説明

複合材料回路基板構造を形成する方法

【課題】複合材料回路基板構造を形成する方法を提供する。
【解決手段】複合材料回路基板構造を形成する方法は、まず複合材料構造200を提供する。当該複合材料構造200は基板201と、基板201の上に位置する複合材料誘電層202を含む。複合材料誘電層202は基板201に接触する触媒誘電層210と、触媒誘電層210に接触する犠牲層220を含む。犠牲層220は水に溶けない。その後、複合材料誘電層202をパターン化して触媒顆粒212を活性化し、更に活性化された触媒顆粒212の上に導線層230を形成する。最後に犠牲層220を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合材料回路基板構造を形成する方法に関し、特に触媒顆粒を含む複合材料で回路基板構造を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板は電子装置の中で重要な素子である。製品の薄型化、配線の微細化、エッチングの信頼性を改善するために、埋め込み式配線構造が注目されている。埋め込み式配線構造は配線パターンが基板に埋め込まれているので、実装後の厚さが抑えられている。
【0003】
従来の技術では前述のような回路基板を形成するために、数種類の方法が考案されている。そのうち1つは、レーザーアブレーションで基板をパターン化してダマシン構造を形成し、更に基板上の穴に導電材料を埋め込んで、埋め込み式配線構造とするのを内容とする。
【0004】
導電材料を基板上の穴に埋め込む(通常は無電解めっきで行われる)ために、一般に基板の表面を活性化しておくことが必要である。従来の技術では製作方法として直接配線設計を利用する。例えば前述のように、レーザーアブレーションで基板をパターン化してダマシン構造を形成し、更に基板上の穴に導電材料を埋め込んで、埋め込み式配線構造を作成する。
【0005】
図1を参照する。図1では従来の無電解めっきに見られるオーバープレーティング(over-plating)現象を示す。無電解めっきで銅などの導電材料130を、基板101上あらかじめ形成された穴122に埋め込む過程では、オーバープレーティング現象が発生しやすい。オーバープレーティング現象が発生すると、導電材料130は穴122の開口部から周辺へあふれ出る。配線の微細化を重視する先行技術では同じ配線層の中にある配線の線幅をできるだけ小さくしているので、穴122の開口部から周辺へあふれ出る導電材料130は、隣接した導線の短絡確率を引き上げるだけでなく、薬液の生産管理を難しくする。また、基板101の穴122に埋め込まれるはずの導電材料130は基板101の表面に付着して表面を汚染し、製品の歩留まりを低下させるおそれがある。以上はいずれも当業者にとって好ましくなく、克服すべき点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾公開200805611号公報
【特許文献2】台湾特許第I288591号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では複合材料回路基板構造を形成する方法を提供する。本発明による複合材料回路基板構造を形成する方法は、無電解めっき時選択的堆積の特性を有するので、オーバープレーティング現象を抑制し、導電材料が穴の開口部から周辺へあふれ出るのを防ぐことができる。また、無電解めっき時選択的堆積の特性により、本来基板の穴に埋め込まれるはずの導電材料はほとんど基板の表面に付着しないので、導電材料が基板表面の間違った領域に堆積する確率と導線短絡の確率を低くすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では複合材料回路基板構造を形成する方法を開示する。当該方法ではまず複合材料構造を提供する。当該複合材料構造は基板と、基板の上に位置する複合材料誘電層を含む。複合材料誘電層は基板に接触する触媒誘電層と、触媒誘電層に接触する犠牲層を含む。犠牲層は水に溶けない。その後、複合材料誘電層をパターン化して触媒顆粒を活性化し、更に活性化された触媒顆粒の上に導線層を形成する。最後に犠牲層を除去する。望ましくは、導線層の表面の最高点と最低点の差は3μmを超えない。
【0009】
本発明では更に、複合材料回路基板構造を形成する方法を開示する。当該方法ではまず複合材料構造を提供する。当該複合材料構造は基板と、基板の上に位置する複合材料誘電層を含む。複合材料誘電層は基板に接触する触媒誘電層と、触媒誘電層に接触する内犠牲層と、内犠牲層に接触する外犠牲層を含む。内犠牲層は水に溶けない。その後、複合材料誘電層をパターン化して触媒顆粒を活性化した後に、外犠牲層を除去する。次に、活性化された触媒顆粒の上に導線層を形成した後に、内犠牲層を除去する。望ましくは、導線層の表面の最高点と最低点の差は3μmを超えない。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、触媒顆粒を含む複合材料で回路基板構造を形成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の無電解めっきに見られるオーバープレーティング現象の説明図である。
