説明

複数棟の配置計画検討装置

【課題】 複数棟の配置が図示された配置計画図を利用して各棟はもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観等について早急且つ手軽に高さ情報も含めて総合的な検討・確認できる複数棟の配置計画検討装置の提供。
【解決手段】 少なくとも各棟A〜Eの配置が図示された配置計画図、たとえば全体計画図1と、前記全体計画図1の各棟A〜Eの上に配置され、且つ、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニット2を備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数棟の配置計画をハウスメーカ内で検討したり、顧客に対して説明する際に使用する複数棟の配置計画検討装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数棟の配置計画をハウスメーカ内で検討したり、顧客に対して説明する場合には、二次元の図面では立体的な表現がつかみにくいため、特に採光や外観全体計画の整合性、駐車スペース等について検討・確認することが困難である。
そこで、各棟の敷地、植栽、部屋等を縮小して忠実に再現された三次元の模型を制作し、この模型を用いて各棟はもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観等について説明しながら総合的な検討・確認を行っている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−153945号公報
【特許文献2】特開平11−224045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記模型を制作するには多大な時間と手間を要することから従来の建築計画において作成される模型は、建物内外の間取りや仕上げを含めた全建築計画の詳細な図面が全て完成した後に、顧客へのプレゼンテーション用に制作されていた。このため、建築計画の最終段階でなければ前述した採光や外観等について模型を用いた検討・確認することが困難であるという問題点があった。
【0004】
また、建築計画の段階においてハウスメーカ側と顧客の双方にとっては、より早い段階で前述した採光や外観等について検討・確認することと、建築計画に内在する問題点を少しでも早く直感的に想像できることが重要であるにも関わらず、従来のような詳細な模型の完成後に検討・確認を行ってその都度修正を繰り返していたのでは、時間と手間が大変掛かって建築計画をスムーズに進めることができないという問題点があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、建築計画の早い段階で配置計画図を利用して各棟はもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観全体計画の整合性、駐車スペース等について、早急且つ手軽に高さ情報も含めた総合的な検討と確認ができる複数棟の配置計画検討装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明では、少なくとも複数棟の配置が図示された配置計画図と、前記配置計画図の各棟の上に配置され、且つ、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニットを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の複数棟の配置計画検討装置において、前記各建物ユニットの上部を各棟の屋根形状に応じた形状に形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の複数棟の配置計画検討装置において、前記配置計画図に植栽ユニットを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、少なくとも複数棟の配置が図示された配置計画図と、前記配置計画図の各棟の上に配置され、且つ、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニットを備えるため、建築計画の早い段階で配置計画図を利用して各棟はもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観等について総合的な検討・確認を容易に行うことができ、顧客のニーズに合わせたスムーズな住宅設計・施工の受注活動が可能になる。
【0010】
また、二次元の図面から三次元のものを想定することに関する深い知識や経験等を必要とせずに、容易に敷地内の複数棟全体を立体的に想像できる。
【0011】
また、建物ユニットはブロック形状の概略的な形態で良いため、従来の発明に比べてより小さな縮尺でコンパクトに形成することができ、装置を顧客先に搬送してプレゼンテーションすることも可能になる。
【0012】
請求項2記載の発明にあっては、各棟の建物ユニットの上部を各棟の屋根形状に応じた形状に形成したため、日影や採光についてより具体的に検討できる上、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニットの意匠性を向上できる。
【0013】
請求項3記載の発明にあっては、配置計画図に植栽ユニットを配置したため、各棟の採光やプライバシー、複数棟全体の外観等についてより具体的に想像して検討できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の実施例の複数棟の配置計画検討装置の全体斜視図、図2は複数棟の配置が図示された配置計画図の一例である本実施例の全体計画図を示す図、図3は本実施例の建物ユニットの一例を示す斜視図、図4は本実施例の植栽ユニットの一例を示す斜視図、図5は図1の矢視Xによる斜視図である。
【0016】
