説明

複合ソリッドタイヤ

【課題】ゴム材質からなる内側層とポリウレタンエラストマー材料からなる外側層にて構成される複合ソリッドタイヤにおいて、それら2つの層の接合強度が効果的に高められた、耐久性に優れた複合ソリッドタイヤを提供すること。
【解決手段】ゴム材質からなる内側層14の外周面16上に、所定深さの周溝22,22を形成し、外側層18と同一のポリウレタンエラストマー材料にて一体的に形成されたアンカー部24,24を、かかる周溝22,22の周溝内を埋めるように位置せしめるようにして、内側層14の外周面上に外側層18を一体的に形成して、複合ソリッドタイヤ10を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合ソリッドタイヤに係り、特に、ゴム材質からなる内側層とポリウレタンエラストマー材料からなる外側層とから構成される複合ソリッドタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車や産業車両等の車両には、その荷重を負担し、車両と路面との間で円滑な力の伝達の機能を持つタイヤとして、中空部内に空気が封入されてなる構造の空気入りタイヤの他、中実構造のゴム円環体からなるソリッドタイヤが、よく知られている。そして、このソリッドタイヤは、タイヤの機能としての負荷能力、緩衝能力及びゴムの弾性を利用したものであって、主として低速、重荷重車両、例えばフォークリフトトラック、産業用トラクタ、蓄電池運搬車、トレーラ等に広く用いられてきており、その構成には、多くの場合、単一のトレッドゴムをホイールに直接に焼き付けたもの、ベースバンドにゴム材料を加硫接着し、ホイールに圧入するもの、円環状のトレッドゴムをホイールの外周部に嵌め込むもの等が知られている。
【0003】
ところで、かかるソリッドタイヤは、一般に、NRやSBR等のゴム材料にてトレッドゴムが構成されてなるソリッドラバータイヤとして用いられているが、そのようなタイヤは、路面と接触して、その摩擦力によって車両の移動を許容するものであるところから、長期間の使用により、路面との接触面の磨耗が進み、耐用寿命となれば、廃棄されることとなるが、近年、その廃タイヤの処理が大きな社会問題となってきている。特に、ソリッドラバータイヤは、乗用車等に用いられている空気入りタイヤに比較して重いために、その取扱が困難であり、また、焼却し難く、更に他の用途への利用が難しい等の問題があるために、その処分に大きな困難を伴なっている。
【0004】
そこで、本発明者は、先に、特開2004−359219号公報(特許文献1)や特許第4391274号公報(特許文献2)等において、所定のラバー層を残存させた磨耗ソリッドラバータイヤの周面に、所定厚さのポリウレタンエラストマー層を被装せしめてなる、複合ソリッドタイヤの構成を明らかにした。このような構成とされた複合ソリッドタイヤによれば、ホイールの外周部に取り付けられる円環状のトレッド部が、ソリッドタイヤの内層部を構成する円環形状の所定厚さのラバー層と、その上に一体的に形成されたポリウレタンエラストマー層とから構成されているところから、そのようなトレッド部の接地面から受ける衝撃は、内側のラバー層にて、効果的に吸収・緩和され得ることとなると共に、そのようなトレッド部の接地面を与える外側のポリウレタンエラストマー層は、ポリウレタンエラストマー材料の有する良好な耐磨耗特性によって、その耐久性が著しく高められ、以て、得られる複合ソリッドタイヤの耐用寿命が格段に向上せしめられ得ることとなる。
【0005】
しかしながら、このようにして耐用寿命が向上せしめられた複合ソリッドタイヤにあっても、ある使用条件下においては、長期間使用しているうちに、内周側のラバー層と外周側のポリウレタンエラストマー層の接合が外れて、ポリウレタンエラストマー層が剥がれてしまう恐れがあることが、新たに確認されたのである。例えば、かかる複合ソリッドタイヤが好適に採用されるフォークリフトトラックにおいては、一般に、ステアリング操作によって操舵される後輪側には、大きなバランスウェイトが取り付けられているところから、後側のタイヤには、常に大きな荷重がかかるようになっている。このため、ステアリング操作によってタイヤのトレッド面が路面に対して捻られるような動作をすると、タイヤにはスラスト方向(軸方向)に大きな応力がかかり、そしてこのような力が長期間に亘って何度も繰返し作用することによって、ラバー層とポリウレタンエラストマー層の接合(接着)が外れてしまう恐れがあるのである。
