりに容易に回転させることができる。
【0057】
また、図1に示すように、第1駆動ローラ11aの軸線方向他端部は、第1側壁10mから外側に突出し、その第1駆動ローラ11aの他端部には、プーリP1が装着されている。そして、このプーリP1と、後述する接着剤載置ユニットU2に備えられている第2駆動ローラ21aの軸線方向一端部に装着されたプーリP2との間には、タイミングベルトT1が巻き掛けられて張架されている。これによって、第1駆動ローラ11aの回転が、第2駆動ローラ21aに伝達されるように構成されている。すなわち、操作者が、第1操作片12を回転方向R1に回転操作することによって、第1および第2駆動ローラ11a,21aが連動して同一方向(回転方向R1)に回転駆動するように構成されている。
【0058】
各第1側壁10において、前述する第1ローラ対11よりも搬送方向上流側の部位には、長手方向に垂直な断面が逆L字状のシート案内プレート13が、第1ローラ対11と平行に設けられている。このシート案内プレート13は、左右方向Yに沿って各第1側壁10に亘って架設され、その左右方向Yの両端部は、各第1側壁10に対してそれぞれ固定されている。
【0059】
シート案内プレート13は、表紙シートC1を第1ローラ対11へ案内するための平坦なシート案内面部13aを有し、このシート案内面部13aが、第1駆動ローラ11aと第1従動ローラ11bとの接触位置とほぼ同一高さでかつ搬送方向上流側に隣接するように、すなわちシート搬送経路Vに隣接するように配置されている。このようなシート案内プレート13が設けられているので、操作者は、表紙シートC1を手作業で第1ローラ対11の間に挿入する際に、容易に挿入することができる。
【0060】
また各第1側壁10において、前述する第1ローラ対11よりも搬送方向下流側の部位には、図4および図5に示すように、第1ローラ対11を通過して搬送されてきた表紙シートC1に対して、2本の平行な折り筋C11を刻設するためのクリース機構14が設けられている。
【0061】
クリース機構14は、一対の折り筋C11を表紙シートC1に刻設するための一対のクリース片140a,140bと、一対の折り筋C11を刻設する際に表紙シートC1を支持するためのクリース台141と、クリース台141を支持するクリース台支持プレート142と、各クリース片140a,140bをそれぞれ回転自在に支持するクリース片支持体143a,143bと、連結軸144と、各クリース片支持体143a,143bをそれぞれ支持する支持体ガイドロッド145a,145bと、一対の可動片146m,146nと、各可動片146m,146nをそれぞれ支持する可動片ガイドロッド147m,147nと、支持フレーム148とを有する。
【0062】
クリース刻設部材である各クリース片140a,140bは、外周部が尖端状に形成された円盤状の部材であり、前後方向Xに平行な軸線に沿って間隔をあけ、互いに平行となるように、かつ該軸線まわりに回転自在に、クリース片支持体143a,143bによってそれぞれ軸支されている。このとき各クリース片140a,140bは、シート搬送経路Vに隣接するクリース台141の下方に臨む表面に対して、その外周部が接触するような高さ位置において軸支されている。
【0063】
図4に示すように、各クリース片140a,140bの上方には、左右方向Yに沿って各第1側壁10に亘って延び、長手方向に垂直な断面がU字状のクリース台支持フレーム142が設けられている。そして、クリース台支持フレーム142の下方に臨む下面には、ゴムなどの弾性部材から成る帯状のクリース台141が左右方向Yに沿って固定されている。このときクリース台141の下方に臨む表面が、シート搬送経路Vに隣接している。
【0064】
クリース片140aを支持するクリース片支持体143aとクリース片140bを支持するクリース片支持体143bとは、後述するように、左右方向Yに沿って一体的に移動可能に構成されている。すなわち、各クリース片140a,140bは、クリース片支持体143a,143bを左右方向Yへ移動させることによって、左右方向Yへ移動するように構成されている。
【0065】
前述するように、各クリース片140a,140bの尖端状の外周部は、クリース台141の下部と接触するような高さ位置に設けられているので、各クリース片140a,140bが左右方向Yへ移動すると、各クリース片140a,140bの外周部が、クリース台141の下方に臨む表面を押圧しながら、該表面の上を転がるように構成されている。
【0066】
表紙シートC1に折り筋C11を刻設する際には、先ず、表紙シートC1の折り筋C11を刻設すべき部分がクリース台141に隣接して配置されるように、第1ローラ対11および第2ローラ対21を駆動させることによって、表紙シートC1を所定の位置(以下、「クリース刻設位置」と記す)に配置させる。そして、左右方向Yの一方側で待機している各クリース片支持体143a,143bを左右方向Yの他方側に向かって一体的に移動させることによって、クリース刻設位置に配置された表紙シートC1に対し、各クリース片140a,140bの前後方向Xに離間する距離に等しい距離だけ間隔をあけた2本の平行な折り筋C11を刻設することができる。
【0067】
ここで、各クリース片支持体143a,143bを左右方向Yに沿って一体的に移動させるための構成について説明する。各クリース片支持体143a,143bのうち、搬送方向下流側に配置されている一方のクリース片支持体143aは、左右方向Yに平行に各第1側壁10間に亘って架設された支持体ガイドロッド145aによって、左右方向Yに沿ってスライド移動可能に支持されている。また、搬送方向上流側に配置される他方のクリース片支持体143bは、左右方向Yに平行に延設された支持体ガイドロッド145bによって、左右方向Yに沿ってスライド移動可能に支持されている。
【0068】
また図5に示すように、第1側壁10nには、上下方向Zに平行な軸線まわりに回転可能に駆動伝達軸15aに装着されたプーリP4が設けられ、第1側壁10mには、図示しない軸によって上下方向Zに平行な軸線まわりに回転可能に支持されたプーリP3が設けられている。さらに、これらのプーリP3とプーリP4との間には、タイミングベルトT2が巻き掛けられて張架されている。すなわち、タイミングベルトT2は、プーリP4の回転に連動して回動するように構成されている。
【0069】
そして、このタイミングベルトT2には、一方の張架部分においてクリース片支持体143aが連結されている。詳細には、クリース片支持体143aは、2つの分割部分から構成され、この2つの分割部分によってタイミングベルトT2を挟持することにより、タイミングベルトT2の一方の張架部分に連結されている。すなわち、クリース片支持体143aは、タイミングベルトT2が回動することに伴って、支持体ガイドロッド145aに案内されながら、左右方向Yに移動するように構成されている。
【0070】
またクリース片支持体143aには、前後方向Xに延設される連結軸144を介して、クリース片支持体143bが連結されている。この連結軸144は、軸線方向一端部がクリース片支持体143aに固定されるとともに、軸線方向他端部がクリース片支持体143bに連結されている支持フレーム148に固定されている。すなわち、連結軸144は、クリース片支持体143aと一体的に移動するように構成されている。そして、クリース片支持体143bは、この連結軸144に前後方向Xに沿ってスライド移動可能に支持されている。
【0071】
またクリース片支持体143bは、クリース片支持体143aが左右方向Yに移動するときに、この連結軸144によって、クリース片支持体143aの移動方向に押圧されるように構成されている。この押圧力によって、クリース片支持体143bは、支持体ガイドロッド145bに案内されながら、クリース片支持体143aと一体的に左右方向Yに移動するように構成されている
【0072】
したがって、タイミングベルトT2を回動させることによって、各クリース片支持体143a,143bが一体的に左右方向Yに移動し、各クリース片140a,140bを左右方向Yに一体的に移動させることができる。これによって、クリース刻設位置に配置された表紙シートC1に対して、2本の平行な折り筋C11を刻設することができる。
【0073】
前述するプーリP4には、図5に示すように、その回転軸線と同軸に駆動伝達軸15aの一端部が連結されている。また、駆動伝達軸15aの他端部には、略短円柱状の部材から成る第2操作片15が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されている。したがって、操作者は、この第2操作片15を把持して軸線まわりに回転することにより、タイミングベルトT2を容易に回動させることができる。
【0074】
また、図5に示すように、各第1側壁10には、左右方向Yに沿って貫通する貫通孔がそれぞれ形成され、この貫通孔に隣接して、前後方向Xに平行に可動片ガイドロッド147m,147nが延設されている。そして、各可動片ガイドロッド147m,147nには、各可動片146m,146nが前後方向Xに沿ってスライド移動可能にそれぞれ連結されている。
【0075】
