説明

複合されたガス化およびガラス化システム

【課題】複合されたガス化およびガラス化システムを提供する。
【解決手段】このシステムは、有機材料を水素リッチガスおよび灰に変換するガス化ユニット1と、ガス化ユニット1との連通において、ガス化ユニット1内で形成された灰をガラスに変換するジュール加熱されたガラス化ユニット4と、元素としての炭素およびガス化ユニット1内の不完全燃焼により形成された産物を水素リッチガスに変換するプラズマ5とを有する、最適化されたガス化/ガラス化処理システム。ガス化ユニット1は、1つ以上の酸化剤注入ポート2をさらに備え、1つ以上の酸化剤注入ポート2を通じて、酸素、蒸気、二酸化炭素、空気、およびそれらの組み合わせの流れを制御し、該有機成分の水素リッチガスへの該変換を最適化する、フィードバック制御デバイス10をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、有機材料を含有する供給原料を処理するための方法および装置に関する。より具体的には、本発明は、統合された部分酸化ガス化およびガラス化システムに関し、該システムは、当該の供給原料からエネルギ価値を回収し、一方で、非有機部分を安全かつ使用可能な形態に生成するための改良された方法および装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
1800年代半ば、バイオマス、主に木質バイオマスは、米国で必要なエネルギおよび燃料の90%超を供給していた。その後、化石燃料が好適なエネルギ資源になり始めるにつれて、バイオマスエネルギの使用が減少し始めた。今日、世界のエネルギ市場は、エネルギ源として、化石燃料、石炭、石油、原油、および天然ガスに大きく依存している。地球内部における化石燃料の形成には数百万年かかるため、それらの埋蔵量は有限であり、それらが消費されると枯渇する可能性がある。化石燃料の代替物としての使用に十分豊富なものとして知られる自然発生のエネルギ含有炭素資源は、バイオマスである。バイオマスは、本願明細書では、固有の化学エネルギ含有量を有する全ての非化石有機材料として定義される。これら有機材料は、全ての水生および地上の植生および樹木、すなわちバージンバイオマス(virgin biomass)、および都市型固形廃棄物(MSW;municipal solid waste)、都市型バイオソリッド(下水汚物)および動物の廃棄物(厩肥)、林業および農業残渣、および特定のタイプの産業廃棄物のような、全ての廃棄物バイオマスを含んでいる。今日の廃棄物は、化石燃料および非化石有機材料に由来する材料の混合物から構成されているものと理解される。
【0003】
化石燃料と異なり、バイオマスは、エネルギ資源として使用されるものを置換するために短い期間しか必要としないという点において再生可能である。現在、一部の分析者は、21世紀の半ばを前に、おそらくは最初に天然ガスから、資源が枯渇するために、化石燃料時代が終焉すると考えている。この起こり得る事態および化石燃料の使用による環境への悪影響は、支配的なエネルギ資源のうちの1つへの、バイオマスの変換を刺激する駆動力になるものと予想される。
【0004】
通常の環境下では、バージンバイオマスは、原材料、食品、繊維製品、および建築材料から収集されるか、または自然分解が起こる栽培領域(growth area)内に放置される。バイオマスの収集および処理による分解バイオマスまたは廃棄物は、地上または地中に廃棄された場合、理論的には、長い期間の後に化石燃料として回収することができる。別様には、バージンバイオマス、およびバージンバイオマスを処理または消費することによって得られたあらゆる廃棄物バイオマスは、エネルギ、燃料、または化学物質に変換することができる。このような変換のための技術には、様々な、熱および熱化学プロセス、ガス化、液化、および発酵方法によるバイオマスのガスおよび液体燃料への微生物変換が挙げられる。これらの方法の多くは、バイオマスの直接変換、または中間的変換のいずれかに好適である。これらの方法によって産生された合成燃料は、化石原料から得られたものと同一であるか、または同一でなければ、少なくとも化石燃料の代替物として好適であるもののいずれかである。
【0005】
バイオマス変換技術の一例では、バイオマスを部分酸化によってガス化して、低カロリー値の燃料ガス、すなわち合成ガスを生成するが、これは、その後化学合成プロセスにおける供給原料として使用するか、またはエネルギ源として使用して、例えば、内燃エンジン、ガスタービン、または燃料電池を駆動して電力を発生させることができる。このようなスキームは、特別に構成されたガス化装置において、有機供給原料を熱および限定量の酸素に露出させて、有機材料の部分酸化を生じさせることに基づいており、それによって、主に水素および一酸化炭素から構成された排出ガスを産生する。現在、世界中の何百もの企業が、このような燃料ガスを産生するためのこのようなシステムを提供している。このような方法は、バイオマス、化石ベースの有機材料、およびバイオマスおよび化石ベースの有機材料の産生および使用によって生じた廃棄物を含むそれらの誘導体を含む、ほぼ全ての有機供給原料を、電力に変換するのに有効であることに留意することが重要である。
