複合糸およびその製造方法
【課題】紙糸と、これとは異なった種類の糸とからなる複合糸を製造する方法において、別途の紙糸の製造工程を経ることなく紙テープを直接用いて複合糸を製造することができ、製造工程数を短縮させて生産性を大幅に向上させることが可能な方法を提供する。
【解決手段】外力によってボビンから繰り出される紙テープＰＴを、ボビンの軸を貫くように送りつつ撚りを加え、別途に供給される異種糸Ｆと引き合わせ、次いで、このように引き合わされた紙テープと異種糸とを、ボビンの軸方向へと送りつつ、ボビンの軸まわりに回転させて撚り合わせる複合糸の製造方法。
【解決手段】外力によってボビンから繰り出される紙テープＰＴを、ボビンの軸を貫くように送りつつ撚りを加え、別途に供給される異種糸Ｆと引き合わせ、次いで、このように引き合わされた紙テープと異種糸とを、ボビンの軸方向へと送りつつ、ボビンの軸まわりに回転させて撚り合わせる複合糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、紙テープから紙糸を製造して紙糸と異種糸とを合糸する従来の技術とは異なり、一つの工程によって紙テープと異種糸とを合撚および合糸して複合糸を製造することが可能な複合糸の製造方法に関する。より詳しくは、外力によってボビンから繰り出される紙テープを、ボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共に、ボビンの軸方向に共軸に回転させて合撚する工程を含んだものに関する。
【背景技術】
【０００２】
最近、衣類素材は化学繊維の発達によって急速に発展してきたが、生活水準の向上と文明の発達に伴い、環境にやさしく人体に無害な衣服着用の欲求が増加しつつある。よって、韓紙を用いた韓紙糸などの天然繊維の開発および機能性の強化に注力している。ここで、韓紙（Hanji）とは、こうぞ（楮；paper mulberry, Broussonetia kazinoki）の靭皮繊維を主原料とし、和紙と同様の「流し漉き」により製造される伝統的な紙である。韓国式の和紙といういことができるが、通常こうぞの割合が高いこと、これに伴い叩解の程度が高いこと、漉いた状態での配向性が高いこと、漉いた紙を2枚重ねにして乾燥させ繊維を交差させることなどにより、一般に、美濃紙などの和紙よりも強度が大きい。韓紙糸は、主として、一旦乾燥させた韓紙を製造した後、テープ状に細く切り出し、単独または他の単糸と撚り合わせて糸にしたものである。
【０００３】
一方、伝統的な天然繊維素材である楮（こうぞ）パルプから製造される韓紙は、人体に無害な代表的な、環境にやさしい素材であって、黄土と同レベルの遠赤外線放出能、抗菌および消臭性能、通気性、吸汗・速乾性などの多様な機能性を保有していることから、アトピー症防止のための壁紙などとして脚光を浴びている。ところが、従前、その用途は画仙紙、包装紙、工芸品などに限定されていたため、多様な用途の創出が求められてきた。
【０００４】
従来、韓紙を用いた繊維を適用するにあたっては、ファンション工芸家によって伝統技法で製造された韓紙を用い、韓紙の生地自体を裁断して用いるか、または、手作業によって韓紙を切って撚りをかけた糸を作って製品化していた。ところが、染色性および洗濯性の問題と、生産量の限界という問題に直面することとなった。
【０００５】
最近では、原紙を一定の幅に切断した後、リング精紡機を用いて機械的撚りをかけて紙糸を製造する技術が提案された。ところが、この技術は、リング精紡機によって撚糸工程および巻き取り工程を行うことができるという利点はあるが、リング精紡機の特性上、リングの大きさによってコーンに巻き取ることが可能な紙糸の量が限定されており、大量の紙テープに撚りをかけて巻き取ることができないという問題がある。製品を円滑に製造するためには、複数のコーンに巻き取られた紙糸を繋ぐための別途の後続工程が要求されることにより、作業が煩わしく、多くの人手が要求されるなど、生産性が大幅に低下するという問題があった。
【０００６】
かかる問題点を克服するために、本出願人は特許文献１を提案した。特許文献１は、従来のリング精紡機とは異なり、コーンなどに大量の紙糸を巻き取ることができるため、生産性が大幅に向上するという利点がある。
【０００７】
ところが、製造された紙糸の伸度が良くないため、丸編機、自動横編機および靴下編機などを用いて編成する場合、低い伸度および反発力によって（編み）目落ちおよび糸切れなどが頻繁に発生することにより編成が困難であった。