【0006】
また、そのような複合ソリッドタイヤが、長期間使用されている間に、内周側のラバー層から原料のゴム材料に混ぜられている可塑剤、柔軟剤、老化防止剤等の各種配合剤がブリードして出てくると、それがラバー層とポリウレタンエラストマー層とを接着している接着剤の作用を悪化させてしまう恐れがある他、使用時におけるタイヤと路面との間の摩擦により発生する走行熱によっても、そのような接着剤の効果を低下させてしまう恐れがあるのであり、その結果、タイヤにかかる横方向(軸方向)の力によって、ラバー層とポリウレタンエラストマー層とが、その接着面から剥離してしまい易くなって、タイヤの耐久性を低下させてしまうこととなるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−359219号公報
【特許文献2】特許第4391274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ゴム材質からなる内側層とポリウレタンエラストマー材料からなる外側層にて構成される複合ソリッドタイヤにおいて、それら2つの層の接合強度を効果的に高め、より耐久性に優れた複合ソリッドタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、ゴム材質からなる所定厚さの内側層と、該内側層の外周面上にポリウレタンエラストマー材料にて一体的に形成された外側層とからなる複合ソリッドタイヤにして、該内側層の外周面に形成された少なくとも1条の周溝を有すると共に、該周溝内を埋めるように位置せしめた、前記外側層と同一のポリウレタンエラストマー材料からなるアンカー部を、該外側層に一体に形成せしめたことを特徴とする複合ソリッドタイヤを、その要旨とするものである。
【0010】
なお、かかる本発明に従う複合ソリッドタイヤの望ましい態様の一つによれば、前記内側層の外周面上に、ポリウレタンエラストマー材料からなる複数本の接続ピンが、周方向に所定の距離を隔てて立設せしめられると共に、それら接続ピンの先端側部位が前記外側層内に埋入されて、それら外側層と内側層とが該接続ピンによって接続せしめられることとなる。
【0011】
また、このような本発明に従う複合ソリッドタイヤの他の好ましい態様の一つにあっては、前記周溝の2条は、前記内側層の外周面上に周方向に互いに平行に延びるようにして形成されると共に、それら周溝間の前記内側層外周面部位に、前記複数本の接続ピンが周方向に配設されることとなる。
【0012】
さらに、そのような本発明に従う複合ソリッドタイヤの別の望ましい態様の一つによれば、前記接続ピンは、10〜30mmφに相当する断面直径を有していると共に、前記内側層及び前記外側層に、それぞれ、10〜30mmの長さにおいて突入せしめられることとなり、また、別の好ましい態様の一つによれば、前記周溝は、矩形の横断面形状を有している。
【0013】
更にまた、本発明に従う複合ソリッドタイヤにあっては、有利には、前記内側層には、摩耗したソリッドラバータイヤにおける摩耗残にて与えられる所定厚さのラバー層が用いられることとなる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従う構造とされた複合ソリッドタイヤによれば、外側層と一体に形成せしめられたポリウレタンエラストマー材料からなるアンカー部が、ゴム材質の内側層の外周面に形成された周溝内を埋めるように設けられているところから、換言すれば、内側層に設けられた所定深さの周溝内に、外側層と一体に形成されたアンカー部が嵌め込まれているところから、タイヤのスラスト方向(軸方向)にかかる荷重を、内側層の外周面と外側層の内周面との間の接合力に加えて、かかるアンカー部の側面と周溝の側壁面との間の当接によって受け止めることとなるため、接合部分にかかる応力が効果的に分散せしめられ、以て、それら内側層と外側層とが剥離してしまう恐れを、有利に低減乃至は解消することが可能となるのである。このように、複合ソリッドタイヤの内側層と外側層とをより強固に接合することが可能となることにより、複合ソリッドタイヤの耐久性を、更に効果的に高めることが出来るのである。
【0015】
