説明

複数個のヒンジ結合されたモジュールとモジュールのヒンジピンの軸線方向変位を防ぐ手段とを備えるコンベヤー

【課題】モジュールの交換及び/又は組み合わせを容易にする。
【解決手段】モジュールにおいて、収容部10と横断ピンとは、横断ピンの第2部分8が第2位置Rから変位するのを着脱自在に防止する手段11Aを備え、収容部10は、モジュールの底部の側部9に設けられ、通路13が、モジュールの底面部15の一部分14から前壁及び後壁2、3の一方の一部分まで延び、前壁及び後壁の一方からは、モジュールリンク突端4が、突出し、一部分14は、側壁の一方の近傍に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、順次設けられる複数個のモジュールを備え、各モジュールは、2個の平行な前壁及び後壁と、2個の平行な側壁と、上面部と、底面部と、前壁及び後壁から突出する複数個のモジュールリンク突端とを備え、モジュールのモジュールリンク突端は、前後のモジュールのモジュールリンク突端と嵌り合い、各モジュールリンク突端は、モジュール同士を着脱自在に連結するため、横断ピンを収容できるようにした開口を軸線が同じくなるように備え、横断ピンは、開口内に延びる第1円筒形部分と、第1円筒形部分の一端から半径方向に突出する第2部分とを備え、横断ピンは、開口内での横断ピンの軸線方向変位を制限しない第1位置と、開口内での横断ピンの軸線方向変位を制限する第2位置との間で、横断ピンの第1部分の長さ方向軸線を中心として回転自在であり、各モジュールの側部には、横断ピンの第2部分を収容するとともに、横断ピンが、回されて第2位置に位置付けられると、横断ピンの軸線方向移動を制限するための収容部を備え、収容部は、横断ピンの第2部分の少なくとも一部を、収容部内に導く通路を備えるコンベヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
コンベヤーは、従来から、多数の実質的に同じモジュールを複数個のピンで互いにヒンジ結合したもので構成されている。
【0003】
ヒンジピンの軸線方向変位を避けるため、各モジュールに形成した収容部に、スナップ式に嵌る挿入体を設けることが知られている。モジュールを交換する必要がある場合、複数個の挿入体を複数個のモジュールに連結したり、複数個の挿入体を外したりすることは、かなり面倒な作業である。さらに、スナップ式に嵌めたピンを、一旦外すと、損傷が生じて再使用できないことがしばしばある。一方、複数個の挿入体が、収容部から抜け出てしまうことが起こり得るが、その場合には、コンベヤーが損傷する虞があるので、極めて危険である。
【0004】
こうした問題を解消するために、ロック手段をヒンジピンに設けて、新たな部品を設けることなくモジュールにヒンジピンを着脱自在にロックすることが知られている。米国特許第6662938号明細書には、この種のヒンジピンが開示されている。この先行技術に係るピン構造でも、複数個のモジュールに設けた収容部にピンを出し入れすることは、極めて面倒である。というのは、収容部を囲む壁部を、開ける必要があり、注意深く行わないと、壁部を開ける作業により、モジュールに損傷を与える可能性があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、モジュールの交換及び/又は組み合わせを容易にすることにより、こうした従来のコンベヤーを改善することを目的とする。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、モジュールを損傷することなく、ヒンジピンをモジュールに取り付け又は取り外すことができる、コンベヤーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、こうした目的を、収容部と横断ピンとは、横断ピンの第2部分が第2位置から変位するのを着脱自在に防止する手段を備え、収容部は、モジュールの底部の側部に設けられ、通路が、モジュールの底面部の一部分から前壁及び後壁の一方の一部分まで延び、当該前壁及び後壁の一方からは、モジュールリンク突端が、突出し、当該一部分は、側壁の一方の近傍に位置することを特徴とするモジュールを提供することによって達成する。
【0008】
本発明の好ましい実施態様は、従属項に要約してある。好ましい実施態様については、下記の添付図面に示した例示的な実施態様に基づいて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施態様によるコンベヤーの一部を下から見た概略斜視図を示す。
