説明

視力回復訓練装置

【課題】訓練者が訓練用画像のみに集中できる視力回復訓練装置を提供すること。
【解決手段】目の結像調整機能の訓練を行うための視力回復訓練装置であって、訓練者の目が位置する接眼部と、視力訓練用画像を表示する表示部と、前記接眼部と前記表示部との間の光軸上に配置され、前記表示部から出た前記視力訓練用画像の画像光を反射する複数の反射部と、前記複数の反射部のうち、少なくとも一つの反射部を前記光軸上で移動させる移動部と、を備え、前記複数の反射部の各反射面のサイズは、各反射部の位置が前記接眼部から離れるに従って大きい視力回復訓練装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の結像調整機能の訓練を行うための視力回復訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
視力の低下は、目の調節筋(毛様体筋)の調節緊張や衰弱によって目の結像調節機能が低下することが一因と考えられる。しかし、目の結像調節機能を有する筋肉を訓練することによって、視力の回復を期待することができる。視力の回復を図る視力回復訓練方法のひとつとして、毛様体筋を訓練によって活性化し、目の結像調節機能のひとつである遠近調節機能を活発にする方法がある。
【0003】
上記視力回復訓練方法を利用して、視力の改善、特に仮性近視及び老視の改善を行うための視力改善装置が提案されている。具体的には、接眼部から目視でき、適宜な図形を表示する訓練用画像表示部と、接眼部からそれぞれ所定の距離にある遠点と近点との間を、訓練用画像を適宜な速さで移動させる移動手段と、訓練用画像と接眼部との間の距離に比例して、表示される訓練用画像の大きさを変化させる表示手段とを備える視力改善装置が提案されている。
【0004】
また、上記視力回復訓練装置の小型化のための構成が特許文献1に開示されている。図10は、特許文献1に開示されている視力回復訓練装置500の概略構成を示す図である。図10に示すように、視力回復訓練装置500は、筐体1と、接眼部2と、表示部3と、固定反射部50と、移動反射部505と、搬送部6と、制御部8とを有する。
【0005】
筐体1は、防塵や遮音性のために閉塞した空間を備える。筐体1の内部には、表示部3と、固定反射部50と、移動反射部505と、搬送部6と、モータ7と、制御部8が設けられている。
【0006】
接眼部2は、筐体1の側面に形成され、透明板14を有する。訓練者は、透明板14を介して視力回復訓練装置500の内部を覗き込むようにして、接眼部2に自分の目を位置付ける。表示部3は、筐体1内に設けられた壁22に固定され、視力訓練用画像40を表示する。表示部3は、例えば液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電気的表示デバイスにより構成される。表示部3に表示された図形や文字の種類、大きさ、色、及び背景色などは、後述する制御部8の表示制御部によって所望の状態に容易に変更できる。また、表示部3には動画も表示できる。
【0007】
移動反射部505は、表示部3からの画像光を反射する第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571から構成される。移動反射部505は、搬送部6に搭載された台座10に固定され、搬送部6によって図10の上下方向に移動する。移動反射部505が移動することで、図10の点線で示された接眼部2と表示部3とを結ぶ光軸9A、9B、9C、9Dのうち、固定反射部50と表示部3との光学距離(光路長、光軸9A、9B、9Dの距離の和)が変化する。
【0008】
搬送部6は、プーリー11とベルト等で構成され、移動反射部505を固定した台座10を搭載する。プーリー11はモータ7で駆動され、台座10に固定された移動反射部505を移動させる。この構成により、搬送部6は、モータ7等で駆動制御され、訓練者の目24の位置する接眼部2に近接した固定反射部50と表示部3との間の光学距離を変化させる。
【0009】
制御部8は、搬送部6によって変化する光学距離に応じ、表示部3に表示された視力訓練用画像40の表示サイズを変化させる表示制御部を構成する。具体的には、移動反射部505が接眼部2へ近づくにつれ、表示部3に表示された視力訓練用画像40が徐々に小さくなるように、モータ7と表示部3とを制御する。一方、移動反射部505が接眼部から遠ざかるにつれ、表示部3に表示された視力訓練用画像40が徐々に大きくなるように、モータ7と表示部3とを制御する。このような制御により、訓練者にとって見かけ上の画像の大きさを一定とすることができる。
【0010】
また、光学距離にかかわらず、移動反射部505の移動方向(図10の上下方向)に対して、光軸9B及び光軸9Aが互いに平行になるように、第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571は、所定の角度で傾いて移動反射部505に設けられている。
【0011】
ここで、視力回復訓練装置500の視力訓練用画像40の画像光が、装置内をどのように進行し、訓練者の目に入るかを説明する。
