説明

複層構造セラミックフィルターの製造方法

【課題】多孔質基材に、粉体粒径の異なるスラリ―を連続して塗布できる方法であって、製造工程を著しく簡略化できる複層構造セラミックフィルターの製造方法を提供すること。
【解決手段】多孔質基材の表面に、粉体粒子径の異なるスラリーを連続して、クロスフローろ過方式で堆積させて第1〜n層を設ける工程と、前記のスラリー堆積工程完了後に多孔質基材を乾燥させる工程と、乾燥後に多孔質基材を焼成させる工程とからなる複層構造セラミックフィルターの製造方法であって、中間層成膜用スラリーはバインダーとしてポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有すること、及び、粉体粒子径の異なるスラリーを連続して、クロスフローろ過方式で堆積させ第1〜n層を設ける工程には、先の成膜に用いた粒子径大きな粉体が、後の成膜用スラリーに流入することを防止する手段が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複層構造セラミックフィルターの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複層構造セラミックフィルターは、セラミック製多孔質基材の上に、さらに緻密な多孔質薄膜を成膜させた構造を有しており、その製造方法は、多孔質基材の表面に第1層成膜用スラリーを塗布後、焼成し、その後さらに、第2膜層成膜用スラリーを塗布した後、焼成するものであった。しかし、この方法によると、各層でスラリー塗布工程と、乾燥工程とが必要であり、生産効率が悪いという問題があった。
【0003】
上記問題の解決手段として、第1層成膜用スラリーにポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有させて、スラリー塗布面に耐水性を付与することで、第1層成膜用スラリーを塗布した後の焼成工程を省き、焼成回数を低減化する技術が開示されている(特許文献1)。しかし、この方法によっても、前記の耐水性を発現させるためには、第1層成膜用スラリー塗布後に乾燥機等によって、例えば100〜180℃で15時間の乾燥を行うことが必要であった。また、先に塗布された粒径の大きな第1層成膜用スラリーが、第2層成膜用スラリー混入してピンホールの原因となることを防ぐためには、第1層成膜用スラリー塗布後にスラリーの流路となる配管を清掃する工程が必要であった。
【0004】
そこで、作業効率の更なる向上を図るために、前記の乾燥工程の削減や、配管清掃工程の削減が新たな課題となっていた。なお、ここでスラリーとは、懸濁体であって、液体中に鉱物等が混ざっている混合物のことをいう。
【特許文献1】特開2004-914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記課題を解決し、多孔質基材に、粉体粒径の異なるスラリ―を連続して塗布できる方法であって、配管清掃工程が不要であって、乾燥及び焼成工程は、第n層成膜用スラリーを塗布した後の一回とし、製造工程を著しく簡略化できる複層構造セラミックフィルターの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の複層構造セラミックフィルターの製造方法は、多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程と、第1層から第n層までの各層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させる工程と、乾燥後の多孔質基材を焼成させる工程とからなる複層構造セラミックフィルターの製造方法であって、第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーはバインダーとしてポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有すること、及び、多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程は、xを2以上n以下の整数値として、第x−1層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程と、第1層〜第x−1層成膜用スラリーの流路を塞ぎ、第x層成膜用スラリーの流路を開放する工程と、第x−1層成膜用スラリーが堆積した多孔質基材の表面に、第x層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程とを、連続して行うものであり、第x層成膜用スラリー堆積工程には、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段を設けることで、第x層成膜用スラリーの粉体よりも粒径の大きい粉体の流入を阻止していることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法において、第x層成膜用スラリー堆積工程に設けられた、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段は、スラリー内の粉体粒径による篩分け手段であって、第1層〜第x−1層成膜用スラリーは透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させる篩分け手段であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法では、第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーはバインダーとしてポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有することで、スラリー塗布面に耐水性を付与し、各層堆積後の乾燥工程の省略し、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させることが可能となる。
【0009】