【図2】上記コンベヤーを構成するモジュールの一つを下から見た概略斜視図を示す。
【図3】上記コンベヤー用ヒンジピンの一つの概略斜視図を示す。
【図4】本発明によるコンベヤーの大半部分を下から見た概略底面図を示す。
【図5】上記大半部分の概略側面図を示す。
【図6】上記大半部分の概略平面図を示す。
【図7】モジュールのヒンジピンが、それぞれ異なる位置付け位置にある概略側面図を示す。
【図8】モジュールのヒンジピンが、それぞれ異なる位置付け位置にある概略正面図を示す。
【図9】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図1と同様な図を示す。
【図10】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図2と同様な図を示す。
【図11】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図3と同様な図を示す。
【図12】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図4と同様な図を示す。
【図13】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図5と同様な図を示す。
【図14】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図6と同様な図を示す。
【図15】本発明の第2実施態様によるコンベヤーの一部について図7と同様な図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して説明すると、本発明によるコンベヤーは、次々に列をなして設けられ、コンベヤーの意図する搬送方向Tに対して横方向にも延びる複数個の同一のモジュール1A及び1Bを備える。個々のモジュール1は、2個の互いに平行な前壁2及び後壁3と、2個の互いに平行な側壁17と、上面部15A及び底面部15とを備える。モジュールの各々は、前壁2及び後壁3から突出する、複数個のモジュール突端を備え、列をなす、モジュール1Aのモジュール突端が、隣り合う列をなす、モジュール1Bのモジュール突端と互いに組み合っている。これらモジュール突端4は、モジュール1A、1Bを着脱自在に連結するための横断ピン6を収容するように形成された、軸線を同じくする第1開口5を備える。
【0011】
横断ピン6は、第1開口5内を延びる第1円筒形部分7と、第1部分7の一端6Aから半径方向に突出するように形成された第2部分8とを備える。横断ピン6は、その軸線方向移動を制限しない第1位置F(図1において、点線で示す位置)と、その軸線方向移動を制限する第2位置Rとの間において、第1部分7の長さ方向軸線Lを中心として回転自在な状態となるように設けられる。各モジュール1の側部9には、横断ピン6を回して横断ピンを第2位置Rに位置付けると、横断ピンを収容し、横断ピンの第2部分8の軸線方向移動を制限する収容部10を設ける。収容部10と横断ピン6とは、第2部分8が、その第2位置Rからの変位を着脱自在に防ぐ手段11を備える。具体的には、本発明によれば、収容部10と横断ピン6とは、横断ピンの第2部分8が、その第2位置Rからの変位を着脱自在に防ぐ手段11Aと11Bを備える。さらに、収容部10は、各モジュール1A及び1Bの側方底部12に形成され、横断ピンの第2部分8用の第1通路13を備える。第1通路は、モジュール1の底面部15の端部16の一部分14であって、組み合う突端4が突出し、モジュールの側壁17A近傍に位置する部分から、前壁2まで延びている。
【0012】
横断ピン6が、その第2位置に位置付けられる場合に、横断ピンの第2部分8の変位を着脱自在に防ぐ手段11A及び11Bは、収容部10を設けた側壁17Aの箇所に、収容部が側壁の外面につながるように形成した貫通穴18と、貫通穴18にスナップ式に嵌るように横断ピンの第2部分8に形成した突出部19とを備える。
【0013】