まず、表示部3に表示された視力訓練用画像40の画像光は、光軸9Aを通って第二の平面鏡571の反射面に入射し、第一の平面鏡561に向けて反射される。第二の平面鏡571で反射された画像光は、光軸9Dに沿って第一の平面鏡561の反射面に入射し、固定反射部50に向けて反射する。第一の平面鏡561で反射した画像光は、光軸9Bに沿って、固定反射部50の反射面へ入射し、接眼部2へ向けて反射する。固定反射部50で反射した画像光は、光軸9Cに沿って進行し、接眼部2で訓練者の目に入ることになる。
【0012】
ここで、固定反射部50と、第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571との大きさの関係を、図11を用いて説明する。図11は、視力回復訓練装置500における、固定反射部50の投影面のサイズと、第一の平面鏡561の反射面のサイズ及び第二の平面鏡571の反射面のサイズの関係を示す図である。
【0013】
図11に示すように、光路長の最も長くなる遠点で、目24を始点として、目24から光軸9Cの長さ分離れた位置にある固定反射部50の外縁の頂点までを結ぶ各接線81、82、83、84を設定する。そして、各接線81、82、83、84の延長線上で形成される固定反射部50の投影面を利用し、固定反射部50で第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571がどのように写るかを説明する。
【0014】
まず、固定反射部50から光軸9Bの長さ分離れた位置では、固定反射部50の大きさは、図11の2点鎖線で囲まれた固定反射部50の投影面51の大きさとなる。さらに、光軸9Bの長さに加え軸9Dの長さ分だけ固定反射部50から離れた位置では、固定反射部50の大きさは、図11の2点鎖線で囲まれた固定反射部50の投影面52の大きさとなる。
【0015】
ここで、視力回復訓練装置500では、図11に示されるように、第一の平面鏡561と第二の平面鏡571の各反射面のサイズは、それぞれ固定反射部50の投影面51のサイズ及び投影面52のサイズより小さい。
【0016】
図12は、図10に示す視力回復訓練装置の固定反射部50に写る、第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571、並びに表示部3に表示された訓練用画像40の見え方を示す図である。
図11に示すように、第一の平面鏡561と第二の平面鏡571の各反射面のサイズは、それぞれ固定反射部50の投影面51のサイズ及び投影面52のサイズより小さい。したがって、図12に示すように固定反射部50では、固定反射部50の中に第一の平面鏡561が写る。そして、第一の平面鏡561の内側に第二の平面鏡571が写る。さらに、第二の平面鏡571の内側に、表示部3の訓練用画像40が写る。
【0017】
訓練者が、接眼部2を介して、固定反射部50を見た場合、固定反射部50の中には、第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571、並びに表示部3に表示された訓練用画像40の3つが見える。
ここで、第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571が設けられた移動反射部505がある距離を移動すると、移動反射部505の移動量に対して、上述した光路長(光軸9A、9B、9Dの距離の和)の変化量は2倍となる。したがって、固定反射部505に写る第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571の移動速度と、固定反射部505に写る訓練用画像40の移動速度とは、互いに異なったものとして、訓練者の目に写る。
【0018】
上述のように、図10に示す視力回復訓練装置500では、固定反射部50で所定の速度で移動するように写る訓練用画像40だけでなく、固定反射部50で訓練用画像40の移動速度とは異なる移動速度で動くように写る第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571が訓練者の視野に入る。したがって、訓練者は、固定反射部50に写る訓練用画像40の移動速度にのみ集中することが困難となる。つまり、訓練者の集中力が維持しにくく、訓練者に対する視力回復訓練の効果が減少することになる。
【0019】
【特許文献1】特開2007−014394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のような複数枚の平面鏡を使って光路を屈折させた視力回復訓練装置500で、訓練者が訓練用画像40を見た場合、図12に示すように、固定反射部50には第一の平面鏡60及び第二の平面鏡70、並びに訓練用画像40の3つが写る。また、移動反射部505の移動量に対して、光路長の変化量は2倍となる。したがって、固定反射部50に写る訓練用画像40の移動速度に対して、固定反射部50に写る第一の平面鏡561及び第二の平面鏡571の移動速度は異なったものとして、訓練者には見える。
【0021】
一般に、視力回復訓練においては、訓練用画像が遠点と近点を移動する際の速度が訓練効果を出すひとつの因子である。このため、訓練者の視野に移動速度が異なる2種類の被写体が見えると、訓練者は、表示部の訓練用画像の速度にのみ集中することが困難となる。結果、視力回復の訓練の効果が低下する可能性がある。