先ず、本実施例の複数棟の配置計画検討装置の構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施例の複数棟の配置計画検討装置は、全体計画図1と、建物ユニット2と、植栽ユニット3を主要な構成としている。
【0018】
図2に示すように、前記全体計画図1は、建築、外構に関わる内容を全てまとめた水平投影図であり、本実施例ではA3用紙の1/200の縮尺図が採用され、各棟A〜E、主要な植栽4、既存建物5、エントランス広場6、駐車場7、道路8等の配置や方角9等が図示されている。
また、本実施例においては複数棟の部分的なイメージ10も図示される他、複数棟のコンセプト11や各棟A〜Eに関連する建物計画の概要12も記載されている。
なお、通常、前記全体計画図1は建築計画の早い段階で作成され、建物内の詳細な間取りや仕上げ等の最終的な決定は成されていない。
【0019】
そして、前記全体計画図1の各棟A〜Eには、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニット2がその底面を両面テープ等を用いてそれぞれ貼着されている。
具体的には、図3に示すように、前記各建物ユニット2は、ドアや窓等の詳細な部分については全て省略されてブロック形状の概略的な形態を有して形成される他、全体計画図1の縮尺を基に建物の外形及び高さに応じて形成されている。
また、建物の屋根13に相当する上部は各棟A〜Eの屋根形状に応じた形状に形成され、これにより各建物ユニット2、ひいては複数棟全体の外形が表現されている。
また、本実施例の建物ユニット2は軽量なスチロール等の樹脂材を熱線カッターで切欠して制作されており、短時間で形成できる上、加工も容易である。
【0020】
なお、既存建物5にも前記各棟A〜Eと同様に建物ユニット2が配置されている。
【0021】
前記全体計画図1の植栽4には、植栽ユニット3がその底面を両面テープ等を用いて貼着されている。
具体的には、図4に示すように、前記植栽ユニット3は、プラスチックや化学繊維等を用いて枝や葉が形成され、植物の種類に応じて様々な高さや大きさのタイプのものが採用される。
なお、植栽ユニット3は、針金の周囲にテープ等を巻き付けたもので概略的に作成することもある。
【0022】
次に、本実施例の複数棟の配置計画検討装置の作用を説明する。
【0023】
ハウスメーカ内では、少なくとも複数棟の配置が図示された配置計画図として、主に以下に列記する配置図、平面図、外構図、全体計画図等が作成される。
前記配置図とは、一般的には対象物の配置と相互位置関係を指示する図面であり、建築で単に配置図という場合には建物と敷地の位置関係を示すが詳細な仕上げや高さ等に関する情報は記載されない。
前記平面図とは、水平投影面上の投影図であり、建築で単に平面図という場合は間取りを示すために適当な高さの水平面で切断した場合の平面図を指すが、外部と内部のつながりや建築外廻りの仕上げ等は記載されない。
前記外構図とは建物の外廻りに関する塗装工事、工作物、造園工事の内容を図面化したものであって、通常は植栽工事図面とは区別され、建築内部との関連性や建築内部の間取りは記載されない。
前記全体計画図とは建築、外構に関わる内容を全てまとめた水平投影図であり、計画内容の相互関連性は得られるが高さに関する情報は得られない。
また、通常、前記全体計画図は建築計画の早い段階で作成されるが、建物内の詳細な間取りや仕上げ等の最終的な決定は成されていない。
【0024】
前述したような図面は全て三次元の情報でありながら二次元で表現されており、空間を想像するには基本となる知識や経験を得た上で訓練を重ねる必要がある。
【0025】
そこで、複数棟の配置計画をハウスメーカ内で検討したり、顧客に対して説明する場合には、各棟の敷地、植栽、部屋等を縮小して忠実に再現した三次元の模型を制作し、この模型を用いて各棟はもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観等について説明しながら総合的な検討・確認を行っている。
なお、前記模型の縮尺は一般的に1/50または1/100であり、これ以上小さな縮尺の模型を制作しようとすると高度な技術と時間、手間が掛かるため実際上困難である。
【0026】
しかしながら、建物の内外を含めた詳細な全建築計画が決定された全ての図面が揃わなければ前記模型の制作に着手することができないため、建築計画の早い段階では、複数棟の配置計画をハウスメーカ内で検討したり、顧客に対して説明する所謂プレゼンテーションができないという問題点があった。
【0027】
また、前記模型は一般的に木材、スチレンボード、プラスチック板、カラーペーパー、印刷紙等を用いて敷地、建物、植栽等が忠実に再現されて制作され、各棟毎にその敷地、規模、構造等が異なるため大変手間と時間が掛かり、例えば、複数棟のアパートや建売住宅の場合、その規模にもよるが縮尺を1/100で制作した場合でも模型はかなり大型化する上、その制作に一ヶ月以上掛かってしまうという問題点があった。
なお、前記模型は検討結果に応じて制作し直す必要があるため、再びプレゼンテーションを行うまでに多くの時間を要する。
【0028】
そこで、前記模型を三次元のコンピュータグラフィックを用いて制作する場合もある。
しかしながら、前記模型を三次元のコンピュータグラフィックを用いて制作する場合、例えば、プレゼンテーションの段階では住宅の日当たりは大まかに把握できれば良いにも関わらず、三次元データ等の膨大なデータをコンピュータに入力して日射量を定量的に求めなければならないため、データの入力から作成までに時間、手間、コストが大変掛かって誰しもが利用し得るものではなく、手軽に実施することは実際上困難であった。
【0029】
これに対し、本実施例の複数棟の配置計画検討装置では、前記建物ユニット2については短時間で簡単に形成することができ、植栽ユニット3については予め複数のタイプのものを作成して繰り返し使用できるため、外構を含む複数棟の配置が図示された配置計画図として、建築計画の早い段階で作成される全体計画図1に建物ユニット2と植栽ユニット3を適宜配置して貼着するという簡便な作業でもって以下に述べるプレゼンテーションを行うことができる。
