説明

複鍔帽子

【課題】前方の視界を遮ることなく、上方に位置する太陽からの直射日光のみ成らず、その直射日光が海水面や地上面に当たって反射した下からの反射日光をも遮断して、それらによる眩しさを回避する。
【解決手段】複鍔帽子10は、頭部に装着される装着部12と、装着部12の少なくとも前方に設けられた上側鍔21と、上側鍔21の下方に位置し上側鍔21と所定の間隔を空けて上側鍔21と共に装着者の視界を上下から挟む下側鍔23とを備える。下側鍔23が弾性体26を介して装着部12に設けられることが好ましい。下側鍔23が上側鍔21に重合可能に構成され、上側鍔21に重合した下側鍔23を上側鍔21にして係止させる係止手段22,25を更に備えることが好ましい。下側鍔は、幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽からの光を遮断するために複数の鍔が設けられた複鍔帽子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽からの直射日光を遮断して、その直射日光が照らすことによる眩しさを軽減するためのものとして、一般的に釣り用帽子、野球帽子、麦藁帽子、又は、サンバイザー等のいわゆる日除け帽子が知られている。この日除け帽子は、人の頭部に装着される装着部と、装着部の少なくとも前方に設けられてこの帽子を装着した者の目の上を覆う上側鍔とを備えるものが知られている。そして、この日除け帽子における上側鍔が上方からの直射日光を遮断して、装着者の目にその直射日光が直接差し込まないようにしている。これにより、この日除け帽子を装着した装着者の目を太陽の直射日光が照らすようなことは回避され、その装着者が眩しさを感じることを防止している。
【0003】
しかし、装着者の目の上を覆うような上側鍔を有する日除け帽子は、上方からの直射日光に対しては有効に機能するけれども、日除け帽子を装着した装着者の目を照らす光は上方からの直射日光に限られない。このため、一日中特に釣りをしている人達や、常に屋外の作業に従事する人達の日除けにはこのような日除け帽子では防げない問題がある。即ち、例えば、釣り人の場合には直射日光が海水面に当たり、その海水面により反射した日光が目を照らして、その光により眩しさを感じることがある。また屋外専門の作業をしている人には、路面により跳ね返る反射日光が目に入って眩しさを感じる場合もある。特に、冬季の積雪面等により反射する反射日光は比較的紫外線が強いものであり、そのような反射日光が目を比較的長い時間照らした場合、俗に「ゆきめ」と呼ばれる紫外線によって起こる目の角膜炎を生じさせるようなこともある。
【0004】
このような反射日光等を遮断して帽子を装着する者の目を保護する要求から、樹脂板からなるお面体の上部に、帽子の上側鍔が入る溝穴を設けて帽子の上側鍔に装着可能とする日除けお面体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この日除けお面体では、その溝穴を帽子の上側鍔に入れると、そのお面体が垂直に顔の前面を覆う設定になっており、上方からの直射日光以外の光を遮蔽するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の日除けお面体は、鍔を有する帽子に着脱式のお面体であり、本来の帽子と別に持ち運び、必要が生じた時点でその帽子に装着するものである。このため、このような日除けお面体にあっては、必要がない場合であってもその帽子と共に持ち運ぶ必要があって、比較的面倒であるという問題や、その帽子に日除けお面体を装着したり取外したりすること自体が面倒であると言う問題もあった。また、このお面体は、顔の前面を覆うことからまた、そのお面が汚れてしまった場合には、前方の視界が遮られてしまう不具合がある。
【0007】
また、この日除けお面体は、帽子の鍔に装着されるものであるので、帽子を頭部に装着した者の顔とそのお面体との間の下方に隙間が生じる。このため、長時間同じ場所にたたずむ釣り人や屋外での作業員の場合、水面からの反射日光や、路面の熱気を帯びた真下からの跳ね返りの反射日光が顔とそのお面体との間から進入して目を照らすことがあるので、目の保護に欠け、その反射日光により眩しさを回避し得ないという未だ解決すべき課題が残存していた。
【0008】
