説明

複合ポリエステルフィルム

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、複合ポリエステルフィルムに関する。詳しくは内層に染料を含むポリエステルの複合ポリエステルフィルムであって、自動車窓貼り用として好適な複合ポリエステルフィルムに関する。
〔従来の技術および発明が解決しようとする問題点〕
ポリエステルフィルムは、耐熱性、強度、剛拙、電気特性透明性などに優れ、従来から種々の工業用途に利用されており、その用途は、ますます拡大、多様化している。このような多様化に際し、その要求特性もますます厳しくなってきたが、これを充分に満足させるに至っていないのが現状である。
例えば、窓貼り用フィルム、自動車窓貼り用フィルム、X線用青味付けフィルム、ビデオテープ用途、Ba−フェライトDAT用途等染料を含有させて着色する用途において、色の調合、耐熱性、分散性等で良好な染料を選択しても、その染料の昇華性のため、フィルム製造時にキャスティングロール、縦延伸ロール、テンター内が汚染されてしまい、他の銘柄は製造不可能となってしまう。そのため、実際には上記した着色フィルムは、製造出来ないが、製造できてもコストが極めて高くなってしまうのが現状である。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意研究した結果、たとえ染料を含むフィルムであっても、ある特定の構成とすることにより、その効果を損なうことなく該物質の滲出を防ぐことができることを見出し、本発明を知成するに至った。
即ち本発明の要旨は、少なくとも3層以上の層からなる配向ポリエステルフィルムであって、内層は染料を含有する層であり、最外層は該物質を含有しない層であり、最外層の粘度が内層の粘度以上であることを特徴とする自動車窓貼り用複合ポリエステルフィルムに存する。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明にいう複合ポリエステルフィルムとは、全ての層が口金から共溶融押出される共押出法により押出されたものを延伸後必要に応じて熱固定したものを指す。以下、複合ポリエステルフィルムとして、3層複合のフィルムについて説明するが、本発明において、複合ポリエステルフィルムは、その目的を満たす限り、3層フィルムに限定されるものではなく3層以上の多層であってもよい。
本発明において、複合フィルムの各層を構成する重合体は、各種ポリエステルであるが、これらは熱可塑性のものから選ばれる。これらの中でも、重合反応性、製膜性、フィルムの品質性能において、最も優れ、かつ経済的にも好ましいものは、ポリエチレンテレフタレートとその共重合体である。その他原料ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンジベンゾエート、ビスフェノールAとテレフタル酸、或いはイソフタル酸のポリエステル等のホモポリエステルも挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートも含めたこれらホモポリエステルに、共重合成分として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、等のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、等のジカルボン酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、グリコール等のポリオール等を単独もしくは複合して使用した共重合物も使用可能である。共重合成分としては、ジカルボン酸成分中のモル数とジオール成分中のモル数の和が60モル%以下であればいずでもよい。
その他ポリプロピレンテレフタレート、ポリベンチレンビベンゾエート、3,3−ビス−(p−オキシフェニル)ペンタンとテレフタル酸のポリエステル、2,2−ビス(3−メチルオキシフェニル)プロパンとテレフタル酸のポリエステル、2,2−ビス(p−オキシフェニル)ペンタンとイソフタル酸,テレフタル酸のポリエステル、等をあげることもできる。
本発明のフィルムにおいて、最外層とは露出する2面を構成する層であり、それ以外の層を内層と呼ぶ。
本発明のフィルムの最外層を構成するポリエステルの粘度は内層以上の粘度である。更に最外層を構成するポリエステルのガラス転移点が内層のそれと同等もしくはそれ以上であることが望ましい。染料のフィルムからの滲出は、フィルムの粘度及び/又はガラス転移点は低い程、速やかであり、最外層の粘度及び/又はガラス転移点が内層のそれより低い場合は、最外層の厚みを厚くする必要があり好ましくない。粘度及びガラス転移点は、内層に含有する染料の種類、量にも左右されるが、いずれにしても内層より最外層が高い方が好まいく、かつ染料の含有量が多い程、最外層の高粘度及び/又は高ガラス転移点が要求される。最外層と内層の粘度の差は好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.05以上であり、一方、ガラス転換点の差は、好ましくは5℃以上、更に好ましくは10℃以上である。
本発明で使用する染料としては、ポリエステル製造時の耐熱性、ポリエステル中の分散性の点で、化学構造的にはアントラキノン系染料、フタロシアニン系染料等が、染色的に分散染料、油溶性染料が好適である。これらの染料を適宜選択し、数種混合してポリエステルに含有させてもよいが、ポリエステル中の含有量は0.01〜10wtの範囲が好ましい。
