説明

視線位置推定システム及び視線位置推定プログラム

【課題】視線位置を世界座標系で容易かつ高精度に推定することが可能な視線位置推定システムを提供する。
【解決手段】視線位置推定システム1Aの制御装置40Aは、眼球撮影装置10L,10Rの撮影画像に基づいて、視野撮影装置30の撮影画像に含まれる図形に対する観察者の視線位置の観察者座標を算出する観察者座標算出部41と、視線位置の観察者座標に基づいて、視野撮影装置30の撮影画像に含まれる図形における、視線位置の観察者座標に対応する部分図形を抽出する部分図形抽出部42と、図形と世界座標との関係が予め記憶された記憶部43と、抽出された部分図形と記憶された図形とをマッチングすることによって、抽出された部分図形が記憶された図形のどこに該当するかを判定し、判定結果に基づいて図形と世界座標との関係を参照することによって、視線位置の世界座標を推定する世界座標推定部44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の視線位置を推定する視線位置推定システム及び視線位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心理学、ユーザーインターフェース等の研究において、ヒト(観察者)がどこを見ているか(視線位置)を計測することは大変有意義であり、様々な計測手法が開発されてきた。
このような視線位置の計測手法は、観察者の眼球を撮影するカメラを観察者から離れた場所に設置する手法と、観察者の頭部に搭載する手法と、に大別される。
【0003】
観察者から離れた場所に設置したカメラで眼球を撮影する手法は、観察者の頭部、体等がある程度動いても、観察者が存在する三次元空間を基準とした世界座標系で視線位置を計測することができる。
しかし、計測精度を向上するためには、装置規模及び演算量が大きくなってしまうため、計測の環境に制限(例えば、自動車の運転席等)を設けることが行われている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、観察者の頭部に搭載したカメラで眼球を撮影する手法は、眼球方向の計測制度を高くすることができるが、観察者の頭部を基準とした観察者座標系で眼球方向を計測するため、頭部運動等が発生した場合には、観察者座標系において視線方向が一定であっても世界座標系では視線方向が変化してしまう。
そのため、従来の手法は、世界座標系における頭部の姿勢を別途計測し、計測された頭部の姿勢と観察者座標系における眼球方向とを合算することによって、世界座標系における視線位置を算出する。すなわち、従来の手法は、較正パターンを用いて眼球運動計測の較正を行う(特許文献2,3参照)とともに、磁気センサ等を用いて頭部運動を別途計測する(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4551766号公報
【特許文献2】特許第2615831号公報
【特許文献3】特開平11−128170号公報
【特許文献4】特開平4−49943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、観察者の頭部に搭載したカメラで眼球を撮影する手法では、視線位置を世界座標系で特定したい場合には、頭部姿勢を別途計測する必要があるため、計測が煩雑であり、頭部姿勢計測に起因する誤差が生じるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑みて創案されたものであり、視線位置を世界座標系で容易かつ高精度に推定することが可能な視線位置推定システム及び視線位置推定プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の視線位置推定システムは、観察者の視野に設けられており、図形が表示される表示装置と、前記観察者に装着され、前記観察者の眼球を撮影する眼球撮影装置と、前記観察者に装着され、前記観察者の視野を撮影する視野撮影装置と、前記観察者の視線位置の世界座標を推定する制御装置と、を備えており、制御装置は、観察者座標算出部と、部分図形抽出部と、記憶部と、世界座標推定部と、を備える。
【0009】
かかる構成によると、前記制御装置は、観察者座標算出部によって、前記眼球撮影装置の撮影画像に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形に対する前記観察者の視線位置の観察者座標を算出する。ここで、観察者座標算出部は、例えば、予め記憶された前記図形における前記観察者の複数の視線位置と、前記眼球撮影部によって撮影された眼球方向と、の関係、又は、予め記憶された観察者と表示部との距離、を用いることによって、視線位置の観察者座標を算出する。
【0010】
続いて、前記制御装置は、部分図形抽出部によって、前記視線位置の観察者座標に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形における、前記視線位置の前記観察者座標に対応する部位を抽出し、世界座標推定部によって、抽出された前記部分図形と記憶された前記図形とをマッチングすることによって、抽出された前記部分図形が記憶された前記図形のどこに該当するかを判定し、判定結果に基づいて前記図形と前記世界座標との関係を参照することによって、前記視線位置の前記世界座標を推定する。