本発明の目的は、前方の視界を遮ることなく、上方に位置する太陽からの直射日光のみ成らず、その直射日光が海水面や地上面に当たって反射した下からの反射日光をも遮断して、それらによる眩しさを回避し得る複鍔帽子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、頭部に装着される装着部と、その装着部の少なくとも前方に設けられた上側鍔と、その上側鍔の下方に位置しその上側鍔と所定の間隔を空けて設けられた下側鍔とを備える複鍔帽子である。
【0010】
下側鍔は弾性体を介して装着部に設けられること、又は装着部に揺動可能に設けられることが好ましい。また、下側鍔が上側鍔に重合可能に構成され、上側鍔に重合した下側鍔を上側鍔に係止させる係止手段を更に備えることもできる。そして、下側鍔は、幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成されることも好ましい。
【0011】
なお、この明細書における「複鍔帽子」とは、野球帽のように頭部全体を覆うようなものの他に、頭部の周囲に装着されて頭頂部を覆わない、いわゆるサンバイザーのようなものも含むものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の複鍔帽子では、視界前方上方を覆う上側鍔を備えるので、その上側鍔が太陽からの直射日光を遮って、それによる眩しさを回避することができる。また、視界前方下方を覆う下側鍔をも備えるので、太陽からの直射日光が海水面、地上面に当たり真下から受ける反射日光をもその下側鍔が遮断して、反射日光による眩しさを回避することができる。
【0013】
また、本発明の複鍔帽子では、頭部に装着される装着部に、上側鍔と下側鍔が予め設けられるので、従来の日除けお面のように、本来の帽子と別に持ち運ぶようなものはない。そして、上側鍔に重合した下側鍔を上側鍔に係止させる係止手段を備えれば、下側鍔を必要としない場合であっても、その下側鍔が邪魔になるようなことはない。このため、例えば下側鍔を忘れてしまうような事態を回避することができる。
【0014】
更に、本発明の複鍔帽子では、視界前方上方を覆う上側鍔と、視界前方下方を覆う下側鍔とを備えるけれども、視界前方を遮るようなものはない。このため、この複鍔帽子を装着した者の前方における視界が本発明の複鍔帽子により遮られるようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施形態の複鍔帽子を装着した者の側面図である。
【図2】その複鍔帽子を装着した者の正面図である。
【図3】その複鍔帽子を斜め上方から見た斜視図である。
【図4】その複鍔帽子を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態の複鍔帽子を装着した者の側面図である。
【図6】その別の複鍔帽子を装着した者の正面図である。
【図7】その別の複鍔帽子を斜め上方から見た斜視図である。
【図8】その別の複鍔帽子を斜め下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図4に、本発明の複鍔帽子10を示す。本発明の複鍔帽子10は、頭部(図1及び図2)に装着される装着部12を備える。図における装着部12は、6枚のメッシュ生地(三次元立体構造生地)からなる略二等辺三角形の三角布片13(れんげ)を、その斜辺同士を相互に縫着結合することで頭部の形状に合うように椀形状に形成されたものであって、頭頂部となる部分において絶縁性の留め具14(図1〜図3)によって全ての三角布片13の頂角が括着されている。なお三角布片13にはナイロン等の合成繊維、木綿等の天然繊維、天然繊維と合成繊維との混紡繊維が一般的に用いられるが、メッシュ生地としない場合にはフェルト、皮革なども使用することができる。
【0018】
また装着部12の後頭部に位置する部位の2枚の三角布片13には、図4に示すように半円形の切欠き部15を装着部12の後頭部に形成するように、底辺の一角が四分の一円弧形状だけ切り取られている。この切欠き部15は複鍔帽子10使用者の頭周りのサイズに合わせて、装着部12下端の円周長を調節するために設けられるものである。この切欠き部15には、装着部12下端から頭周りに延出するように雄の着脱自在テープ16と雌の着脱自在テープ17が取付けられる。そして、この雄の着脱自在テープ16と雌の着脱自在テープ17の係合する位置をその長手方向で変更調整することにより、装着部12下端の円周長を調節することができるようになっている。
【0019】