【0006】
ガス化装置における部分酸化を介した合成ガスの産生に加えて、合成ガスはまた、蒸気改質反応において水および有機材料を合成ガスに変換するシステムを使用して産生されている。いくつかのこのようなシステムの例には、非特許文献1に記載されたものが挙げられる。この論文には、種々の異なる温度および異なるHO:CHの比率における、触媒を用いない、蒸気によるメタンの変換が記載されている。この論文(参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる)には、パイロットプラントの実験における合成ガスの産生、および石英反応器によって得られた実験結果の両方が示されている。滞留時間および温度を増加させながらの有機供給原料の合成ガスへの完全な変換に対する一般的な傾向が、グラフ表示および観察された実験データの表の両方に示されている。米国における関連する実験研究は、非特許文献2に報告されており、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。この文献によれば、バイオマスの蒸気ガス化は、2つのステップのプロセスとして達成される。バイオマスは、比較的低温(300℃乃至500℃)で熱分解され、揮発性物質および炭化物を産生する。次いで、揮発性物質は、幾分高温(約600℃)で蒸気と反応して、炭化水素リッチの合成ガスを産生する。参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる、非特許文献3では、温度の上昇にわたる水によるメタン(CH+2HO)の非燃焼性分解の理論的な産物が示されている。1000℃でのメタンの分解は99%超であり、1400℃では、メタンの分解は99.99%超である。
【0007】
これらの、および他のガス化システムは、多種多様な利益を示しているが、それらの動作においては依然としていくつかの欠点が存在する。例えば、これらのタイプのシステムは、一般的に、不均一の供給原料の処理にはあまり適さず、該供給原料は、本願明細書では、有機材料および無機材料の混合物を含有する供給原料として定義される。多くの場合、供給原料の無機成分は、有機部分の処理に悪影響を及ぼす場合があり、その結果、完全な変換が得られないか、または処理率が低くなる。また、無機成分は、高濃度の灰として残存し、環境(特に地下水)への灰の可溶性を高めてしまう場合があり、したがって、潜在的に、環境的に危険であり、および/または最終処分の前にこれらの成分を安定させるための費用のかかる処理が必要である。均質な有機供給原料によって動作させた場合であっても、一般的に、ガス化システムには欠点がある。例えば、ガス化システムの動作における一般的なトレードオフは、清浄なガス産物を有することと、廃棄しなければならない残留有機産物を最小限に抑えることとの間にある。一般的に、有機供給原料が完全にガス化された場合、高品質なガスは形成されない。代わりに、種々の油、タール、および他の不要な成分がガス内に存在する。別様には、高品質なガスを形成することができるが、供給原料が完全にガス化されない場合のみである。これによって、処分しなければならない部分酸化された有機材料の廃棄物が生じ、しばしば巨額なコストがかかる。
【0008】
有害な有機廃棄物の流れを無くしたいという願望が、蒸気改質システムの供給原料としてそれらを使用することを助長している。例えば、Terry R.Gallowayへの特許文献1(参照することによりその内容全体が本願明細書に組み込まれる)は、有機液体を最初にガス形態に揮発させるシステムを開示している。揮発させた液体は、次いで、蒸気の形態で、化学量的に(stoichoimetery)過剰な水量と混合される。この有機ガス混合物は、次いで、200℃乃至1400℃の温度に保持された第1の反
応ゾーン内に導入される。この第1の反応ゾーン内では、蒸気および有機ガスの混合物は、「有機的吸着表面」を表す「入り組んだ経路(labryinthine path)」を通じてガス状混合物に導かれる。この第1の反応ゾーン内では、入り組んだ経路および吸着表面は、「第1の反応ゾーンにおいて、実質的に全てのガス状の有機化合物を水と反応させるために十分な温度、乱流混合、および滞留時間を提供するように選択される」。「実質的に全て」の有機化合物は、99%超の反応、好ましくは99.99%超の反応として定義される。ガス状混合物は、次いで、第1のゾーンよりも高い、約750℃乃至1820℃の温度を有する第2のガス反応ゾーンに渡される。第1の反応ゾーンの場合のように、第2の反応ゾーンでは、水量は、化学量的に等しいか、または過剰となるように制御される。本明細書では、「より高い第2の反応ゾーンの温度は、第2の反応ゾーンに入る低レベルの有機化合物とともに、有機化合物の全体的かつ完全な反応が、少なくとも99.99%、一般的にはさらに高いレベルになるようにする」(原文のまま)。第1および第2の反応ゾーンに対する加熱は、第2の反応ゾーンの内部に位置する、複数の細長いU字形ヘアピンループ(hairpin loop)の電気抵抗型加熱要素によって提供される。