【0011】
前記図形は、非可視光を特異的に反射する素材によって前記表示装置に描画されている構成であってもよい。
【0012】
また、視線位置推定システムは、非可視光を照射することによって、前記図形を前記表示装置に表示させる非可視光照射装置をさらに備える構成であってもよい。
【0013】
前記図形は、当該図形の一部から当該図形全体における位置を特定することが可能な局所的唯一図形であってもよい。
【0014】
さらに、前記局所的唯一図形は、サーキュラーゾーンプレートであってもよく、サーキュラーゾーンプレートと格子模様とを組み合わせた図形であってもよい。
【0015】
前記記憶部には、前記図形における前記観察者の複数の視線位置と、前記眼球撮影部によって撮影された眼球方向と、の関係が予め記憶されており、前記観察者座標算出部は、予め記憶された前記関係を用いて、前記図形における前記観察者の視線位置を算出する構成であってもよい。
【0016】
また、本発明は、コンピュータを前記した視線位置推定システムの制御装置(例えば、観察者座標算出部、部分図形抽出部及び世界座標推定部)として機能させるとして視線位置推定プログラムとしても具現化可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、視線位置を世界座標系で容易かつ高精度に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る視線位置推定システムの概要を説明する図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る視線位置推定システムを示す模式図である。
【図3】局所的唯一図形を示す図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【図5】較正作業を説明するための図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る視線位置推定システムを示す模式図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同様の部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。なお、以下の説明において、観察者の頭部を基準とした観察者座標系を(x,y)で表し(x:水平軸、y:鉛直軸)が、観察者が存在する三次元空間を基準とした世界座標系を(X,Y)で表す(X:水平軸、Y:鉛直軸)。
【0020】
本発明の実施形態に係る視線位置推定システムは、図1に示すように、観察者2の表示装置50上における視線位置を世界座標系で推定するものであり、記録媒体再生装置4と、照射装置5と、を備える。記録媒体再生装置4は、記録媒体に記録された映像データを読み出して照射装置5へ出力し、照射装置5は、映像データに基づいて映像光を表示装置50に照射する。観察者2は、表示装置50に表示された映像を観察し、映像中の移動体(例えば、車両等)を追従するように、表示装置50上の視線位置を移動させる。なお、図1の表示装置50に点線で記述された同心円は、後記するサーキュラーゾーンプレートからなる局所的唯一図形52を表しており、かかる局所的唯一図形52は、非可視光にて表示されているため、観察者2には見えない。
【0021】
<第一の実施形態>
図2に示すように、本発明の第一の実施形態に係る視線位置推定システム1Aは、観察者2に装着される装置群として、眼球撮影装置10L,10R(図2には、右眼球用の眼球撮影装置10Rのみを図示)と、ミラー20L,20R(図2には、右眼球用のミラー10Rのみを図示)と、視野撮影装置30と、制御装置40Aと、を備えており、これらは、観察者2が被るキャップ3の鍔部分に取り付けられている。なお、ミラー20L,30Rを省略して眼球撮影装置10L,10Rが直接眼球を撮影する構成であってもよく、制御装置40Aは、観察者2に装着されていなくてもよい。また、視線位置推定システム1Aは、ディスプレイ、スピーカ等からなる通知装置60(図4参照)と、記憶装置70(図4参照)と、を備える。さらに、視線位置推定システム1Aは、表示装置50(図1参照)の一例として、表示装置50Aをさらに備えており、キャップ3を被った観察者2は、表示装置50Aに対してある程度離れた場所に位置して表示装置50Aを見る。
【0022】
<表示装置>
表示装置50Aは、スクリーンであり、その表示面には、非可視光の一例である赤外線を特異的に反射する塗料51によって、局所的唯一図形52が描画されている。かかる構成によると、局所的唯一図形52は観察者2には見えないので、表示装置50Aに映像を表示して当該映像を見た場合の視線位置を推定することが可能となる。すなわち、表示装置50Aには、照射装置5によって生成された、観察者2が見ることが可能な映像と、観察者2には見えないが視野撮影装置30によって撮影することが可能な局所的唯一図形52と、が重ねて表示されている。