最外層は厚い程、内層に含有させた物質の滲出防止に有効であるが、フィルム全体の特性は内層によって決まるので、特性上不利になる。従って内層の厚みは、全厚みの少なくとも50%以上、好ましくは65%以上、更に好ましくは80%以上である。
最外層の厚みは各々0.1μ以上、好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μ以上であるが両層の厚みは必ずしも同一である必要はない。
フィルムの延伸条件は、特に限定されないので、通常の方法に従って延伸されるが、内層、最外層共にポリエチレンテレフタレートの場合を例にとって示せば、延伸倍率は一軸延伸の場合は、縦方向又は横方向のいずれかに2.0倍以上5.0倍以下、それと直角方向には2.0倍以下、一方、二軸延伸の時には、縦方向、横方向共に2〜5倍で延伸温度70〜160℃の範囲が一般的であり、熱処理が必要な場合には150〜255℃の範囲で実施される。製造条件は、一般には、内層のポリエステルのそれに合わすほうが好ましい。二軸延伸の場合は、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、更にその後での再延伸などの種々の組合せが可能である。
本発明の複合フィルムは、100℃〜250℃の範囲で5分間加工処理又は使用しても添加物質による発現特性(例えば、紫外線吸収能、難燃性、着色度、接着性等)の変化のない優れたものである。
ところが、各用途に適用する際、その用途の要求特性に応じて必要な特性例えば、接着性、帯電防止性、離形性、易滑性等を付与するため必要に応じてフィルムの製造巻取後オフラインで各種のコートを行なうことができ、また、熱処理又は横延伸のテンター入口前にコートをしてテンター内で乾燥するいわゆるインラインコーティングを行ってもよい。また、そのようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としては、オフラインコーティングは水系及び/又は溶媒系いずれでもよいが、インラインコーティングでは、水系、水分散系が望まれる。また、インラインコーティングの主樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系等を単独又は複合化して使用することができる。
いずれにせよ、本願発明の目的に合致する範囲で、公知の技術の組み合わせが可能である。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
実施例1 三菱化成社製ダイアレンジイエローF0.5wt%、同レッドHS0.5wt%、同バイオレットD0.4wt%、同ブルーN0.24wt%、同ブルーH3G0.24wt%となるようにブレンドした固有粘度0.58のポリエチレンテレフタレートを内層とし、その両面に固有粘度0.63の染料を含有しないポリエチレンテレフタレートを共押出したフィルムを87℃で一軸に3.7倍延伸後、それと直角方向に100℃で3.8倍延伸した。次いで、210℃で熱処理してスモークダークの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。複合フィルムの全厚みは25μ、厚外層の厚みは各々1.5μであった。
得られたフィルムは自動車窓貼り用フィルムとして好適であり、この製造工程でキャスティングドラム、縦延伸ロール、テンター内等が染料で汚染されることもなく、また、製品として得られたサンプルフィルムを210℃3分緊張下再度熱処理してフィルムの光線透過率を可視光にて測定したが全く変化はなかった。
比較例1 実施例1の内層に用いたポリエチレンテレフタレートのみの厚み25μの単層フィルムを同じ押出、延伸、熱処理条件で作成した。製膜時キャスティンドラム上やテンター内に染料が昇華し装置を汚染した。また、製膜したフィルムを実施例1と同じく再度210℃で3分緊張下熱処理したところ、染料が昇華したフィルムの光線透過率が上昇した。
〔発明の効果〕
本発明のフィルムは染料を含有させて該物質の滲出が極めて少なく、該フィルムの製造又は使用に際してその特性の低下がほとんど無いので自動車窓貼り用に好適に供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも3層以上の層からなる配向ポリエステルフィルムであって、内層は染料を含有する層であり、最外層は該物質を含有しない量であり、最外層の粘度が内層の粘度以上であることを特徴とする自動車窓貼り用複合ポリエステルフィルム。

【特許番号】第2699397号
【登録日】平成9年(1997)9月26日
【発行日】平成10年(1998)1月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−94850
【出願日】昭和63年(1988)4月18日
【公開番号】特開平1−264843
【公開日】平成1年(1989)10月23日
【出願人】(999999999)ダイアホイルヘキスト株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭62−138213(JP,A)
【文献】実開 昭50−88569(JP,U)
【文献】実開 昭62−33951(JP,U)