この実施の形態における装着部12の構成は従来の野球帽等の装着部12とほぼ同様のものであって、図4に示すように、装着部12の前面側となる2枚の三角布片13の内面側には薄い生地19が裏打ちされ、三角布片13を縫着結合した内面側にはその縫着部に沿って所定幅の補強布18が縫着される。また、切欠き部15を除く装着部12の下端縁部の内周側には、額の汗を吸収するための帯状の吸収帯20が縫着される。なお図示しないが、この吸収帯20を縫着することなく、装着部12の下端縁部の内周側に面ファスナを用いて着脱自在に取付けることもできる。吸収帯20を着脱式とすれば、複鍔帽子10の使用により吸収帯20に汚れが付着した場合にも容易にこれを取外して洗濯することができる。
【0020】
図1〜図4に示すように、このような装着部12には、その前面側に光を遮断する上側鍔21が設けられる。この上側鍔21は、この装着部12を頭部に装着した装着者の視界前方上方を覆うように装着部12に設けられる(図1及び図2)。この上側鍔21は、従来と同様に、ポリエチレン等の僅かに可倒性を有する樹脂からなる薄い芯材(図示せず)を半月板形状として、これに反りを与えて布などで被覆加工したものが例示される。そして、この半月板形状を成す上側鍔21は、その基端側における芯材を被覆した布が、装着部12の下端縁部と吸収帯20の間に挟まれて、その装着部12の下端縁部に吸収帯20とともに縫着される。そして、この上側鍔21の下部には、下側に向く雄ホック22が、この例では幅方向の中央に前後方向に所定の間隔を空けて2個取付けられる。
【0021】
本発明における複鍔帽子10は、上側鍔21の下方に位置しその上側鍔21と所定の間隔を空けて上側鍔21と共に装着者の視界を上下から挟む下側鍔23を備えることを特徴とする。即ち、この下側鍔23は、装着部12を頭部に装着した装着者の視界前方下方を覆うものであって、この実施の形態における下側鍔23は、ポリエチレン製の薄い芯材(図示せず)を半月板形状として、これに反りを与えて布などで被覆加工することにより作られ、その下側鍔23の基端側に装着者の顔に接触する当接帯24が設けられる。この下側鍔23は、その基端側中央に装着者の鼻柱との接触を回避する凹部23aが形成され、その基端側に立設する当接帯24はその凹部23aにも設けられる。この当接帯24には、それが顔に接触したときに外観上の違和感を生じさせないように、下側鍔23の外表面における布と同一の布が用いられる。また、この当接帯24は、その下側鍔23の基端側に沿って、下側鍔23と直交するように設けられ、装着者の鼻の両側であって目と頬の間又はその頬に面接触可能に設けられる。
【0022】
当接帯24の両側には弾性体である帯状のゴム紐26の一端が逢着され、そのゴム紐26の他端は、装着部12の下端内側の吸収帯20であって側頭部に位置する部分に逢着される。よって、下側鍔23はこの弾性体である帯状ゴム紐26を介して装着部12に設けられ、この弾性体である帯状ゴム紐26により、下側鍔23は装着部12に対して回転や移動が可能に構成される。そして、当接帯24が装着者の目と頬の間又はその頬に接触した状態で、ゴム紐26は当接帯24の両端を側頭部方向にそれぞれ引っ張るので、その当接帯24は装着者の目と頬の間又はその頬に接触した状態で維持され、これにより、下側鍔23は装着者の目の下側から前方に突出した状態でその顔に維持されるように構成される(図1及び図2)。
【0023】
また、上側鍔21に設けられたく雄ホック22に対向する下側鍔23の上面には、その雄ホック22に係合可能な雌ホック25が取付けられる。この下側鍔23に取付けられた雌ホック25は、上側鍔21の雄ホック22と係合して、その下側鍔23を上側鍔21に重合させて固定するように構成される。なお雄ホック22及び雌ホック25には、例えば、屋外においてこの複鍔帽子10の装着時の落雷事故の発生予防のため、プラスティック等の絶縁性材料により製作されたものが用いられる。
【0024】
このように構成された複鍔帽子10では、通常、図3及び図4に示すように、下側鍔23を上側鍔21に重合させて、雌ホック25を雄ホック22と係合して、その下側鍔23を上側鍔21に重合させた状態で固定しておく。このような複鍔帽子10における装着部12を頭部に装着すると、その装着者の視界上方に、互いに重合する下側鍔23と上側鍔21の双方が位置することになる。このため、上側鍔21及び下側鍔23は、真上からの直射日光を遮ってその光が直接装着者の目を照らすことを防止して、それによる眩しさを回避する。
【0025】