さらに、この一対の可動片146m,146nに亘って、クリース片支持体143bを支持している支持体ガイドロッド145bが架設されている。したがって、クリース片支持体143bは、一対の可動片146m,146nの前後方向Xへの移動に伴って、前後方向Xに移動するように構成されている。すなわち、クリース片140bは、一対の可動片146m,146nを前後方向Xに移動させることによって、クリース片140aに対して近接または離反する方向に移動するように構成されている。
【0076】
図6は、クリースユニットU1およびクランプユニットU4が取り外された状態の製本装置1を示す斜視図である。
【0077】
接着剤載置ユニットU2は、クリースユニットU1の搬送方向下流側に、クリースユニットU1に隣接して基台上面3aに搭載され、主として、表紙シートC1を搬送方向下流側に搬送するための第2の表紙シート搬送手段と、表紙シートC1の背表紙部C12に予め所定の大きさに裁断された短冊状のホットメルトシートC2を載置するための接着剤載置部とを備える。
【0078】
接着剤載置ユニットU2は、一対の第2側壁20m,20n(総称する場合には、添え字m、nを省略し、「第2側壁20」と記す)と、第2の表紙シート搬送手段である第2ローラ対21と、接着剤載置部である接着剤載置用プレート22と、第1ガイドロッド支持プレート23とを有する。
【0079】
一対の第2側壁20は、基台上面3aにおける左右方向Yの両側部近傍から、互いに間隔をあけて平行に立設されている。各第2側壁20の下端部にはフランジがそれぞれ形成されており、各フランジが、ボルトなどの締結手段によって基台3に締結されている。これによって、各第2側壁20は、基台3に垂直に対して固定されている。
【0080】
第2ローラ対21は、図4に示すように、回転駆動力が付与される第2駆動ローラ21aと、第2駆動ローラ21aの鉛直下方から適度な接触圧で第2駆動ローラ21aに対して接触する第2従動ローラ21bとを有する。各ローラ21a,21bは、シート搬送経路Vを挟むように配置されている。
【0081】
第2駆動ローラ21aは、左右方向Yに平行に各第2側壁20に亘って架設され、その軸線方向両端部は、各第2側壁20に軸受を介して回転可能に支持されている。また、該両端部は、各第2側壁20から外側へ突出している。
【0082】
第2従動ローラ21bは、その軸線方向寸法が、各第2側壁20間の距離よりも短く、かつ処理対象の表紙シートC1の短辺の寸法よりも長くなるように形成されており、その軸線方向両端部には、レバー部材21cがそれぞれ取り付けられている。
【0083】
このとき、第2従動ローラ21bの軸線方向両端部は、各レバー部材21cの遊端部によって、第2従動ローラ21bの軸線まわりに回転自在に軸支されている。この第2従動ローラ21bは、各第2側壁20間に、各レバー部材21cを介して、第2駆動ローラ21aと平行に設けられる。
【0084】
各レバー部材21cの基端部は、各第2側壁20の内側において、支軸21dによってそれぞれ枢支されており、各レバー部材21cは、支軸21dの軸線まわりに角変位可能に設けられている。また、各レバー部材21cの遊端部には、各第2側壁20の所定位置に一端部が係止された引張コイルばね21eの他端部が装着されている。このようにして、第2従動ローラ21bは、この引張コイルばね21eのばね力によって、第2駆動ローラ21aに近接する方向にばね付勢されている。
【0085】
これによって、第2従動ローラ21bの外周面は、適度な接触圧で第2駆動ローラ21aの外周面に対して、鉛直下方から弾発的に当接し、線接触している。このような構成によって、第2ローラ対21は、第2駆動ローラ21aを、第2駆動ローラ21aの軸線まわりに回転方向R1に回転させることによって、第2駆動ローラ21aと第2従動ローラ21bとの間に挿入された表紙シートC1を、水平に搬送方向下流側へ搬送することができる。また、第2駆動ローラ21aと第2従動ローラ21bとの間に挿入された表紙シートC1を、挟持するように構成されている。
【0086】
第2駆動ローラ21aの軸線方向一端部は、第2側壁20mから外側に突出し、この第2駆動ローラ21aの他端部には、プーリP2が装着されている。そして、このプーリP2と前述するプーリP1との間には、第1駆動ローラ11aの回転が伝達されるように、タイミングベルトT1が巻き掛けられて張架されている。したがって、第2ローラ対21は、操作者が第1操作片12を回転操作することによって、駆動するように構成されている。
【0087】
各第2側壁20において、前述する第2ローラ対21よりも搬送方向下流側の部位には、長手方向に垂直な断面が逆U字状の接着剤載置用プレート22が、シート搬送経路Vの下方であって、シート搬送経路Vに隣接して配設されている。この接着剤載置用プレート22は、左右方向Yに沿って各第2側壁20に亘って架設され、左右方向Yの両端部が、各第2側壁20にそれぞれ固定されている。
【0088】
接着剤載置用プレート22は、表紙シートC1の背表紙部C12を上載するための平坦な載置面部22aを有する。操作者は、第1ローラ対11および第2ローラ対21を駆動することによって、折り筋C11が刻設された表紙シートC1の背表紙部C12がこの載置面部22aに上載されるように、表紙シートC1を所定の位置(以下、「接着剤載置位置」と記す)まで搬送した後、表紙シートC1の背表紙部C12の上面に対して、予め所定寸法に裁断されたホットメルトシートC2を載置する。
【0089】
すなわち、接着剤載置用プレート22は、背表紙部C12の上面に対してホットメルトシートC2を載置する際に、背表紙部C12を支持するための支持台としての機能を有する。この載置面部22aは、第2駆動ローラ21aと第2従動ローラ21bとの接触位置とほぼ同一高さでかつ搬送方向下流側に隣接するように設けられている。
【0090】
各第2側壁20において、搬送方向上流側の端部には、長手方向に垂直な断面がU字状の第1ガイドロッド支持プレート23が設けられる。この第1ガイドロッド支持プレート23は、左右方向Yに沿って各第2側壁20に亘って架設され、左右方向Y両端部が、各第2側壁20にそれぞれ固定されている。
【0091】
第1ガイドロッド支持プレート23は、第2ローラ対21および接着剤載置用プレート22が設けられている高さ位置よりも下方の位置に設けられる。この第1ガイドロッド支持プレート23は、後述する第2ガイドロッド支持プレート54と協働して、前後方向Xに沿って延設されるボールネジ軸61および2本のガイドロッド62a,62bを支持している。
【0092】
ニップユニットU3は、接着剤載置ユニットU2の搬送方向下流側に、接着剤載置ユニットU2に隣接して基台上面3aに搭載され、主として、表紙シートC1を折る処理、および、表紙シートC1を折ることによって表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31の近傍をニップする処理を行うことにより、表紙シートC1を背折り成形するニップ手段の一部を備える。
【0093】
ニップユニットU3は、一対の第3側壁30m,30n(総称する場合には、添え字m、nを省略し、「第3側壁30」と記す)と、ニップ手段の一部である変位側ニップ機構31と、第1変位伝達片32と、一対の第2変位伝達片33m,33nとを有する。
【0094】
一対の第3側壁30は、基台上面3aにおける左右方向Yの両側部近傍の上方に、互いに間隔をあけて平行に、後述する固定ユニットU5に備えられる各第5側壁50によってそれぞれ支持されて設けられている。
【0095】
詳細には、各第3側壁30における互いに対向する内壁面部には、前後方向Xに沿って延びる第1ガイドレール34m,34nがそれぞれ設けられており、また、各第5側壁50における外方に臨む外壁面部には、前後方向Xに沿って延びる、第1ガイドレール34m,34nが摺動可能な第2ガイドレール55m,55nがそれぞれ設けられており、前記第1ガイドレール34m,34nをこの第2ガイドレール55m,55nに装着することによって、各第3側壁30は、前後方向Xに沿って摺動可能に、各第5側壁50によって支持されている。
【0096】
変位側ニップ機構31は、接着剤載置用プレート22よりも搬送方向下流側に設けられ、一対の第3側壁30によって支持されている。変位側ニップ機構31の詳細な構成については、後述する。
【0097】
第1変位伝達片32は、左右方向Yに沿って各第3側壁30に亘って架設されている。この第1変位伝達片32の長手方向両端部には、フランジがそれぞれ形成されており、各フランジが、ボルトなどの締結手段によって各第3側壁30に締結されている。これによって第1変位伝達片32は、第3側壁30に対して固定されている。
【0098】
一対の第2変位伝達片33m,33nは、各第3側壁30の下端部と、前述したクリースユニットU1に設けられる各可動片146m,146nとに亘って、前後方向Xに沿ってそれぞれ架設されている。この第2変位伝達片33m,33nの長手方向一端部は、ボルトなどの締結手段によって第3側壁30m,30nの下端部にそれぞれ締結されており、第2変位伝達片33m,33nの長手方向他端部は、ボルトなどの締結手段によって可動片146m,146nにそれぞれ締結されている。
【0099】