局所的唯一図形52は、当該図形の一部から当該図形全体における位置を特定することが可能な図形であり、本実施形態では、図3(a)に示すサーキュラーゾーンプレート(以下、CZPと記載する)が局所的唯一図形52の一例として採用されている。
表示部50Aの表示面は、世界座標系の互いに直交するX軸及びY軸によって構成される平面上に存在する。かかる世界座標系の原点は、観察者2の頭部運動によらず、一定の位置(例えば、表示部50Aの表示面の中心)に存在する。
【0023】
<眼球撮影装置及びミラー>
眼球撮影装置10Lは、観察者2の左眼球をミラー20Lを介して撮影し、撮影画像を制御部40Aへ出力する。また、眼球撮影装置10Rは、観察者2の右眼球をミラー20Rを介して撮影し、撮影画像を制御装置40Aへ出力する。
【0024】
<視野撮影装置>
視野撮影装置30は、本実施形態では、表示装置50Aの全体よりも広い領域を撮影可能な広角カメラであって、表示装置50Aに描画された局所的唯一図形52を撮影する赤外線カメラである。視野撮影装置30の撮影画像は、制御装置40Aへ出力される。なお、視野撮影装置30は、表示装置50Aの全体よりも広い領域を撮影可能な広角カメラに限定されず、表示装置50Aのうち、観察者2の視線位置が含まれる一部分のみを撮影可能なカメラであればよい。すなわち、視野撮影装置30の撮影画像において、表示装置50Aが見切れていたとしても、本実施形態に係る視線位置推定システム1Aは、観察者2の表示装置50A上における視線位置を世界座標系で推定することができる。
【0025】
<制御装置>
制御装置40Aは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、入出力回路等から構成されており、図4に示すように、機能部として、観察者座標算出部41と、部分図形抽出部42と、記憶部43と、世界座標推定部44と、較正部45と、を備える。
【0026】
≪観察者座標算出部≫
観察者座標算出部41は、観察者座標系において、観察者2の視線位置の座標(観察者視線位置座標)を算出する。詳細には、観察者座標算出部41は、眼球撮影装置10L,10R及び視野撮影装置30の撮影画像を取得し、取得された眼球撮影装置10L,10Rの撮影画像に基づいて、観察者2の眼球の向きを算出し、かかる眼球の向きと、較正部45によって算出された複数の観察者座標と眼球の向きとの関係と、に基づいて、視野撮影装置30によって撮影された局所的唯一図形52に対する観察者2の視線位置の観察者視線位置座標を算出する。算出された観察者視線位置座標は、部分図形抽出部42へ出力される。本実施形態では、表示部50A上の複数の観察者視線位置座標と、視線の向き(眼球の向き)との関係が較正部45によって予め求められているため、観察者座標算出部41は、かかる関係を用いて観察者2の視線位置の観察者視線位置座標を算出することができる。
【0027】
≪部分図形抽出部≫
部分図形抽出部42は、観察者視線位置座標に対応する局所的唯一図形52の一部を抽出する。詳細には、部分図形抽出部42は、視野撮影装置30の撮影画像に含まれる局所的唯一図形52における、観察者座標算出部41によって算出された観察者視線位置座標に対応する部位、例えば、局所的唯一図形52のうち、観察者視線位置座標を中心とする正方形を設定し、当該正方形に囲まれた部位を抽出する。抽出された局所的唯一図形52の部位、すなわち部分図形は、世界座標推定部44へ出力される。
【0028】
≪記憶部≫
記憶部43には、局所的唯一図形52と、世界座標(X,Y)と、の関係が予め記憶されている。すなわち、表示部50Aに塗料51によって描画された局所的唯一図形52の任意の位置の世界座標(X,Y)は、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52の該当する位置の世界座標(X,Y)と一致している。また、記憶部43には、較正部45によって算出された複数の観察者視線位置座標と眼球の向きとの関係が記憶される。
【0029】
≪世界座標推定部≫
世界座標推定部44は、観察者視線位置座標に対応する世界座標を推定する。詳細には、世界座標推定部44は、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52と、部分図形抽出部42によって抽出された局所的唯一図形52の部分図形と、をマッチングすることによって、部分図形が局所的唯一図形52のどこに該当するかを判定し、判定結果に基づいて記憶部43に記憶された局所的唯一図形52と世界座標との関係を参照することによって、視線位置の世界座標を推定する。
【0030】
≪較正部≫
較正部45は、眼球撮影装置10L,10R及び視野撮影装置30の撮影画像に基づく較正作業の結果として、複数の観察者視線位置座標と眼球の向きとの関係を求めて記憶部43に記憶させる。詳細には、較正部45は、表示装置50A上の複数のポイントを観察者2が見た際の眼球の向きを眼球撮影装置10L,10Rから取得し、取得された眼球の向きを複数のポイントそれぞれの観察者座標系における座標と関連付けて記憶部43に記憶させる。ポイントの数が多いほど、その後の観察者視線位置座標の算出は正確になるため、ポイント間の他のポイントにおける眼球の向きを内挿によって算出し、その観察者座標系における座標と関連付けて記憶部43に記憶させてもよい。
