説明

製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法

【課題】製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明では、製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法を開示している。本発明では、植物や農作物の廃棄処分した茎、粉末、葉等を原料として使用しており、加工過程は、農業用マルチシートに要求される機械強度、光透過性、通気性、保温性、保湿性或いはその他の特殊効果(殺菌消毒剤の添加、栄養元素の補充、肥料の放出制御等)を備え、効果的に制御を行うことができる。本発明で作製されるマルチシートは、経済的で、地球環境にやさしいという特性に優れ、原料由来が豊富、廉価、生分解が可能、土壌改良、時間及び工賃の節約、強いコントロール性等の特徴を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面を被覆する農業用マルチシートは地面の温度を向上させ、保湿し、肥料を減らし、雑草の生長を防止する等の作用によって農業の生産方法に変化をもたらし、その生産力を飛躍的に向上させた。現在では、根菜類などの野菜、苗圃、花卉、果物等の生産において多く利用されている。中国は1978年導入以来、マルチシートの使用面積は徐々に拡大されており、2005年には既に95.9万トンにも達した。使用面積は1353万hm2に達し、マルチシートを使用した栽培面積が世界最大の国となった。しかし、中国が現在使用しているマルチシートはポリエチレン(PE)やポリ塩化ビニール(PVC)であるため分子量が大きく、自然条件下での分解が困難で、しかも大量に使用しているマルチシートの厚さは0.012mm以下がメインであるために強度が弱く破れ易く、回収過程における工賃及び時間を浪費するうえリサイクルも難しく、土壌中への残留量が年々増加する故に、土壌構造を破壊し、土壌の浸透性を低下させ、深刻な白色汚染(テイクアウト用に使われる発泡スチロール製容器やビニール袋による)を引き起こし、再生利用不可能な有機化工原料を大量に消耗させている。そこで、マルチシートの長所を継承するのと同時に、マルチシートでは代替できない作用を備える、植物繊維から作られた紙製の農業用マルチシートが出現した。
【0003】
特許文献1の「植物繊維素(セルロース)製マルチシートとその製造技術」では、繊維素からの抽出、押出、粉砕、ポリマー分解、スルホン化溶解、ろ過、熟成しビスコース製造、シートスプレー、凝固、再生、脱硫、漂白、プラスチック化、引き伸ばし加圧、乾燥、コーティングの過程を経てシートを製造することが開示されている。
特許文献2の「農業用マルチシート及びその製造方法」では、植物繊維原料を漉いて製作した紙を用い、動植物油によって防水、皺防止、光を通過させるフィルムであり、本発明の紙製の農業用マルチシートは保温、保湿、空気や水を通さない特徴を有し、低温地区での使用に適していることが開示されている。
特許文献3の「サトウキビのカスと麦汁より製造する再生セルロース防水シート」では、銅アンモニア法に基づいて作られた再生セルロースシートは、可塑化及び乾燥後に分解性の低分子量ポリウレタンと不飽和ポリエステル樹脂を混合した塗料をシートの両面に塗布し、硬化・架橋により防水シートを得ることが開示されている。
特許文献4の「植物セルロースを用いた農業用マルチシート及びその製造方法」では、紙製農業用マルチシートのベースは全て天然植物繊維によって構成され、40〜50日被覆して自然に生物分解を行わせる。製造技術には伝統的な製紙技術が用いられることが開示されている。
特許文献5の「土壌を改良する紙製農業用マルチシートの製造方法」では、二層の木またはワラパルプセルロースの原紙の間に麦飯石の粉末をスプレー塗布し、その後、圧搾及び合成、カレンダリング及び穴あけ、カッティングを経て土壌を改良する紙製農業用マルチシートを製造することが開示されている。
特許文献6の「複合肥料、薬物タイプの紙製農業用マルチシートの製造方法」では、原生植物繊維を原料とし、現有する製紙設備を用いて製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第CN1088225(出願番号第92114514.4号)号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN1124085(出願番号第95109885.3号)号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第CN1149594(出願番号第95118161.0号)号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第CN1217351(出願番号第98121613.7号)号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第CN1339553(出願番号第01127449.2号)号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第CN1837465(出願番号第200610046262.7号)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、現有する紙製農業用マルチシートの製造方法は、多少なりとも再生不可能な資源に関わっていたり、質的欠陥や技術上の複雑性が存在し、コストが割高である現状が見られる。