【0009】
Gallowayによって開示されたようなシステムは、有害な有機材料の破壊、および有用な合成ガスの生成といった2つの利点を提供しようとしている。同様に、Gallowayによって開示されたような廃棄物破壊システムは、ヒドロフランおよびダイオキシンのような、いわゆる不完全燃焼の産物(products of incomplete combustion)、すなわちPICの産生に関連した懸念に対処しようとしている。PICの産生を回避するために、このタイプのシステムは、PICの産生に対する条件が好適ではない還元環境で動作させることができる。これらのシステムでは、吸熱性の蒸気改質反応を促進するために必要なエネルギは、反応以外の源から提供しなければならない。これらの外部源のエネルギ消費は、産生される合成ガスの経済的な利益を相殺してしまうので、このガスを送達する効率は、これらのシステムの設計では常に重要な問題である。このために、AntalのシステムおよびGallowayのシステムの両方に記載されているような、第2の加熱源によって合成ガスを蒸気改質する前に、第1の加熱源によって有機供給原料を蒸発させることが、これらのシステムにかなりの経済的不利益を課している。
【0010】
これらの蒸気改質システムにおけるプラズマの使用に関心が集まっている。例えば、Gallowayのシステムに類似したプロセスは、非特許文献4に記載されており、その内容は参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。Kaskeのシステムでは、プラズマを使用して改質を行うが、「ガス状炭化水素は、蒸気または二酸化炭素のようなガス状酸化剤によって改質される」。したがって、Kaskeによって開示されたシステムは、Gallowayのシステムで見出された欠点の多くを受け、特に、固体または液体の供給原料とは違って、蒸発させた有機ガスを改質する蒸気に焦点を当てているために生じる制限を受ける。
【0011】
プラズマは、急速かつ効率的な熱伝達を提供する、高温のイオン化したガスである。流入する有機供給原料に急速に熱を伝達するプラズマの能力によって、プラズマは、有機供給原料を熱分解すると同時に、熱エネルギを提供して、熱分解された有機供給原料の吸熱性の蒸気改質反応を促進することができる。この2つの利点は、Titus他への特許文献2、発明の名称「Arc Plasma−Melter Electro Conversion System for Waste Treatment and Resource Recovery」に記載されているものを含む、プラズマを用いたシステムにおいて大成功を収め、その内容は参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれ、プラズマを生成するアーク電極を、ジュール電極と様々に組み合わせて使用した、種々の特に有用な構成を示している。これらの編成では、廃棄物に含まれる有機化合物は
、有機分子の化学結合を破壊する高温のプラズマによって生じる熱分解によって破壊される。蒸気を処理チャンバに導入することによって、これらの熱分解された有機成分は、蒸気改質反応を通じて、合成ガス、すなわち主にCO、CO、およびHから成る清浄な燃焼性燃料に変換される。廃棄物の他の成分は、蒸発することなく高温に耐えることができ、融解状態に形成され、その後冷却されて安定したガラスを形成する。ガラス化プロセスを慎重に制御することによって、得られるガラス化したガラスは、ガラス内で結合した有害な構成要素の浸出に対する高い耐性によって、化学的および環境的な攻撃に対して高い安定性を呈する。このように、ガラス化を利用して、廃棄物を高品質の合成ガス、および安定した環境に優しいガラスへと変換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,874,587号明細書
【特許文献2】米国特許第5,666,891号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】A.G.Leibysh、「Production of Technological Gas for Synthesis of Ammonia and Methanol from Hydrocarbon Gases」、Chemistry、Moscow、1971年
【非特許文献2】Dr.Michael J.Antal,Jr.、「Synthesis Gas Production from Organic Wastes by Pyrolysis/Steam Reforming」 Energy from Biomass and Wastes、1978年Update
【非特許文献3】A.L Suris、「The Handbook of Thermodynamic Temperature Process Data」、1985年