【0022】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、訓練者が訓練用画像のみに集中できる視力回復訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明における、目の結像調整機能の訓練を行うための視力回復訓練装置は、訓練者の目が位置する接眼部と、視力訓練用画像を表示する表示部と、前記接眼部と前記表示部との間の光軸上に配置され、前記表示部から出た前記視力訓練用画像の画像光を反射する複数の反射部と、前記複数の反射部のうち、少なくとも一つの反射部を前記光軸上で移動させる移動部と、を備え、前記複数の反射部の各反射面のサイズは、各反射部の位置が前記接眼部から離れるに従って大きい。
【0024】
上記視力回復訓練装置であって、前記複数の反射部のうち、前記接眼部に最も近い第一の反射部以外の反射部の反射面のサイズは、前記接眼部を始点として、当該始点から前記第一の反射部の外縁を結ぶ接線の延長線上で定義される前記第一の反射部の投影面の大きさ以上である。
【0025】
上記視力回復訓練装置であって、前記訓練者が前記接眼部を通して、前記接眼部に最も近い第一の反射部を目視した時、前記複数の反射部のうち、前記第一の反射部以外の反射部の外縁の少なくとも一部は、前記訓練用画像と重ならない位置で、前記第一の反射部に写る。
【0026】
上記視力回復訓練装置であって、前記複数の反射部のうち、前記接眼部に最も近い第一の反射部以外の反射部の一部の反射面のサイズは、前記接眼部から前記第一の反射部の外縁を結ぶ接線の延長線上での前記第一の反射部の投影面の大きさよりも小さい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の視力回復訓練装置によれば、所定の速度で移動している表示部のみが見え、訓練用画像に集中できることから、訓練の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の視力回復訓練装置の概略構成図である。
視力回復訓練装置100は、筐体101と、接眼部102と、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部105と、搬送部106と、制御部108とを有する。
【0030】
筐体101は、防塵や遮音性のために閉塞した空間を備える。筐体101の内部には、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部105と、搬送部106と、モータ107と、制御部108とが設けられている。
【0031】
接眼部102は、筐体101の側面に形成され、透明板114を有する。表示部103は、筐体1内に設けられた壁122に固定され、視力訓練用画像140を表示する。表示部103は、例えば液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電気的表示デバイスにより構成される。表示部103に表示された図形や文字の種類、大きさ、色、及び背景色などは、後述する制御部108の表示制御部によって所望の状態に容易に変更できる。また、表示部103には動画も表示できる。
【0032】
移動反射部105は、表示部103からの画像光を反射する第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171から構成される。移動反射部105は、搬送部106に搭載された台座110に固定され、搬送部106によって図1の上下方向に移動する。移動反射部105が移動することで、図1の点線で示された接眼部102と表示部103とを結ぶ光軸9A、9B、9C、9Dのうち、固定反射部50と表示部3との光学距離(光路長、光軸9A、9B、9Dの距離の和)が変化する。
【0033】
また、光学距離にかかわらず、移動反射部105の移動方向(図1の上下方向)に対して、光軸9B及び光軸9Aが互いに平行になるように、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171は、所定の角度で傾いて、移動反射部105に設けられている。
【0034】
搬送部106は、プーリー111とベルト等で構成され、移動反射部105を固定した台座110を搭載する。プーリー111はモータ107で駆動され、台座110に固定された移動反射部105を移動させる。この構成により、搬送部106は、モータ107等で駆動制御され、訓練者の目124の位置する接眼部102に近接した固定反射部150と表示部103との間の光学距離を変化させる。
【0035】
制御部108は、搬送部106によって変化する光学距離に応じ、表示部103に表示された視力訓練用画像140の表示サイズを変化させる。具体的には、移動反射部105が接眼部102へ近づくにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に小さくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。一方、移動反射部105が接眼部102から遠ざかるにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に大きくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。このような制御により、訓練者にとって見かけ上の画像の大きさを一定とすることができる。