一方、日照りの強い日に、例えば一日中屋外に立ち尽くす釣り人や、道路工事の交通整理の人達には、太陽からの光が海水面又は路面に当たり、下からの跳ね返りによる反射日光をも避ける必要がある。そのために、図1及び図2に示すように、雄ホック22を雌ホック25から離脱して下側鍔23を上側鍔21から離し、下側鍔23を目の下側にまで移動させ、弾性体である帯状ゴム紐26の弾性力によりその当接帯24を装着者の鼻の両側であって目と頬の間又はその頬に接触させ、下側鍔23を装着者の目の下側から前方に突出した状態で固定する。このように、雌ホック25を離脱して下側鍔23を下げるだけの簡単な動作であるので、別に持参した日除けお面体を帽子に装着する必要のある従来に比較して、比較的容易に下側鍔23を目の下側から前方に突出した状態で固定することができ、その動作自体が面倒であると言うことはない。すると、目の下に位置する下側鍔23は、海水面又は路面に当たり、下からの跳ね返りによる反射日光を遮り、その光が装着者の目を直接照らすようなこと防止して眩しさを軽減する。
【0026】
特に、この下側鍔23は、その下側鍔23の顔に臨む基端側に設けられた当接帯24が帯状ゴム紐26の弾性力により装着者の鼻の両側であって目と頬の間又はその頬に接触するようにしたので、この当接帯24とともにその下側鍔23は、その鼻周囲から入るような反射日光を有効に遮蔽することができる。このため、その反射日光が装着者の目を照らすような事態を有効に回避することができる。
【0027】
また、本発明の複鍔帽子10では、頭部に装着される装着部12に、上側鍔21と下側鍔23が予め設けられるので、従来の日除けお面のように、本来の帽子と別に持ち運ぶようなものはない。このため、例えば下側鍔23を忘れてしまうような事態は回避される。
【0028】
更に、本発明の複鍔帽子10では、視界前方上方を覆う上側鍔21と、視界前方下方を覆う下側鍔23とを備えるけれども、視界前方を遮るようなものはない。このため、この複鍔帽子10を装着した者の前方における視界が本発明の複鍔帽子10により遮られるようなことはない。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、6枚の三角布片13を縫着結合することで椀形状に形成された装着部12を説明したが、これは装着部12の一例であって、このようなものに限定されるものではない。従って、三角布片13の数は6枚に限られずその形状も略二等辺三角形のものに限定されずに、この装着部12は、頭部を覆ってその頭部に装着されるものである限り、その形状や構造はどの様なものであっても良い。
【0030】
また、上述した実施の形態では、装着者の顔に接触する当接帯24を、下側鍔23の凹部23aにも形成する例を示したが、この当接帯24は凹部23aに設けなくても良い。
【0031】
図5〜図8に、本発明の別の実施の形態を示す。
【0032】
図5〜図8に示す複鍔帽子40は、いわゆるサンバイザーといわれるものであり、半月形の上側鍔41、及びその上側鍔41の基端側において立設した状態で環状をなしてその上側鍔41を頭部に固定する装着部42を有する。装着部42は上側鍔41の基端側において立設して設けられ、U字状を成して装着者の額部及び側頭部に接触する本体部43と、その本体部43の両端部からそれぞれ延出する布製のサイズ調整帯44とを有し、そのサイズ調整帯44は本体部の端部にそれぞれ逢着され、左右のサイズ調整帯44を係合することで本体部43とともに環状をなすように構成される。図における本体部43は、例えば、前頭部から側頭部にかけた50cm程度の長さを有しており、その幅は前頭部から側頭部にかけて7〜8cm程度から3〜5cm程度に漸減して形成されたものを例示する。
【0033】
図8に示すように、この実施の形態におけるサイズ調整帯44は、本体部43の両端部からそれぞれ延出して設けられ、先端に矩形枠状の環45が取付けられた3〜7cm程度の長さの短帯44aと、先端から5〜7cm程度の範囲の外周側に雄の着脱自在テープ46が縫着され基端から4〜6cm程度の範囲の外周側に雌の着脱自在テープ47が縫着された全長が10〜18cm程度の長帯44bとからなり、長帯44bを環45に通した状態で適当な位置で折り返して雄雌の着脱自在テープ46,47を係合させることで、このサイズ調整帯44と本体部43から成り、環状を成す装着部42の円周長を調節できるようになっている。
【0034】
このような装着部42の本体部43と上側鍔41は成型品であって一体的に形成される。即ち、この本体部43と上側鍔41はプラスチック製であって、半月板形状に形成された上側鍔41は、その基端側が装着部42に連結して設けられる。そして、このいわゆるサイドバイザー型の複鍔帽子40には、装着部42が頭部に装着された装着者の視界を上下から挟むように、上側鍔41の下方に下側鍔53が、その上側鍔41に対して所定の間隔を空けて設けられる。この実施の形態における下側鍔53は、上側鍔41と同様の半月板形状に形成されるけれども、その外形は上側鍔41より小さく形成される。