【０００８】
一方、韓紙糸などの低伸度原糸に伸度を与えて伸縮性を向上させるための発明が特許文献２などに提案されている。特許文献２は、ポリウレタン弾性糸のまわりに韓紙原糸が一定の間隔で巻かれた構造を持つカバリング原糸に関する。ポリウレタン弾性糸に固有の良好な伸縮性によって厚い織物製品の製造に利点があるが、５００〜１５００デニール以上の韓紙糸を使用することにより、汎用的な衣類製品への適用には限界があり、特に編成品の製造には難しさがある。
【０００９】
本出願人は、低伸度の原糸の伸度を向上させることで編成を可能とした、低伸度原糸の伸度向上のための複合糸およびその製造方法を特許文献３に提案した。その複合糸は、伸度および反発力が大幅に向上し、編成の際に（編み）目落ちおよび糸切れが発生しないなど、優れた編成性を持つという利点がある。
【００１０】
ところが、特許文献２および特許文献３はいずれも、紙糸を用いて複合糸を製造するにあたり、複合糸を製造するためには、まず原糸を切断して製造した紙テープに撚りをかけて紙糸を製造した後、製造された紙糸と異種糸とを複合しなければならないという煩わしさがあり、このことから、生産性が良くないという問題点があった。
【特許文献１】韓国特許第0654155号
【特許文献２】韓国実用新案第352850号
【特許文献３】韓国特許第0689604号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、紙糸製造工程を経ることなく紙テープを直接用いて複合糸を製造することができるなど、製造工程数を短縮させて生産性を大幅に向上させることが可能な複合糸製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記目的を達成するための本発明は、外力によってボビンから繰り出される紙テープをボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共にボビンの軸方向に回転させて合撚する工程を含んで製造することを特徴とする、複合糸の製造方法を提供する。
【００１３】
前記異種糸は、セルロース繊維および合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなることが好ましい。
【発明の効果】
【００１４】
上述した本発明に係る複合糸の製造方法は、紙テープを用いて紙糸を製造（紙糸製造工程）して紙糸と異種糸とを合糸する従来の技術とは異なり、一つの工程によって紙テープと異種糸とを合撚および合糸して複合糸を製造することにより、製造工程数が短縮されて生産性が大幅向上し且つ強度および伸度などの物性が向上した複合糸を製造することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る複合糸の製造方法について詳細に説明する。本発明に係る複合糸の製造方法は、詳しくは、次のような工程を含む。外力によってボビンから繰り出される紙テープを、ボビンの軸を貫くように送りつつ撚りを加えた後、別途に供給される異種糸と引き合わせる。次いで、このように引き合わされた紙テープと異種糸とを、ボビンの軸方向へと送りつつ、ボビンの軸まわりに回転させて撚り合わせる。
【００１６】
前記紙テープは原糸を一定の幅に切断して形成したものである。前記原紙は、針葉樹または広葉樹の木材パルプ、竹材パルプ、マニラ麻やケナフなどから得られる紙だけでなく、楮（こうぞ）の内皮から得られる韓紙、その他の和紙の系統などを全て含む。また、必要に応じて、抄紙段階または抄紙段階の前後段階で、機能性加工処理された原紙を使用することができるなど、大きく限定されるものではない。前記異種糸は、例えば綿、麻、レーヨン、キュプラなどの天然、再生、または半合成（アセテートなど）のセルロース繊維、および例えばポリエステル（ＰＥＴ）、ナイロンなどの合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなる。
【００１７】
一方、前記紙テープの秤量、前記紙テープの幅、並びに前記異種糸の種類および繊度は複合糸の使用用途に応じて調節することができる。
【００１８】