【図2】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図3】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図4】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図5】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図6】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図6A】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図7】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図7A】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【図7B】本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では複合材料回路基板構造を形成する方法を開示する。本発明による複合材料回路基板構造を形成する方法は、無電解めっき時選択的堆積の特性を有するので、オーバープレーティング現象を抑制し、導電材料が穴の開口部から周辺へあふれ出るのを防ぐことができる。また、無電解めっき時選択的堆積の特性により、本来基板の穴に埋め込まれるはずの導電材料はほとんど基板の表面に付着しないので、導電材料が基板表面の間違った領域に堆積する確率と導線短絡の確率を低くすることができる。
【0013】
本発明では複合材料回路基板構造の形成方法を提供する。図2〜図7Bは本発明による複合材料回路基板構造の形成方法の説明図である。図2に示すように、本発明による複合材料回路基板構造の形成方法は、まず複合材料構造200を提供する。この複合材料構造200は基板201と複合材料誘電層202を含む。
【0014】
本発明による複合材料構造200の基板201の多層回路基板、例えば埋め込み式配線構造及び/または非埋め込み式配線構造である。複合材料誘電層202は基板201の上に位置する。複合材料誘電層202は触媒誘電層210と犠牲層220を含む。触媒誘電層210は誘電材料211と、少なくとも1つの触媒顆粒212とを含む。触媒顆粒212は誘電材料211の中で散布している。レーザーなどで活性化すると、触媒誘電層210は触媒顆粒212の助けにより、導電材料の堆積を誘導することができる。
【0015】
本発明による複合材料構造200の誘電材料211は例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリレート、フッ素重合体、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスルホン、珪素重合体、BT樹脂(ビスマレイミドトリアジン変性エポキシ樹脂)、ポリシアネート、ポリエチレン、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ナイロン6、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、またはシクロオレフィン共重合体(COC)などの高分子材料である。
【0016】
本発明による複合材料構造200の触媒顆粒212は例えば、金属の配位化合物からなる複数のナノ顆粒である。本発明に適した金属の配位化合物は金属酸化物、金属窒化物、金属錯体化合物、及び/または金属キレート化合物である。金属配位化合物の金属は例えば亜鉛、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム、インジウム、鉄、マンガン、アルミニウム、クロム、タングステン、バナジウム、タンタル、及び/またはチタニウムである。
【0017】
犠牲層220は複合材料誘電層202の外表面に位置し、または触媒誘電層210を被覆する。犠牲層220は絶縁材料から構成され、例えばポリイミドで絶縁犠牲層を形成することができる。犠牲層220は状況に応じて単層構造または多層構造となり、その厚さは最大25μmである。
【0018】
以下に犠牲層220が単層構造の場合と、犠牲層220が多層構造の場合を分けて実施例を説明する。
【0019】
犠牲層220が単層構造であれば、図3に示すように、複合材料誘電層202全体をパターン化する。複合材料誘電層202をパターン化するときは、溝225を形成すると同時に、触媒顆粒212を活性化する。複合材料誘電層202のパターン化は物理的な方法(例えばレーザーアブレーションまたはプラズマエッチング)で実行することができる。レーザーアブレーションのレーザー光源として赤外レーザー、紫外レーザー、エキシマレーザー、または遠赤外レーザーを利用することができる。
