視力回復訓練装置
【課題】 訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる視力回復訓練装置を提供する。
【解決手段】 目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、視力訓練用画像を表示する表示手段3と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を一定速度で往復移動させる移動手段4と、前記訓練者の目位置と表示手段3の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段5と、を備え、移動手段4が、表示手段3を往復移動させる距離を変化させるものである。
【解決手段】 目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、視力訓練用画像を表示する表示手段3と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を一定速度で往復移動させる移動手段4と、前記訓練者の目位置と表示手段3の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段5と、を備え、移動手段4が、表示手段3を往復移動させる距離を変化させるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視力の低下は、目の調節筋(毛様体筋)の調節緊張や衰弱によって目の結像調節機能が低下することが一因と考えられ、この筋肉を訓練することによって、視力の回復を期待することができる。この方法は、毛様体筋を訓練によって活性化し、遠近調節機能を活発にすることで視力回復を図るものである。
【0003】
そこで、調節筋の働きを活発にすることにより視力回復効果を向上させようとする視力回復装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この視力回復装置は、マークが表示された注視板を往復移動させて、マークを訓練者に対して近接・離間させるものである。訓練者がこのマークを注視すると、目の焦点が近距離と遠距離の間を連続して移動するので、調節筋が効率よく訓練される。
【特許文献1】特開平6−339501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この視力回復装置は、注視板を連続的にある距離間を一定に往復運動させるため、訓練者は、訓練自体に慣れてしまう。訓練者は、単調な往復運動からの予測と、実際に見えるマークの大きさからの予測で、目の結像調節ができるようになり、移動するマークへの焦点合わせをする調節筋をあまり働かせなくても済むようになってしまう。つまり、訓練に慣れてしまうことで、訓練の効果が低減する場合がある。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる視力回復訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視力回復訓練装置は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、視力訓練用画像を表示する表示手段と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、前記表示手段を一定速度で往復移動させる移動手段と、前記訓練者の目位置と前記表示手段の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段と、を備え、前記移動手段が、前記表示手段を往復移動させる距離を変化させるものである。
【0007】
上記構成によれば、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる。
【0008】
また、本発明の視力回復訓練装置は、前記移動手段が、前記表示手段を往復移動させる速度を変化させるものである。また、本発明の視力回復訓練装置は、前記表示制御手段が、前記視力訓練用画像のコントラストを変化させて表示させるものである。さらに、本発明の視力回復訓練装置は、前記表示制御手段が、前記視力訓練用画像の表示を停止するものである。上記構成によれば、さらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の視力回復訓練装置によれば、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す斜視図である。この視力回復訓練装置は、筐体1の端面に設けられた接眼部2からの訓練者の視線方向に対して垂直に配置される表示手段3と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を適宜な速さで往復移動させる移動手段4と、表示手段3に対して、訓練者の目位置と同じ側、つまり接眼部2と同じ側に配置された表示制御手段5を備えており、移動手段4はベース部6に配置されている。
【0012】