【0036】
ここで、視力回復訓練装置100の視力訓練用画像140の画像光が、装置内をどのように進行し、訓練者の目に入るかを説明する。
表示部103に表示された視力訓練用画像140の画像光は、光軸9Aを通って第二の平面鏡171の反射面に入射し、第一の平面鏡161に向けて反射される。第二の平面鏡171の反射面で反射された画像光は、光軸9Dに沿って第一の平面鏡161に入射し、固定反射部150に向けて反射する。第一の平面鏡161の反射面で反射した画像光は、光軸9Bに沿って、固定反射部150へ入射し、接眼部102へ向けて反射する。固定反射部150の反射面で反射した画像光は、光軸9Cに沿って進行し、接眼部102で訓練者の目に入ることになる。
【0037】
以下、本発明の第1の実施の形態で、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171の反射面のサイズがどのように決まるかを説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態の固定反射部150の投影面のサイズと、第一の平面鏡161の反射面のサイズ及び第二の平面鏡171の反射面のサイズの関係を示す図である。
【0038】
光路長の最も長くなる遠点において、目124を始点として、目124から光軸9Cの長さ分離れた位置にある固定反射部150の外縁の頂点までを結ぶ各接線81、82、83、84を設定する。各接線81、82、83、84の延長線上で形成される固定反射部50の投影面を利用し、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171が、固定反射部150にどのように写るかを説明する。
【0039】
まず、固定反射部50から光軸9Bの長さ分離れた位置で、固定反射部150の大きさは、図2の実線で囲まれた投影面51のサイズとなる。さらに、光軸9Bの長さに加えて、光軸9Dの長さ分だけ固定反射部150から離れた位置で、固定反射部150の大きさは、図2の実線で囲まれた投影面52の大きさとなる。
【0040】
ここで、本発明の第1の実施の形態では、第一の平面鏡161の反射面のサイズは、図2の実線で囲まれた投影面51のサイズと同じである。また、第二の平面鏡171の反射面のサイズは、図2の実線で囲まれた投影面52のサイズと同じである。
【0041】
次に、図3を用いて、第1の実施の形態で、固定反射部150に写る視力訓練用画像140と、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171の見え方を説明する。
上述のように、表示部103に表示された視力訓練用画像140の画像光は、光軸上にある第二の平面鏡171及び第一の平面鏡161の各反射面で反射された後、固定反射部150に入射する。したがって、表示部103に表示された視力訓練用画像140に加え、第一の平面鏡161の像と第二の平面鏡171の像とが固定反射部150に写るはずである。しかし、第1の実施の形態では、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171の各々の反射面のサイズは、図2に示す固定反射部150の投影面51及び投影面52のサイズとそれぞれ同じであるため、固定反射部150には、図3に示すように、第一の平面鏡161の像と第二の平面鏡171の像は写らず、表示部103の訓練用画像140とが写ることになる。
【0042】
上述のように、第1の実施の形態では、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171が訓練者の視野に入らない。訓練者の視野には、所定の速度で移動するように固定反射部150に写る表示部103の訓練用画像40が入る。したがって、図10に示す視力回復訓練装置とは異なり、第一の平面鏡161及び第二の平面鏡171は固定反射部150に写らず、表示部103の訓練用画像140が所定の速度で動いているように固定反射部150に写る。したがって、訓練者は、表示部103の訓練用画像140の速度にのみ集中することが容易となる。訓練者は、視力回復の訓練に対して集中力を維持しやすくなる。結果、第1の実施の形態の視力回復訓練装置を使用した視力回復訓練の効果が増すことになる。
(第2の実施の形態)
【0043】
図4は、本発明の第2の実施の形態の視力回復訓練装置200の概略構成図である。第2の実施の形態の視力回復訓練装置200が、第1の実施の形態の視力回復訓練装置100と異なる点は、移動反射部205の第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271である。この点以外は第1の実施形態と同様であり、図4〜6において、図1と共通する構成要素には同じ参照符号が付されている。
【0044】
視力回復訓練装置200は、筐体101と、接眼部102と、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部205と、搬送部106と、制御部108とを有する。
