説明

視力回復訓練装置

【課題】 訓練の効率を向上させることができる視力回復訓練装置を提供する。
【解決手段】 視力訓練用画像を表示する表示部21と、訓練者5の目51を撮影するカメラ4と、カメラ4が撮影した画像から訓練者5の目51の向きを解析する解析部と、訓練者5へのメッセージを伝達するメッセージ伝達部とを備え、メッセージ伝達部は、解析部の解析結果から訓練者5が表示部21の視力訓練用画像を注視していないと判断された場合、訓練者5にメッセージを伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視力の低下は、目の調節筋(毛様体筋)の調節緊張や衰弱によって目の結像調節機能が低下することが一因と考えられ、この筋肉を訓練することによって、視力の回復を期待することができる。この方法は、毛様体筋を訓練によって活性化し、遠近調節機能を活発にすることで、視力の回復を図るものである。
【0003】
そこで、調節筋の働きを活発にすることにより視力回復効果を向上させようとする視力回復装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この視力回復装置は、マークが表示された注視板を往復移動させて、マークを使用者に対して近接・離間させるものである。この装置の使用者がこのマークを注視すると、目の焦点が近距離と遠距離の間を連続して移動するので、調節筋が効率よく訓練される。
【0004】
また、訓練者の眼球の向きが視標の動きに追随しているかどうか確認できる視力回復訓練装置も提案されている(例えば特許文献2参照)。この視力回復訓練装置は、視標を接眼光学系の光軸方向に対して略直角方向に移動させ、眼球が視標の移動に追従しているかどうかを検出して、訓練者の眼球が視標に追随できているかどうかを判定し、追従できている回数を訓練終了と同時に表示するものである。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2004/066900号パンフレット
【特許文献2】特開平8−257079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような視力回復装置においては、訓練者がマークを注視しなければならないが、子供などが訓練を行う場合には、マークを注視しつづけることが難しいという問題があった。
【0007】
また、上記の視力回復訓練装置では、視標に追随できているかどうかが訓練終了までわからないため、一旦最後まで訓練を行い、その結果追随できていなければ再度訓練を行わなければならず、効率がよくない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、訓練の効率を向上させることができる視力回復訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の視力回復訓練装置は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、視力訓練用画像を表示する表示部と、訓練者の目を撮影するカメラと、前記カメラが撮影した画像から前記訓練者の目の向きを解析する解析部と、前記訓練者へのメッセージを伝達するメッセージ伝達部と、を備え、前記メッセージ伝達部が、前記解析部の解析結果から前記訓練者が前記表示部を注視していないと判断された場合、前記訓練者にメッセージを伝達するものである。
【0010】
従来は、一通り訓練を終えても、表示部を注視していなかったために訓練効果が上がらず、再度訓練を行わなければならない場合があったが、上記構成によれば、訓練者は、訓練中に、表示部を注視していないことを認識できる為、確実に表示部を注視しながら訓練を行うことが可能になり、訓練の効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の視力回復訓練装置は、前記訓練者の目位置と前記表示部の位置との光学距離を変化させる移動制御部と、前記光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の目の網膜上に一定のサイズで投影されるように前記視力訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御部と、を備える。
【0012】
上記構成によれば、網膜上に結像する図形の大きさが一定となるので、調節筋を効率よく訓練できる。
【0013】
また、本発明の視力回復訓練装置は、前記カメラが、赤外線カメラであるものである。
【0014】
上記構成によれば、赤外線カメラは訓練者の瞳孔を検出する能力が高いため、訓練者の目の向きを正確に検出することが可能となる。
【0015】
また、本発明の視力回復訓練装置は、前記メッセージ伝達部が、音声により前記メッセージを伝達するものである。
【0016】
上記構成によれば、訓練を中断することなく、視力訓練用画像を注視するよう注意を促すことが可能となる。
【0017】