筐体1は、接眼部2を除いて全体を覆って外光が入らないようになっており、訓練者は接眼部2から内部を覗けるようになっている。また、表示手段3は、表示制御手段5から投影された視力訓練用画像を表示するスクリーン状のものであり、訓練者の視軸に対して垂直に交差するように、ベース部6に配置された移動手段4に設置される。表示手段3は、例えば布や樹脂繊維により縫製されるものである。移動手段4は、訓練者の目位置とこの目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を一定速度で往復移動させるものであるが、訓練中に少なくとも一回は、表示手段3を往復移動させる距離を変化させる。
【0013】
図2は本実施の形態の視力回復訓練装置の内部構成を示す図であり、(a)及び(b)は断面図、(c)は表示手段3の正面図である。ベース部6には、移動手段4及び表示制御手段5を制御する制御装置7が配置されている。
【0014】
移動手段4は、プーリA41とプーリB42間に掛けられたベルト43と、プーリA41を駆動する移動駆動源44と、移動駆動源44を制御する制御装置7から構成され、訓練者の目位置と表示手段3の位置との光学距離を変化させる。移動駆動源44を駆動することにより、ベルト43上に設置された表示手段3を、訓練者の視軸に対して垂直に平行移動させることができる。
【0015】
表示制御手段5は、表示手段3に対して接眼部2と同じ側に配置されているが、訓練者の視軸上にあることが望ましい。表示制御手段5は、例えば光源51とレンズ52と視力訓練用画像スライドフィルム53と、表示手段3への焦点合わせをするレンズ52を移動させる焦点駆動源54から構成され、上記の光学距離に応じて、視力訓練用画像が訓練者の目の網膜上に一定のサイズで投影されるように視力訓練用画像の表示サイズを変化させる投影手段である。この構成により、網膜上に結像する図形の大きさが一定となるので、調節筋を効率よく訓練できる。光源51からの光は、視力訓練用画像のスライドフィルム53を通り、レンズ52の光学的特性により、表示手段3に接眼部2から表示手段3の距離に比例した大きさの視力訓練用画像を光学的に表示させる。なお、視力訓練用画像のスライドフィルム53は、視力訓練用画像のスリットの入った板状の部材でも構わない。また、レンズ52は、複数枚で構成されていてもよい。視力訓練用画像のスライドフィルム53とレンズ52の前後関係は、図示の例と逆でも構わない。
【0016】
図3は視力回復訓練装置の動作を制御する制御装置7の概略構成を示すブロック図である。同図の(a)は、表示制御手段5により表示手段3に視力訓練用画像を投影する本実施形態の視力回復訓練装置の制御系を示し、(b)は、他の実施形態としての、表示制御手段74により液晶パネル等の表示手段13に視力訓練用画像を表示させる視力回復訓練装置の制御系を示している。
【0017】
図3(a)の制御系は、操作部8と接続された主制御部71と、移動手段4の移動駆動源44を制御する移動駆動制御部72と、表示制御手段5の焦点駆動源54を制御する焦点駆動制御部73を備えている。
【0018】
主制御部71は、視力回復訓練装置全体の動作を制御するもので、操作部8の指示に基づき、移動駆動制御部72及び焦点駆動制御部73を制御する。移動駆動制御部72は、移動駆動源44に対して駆動信号を出力し、表示手段3の移動を制御する。その際、操作部8の設定に応じた情報を主制御部71から取得し、表示手段3の移動範囲及び移動速度を制御する。
【0019】
焦点駆動制御部73は、表示制御手段5の焦点駆動源54を駆動し、表示手段3に視力訓練用画像の焦点を合わせる。その際、訓練者の目位置と表示手段3との間の光学距離に比例してレンズ52を移動し、焦点合わせをする。訓練者の目の位置と表示手段3との間の光学距離に関する情報は、主制御部71から取得する。
【0020】
操作部8は、訓練者が操作して、視力回復訓練装置の動作態様等を設定するためのものであり、例えば、表示手段3の移動範囲及び移動速度の設定、視力訓練用画像の種類の設定等を行う。
【0021】
図3(b)の制御系は、操作部8と接続された主制御部71と、移動手段4の移動駆動源44を制御する移動駆動制御部72と、液晶パネル等の表示手段13への視力訓練用画像の表示制御を行う表示制御手段74を備えている。
【0022】
次に、上記のように構成された視力回復訓練装置の動作について説明する。図4及び図5は視力回復訓練装置の動作を示す図であり、それぞれ(a)及び(b)は断面図、(c)は表示手段3の正面図である。
【0023】
図1に示す視力回復訓練装置を用いて視力回復訓練を行う場合、訓練者は、筐体1の接眼部2から内部を覗き、表示手段3に表示される視力訓練用画像を注視する。視力訓練用画像は、移動手段4の移動に応じて、その表示位置、すなわち、訓練者の目位置から移動手段4までの光学距離が変化するため、訓練者は、表示位置が変化する視力訓練用画像を見ることになる。したがって、訓練者は、表示位置の変化に対応して、目の焦点を合わせるべく努力することにより、毛様体筋等の目の結像調節機能を稼動することになり、結像調節機能の向上が期待できる。なお、訓練者の目位置と、訓練者に最も近い位置に表示された視力訓練用画像との距離は、正常視力者の近点距離程度の距離とするのが好ましい。また、訓練者の目の位置と、訓練者に最も遠い位置に表示された視力訓練用画像との距離は、正常視力者の遠点距離程度の距離とするのが好ましい。
【0024】