【0045】
筐体101は、防塵や遮音性のために閉塞した空間を備える。筐体101の内部には、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部205と、搬送部106と、モータ107と、制御部108とが設けられている。
【0046】
接眼部102は、筐体101の側面に形成され、透明板114を有する。表示部103は、筐体1内に設けられた壁122に固定され、視力訓練用画像140を表示する。表示部103は、例えば液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電気的表示デバイスにより構成される。表示部103に表示された図形や文字の種類、大きさ、色、及び背景色などは、後述する制御部108の表示制御部によって所望の状態に容易に変更できる。また、表示部103には動画も表示できる。
【0047】
移動反射部205は、表示部103からの画像光を反射する第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271から構成される。移動反射部205は、搬送部106に搭載された台座110に固定され、搬送部106によって図4の上下方向に移動する。移動反射部205が移動することで、図4の点線で示された接眼部102と表示部103とを結ぶ光軸9A、9B、9C、9Dのうち、固定反射部150と表示部103との光学距離(光路長、光軸9A、9B、9Dの距離の和)が変化する。
【0048】
また、光学距離にかかわらず、移動反射部205の移動方向(図4の上下方向)に対して、光軸9B及び光軸9Aが互いに平行になるように、第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271は、所定の角度で傾いて、移動反射部205に設けられている。
【0049】
搬送部106は、プーリー111とベルト等で構成され、移動反射部205を固定した台座110を搭載する。プーリー111はモータ107で駆動され、台座110に固定された移動反射部205を移動させる。この構成により、搬送部106は、モータ107等で駆動制御され、訓練者の目124の位置する接眼部102に近接した固定反射部150と表示部103との間の光学距離を変化させる。
【0050】
制御部108は、搬送部106によって変化する光学距離に応じ、表示部103に表示された視力訓練用画像140の表示サイズを変化させる。具体的には、移動反射部105が接眼部102へ近づくにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に小さくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。一方、移動反射部205が接眼部102から遠ざかるにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に大きくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。このような制御により、訓練者にとって見かけ上の画像の大きさを一定とすることができる。
【0051】
視力回復訓練装置200の視力訓練用画像140の画像光が、装置内をどのように進行し、訓練者の目に入るかを説明する。
表示部103に表示された視力訓練用画像140の画像光は、光軸9Aを通って第二の平面鏡271の反射面に入射し、第一の平面鏡261に向けて反射される。第二の平面鏡271の反射面で反射された画像光は、光軸9Dに沿って第一の平面鏡261に入射し、固定反射部150に向けて反射する。第一の平面鏡261の反射面で反射した画像光は、光軸9Bに沿って、固定反射部150へ入射し、接眼部102へ向けて反射する。固定反射部150の反射面で反射した画像光は、光軸9Cに沿って進行し、接眼部102で訓練者の目に入ることになる。
【0052】
以下、本発明の第2の実施の形態で、第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271の大きさがどのように決まるかを説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態における、固定反射部150の投影面のサイズと、第一の平面鏡261の反射面のサイズ及び第二の平面鏡271の反射面のサイズの関係を示す図である。
【0053】
光路長の最も長くなる遠点において、目124を始点として、目124から光軸9Cの長さ分離れた位置にある固定反射部150の外縁の各頂点までを結ぶ各接線81、82、83、84を設定する。そして、各接線81、82、83、84の延長線上で形成される固定反射部150の投影面を利用し、第一の平面鏡261のサイズがどのように決まるかを説明する。
【0054】
まず、固定反射部150から光軸9Bの長さ分離れた位置では、固定反射部150の大きさは、図5の2点鎖線で囲まれた固定反射部150の投影面51の大きさとなる。ここで、図5に示すように、本発明の実施の形態2では、第一の平面鏡261の反射面の大きさ(サイズ)を、図5の2点鎖線で囲まれた固定反射部150の投影面51のサイズよりも大きくする。
【0055】