【0020】
次に図4に示すように導線層230を形成する。導線層230はパターン化複合材料誘電層202の溝225に埋め込まれ、活性化された触媒顆粒の上に位置する。導線層430は、無電解めっきで化学銅(chemical copper)などの導電材料を、パターン化複合材料誘電層202の溝225に埋め込むことで形成される。活性化された触媒顆粒212の誘導に従って、導電材料は活性化された触媒顆粒以外の箇所でなく、主に溝225の中に堆積する。本発明による複合材料は、無電解めっきの過程で触媒誘電層210の活性化された溝225に選択的に堆積するので、複合材料誘電層202のめっき時にオーバープレーティング現象を抑制し、導電材料が穴の開口部から周辺へあふれ出るのを防ぐことができる。また、導線層230の表面はわりと平坦であって、最高点と最低点の差は3μmを超えない。
【0021】
化学的工程から得られた銅とめっき工程から得られた銅は性質が完全には同じではないので、パターン化導線層230として構造上、物理的特性が異なった銅から構成されたもの(例えば化学的工程から得られた銅とめっき工程から得られた銅を混合したもの)ではなく、単一種類の銅からなるもの(例えば化学的工程から得られたもの)を使用することが望ましい。導線層230の形成後、図5Aに示すように犠牲層220を除去する。犠牲層220は例えば剥がして除去することができる。
【0022】
犠牲層220が多層構造であれば、図6に示すように、犠牲層220は外犠牲層221と内犠牲層222を含む。本発明による外犠牲層221と内犠牲層222の材料は同一か相違している。例えば、内犠牲層222は水に溶けないもので、外犠牲層221は水に溶けないものに限らない。
【0023】
次に複合材料誘電層202全体をパターン化する。複合材料誘電層202をパターン化するときは、溝225を形成すると同時に、触媒顆粒212を活性化する。複合材料誘電層202のパターン化は物理的な方法(例えばレーザーアブレーションまたはプラズマエッチング)で実行することができる。レーザーアブレーションのレーザー光源として赤外レーザー、紫外レーザー、エキシマレーザー、または遠赤外レーザーを利用することができる。
【0024】
レーザーアブレーションまたはプラズマエッチングで複合材料誘電層202をパターン化する過程で複合材料誘電層202を損傷するか、または複合材料誘電層202の表面に残留物を残せば、活性化された触媒顆粒212が導電材料を溝225へ堆積するように誘導するのがそれによって妨害されうる。この問題は外犠牲層221を除去するだけで解決できる。例えば図6Aに示すように、複合材料誘電層202をパターン化した後に外犠牲層221を除去し、複合材料誘電層202の表面に無傷な表面を形成することができる。
外犠牲層221が水溶性材料を含んだ場合、複合材料誘電層202をパターン化した後に生じた不純物が導線層230の形成を妨害するのを防ぐために、複合材料誘電層202をパターン化した後、導線層230を形成する前に外犠牲層221を除去することができる。水溶性材料は必要時に水洗いで除去できるように、親水性高分子を含む。親水性高分子の特性官能基は例えばヒドロキシ基(−OH)、アミド基(−CONH2)、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)のいずれか、またはその任意の組み合わせである。外犠牲層221が水に溶けないものであれば、それを剥がして除去することができる。
【0025】
次に図7に示すように導線層230を形成する。導線層230は活性化された触媒誘電層の表面にのみ選択的に堆積するので、触媒誘電層210の上に位置する。複合材料誘電層202の表面が無傷な表面に戻っているので、無電解めっきで化学銅などの導線材料をパターン化複合材料誘電層202の溝225に埋め込んで導電層230を形成する際、外部干渉がなければ、活性化された触媒顆粒212は導電材料を溝225に堆積するように容易に誘導することができる。また、導線層230の表面はわりと平坦であって、最高点と最低点の差は3μmを超えない。
【0026】
本発明による複合材料は、無電解めっきの過程で触媒誘電層210の活性化していない触媒顆粒212の外に選択的に形成しないので、複合材料誘電層202のめっき時にオーバープレーティング現象を抑制し、導電材料が穴の開口部から周辺へあふれ出るのを防ぐことができる。
【0027】
化学的工程から得られた銅とめっき工程から得られた銅は性質が完全には同じではないので、導線層230として構造上、物理的特性が異なった銅から構成されたもの(例えば化学的工程から得られた銅とめっき工程から得られた銅を混合したもの)ではなく、単一種類の銅からなるもの(例えば化学的工程から得られたもの)を使用することが望ましい。
【0028】
導線層230は製作工程によって、図7Aに示すように誘電材料211とほぼ同じ高さを有することが可能である。或いは、図7Bに示すように誘電材料211より少し高いのも可能である。また、同じ基板201にある導線層230は、一部が誘電材料211より高く、一部が誘電材料211とほぼ同じ高さを有することが可能である。導線層230の形成後、図7Bに示すように内犠牲層222を除去する。内犠牲層220は例えば剥がして除去することができる。