図4は訓練者に最も近い位置に表示手段3を移動させた場合を示している。このとき、表示手段3に表示される視力訓練用画像は、表示制御手段5に近づいているため、図4の(c)のように小さく表示される。一方、図5は、訓練者に最も遠い位置に表示手段3を移動させた場合を示している。このとき、表示手段3に表示される視力訓練用画像は、表示制御手段5から遠い位置にあるため、図5の(c)のように大きく表示される。これらの表示される視力訓練用画像の大きさは、接眼部2と表示手段3との光学距離に比例している。このように、視力訓練用画像を訓練者の目位置からの光学距離に比例した大きさで、互いに相似の形状とすると、訓練者から見える視力訓練用画像の大きさ及び形状が実質的に変化しないので、目の結像調節機能の制御が簡単になる。
【0025】
訓練の際、主制御部71の制御により、表示手段3を往復移動させる距離を変化させる。すなわち、訓練中に少なくとも1回は不規則に異なる距離間で往復移動させる。従来のように、規則的で連続的な往復移動による訓練を続けると、表示手段3の移動の予測ができ、目の調節機能に慣れを生じさせて、移動するマークへの焦点合わせをする調節筋の働きを少なくて済むようにしてしまい、訓練効果が低下するおそれがある。しかし、本実施形態では、この往復移動の慣れに対して、移動の予測がつかないように、訓練中に少なくとも1回は不規則に異なる距離間で移動させることで、一時的に目の調節機能に刺激を与えて、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、不規則に異なる距離間とは、通常の往復する距離間とは異なる任意の距離間のことであり、予測がつきにくいことが望ましい。
【0026】
また、訓練中に少なくとも1回は、移動手段4により、表示手段3を往復移動させる速度を変化させてもよい。これにより、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、往復移動の速度の変化は、訓練の通常の速度から速くなっても遅くなってもよく、往復移動の一定速度から異なる一定速度になっても構わない。また、一定速度でなくてもよく、一時的に往復移動を停止するようにしても構わない。
【0027】
また、訓練中に少なくとも1回は、視力訓練用画像の表示コントラストを変化させて往復移動させてもよい。これによっても、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、視力訓練用画像の表示コントラストを変えるには、例えば、表示制御手段5の光源51の光量を変えればよい。また、視力訓練用画像の表示コントラストは、強くしても弱くしても元のコントラストから変化が生じるようであればよい。
【0028】
また、訓練中に少なくとも1回は、視力訓練用画像の表示を停止して往復移動させてもよい。これによっても、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、視力訓練用画像の表示の停止は、例えば、表示制御手段5の光源51を消せばよい。
さらに、近視、老視などの視力調節力の程度に会わせて訓練する事が有効である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる効果を有し、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の内部構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の制御装置の概略構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の動作を示す図
【図5】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の動作を示す図
【符号の説明】
【0031】
1 筐体
2 接眼部
3,13 表示手段
4 移動手段
5 表示制御手段
6 ベース部
7 制御装置
8 操作部
41 プーリA
42 プーリB
43 ベルト
44 移動駆動源
51 光源
52 レンズ
53 視力訓練用画像スライドフィルム
54 焦点駆動源
71 主制御部
72 移動駆動制御部
73 焦点駆動制御部
74 表示制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視力の低下は、目の調節筋(毛様体筋)の調節緊張や衰弱によって目の結像調節機能が低下することが一因と考えられ、この筋肉を訓練することによって、視力の回復を期待することができる。この方法は、毛様体筋を訓練によって活性化し、遠近調節機能を活発にすることで視力回復を図るものである。
【0003】
そこで、調節筋の働きを活発にすることにより視力回復効果を向上させようとする視力回復装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この視力回復装置は、マークが表示された注視板を往復移動させて、マークを訓練者に対して近接・離間させるものである。訓練者がこのマークを注視すると、目の焦点が近距離と遠距離の間を連続して移動するので、調節筋が効率よく訓練される。
