説明

製織ケーブル及びそれを用いた製織ケーブル取付構造

【課題】製織ケーブル、及びこの製織ケーブルを配線に用いる特定の他部材に取り付けるための製織ケーブル取付構造を提供する。
【解決手段】略並行になるように並べられた複数本の電線1、及び電線1と略並行になるように配されているとともに、電線1間に介在された線状の介材21、を経糸とし、樹脂繊維3を緯糸として、製織された織布からなる製織ケーブル100である。介材21には、長手方向に延びる凹部が形成されており、介材21は、織布の一面側又は他面側に凹部の開口が向くようにされており、緯糸が凹部を跨ぐように配置されて、凹部が空隙41とされている。この空隙を跨ぐように配置された緯糸(樹脂繊維3)に、配線に用いる他部材の鉤状等のフック部が係止され、製織ケーブルが他部材に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製織ケーブル及びそれを用いた製織ケーブル取付構造に関する。更に詳しくは、本発明は、製織ケーブルを作製するときに、複数の電線が製織により結束されると同時に、他部材に取り付けるための別部材を必要としない製織ケーブル、及び製織ケーブル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力供給及び信号電送等に用いられる複数の電線を結束したワイヤーハーネスが、多くの電気配線を必要とする用途、例えば、車両の配線等において用いられている。また、ワイヤーハーネスは、通常、車両用内装材、車両のエンジンルーム、及びトランクルーム等に配設されている。そして、各々のコネクタ間の接続が外れないようにするため、クリップ及びクランプ等の部品などによって、例えば、インスツルメントパネル、ドアトリム、シート等の内装部材及び車体パネルなどに固定されている。このように、配線には、多くのワイヤーハーネス、コネクタ、クリップ及びクランプ等を必要とする。また、内装部材及び車体パネルなどの構造等により、配線の経路及び固定のための位置決め等には制約がある。よって、配線構造は複雑にならざるを得ない。
【0003】
更に、絶縁被覆線を経糸とし、ポリプロピレン系樹脂等からなる紐状体を緯糸とし、これらを製織してなる製織ケーブルも知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、特許文献1に記載された製織ケーブルでは、配線を固定するための部材に製織ケーブルを取り付ける方法については何ら考慮されておらず、取り付けるときには別部材が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−78011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の従来の状況に鑑みてなされたものであり、製織ケーブルを作製するときに、複数の電線が製織により結束されると同時に、他部材に取り付けるための別部材を必要としない製織ケーブル、及び製織ケーブル取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
1.略並行になるように並べられた複数本の電線、及び
前記電線と略並行になるように配されているとともに、前記電線間に介在された線状の介材、を経糸とし、
樹脂繊維を緯糸として、
製織された織布からなる製織ケーブルであって、
前記介材には、長手方向に延びる凹部が形成されており、
前記介材は、前記織布の一面側又は他面側に前記凹部の開口が向くようにされており、
前記緯糸が前記凹部を跨ぐように配置されて、前記凹部が空隙とされていることを特徴とする製織ケーブル。
2.前記介材は複数本あり、
前記電線と前記介材とが交互に並べられている前記1.に記載の製織ケーブル。
3.前記織布の前記一面側及び前記他面側の両側に前記凹部の開口が向くように、
前記介材には、前記凹部が複数箇所に形成されている前記1.又は2.に記載の製織ケーブル。
4.前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の製織ケーブルを、他部材に取り付けるための製織ケーブル取付構造であって、
前記他部材に備えられているフック部を、前記凹部を跨るように配置された前記製織ケーブルの前記緯糸に係止することを特徴とする製織ケーブル取付構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製織ケーブルによれば、介材の長手方向に延びる凹部が、織布の一面側又は他面側に向くように開口しており、複数の電線の結束と同時に、配線に用いる他部材に製織ケーブルを取り付けるための空隙が形成される。そのため、製織ケーブルを配線に用いる他部材に取り付けるための別部材を必要としない。また、配線経路及び固定のための位置決め等の制約が少なく、配線構造を簡略化することができ、複雑な配線経路を形成しなければならない車両等において特に有用である。更に、電線が経糸として用いられて製織されるため、複数の電線を束ねる等の面倒な作業が不要であるとともに、製織方法は通常の織り工法と同様であり、別途、特別な装置を必要とすることもなく、設備の汎用性が高い。