【0031】
なお、本実施形態では、視野撮影装置30が、表示装置50Aの全体よりも広い領域を撮影可能な広角カメラである場合、表示装置50Aのうち、観察者2の視線位置が含まれる一部分のみを撮影可能なカメラである場合に関わらず、較正部45は、視野撮影装置30による表示装置50Aの撮影画像の拡大率(ここでの拡大率は、1より小さい縮小の場合を含む)を算出し、世界座標推定部44は、かかる拡大率に基づいて、抽出された部分図形を拡大又は縮小してから、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52とのマッチングを行う。本実施形態において、較正部45は、表示装置50Aの撮影画像に含まれる、表示装置50Aに表示された局所的唯一図形52と、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52と、の大きさを比較することによって、視野撮影措置30の撮影画像の拡大率を算出することができる。
【0032】
<動作例>
続いて、本発明の第一の実施形態に係る視線位置推定システム1Aの動作例について説明する。
【0033】
≪較正≫
視線位置の推定に先行して、較正部45による較正が予め行われる。視線位置推定システム1Aは、モニタからなる表示装置80と、ボタン等からなる入力装置90と、をさらに備える。較正部80は、視野撮影装置30によって撮影された撮影画像を表示装置80に表示させた状態で、図5に示す×印(左上隅)pを撮影画像上に表示させる。続いて、較正作業者がレーザポインタ等で×印pに該当する表示装置50A上の位置を指し示し、観察者2は、眼球撮影装置10L,10R、ミラー20L,20R及び視線撮影装置30を頭部に装着した状態で、これらの×印pに視線を合わせ、レーザポインタ等が指し示す位置が×印pと一致しており、かつ、観察者2の視線が×印pに合っている状態で入力装置90を操作する。較正部45は、眼球撮影装置10L,10Rの撮影画像に基づいて、入力装置90が操作されたときの眼球の鉛直(上下)方向の角度θと水平(左右)方向の角度ψとの組み合わせ(θ,ψ)を算出し、算出された(θ,ψ)と、×印pの観察者視線位置座標(x,y)とを関連付けて記憶部43に記憶させる。続いて、較正部45は、図5に示す×印(中央上)pを撮影画像上に表示させる。較正作業者及び観察者2は、同様の動作を行い、(θ,ψ)と、×印pの観察者視線位置座標(x,y)とを関連付けて記憶部43に記憶させる。かかる較正作業を繰り返すことによって、較正部45は、(θ,ψ),…,(θ,ψ)と、9点の×印p〜p(左上隅p,中央上p,右上隅p,左中央p,中央p,右中央p,左下隅p,中央下p,右下隅p)の観察者視線位置座標(x,y),…,(x,y)と、をそれぞれ関連付けて記憶部43に記憶させる。
【0034】
較正作業の終了後、図2に示す照射装置5によって表示部50Aに映像が表示された状態で、観察者2が映像のどこを注視しているか、すなわち、観察者2の視線位置の推定が開始される。観察者2は、較正作業を行った場所において、眼球撮影装置10L,10R、ミラー20L,20R及び視線撮影装置30を頭部に装着した状態で、表示部50Aに表示された映像を見て、頭部や眼球の向きを変えることにより、例えば映像中の移動体を追従するように視線位置を移動させる。眼球撮影装置10L,10Rは、観察者の左右の眼球を撮影して撮影画像を観察者座標算出部41へ出力し、視線撮影装置30は、表示装置50Aを撮影して撮影画像を観察者座標算出部41及び部分図形抽出部42へ出力する。
【0035】
≪視線位置推定≫
観察者座標算出部41は、眼球撮影装置10L,10Rの撮影画像に基づいて、眼球の向き、すなわち、観察者2の視線方向(θ,ψ)を算出する。続いて、観察者座標算出部41は、記憶部43に記憶された(θ,ψ),…,(θ,ψ)を補間することによって、観察者座標系における観察者2の視線位置(x,y)を算出する。
【0036】
続いて、部分図形抽出部42は、視野撮影装置30の撮影画像に含まれる局所的唯一図形52における、観察者座標算出部41によって算出された観察者視線位置座標に対応する部分図形110(図3(a)参照)(観察者視線位置座標(x,y)を含む)を抽出して世界座標推定部44へ出力する。
【0037】
続いて、世界座標推定部44は、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52と、部分図形抽出部42によって抽出された局所的唯一図形52の部分図形110(図3(a)参照)と、をマッチングすることによって、部分図形110が局所的唯一図形52のどこに該当するかを判定し、当該位置の世界座標(X,Y)を記憶部43から読み出す。さらに世界座標推定部44は、読み出された世界座標(X,Y)を世界座標系における観察者視線位置座標として通知装置60へ出力して表示や発話させたり、読み出された座標(X,Y)を読み出された時刻と関連付けて記憶装置70へ記憶させたりする。
