説明

複数中央演算処理装置の制御装置

【目的】 特別の回路を必要とせず、各CPUにおいて周辺装置が共用でき、ROMの使用効率を向上可能な、複数CPUの制御装置を提供する。
【構成】 複数のCPUを備えこれらCPUにて周辺装置を共用する場合に必要となる複数CPUの制御装置であって、それぞれのCPUへ供給するそれぞれのタイミングクロックにおける所定信号レベル期間が重複することのない複数相のタイミングクロックを発生するタイミングクロック発生手段10と、上記複数相のタイミングクロックが供給され該タイミングクロックにおける上記所定信号レベル期間のみ同じタイミングで同相のタイミングクロックが供給されているCPUと上記共通バスとを接続するバス選択手段11,13と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2個以上の中央演算処理装置(以下、CPUと記す)を備えたシステムにおいて、これらCPUにて周辺装置を共用する場合に必要とする複数CPUの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、2個以上のCPUを使用するシステムにおいて、これらCPUの周辺装置をこれらのCPUが共用する場合には、上記周辺装置にアクセスするCPUの優先順位を決定する回路であるアービター回路が必要であった。又、CPU間の通信にはデュアルポートRAMやレジスタを必要とした。このため、以下に示すような問題点あった。
【0003】■上述したように、アービター回路、デュアルポートRAM等の特別の回路が必要となる。
■上記周辺装置を一つのCPUがアクセスしている間はその他のCPUはその周辺装置を使用できないので、CPUにおける演算処理効率が低下する。
■プログラム領域の共有ができないため、各CPUに一定量のROM容量を割り当てなければならず、ROMの使用効率を向上させることができない。
■上記■に記載した理由により、各CPUに共通するサブルーチンについてもそれぞれのプログラム領域を持たなければならず、ROMの使用効率を向上させることができない。
【0004】本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、特別の回路を必要とせず、各CPUにおいて周辺装置が共用でき、ROMの使用効率を向上可能な、複数CPUの制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段とその作用】本発明は、複数のCPUにて周辺装置を共用する場合に必要となる複数CPUの制御装置であって、それぞれの出力側がそれぞれのCPUに接続され、それぞれの上記CPUへ供給するそれぞれのタイミングクロックにおける所定信号レベル期間が重複することのない複数相のタイミングクロックを発生するタイミングクロック発生手段と、入力側がそれぞれの上記CPU及び上記タイミングクロック発生手段に接続され、出力側が共通バスを介して上記周辺装置に接続される手段であり、上記複数相のタイミングクロックが供給され該タイミングクロックにおける上記所定信号レベル期間のみ、同じタイミングで同相のタイミングクロックが供給されているCPUと上記共通バスとを接続するバス選択手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】このように構成することで、タイミングクロック発生手段はタイミングクロックにおける所定信号レベル期間がいずれも重複しないような複数相のタイミングクロックを発生しこのようなそれぞれのタイミングクロックにてそれぞれのCPUは動作する。又、バス選択手段にも上記タイミングクロックが供給され該バス選択手段は上記所定信号レベル期間のみ、同じタイミングで同相のタイミングクロックが供給されているCPUと上記共通バスとを接続することより、タイミングクロック発生手段及びバス選択手段は、特別の回路を必要としなくても各CPUにおいて周辺装置が共用できるように作用する。
【0007】又、本発明は、上記共通バスには記憶手段が接続され、それぞれの上記中央演算処理装置は、リセット解除後に当該中央演算処理装置が演算を開始する上記記憶手段の番地であるベクタアドレスが同一であり、それぞれの上記中央演算周辺装置と上記バス選択手段との間にそれぞれ接続され、上記ベクタアドレスを各上記中央演算処理装置毎に異なった値に変換し上記バス選択手段へ送出するベクタアドレス変換手段を備えることもできる。
【0008】このように構成することで、各CPUは同一のベクタアドレスを有するがベクタアドレス変換手段にてそれぞれ別個のベクタアドレスに変換されるので、ベクタアドレス変換手段はROMの使用効率を向上させるように作用する。