ニップユニットU3は、このような構成によって、一対の第3側壁30が一体的に前後方向Xへ変位されると、この変位に連動して、変位側ニップ機構31を前後方向Xへ変位させるとともに、クリースユニットU1の可動片146m,146nを前後方向Xへ変位させる。そして、前述するように、この可動片146m,146nの前後方向Xへの変位に伴って、クリース片140bを前後方向Xへ変位させる。
【0100】
すなわち、一対の第3側壁30、変位側ニップ機構31、第1変位伝達片32、一対の第2変位伝達片33m,33n、可動片146m,146n、および、クリース片140bは、一体的に前後方向Xに変位するように構成されている。
【0101】
固定ユニットU5は、ニップユニットU3の搬送方向下流側に、ニップユニットU3に隣接して基台上面3aに搭載され、主として、表紙シートC1を搬送方向下流側に搬送するための第3の表紙シート搬送手段と、ニップユニットU3に備えられる変位側ニップ機構31と協働して表紙シートC1を背折り成形するニップ手段の一部とを備える。
【0102】
固定ユニットU5は、一対の第5側壁50m,50n(総称する場合には、添え字m、nを省略し、「第5側壁50」と記す)と、ニップ手段の一部である固定側ニップ機構51と、第3の表紙シート搬送手段である第3ローラ対52と、第3操作片53と、第2ガイドロッド支持プレート54とを有する。
【0103】
一対の第5側壁50は、基台上面3aにおける左右方向Yの両側部近傍から、互いに間隔をあけて平行に立設されている。各第5側壁50の下端部には、フランジがそれぞれ形成されており、各フランジが、ボルトなどの締結手段によって基台3に締結されている。これによって、各第5側壁50は、基台3に対して垂直に固定されている。
【0104】
固定側ニップ機構51は、移動側ニップ機構31よりも搬送方向下流側に設けられ、一対の第5側壁50によって支持されている。固定側ニップ機構51の詳細な構成については、後述する。
【0105】
第3ローラ対52は、図4に示すように、回転駆動力が付与される第3駆動ローラ52aと、第3駆動ローラ52aの鉛直下方から適度な接触圧で第3駆動ローラ52aに対して接触する第3従動ローラ52bとを有する。各ローラ52a,52bは、シート搬送経路Vを挟むように配置されている。
【0106】
第3駆動ローラ52aは、左右方向Yに平行に各第5側壁50に亘って架設され、その軸線方向両端部は、各第5側壁50に軸受を介して回転可能に支持されている。また、その軸線方向一端部は、第5側壁50mから外側へ突出している。
【0107】
第3従動ローラ52bは、その軸線方向寸法が、各第5側壁50間の距離よりも短く、かつ処理対象の表紙シートC1の短辺の寸法よりも長くなるように形成されており、その軸線方向両端部には、レバー部材52cがそれぞれ取り付けられている。
【0108】
このとき、第3従動ローラ52bの軸線方向両端部は、各レバー部材52cの遊端部によって、第3従動ローラ52bの軸線まわりに回転自在に軸支されている。この第3従動ローラ52bは、各第5側壁50間に、各レバー部材52cを介して、第3駆動ローラ52aと平行に設けられる。
【0109】
各レバー部材52cの基端部は、各第5側壁50の内側において、支軸52dによってそれぞれ枢支されており、各レバー部材52cは、支軸52dの軸線まわりに角変位可能に設けられている。また、各レバー部材32cの遊端部には、各第5側壁50の所定位置に一端部が係止された引張コイルばね52eの他端部が装着されている。このようにして、第3従動ローラ52bは、この引張コイルばね52eのばね力によって、第3駆動ローラ52aに近接する方向にばね付勢されている。
【0110】
これによって、第3従動ローラ52bの外周面は、適度な接触圧で第3駆動ローラ52aの外周面に対して、鉛直下方から弾発的に当接し、線接触している。このような構成によって、第3ローラ対52は、第3駆動ローラ52aを、第3駆動ローラ52aの軸線まわりに回転させることによって、第3駆動ローラ52aと第3従動ローラ52bとの間に挿入された表紙シートC1を、水平に搬送方向下流側へ搬送することができる。また、第3駆動ローラ52aと第3従動ローラ52bとの間に挿入された表紙シートC1を、挟持するように構成されている。
【0111】
第5側壁50mから外側に突出した第3駆動ローラ52aの一端部には、略短円柱状の部材から成る第3操作片53が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されているしたがって、操作者は、第3ローラ対52によって表紙シートC1を搬送させるために、この第3操作片53を把持して、第3駆動ローラ52aをその軸線まわりに容易に回転させることができる
【0112】
各第5側壁50の搬送方向下流側の端部には、長手方向に垂直な断面がU字状の第2ガイドロッド支持プレート54が設けられている。この第2ガイドロッド支持プレート54は、左右方向Yに沿って各第5側壁50に亘って架設され、左右方向Y両端部が、各第5側壁50にそれぞれ固定されている。
【0113】
第2ガイドロッド支持プレート54は、第3ローラ対52が設けられる位置よりも下方の位置に設けられる。第2ガイドロッド支持プレート54は、第1ガイドロッド支持プレート23と協働して、前後方向Xに沿って延設されるボールネジ軸61および2本のガイドロッド62a,62bを支持している。
【0114】
冷却加熱ユニットU6は、図4に示すように、シート搬送経路Vよりも下方の高さ位置に延設されている、前述のボールネジ軸61および2本のガイドロッド62a,62bによって支持されるとともに、前後方向Xに移動可能に構成されている。なお、ボールネジ軸61は、その軸線方向両端部が、第1および第2ガイドロッド支持プレート23,45に軸受を介して回転可能に支持され、その軸線方向一端部が、第2ガイドロッド支持プレート45から外側へ突出している。また、2本のガイドロッド62a,62bは、その軸線方向両端部が、第1および第2ガイドロッド支持プレート23,54によって固定されている。
【0115】
冷却加熱ユニットU6は、前後方向Xに移動可能にボールネジ軸61に連結されている移動体63と、移動体63の上部に前後方向Xに沿って間隔をあけて搭載される冷却手段64および加熱手段65と、第2ガイドロッド支持プレート54から外側に突出したボールネジ軸61の一端部に装着される第4操作片66とを有する。
【0116】
移動体63は、ボールネジ軸61に螺合されたナットに対して固定されるとともに、ボールネジ軸61に関して左右方向Yの両側に設けられるガイドロッド62a,62bに摺動可能に支持されている。すなわち移動体63は、ボールネジ軸61を、ボールネジ軸61の軸線まわりに回転させることによって、前後方向Xに移動するように構成されている。
【0117】
図4に示すように、第2ガイドロッド支持プレート54から外側に突出したボールネジ軸61の一端部には、略短円柱状の部材から成る第4操作片66が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されている。したがって、操作者は、この第4操作片66を把持して、ボールネジ軸61を軸線まわりに容易に回転させることができる。
【0118】
冷却手段64は、熱伝導性の良好な材質によって形成された冷却板64aと、冷却板64aを支持するとともに、移動体63の前後方向Xへの移動に伴って冷却板64aを回動させる平行リンク機構64bとを有する。冷却手段64は、加熱手段65よりも搬送方向上流側に設けられている。
【0119】
また、加熱手段65は、冷却板64aと同一形状に形成された加熱板65aと、加熱板65aの下部に設けられ、加熱板65aを加熱するための加熱部であるヒータ65bと、加熱板65aを支持するとともに、移動体63の前後方向Xへの移動に伴って加熱板65aを回動させる平行リンク機構65cとを有する。加熱手段65は、冷却手段64よりも搬送方向下流側に設けられている。
【0120】
平行リンク機構64b,65cはそれぞれ複数のリンクを備え、各リンクの基端部が、移動体63の上面部に左右方向Yに平行な軸線まわりに角変位可能に支持されている。すなわち、平行リンク機構64b,65cは、各リンクを前記軸線まわりに角変位させることによって、各リンクが上下方向Zに沿って起立した状態となる起立姿勢と、各リンクの遊端部が移動体63に最大限近接するように各リンクが横臥した状態となる横臥姿勢とに亘って、姿勢を変えるように構成されている。
【0121】
冷却板64aおよび加熱板65aは、前述する各リンクの遊端部に連結されることにより、平行リンク機構64b,65cの姿勢の変化に連動して、回動するように構成されている。詳細には、冷却板64aの上面部および加熱板65aの載置面部65dが、基台3の上面3aと平行な姿勢を維持して回動するように構成されている。
【0122】
また、各平行リンク機構64b,65cは、移動体63の前後方向Xへの移動に連動して姿勢を変えるように構成されている。詳細には、平行リンク機構64b,65cはそれぞれ、クランプユニットU4に搭載されるクランププレート対41の下方の位置へ移動したときに起立姿勢を採るように構成されている。換言すれば、各平行リンク機構64b,65cは、クランププレート対41に近接するに従って起立姿勢を採るように回動し、クランププレート対41から離反するに従って横臥姿勢を採るように回動するように構成されている。たとえば図4では、クランププレート対41の下方の位置まで移動している平行リンク機構64bが起立姿勢を採り、クランププレート対41から離反した位置へ移動している平行リンク機構64cが横臥姿勢を採っている状態が示されている。