また、請求項1に記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法では、第x層成膜用スラリー堆積工程に、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段が設けたことにより、先に塗布された粒径の大きな第1層〜第x−1層成膜用スラリーが、第x層成膜用スラリーに混入してピンホールの原因となることを防ぐことが可能となり、第x−1層成膜用スラリー塗布後にスラリーの流路となる配管を清掃する工程が不要となる。
【0010】
従って、請求項1に記載の発明によれば、粉体粒径の異なるスラリ―を連続して塗布することが可能となり、配管清掃工程が不要となり、乾燥及び焼成工程は、第n層成膜用スラリーを塗布した後の一回とすることができ、製造工程の著しい簡略化が達成される。
【0011】
請求項2に記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法では、請求項1記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法において、第x層成膜用スラリー堆積工程に設けられた、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段は、スラリー内の粉体粒径による篩分け手段であって、第1層〜第x−1層成膜用スラリーは透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させる篩分け手段であるものとしたことにより、スラリー粒径という明確な基準により、簡易な篩分け手段を用いて、粒径の大きなスラリーの流入防止を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき、詳細に説明する。
[スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法]
多孔質基材の表面に、スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法は、同出願人による特開昭61-238315号公報において開示されている。この方法によれば、ピンホールのない、均一な複層構造セラミックフィルターを得ることができる。以下、図1により、スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法を詳細に説明する。
【0013】
筒状の多孔質支持体1を水中に浸漬して減圧状況下にて脱泡し、細孔内に水分が充満した含水状態の多孔質支持体1を用意する。そしてその多孔質支持体1をチャンバー2にセットし、ポンプ6を運転して、タンク9内のスラリー9aを下方から多孔質支持体1内に流入させる。このとき弁4は全開状態としておく。スラリー9aが多孔質支持体1の上端部まで充満して多孔質支持体1の内側面1aの全面にスラリー9aが接触したら、真空ポンプ10をチャンバー2内を減圧状態とし、一方ポンプ6は運転を続け、スラリー9aを上向きに流動接触させる。多孔質支持体1の内外の圧力差によってスラリー9aの一部は多孔質支持体1の筒壁を外側へ通過して、スラリー9a中の粉体が内側面1aに付着してろ過膜を成膜する。
【0014】
多孔質支持体1内を流過したスラリー9aは弁4を通過してタンク9へ戻り、再びポンプ6により、多孔質支持体1内へ循環供給される。多孔質支持体1内を流れるスラリー9aの上昇流は、スラリー内の粉体の沈降を防止し、多孔質支持体1の全長にわたって均一な粉体粒子を含むスラリー9aが内側面1aに接触するようにさせている。
【0015】
上記の支持体両側面の圧力差および圧力差付与状態におけるスラリー9aの内側面1aへの流動接触時間の選択により、膜の付着厚さを任意に調節できる。内側面1aに所望厚さの膜が成膜されたら、ポンプ6を停止し、弁11を全開にして多孔質支持体1内のスラリー9aをタンク9へ戻し、多孔質支持体1内へ大気を導入する。真空ポンプ10の運転を続ければ、チャンバー2内は減圧状態に維持され、多孔質支持体1内は大気圧であるので、その圧力差によって、多孔質支持体1の内側面1aに付着した膜の水分および支持体内の水分は減圧脱水される。
【0016】
[第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程]
本発明では、上記のようにして、第1層を成膜終了後、チャンバー2から多孔質支持体1を取出して、乾燥することなく、第2層目の成膜を実施する。以後の各層成膜工程も連続して行われる。このように第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程は、図2に示す構造を有する製造装置により行われる。各弁の開閉は下記の表1に示す通りである。
【0017】
【表1】

【0018】
[第x層成膜用スラリー堆積工程に設けられた、x−1層成膜用スラリー流入防止手段]
本発明で製造する複層構造のセラミックフィルターは、セラミック製多孔質基材の上に、さらに緻密な多孔質薄膜を成膜させた構造を有している。従って、各層成膜用スラリー内の粉体粒径の大きさを比較すると、第1層>第2層>・・>第x−1層>第x層>・・>第n層となる。上記のように、本発明において第x層成膜開始前には、弁B(x−1)と弁F(x−1)を全開にして、配管内や多孔質支持体1内に残った第x−1層成膜用スラリーをタンクに戻している。しかし、この場合であっても、配管内から第x−1層成膜用スラリーを完全に除去することはできず、x−1層成膜用スラリーが第x層成膜用スラリーに混入して、第x層の均一性を阻害する問題が生じる。
【0019】
本発明では、複層構造のセラミックフィルターを成膜する場合に、第x層成膜用スラリー堆積工程で、第1層〜x−1層成膜用スラリーが第x層成膜用スラリーに混入し、第x層の均一性を阻害することを防止するための手段として、スラリー内の粉体粒径による篩分け手段であって、第1層〜第x−1層成膜用スラリーは透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させる篩分け手段22を設けることで、上記の問題解決を図っている。
【0020】