よって、経済的で、地球環境にやさしく、リサイクル可能で、コストを削減できる原料の由来が何かを深く考えていくことが紙製農業用マルチシートを推進応用する場合に第一に考えなければならない課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
公知技術の中には存在する欠点に鑑み、本発明では、技術的に成熟した製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法を提供する。これによって、農業用マルチシートは、要求される機械強度、光透過性、通気性、保温性、保湿性或いはその他の特殊効果(殺菌消毒剤の添加、栄養元素の補充、肥料の放出制御等)を備えることができる。本発明で作製される紙製農業用マルチシートの特徴は、それの有する経済的で、地球環境にやさしい特性にあり、原料由来は、豊富、廉価、生分解性、土壌改良、時間及び工賃の節約等の特徴を有するものとする。
【0007】
本発明の製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法の特徴は、次の加工技術の過程にある。
a.廃棄農作物の原料を分類整理し、茎、葉を一つのグループ、粉末、葉の刻屑を一つのグループとし、水分が12%±1%となるまで乾燥させる。
b.前記原料を比率に基づいて分類し称重した後、塵・埃・異物を取り除く。
c.茎、葉等の原料を研磨機に送り細かく砕いた後、定量の粉末、葉の刻屑と共に混合する。
d.混合後の原料中に原料重量3〜5倍の水を加え、20〜50分間、撹拌しながら蒸し煮をした後、ポンプを使ってパルプビーターマシーンに送り、10〜20mmの長さに叩く。
e.前記の粗繊維の液体を固液分離・圧搾し、抽出液を再混合缶に送り、固体をパルプビーターマシーンに送る。
f.再混合缶中の抽出液を先ずフィルターを通して篩い分けし、44mmを超える固体をろ過除去し、並びに、沈降、冷凍、ろ過を行い濃度50%±2%まで濃縮し、その濃縮液を調合缶に入れた後、選択性で成分添加を行い、予備とする。
g.e工程に述べた固体を再度パルプビーターマシーンに送り、平均長さが10mmとなるまで叩いて繊維液体原料を作り、更にハイドロファイナー(hydrafiner)に送り繊維を更に細かくし、回収水で液体原料を0.3%〜8%の濃度に希釈し、ポンプで材料配合ボックスに送り、予備とする。
h.原料配合ボックス中の液体原料を抄造機で繊維ベースに抄造し、抄造機によって水分が80%〜90%となるまで真空脱水し、更に圧搾後の水分を60〜70%とし、その後、水分が26〜50%となるまで乾燥させる。
i.配合調整缶内の濃縮調合物を水分が26%〜50%の繊維ベースに浸すか、ローラー又はスプレーしてウェット状態の農業用マルチシートを作る。
j.ウェット状態の農業用マルチシートをトンネル式の熱風乾燥機に入れて乾燥ネット上で水分が8%〜11%になるまで乾燥させ、冷却後、異なる用途もしくは規格に基づいて、巻取り、整理を行い、最後にマルチシートの完成品に包装する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の加工設備は、製紙工場の一般設備を選択可能である。また、実際の状況に応じて簡略化することも可能である。しかし、具体的な加工技術上のパラメータは全く異なり、製紙工場のように製紙化学品を使って蒸し煮や染色等をする工程を必要とせず、汚染を防止できる。しかも、加工過程において、殺菌消毒剤、農業用化学肥料、土壌改良剤を添加剤として農業用マルチシートに添加できるため、マルチシートを使用するのと同時に、土壌改良、肥料制御等が可能となり、農作物の廃棄原料をリサイクル利用でき、非常に経済的で地球環境にやさしいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法の加工過程は、次の通りである。
a.廃棄処分したタバコの葉の原料を分類整理し、茎、葉を一つのグループ、粉末、葉の刻屑を一つのグループとし、水分が12%±1%となるまで乾燥させる。
b.原料を比率に基づいて分類し称重した後、材料投下設備を使って原料を風力篩い分け装置(pneumatic separator)に送り、塵・埃・異物を取り除く。
c.茎と葉の原料を研磨機に送り細かく砕いた後、定量の粉末、葉の刻屑の原料を撹拌装置を備える混合缶の中で混合する。
d.前記cの混合缶の中に原料重量3〜5倍の水を加え、20〜50分間、撹拌しながら蒸し煮を行い、ポンプを使ってパルプビーターマシーンに送り、10〜20mmの長さに叩く。