【非特許文献4】G.Kaske他、「Hydrogen Production by the Huels Plasma−Reforming Process」、Advanced Hydrogen Energy、Vol.5、(1986年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
プラズマを用いたシステムは、従来技術の蒸気改質システムを超える顕著な利点を示すが、それでも、これらのシステムのエネルギ消費および設備費用を最小限に抑えて、それらの経済的な魅力を増加させる必要がある。特に、これらのシステムに注入される蒸気を形成させるように、相を変化させるために必要なエネルギは、これらのシステムを動作させるコストを著しく増加させる可能性がある。したがって、有機および不均一供給原料から合成ガスを産生する、より効率的で改良された方法の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(本発明の概要)
したがって、本発明は、有機供給原料および不均一供給原料を処理するための改良された方法である。本発明は、化石ベースの有機材料の生産および使用に由来する廃棄物を含む、無機材料、バイオマス、および当該の化石ベースの有機材料の混合物、およびそれらの誘導体を処理することができるシステムを提供することと、それらを清浄なガスおよび環境的に安定したガラスに変換することとを目的とする。本発明はさらに、廃棄物の有機成分の全てまたは一部を水素リッチガスおよび灰に変換するガス化ユニットと、該ガス化ユニットと連通し、該ガス化ユニット内で形成された無機材料および灰をガラスに変換するジュール加熱されたガラス化ユニットと、炭素、および該ガス化ユニット内の不完全ガ
ス化により形成された産物を水素リッチガスに変換するプラズマとを提供することによって、有機および/または不均一供給原料を処理するための方法および装置を提供することを目的とする。得られたガラスは、建築材料、道路用骨材等のような有用な産物として使用することができる。最も重要なことに、本発明は、従来のガス化システムに関連するトレードオフを克服する様態で行われ、システムを稼動させるために必要な設備費用およびエネルギの両方を最小限に抑えるコンパクトなシステムにおいてこれらの利点を提供する。
【0016】
本発明は、ガス化ユニットを、プラズマを有するジュール加熱されたガラス化ユニットと組み合わせることによって、これらの、および他の目的を達成する。有機供給原料および無機供給原料の有機物または不均一混合物は、最初に、供給原料の有機部分の全てまたは一部がガス化されるガス化ユニットに送給される。ガス化を補助するために、ガス化ユニット内で材料を酸素と混合することが好適である。したがって、ガス化ユニットは、酸化剤を導入するための、1つ以上の酸化剤ポートを有することが好適である。適切な酸化剤には、これらに限定されないが、純酸素(90%乃至99%の純度の酸素として規定される)、空気、二酸化炭素、酸素富化空気、蒸気、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
部分酸化のガス化システム内では、供給原料の有機部分の全て、または好適にはほんの一部分がガス化される。したがって、このガス化プロセスによる排出物は、固体および液体部分とともに、主に二酸化炭素、水素、および軽質炭化水素で構成されたガス状部分を含み、ガス化プロセスによる灰もまた含む供給原料の無機部分とともに、炭素チャー(carbon char)のような未反応および部分的に反応した有機材料を含む。
【0018】
この排出物は、次いで、ガス化システムからジュール加熱されたプラズマ反応チャンバに直接送給され、残りの固体および液体有機材料を熱分解およびガス化し、また、十分な滞留時間を持たせて混合し、灰および供給原料の残りの無機部分を安定な、ガラス化されたガラスに形成することができる。
【0019】
一般的に、本発明に用いられる供給原料は、固体、液体、懸濁液、またはその混合物の形態である。本発明で実施されるように、供給原料は、最初にガス化ユニットに導入される。本発明の実施には、アップドラフト(updraft)式、およびダウンドラフト(downdraft)式ガス化チャンバの両方が好適である。排出物は、次いでジュール加熱されたガラス化ユニットに送給され、該ユニットでは、供給原料をプラズマに晒すことによって、供給原料の残りの有機部分の一部または全てが熱分解される。プラズマは、プラズマ電極によって形成されることが好適であるけれども、これに限定されることなく、蒸気トーチを含むプラズマトーチも使用することができる。
【0020】
ジュール加熱されたガラス化ユニット内のプレナム空間は、いかなる追加的な周囲の空気または酸素の進入も排除または防止し、また、窒素のような不活性ガスを過剰圧力に保持することによって、還元環境として保持することができる。別様には、追加的な酸素の導入を通じて、ジュール加熱されたガラス化ユニットのプレナム空間内に、更なる部分酸化を生じさせることができる。還元環境における動作であっても、部分酸化モードにおける動作であっても、蒸気または二酸化炭素を、更なる酸化剤としてジュール加熱されたガラス化ユニットに添加することができる。
【0021】