また、本発明の望ましい態様の一つに従って、複数本の接続ピンを周方向の複数箇所に埋設してなる構造とされた複合ソリッドタイヤによれば、内側層と外側層とが、前記した周溝とアンカー部との間の連結構造に加えて、それら2層の間に埋め込まれたポリウレタンエラストマー材料からなる複数本の接続ピンによって接続されているところから、タイヤの軸方向にかかる荷重による内側層と外側層の接続部分にかかる応力を、さらに効果的に分散して受け止めることが可能となるのである。その結果、それら内側層と外側層とを更に強固に接合して、より耐久性に優れた複合ソリッドタイヤを構成することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従う複合ソリッドタイヤの一例を示す側面説明図である。
【図2】図1におけるA−A断面となる径方向断面図を示す断面説明図である。
【図3】図2におけるB部分を拡大して示す部分断面説明図である。
【図4】本発明に従う複合ソリッドタイヤの別の一例を示す、図2に相当する断面の説明図である。
【図5】図4におけるC−C断面を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1には、本発明に従う構造とされた複合ソリッドタイヤの一実施形態が、側面図の形態において示されている。そこにおいて、複合ソリッドタイヤ10は、全体としてドーナツ形状を呈し、そのドーナツ形状の内周部に対してホイール12が取り付けられている一方、かかるドーナツ形状の内周側に位置するように、所定厚さのゴム材質からなる内側層14が設けられている。また、この内側層14の外周面16上には、ポリウレタンエラストマー材料からなる外側層18が、所定厚さにおいて一体的に形成されて、トレッド面20を形成している。即ち、かかる複合ソリッドタイヤ10は、それぞれ所定厚さに形成された内側層14と外側層18とからなる二層構造とされているのである。
【0019】
より詳細には、内側層14は、従来のソリッドラバータイヤと同様に、NR、IR、SBR、BR、EPM、EPDM、IIR等のゴム材料を用い、その一種又は二種以上をブレンドして、成形されており、一般的には、NRやIRを主体としたブレンドゴムを用いて、円環形状(ドーナツ形状)に加硫成形されたものである。そして、この内側層14の外周面16上には、図2の断面図に示されるように、所定深さの周溝の複数条、ここでは2条の周溝22,22が、外周面16の幅方向に所定間隔を隔てて、互いに平行に、且つ周方向に延びるようにして形成されている。また、かかる周溝22は、図2及び図3に示される如く、ここでは、矩形の横断面形状を呈し、一般に、溝幅:10〜30mm程度、溝深さ:10〜30mm程度の大きさにおいて、形成されている。
【0020】
一方、外側層18は、従来からよく知られているポリウレタンエラストマー材料を用いて、それを内側層14の外周面上において注型成形することにより、目的とする複合ソリッドタイヤ10の外径を与える厚さにおいて、内側層14の外周面上に一体的に形成されている。更に、かかる外側層18の内側層14との界面部分には、内側層14の外周面16に形成されている周溝22,22に対応する形状を呈するアンカー部24,24が、周方向に互いに平行に連続して延びる2つの突条として、外側層18と同一のポリウレタンエラストマー材料にて一体的に形成されている。
【0021】
そして、このような外側層18のアンカー部24,24が、内側層14の周溝22,22の溝内を埋めるように位置せしめられた状態、即ち、内側層14の外周面16上に形成された周溝22の溝内に、外側層18の内周面から突出するように設けられたアンカー部24が嵌め込まれた形態において、内側層14と外側層18とが一体化されて、全体として円環形状(ドーナツ形状)を呈する複合ソリッドタイヤ10として形成されているのである。
【0022】
なお、かかる内側層14と外側層18の一体化は、例えば、それら2つの接合面に接着剤を塗布して接着する等、公知の各種の手法が適宜に選択されて、行われることとなる。また、かかる複合ソリッドタイヤ10のホイール12に対する取り付けは、そのドーナツ形状の内周部、即ち、内側層14の内周部に対して、車両の車軸に取り付けられるホイール12の外周面が、よく知られているように、焼付式、圧入式、嵌め込み式等の方式において、取り付けられるようになっている。
【0023】