【0123】
冷却板64aおよび加熱板65aは、各側壁20,30,40,50間の寸法よりも短く、かつ処理対象の表紙シートC1の短辺の寸法よりも長くなるように形成された板状の部材である。そして、その長手方向と左右方向Yとが一致するように、かつ、その厚み方向と上下方向Zとが一致するように、平行リンク機構64b,65cの各リンクの遊端部にそれぞれ連結されている。このとき、クランププレート対41の下方の位置へ移動したとき、起立姿勢の平行リンク機構64b,65cによって、シート搬送経路Vに隣接する所定の位置に配置されるように構成されている。
【0124】
加熱板65aは、上方に臨む平坦な載置面部65dを有し、上記の所定の位置に配置されるときに、ホットメルトシートC2が載置されている背表紙部C12が載置面部65dに上載される。すなわち、加熱板65aは、表紙シートC1が載置される載置台として機能する。また加熱板65aは、背表紙部C12に上載されたホットメルトシートC2を溶融させるために、ヒータ65bによって加熱されるように構成されている。
【0125】
冷却板64aは、前述するように熱伝導性の良好な材質によって形成されているので、移動体63を前後方向Xに移動させて、加熱板65bに替えて前記所定の位置に配置させることによって、加熱された後の表紙シートC1の背表紙部C12を、速やかに冷却することができる。
【0126】
また、加熱板65aは、前記所定の位置に配置されるとき、各リンクが上下方向Zに沿って起立した起立姿勢の平行リンク機構65cによって支持されているので、クランププレート対41に挟持された中頁シート束C3によって上方から押圧されたとしても、変位してしまうことがない。すなわち、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と加熱板65aの載置面部65dとによって、表紙シートC1の背表紙部C12を固く挟持することができるように構成されている。
【0127】
また、冷却手段64に備えられる冷却板64aは、加熱後の溶融した接着剤を冷却するための板状部材であり、熱伝導性の良好な材質、たとえばアルミニウムによって形成されるのが好ましい。さらに、冷却板64aには、放熱効果を向上させるために、複数の放熱フィンが設けられるのが好ましい。
【0128】
図7は、クランプユニットU4を上方から見た斜視図である。クランプユニットU4は、ニップユニットU3および固定ユニットU5の上方に設けられ、主として、製本されるべき中頁シート束C3をその厚み方向に挟持するクランプ手段を備える。
【0129】
クランプユニットU4は、フレーム40と、一対のクランプ部材であるクランププレート対41と、クランププレート対41のうち変位側プレート41bを前後方向Xに沿って変位させるためのプレート前後変位機構42と、第5操作片43と、クランププレート対41を上下方向Zに沿って移動させるためのプレート上下移動機構44と、第6操作片45とを有する。
【0130】
クランププレート対41は、矩形板状に形成された固定側および変位側プレート41a,41bから成り、先細のテーパ状に形成された下端部が、シート搬送経路Vよりも上方に位置するように支持されている。
【0131】
固定側プレート41aは、前後方向Xに関して予め定める位置で、フレーム40に対して固定されている。また、変位側プレート41bは、固定側プレート41aよりも搬送方向上流側で、かつ固定側プレート41aに対向して配置され、前後方向Xに沿って変位可能に支持されている。すなわち、変位側プレート41bは、固定側プレート41aに対し近接する方向および離反する方向に変位可能に支持されている。
【0132】
ここで、変位側プレート41bの前後方向Xへの変位機構について説明する。
クランプ変位手段であるプレート前後変位機構42は、2つの台形ネジ部42a,42bと、タイミングベルトT3とを備えている。
【0133】
台形ネジ部42a,42bは、それぞれネジ軸とナット部とを備え、変位側プレート41bの搬送方向上流側に臨む表面41cに各ナット部を固定し、前後方向Xに沿って延設される各ネジ軸の一端部を各ナット部に螺着させることによって、変位側プレート41bに取り付けられている。また各ネジ軸間には、台形ネジ部42aのネジ軸の回転が台形ネジ部42bのネジ軸に伝達するように、タイミングベルトT3が巻き掛けられて張架されている。
【0134】
したがって、プレート前後変位機構42は、台形ネジ部42aのネジ軸をその軸線まわりに回転させることによって、変位側プレート41bを前後方向Xに変位させることができる。このように、固定側および変位側プレート41a,41bの前後方向Xの間隔を変化させることができるので、クランププレート対41は、製本されるべき中頁シート束C3を厚さによらず挟持することができる。
【0135】
また、台形ネジ部42aのネジ軸のナット部が螺着される側とは反対側の端部には、略短円柱状の部材から成る第5操作片43が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されている。したがって、操作者は、この第5操作片43を把持して、台形ネジ部42aのネジ軸を軸線まわりに容易に回転させることができる。
【0136】
また、固定側および変位側プレート41a,41bは、連動して上下方向Zに移動可能に構成されている。詳細には、固定側および変位側プレート41a,41bは、フレーム40、プレート前後変位機構42および第5操作片43と一体的に、上下方向Zに移動するように構成されている。
【0137】
ここで、固定側および変位側プレート41a,41bの上下方向Zへの移動機構について説明する。
【0138】
移動手段であるプレート上下移動機構44は、2つの台形ネジ部44a,44bと、タイミングベルトT4とを備えている。
【0139】
台形ネジ部44a,44bは、それぞれネジ軸とナット部とを備え、変位側プレート41bの搬送方向上流側に臨む表面41cと各ナット部とを連結し、上下方向Zに沿って延設される各ネジ軸の一端部を各ナット部に螺着させることによって、変位側プレート41bに取り付けられている。また各ネジ軸間には、台形ネジ部44aのネジ軸の回転が台形ネジ部44bのネジ軸に伝達するように、タイミングベルトT4が巻き掛けられて張架されている。
【0140】
したがって、プレート上下移動機構44は、台形ネジ部44aのネジ軸をその軸線まわりに回転させることによって、変位側プレート41bを上下方向Zに移動させることができる。このとき、固定側および変位側プレート41a,41b、フレーム40、プレート前後移動機構42および第5操作片43は一体的に移動するように連結されている。このように構成されているので、中頁シート束C3を挟持した状態で、クランププレート対41を上下方向Zに移動させることができる。
【0141】
また、台形ネジ部44aのネジ軸のナット部が螺着される側とは反対側の端部には、略短円柱状の部材から成る第6操作片45が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されている。したがって、操作者は、この第6操作片45を把持して、台形ネジ部44aのネジ軸を軸線まわりに容易に回転させることができる。
【0142】
さらに、変位側プレート41bは、変位側プレート41bの前後方向Xへの変位に連動して、前述するニップユニットU3に備えられる第1変位伝達片32が前後方向Xへ変位するように、第1変位伝達片32に対して連結されている。すなわち、変位側プレート41bは、変位側ニップ機構31およびクリース片140bと一体的に前後方向Xに変位するように構成されている。
【0143】
このような構成によって、操作者は、第5操作片43を回転操作するだけで、中頁シート束C3をクランププレート対41に挟持させると同時に、表紙シートC1に2本の折り筋C11を刻設するためのクリース片140a,140bを、その中頁シート束C3の厚みに応じた間隔で前後方向Xに沿って離間するように、自動的に配置させることができる。したがって、クリース片140a,140bを適切な間隔に配置する工程を省略することができるので、製本作業に要する時間を短縮することができる。
【0144】
また、操作者は、第5操作片43を回転操作するだけで、中頁シート束C3をクランププレート対41に挟持させると同時に、表紙シートC1を背折り成形するための変位側および固定側ニップ機構31,51を、その中頁シート束C3の厚みに応じた間隔で前後方向Xに沿って離間するように、自動的に配置させることができる。したがって、変位側および固定側ニップ機構31,51を適切な間隔に配置する工程を省略することができるので、製本作業に要する時間を短縮することができる。
【0145】
図8は、変位側ニップ機構31、固定側ニップ機構51およびニップ駆動機構71を示す平面図である。図9は、変位側ニップ機構31および固定側ニップ機構51を示す断面図であり、図8の切断面線IX−IXから見た断面を示す。
【0146】