【0009】
【実施例】本発明の複数CPUの制御装置の一実施例について図1等を参照し以下に説明する。図1には、1ないしNのN個のCPUを有するシステムにおける制御装置を示している。各CPU1ないしNのクロック入力端子には、N相のタイミングクロックを発生するタイミングクロック発生回路10の出力側がそれぞれ接続される。タイミングクロック発生回路10は、設けられるCPUの数に対応したN個のタイミングクロックを発生し、これらそれぞれのタイミングクロックをそれぞれのCPUへ送出する回路であり、さらにそれぞれのタイミングクロックにおいては図3の(a)ないし(c)に示すようにハイ(H)レベルの期間が他のいずれのタイミングクロックにおけるHレベル期間と時間的に重複しないN相のタイミングクロックを発生する回路である。又、タイミングクロック発生回路10が発生するそれぞれのタイミングクロックは、アドレス選択回路11及びデータ選択回路13へもそれぞれ送出される。
【0010】尚、CPU1ないしNのそれぞれは、図2の(a)に示すタイミングクロックに対して図2の(b)に示すタイミングにてアドレスをアドレスバスに送出し、図2R>2の(c)に示すタイミングにてデータをデータバスへ送出する動作をする。
【0011】アドレス選択回路11の入力側は、それぞれのCPU1ないしNとそれぞれのアドレスバスを介して接続され、アドレス選択回路11の出力側は各CPU1ないしNが共用する共通アドレスバス12に接続される。尚、上記それぞれのアドレスバスにはそれぞれベクタアドレス変換回路15、16 … がアドレスバスに対して直列に接続されている。又、共通アドレスバス12及び共通データバス14にはROM、RAMのメモリ等が接続される。
【0012】上述しているCPU1ないしNは、例えばFFFEとFFFFの二つのベクタアドレスを共通して有している。尚、ベクタアドレスとは、リセット解除後に上記CPU1等が演算を開始する、上記メモリの番地をいう。上述のようにCPU1等においてベクタアドレスは共通であることから、該ベクタアドレスをそのままアドレス選択回路11へ送出したのでは各CPUは同じ演算を行うことになる。そこでベクタアドレス変換回路15等は、CPU1等が送出するベクタアドレスをそれぞれ異なるアドレスに変換しアドレス選択回路11へ送出する動作を行う。
【0013】データ選択回路13の入力側は、各CPU1ないしNとそれぞれのデータバスを介して接続され、データ選択回路13の出力側は各CPU1ないしNが共用する共通データバス14に接続される。
【0014】よって、各CPU1ないしNに供給されるN相のそれぞれのタイミングクロックが各CPU1ないしNへ供給されるタイミングと同じタイミングにてアドレス選択回路11及びデータ選択回路13に供給されることから、アドレス選択回路11及びデータ選択回路13は、タイミングクロックがHレベル期間にありアドレス及びデータを送出可能な一つのCPUが送出するアドレス及びデータをそのHレベル期間、共通アドレスバス12及び共通データバス14へ送出する。
【0015】尚、2個のCPUを有する場合における本制御装置の具体的回路構成を図4に示す。図4において図1に示す構成部分と同じ構成部分については同じ符号を付している。
【0016】このように構成される複数CPUの制御装置における動作を以下に説明する。例えば図3の(a)に示すタイミングクロック51がCPU1に供給されているとすると、アドレス選択回路11及びデータ選択回路13にもタイミングクロック51が同時刻にタイミングクロック発生回路10から供給されている。よって、タイミングクロック51のHレベル期間である時刻t1から時刻t2の期間において、CPU1はアドレスバスへアドレスを送出し、又、データバスへデータを入出力する。一方、図3の(e)に示すように、データ選択回路13も時刻t1から時刻t2の間、データバスを介して入出力されるデータ、即ちCPU1が入出力するデータを共通データバス14へ入出力する。アドレス選択回路11についても同様である。又、他のCPU2ないしNについても同様に動作する。
【0017】このようにN個のCPUのそれぞれについて相の異なるタイミングクロックにて制御しそれによって共通アドレスバス及び共通データバスの共用化を図っているので、従来のように、アービター回路、デュアルポートRAM等の特別の回路を設けることなく、共通アドレスバス12及び共通データバス14に接続されるROM、RAM等の周辺回路を各CPUで共用化することがきる。
【0018】又、共通アドレスバス12及び共通データバス14にROMが接続されているので、該ROM内の記憶領域を各CPU毎に振り分ける必要がなく、一つのROMを各CPU1ないしN毎にアドレスで分割することができる。