ところで、この複合ソリッドタイヤ10における外側層18を形成するポリウレタンエラストマー材料には、熱硬化型のものや常温硬化型のもの等、公知の各種のものが、適宜に選択されて、採用されることとなる。ここで、例えば、常温硬化型のポリウレタン原料とは、一般に、ポリイソシアネート成分として、変性ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等のMDI系イソシアネートを用い、またポリオール成分として、ポリエーテルポリオール等を用い、そして、それらポリイソシアネート成分とポリオール成分とを低温下において迅速に反応硬化せしめる触媒として、芳香族1級アミン等の芳香族アミンを用いてなるものであって、それらは、各種の市販品の中から適宜に選択され、例えば、独国:バイエル社から「バイテック(Baytec)」の名称にて市販されているものを用いて、10〜50℃の温度下において、反応硬化せしめられる。なお、その反応は、各成分の混合後、約1分程度経過すれば、ある程度の固化状態が実現され、そして、室温にて3日程度経過すれば、実質的な反応は終了し、最終物性が実現されるようになるものである。
【0024】
また、このようにポリウレタンエラストマー材料の外側層18によって構成された複合ソリッドタイヤ10において、そのトレッド面20の幅方向の両側の角部は、図3にも示されているように、所定の曲率半径をもった湾曲部26,26として、形成されている。なお、このような湾曲部26は、複合ソリッドタイヤ10を車両に取り付けた際に、車両外側となる側の角部に形成されている側の湾曲部26の曲率半径が、他方の側の角部に形成されている湾曲部26の曲率半径よりも大きな曲率半径となるようにされることが好ましい。このようにすることによって、路面と接するトレッド面20のうち、車両の走行において大きな応力のかかり易い車両外側に位置するトレッド面20の角部(外側層18の角部)における応力の集中を効果的に緩和することが出来るため、外側層18の角部が欠けてしまうような恐れを、有利に回避乃至は抑制することが可能となるのである。
【0025】
このように、本発明に従う構成とされた複合ソリッドタイヤ10によれば、内側層14の外周面に形成された溝部22の溝内に、外側層18と一体に形成されたアンカー部24が嵌め込まれているところから、タイヤのスラスト方向(軸方向)にかかる荷重に対し、内側層の外周面と外側層の内周面との間の接合に加えて、かかるアンカー部24と周溝22との間の嵌合によって対抗することが可能となるのである。そして、その結果、内側層14と外側層18との連結が、より強固に実現され得ることとなるため、外側層18が内側層14から外れてしまう恐れが、有利に低減され得るところとなり、以て、複合ソリッドタイヤの耐久性を、より一層効果的に高めることが出来るのである。
【0026】
勿論、かかる複合ソリッドタイヤ10においては、所定厚さのゴム材質からなる内側層14と、その上に一体的に形成されたポリウレタンエラストマー材料からなる外側層18とから構成されているところから、接地面から受ける衝撃が、内側層14にて効果的に吸収・緩和され、衝撃に対するクッション性乃至は緩衝性を有利に発現せしめ得ると共に、接地面となる外側層18は、ポリウレタンエラストマー材料の有する良好な耐磨耗特性によって、耐久性が著しく高められるため、複合ソリッドタイヤ10の耐用寿命を、有利に向上せしめることが可能となる特徴が発揮されるものである。
【0027】
加えて、そのようなポリウレタンエラストマー材料からなる外側層18には、ゴム材質の内側層14とは異なり、補強剤としてのカーボンブラックは、何等、配合されてはいないために、路面上を複合ソリッドタイヤ10が転動させられても、黒色のタイヤ跡が付くようなことは全くなく、それ故に、環境美化に寄与し、また作業環境を悪化せしめる恐れも惹起されることはないのである。
【0028】
なお、かくの如き本発明に従う構成の複合ソリッドタイヤ10は、公知の各種の手法を用いて製造することが可能であって、例えば、前述した特許文献1(特開2004−359219号公報)において明らかにされているような、注型成形法を用いて製造することが出来る。そして、そのような注型成形法にて複合ソリッドタイヤ10を製造するに際して、内側層14を与える円環状のゴム部材の外周面に所定条数の周溝22を形成しておき、それを、注型装置において外側層18を形成する外型内にセットし、そしてかかるゴム部材の外周面と外型の内周面との間の間隙に所定のポリウレタンエラストマー材料を充填することで、内側層14の周溝22内を埋めるようにされたアンカー部24が、外側層18と一体的に形成され得るのである。