また、介材が複数本あり、電線と介材とが交互に並べられている場合は、空隙が、製織ケーブルの略全面に、より均等に形成されるため、製織ケーブルを、配線に用いる他部材に、より安定して取り付けることができ、位置決め等の制約もより少ない。
更に、織布の一面側及び他面側の両側に凹部の開口が向くように、介材に、凹部が複数箇所形成されている場合は、製織ケーブルの表裏に空隙が形成されるため、特に表裏を考慮することなく、製織ケーブルを他部材に、より容易に取り付けることができ、位置決め等の制約もより少ない。
本発明の製織ケーブル取付構造によれば、配線経路を形成するための他部材と、製織ケーブルとを接触させ、押圧するのみで、製織ケーブルを他部材に取り付けることができ。よって、配線経路及び固定のための位置決め等の制約が少なく、配線構造を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電線と介材とを経糸として交互に織り込み、緯糸として合成樹脂繊維を用いてなる本発明の製織ケーブルの一例の模式的な平面図である。
【図2】介材の一例の模式的な斜視図である。
【図3】介材の他の一例の模式的な斜視図である。
【図4】介材の他の一例の模式的な斜視図である。
【図5】介材の他の一例の模式的な斜視図である。
【図6】介材の他の一例の模式的な斜視図である。
【図7】図2の横断面形状の介材を用いて製織された製織ケーブルの断面の模式図である。
【図8】図4の横断面形状の介材を用いて製織された製織ケーブルの断面の模式図である。
【図9】図5の横断面形状の介材を用いて製織された製織ケーブルの断面の模式図であり、(a)では介材が上方(一面側)を向いて開口しており、(b)では介材が下方(他面側)を向いて開口している。
【図10】図6の横断面形状の介材を用いて製織され、介材に電線が嵌め込まれている製織ケーブルの断面の模式図である。
【図11】基部に鉤状のフック部が立設されてなる配線に用いる他部材の一例の模式図である。
【図12】図11の他部材の模式的な斜視図である。
【図13】基部にキノコ状のフック部が立設されてなる配線に用いる他部材の一例の模式図である。
【図14】図7の製織ケーブルが図11、12の配線に用いる他部材に固定されている様子を説明するための模式図である。
【図15】図10の製織ケーブルが図11、12の配線に用いる他部材に固定されている様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を、図も参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
[1]製織ケーブル
本発明の製織ケーブル100は、略並行になるように並べられた複数の電線1、及びこれらの電線1と略並行になるように配されている介材2を有する。そして、電線1と、電線1間に介在された線状の介材2と、を経糸とし、樹脂繊維3を緯糸として、製織された織布からなる(図1参照)。また、介材2には、長手方向に延びる凹部が形成されており、介材2は、織布の一面側又は他面側に凹部の開口が向くようにされており、凹部を跨ぐように緯糸が配置されている。そして、介材2に形成された凹部と緯糸とにより、織布に空隙が形成される(例えば、図7参照)。
尚、後述のように、製織ケーブルの配線に用いる他部材に備えられているフック部が、織布に形成された空隙における緯糸に係止されることで、製織ケーブルが他部材に取り付けられる。
【0011】
「電線1」は、経糸の一部として織り込まれ、製織ケーブル100では、複数の電線1が略並行に並べられている。電線1は特に限定されず、導体が絶縁被覆により覆われている絶縁電線でもよく、導体のみからなり、絶縁被覆を有していない裸電線でもよいが、通常、絶縁電線が用いられる。この絶縁電線としては、例えば、エナメル被覆線、ポリエチレン被覆線及びポリエステル被覆線等の各種の絶縁被覆が施された電線が挙げられる。また、絶縁電線は、単芯又は多芯のいずれの電線でもよい。更に、車両、特に乗用車等のシートクッションなどを暖めるための電力を供給する電線である場合、銅からなる導体に合成樹脂からなる絶縁被覆が設けられた絶縁電線等が用いられる。
【0012】
「介材2」は、線状の部材であり、電線1間に介在する。介材2は、経糸の他部として織り込まれ、電線1と略並行になるように配される。介材2としては、通常、樹脂を用いてなる成形体が用いられる。樹脂は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6等のポリアミド樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂などの各種の樹脂を用いることができる。成形方法も特に限定されないが、例えば、介材2の横断面の形状によって特定の開口を有する成形ダイが取り付けられた押出成形機を用いて連続的に成形する方法等が挙げられる。
【0013】
また、介材2には、長手方向に延びる「凹部」(図2の介材21の凹部21a等参照)が形成されている。介材2は、凹部が織布の一面側又は他面側を向くように織り込まれており、凹部と緯糸(樹脂繊維3)とによって「空隙」(図7の空隙41等参照)が形成される。介材2は凹部が形成されるような横断面形状を有しており、この横断面形状は凹部と緯糸とによって空隙が形成される限り、特に限定されない。