好ましくは、横断ピン6の第1部分7は、従来のような形状と寸法とを持つが、その一端6Aには、第1部分と軸線を同じくし、第1部分7及び第1開口5の直径よりも大である直径を有する円筒形頭部6Bと備える。好ましくは、横断ピンの第2部分8は、この頭部6Bから突出する。横断ピン6とモジュール組立体とは、一旦、横断ピンにより、2個のモジュールを連結すると、横断ピンの頭部6Bが、第1リンク突端4Aの外壁に接し、突出する第2部分8が、収容部10と同一平面上に位置して、横断ピンを回すことにより、横断ピンの位置を再調整することなく、収容部に対して出入りできるように寸法を定める。
【0014】
横断ピンの頭部6Bは、その外面に、横断ピンをその2個の異なる位置F及びRから回す工具(標準的なねじ回し、図示せず)の先端を入れるスリット29を備える。
【0015】
横断ピン6の第2部分8に設けた突出部19は、第2部分の外壁8Aから突出しており(図3参照)、突端面20と、一対の直線状の平行縁21(図3には一方のみを示してある)と、一対の湾曲縁22とを備える。突出部19が、対応する貫通穴18にスナップ式に嵌り易くするため、湾曲縁22の高さが次第に低くなっており、このため、突端面20は、一対の面取り部分24が、両湾曲縁近傍に備える。
【0016】
好ましくは、収容部10に最も近いリンク突端4Aは、幅W1が他のリンク突端の幅W2よりも小である点を除いて、他のリンク突端4を同様な形状である。こうすることにより、モジュールの底部に、突出する第2部分8と横断ピンの頭部6Bとを、モジュールから飛び出すことなく、かつ、横断ピンの頭部と第2部分の寸法に自由度を持たせたまま、収容するのに十分な空間が、もたらされる。こうしてもたらされる空間に、横断ピンの頭部6Bと横断ピンの第2部分とを位置付けても、コンベヤーの上面部の形状には変化はなく、複数個のコンベヤーが次々につながるようにすることができる。
【0017】
本発明によれば、横断ピン6により2個のモジュールを連結する場合、横断ピンの第2部分8が、収容部に収容され、突出部19が、モジュールの側壁に形成された貫通穴にスナップ式に嵌るまで、横断ピンの頭部に形成されたスリット29に入れた工具の先端を利用して、横断ピンが回される。このスナップ式嵌め合い結合では、突出部19の面取り部24が、収容部10の縁と接すると、内側に(すなわち、モジュールの中心方向に)弾性的に若干変形するのは、横断ピン6の第2部分8である点に留意すべきである。横断ピン6を外す場合には、横断ピンの頭部6Bに形成されたスリット29に入れた工具の先端を利用して、横断ピンの頭部を回す必要がある。こうすると、横断ピンの第2部分の突出部19が、貫通穴18から外れる。
【0018】
さらに、横断ピン6の第2部分8用の収容部10は、前側及び後側のリンク突端4のいずれの側に設けてもよく、図では、後側リンク突端の左側部分に収容部が設けられているが、本発明の非限定的な例示にすぎない点に留意すべきである。
【0019】
本発明は、チェーンコンベヤー及びベルトコンベヤーの双方に、特に、片側に湾曲可能なベルトコンベヤーについて、実施可能なものである点に留意すべきである。図9乃至15は、本発明を適用した、片側に湾曲可能なベルトコンベヤーの一部を示す。両実施態様は、類似の技術的特徴を有するので、これら図9乃至15では、図1乃至7に用いたのと同じ符号を用いてある。両実施態様の主な相違点は、片側に湾曲可能なベルトコンベヤーは、この種の通常のベルトのように、一方側に、横断ピン6用の円形穴5があり、他方の側に、横断ピン用の楕円形穴5A乃至5Dを備える点である。片側に湾曲可能なベルトコンベヤーに本発明を適用すると、横断ピンの位置を絶えず適所に位置付けることができる。この点は、横断ピンは、特にベルトコンベヤーの外半径において、モジュールと接している必要があるので、片側に湾曲可能なベルトコンベヤーでは極めて重要である。片側に湾曲可能なベルトコンベヤーでは、ベルトが湾曲部に入ると、外半径では、引張力が最大となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次設けられる複数個のモジュール(1)を備え、各モジュールは、2個の平行な前壁及び後壁(2、3)と、2個の平行な側壁(17)と、上面部(15A)と、底面部(15)と、前壁及び後壁から突出する複数個のモジュールリンク突端(4)とを備え、モジュールのモジュールリンク突端は、前後のモジュールのモジュールリンク突端と嵌り合い、各モジュールリンク突端(4)は、モジュール同士を着脱自在に連結するため、横断ピン(6)を収容できるようにした開口(5)を軸線が同じくなるように備え、横断ピンは、開口(5)内に延びる第1円筒形部分(7)と、第1円筒形部分の一端