図１は本発明の複合糸を製造するための撚糸および巻き取り装置を示す概略斜視図、図２は撚糸機の縦断面状態を示す図である。図１および図２に示すように、本発明の複合糸を製造するための好ましい撚糸機１０は、(1) 回転盤１１５が一体に設けられたスピンドル１１０と、(2) 前記スピンドル１１０上に支持され、上面が開口した保護容器１２０と、(3) 紙テープＰＴが巻き取られたボビンＢを軸支し、ボビンＢから繰り出される紙テープＰＴ１を、前記スピンドルの上端部に設けられた第１引き込み口１１１へ案内する糸導入パイプ１５０とから構成される。紙テープＰＴが巻き取られたボビンＢは、前記糸導入パイプ１５０の周りに共軸に設けられ、回転可能に支持される。
【００１９】
前記スピンドル１１０は、回転するベルト１３０などの駆動部材によって一方向に回転する。これにより、前記スピンドル１１０の一側に一体に設けられた回転盤１１５も、一方向に回転する。前記スピンドル１１０の上端部および下端部には、それぞれ第１引き込み口１１１および第２引き込み口１１２が設けられる。また、前記回転盤１１５の外周面の一側には、前記第１引き込み口１１１および第２引き込み口１１２と連通する引き出し口１１３が設けられる。
【００２０】
撚りをかける前の紙テープＰＴ１が、前記ボビンＢから繰り出され、前記糸導入パイプ１５０を伝って前記第１引き込み口１１１に引き込まれる。そして、前記引き出し口１１３から引き出される。前記紙テープＰＴが、固定された前記ボビンＢから繰り出され前記糸導入パイプ１５０を伝って引き込まれることにより、前記糸導入パイプ１５０中に引き込まれた紙テープＰＴ２には、一定の撚りがかけられる。
【００２１】
前記第２引き込み口１１２には、別途のボビンに巻き取られていた異種糸Ｆが引き込まれ、この異種糸Ｆは、前記第１引き込み口１１１に引き込まれた紙テープＰＴ２と共に、前記引き出し口１１３から引き出される。前記引き出し口１１３から引き出された紙テープおよび異種糸の組み合わせ（紙テープおよび異種糸を引き揃えたもの）Ｃは、前記糸導入パイプ１５０の上方に位置したバルーンガイド１７０を通過した後、巻き取り装置７０によってコーン７９０に巻き取られる。
【００２２】
前記引き出し口１１３と前記バルーンガイド１７０との間に位置した前記の紙テープおよび異種糸の組み合わせＣは、遠心力によってバルーンを形成すると同時に、撚りがかけられて合糸および合撚される。具体的には、前記糸導入パイプ１５０中にて一定の撚りがかけられた紙テープＰＴ２は、バルーニングによって完全な撚りが実現されると同時に、異種糸Ｆと合糸されて複合糸になる。
【００２３】
前記巻き取り装置７０は、前記バルーンガイド１７０を通過した複合糸の進行方向を転換して供給ローラー７３０へと供給する第１ガイドローラー７１２および第２ガイドローラー７１４と、前記第２ガイドローラー７１４を通過した複合糸をトラバースガイド７５０に円滑に供給する供給ローラー７３０と、前記供給ローラー７３０によって供給される複合糸を左右運動させるトラバースガイド７５０と、コーン７９０と接して前記コーン７９０を転がり運動させ、前記トラバースガイド７５０を通過した複合糸を前記コーン７９０に巻き取らせる巻き取りドラム７７０とを含んでなる。
【００２４】
前記複合糸は、前記バルーンガイド３９０を通過した後、上方に位置した第１ガイドローラー７１２、第２ガイドローラー７１４、供給ローラー７３０およびトラバースガイド７５０を順次通過する。その後、左右運動を行うトラバースガイド７５０を通過する複合糸は、回転する巻き取りドラム７７０と接して転がり運動を行うコーン７９０に巻き取られる。
【００２５】
図３はローラーが浸漬された水槽を示す概略斜視図である。図１および図３に示すように、前記第１ガイドローラー７１２と前記第２ガイドローラー７１４との間には、ローラー９７６が浸漬された水槽９０を備えることがよい。ローラーが浸漬された水槽９０を用いて紙テープに水分を供給するならば、紙テープに撚りが均一にかけられることにより、撚りが均一に入った複合糸を得ることができる。
【００２６】
以下、本発明に係る複合糸の製造方法について実施例を挙げてさらに詳しく説明する。これらの実施例は本発明の権利範囲を限定するものではない。
【００２７】
［実施例１］紙テープとしては韓紙を１．３ｍｍの幅に切断したものを使用し、異種糸としては１３３デニールの綿糸を使用した。図１に示すように改造された撚糸機を用いて、前記紙テープと前記綿糸とを合撚させて複合糸を製造した。製造中に、糸切れは発生しなかった。製造された複合糸の電子顕微鏡写真は図４のとおりである。このように製造された複合糸は、繊度３００デニール、強度１．４２ｇ／ｄおよび伸度５．２％の物性を示し、９．０Ｕ％以下の均斉度（外観形状の平均偏差／外観形状の平均値）を示した。