【0014】
介材2としては、例えば、横断面形状が円弧状である介材21(図2参照)が挙げられる。介材21では、内面側に凹部21aが形成され、この凹部21aが織布の一面側又は他面側を向いて開口するように製織される。円弧の形状も特に限定されず、その曲率も特に限定されない。このような介材21を用いた場合、図7のように、空隙41を有する製織ケーブル100が形成される。
【0015】
介材2の横断面形状は、U字状であってもよい(図3参照)。この介材22では、U字状の内面側に凹部22aが形成され、この凹部22aが織布の一面側又は他面側を向いて開口するように製織される。U字状の形状も特に限定されず、角部が略直角の形状であってもよく(図3参照)、角部が丸みを帯びていてもよい。この介材22でも、凹部22aが織布の一面側又は他面側を向いて開口するように製織される。このように、横断面形状がU字状である介材22を用いた場合、前述の介材21を用いたときと同様の製織ケーブルが形成される。
【0016】
更に、介材2の横断面形状は、略十字形であってもよい(図4参照)。この介材23では、略十字形の交点を中心として四方の外面側を向いた4個の凹部23aが形成される。このような介材23では、4個の凹部23aのうちの、交点を中心として対向する2個の凹部23aが、織布の一面側又は他面側に向いて開口することになる。また、略十字形も特に限定されず、略直角に交差する十字形でもよく、一方の交差角度が90°以上(他方の交差角度は90°未満になる。)でもよい。
【0017】
但し、一方の交差角度が30°未満(他方の交差角度は150°以上になる。)では、横断面方向からみて扁平な介材23となってしまい、後述の他部材のフック部を係止させるための空隙が形成され難くなる。そのため、一方の交差角度が45°以上(他方の交差角度は135°未満になる。)、特に60°以上(他方の交差角度は120°未満になる。)であることが好ましい。このように、横断面形状が略十字形の介材23を用いた場合、図8のように、空隙42a、42bを有する製織ケーブル101が形成される。
【0018】
また、介材2は、横断面形状が円弧状であるとともに、長手方向において所定間隔で円弧の開口の向きが異なっている形状であってもよい(図5参照)。この介材24の円弧状の横断面形状は、例えば、前述の、図2の介材21、及び図3の介材22等と同様とすることができる。
【0019】
更に、介材24では、長手方向において所定間隔で円弧の開口の向きが異なっており、凹部24aのうちの一部が、織布の一面側に向いて開口することになり、他部が織布の他面側に向いて開口することになる。開口の向きの相違は特に限定されないが、各々の開口が略反対側を向くように形成されることが好ましい。このように、横断面形状が円弧状であるとともに、長手方向において所定間隔で円弧の開口の向きが異なっている介材24を用いた場合、図9a、9bのように、空隙43a、43bを有する製織ケーブル102が形成される。
【0020】
また、介材2の横断面は、2個の円弧状部(電線収容部251、252)が中実部253により繋がれている形態であってもよい。この介材25の場合、各々の円弧状部251、252の開口部が開口する向きは異なっていてもよく(例えば、図6参照、また、一方が織布の一面側を向き、他方が織布の他面側を向いている形態であってもよい。)、同じでもよい(例えば、各々が織布の一面側又は他面側を向いている。)。更に、この介材25では、円弧状部251、252の径が中実部253の厚さより大きく、中実部253の一面側と他面側とに凹部25aが形成される(図6参照)。このような介材25では、2個の凹部25aのうちの一方が、織布の一面側に向いて開口することになり、他方が織布の他面側に向いて開口することになる。
【0021】
また、2個の円弧状部251、252の内部の空間は、それぞれ経糸として用いられる電線1とは異なる他の電線5、例えば、給電用、信号電送用等の機能の異なる電線5、及び線径の異なる、通常、電線1より小径の電線5、を収容する電線収容部(251、252)となる。2個の円弧状部251、252の中実部253を介しての位置関係は特に限定されないが、各々の円弧状部251、252が中実部253の略反対側に位置するような形状であることが好ましい。このように、2個の円弧状部251、252が中実部253により繋がれている介材25を用いた場合、図10のように、空隙44a、44bを有する製織ケーブル103が形成される。
【0022】
前述の各種の介材2のうち、図4の介材23、及び図6の介材25では、織布の一面側を向いている開口と、他面側を向いている開口とが、全長さに亘って形成されている。また、図5の介材24では、織布の一面側を向いている開口と、他面側を向いている開口とが、所定間隔をおいて形成されている。そのため、これらの介材23、24、25を用いた織布からなる製織ケーブル101、102、103は、一面側及び他面側のいずれも配線に用いる他部材に取り付けることができる。そのため、従来のように、配線の経路によっては、折り曲げる、捩ってケーブルの表裏を反転させる等を必要とすることなく、そのまま用いることができ、作業性に優れ、配線経路及び固定のための位置決め等の制約も少ない。