【0029】
また、本発明にあっては、上記した実施の形態に加えて、図4及び図5に示される如き構成の複合ソリッドタイヤが、更に有利に採用されることとなる。そこにおいては、前述した複合ソリッドタイヤ10と同様にして、内側層14の外周面16上には、互いに所定間隔を隔てて、周方向に平行に延びるように形成された2条の周溝22,22が形成されている。そして、それら周溝22,22の間となる部位に、所定のポリウレタンエラストマー材料から形成されてなる複数本(ここでは6本)の接続ピン28が、周方向に所定間隔を隔てて(ここでは60°の位相差をもって)、且つそれら接続ピン28の一方の端部が内側層14に所定深さにおいて埋設されるようにして、配設されている。
【0030】
具体的には、かかる接続ピン28は、その他方の端部が内側層14の外周面16から所定高さ突出するようにして、立設されており、そしてそのような接続ピン28の内側層14からの突出部分が、外側層18内に埋入するように、構成されている。即ち、所定長さをもつ複数本の接続ピン28が、外側層18と内側層14との間に埋め込まれるように、配設されていることによって、それら2つの層を複数本の接続ピン28によって接続した状態となるように構成されているのである。
【0031】
なお、そのような接続ピン28を形成するポリウレタンエラストマー材料としては、公知の各種のものが適宜に選択されて、使用することが可能であるが、中でも、外側層18の形成材料と同一のものが、好適に採用されることとなる。即ち、外側層18と接続ピン28とを同一のポリウレタンエラストマー材料にて形成することによって、それらの接続性をより良好に高めることが可能となることに加えて、外側層18を注型成形法を用いて形成する際に発生する端材等を使用して、低いコストで、接続ピン28を形成することが出来る利点も享受されるのである。
【0032】
また、かかる接続ピン28は、角柱形状や円柱形状等、種々なる形状のものが採用可能であるが、好ましくは、10〜30mmφに相当する断面直径を有している円柱形状のものとされることとなる。また、接続ピン28の内側層14及び外側層18への埋入(突入)深さとしては、それぞれ、10〜30mm程度とされることが好ましい。
【0033】
さらに、ここで例示した複合ソリッドタイヤ30においては、6本の接続ピン28が、周方向に一定間隔を隔てて配設されていたが、それよりも少ない5本以下の本数、或いは7本以上の本数において配設することも、勿論可能である。但し、必要とされる接続ピン28による接合強度の増加や製造時のコスト等を考慮すると、4〜8本程度とされることが好ましい。
【0034】
このような構成とされた複合ソリッドタイヤ30によれば、内側層14に設けられた周溝22と外側層18に設けられたアンカー部24との嵌合に加えて、更に、かかる接続ピン28によって内側層14と外側層18とが接続されて、一体化されているところから、内側層14と外側層18との接合強度を、より一層効果的に高めることが可能となるのである。つまり、タイヤの軸方向(横方向)にかかる荷重が、内側層14と外側層18との間の接合力やアンカー部24の側面と周溝22の側壁面との間の当接によって受け止められることに加えて、その両端部が内側層14と外側層18にそれぞれ埋め込まれている接続ピン28によって支えられることとなり、これによって、2つの層の接合部分にかかる応力をより効果的に分散することが可能となるのである。その結果、外側層18が内側層14から外れてしまう恐れを有利に低減し、以て、より一層高い耐久性を発揮する複合ソリッドタイヤ30を提供することが出来るのである。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述してきたが、それは文字通りの例示であって、本発明は、そのような実施形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
【0036】