【0035】
この下側鍔53には、その基端側の両側において延長し、この下側鍔53と共にU字状を成す延長部55が形成される。この下側鍔53及び延長部55にあっても樹脂成型により作られたプラスチック製のものであって、これらは一体的に形成される。そして、装着部42の両側、即ち、装着者の耳近傍の側頭部に位置する本体部43には、その本体部43から下方に膨出する枢支部43aが形成され、この枢支部43aに延長部55の先端部が枢支されて、下側鍔53は装着部42に揺動可能に設けられる。
【0036】
また、この下側鍔53は、図6に示すように、幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成される。この下側鍔53を山形状とすることにより、この複鍔帽子40の装着者における鼻柱と下側鍔53が直接接触するような事態を回避するように構成される。そして、上側鍔41の下面にはその中央部に雌ホック57が設けられ、その上側鍔41の雌ホック57に対向する下側鍔53の上面、即ち、山形を成す下側鍔53の頂面には、その雌ホック57に係合可能な雄ホック56が取付けられる。そして、その下側鍔53を上側鍔41に重合させて、雄ホック56と雌ホック57を互いに係合させることにより、その下側鍔53を上側鍔41に重合させた状態を維持するように構成される(図8)。
【0037】
一方、雄ホック56を雌ホック57から離脱してその係合を解消すると、装着部42の本体部43と一体的に形成された上側鍔41はそのまま装着者の視界前方上方を覆う位置に維持されるけれども、枢支部43aに延長部55の先端部が枢支された下側鍔53は、自重によりその枢支点を中心に揺動して下方に移動することになる。そして、その枢支部43aには、下側鍔53が装着者の視界前方下方を覆う位置に達した状態で延長部55に接触し、それ以上下側鍔53が下方に移動することを防止するストッパ部材43bと、ストッパ部材43bに接触した延長部55をそのストッパ部材43bに接触した状態に維持しようとする図示しない係合片が設けられる。
【0038】
このように構成された複鍔帽子40では、通常、図7及び図8に示すように、下側鍔53を上側鍔41に重合させて、雌ホック57を雄ホック56と係合して、その下側鍔53を上側鍔41に重合させた状態で固定しておく。このようなサンバイザー型の複鍔帽子40における装着部42を頭部に装着すると、その装着者42の視界上方に、互いに重合する下側鍔53と上側鍔41の双方が位置することになる。このため、上側鍔41及び下側鍔53は、真上からの直射日光を遮ってその光が直接装着者の目を照らすことを防止して、それによる眩しさを回避する。
【0039】
一方、日照りの強い日には、図5及び図6に示すように、雄ホック56を雌ホック57から離脱して下側鍔53を上側鍔41から離し、枢支部43aに延長部55の先端部が枢支された下側鍔53を、自重によりその枢支点を中心に回転して下方に移動させる。そして、ストッパ部材43bに延長部55を当接させることにより、下側鍔53が装着者の視界前方下方を覆う位置に達した状態で維持させる。このように、雌ホック57を離脱して下側鍔53を下げるだけの簡単な動作であるので、従来の日除けお面に比較して、比較的容易に下側鍔53を目の下側から前方に突出した状態で固定することができ、その動作自体が面倒であると言うことはない。すると、装着者の目の下側から前方に突出した状態で固定された下側鍔53は、海水面又は路面からの跳ね返りによる反射日光を遮り、その光が直接装着者の目を照らすことを防止して眩しさを軽減する。
【0040】
特に、この下側鍔53は、その幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成したので、その下側鍔53の顔に臨む基端側が、装着者の鼻と当接することを回避することができる。そして、その山形を成す中央部分が鼻に適合して、その鼻周囲から入るような反射日光を有効に遮蔽する。このため、その反射日光が装着者の目を照らすような事態を有効に回避することができる。
【0041】
また、このようなサンバイザー型の複鍔帽子40であっても、頭部に装着される装着部42に、上側鍔41と下側鍔53が予め設けられるので、従来の日除けお面のように、本来の帽子と別に持ち運ぶようなものはない。このため、例えば下側鍔を忘れてしまうような事態は回避される。