【0023】
経糸として用いられる介材2としては、前述の介材21〜25の他、織布の一面側又は他面側に向いて開口する凹部と緯糸とにより空隙が形成される各種の介材2を用いることができる。これらの介材2は、電線1とともに経糸として用いられ、製織されて織布が形成されるが、電線1間に介在させる介材2の配置は特に限定されない。電線1と介材2とは、交互に並べられていてもよい。また、電線1と介材2とが、規則正しい本数ごと(電線1と介材2の少なくとも一方が2本以上)及び配列順序で並べられていてもよい。更に、本数及び/又は配列順序が不規則に並べられていてもよい。これらの配置のうちでは、多数の空隙41等が織布の全面に均等に形成されるため、交互に並べられている配置が特に好ましい。
【0024】
また、電線1と介材2とが交互に並べられていない場合、連続して並べられる電線1の本数は2〜50本、特に2〜25本、更に2〜4本であることが好ましく、連続して並べられる介材2の本数は2〜50本、特に2〜25本、更に2〜4本であることが好ましい。過度に多数本の電線1及び介材2が連続して並べられている場合、十分な数の空隙41等が形成されない製織ケーブル100等となることがあり、他部材200等に取り付け難い製織ケーブル100等となってしまうことがある。
【0025】
前記「樹脂繊維3」は、緯糸として織り込まれる。樹脂繊維3は、経糸として用いられる電線1及び介材2と製織することができ、織布、即ち、製織ケーブル100等とすることができる限り、材質、繊度等は特に限定されない。樹脂繊維3の形成に用いる合成樹脂は特に限定されず、前述の介材2の成形に用いる各種のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等の、優れた強度等を有する樹脂繊維3とすることができる合成樹脂が挙げられる。更に、樹脂繊維3は、モノフィラメントでもよく、マルチフィラメントでもよい。
【0026】
また、製織ケーブル100等の織物組織も特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。この織物組織は特殊な織物組織とする必要はなく、通常、平織組織でよい。更に、緯糸として織り込まれる樹脂繊維3は、経糸として織り込まれる介材2に形成された、例えば、介材21に形成された凹部21aを跨ぐように配置され、この樹脂繊維3と、織布の一面側又は他面側を向いて開口した凹部21とによって空隙41(図7の製織ケーブル100参照)が形成される。
【0027】
樹脂繊維3と凹部21等とによって形成される空隙41等としては、この空隙41の他、下記の各種の空隙が挙げられる。
例えば、介材23に形成された凹部23aを跨ぐように配置された樹脂繊維3と、織布の一面側又は他面側を向いて開口した凹部23aとによって空隙42a、42b(図8の製織ケーブル101参照)が形成される。
【0028】
また、介材24に形成された凹部24aを跨ぐように配置された樹脂繊維3と、織布の一面側又は他面側を向いて開口した凹部24aとによって空隙43a、空隙43b[図9(a)、(b)の製織ケーブル102参照]が形成される。このように、製織ケーブル101、102では、表裏に空隙が形成されるため、表裏を考慮することなく他部材に取り付けることができ、位置決め等の制約もより少ない。
【0029】
更に、介材25に形成された凹部25aを跨ぐように配置された樹脂繊維3と、織布の一面側又は他面側を向いて開口した凹部25aとによって空隙44a、44b(図10の製織ケーブル103参照)が形成される。このように、製織ケーブル103でも、表裏に空隙が形成されたるため、表裏を考慮することなく他部材に取り付けることができ、位置決め等の制約もより少ない。また、この製織ケーブル103では、中実部253により繋がれた2個の円弧状部251、252の内部の空間は、それぞれ経糸として用いられる電線1とは異なる他の電線5を収容する電線収容部(251、252)となり、より多くの作用、機能を有する製織ケーブル103とすることができる。
【0030】
[2]製織ケーブル取付構造
本発明の製織ケーブル取付構造300、301は、前述の本発明の製織ケーブル100等を、他部材200(図11、12参照)、201(図13参照)に取り付けるための製織ケーブル取付構造である。そして、他部材200に備えられている鉤状のフック部621、及び他部材201に備えられているキノコ状のフック部622を、製織ケーブル100等の介材21に形成された凹部21a等を跨ぐように緯糸として配置された樹脂繊維3に係止させ、製織ケーブル100等を他部材200、201に取り付ける構造である。
【0031】
「他部材200、201」は、電力供給及び信号電送等に用いられる複数の製織ケーブル100等を配線し、固定するため、例えば、車両用内装材、車両のエンジンルーム、及びトランクルーム等に配設されている部材である。この他部材200、201は、フック部(図11、12の他部材200の鉤状のフック部621、図13の他部材201のキノコ状のフック部622参照)を備え、このフック部621、622が、製織ケーブル100等の介材21に形成された凹部21a等を跨ぐように緯糸として配置された樹脂繊維3に係止され、製織ケーブル100等が他部材200、201に取り付けられる。