例えば、前記した実施形態においては、内側層14の外周面16に形成された周溝22の条数を2条としていたが、周溝22は少なくとも1条形成されていればよく、或いは、3条以上の周溝22を形成することも可能である。そして、そのような周溝22の条数に応じて、外側層18と一体的に形成されるアンカー部24が、それぞれ対応する位置に、対応する数だけ形成され、それぞれの周溝22の周溝内を、対応する位置に形成されたアンカー部24が埋めるようにされて、複合ソリッドタイヤが形成されることとなる。
【0037】
さらに、前述した何れの実施の形態においても、内側層14の外周面16に形成された周溝22は、矩形の横断面形状を呈するようにされていたが、アリ溝形状、台形形状や多角形形状等の横断面形状を呈する周溝22とすることも可能である。
【0038】
加えて、かかる例示した複合ソリッドタイヤ10,30の内側層14としては、新規に所定のゴム材料にて作成したものが用いられる他にも、一般にソリッドラバータイヤとして市販されているもののトレッド面が磨耗によって磨り減り、ホイール12の全周に亘って所要厚さにて残っている状態のものを用い、その外周面(トレッド面)に対して、公知の切削加工等を施すことによって周溝22が形成されたものとすることも、可能である。このように、磨耗したソリッドラバータイヤの磨耗残となるラバー層を内側層として再利用して、複合ソリッドタイヤ10(30)を形成することによって、複合ソリッドタイヤの生産コストの低減が効果的に図られ得ると共に、摩耗したソリッドラバータイヤの廃棄によって発生するコスト増加や環境への悪影響を、有利に低減することが可能となる。
【0039】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変形、修正、改良等を加えた態様において、実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【符号の説明】
【0040】
10 複合ソリッドタイヤ
12 ホイール
14 内側層
16 外周面
18 外側層
20 トレッド面
22 周溝
24 アンカー部
26 湾曲部
28 接続ピン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材質からなる所定厚さの内側層と、該内側層の外周面上にポリウレタンエラストマー材料にて一体的に形成された外側層とからなる複合ソリッドタイヤにして、
該内側層の外周面に形成された少なくとも1条の周溝を有すると共に、該周溝内を埋めるように位置せしめた、前記外側層と同一のポリウレタンエラストマー材料からなるアンカー部を、該外側層に一体に形成せしめたことを特徴とする複合ソリッドタイヤ。
【請求項2】
前記内側層の外周面上に、ポリウレタンエラストマー材料からなる複数本の接続ピンが、周方向に所定の距離を隔てて立設せしめられると共に、それら接続ピンの先端側部位が前記外側層内に埋入されて、それら外側層と内側層とが該接続ピンによって接続せしめられている請求項1に記載の複合ソリッドタイヤ。
【請求項3】
前記周溝の2条が、前記内側層の外周面上に周方向に互いに平行に延びるようにして形成されると共に、それら周溝間の前記内側層外周面部位に、前記複数本の接続ピンが周方向に配設されている請求項2に記載の複合ソリッドタイヤ。
【請求項4】
前記接続ピンが、10〜30mmφに相当する断面直径を有していると共に、前記内側層及び前記外側層に、それぞれ、10〜30mmの長さにおいて突入せしめられている請求項2または請求項3に記載の複合ソリッドタイヤ。
【請求項5】
前記周溝が、矩形の横断面形状を有している請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の複合ソリッドタイヤ。
【請求項6】
前記内側層が、摩耗したソリッドラバータイヤにおける摩耗残にて与えられる所定厚さのラバー層である請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の複合ソリッドタイヤ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168111(P2011−168111A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31944(P2010−31944)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000148379)株式会社前田シェルサービス (7)