【００２８】
［実施例２］紙テープとしては韓紙を１．３ｍｍの幅に切断したものを使用し、異種糸としては７５デニールのレーヨンを使用した。図１に示すように改造された撚糸機を用いて、前記紙テープと前記レーヨンとを合撚させて複合糸を製造した。製造中に、糸切れは発生しなかった。製造された複合糸の電子顕微鏡写真は図５のとおりである。このように製造された複合糸は、繊度３５０デニール、強度１．２４ｇ／ｄおよび伸度５．５％の物性を示し、９．０Ｕ％以下の均斉度を示した。
【００２９】
実施例１および実施例２の場合、従来の技術とは異なり、別途の紙糸製造工程を経ることなく１回の工程によって紙テープと異種糸とを糸切れなしに合撚および合糸させ、物性および均斉度に優れた複合糸を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の複合糸を製造するための撚糸および巻き取り装置を示す概略斜視図である。
【図２】撚糸機の縦断面状態を示す図である。
【図３】ローラーが浸漬された水槽を示す概略斜視図である。
【図４】実施例１の複合糸についての電子顕微鏡写真である。
【図５】実施例２の複合糸についての電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【００３１】
１０ 撚糸機 １１０ スピンドル １７０ バルーンガイド
Ｃ バルーン Ｆ レーヨン糸などの異種糸 ＰＴ１ 撚りをかける前の紙テープ
【技術分野】
【０００１】
本発明は、紙テープから紙糸を製造して紙糸と異種糸とを合糸する従来の技術とは異なり、一つの工程によって紙テープと異種糸とを合撚および合糸して複合糸を製造することが可能な複合糸の製造方法に関する。より詳しくは、外力によってボビンから繰り出される紙テープを、ボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共に、ボビンの軸方向に共軸に回転させて合撚する工程を含んだものに関する。
【背景技術】
【０００２】
最近、衣類素材は化学繊維の発達によって急速に発展してきたが、生活水準の向上と文明の発達に伴い、環境にやさしく人体に無害な衣服着用の欲求が増加しつつある。よって、韓紙を用いた韓紙糸などの天然繊維の開発および機能性の強化に注力している。ここで、韓紙（Hanji）とは、こうぞ（楮；paper mulberry, Broussonetia kazinoki）の靭皮繊維を主原料とし、和紙と同様の「流し漉き」により製造される伝統的な紙である。韓国式の和紙といういことができるが、通常こうぞの割合が高いこと、これに伴い叩解の程度が高いこと、漉いた状態での配向性が高いこと、漉いた紙を2枚重ねにして乾燥させ繊維を交差させることなどにより、一般に、美濃紙などの和紙よりも強度が大きい。韓紙糸は、主として、一旦乾燥させた韓紙を製造した後、テープ状に細く切り出し、単独または他の単糸と撚り合わせて糸にしたものである。
【０００３】
一方、伝統的な天然繊維素材である楮（こうぞ）パルプから製造される韓紙は、人体に無害な代表的な、環境にやさしい素材であって、黄土と同レベルの遠赤外線放出能、抗菌および消臭性能、通気性、吸汗・速乾性などの多様な機能性を保有していることから、アトピー症防止のための壁紙などとして脚光を浴びている。ところが、従前、その用途は画仙紙、包装紙、工芸品などに限定されていたため、多様な用途の創出が求められてきた。
【０００４】
従来、韓紙を用いた繊維を適用するにあたっては、ファンション工芸家によって伝統技法で製造された韓紙を用い、韓紙の生地自体を裁断して用いるか、または、手作業によって韓紙を切って撚りをかけた糸を作って製品化していた。ところが、染色性および洗濯性の問題と、生産量の限界という問題に直面することとなった。
【０００５】
最近では、原紙を一定の幅に切断した後、リング精紡機を用いて機械的撚りをかけて紙糸を製造する技術が提案された。ところが、この技術は、リング精紡機によって撚糸工程および巻き取り工程を行うことができるという利点はあるが、リング精紡機の特性上、リングの大きさによってコーンに巻き取ることが可能な紙糸の量が限定されており、大量の紙テープに撚りをかけて巻き取ることができないという問題がある。製品を円滑に製造するためには、複数のコーンに巻き取られた紙糸を繋ぐための別途の後続工程が要求されることにより、作業が煩わしく、多くの人手が要求されるなど、生産性が大幅に低下するという問題があった。