次に、光路長の最も長くなる遠点において、訓練者の目124を始点として、目124から光軸9C及び光軸9Bの長さ分離れた位置にある第一の平面鏡261の外縁の各頂点までを結ぶ各接線85、86、87、88を設定する。そして、各接線85、86、87、88の延長線上で形成される第一の平面鏡261の投影面を利用し、第二の平面鏡271のサイズがどのように決まるかを説明する。
光軸9Dの長さ分だけ第一の平面鏡261から離れた位置では、第一の平面鏡261の反射面のサイズは、図5の1点鎖線で囲まれた投影面53の大きさとなる。ここで、図5に示すように、本発明の実施の形態2では、第二の平面鏡271の反射面のサイズを、図5の1点鎖線で囲まれた第一の平面鏡261の投影面53のサイズよりも大きくする。
【0056】
上述のように、第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271の反射面のサイズを決めると、第1の実施の形態同様、図6に示すように、固定反射部150には、第一の平面鏡261の像と第二の平面鏡271の像は写らず、表示部103の訓練用画像140が写ることになる。
【0057】
上述のように、第2の実施の形態では、訓練者の視野に、異なる2種類の移動速度を有する被写体が写らない。つまり、表示部103の訓練用画像140が所定の速度で動いているように固定反射部150に写っても、第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271は固定反射部50に写らない。したがって、訓練者は、固定反射部150に写る訓練用画像140の速度にのみ集中することが容易となる。訓練者は、視力回復の訓練に対して集中力を維持しやすくなる。結果、第2の実施の形態の視力回復訓練装置を使用した視力回復訓練の効果が増すことになる。
【0058】
さらに、第2の実施の形態では、第一の平面鏡261及び第二の平面鏡271の各々の反射面のサイズを各投影面51、53のサイズよりも大きくすればよいだけなので、平面鏡の切り出しや光学的な位置決めの観点から生産が容易である。
【0059】
(第3の実施の形態)
第1、2の実施の形態では、固定反射部150の中に各平面鏡が写らないようにした。しかし、第3の実施の形態では、移動反射部305の第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371の外縁の一部が、固定反射部150の中で視力回復の訓練の妨げとならない位置に写る。この構成により、第1の実施の形態と同様の効果を得る。
【0060】
図7に、第3の実施の形態の視力回復訓練装置300の概略構成を示す。
第3の実施の形態の視力回復訓練装置300が、第1の実施の形態の視力回復訓練装置100と異なる点は、移動反射部305の第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371である。この点以外は第1の実施形態と同様であり、図7〜9において、図1と共通する構成要素には同じ参照符号が付されている。
【0061】
視力回復訓練装置300は、筐体101と、接眼部102と、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部305と、搬送部106と、制御部108とを有する。
【0062】
筐体101は、防塵や遮音性のために閉塞した空間を備える。筐体101の内部には、表示部103と、固定反射部150と、移動反射部305と、搬送部106と、モータ107と、制御部108とが設けられている。
【0063】
接眼部102は、筐体101の側面に形成され、透明板114を有する。表示部103は、筐体101内に設けられた壁122に固定され、視力訓練用画像140を表示する。表示部103は、例えば液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ等の電気的表示デバイスにより構成される。表示部103に表示された図形や文字の種類、大きさ、色、及び背景色などは、後述する制御部108の表示制御部によって所望の状態に容易に変更できる。また、表示部103には動画も表示できる。
【0064】
移動反射部305は、表示部103からの画像光を反射する第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371から構成される。移動反射部305は、搬送部106に搭載された台座110に固定され、搬送部106によって図7の上下方向に移動する。移動反射部305が移動することで、図7の点線で示された接眼部102と表示部103とを結ぶ光軸9A、9B、9C、9Dのうち、固定反射部150と表示部103との光学距離(光路長、光軸9A、9B、9Dの距離の和)が変化する。
【0065】
また、光学距離にかかわらず、移動反射部305の移動方向(図7の上下方向)に対して、光軸9B及び光軸9Aが互いに平行になるように、第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371は、所定の角度で傾いて、移動反射部305に設けられている。
【0066】