変位側ニップ機構31は、前述するように、変位側プレート41bと一体的に変位するように構成されている。また、固定側ニップ機構51は、移動側ニップ機構31と同様の構成を有しており、変位側ニップ機構31と固定側ニップ機構51とは、固定側プレート41aおよび変位側プレート41bの互いに対向する各面と平行、かつ該対向する各面から等距離の位置にある仮想平面に関して、面対称となるように各構成が配置されている。
【0147】
ニップ手段を構成する変位側ニップ機構31、固定側ニップ機構51およびニップ駆動機構71は、クランププレート対41に挟持された中頁シート束C3の背綴じ端部C31と、表紙シートC1の背表紙部C12とを接着剤C2で接着する際に、表紙シートC1の表表紙部C13および裏表紙部C14をそれぞれ折り筋C11で折る処理を行い、さらに、互いに連動して動作することによって、表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31の近傍を、中頁シート束C3の厚み方向両側から協働してニップする処理を行うように構成されている。
【0148】
なお、変位側ニップ機構31と固定側ニップ機構51とは、前述するように、同様に構成されるので、以下では、変位側ニップ機構31について説明し、固定側ニップ機構51についての説明は省略する。なお、図において、変位側ニップ機構31に関する構成については参照符の末尾に「p」を付し、固定側ニップ機構51において対応する構成については参照符の末尾に「q」を付して示す。
【0149】
また、変位側ニップ機構31および固定側ニップ機構51は、後述するように、駆動軸81p,81qの軸線まわりに回動可能に構成されるとともに、互いに連動して動作するように構成され、変位側ニップ機構31に備えられる一方のニップ部材であるニップ片821pと、固定側ニップ機構51に備えられる他方のニップ部材であるニップ片821qとを、所定の経路に沿って近接および離反させるように構成されている。
【0150】
以下、ニップ片821pとニップ片821qとが、最も離反した位置にある状態を待機状態と称し、最も近接した位置にある状態をニップ状態と称する。なお、図8および図9では、待機状態にある変位側ニップ機構31および固定側ニップ機構51を仮想線で示している。
【0151】
変位側ニップ機構31は、回転駆動力が付与される駆動軸81pと、駆動軸81pの回転に連動して所定の経路に沿って移動可能に設けられるニップ体82pと、ニップ体82pを該所定の経路に沿って移動させるための案内部83pとを有する。
【0152】
駆動軸81pは、左右方向Yに平行に各第3側壁30に亘って架設され、その軸線方向両端部が、各第3側壁30に軸受によって回転可能に支持され、さらに、一方の端部が、第3側壁30nから外側へ突出している。
【0153】
ニップ体82pは、各第3側壁30間の寸法よりも短く、かつ表紙シートC1の短辺の寸法よりも長くなるように形成された矩形板状(棒状)のニップ片821pと、ニップ片821pの長手方向両端部に対して取り付けられる一対のガイドピン取付板822pとを有する。
【0154】
各ガイドピン取付板822pには、厚み方向一方の表面部から突出するように、所定の方向Wに沿って間隔をあけて2つのガイドピン823p,824pが設けられている。以下、2つのガイドピン823p,824pのうち、後述するニップ片821pの押圧面部825pに近接する側のガイドピン823pを「第1ガイドピン」と記し、他方のガイドピン824pを「第2ガイドピン」と記す。
【0155】
各ガイドピン取付板822pは、厚み方向他方の表面部が互いに対向するように、ニップ片821pの長手方向両端部に対して、ボルトなどの締結手段によって締結されて固定されている。
【0156】
このとき、ニップ片821pの長手方向および厚み方向に垂直な方向(以下、「短手方向」と記す)の一端部が各ガイドピン取付板822pの一側縁部から突出するように、かつ、2つのガイドピン823p,824pが突設されている前記所定の方向Wとニップ片821pの短手方向とが一致するように、ガイドピン取付板822pは、ニップ片821pに対して固定されている。ニップ片821pにおいて、ガイドピン取付板822pの一側縁部から突出した側の端面825pは、矩形状の平坦な面であり、短手方向に対して垂直な面である。以下、この端面825pを「押圧面部」と記す。
【0157】
案内部83pは、ニップ体82pを所定の経路に沿って移動させるためのガイド溝833pが厚み方向に貫通して穿設された一対のガイド板831pと、ニップ体82pを所定の経路に沿って移動させるための駆動力をニップ体82pに対して伝達する一対のガイドレバー832pとを有する。
【0158】
各ガイド板831pは、各第3側壁30における互いに対向する内壁面部に対して、ガイド板831pの厚み方向と左右方向Yとが一致するように、ボルトなどの締結手段によって締結されて固定されている。そして、各ガイド板831pには、ガイドピン取付板822pに突設された第1および第2ガイドピン823p,824pが係合されるガイド溝833pが、各ガイドピン823p,824pが摺動可能な溝幅で、所定の経路に沿って形成されている。
【0159】
各ガイドレバー832pは、左右方向Yに関してガイド板831pが設けられる位置よりも内方の位置において、その長手方向一端部が、駆動軸81pに対してボルトなどの締結手段によって締結されて固定されている。すなわち、ガイドレバー832pは、駆動軸81pに対して回転駆動力が付与されると、駆動軸81pと一体的に、駆動軸81pの軸線まわりに角変位するように構成されている。また、ガイドレバー832pの他端部近傍には、第2ガイドピン824pが係合される長孔834pが、第2ガイドピン824pが摺動可能な溝幅で形成されている。
【0160】
変位側ニップ機構31は、各第1ガイドピン823pを各ガイド板831pのガイド溝833pにそれぞれ係合させ、各第2ガイドピン824pを各ガイドレバー832pの長孔834pに挿通してから、各ガイド板831pのガイド溝833pにそれぞれ係合させることによって構成されている。このとき、ニップ体82pは、ニップ片821pの押圧面部825pが搬送方向下流側に臨むように取り付けられる。
【0161】
このような構成により、変位側ニップ機構31は、駆動軸81pがその軸線まわりに回転駆動されると、ガイドレバー832pの長孔834pに臨む内周面部が、第2ガイドピン824pを駆動軸81pの回転方向に沿って押圧する。そして、この押圧力によって、ニップ体82pは、第1および第2ガイドピン823p,824pがガイド溝833pによって案内されながら、前記所定の経路に沿って移動する。すなわち、変位側ニップ機構31は、駆動軸81pの回転に連動して、ニップ片821pの押圧面部825pを、該所定の経路に沿って移動させるように構成されている。
【0162】
さらに、変位側ニップ機構31は、待機状態において、ニップ片821pの押圧面部825pがシート搬送経路Vよりも下方に位置し、ニップ状態において、ニップ片821pの押圧面部825pが変位側プレート41bと加熱板65aとの間に位置するように構成されている。
【0163】
ここで、各ガイド板831pに穿設されたガイド溝833pについて説明する。待機状態におけるニップ体82pの位置を「待機位置」とし、ニップ状態におけるニップ体82pの位置を「ニップ位置」とすると、ガイド溝833pは、ニップ体82pを待機位置からシート搬送経路Vよりも上方の最上位置まで案内する第1ガイド溝835pと、第1ガイド溝835pに連なり、ニップ体82pを前記最上位置からニップ位置まで移動させる第2ガイド溝836pとから成る。
【0164】
したがって、表紙シートC1の背表紙部C12が加熱板65aにおける載置面部65dの所定の位置に上載されるように、表紙シートC1が所定の位置(以下、「背折り成形位置」と記す)に配置された後、待機位置にあるニップ体82pを第1ガイド溝835pに沿って移動させることにより、押圧面部825pによって表表紙部C13を折り筋C11で折り曲げることができる。そして、ニップ体82pを第2ガイド溝836pに沿って移動させることにより、押圧面部825pによって表表紙部C13をさらに折り、ニップ位置において、表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31の近傍を、押圧面部825pによって搬送方向下流側に向かって押圧することができる。
【0165】
本実施形態では、第2ガイド溝836pは、搬送方向下流側から上流側に向かって下方に傾斜するように、すなわち前記最上位置からニップ位置に向かって押圧面部825pを下降させながら移動させるように形成されている。また、前述するように、ニップ体82pにおいて、2つのガイドピン823p,824pが突設されている所定の方向Wと、ニップ片821pの短手方向とが平行になるように形成されている。
【0166】
すなわち、変位側ニップ機構31は、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍をニップするとき、加熱板65aの載置面部65dに臨む、換言すれば第2ガイド溝836pの延びる方向に対して垂直な押圧面部825pを、表紙シートC1の背表紙部C12に向かって、換言すればニップ位置まで下降させながら、移動させるように構成されている。