【特許文献1】特開平6−339501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この視力回復装置は、注視板を連続的にある距離間を一定に往復運動させるため、訓練者は、訓練自体に慣れてしまう。訓練者は、単調な往復運動からの予測と、実際に見えるマークの大きさからの予測で、目の結像調節ができるようになり、移動するマークへの焦点合わせをする調節筋をあまり働かせなくても済むようになってしまう。つまり、訓練に慣れてしまうことで、訓練の効果が低減する場合がある。
【0005】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる視力回復訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の視力回復訓練装置は、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、視力訓練用画像を表示する表示手段と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、前記表示手段を一定速度で往復移動させる移動手段と、前記訓練者の目位置と前記表示手段の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段と、を備え、前記移動手段が、前記表示手段を往復移動させる距離を変化させるものである。
【0007】
上記構成によれば、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる。
【0008】
また、本発明の視力回復訓練装置は、前記移動手段が、前記表示手段を往復移動させる速度を変化させるものである。また、本発明の視力回復訓練装置は、前記表示制御手段が、前記視力訓練用画像のコントラストを変化させて表示させるものである。さらに、本発明の視力回復訓練装置は、前記表示制御手段が、前記視力訓練用画像の表示を停止するものである。上記構成によれば、さらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の視力回復訓練装置によれば、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す斜視図である。この視力回復訓練装置は、筐体1の端面に設けられた接眼部2からの訓練者の視線方向に対して垂直に配置される表示手段3と、訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を適宜な速さで往復移動させる移動手段4と、表示手段3に対して、訓練者の目位置と同じ側、つまり接眼部2と同じ側に配置された表示制御手段5を備えており、移動手段4はベース部6に配置されている。
【0012】
筐体1は、接眼部2を除いて全体を覆って外光が入らないようになっており、訓練者は接眼部2から内部を覗けるようになっている。また、表示手段3は、表示制御手段5から投影された視力訓練用画像を表示するスクリーン状のものであり、訓練者の視軸に対して垂直に交差するように、ベース部6に配置された移動手段4に設置される。表示手段3は、例えば布や樹脂繊維により縫製されるものである。移動手段4は、訓練者の目位置とこの目位置から所定の距離にある点との間で、表示手段3を一定速度で往復移動させるものであるが、訓練中に少なくとも一回は、表示手段3を往復移動させる距離を変化させる。
【0013】
図2は本実施の形態の視力回復訓練装置の内部構成を示す図であり、(a)及び(b)は断面図、(c)は表示手段3の正面図である。ベース部6には、移動手段4及び表示制御手段5を制御する制御装置7が配置されている。
【0014】
移動手段4は、プーリA41とプーリB42間に掛けられたベルト43と、プーリA41を駆動する移動駆動源44と、移動駆動源44を制御する制御装置7から構成され、訓練者の目位置と表示手段3の位置との光学距離を変化させる。移動駆動源44を駆動することにより、ベルト43上に設置された表示手段3を、訓練者の視軸に対して垂直に平行移動させることができる。
【0015】
表示制御手段5は、表示手段3に対して接眼部2と同じ側に配置されているが、訓練者の視軸上にあることが望ましい。表示制御手段5は、例えば光源51とレンズ52と視力訓練用画像スライドフィルム53と、表示手段3への焦点合わせをするレンズ52を移動させる焦点駆動源54から構成され、上記の光学距離に応じて、視力訓練用画像が訓練者の目の網膜上に一定のサイズで投影されるように視力訓練用画像の表示サイズを変化させる投影手段である。この構成により、網膜上に結像する図形の大きさが一定となるので、調節筋を効率よく訓練できる。光源51からの光は、視力訓練用画像のスライドフィルム53を通り、レンズ52の光学的特性により、表示手段3に接眼部2から表示手段3の距離に比例した大きさの視力訓練用画像を光学的に表示させる。なお、視力訓練用画像のスライドフィルム53は、視力訓練用画像のスリットの入った板状の部材でも構わない。また、レンズ52は、複数枚で構成されていてもよい。視力訓練用画像のスライドフィルム53とレンズ52の前後関係は、図示の例と逆でも構わない。
【0016】