【０００６】
かかる問題点を克服するために、本出願人は特許文献１を提案した。特許文献１は、従来のリング精紡機とは異なり、コーンなどに大量の紙糸を巻き取ることができるため、生産性が大幅に向上するという利点がある。
【０００７】
ところが、製造された紙糸の伸度が良くないため、丸編機、自動横編機および靴下編機などを用いて編成する場合、低い伸度および反発力によって（編み）目落ちおよび糸切れなどが頻繁に発生することにより編成が困難であった。
【０００８】
一方、韓紙糸などの低伸度原糸に伸度を与えて伸縮性を向上させるための発明が特許文献２などに提案されている。特許文献２は、ポリウレタン弾性糸のまわりに韓紙原糸が一定の間隔で巻かれた構造を持つカバリング原糸に関する。ポリウレタン弾性糸に固有の良好な伸縮性によって厚い織物製品の製造に利点があるが、５００〜１５００デニール以上の韓紙糸を使用することにより、汎用的な衣類製品への適用には限界があり、特に編成品の製造には難しさがある。
【０００９】
本出願人は、低伸度の原糸の伸度を向上させることで編成を可能とした、低伸度原糸の伸度向上のための複合糸およびその製造方法を特許文献３に提案した。その複合糸は、伸度および反発力が大幅に向上し、編成の際に（編み）目落ちおよび糸切れが発生しないなど、優れた編成性を持つという利点がある。
【００１０】
ところが、特許文献２および特許文献３はいずれも、紙糸を用いて複合糸を製造するにあたり、複合糸を製造するためには、まず原糸を切断して製造した紙テープに撚りをかけて紙糸を製造した後、製造された紙糸と異種糸とを複合しなければならないという煩わしさがあり、このことから、生産性が良くないという問題点があった。
【特許文献１】韓国特許第0654155号
【特許文献２】韓国実用新案第352850号
【特許文献３】韓国特許第0689604号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、紙糸製造工程を経ることなく紙テープを直接用いて複合糸を製造することができるなど、製造工程数を短縮させて生産性を大幅に向上させることが可能な複合糸製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
上記目的を達成するための本発明は、外力によってボビンから繰り出される紙テープをボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共にボビンの軸方向に回転させて合撚する工程を含んで製造することを特徴とする、複合糸の製造方法を提供する。
【００１３】
前記異種糸は、セルロース繊維および合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなることが好ましい。
【発明の効果】
【００１４】
上述した本発明に係る複合糸の製造方法は、紙テープを用いて紙糸を製造（紙糸製造工程）して紙糸と異種糸とを合糸する従来の技術とは異なり、一つの工程によって紙テープと異種糸とを合撚および合糸して複合糸を製造することにより、製造工程数が短縮されて生産性が大幅向上し且つ強度および伸度などの物性が向上した複合糸を製造することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１５】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る複合糸の製造方法について詳細に説明する。本発明に係る複合糸の製造方法は、詳しくは、次のような工程を含む。外力によってボビンから繰り出される紙テープを、ボビンの軸を貫くように送りつつ撚りを加えた後、別途に供給される異種糸と引き合わせる。次いで、このように引き合わされた紙テープと異種糸とを、ボビンの軸方向へと送りつつ、ボビンの軸まわりに回転させて撚り合わせる。
【００１６】
前記紙テープは原糸を一定の幅に切断して形成したものである。前記原紙は、針葉樹または広葉樹の木材パルプ、竹材パルプ、マニラ麻やケナフなどから得られる紙だけでなく、楮（こうぞ）の内皮から得られる韓紙、その他の和紙の系統などを全て含む。また、必要に応じて、抄紙段階または抄紙段階の前後段階で、機能性加工処理された原紙を使用することができるなど、大きく限定されるものではない。前記異種糸は、例えば綿、麻、レーヨン、キュプラなどの天然、再生、または半合成（アセテートなど）のセルロース繊維、および例えばポリエステル（ＰＥＴ）、ナイロンなどの合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなる。