一般的に、供給原料の有機部分の未反応部分のプラズマガス化は、2ステップのプロセスで達成される。第1のステップで、材料は、ジュール加熱されたガラス化ユニット内で、プラズマからの高熱により、その元素、主に炭素、水素、および一酸化炭素にガス化される。第2のステップで、形成された炭素チャーは、蒸気、二酸化炭素、または遊離酸素
と反応して、更なる水素および一酸化炭素を産生する。空気ではなく、蒸気または二酸化炭素内の結合酸素を酸化剤として用いることによって、ジュール加熱されたガラス化ユニットの雰囲気を高還元雰囲気に保持することができる。
【0022】
蒸気を用いて炭素質材料をガス化する場合、標準的なガス化システムにおけるように、水素および一酸化炭素は、処理チャンバを出る一次産生物である。これらのガスは、以下の反応によって形成される。
【0023】
【化1】

本発明では、反応1乃至反応3において二酸化炭素(CO)を水と部分的に、または完全に置換した場合、以下の一連の反応によって、一酸化炭素および水素ガスの混合物も産生する。
【0024】
【化2】

過剰な蒸気が存在する場合、反応1乃至反応3は、更なる水素および二酸化炭素を生成するようにさらに進行する。当業者には明らかなように、蒸気に加えて、本発明に用いられる二酸化炭素は、純粋な形態または空気として導入された元素としての酸素によって容易に補充して、有機供給原料を部分酸化させることができる。
【0025】
ジュール加熱されたガラス化ユニットのプラズマ内で発生する温度は、一般的に、3,500℃乃至10,000℃の範囲となる。周囲のプレナム空間内の温度は幾分低い。これに限定されないが、アークプラズマシステムおよびプラズマトーチを含む、任意のプラズマ発生デバイスも本発明に好適であるが、グラファイト電極を用いたプラズマシステムが好適である。プラズマとともに、ジュール加熱システムを利用して、深部加熱、さらには容積加熱(volumetric heating)を、ジュール加熱されたプラズマ反応チャンバ内で供給原料の無機部分から形成するガラスバス(bath)に提供する。
【0026】
ジュール加熱されたガラス化ユニットを出るいかなる未反応材料も、熱滞留チャンバ内でさらに処理することができる。熱滞留チャンバは、ジュール加熱されたガラス化ユニットの排出物をしばらくの間、好適な温度で保持し、残りの炭素質材料を一酸化炭素に変換するために必要な反応を完了する。
【0027】
本発明は、フィードバック制御デバイスをさらに含み、少なくとも1つの酸化剤注入ポートを通る、酸素、蒸気、二酸化炭素、空気、およびそれらの組み合わせの流れを制御して、該有機成分の水素リッチガスへの変換を最適化する。ガス化ユニット、ジュール加熱されたガラス化ユニット、および熱滞留チャンバに取り付けたセンサを使用して、温度、ガス組成、流量等を測定する。当業者に認識されているように、これに限定されないが、熱電対、ロータメータ、流量計、酸素センサ、水素センサ、一酸化炭素センサ等を含む当該のセンサは、十分理解されており、化学および工業プロセスに日常的に使用されているものである。供給原料、酸化剤、およびガス状排出物の流量、温度、および品質を監視す
ることによって、種々のパラメータをフィードバック制御デバイスで調整することで、プロセスを自動的に制御することができる。
【0028】
例えば、制限する意味ではないが、ガス化ユニットにおける完全な酸化は、高レベルの、タールのような不要な成分を伴ったガス状排出物を生じるのが一般的である。フィードバック制御デバイスは、ガス化ユニットを動作させるために使用されたパラメータの組み合わせを測定することによって、ガス化ユニット内で完全燃焼が生じていたことを認識するように構成される。例えば、制限する意味ではないが、排出ガス、供給原料の流量、酸化剤の流量を測定することによって、フィードバック制御デバイスは、ガス化ユニット内で完全燃焼が生じていると判断することができる。不要な動作を認識すると、フィードバック制御デバイスは、次いで、酸化剤または供給原料のうちの1つまたは両方の送給量を増加させることができ、それによって、ガス化ユニットにおける完全燃焼を防止する。
【0029】
例えば、ガス化ユニットが、ダウンドラフト式ガス化装置として構成されている場合、フィードバック制御デバイスは、ダウンドラフト式ガス化装置の軸方向の長さに沿って下流に有機材料を輸送するための手段を制御することができる。このように、ガス化装置を通る供給原料の流量を増減させることができる。ダウンドラフト式ガス化装置の軸方向の長さに沿って下流に有機材料を輸送するための好適な手段には、これに限定されないが、オーガ、レーキ、撹拌格子、1つ以上の回転ドラム、ピストン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことで、より容易に理解されよう。
【0032】
(好適な実施形態の詳細な説明)
本発明の原理の理解を助長するために、図1は、ダウンドラフト式ガス化ユニットおよび電極プラズマ源によって構成された、本発明の装置の概略図である。この特定の構成は好適なものであるが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、本構成は、単に説明の便宜上選択されたものであると理解されたい。