から半径方向に突出する第2部分(8)とを備え、横断ピンは、開口(5)内での横断ピン(6)の軸線方向変位を制限しない第1位置(F)と、開口内での横断ピンの軸線方向変位を制限する第2位置(R)との間で、横断ピン(6)の第1部分(7)の長さ方向軸線(L)を中心として回転自在であり、各モジュール(1)の側部(9)には、横断ピン(6)の第2部分(8)を収容するとともに、横断ピンが、回されて第2位置(R)に位置付けられると、横断ピン(6)の軸線方向移動を制限するための収容部(10)を備え、収容部(10)は、横断ピン(6)の第2部分(8)の少なくとも一部を、収容部内に導く通路(13)を備えるコンベヤーにおいて、
収容部(10)と横断ピン(6)とは、横断ピン(6)の第2部分(8)が第2位置(R)から変位するのを着脱自在に防止する手段(11A、11B)を備え、収容部(10)は、モジュール(1)の底部の側部(9)に設けられ、通路(13)が、モジュール(1)の底面部(15)の一部分(14)から前壁及び後壁(2、3)の一方の一部分(16)まで延び、当該前壁及び後壁の一方からは、モジュールリンク突端(4)が、突出し、当該一部分(14、16)は、側壁(17)の一方の近傍に位置することを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記横断ピン(6)の第1部分(7)は、その両端の一方(6A)において、前記第1部分(7)と軸線を同じくし、前記第1部分(7)及び前記開口(5)よりも直径が大である円筒形頭部(6B)を有し、前記横断ピンの第2部分(8)は、当該頭部(6B)から突出し、前記横断ピン(6)及びモジュール組立体は、前記横断ピンが、2個のモジュールを連結すると、横断ピンの頭部(6B)が、第1リンク突端(4A)の外壁と接し、前記第2部分(8)は、前記収容部(10)と同一平面上にあり、前記横断ピンを回すことにより、前記第2部分(8)が回って、横断ピンの位置の再調整をすることなく、前記収容部(10)に出入りできる寸法に形成されることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記横断ピンの頭部(6B)は、スリット(29)を外面に備え、スリットには、工具の先端を入れられるようにして、横断ピンを前記2個の異なる位置(F、R)から容易に回すことができるようにすることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
【請求項4】
前記横断ピン(6)の第2部分(8)が前記第2位置(R)から変位することを着脱自在に防止する手段(11A、11B)は、モジュールの前記側壁(17A)の前記収容部(10)に近接した箇所に形成した貫通穴(18)を備え、当該貫通穴(18)は、前記収容部(10)を前記側壁(17A)の外面につなげ、当該貫通穴(18)内にスナップ式に嵌り込むように、前記横断ピンの第2部分(8)に、突出部(19)を設けることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
【請求項5】
前記収容部(10)に最も近いリンク突端(4A)は、幅(W1)が、モジュールの他のリンク突端(4)の幅(W2)よりも小であることにより、前記横断ピン(6)の頭部(6B)及び前記横断ピン(6)の第2部分(8)の一部をモジュールから飛び出すことなく収容するのに十分な空間を、各モジュールの底面部にもたらすことを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。
【請求項6】
前記横断ピン(6)の第2部分(8)は、前記突出部(19)を前記貫通穴(18)内にスナップ式に着脱自在に嵌めることができるように、若干弾性的に変形可能であることを特徴とする、請求項1に記載のモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−184828(P2009−184828A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19593(P2009−19593)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(509031280)システム プラスト ソチエタ ペル アチオーニ (1)
【氏名又は名称原語表記】SYSTEM PLAST S.p.A.
【Fターム(参考)】