e.前記dの繊維液を螺旋圧搾機に送り圧搾、固液分離を行い、抽出液を再混合缶に送り、固体をパルプビーターマシーンに送る。
f.再混合缶中の抽出液を先ずフィルターを通して篩い分けし、44mmを超える固体をろ過除去し、製品の要求に応じるか、土壌や肥料に対する要求のためにある植物特性を指定するか、或いはある特性をマルチシートに与えるための技術的な要求がある等の特殊状況の下、選択性で、沈降、冷凍、ろ過等の分離技術を用いて抽出液に対して選択性の成分分離や添加を行い、殺菌消毒剤、栄養元素の補給、或いは肥料の放出制御をすることができる。並びに、減圧濃縮システムを使って、濃度を50%±2%まで濃縮し、その濃縮液を調合缶に入れた後、更に選択性の成分添加を行い、予備とする。調合缶内には必要に応じて化学肥料、殺虫剤等を加えて調合を行い、予備とする。
g.前記eの固体をパルプビーターマシーンに送って再度叩き、平均長さが10mmとなるまで叩いて繊維液体原料を作り、更にハイドロファイナー(hydrafiner)に送り繊維を更に細かくし、回収水で液体原料を0.3%〜8%の濃度に希釈し、ポンプで材料配合ボックスに送り、予備とする。
h.原料配合ボックス中の液体原料を抄造機で繊維ベースに抄造し、抄造機によって水分が80%〜90%となるまで真空脱水し、更に圧搾後の水分を60〜70%とし、その後、水分が26〜50%となるまで乾燥させる。抄造機のろ過した水は回収し再利用する。
i.配合調整缶内の濃縮調合物を水分が26%〜50%の繊維ベースに浸すか、ローラー又はスプレーしてウェット状態の農業用マルチシートを作る。
j.ウェット状態の農業用マルチシートをトンネル式の熱風乾燥機に入れて乾燥ネット上で水分が8%〜11%になるまで乾燥させ、冷却後巻取りを行い、設計や使用要求に符合する製紙法を用いたマルチシートに包装する。
【0010】
本発明の加工設備は、製紙工場の一般設備を選択可能である。また、実際の状況に応じて簡略化することも可能である。しかし、具体的な加工技術上のパラメータは全く異なり、製紙工場のように製紙化学品を使って蒸し煮や染色等をする工程を必要とせず、汚染を防止できる。タバコの廃棄原料から作製したマルチシートは、必要に応じて、その生産過程でタバコの農作物やその他の農作物の生長に必要な栄養のある肥料や有機殺虫剤を加えることができる。マルチシートを使用した後は、田畑の土壌を柔らかくし、生分解され、地球環境にやさしく、経済的で無公害のものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.廃棄処分にある農作物の原料を分類整理し、茎、葉を一つのグループ、粉末、葉の刻屑を一つのグループとし、水分が12%±1%となるまで乾燥させ、
b.前記原料を比率に基づいて分類し称重した後、塵・埃・異物を取り除き、
c.茎、葉等の原料を研磨機に送り細かく砕いた後、定量の葉の刻屑と共に混合し、
d.混合後の原料中に原料重量3〜5倍の水を加え、20〜50分間、撹拌しながら蒸し煮をした後、ポンプを使ってパルプビーターマシーンに送り、10〜20mmの長さに叩き、
e.前記の粗繊維液を固液分離・圧搾し、抽出液を再混合缶に送り、固体をパルプビーターマシーンに送り、
f.再混合缶中の抽出液を先ずフィルターを通して篩い分けし、44mmを超える固体をろ過除去し、並びに、沈降、冷凍、ろ過を行い濃度50%±2%まで濃縮し、その濃縮液を調合缶に入れた後、選択性で成分添加を行い予備とし、
g.e工程に述べた固体を再度パルプビーターマシーンに送り、平均長さが10mmとなるまで叩いて繊維液体原料を作り、更にハイドロファイナーに送り繊維を更に細かくし、回収水で液体原料を0.3%〜8%の濃度に希釈し、ポンプで材料配合ボックスに送り予備とし、
h.原料配合ボックス中の液体原料を抄造機で繊維ベースに抄造し、抄造機によって水分が80%〜90%となるまで真空脱水し、更に圧搾後の水分を60〜70%とし、その後、水分が26〜50%となるまで乾燥させ、
i.配合調整缶内の濃縮調合物を水分が26%〜50%の繊維ベースに浸すか、ローラー又はスプレーしてウェット状態のマルチシートを作り、
j.ウェット状態のマルチシートをトンネル式の熱風乾燥機に入れて乾燥ネット上で水分が8%〜11%になるまで乾燥させ、冷却後、異なる用途もしくは規格に基づいて、巻取り、整理を行い、最後にマルチシートの完成品に包装することを特徴とする製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法。
【請求項2】
前記f工程中の沈降、冷凍、ろ過、濃縮調合する場合、殺菌消毒剤の添加、栄養元素の補充、肥料の放出制御をすることができることを特徴とする請求項1記載の製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法。
【請求項3】
前記f工程中の調合缶は必要に応じて化学肥料、殺虫剤等を加えて調合し、予備とすることを特徴とする請求項1または2に記載の製紙法を使った、地球環境にやさしい多機能型有機マルチシートの製造方法。