【００１７】
一方、前記紙テープの秤量、前記紙テープの幅、並びに前記異種糸の種類および繊度は複合糸の使用用途に応じて調節することができる。
【００１８】
図１は本発明の複合糸を製造するための撚糸および巻き取り装置を示す概略斜視図、図２は撚糸機の縦断面状態を示す図である。図１および図２に示すように、本発明の複合糸を製造するための好ましい撚糸機１０は、(1) 回転盤１１５が一体に設けられたスピンドル１１０と、(2) 前記スピンドル１１０上に支持され、上面が開口した保護容器１２０と、(3) 紙テープＰＴが巻き取られたボビンＢを軸支し、ボビンＢから繰り出される紙テープＰＴ１を、前記スピンドルの上端部に設けられた第１引き込み口１１１へ案内する糸導入パイプ１５０とから構成される。紙テープＰＴが巻き取られたボビンＢは、前記糸導入パイプ１５０の周りに共軸に設けられ、回転可能に支持される。
【００１９】
前記スピンドル１１０は、回転するベルト１３０などの駆動部材によって一方向に回転する。これにより、前記スピンドル１１０の一側に一体に設けられた回転盤１１５も、一方向に回転する。前記スピンドル１１０の上端部および下端部には、それぞれ第１引き込み口１１１および第２引き込み口１１２が設けられる。また、前記回転盤１１５の外周面の一側には、前記第１引き込み口１１１および第２引き込み口１１２と連通する引き出し口１１３が設けられる。
【００２０】
撚りをかける前の紙テープＰＴ１が、前記ボビンＢから繰り出され、前記糸導入パイプ１５０を伝って前記第１引き込み口１１１に引き込まれる。そして、前記引き出し口１１３から引き出される。前記紙テープＰＴが、固定された前記ボビンＢから繰り出され前記糸導入パイプ１５０を伝って引き込まれることにより、前記糸導入パイプ１５０中に引き込まれた紙テープＰＴ２には、一定の撚りがかけられる。
【００２１】
前記第２引き込み口１１２には、別途のボビンに巻き取られていた異種糸Ｆが引き込まれ、この異種糸Ｆは、前記第１引き込み口１１１に引き込まれた紙テープＰＴ２と共に、前記引き出し口１１３から引き出される。前記引き出し口１１３から引き出された紙テープおよび異種糸の組み合わせ（紙テープおよび異種糸を引き揃えたもの）Ｃは、前記糸導入パイプ１５０の上方に位置したバルーンガイド１７０を通過した後、巻き取り装置７０によってコーン７９０に巻き取られる。
【００２２】
前記引き出し口１１３と前記バルーンガイド１７０との間に位置した前記の紙テープおよび異種糸の組み合わせＣは、遠心力によってバルーンを形成すると同時に、撚りがかけられて合糸および合撚される。具体的には、前記糸導入パイプ１５０中にて一定の撚りがかけられた紙テープＰＴ２は、バルーニングによって完全な撚りが実現されると同時に、異種糸Ｆと合糸されて複合糸になる。
【００２３】
前記巻き取り装置７０は、前記バルーンガイド１７０を通過した複合糸の進行方向を転換して供給ローラー７３０へと供給する第１ガイドローラー７１２および第２ガイドローラー７１４と、前記第２ガイドローラー７１４を通過した複合糸をトラバースガイド７５０に円滑に供給する供給ローラー７３０と、前記供給ローラー７３０によって供給される複合糸を左右運動させるトラバースガイド７５０と、コーン７９０と接して前記コーン７９０を転がり運動させ、前記トラバースガイド７５０を通過した複合糸を前記コーン７９０に巻き取らせる巻き取りドラム７７０とを含んでなる。
【００２４】
前記複合糸は、前記バルーンガイド３９０を通過した後、上方に位置した第１ガイドローラー７１２、第２ガイドローラー７１４、供給ローラー７３０およびトラバースガイド７５０を順次通過する。その後、左右運動を行うトラバースガイド７５０を通過する複合糸は、回転する巻き取りドラム７７０と接して転がり運動を行うコーン７９０に巻き取られる。
【００２５】
図３はローラーが浸漬された水槽を示す概略斜視図である。図１および図３に示すように、前記第１ガイドローラー７１２と前記第２ガイドローラー７１４との間には、ローラー９７６が浸漬された水槽９０を備えることがよい。ローラーが浸漬された水槽９０を用いて紙テープに水分を供給するならば、紙テープに撚りが均一にかけられることにより、撚りが均一に入った複合糸を得ることができる。
【００２６】
以下、本発明に係る複合糸の製造方法について実施例を挙げてさらに詳しく説明する。これらの実施例は本発明の権利範囲を限定するものではない。