【0033】
図に示されるように、有機材料は、ガス化ユニット1に送給される。これに限定されないが、酸素、蒸気、二酸化炭素、空気、酸素富化空気、およびそれらの組み合わせを含む酸化剤は、酸化剤注入ポート2に送給される。ガス化ユニット1は、次いで、通常のダウンドラフト式ガス化装置のように動作される。ダウンドラフト式ガス化装置の軸方向の長さに沿って下流に有機材料を輸送するための手段を、ボックス3として概略図に示す。これに限定されないが、オーガ、レーキ、撹拌格子、1つ以上の回転ドラム、ピストン、およびそれらの組み合わせを含む、固体材料を移動させるために好適な任意の機械的手段を使用することができる。
【0034】
有機材料は、好適にはガス化ユニット1内で部分的にガス化されて、水素リッチガス、部分的に酸化された有機材料、および灰をもたらし、これらは次いで、ジュール加熱されたガラス化ユニット4に移送される。プラズマ5は、プラズマ電極6によって形成され、ガス化ユニット1からの有機材料は、ジュール加熱されたガラス化ユニット4に入ると即座にプラズマ5に晒される。不均一供給原料内に存在する無機材料は、ガラスバス7に取り込まれ、通常、ジュール加熱電極8によって融解状態に保持される。いかなる未反応の有機材料も、熱滞留チャンバ9内で、材料をしばらくの間、所望の反応を完了するために
十分な温度に保持することによって、最終的には水素リッチガスに変換される。フィードバック制御デバイス10は、材料の流量、温度、およびガスの品質のような変量を監視および制御して、廃棄物のガラスおよび水素リッチ燃料ガスへの完全な処理を確実にする。
【0035】
本発明の好適な実施形態が図示され説明されてきたが、当業者には、より広義の局面において本発明から逸脱することなく、多数の変更および修正を行い得ることが明らかとなろう。添付の特許請求の範囲は、したがって、本発明の真の精神および範囲に入る全てのそのような変更および修正を包含することを意図するものである。
【0036】
例えば、好ましい実施形態においては、本発明は以下を提供する。
(項1)
最適化されたガス化/ガラス化処理システムであって、
a)有機材料を水素リッチガスおよび灰に変換するガス化ユニットと、
b)該ガス化ユニットと連通し、該ガス化ユニット内で形成された該灰をガラスに変換するジュール加熱されたガラス化ユニットと、
c)元素としての炭素および該ガス化ユニット内の不完全燃焼により形成された産物を水素リッチガスに変換するプラズマと
を備える、最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項2)
前記ガス化ユニットは、1つ以上の酸化剤注入ポートをさらに備える、上記項1に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項3)
前記ガス化ユニットは、前記1つ以上の酸化剤注入ポートを通じて、酸素、蒸気、二酸化炭素、空気、およびそれらの組み合わせの流れを制御して、前記有機成分の水素リッチガスへの前記変換を最適化するフィードバック制御デバイスをさらに備える、上記項2に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項4)
前記ガス化/ガラス化廃棄物処理システムは、前記ジュール加熱されたガラス化ユニットと連通する熱滞留チャンバをさらに備える、上記項1に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項5)
前記ジュール加熱されたガラス化ユニットは、プラズマ加速をさらに備える、上記項4に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項6)
前記プラズマ加速は、プラズマトーチおよびプラズマ電極から選択されたプラズマ源から生成される、上記項5に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項7)
前記プラズマトーチは、蒸気トーチである、上記項6に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項8)
前記ガス化ユニットは、ダウンドラフト式ガス化装置である、上記項1に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項9)
前記ダウンドラフト式ガス化装置は、有機材料を該ダウンドラフト式ガス化装置の軸方向の長さに沿って下流に輸送するための手段をさらに備える、上記項8に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項10)
有機材料を前記ダウンドラフト式ガス化装置の軸方向の長さに沿って下流に輸送するための前記手段は、オーガ、レーキ、撹拌格子、1つ以上の回転ドラム、ピストン、およびそれらの組み合わせとして選択される、上記項9に記載の最適化されたガス化/ガラス化処理システム。
(項11)
有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法であって、