【0167】
また、同様に、固定側ニップ機構51は、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍をニップするとき、加熱板65aの載置面部65dに臨む、換言すれば第2ガイド溝836qの延びる方向に対して垂直な押圧面部825qを、表紙シートC1の背表紙部C12に向かって、換言すればニップ位置まで下降させながら、移動させるように構成されている。
【0168】
このように、一対のニップ部材を備える変位側および固定側ニップ手段31,51は、中頁シート束C3の厚み方向に垂直な仮想平面に対して押圧面部825p,825qを傾斜させた状態で、表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍に向かって下降させながらニップ片821p,821qを移動させるので、押圧面部825p,825qの各上端縁を線接触させながら、協働して背綴じ端部C31近傍をニップすることができる。
【0169】
図10は、本実施形態に係る製本装置1を示す側面図である。図11は、移動側ニップ機構31、固定側ニップ機構51およびニップ駆動機構71を示す側面図である。
【0170】
以下、ニップ駆動機構71について説明する。ニップ駆動機構71は、移動側ニップ機構31と固定側ニップ機構51とを協働して動作させるように構成された駆動機構であり、ニップユニットU3の第3側壁30nの外壁面部と固定ユニットU5の第5側壁50nの外壁面部とに亘って設けられている。
【0171】
ニップ駆動機構71は、第1ウォームギア711と、第2ウォームギア712と、第1ウォームギア711のウォーム711aが同軸に固定される第1回転軸713と、第2ウォームギア712のウォーム712aが同軸に固定される第2回転軸714と、第1回転軸713の軸線まわりの回転を第2回転軸714に伝達する歯車列715と、第7操作片716とを有する。
【0172】
第1回転軸713は、前後方向Xに平行に延設され、第5側壁50nの外壁面部に設けられたブラケットに軸受を介して回転可能に支持されている。第1回転軸713の軸線方向の略中央部には、ウォーム711aが設けられ、ウォーム711aの上方には、ウォーム711aに噛合するウォームホイール711bが設けられている。なお、第1ウォームギア711は、ウォーム711aとウォームホイール711bとによって構成されている。
【0173】
ウォームホイール711bは、第5側壁50nから外側に突出する固定側ニップ機構51の駆動軸81qに同軸に固定されている。すなわち、第1回転軸713の軸線まわりの回転が、駆動軸81qの軸線まわりの回転に変換されるように構成されている。
【0174】
第2回転軸714は、前後方向Xに平行に延設され、第2回転軸714の一端部は、第3側壁30nの外壁面部に設けられたブラケットに軸受を介して回転可能に支持されている。第2回転軸714の軸線方向の略中央部には、ウォーム712aが設けられ、ウォーム712aの下方には、ウォーム712aに噛合するウォームホイール712bが設けられている。なお、第2ウォームギア712は、ウォーム712aとウォームホイール712bとによって構成されている。
【0175】
ウォームホイール712bは、第3側壁30nから外側に突出する変位側ニップ機構31の駆動軸81pに同軸に固定されている。すなわち、第2回転軸714の軸線まわりの回転が、駆動軸81pの軸線まわりの回転に変換されるように構成されている。
【0176】
そして、第1回転軸711と第2回転軸712との間には、第1回転軸711の軸線まわりの回転を第2回転軸712に伝達するための歯車列715が設けられている。この歯車列715は、複数(本実施形態では3つ)の歯車によって構成され、第5側壁50nの外壁面部に設けられたハウジング内に収納されている。
【0177】
したがって、第1回転軸713をその軸線まわりに回転させることによって、第1ウォームギア711を介して駆動軸81qをその軸線まわりに回転させることができ、同時に、歯車列715を介して第1回転軸713の回転が第2回転軸714に伝達され、第2ウォームギア712を介して駆動軸81pをその軸線まわりに回転させることができる。これにより、変位側ニップ機構31および固定側ニップ機構51を、待機状態からニップ状態へ、固定側プレート41aおよび変位側プレート41bの互いに対向する各面と平行、かつ該対向する各面から等距離の位置にある仮想平面に関して、面対称に変化させることができる。
【0178】
第1回転軸713の歯車が連結される側とは反対側の端部には、略短円柱状の部材から成る第7操作片716が、ボルトなどの締結手段によって同軸に固定されているので、操作者は、この第7操作片716を把持して、第1回転軸713を軸線まわりに容易に回転させることができる。
【0179】
また、第2回転軸714の歯車が連結される側の端部近傍には、円柱状の軸の一部を切り欠いて形成された、軸線に垂直な断面の形状が略半月状である切欠き部714aが設けられている。さらに、第2回転軸714に駆動力を伝達する歯車には、第2回転軸714の切欠き部714aが挿通される貫通孔が形成される。該貫通孔は、第2回転軸714の切欠き部714aが軸線方向に摺動可能であり、かつ、該歯車の回転を第2回転軸714に対して伝達可能な形状に形成される。したがって、製本されるべき中頁シート束C3の厚みに応じて、ニップユニットU3が前後方向Xに移動した場合であっても、第1回転軸713の回転を第2回転軸714に伝達することができるように構成されている。
【0180】
本実施形態に係る製本装置1は、上記に説明する各ユニットU1〜U6を搭載することにより、以下に説明する冊子Cの製本処理を行う。なお、本実施形態に係る製本装置1は、前述するように、第1および第2ローラ対11,21を駆動させるための第1操作片12と、各クリース片140a,140bを左右方向Yに移動させるための第2操作片15と、第3ローラ対52を駆動させるための第3操作片53と、冷却板64aおよび加熱板65aをクランププレート対41の下方の所定の位置に配置するための第4操作片66と、変位側プレート41bを前後方向Xに移動させるための第5操作片43と、クランププレート対41を上下方向Zに移動させるための第6操作片45と、ニップ体82p,82qを所定の経路に沿って待機位置からニップ位置まで移動させるための第7操作片716とを、操作者が手動で回転操作するように構成されている。しかしながら、駆動力を付与する複数のモータ、ならびに、各モータを適切に動作させるためのセンサおよび制御装置を用いることによって、自動的に製本処理が行われるように構成されていてもよい。
【0181】
また本実施形態に係る製本装置1は、前述するように、ホットメルトシートC2を表紙シートC1の背表紙部C12の上面に載置する際、操作者が手作業で載置するように構成されている。しかしながら、自動的にホットメルトシートC2を載置するように構成されてもよい。このとき、ホットメルトシートの原反から所定の大きさのホットメルトシートC2に裁断するように構成するのが好ましい。具体的には、前述するクリース機構14と同様に、ホットメルトシートを裁断するために一対のカッタを搭載し、該カッタの一方を変位側プレート41bと一体的に変位させるように構成することによって実現するのが好ましい。
【0182】
図12は、本実施形態に係る製本装置1による製本処理手順を示すフローチャートである。図13および図14は、製本処理手順を説明するための製本装置1の内部構造を簡素化して示す図である。
【0183】
図13(a)は、クランププレート対41によって製本されるべき中頁シート束C3が挟持されている状態を示し、図13(b)は、表紙シートC1がクリース刻設位置に配置された状態を示し、図13(c)は、2本の平行な折り筋C11が刻設された表紙シートC1が接着剤載置位置に配置された状態を示し、図13(d)は、ホットメルトシートC2が背表紙部C12に載置された表紙シートC1が背折り成形位置に配置された状態を示している。
【0184】
また、図14(a)は、表紙シートC1が移動側および固定側ニップ機構31,51によって背折り成形されている状態を示し、図14(b)は、表紙シートC1の背表紙部C12が冷却されている状態を示し、図14(c)は、接着剤固化後の中頁シート束C3が上方へ移動された状態を示し、図14(d)は、中頁シート束C3がクランププレート対41から解放された状態を示している。
【0185】
まず、ステップs1で製本処理作業が開始される。具体的には、製本されるべき複数枚の中頁シートが部揃えされた中頁シート束C3が準備されるとともに、表紙シートC1が準備される。中頁シート束C3および表紙シートC1の準備ができれば、ステップs2に進む。
【0186】
このとき、クランププレート対41の下方の所定の位置には、冷却板64aが配置され、加熱板65aは、冷却板64aよりも搬送方向下流側の予め定める退避位置に配置されている。また、ニップ体82p,82qは、それぞれ待機位置に配置されている。さらに、変位側プレート41bは、固定側プレート41aから最も離間した位置に配置されている。
【0187】