【0042】
更に、このような複鍔帽子40であっても、視界前方を遮るようなものはない。このため、この複鍔帽子40を装着したものの前方における視界が本発明の複鍔帽子40により遮られるようなことはない。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、いわゆる野球帽型の複鍔帽子10の下側鍔23に鼻との接触を回避する凹部23aを形成し、いわゆるサンバイザー型の複鍔帽子40の下側鍔53を幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成した例を示したけれども、いわゆる野球帽型の複鍔帽子10の下側鍔23をその幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成し、いわゆるサンバイザー型の複鍔帽子40の下側鍔53に鼻との接触を回避する凹部23aを形成しても良い。
【0044】
また、上述した実施の形態では、上側鍔21,41に重合した下側鍔23,53をその上側鍔21,41にして係止させる係止手段として、それぞれの鍔21,23,41,53の幅方向の中央に前後方向に所定の間隔を空けて取付けられた雄ホック22,56とそれに係止可能な雌ホック25,57を用いて説明したけれども、その取付位置は幅方向の中央に限定されるものではなく、例えば幅方向の両側に設けても良い。また、この係止手段はホックに限定されるものではなく、下側鍔23,53を上側鍔21,41に係止可能である限り、例えば面ファスナ等の他の係止手段であっても良い。
【0045】
また、上述した実施の形態では、サンバイザー型の複鍔帽子40における本体部43及び調整帯44において、具体的な数値を例示して説明したが、それらを有する装着部42が頭部に装着可能である限り、本体部43及び調整帯44はこの明細書に例示する数値に限定されるものではなく、この数値から逸脱するような本体部43及び調整帯44を有する装着部42であっても良い。
【0046】
また、上述した実施の形態では、サンバイザー型の複鍔帽子40において、プラスチック製のものを例示したけれども、これは、そのプラスチックを布により被覆したようなものであっても良く、布製であっても良い。
【0047】
更に、本発明の複鍔帽子10,40は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、装着部12,41の外面や上側及び下側鍔21,23,41,53の上面又は下面に様々な装飾や着色を施して需要者の購買意欲を刺激したり、宣伝広告のための情報(文字や絵柄)を印刷・刺繍等してやることもできる。
【符号の説明】
【0048】
10,40 複鍔帽子
12,42 装着部
21,41 上側鍔
22,56 雄ホック(係止手段)
23,53 下側鍔
25,57 雌ホック(係止手段)
26 ゴム紐(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に装着される装着部(12,42)と、
前記装着部(12,42)の少なくとも前方に設けられた上側鍔(21,41)と、
前記上側鍔(21,41)の下方に位置し前記上側鍔(21,41)と所定の間隔を空けて設けられた下側鍔(23,53)と
を備える複鍔帽子。
【請求項2】
下側鍔(23)が弾性体(26)を介して装着部(12)に設けられた請求項1記載の複鍔帽子。
【請求項3】
下側鍔(53)が装着部(42)に揺動可能に設けられた請求項1記載の複鍔帽子。
【請求項4】
下側鍔(23,53)が上側鍔(21,41)に重合可能に構成され、前記上側鍔(21,41)に重合した前記下側鍔(23,53)を前記上側鍔(21,41)に係止させる係止手段(22,25,56,57)を更に備えた請求項1ないし3いずれか1項に記載の複鍔帽子。
【請求項5】
下側鍔(41)は、幅方向の中央が上方に盛り上がる山形状に形成された請求項1ないし4いずれか1項に記載の複鍔帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−87381(P2013−87381A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228393(P2011−228393)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(511251445)