a)該有機材料をガス化ユニットに導入するステップと、
b)該有機材料を部分的に酸化させて、水素リッチ合成ガス、部分酸化された有機材料、部分ガス化された有機材料、および灰の混合物を含む排出物に該有機材料を変換するステップと、
c)該ガス化ユニットの該排出物をジュール加熱されたガラス化ユニットに渡すステッ
プと、
d)該ガス化ユニット内で形成された該灰をガラスに変換するステップと、
e)該ガス化ユニットの該排出物を、該ジュール加熱されたガラス化ユニット内のプラズマに露出させるステップと、
f)該ガス化ユニット内で形成された該部分酸化された有機材料および該部分ガス化された有機材料の少なくとも一部分を、水素リッチガスに変換するステップと
を包含する、有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項12)
1つ以上の酸化剤注入ポートを通じて酸化剤を前記ガス化ユニットに導入するステップをさらに包含する、上記項11に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項13)
前記酸化剤は、酸素、空気、蒸気、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される、上記項12に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項14)
前記酸化剤の流れおよび前記有機材料の流れを制御して、フィードバック制御デバイスを使用した該有機成分の水素リッチガスへの変換を最適化するステップをさらに包含する、上記項12に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項15)
前記ジュール加熱されたガラス化ユニット内の水素リッチガスに変換されない全ての部分酸化された有機材料および部分ガス化された有機材料を熱滞留チャンバへと導入して、該部分酸化された有機材料および部分ガス化された有機材料の水素リッチガスへの変換を完了するステップをさらに包含する、上記項11に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項16)
前記酸化剤の流れを前記有機材料の流れと同じ方向にするステップをさらに包含する、上記項12に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項17)
有機材料を前記ガス化ユニットの軸方向の長さに沿って下流に輸送するための手段を動作させるステップをさらに包含する、上記項12に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項18)
有機材料を前記ガス化ユニットの前記軸方向の長さに沿って下流に輸送するための前記手段は、オーガ、レーキ、撹拌格子、1つ以上の回転ドラム、ピストン、およびそれらの組み合わせとして選択される、上記項17に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項19)
前記熱滞留チャンバ内の部分酸化された有機材料および部分ガス化された有機材料の温度を、1000℃乃至1500℃に維持するステップをさらに包含する、上記項15に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項20)
前記熱滞留チャンバ内の部分酸化された有機材料および部分ガス化された有機材料の温度を、1100℃乃至1400℃に維持するステップをさらに包含する、上記項15に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項21)
ガスを前記熱滞留チャンバに導入するステップをさらに包含する、上記項15に記載の
有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。
(項22)
前記ガスは、再利用合成ガス、水素を富化した合成ガス、酸素、蒸気、空気、二酸化炭素、およびそれらの組み合わせの群から選択される、上記項21に記載の有機材料を処理して水素リッチ合成ガスおよび固体ガラスを産生するための方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載の発明

【図1】
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【公開番号】特開2012−197450(P2012−197450A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−130165(P2012−130165)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2009−509535(P2009−509535)の分割
【原出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(508335727)インエンテック エルエルシー (2)