【0029】
以上は本発明に好ましい実施例であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、本発明の精神の下においてなされ、本発明に対して均等の効果を有するものは、いずれも本発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0030】
101、201 基板
122 穴
130 導電材料
200 複合材料構造
202 複合材料誘電層
210 触媒誘電層
211 誘電材料
212 触媒顆粒
220 犠牲層
221 外犠牲層
222 内犠牲層
225 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料回路基板構造の形成方法であって、
基板と、前記基板の上に位置する複合材料誘電層と、を含む複合材料構造を提供する段階であって、前記複合材料誘電層は、前記基板に接触し、誘電材料と触媒顆粒を含む触媒誘電層と、前記触媒誘電層に接触し且つ水に溶けない犠牲層と、を含む、段階と、
前記複合材料誘電層をパターン化して前記触媒顆粒を活性化する段階と、
前記活性化された触媒顆粒の上に導線層を形成する段階と、
前記犠牲層を除去する段階と、
を含む、複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項2】
複合材料回路基板構造の形成方法であって、
基板と、前記基板の上に位置する複合材料誘電層と、を含む複合材料構造を提供する段階であって、前記複合材料誘電層は、前記基板に接触し、誘電材料と触媒顆粒を含む触媒誘電層と、前記触媒誘電層に接触し且つ水に溶けない内犠牲層と、前記内犠牲層に接触する外犠牲層と、を含む、階段と、
前記複合材料誘電層をパターン化して前記触媒顆粒を活性化する段階と、
前記外犠牲層を除去する段階と、
前記活性化された触媒顆粒の上に導線層を形成する段階と、
前記内犠牲層を除去する段階と、
を含む、複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項3】
前記基板は多層回路基板である、請求項1または請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項4】
前記誘電材料は高分子材料を含み、当該高分子材料は、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリレート、フッ素重合体、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスルホン、珪素重合体、BT樹脂(ビスマレイミドトリアジン変性エポキシ樹脂)、ポリシアネート、ポリエチレン、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)、ナイロン6、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、またはシクロオレフィン共重合体(COC)からなる群れから選ばれる、請求項1または請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項5】
前記触媒顆粒は複数の金属配位化合物のナノ顆粒を含む、請求項1または請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項6】
前記方法は、レーザー加工で前記複合材料誘電層をパターン化して前記触媒顆粒を活性化する、請求項1または請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項7】
前記外犠牲層と前記内犠牲層はそれぞれ異なった材料を含む、請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。
【請求項8】
前記外犠牲層は水溶性材料を含み、当該水溶性材料は、ヒドロキシ基(−OH)、アミド基(−CONH2)、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)からなる官能基の群れから選ばれる、請求項2に記載の複合材料回路基板構造の形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図7】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2010−251685(P2010−251685A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172915(P2009−172915)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(504366109)欣興電子股▲ふん▼有限公司 (21)
【Fターム(参考)】