搬送部106は、プーリー111とベルト等で構成され、移動反射部305を固定した台座110を搭載する。プーリー111はモータ107で駆動され、台座110に固定された移動反射部305を移動させる。この構成により、搬送部106は、モータ107等で駆動制御され、訓練者の目124の位置する接眼部102に近接した固定反射部150と表示部103との間の光学距離を変化させる。
【0067】
制御部108は、搬送部106によって変化する光学距離に応じ、表示部103に表示された視力訓練用画像140の表示サイズを変化させる。具体的には、移動反射部305が接眼部102へ近づくにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に小さくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。一方、移動反射部305が接眼部102から遠ざかるにつれ、表示部103に表示された視力訓練用画像140が徐々に大きくなるように、モータ107と表示部103とを制御する。このような制御により、訓練者にとって見かけ上の画像の大きさを一定とすることができる。
【0068】
ここで、視力回復訓練装置300の視力訓練用画像140の画像光が、装置内をどのように進行し、訓練者の目に入るかを説明する。
表示部103に表示された視力訓練用画像140の画像光は、光軸9Aを通って第二の平面鏡371の反射面に入射し、第一の平面鏡361の反射面に向けて反射される。第二の平面鏡371の反射面で反射された画像光は、光軸9Dに沿って第一の平面鏡の反射面361に入射し、固定反射部150に向けて反射する。第一の平面鏡361の反射面で反射した画像光は、光軸9Bに沿って、固定反射部150へ入射し、接眼部102へ向けて反射する。固定反射部150の反射面で反射した画像光は、光軸9Cに沿って進行し、接眼部102で訓練者の目に入ることになる。
【0069】
図8は、本発明の第3の実施の形態における、固定反射部150の投影面のサイズと第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371のサイズの関係を示す図である。
【0070】
図8に示すように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態同様、光路長の最も長くなる遠点において、目124を始点として、目124から光軸9Cの長さ分離れた位置にある固定反射部150の外縁の各頂点までを結ぶ各接線81、82、83、84を設定する。
【0071】
以下、各接線81、82、83、84の延長線上で形成される固定反射部150の投影面51、52を利用し、固定反射部150において、第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371が、どのように写るかを説明する。
【0072】
第3の実施の形態では、固定反射部150から光軸9Bの長さ分離れた位置で、第一の平面鏡361の外縁の一部を形成する一組の対向する辺(図8の左右方向)を、図8の2点鎖線で囲まれた固定反射部150の投影面51の一組の対向する辺よりも短く形成する。同様に、固定反射部150から光軸9Bの長さ分離れた位置で、第一の平面鏡361の外縁の一部を形成する他の組の対向する辺(図8の上下方向)を、図8の2点鎖線で囲まれた固定反射部150の投影面51の辺の長さと同じとなるように形成する。
【0073】
また、光軸9Bの長さに加えて、光軸9Dの長さ分だけ固定反射部150から離れた位置で、第二の平面鏡371の外縁の一部を形成する一組の対向する辺(図8の左右方向)を、図8の2点鎖線で囲まれた固定反射部150の投影面52の一組の対向する辺よりも短く形成する。同様に、光軸9Bの長さに加えて、光軸9Dの長さ分だけ固定反射部150から離れた位置で、第二の平面鏡371の外縁の一部を形成する他の組の対向する辺(図8の上下方向)を、図8の2点鎖線で囲まれた投影面52の辺の長さと同じとなるように形成する。
【0074】
次に、図9を用いて、第3の実施の形態で、固定反射部150に写る各平面鏡361、371および表示部103の見え方を説明する。図9は、固定反射部150に写る各平面鏡361、371及び表示部103の状態を示す図である。
【0075】
表示部103に表示された視力訓練用画像140の画像光は、光軸上にある第二の平面鏡371及び第一の平面鏡361の各反射面で反射された後、固定反射部150に入射する。したがって、表示部103に表示された視力訓練用画像140に加え、第一の平面鏡361の像と第二の平面鏡371の像とが、固定反射部150に写るはずである。
しかし、図9に示すように、第一の平面鏡361と第二の平面鏡371とが固定反射部150に写る像よりも、固定反射部150が図8の左右方向に長い形状を有している。したがって、固定反射部150には、第一の平面鏡361と第二の平面鏡371の各々の鏡の外縁の一部を形成する一組の対向する辺(図9の上下方向)が写るが、第一の平面鏡361と第二の平面鏡371の各々の鏡の外縁の一部を形成する他の一組の対向する辺(図9の左右方向)は、固定反射部150の外縁と重なって写らない。また、訓練者が接眼部102を通して、固定反射部150を目視した時、第一の平面鏡361及び第二の平面鏡371の反射面の外縁の少なくとも一部は、訓練用画像140と重ならない位置で、固定反射部150に写る。