【0019】さらに、上述したようにROM内の記憶領域を各CPUにて共用することができるので、各CPU1ないしNにて共通するサブルーチンをROM内の一領域にまとめることができ、ROMの記憶容量の使用効率を向上させることができる。
【0020】又、ベクタアドレス変換回路15等を設け、CPU1ないしNにて共通しこれら各CPUが送出するリセットベクタアドレスをそれぞれ異なるアドレスに変換するようにしたので、同じROMにCPU1等のそれぞれがアクセスすることができCPU1等においてそれぞれ異なるプログラムを実行することができる。
【0021】又、このようにベクタアドレス変換回路15等を設けることで、CPU1ないしNについてベクタアドレスは共通のものでよく、したがってCPU1ないしNはそれぞれ異なる構造ではなく同一の構造とすることができ、CPUの設計上の労力を低減することができる。
【0022】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、タイミングクロックにおける所定信号レベル期間がいずれも重複しないような複数相のタイミングクロックを発生しこのようなそれぞれのタイミングクロックにてそれぞれのCPUを動作させ、又、バス選択手段にも上記タイミングクロックを供給し該バス選択手段は上記所定信号レベル期間のみ、同じタイミングで同相のタイミングクロックが供給されているCPUと上記共通バスとを接続することより、特別の回路を必要としなくても各CPUにおいて周辺装置を共用することができ、又、このように周辺装置の共用が可能となることで各CPUにおけるプログラム領域を共有することができROMの使用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の複数CPUの制御装置の一実施例における構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明の複数CPUの制御装置にて制御されるCPUの動作を示すタイミングチャートである。
【図3】 本発明の複数CPUの制御装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】 2個のCPUを制御する場合における本発明の複数CPUの制御装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
1ないしN…CPU、10…N相タイミングクロック発生回路、11…アドレス選択回路、12…共通アドレスバス、13…データ選択回路、14…共通データバス、15,16…CPUベクタアドレス変換回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の中央演算処理装置にて周辺装置を共用する場合に必要となる複数中央演算処理装置の制御装置であって、それぞれの出力側がそれぞれの中央演算処理装置に接続され、それぞれの上記中央演算処理装置へ供給するそれぞれのタイミングクロックにおける所定信号レベル期間が重複することのない複数相のタイミングクロックを発生するタイミングクロック発生手段と、入力側がそれぞれの上記中央演算処理装置及び上記タイミングクロック発生手段に接続され、出力側が共通バスを介して上記周辺装置に接続される手段であり、上記複数相のタイミングクロックが供給され該タイミングクロックにおける上記所定信号レベル期間のみ、同じタイミングで同相のタイミングクロックが供給されている中央演算処理装置と上記共通バスとを接続するバス選択手段と、を備えたことを特徴とする複数中央演算処理装置の制御装置。
【請求項2】 上記共通バスには記憶手段が接続され、それぞれの上記中央演算処理装置は、リセット解除後に当該中央演算処理装置が演算を開始する上記記憶手段の番地であるベクタアドレスが同一であり、それぞれの上記中央演算周辺装置と上記バス選択手段との間にそれぞれ接続され、上記ベクタアドレスを各上記中央演算処理装置毎に異なった値に変換し上記バス選択手段へ送出するベクタアドレス変換手段を備えた請求項1記載の複数中央演算周辺装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−52118
【公開日】平成6年(1994)2月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−203556
【出願日】平成4年(1992)7月30日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)