【００２７】
［実施例１］紙テープとしては韓紙を１．３ｍｍの幅に切断したものを使用し、異種糸としては１３３デニールの綿糸を使用した。図１に示すように改造された撚糸機を用いて、前記紙テープと前記綿糸とを合撚させて複合糸を製造した。製造中に、糸切れは発生しなかった。製造された複合糸の電子顕微鏡写真は図４のとおりである。このように製造された複合糸は、繊度３００デニール、強度１．４２ｇ／ｄおよび伸度５．２％の物性を示し、９．０Ｕ％以下の均斉度（外観形状の平均偏差／外観形状の平均値）を示した。
【００２８】
［実施例２］紙テープとしては韓紙を１．３ｍｍの幅に切断したものを使用し、異種糸としては７５デニールのレーヨンを使用した。図１に示すように改造された撚糸機を用いて、前記紙テープと前記レーヨンとを合撚させて複合糸を製造した。製造中に、糸切れは発生しなかった。製造された複合糸の電子顕微鏡写真は図５のとおりである。このように製造された複合糸は、繊度３５０デニール、強度１．２４ｇ／ｄおよび伸度５．５％の物性を示し、９．０Ｕ％以下の均斉度を示した。
【００２９】
実施例１および実施例２の場合、従来の技術とは異なり、別途の紙糸製造工程を経ることなく１回の工程によって紙テープと異種糸とを糸切れなしに合撚および合糸させ、物性および均斉度に優れた複合糸を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【００３０】
【図１】本発明の複合糸を製造するための撚糸および巻き取り装置を示す概略斜視図である。
【図２】撚糸機の縦断面状態を示す図である。
【図３】ローラーが浸漬された水槽を示す概略斜視図である。
【図４】実施例１の複合糸についての電子顕微鏡写真である。
【図５】実施例２の複合糸についての電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【００３１】
１０ 撚糸機 １１０ スピンドル １７０ バルーンガイド
Ｃ バルーン Ｆ レーヨン糸などの異種糸 ＰＴ１ 撚りをかける前の紙テープ
【特許請求の範囲】
【請求項１】
外力によってボビンから繰り出される紙テープを、前記ボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共に前記ボビンの軸まわりに回転させて合撚する工程を含むことを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項２】
前記異種糸は、セルロース繊維および合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする請求項２に記載の複合糸の製造方法。
【請求項３】
請求項１または２の前記複合糸の製造方法によって製造された複合糸。
【請求項１】
外力によってボビンから繰り出される紙テープを、前記ボビンの軸方向に貫通させた後、別途に供給される異種糸と共に前記ボビンの軸まわりに回転させて合撚する工程を含むことを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項２】
前記異種糸は、セルロース繊維および合成繊維から選ばれた少なくとも１種からなることを特徴とする請求項２に記載の複合糸の製造方法。
【請求項３】
請求項１または２の前記複合糸の製造方法によって製造された複合糸。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−１４４３１１（Ｐ２００９−１４４３１１Ａ）
【公開日】平成２１年７月２日（２００９．７．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２９０３３８（Ｐ２００８−２９０３３８）
【出願日】平成２０年１１月１２日（２００８．１１．１２）
【出願人】（５０８３３６５７３）韓国ニット産業研究院 (1)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年７月２日（２００９．７．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１１月１２日（２００８．１１．１２）
【出願人】（５０８３３６５７３）韓国ニット産業研究院 (1)
【Ｆターム（参考）】
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