具体的に、上記篩分け手段22とは、図3に示すものである。図3に示す篩分け手段22は、第1層〜第x−1層成膜用スラリー内の粉体は透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させるように篩23の目開きを調整できるものである。また、篩分け手段22は、図3に示すように、上部のふた24を取り外し、内部の篩23を交換可能な構造を有しているため、篩の目開き調整やメンテナンスが容易である。篩分け手段22は、図2に示すように、弁Cの下流に設けても良いし、成膜用スラリー用タンク12の上流に設けても良いし、複数設けることも可能である。
【0021】
このように調整した目開きの篩23を設置することで、第x層成膜用スラリーに、第1層〜第x−1層成膜用スラリー内の粉体が混入した場合であっても、第x層成膜用に調整した篩で捕捉されるため、多孔質支持体1内には到達せず、層の均一性を阻害する問題を回避しつつ、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させることが可能となる。
【0022】
[第1層から第n層までの各層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させる工程]
従来の複層構造セラミックフィルター製造方法によると、例えば、特許文献2では、第1層成膜用スラリーにポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有させて、スラリー塗布面に耐水性を付与することで、第1層成膜用スラリーを塗布した後の焼成工程を省き、焼成回数を低減化しているが、この方法によっても、前記の耐水性を、第2層成膜時に第1層成膜用スラリーが混入しない程度に発現させるためには、第1層成膜用スラリー塗布後に乾燥機等によって、例えば100〜180℃で15時間の乾燥を行うことが必要であった。これに対し、本発明に係る製造方法の乾燥工程は、各層ごとでの乾燥を省略し、第1層から第n層までの全層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させるものである。本発明により、第x―1層成膜時における減圧による乾燥で、第x層成膜時における第1層〜第 x−1層成膜用スラリーの混入を十分に防止する。本発明では、第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーにバインダーとしてポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有させた上で、前記の乾燥工程を省略している。
【0023】
以下、本発明の実施例に基づいて更に詳細に説明する。
(実施例1)
図4に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
前記の[スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法]に従って、多孔質第1層を表面に有する二層積層体を形成した。このとき、多孔質基材によってろ過され多孔質支持体の外壁側から滲み出たろ液の量によって多孔質第1層の膜厚を制御した。本実施例においては、多孔質第1層の膜厚が150μmになるように制御した。また、多孔質第1層用スラリーには、骨材粒子としてボールミルで粉砕したアルミナ粉末(平均粒径3μm)を用い、焼結助剤としてボールミルで粉砕したガラスフリット(平均粒径1μm)を用いた。本実施例においては、多孔質第1層用スラリーを、水80部に対して、前述した、骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットの混合物を20質量部の割合で混合し、分散剤を骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットの混合物に対し1質量%相当加え、バインダー1としてシリカゾル(粒子径10nm)を加えた多孔質第1層用スラリーを用いて複層構造セラミックフィルターの製造を行った。多孔質第1層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤の混合物)の含有量に対するバインダー1の含有率は、表2に示すように4質量%とし、この際、骨材粒子のアルミナ粉末と焼結助剤のガラスフリットとは、100:14の質量比で混合した。
第2層成膜:
次に、第2層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第2層成膜を行った。篩は、目開きが20μmのものを用いた。第2層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア(平均粒径0.5μm)を用いた。また、第2層用スラリーは、水とチタニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をチタニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第2層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0024】
(実施例2)
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例1のスラリーに、バインダー1を加えた他は、実施例1に同じ。多孔質第2層用スラリーを構成する無機質分(骨材粒子と焼結助剤の混合物)の含有量に対するバインダー1の含有率は4質量%とした。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア(平均粒径0.4μm)を用いた。また、第2層用スラリーは、水とチタニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をチタニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0025】
(実施例3)
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてジルコニア粒子(平均粒径0.1μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0026】
(実施例4)