さらに、本発明の視力回復訓練装置は、前記メッセージ伝達部が、前記表示部に文字を表示することにより前記メッセージを伝達するものである。
【0018】
上記構成によれば、騒音などのある環境下でも注意を促すことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、訓練者は、訓練中に、表示部を注視していないことを認識できる為、確実に表示部を注視しながら訓練を行うことが可能になり、訓練の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す図である。この視力回復訓練装置は、筐体1内に、視力訓練用画像を表示する表示手段2と、表示手段2を移動させる移動手段3と、訓練者5の目51を撮影するカメラ4を備えている。
【0022】
筐体1には、訓練者5が表示手段2の表示部21の視力訓練用画像を注視するための接眼部11が設けられており、訓練者5の目51の視軸Aと同じ高さの位置に視力訓練用画像が位置し、視軸Aと視力訓練用画像が略垂直に交差するように、表示手段2が移動手段3のベルト31に固定されている。移動手段3は、ベルト31と、ベルト31を回転させるモータ32と、プーリー33から構成され、モータ32を駆動することにより、ベルト31を介して表示手段2が視軸Aの方向に移動する。
【0023】
表示手段2の表示部21は、例えば背面にバックライトを備えた液晶表示パネルからなり、後述する表示制御部からの制御信号に基づき、所定の形状及び大きさの視力訓練用画像を表示する。なお、表示部21としては、液晶表示パネルに限らず、CRTディスプレイ、基板上に有機EL素子を形成した有機EL表示パネル等、各種表示デバイスが利用可能である。有機EL表示パネルは、自ら発光するので照明光が不要となり、小形軽量化を図ることができる。
【0024】
また、カメラ4には赤外線カメラが用いられている。赤外線カメラは訓練者5の瞳孔を検出する能力が高いため、訓練者5の目51の向きを正確に検出することが可能となる。
【0025】
図2は上記の視力回復訓練装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御装置は、視力回復訓練装置全体の動作を制御する主制御部61と、訓練者5の目51の位置と表示部21の視力訓練用画像の位置との光学距離を変化させる移動制御部62と、その光学距離に応じて上記視力訓練用画像が訓練者5の目51の網膜上に一定のサイズで投影されるように視力訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御部63と、操作部65と、カメラ4が撮影した画像から訓練者5の目51の向きを解析する解析部65と、訓練者5へのメッセージを伝達するメッセージ伝達部66とを備え、メッセージ伝達部66は、音声合成部661とスピーカー662から構成されている。
【0026】
上記のように構成された視力回復訓練装置の筐体1は、接眼部11を除いて筐体1全体を覆って外光が入らないようになっており、訓練者5は接眼部11から内部を覗けるようになっている。そして、訓練中の訓練者5の目51は接眼部11を通してカメラ4により撮影され、その撮影された画像は解析部65に伝送される。解析部65はカメラ4からの画像を基に訓練者5の目51の向きを解析し、訓練者5が視力訓練用画像を注視しているかどうか判断する。メッセージ伝達部66は、解析部65の解析結果から訓練者5が視力訓練用画像を注視していないと判断された場合、訓練者5にメッセージを伝達する。
【0027】
上記構成によれば、訓練者5は、訓練中に表示部21の視力訓練用画像を注視していないことを認識でき、確実に視力訓練用画像を注視しながら訓練を行うことが可能になり、訓練の効率を向上させることができる。その際、メッセージ伝達部66は音声によりメッセージを伝達するので、訓練を中断することなく、視力訓練用画像を注視するよう注意を促すことが可能となる。
【0028】
上記の訓練者5の目51の位置と表示部21の視力訓練用画像との光学距離は、移動制御部62によって変更することができる。本実施の形態では、訓練者5の目51の位置と視力訓練用画像を表示する表示部21の位置との光学距離に応じて、視力訓練用画像が訓練者5の目51の網膜上に一定のサイズで投影されるように、視力訓練用画像の表示サイズを変化させている。また、訓練者5の目51の位置と表示部21の位置との光学距離に比例して、視力訓練用画像の表示サイズを変化させている。
【0029】
ここで、主制御部61は、操作部64の指示に基づき、移動制御部62及び表示制御部63を制御する。移動制御部62は、モータ32に対する駆動信号を出力して表示手段2の移動を制御する。その際、操作部64の設定に応じた情報を主制御部61から取得し、表示手段2の移動範囲及び移動速度を制御する。表示手段2の移動は、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。間欠的に行う場合は、視力訓練用画像は所定時間移動しないことになる。
【0030】