図3は視力回復訓練装置の動作を制御する制御装置7の概略構成を示すブロック図である。同図の(a)は、表示制御手段5により表示手段3に視力訓練用画像を投影する本実施形態の視力回復訓練装置の制御系を示し、(b)は、他の実施形態としての、表示制御手段74により液晶パネル等の表示手段13に視力訓練用画像を表示させる視力回復訓練装置の制御系を示している。
【0017】
図3(a)の制御系は、操作部8と接続された主制御部71と、移動手段4の移動駆動源44を制御する移動駆動制御部72と、表示制御手段5の焦点駆動源54を制御する焦点駆動制御部73を備えている。
【0018】
主制御部71は、視力回復訓練装置全体の動作を制御するもので、操作部8の指示に基づき、移動駆動制御部72及び焦点駆動制御部73を制御する。移動駆動制御部72は、移動駆動源44に対して駆動信号を出力し、表示手段3の移動を制御する。その際、操作部8の設定に応じた情報を主制御部71から取得し、表示手段3の移動範囲及び移動速度を制御する。
【0019】
焦点駆動制御部73は、表示制御手段5の焦点駆動源54を駆動し、表示手段3に視力訓練用画像の焦点を合わせる。その際、訓練者の目位置と表示手段3との間の光学距離に比例してレンズ52を移動し、焦点合わせをする。訓練者の目の位置と表示手段3との間の光学距離に関する情報は、主制御部71から取得する。
【0020】
操作部8は、訓練者が操作して、視力回復訓練装置の動作態様等を設定するためのものであり、例えば、表示手段3の移動範囲及び移動速度の設定、視力訓練用画像の種類の設定等を行う。
【0021】
図3(b)の制御系は、操作部8と接続された主制御部71と、移動手段4の移動駆動源44を制御する移動駆動制御部72と、液晶パネル等の表示手段13への視力訓練用画像の表示制御を行う表示制御手段74を備えている。
【0022】
次に、上記のように構成された視力回復訓練装置の動作について説明する。図4及び図5は視力回復訓練装置の動作を示す図であり、それぞれ(a)及び(b)は断面図、(c)は表示手段3の正面図である。
【0023】
図1に示す視力回復訓練装置を用いて視力回復訓練を行う場合、訓練者は、筐体1の接眼部2から内部を覗き、表示手段3に表示される視力訓練用画像を注視する。視力訓練用画像は、移動手段4の移動に応じて、その表示位置、すなわち、訓練者の目位置から移動手段4までの光学距離が変化するため、訓練者は、表示位置が変化する視力訓練用画像を見ることになる。したがって、訓練者は、表示位置の変化に対応して、目の焦点を合わせるべく努力することにより、毛様体筋等の目の結像調節機能を稼動することになり、結像調節機能の向上が期待できる。なお、訓練者の目位置と、訓練者に最も近い位置に表示された視力訓練用画像との距離は、正常視力者の近点距離程度の距離とするのが好ましい。また、訓練者の目の位置と、訓練者に最も遠い位置に表示された視力訓練用画像との距離は、正常視力者の遠点距離程度の距離とするのが好ましい。
【0024】
図4は訓練者に最も近い位置に表示手段3を移動させた場合を示している。このとき、表示手段3に表示される視力訓練用画像は、表示制御手段5に近づいているため、図4の(c)のように小さく表示される。一方、図5は、訓練者に最も遠い位置に表示手段3を移動させた場合を示している。このとき、表示手段3に表示される視力訓練用画像は、表示制御手段5から遠い位置にあるため、図5の(c)のように大きく表示される。これらの表示される視力訓練用画像の大きさは、接眼部2と表示手段3との光学距離に比例している。このように、視力訓練用画像を訓練者の目位置からの光学距離に比例した大きさで、互いに相似の形状とすると、訓練者から見える視力訓練用画像の大きさ及び形状が実質的に変化しないので、目の結像調節機能の制御が簡単になる。
【0025】
訓練の際、主制御部71の制御により、表示手段3を往復移動させる距離を変化させる。すなわち、訓練中に少なくとも1回は不規則に異なる距離間で往復移動させる。従来のように、規則的で連続的な往復移動による訓練を続けると、表示手段3の移動の予測ができ、目の調節機能に慣れを生じさせて、移動するマークへの焦点合わせをする調節筋の働きを少なくて済むようにしてしまい、訓練効果が低下するおそれがある。しかし、本実施形態では、この往復移動の慣れに対して、移動の予測がつかないように、訓練中に少なくとも1回は不規則に異なる距離間で移動させることで、一時的に目の調節機能に刺激を与えて、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、不規則に異なる距離間とは、通常の往復する距離間とは異なる任意の距離間のことであり、予測がつきにくいことが望ましい。
【0026】
また、訓練中に少なくとも1回は、移動手段4により、表示手段3を往復移動させる速度を変化させてもよい。これにより、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、往復移動の速度の変化は、訓練の通常の速度から速くなっても遅くなってもよく、往復移動の一定速度から異なる一定速度になっても構わない。また、一定速度でなくてもよく、一時的に往復移動を停止するようにしても構わない。
【0027】
また、訓練中に少なくとも1回は、視力訓練用画像の表示コントラストを変化させて往復移動させてもよい。これによっても、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、視力訓練用画像の表示コントラストを変えるには、例えば、表示制御手段5の光源51の光量を変えればよい。また、視力訓練用画像の表示コントラストは、強くしても弱くしても元のコントラストから変化が生じるようであればよい。