このとき、固定反射部150に写る第一の平面鏡361と第二の平面鏡371の各々の鏡の外縁の一部を形成する一組の対向する辺(図9の上下方向)は、訓練用画像140から離れているので、訓練者の視野に入らないか、あるいは訓練者が感知できないほど十分離れた視野の端部に写る。
【0076】
したがって、第3の実施の形態において、訓練者は、表示部103の訓練用画像140を注視できるので、固定反射部150に写る表示部103の移動速度のみを感知することができる。したがって、訓練者は、視力回復の訓練に対しての集中力が維持しやすい。結果、視力回復の訓練の効果が増すことになる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、反射板に写る訓練用画像を用いて、目の結像調節機能の訓練を行うための視力回復訓練装置などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施の形態の視力回復訓練装置100の概略構成図
【図2】第1の実施の形態における、固定反射部150の投影面のサイズと、第一の平面鏡161の反射面のサイズ及び第二の平面鏡171の反射面のサイズの関係を示す図
【図3】第1の実施例における、固定反射部150に写る第一の平面鏡161、第二の平面鏡171、及び表示部103の状態を示す図
【図4】第2の実施の形態の視力回復訓練装置200の概略構成図
【図5】第2の実施の形態における、固定反射部150の投影面のサイズと、第一の平面鏡261の反射面のサイズ及び第二の平面鏡271の反射面のサイズの関係を示す図
【図6】第2の実施例における、固定反射部150に写る第一の平面鏡261、第二の平面鏡271、及び表示部103の状態を示す図
【図7】第3の実施の形態の視力回復訓練装置300の概略構成図
【図8】第3の実施の形態における、固定反射部150の投影面のサイズと、第一の平面鏡361の反射面のサイズ及び第二の平面鏡371の反射面のサイズの関係を示す図
【図9】第3の実施例における。固定反射部150に写る第一の平面鏡361、第二の平面鏡371、及び表示部103の状態を示す図
【図10】視力回復訓練装置500の概略構成を示す図
【図11】視力回復訓練装置500における、固定反射部50の投影面のサイズと、第一の平面鏡561の反射面のサイズ及び第二の平面鏡571の反射面のサイズの関係を示す図
【図12】視力回復訓練装置500における、固定反射部50に写る第一の平面鏡561、第二の平面鏡571、及び表示部3の状態を示す図
【0079】
1、101 筐体
2、102 接眼部
3、103 表示部
5、105 移動反射部
6、106 搬送部
7、107 モータ
8、108 制御部
9A、9B、9C、9D 光軸
10、110 台座
11、111 プーリー
14、114 透明板
22、122 壁
23、123 固定具
24、124 訓練者の目
40、140 訓練用画像
50、150 固定反射部
51、52、53 投影面
81−84 目を始点として固定反射部の外縁を結んだ接線
85−88 目を始点として第一の平面鏡の外縁を結んだ接線
161、261、361、561 第一の平面鏡
171、271、371、571 第二の平面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の結像調整機能の訓練を行うための視力回復訓練装置であって、
訓練者の目が位置する接眼部と、
視力訓練用画像を表示する表示部と、
前記接眼部と前記表示部との間の光軸上に配置され、前記表示部から出た前記視力訓練用画像の画像光を反射する複数の反射部と、
前記複数の反射部のうち、少なくとも一つの反射部を前記光軸上で移動させる移動部と、を備え、
前記複数の反射部の各反射面のサイズは、各反射部の位置が前記接眼部から離れるに従って大きい視力回復訓練装置。
【請求項2】
請求項1記載の視力回復訓練装置であって、
前記複数の反射部のうち、前記接眼部に最も近い第一の反射部以外の反射部の反射面のサイズは、前記接眼部を始点として、当該始点から前記第一の反射部の外縁を結ぶ接線の延長線上で定義される前記第一の反射部の投影面の大きさ以上である視力回復訓練装置。
【請求項3】
請求項1記載の視力回復訓練装置であって、
前記訓練者が前記接眼部を通して、前記接眼部に最も近い第一の反射部を目視した時、前記複数の反射部のうち、前記第一の反射部以外の反射部の外縁の少なくとも一部は、前記訓練用画像と重ならない位置で、前記第一の反射部に写る視力回復訓練装置。
【請求項4】
請求項1記載の視力回復訓練装置であって、
前記複数の反射部のうち、前記接眼部に最も近い第一の反射部以外の反射部の一部の反射面のサイズは、前記接眼部から前記第一の反射部の外縁を結ぶ接線の延長線上での前記第一の反射部の投影面の大きさよりも小さい視力回復訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−88773(P2010−88773A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264013(P2008−264013)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(505044462)株式会社テクノマスター (22)