【0030】
例えば、図5に示すように、多方向から各棟及び複数棟全体を多方向から見て、各棟A〜Eや植栽、複数棟全体の外観、外観全体計画図の整合性、駐車スペース等について総合的な検討・確認をすることができる。
【0031】
具体的には、建物の形態については、その建築物が建築される個々の敷地ごとに、建築基準法による数値的な制限規定が何項目にも亙って適用されることになる。そのため、個々の敷地に建築物を建築しようとする際には、その初期の計画段階において、建築物の階数や面積、該敷地内における建築物の配置、突出物の高さ等、建築物の全体的な概略形態を仮定しながらこれを前記制限規定に沿ってチェックし、そのチェックに基づく修正を繰り返しながら合法的な概略形態を設定する総合的な検討・確認作業を行うことができる。
なお、このような計画作業は、通常、計画担当者が各種制限規定に関する知識や経験に基づいて、二次元の図面から三次元のものを想定しながらその都度一定の時間と手間を掛けて行っているが、本実施例では建物ユニット2や植栽ユニット3によって三次元のものを容易に想定でき、目視して確認しながら行うことができる。
【0032】
また、各建物ユニット2の上部を各棟A〜Eの屋根形状に応じた形状に形成したため、各建物ユニット2に太陽の入射方向から光を当てることで、各棟A〜Eの日当たりを大まかに検討したり、隣り合う棟同士のプライバシーに配慮した窓やドアの設置についても総合的な検討・確認することができる。
【0033】
また、人の動線(図2の破線矢印で図示)についても検討でき、各棟A〜E相互間や、各棟A〜Eにおけるエントランス広場6や駐車場7の使い勝手について総合的に検討・確認できる。
【0034】
また、前述した検討結果で不具合が生じた場合でも、簡単な変更であれば建物ユニット2の一部を切欠して加工したり、一部の建物ユニット2を剥がして所望の角度に修正することができ、プレゼンテーションの途中であってもその場で加工・修正して総合的な検討・確認を続けることができる。
【0035】
従って、本実施例の複数棟の配置計画検討装置にあっては、従来の発明に比べて、建築計画のより早い段階に外構を含む複数棟の配置が図示された配置計画図としての全体計画図1を利用して各棟A〜Eはもちろん複数棟全体を含めた採光や人の動線、外観等について総合的な検討・確認を行うことができ、顧客のニーズに合わせたスムーズな住宅設計・施工の受注活動が可能になる。
【0036】
また、二次元の図面から三次元のものを想定することに関する深い知識や経験等を必要とせずに容易に複数棟全体を立体的に検討できる。
【0037】
また、建物ユニット2はブロック形状の概略的な形態を有するため、従来の発明に比べてより小さな縮尺で容易にコンパクトに形成することができ、顧客先に搬送してプレゼンテーションすることも可能になる。
【0038】
また、建物ユニット2の上部を各棟A〜Eの屋根形状に応じた形状に形成したため、日影や採光についてより具体的に検討できる。
【0039】
さらに、植栽ユニット3によって各棟A〜Eの意匠性を向上できる他、各棟の採光やプライバシー、複数棟全体の外観等についてより具体的に想像して検討できる。
【0040】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、複数棟の配置が図示された配置計画図として、前記した配置図または外構図を使用してもよいし、複数棟の配置が図示されていれば平面図を使用することも出来る。
また、建物ユニット2、植栽ユニット3等の材質については適宜設定できる。建物ユニット2、植栽ユニット3に塗料を塗布して色分けしてもよい。
さらに、各棟A〜Eの敷地に著しく高低差がある場合には全体計画図1を屈折または切欠して前記高低差を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例の複数棟の配置計画検討装置の全体斜視図である。
【図2】本実施例の全体計画図(配置計画図)を示す図である。
【図3】本実施例の建物ユニットの一例を示す斜視図である。
【図4】植栽ユニットの一例を示す斜視図である。
【図5】図1の矢視Xによる斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
A、B、C、D、E 棟
1 全体計画図(配置計画図)
2 建物ユニット
3 植栽ユニット
4 植栽
5 既存建物
6 エントランス広場
7 駐車場
8 道路
9 方角
10 イメージ
11 複数棟全体のコンセプト
12 各棟に関連する建物計画の概要
13 屋根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数棟の配置が図示された配置計画図と、
前記配置計画図の各棟の上に配置され、且つ、ブロック形状の概略的な形態を有する建物ユニットを備えることを特徴とする複数棟の配置計画検討装置。
【請求項2】
請求項1記載の複数棟の配置計画検討装置において、前記各建物ユニットの上部を各棟の屋根形状に応じた形状に形成したことを特徴とする複数棟の配置計画検討装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の複数棟の配置計画検討装置において、前記配置計画図に植栽ユニットを配置したことを特徴とする複数棟の配置計画検討装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3430(P2006−3430A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177207(P2004−177207)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】