【0028】
また、訓練中に少なくとも1回は、視力訓練用画像の表示を停止して往復移動させてもよい。これによっても、一時的にさらに多くの刺激を与えることができ、訓練に慣れてくることを低減することができる。なお、視力訓練用画像の表示の停止は、例えば、表示制御手段5の光源51を消せばよい。
さらに、近視、老視などの視力調節力の程度に会わせて訓練する事が有効である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、表示手段が往復移動する距離を変化させることで一時的に目の調節機能に刺激を与えることにより、訓練者は、予測による視力訓練用画像への焦点合わせができなくなる為、訓練者の慣れによる調節筋の訓練効果の低下を防止することができる効果を有し、目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成を示す斜視図
【図2】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の内部構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の制御装置の概略構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の動作を示す図
【図5】本発明の実施の形態の視力回復訓練装置の動作を示す図
【符号の説明】
【0031】
1 筐体
2 接眼部
3,13 表示手段
4 移動手段
5 表示制御手段
6 ベース部
7 制御装置
8 操作部
41 プーリA
42 プーリB
43 ベルト
44 移動駆動源
51 光源
52 レンズ
53 視力訓練用画像スライドフィルム
54 焦点駆動源
71 主制御部
72 移動駆動制御部
73 焦点駆動制御部
74 表示制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、
視力訓練用画像を表示する表示手段と、
訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、前記表示手段を一定速度で往復移動させる移動手段と、
前記訓練者の目位置と前記表示手段の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段と、を備え、
前記移動手段は、前記表示手段を往復移動させる距離を変化させる視力回復訓練装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記表示手段を往復移動させる速度を変化させる請求項1記載の視力回復訓練装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記視力訓練用画像のコントラストを変化させて表示させる請求項1記載の視力回復訓練装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記視力訓練用画像の表示を停止する請求項1記載の視力回復訓練装置。
【請求項1】
目の結像調節機能の訓練を行う視力回復訓練装置であって、
視力訓練用画像を表示する表示手段と、
訓練者の目位置と前記訓練者の目位置から所定の距離にある点との間で、前記表示手段を一定速度で往復移動させる移動手段と、
前記訓練者の目位置と前記表示手段の位置との光学距離に応じて、前記視力訓練用画像が前記訓練者の網膜上に、一定のサイズで投影されるように前記訓練用画像の表示サイズを変化させる表示制御手段と、を備え、
前記移動手段は、前記表示手段を往復移動させる距離を変化させる視力回復訓練装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記表示手段を往復移動させる速度を変化させる請求項1記載の視力回復訓練装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記視力訓練用画像のコントラストを変化させて表示させる請求項1記載の視力回復訓練装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記視力訓練用画像の表示を停止する請求項1記載の視力回復訓練装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2007−29659(P2007−29659A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221403(P2005−221403)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(505044462)株式会社テクノマスター (22)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【出願人】(505044462)株式会社テクノマスター (22)
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