ステップs2では、中頁シート束C3を固定側および変位側プレート41a,41b間へ挿入し、中頁シート束C3の背綴じ端部C31を冷却板64aの上面部に支持させ、第5操作片43を回転操作することによって、変位側プレート41bを固定側プレート41aに近接する方向へ移動させて、図13(a)に示すように、クランププレート対41に中頁シート束C3を挟持させる。中頁シート束C3が挟持されると、ステップs3に進む。
【0188】
このとき、前述するように、変位側プレート41bは、変位側ニップ機構31およびクリース片140bと一体的に前後方向Xに変位するように構成されている。したがって、中頁シート束C3の厚み寸法D2に応じて、2本の折り筋C11を刻設するためのクリース片140a,140bを、折り筋C11の間隔D1が所定の間隔となるように自動的に配置させることができる。同様に、中頁シート束C3の厚み寸法D2に応じて、表紙シートC1を背折り成形するための変位側および固定側ニップ機構31,51を、ニップ位置における押圧面部825p,825qが所定の間隔となるように自動的に配置させることができる。これにより、クリース片140a,140bを適切な間隔に配置する工程、および、変位側および固定側ニップ機構31,51を適切な間隔に配置する工程を省略することができるので、製本作業に要する時間を可及的に短縮することができる。
【0189】
ステップs3では、表紙シートC1を第1ローラ対11間に挿入し、第1操作片12を回転操作することによって、図13(b)に示すように、表紙シートC1をクリース刻設位置に配置し、さらに、第6操作片45を回転操作することによって、クランププレート対41によって挟持された中頁シート束C3を上方へ移動させる。
【0190】
そして、表紙シートC1がクリース刻設位置に配置された後、第2操作片15を回転操作することによって、各クリース片140a,140bを一体的に左右方向Yに移動させる。これにより、表紙シートC1に対して、2本の折り筋C11が平行に形成される。2本の折り筋C11が形成されると、ステップs4に進む。
【0191】
ステップs4では、第1操作片12を回転操作することによって、2本の平行な折り筋C11が刻設された表紙シートC1を接着剤載置位置に配置し、図13(c)に示すように、ホットメルトシートC2が表紙シートC1の背表紙部C12の上面に載置される。ホットメルトシートC2が載置されると、ステップs5に進む。
【0192】
ステップs5では、第4操作片66を回転操作することによって、移動体63を搬送方向上流側へ移動させて、加熱板65aをクランププレート対41の下方の所定の位置に配置させる。さらに、第1および第3操作片12,53を回転操作することによって、図13(d)に示すように、ホットメルトシートC2が背表紙部C12に載置された表紙シートC1を背折り成形位置に配置させる。表紙シートC1が背折り成形位置に配置されると、ステップs6に進む。
【0193】
このとき、表紙シートC1の表表紙部C13および裏表紙部C14は、それぞれ第2ローラ対21および第3ローラ対52によって挟持されている。したがって、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と加熱板65aの載置面部65dとによって背表紙部C12が挟持される前に、表紙シートC1の背表紙部C12が、所定の位置からずれてしまうことを防止することができる。
【0194】
ステップs6では、先ず、第6操作片45を回転操作することによって、加熱板65aの上方に配置されている、中頁シート束C3を挟持したクランププレート対41を、下方へ移動させる。このとき、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と加熱板65aの載置面部65dとによって、表紙シートC1の背表紙部C12を固く挟持させる。
【0195】
そして、第7操作片716を回転操作することによって、表紙シートC1を折る処理、および、表紙シートC1を折ることによって表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31の近傍をニップする処理を行って、図14(a)に示すように、表紙シートC1を背折り成形する。
【0196】
さらに、ヒータ65bを作動させて加熱板65aを加熱することによって、背綴じ端部C31と背表紙部C12との間に介在されているホットメルトシートC2を熱によって溶融させる。このとき、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と加熱板65aの載置面部65dとによって、表紙シートC1の背表紙部C12およびホットメルトシートC2が固く挟持されているので、溶融した接着剤C2を、背綴じ端部C31と背表紙部C12との間だけでなく、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍において、表紙シートC1の表表紙部C13と中頁シート束C3の厚み方向の一表面との間、および、表紙シートC1の裏表紙部C14と中頁シート束C3の厚み方向の他表面との間に、容易に流入させることができる。したがって、中頁シート束C3と表紙シートC1とを充分な接着強度で接着することができる。ホットメルトシートC2が溶融すると、ステップs7に進む。
【0197】
ここで、表紙シートC1の背折り成形工程について説明する。図15A〜Dは、表紙シートC1の背折り成形工程を説明するための図である。図15Aは、ホットメルトシートC2が背表紙部C12に載置された表紙シートC1が背折り成形位置に配置された状態(図13(d)に示す状態)から、第6操作片45を回転操作することによって、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と加熱板65aの載置面部65dとによって、表紙シートC1の背表紙部C12を固く挟持させた状態を示している。
【0198】
図15Bは、図15Aに示す状態から、第7操作片716を回転操作することによって、待機位置に配置されているニップ体82p,82qをシート搬送経路Vよりも上方に移動させ、ニップ片821p,821qの押圧面部825p,825qによって、表表紙部C13および背表紙部C14を2本の平行な折り筋C11で折っている状態を示している。
【0199】
図15Cは、図15Bに示す状態から、第7操作片716をさらに回転操作することによって、ニップ体82p,82qを第2ガイド溝836p,836qに沿って下降させながら移動させている状態を示している。
【0200】
図15Dは、図15Cに示す状態から、第7操作片716をさらに回転操作することによって、ニップ体82p,82qをニップ位置まで移動させ、ニップ片821p,821qの押圧面部825p,825qの各上端縁によって、表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31の近傍をニップしている状態を示している。
【0201】
図15A〜Dに示すように、本実施形態に係る製本装置1では、変位側および固定側ニップ機構31,51によって表紙シートC1を背折り成形するとき、背折り成形位置に配置された表紙シートC1の背表紙部C12が加熱板65aの平坦な載置面部65dに載置され、さらに該背表紙部C12が中頁シート束C3の背綴じ端部C31と載置面部65dとによって固く挟持されるように構成されている。
【0202】
したがって、表表紙部C13および裏表紙部C14がそれぞれ第2および第3ローラ対21,52に挟持されている場合であっても、表紙シートC1の背表紙部C12が所定の位置から前後方向Xにずれることなく、各押圧面部825p,825qによって表表紙部C13および裏表紙部C14をそれぞれ上方へ持ち上げ、表紙シートC1を背折り成形することができる。
【0203】
また、図15Aに示すように、本実施形態に係る製本装置1では、中頁シート束C3を挟持するクランププレート対41を加熱板65aの載置面部65dに向かって移動させるように構成されている。したがって、表紙シートC1の背表紙部C12を挟持させる際に、背表紙部C12が所定の位置から前後方向Xにずれてしまうことを効果的に防止することができる。
【0204】
このように、製本装置1は、表紙シートC1を背折り成形するとき、背表紙部C12が所定の位置から前後方向Xにずれてしまうことを防止することができるので、中頁シート束C3の背綴じ端部C31と表紙シートC1の背表紙部C12とを確実に充分な位置精度で接着させることができる。
【0205】
なお、本実施形態に係る製本装置1は、前述するように、表紙シートC1に2本の平行な折り筋C11を刻設するためのクリース機構14を備えている。したがって、各押圧面部825p,825qによって表表紙部C13および裏表紙部C14を折る際に、折り筋C11で容易に折ることができる。
【0206】
図16は、押圧面部825p,825qによってニップされている状態の背綴じ端部C31近傍を示す拡大断面図である。前述するように、変位側および固定側ニップ手段31,51は、中頁シート束C3の厚み方向に垂直な仮想平面に対して押圧面部825p,825qを傾斜させた状態で、表紙シートC1で覆われた中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍に向かって下降させながらニップ片821p,821qを移動させるので、押圧面部825p,825qの各上端縁を線接触させながら、協働して背綴じ端部C31近傍をニップすることができる。