表示制御部63は、表示部21を駆動し、所定の形状及び大きさの訓練用画像を表示させる。その際、訓練者5の目51の位置と表示部21との間の光学距離に比例した大きさの訓練用画像を表示する。訓練者5の目51の位置と表示部21との間の光学距離に関する情報は、主制御部61から取得する。訓練者5の目51の位置と表示部21との間の光学距離に比例した大きさの訓練用画像を表示するためのデータは、その都度演算してもよいし、予め記憶したものを読み出して、表示部21に送ってもよい。
【0031】
操作部64は、訓練者5が操作して、視力回復訓練装置の動作態様等を設定するものであり、例えば表示手段2の移動範囲及び移動速度の設定、視力訓練用画像の種類の設定等を行う。カメラ4によって撮影された訓練中の訓練者5の目51の画像は解析部65に送られ、訓練者5が視力訓練用画像を注視しているかどうか判断される。訓練者5が視力訓練用画像を注視していない場合は、主制御部61に信号が送られる。主制御部61は解析部65からの信号を受け取ると、音声合成部661に信号を送る。音声合成部661は信号を受け取ると、訓練者5に視力訓練用画像を注視するようにメッセージを合成し、スピーカー662から音声で訓練者5に伝達する。
【0032】
このように、視力回復訓練を行う場合、訓練者5は筐体1の接眼部11から内部を覗き、表示部21に表示される視力訓練用画像を注視する。視力訓練用画像は、表示手段2の移動に応じてその表示位置が変化するため、訓練者5は表示位置が変化する視力訓練用画像を見ることになる。このとき、訓練者5が視力訓練用画像を注視していない場合は、視力訓練用画像を注視するようにメッセージがスピーカー662から流れるので、訓練者5は視力訓練用画像を注視するようになる。したがって、視力回復訓練を確実に実施することが可能となる。
【0033】
なお、上記の説明では視力訓練用画像を注視するように音声でメッセージを伝達するようにしたが、表示部21にメッセージを表示するようにしても構わない。この場合、騒音などのある環境下でも注意を促すことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、訓練者が、訓練中に、表示部を注視していないことを認識できる為、確実に表示部を注視しながら訓練を行うことが可能になり、訓練の効率を向上させることができる効果を有し、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0036】
1 筐体
2 表示手段
3 移動手段
4 カメラ
5 訓練者
11 接眼部
21 表示部
31 ベルト
32 モータ
33 プーリー
61 主制御部
62 移動制御部
63 表示制御部
64 操作部
65 解析部
66 メッセージ伝達部
661 音声合成部
662 スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、
視力訓練用画像を表示する表示部と、
訓練者の目を撮影するカメラと、
前記カメラが撮影した画像から前記訓練者の目の向きを解析する解析部と、
前記訓練者へのメッセージを伝達するメッセージ伝達部と、を備え、
前記メッセージ伝達部は、前記解析部の解析結果から前記訓練者が前記表示部を注視していないと判断された場合、前記訓練者にメッセージを伝達する視力回復訓練装置。
【請求項2】
請求項1記載の視力回復訓練装置であって、
前記訓練者の目位置と前記表示部の位置との光学距離を変化させる移動制御部と、
前記光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の目の網膜上に一定のサイズで投影されるように前記視力訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御部と、
を備える視力回復訓練装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の視力回復訓練装置であって、
前記カメラは、赤外線カメラである視力回復訓練装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の視力回復訓練装置であって、
前記メッセージ伝達部は、音声により前記メッセージを伝達する視力回復訓練装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか記載の視力回復訓練装置であって、
前記メッセージ伝達部は、前記表示部に文字を表示することにより前記メッセージを伝達する視力回復訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−21085(P2007−21085A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211434(P2005−211434)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(505044462)株式会社テクノマスター (22)