【0032】
上述のように、製織ケーブル100等の他部材200、201への取り付けは、空隙41等とフック部621等とを対向させて押圧するのみでよく、操作が簡易で、作業性に優れる。また、製織ケーブル100等を他部材200等に取り付ける箇所に制約がなく、取り付けるための位置を特定する必要もない。
【0033】
他部材200、201は、そのフック部621、622が、製織ケーブル100等が有する空隙41等において、緯糸として織り込まれた樹脂繊維3に係止される形態であればよい。例えば、基部61の一面に多数の鉤状のフック部621が設けられた他部材200が挙げられる(図11、12参照)。また、基部61の一面に多数のキノコ状のフック部622が設けられた他部材201が挙げられる(図13参照)。
【0034】
フック部621、622は空隙41等において緯糸として織り込まれた樹脂繊維3に係止され、製織ケーブル100等を他部材200、201に取り付け、固定することができればよく、前述の鉤状のフック部621及びキノコ状のフック部622に限定されない。更に、これらのフック部621、622を有する他部材200、201は、例えば、射出ノズルと、表面にフック形状の凹部を有するダイスホイールとを備える通常の装置を用いて作製することができる。
【0035】
また、製織ケーブル100等は、通常、長手方向の全長さに亘って空隙41等を有しているが、空隙41等が形成されない製織部分があってもよい。この空隙41等が形成されていない箇所は、長手方向に1箇所のみでもよく、複数箇所あってもよい。一方、他部材200、201も、フック部621、622は長手方向の全長さに亘って備えられていてもよく、フック部621、622が形成されていない箇所があってもよい。このフック部621、622が形成されていない箇所も、長手方向に1箇所のみでもよく、複数箇所あってもよい。このように、製織ケーブル100等の空隙41等と、他部材200、201のフック部621、622は、配線の経路等によって、所要箇所に設けられ、設けられていない箇所があってもよい。
【0036】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、製織ケーブルを用いて各種の配線、例えば、車両のように、電力供給及び信号電送等を目的として多くの配線を必要とする技術分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100,101、102、103;製織ケーブル、200、201;製織ケーブルが取り付けられる他部材、300、301;製織ケーブル取付構造、1;電線、2;介材、21;横断面が円弧状の一部である介材、22;横断面がU字状である介材、23;横断面が略十字形である介材、24;円弧の開口が長手方向において所定間隔で反対方向を向いている介材、25;2個の円弧状部が中実部により繋がった形状である介材、21a、22a、23a、24a、25a;介材に形成された凹部、251、252;円弧状部(電線収容部)、253;中実部、3;樹脂繊維、41、42a、42b、43a、43b、44a、44b;空隙、5;円弧状部(電線収容部)に収容される電線、61;基部、621;鉤状のフック部、622;キノコ状のフック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略並行になるように並べられた複数本の電線、及び
前記電線と略並行になるように配されているとともに、前記電線間に介在された線状の介材、を経糸とし、
樹脂繊維を緯糸として、
製織された織布からなる製織ケーブルであって、
前記介材には、長手方向に延びる凹部が形成されており、
前記介材は、前記織布の一面側又は他面側に前記凹部の開口が向くようにされており、
前記緯糸が前記凹部を跨ぐように配置されて、前記凹部が空隙とされていることを特徴とする製織ケーブル。
【請求項2】
前記介材は複数本あり、
前記電線と前記介材とが交互に並べられている請求項1に記載の製織ケーブル。
【請求項3】
前記織布の前記一面側及び前記他面側の両側に前記凹部の開口が向くように、
前記介材には、前記凹部が複数箇所に形成されている請求項1又は2に記載の製織ケーブル。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の製織ケーブルを、他部材に取り付けるための製織ケーブル取付構造であって、
前記他部材に備えられているフック部を、前記凹部を跨るように配置された前記製織ケーブルの前記緯糸に係止することを特徴とする製織ケーブル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−101882(P2013−101882A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245859(P2011−245859)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】