【0207】
ここで、中頁シートが樹脂によって表面が被覆された樹脂コーティングシートである場合には、各中頁シートにある程度の厚みがあり、かつ樹脂でコーティングされているため、図16に示すように、上端縁によってニップされると、そのニップされている部分を、中頁シート束C3の厚み寸法D2よりも厚みを小さく、すなわち厚み方向両側から凹ませることができる。
【0208】
これにより、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍において、表紙シートC1の表表紙部C13と中頁シート束C3の厚み方向の一表面との間に、溶融した接着剤を充分に流入させるための空間SP1を形成することができ、また、表紙シートC1の裏表紙部C14と中頁シート束C3の厚み方向の他表面との間に、溶融した接着剤を充分に流入させるための空間SP2を形成することができる。この充分な量の接着剤によって、中頁シート束と表紙シートとを充分な接着強度で接着することができる。
【0209】
また、前記のように、厚み方向両側から凹ませることができるので、背綴じ端部C31において各中頁シートが厚み方向に広げることができ、各中頁シート間に溶融した接着剤を充分に浸透させることができる。
【0210】
また、変位側および固定側ニップ機構31,51は、ホットメルトシートC2が載置されている高さ位置から上方に離間した位置を、厚み方向に沿ってニップするように各ニップ片821p,821qを移動させるので、中頁シート束C3の背綴じ端部C31近傍において、表紙シートC1の表表紙部C13および裏表紙部C14と中頁シート束の厚み方向の各表面との間に、適度な大きさの空間SP1,SP2を形成することができる。したがって、溶融した接着剤を空間SP1,SP2に流入させることで、中頁シート束C3と表紙シートC1とを充分な接着強度で接着することができる。
【0211】
ステップs7では、ヒータ65bによる加熱を停止し、第4操作片66を回転操作することによって、図14(b)に示すように、移動体63を搬送方向下流側へ移動させて、冷却板64aをクランププレート対41の下方の所定の位置に配置させる。これにより、表紙シートC1の背表紙部C12が冷却板64aに当接し、溶融した接着剤C2が効果的に冷却される。接着剤が冷却されて固化すると、ステップs8に進む。
【0212】
ステップs8では、第7操作片716を回転操作することによって、図14(c)に示すように、ニップ体82p,82qをニップ位置から待機位置まで移動させてニッピングを解除し、さらに、第6操作片45を回転操作することによって、中頁シート束C3を挟持したクランププレート対41を上方へ移動させる。
【0213】
そして、第5操作片43を回転操作することによって、図14(d)に示すように、変位側プレート41bを固定側プレート41aから離反する方向へ移動させて、クランプを解除する。このとき、着脱可能に取り付けられている固定側プレート41aが、クランプユニットU4から取り外される。クランプが解除されると、ステップs9に進む。
【0214】
ステップs9では、製本装置1から製本された冊子Cを取り出すことによって製本処理が終了される。このとき、固定側プレート41aを取り外すことによって、冊子Cを取り出すための空間が広く確保されるため、製本された冊子Cを容易に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0215】
1 製本装置
14 クリース機構
21 第2ローラ対
31 変位側ニップ機構
41 クランププレート対
41a 固定側プレート
41b 変位側プレート
42 プレート前後変位機構
44 プレート上下移動機構
51 固定側ニップ機構
52 第3ローラ対
64a 冷却板
65a 加熱板
65b ヒータ
65d 載置面部
140a,140b クリース片
71 ニップ駆動機構
821p,821q ニップ片
825p,825q 押圧面部
C 冊子
C1 表紙シート
C2 ホットメルトシート
C3 中頁シート束
C11 折り筋
C12 背表紙部
C13 表表紙部
C14 裏表紙部
C31 背綴じ端部
U1 クリースユニット
U2 接着剤載置ユニット
U3 ニップユニット
U4 クランプユニット
U5 固定ユニット
U6 冷却加熱ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中頁シートから成る中頁シート束の一端部と、冊子の表表紙、裏表紙および背表紙を構成する表紙シートの背表紙となる部分とを、加熱によって溶融する接着剤によって接着する製本装置であって、
クランプ部材を備え、該クランプ部材によって前記中頁シート束を挟持させるクランプ手段と、
前記接着剤が載置されている前記背表紙となる部分が上載される平坦な載置面部を有する載置台と、
前記中頁シート束の一端部と前記載置面部とによって前記背表紙となる部分が挟持されるように、前記クランプ部材および前記載置台の少なくとも一方を移動させる移動手段と、
一対の棒状のニップ部材を備え、該ニップ部材を移動させることによって、表紙シートを折るとともに、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍を中頁シート束の厚み方向に沿ってニップして、表紙シートを背折り成形するニップ手段と、
前記接着剤を溶融させるための加熱部とを含み、
前記ニップ手段は、前記中頁シート束の一端部と前記載置面部とによって挟持されている表紙シートを背折り成形することを特徴とする製本装置。
【請求項2】
前記一対のニップ部材はそれぞれ平坦な押圧面部を有し、
前記ニップ手段は、中頁シート束の一端部近傍をニップするとき、前記押圧面部が前記載置面部に臨む姿勢で保持された各ニップ部材を、中頁シート束の厚み方向に対して傾斜する方向に表紙シートの背表紙となる部分に向かって移動させることを特徴とする請求項1に記載の製本装置。
【請求項3】
前記ニップ手段は、前記一対のニップ部材を、表紙シートで覆われた中頁シート束の一端部近傍において、接着剤が載置されている位置から離間した位置を、厚み方向に沿ってニップするように移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の製本装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記載置面部に上載されている表紙シートの背表紙となる部分に向けて、前記クランプ部材によって挟持された中頁シート束の一端部を移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項5】
前記接着剤が載置された表紙シートを、前記載置台における所定位置まで搬送するとともに、所定位置に位置決めされた表紙シートを挟持する表紙シート搬送手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項6】
一対のクリース刻設部材を備え、該クリース刻設部材によって背表紙となる部分を規定する2本の平行な折り筋を表紙シートに対して刻設させるクリース刻設手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項7】
クランプ手段は、一対の前記クランプ部材を備えるとともに、一方のクランプ部材を、他方のクランプ部材に対して近接および離反する方向へ変位させるクランプ変位手段をさらに含み、
一方のクリース刻設部材は、前記一方のクランプ部材の変位に連動して変位するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の製本装置。
【請求項8】
クランプ手段は、一対の前記クランプ部材を備えるとともに、一方のクランプ部材を、他方のクランプ部材に対して近接および離反する方向へ変位させるクランプ変位手段をさらに含み、
一方のニップ部材は、前記一方のクランプ部材の変位に連動して変位するように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記載置台を加熱するように構成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項10】
前記接着剤が加熱された後の表紙シートを冷却するための冷却台をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の製本装置。
【請求項11】
前記中頁シートが、樹脂によってコーティングされたシートであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の製本装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−83945(P2011−83945A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237774(P2009−237774)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)