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてジルコニア粒子(平均粒径0.06μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0027】
(実施例5)
図5に示す装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1に同じ。
第2層成膜:
実施例2に同じ。
第3層成膜:
次に、第3層用スラリーを用いて、前記同様にスラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる方法により、第3層成膜を行った。篩は、目開きが2μmのものを用いた。第3層用スラリーには、骨材粒子としてチタニア粒子(平均粒径0.04μm)を用いた。また、第3層用スラリーは、水とジルコニアを、97:3の質量比で混合し、分散剤をジルコニアに対し1質量%相当量加え、バインダー2としてポリビニルアルコールを水に対して0.3%相当量加えて形成した。
乾燥と焼成:
第3層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0028】
(比較例)
図1に示すものと同様の装置により、下記の工程で複層構造セラミックフィルターを製造した。
第1層成膜:
実施例1と同様にして第1層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥を行った。乾燥中、装置配管の洗浄を行った。
第2層成膜:
実施例1に同じ。
乾燥と焼成:
第2層成膜後、乾燥機にて100〜180℃で15時間以上乾燥し、焼成用電気炉にて1000℃で5時間の焼成を行い、複層構造セラミックフィルターを製造した。
【0029】
[最大発泡径測定]
上記のようにして製造された複層構造セラミックフィルター(実施例1〜5、比較例)について、最大発泡径の測定を行った結果を下記の表2に示す。最大発泡径の測定には、バブルポイント法を用いた。
【0030】
具体的測定手段は、以下の手順による。初めに、複層構造セラミックフィルターを水に含浸し、気孔中の穴に水を含浸させた。この際、含浸性を向上させるために複層構造セラミックフィルターを浸した容器を真空に減圧した。次に、複層構造セラミックフィルターを水に含浸したまま内壁側と外壁側を隔壁し、内壁側を空気にて加圧し外壁の細孔を観察し、このときの細孔圧力から欠陥レベルを判断した。含浸に用いる溶媒及び加圧ガスは、表面張力、接触角及び密度等が既知であるものであれば、如何なるものでも用いることができるが、価格や環境等への安全性を考慮して、本実施例では空気と水を採用した。
【0031】
この最大発泡径が小さいほどピンホールの少ない、高性能の複層構造セラミックフィルターとなる。なお装置の制約上、最大発泡径について0.7μm以下は測定不可能であった。
【0032】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】スラリーをクロスフローろ過方式で体積させる方法の説明図である。
【図2】本発明を実施する装置の構造図である。
【図3】篩の交換方法の説明図である。
【図4】実施例1の製造方法に用いた製造装置の構成図である。
【図5】実施例2〜5の製造方法に用いた製造装置の構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 多孔質支持体
1a多孔質支持体内側面
2 チャンバー
3 弁A
4 弁B(第1層用)
5 弁C(第1層用)
6 ポンプ
7 弁D
8 弁E
9 タンク(第1層用)
9a スラリー(第1層用)
10 真空ポンプ
11 弁F(第1層用)
12 タンク(第2層用)
12a スラリー(第2層用)
13 弁B(第2層用)
14 弁C(第2層用)
15 篩分け手段(第2層用)
16 弁F(第2層用)
17 タンク(第n層用)
17a スラリー(第n層用)
18 弁B((第n層用)
19 弁C(第n層用)
20 篩分け手段(第n層用)
21 弁F(第n層用)
22 篩分け手段
23 篩
24 篩分け装置の蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程と、
第1層から第n層までの各層成膜用スラリー堆積後に多孔質基材を乾燥させる工程と、
乾燥後の多孔質基材を焼成させる工程とからなる複層構造セラミックフィルターの製造方法であって、
第1層から第n−1層までの各層成膜用スラリーはバインダーとしてポリエステル系または酢酸ビニル系または無機系ゾルのバインダーを含有すること、
及び
多孔質基材の表面に、第1層から第n層までの各層成膜用スラリーを、連続して、クロスフローろ過方式で堆積させる工程は、xを2以上n以下の整数値として、
第x−1層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程と、
第x−1層成膜用スラリーの流路を塞ぎ、第x層成膜用スラリーの流路を開放する工程と、
第x−1層成膜用スラリーが堆積した多孔質基材の表面に、第x層成膜用スラリーをクロスフローろ過方式で堆積させる工程とを、連続して行うものであり、
第x層成膜用スラリー堆積工程には、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段を設けることで、第x層成膜用スラリーの粉体よりも粒径の大きい粉体の流入を阻止していること
を特徴とする複層構造セラミックフィルターの製造方法。
【請求項2】
第x層成膜用スラリー堆積工程に設けられた、第1層〜第x−1層成膜用スラリー流入防止手段は、
スラリー内の粉体粒径による篩分け手段であって、
第1層〜第x−1層成膜用スラリーは透過させず、第x層成膜用スラリーは透過させる篩分け手段であることを特徴とする請求項1記載の複層構造セラミックフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−219961(P2009−219961A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65120(P2008−65120)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】