【0038】
本発明の第一の実施形態に係る視線位置推定システム1Aは、頭部姿勢を別途計測することなく、視線位置を世界座標系で容易かつ高精度に推定することができる。また、第一の実施形態に係る視線位置推定システム1Aは、視線位置の世界座標を映像単位で推定するので、観察者2が映像のどの部位に関心があるのかを知るのに利用可能である。
【0039】
なお、図3(b)に示すように、CZPと格子模様とを組み合わせた図形である局所的唯一図形53を表示装置50Aに表示する構成であってもよい。かかる構成によると、観察者2が観察者2と表示装置50Aとを通る軸線回りに首を回転させた場合であっても、世界座標推定部44が図形のマッチングを容易に行うことができる。
【0040】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係る視線位置推定システムについて、第一の実施形態に係る視線位置推定システム1Aとの相違点を中心に説明する。
【0041】
図6に示すように、本発明の第二の実施形態に係る視線位置推定システム1Bは、制御装置40A及び表示装置50Aに代えて制御装置40B及び表示装置50Bを備えるとともに、照射装置100をさらに備える。
【0042】
図7に示すように、制御装置40Bは、図形出力部46をさらに備える。図形出力部46は、記憶部43に記憶された局所的唯一図形52を読み出し、照射装置100に局所的唯一図形52を呈する赤外線を照射させる。
【0043】
図8に示すように、表示装置50Bは、スクリーンであり、その表示面には、照射装置100によって照射された非可視光の一例である赤外線によって、局所的唯一図形52が描画されている。すなわち、表示装置50Bは、照射装置100によって照射された赤外線を反射しており、視野撮影部30は、反射した赤外線を撮影する。ここで、表示装置50Bは、当該表示装置50Bの設置位置及び向きを調整したり、ズーム機能等を用いたりすることによって、局所的唯一図形52の中心が表示装置50Bの中心に位置するとともに、局所的唯一図形52の所定箇所が表示装置50Bの所定箇所に位置するように赤外線を照射する。このようにすることで、表示装置50Bに表示された局所的唯一図形52の世界座標を、記憶部43に記憶された世界座標と一致させる。
【0044】
本発明の第二の実施形態に係る視線位置推定システム1Bは、頭部姿勢を別途計測することなく、視線位置を世界座標系で容易かつ高精度に推定することができる。また、第二の実施形態に係る視線位置推定システム1Bは、視線位置の世界座標を映像単位で推定するので、観察者2が映像のどの部位に関心があるのかを知るのに利用可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態について実施形態を参照して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。例えば、図形は局所的唯一図形に限定されず、また、図形の描画は可視光であってもよい。また、較正作業によって得られた視線方向と視線位置との関係に代えて、観察者2と表示装置50A,50Bとの距離を予め測定して記憶部43に記憶させておき、観察者座標算出部41が、予め記憶された距離と、視線方向と、に基づいて視線位置の観察者座標を算出する構成であってもよい。また、較正作業に用いられるポイントは、表示装置50,50A,50Bの表示面上に予め位置決めされた3つ以上のポイント(ただし、全てのポイントが一直線上に並ばないように配置される)であればよい。
【0046】
また、本発明は、コンピュータを制御装置40A,40B(例えば、観察者座標算出部41、部分図形抽出部42及び世界座標推定部44)として機能させる視線位置推定プログラムとしても具現化可能である。
【符号の説明】
【0047】
1A,1B 視線位置推定システム
2 観察者
3 キャップ
4 記録媒体再生装置
5 照射装置
10L,10R 眼球撮影装置
20L,20R ミラー
30 視野撮影装置
40A,40B 制御装置
41 観察者座標算出部
42 部分図形抽出部
43 記憶部
44 世界座標推定部
45 較正部
46 図形出力部
50,50A,50B 表示装置
51 塗料(非可視光を特異的に反射する素材)
52,53 局所的唯一図形
60 通知装置
70 記憶装置
100 照射装置(非可視光照射装置)
110 抽出図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の視野に設けられており、図形が表示される表示装置と、
前記観察者に装着され、前記観察者の眼球を撮影する眼球撮影装置と、
前記観察者に装着され、前記観察者の視野を撮影する視野撮影装置と、
前記観察者の視線位置の世界座標を推定する制御装置と、
を備える視線位置推定システムであって、
前記制御装置は、
前記眼球撮影装置の撮影画像に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形に対する前記観察者の視線位置の観察者座標を算出する観察者座標算出部と、
前記視線位置の観察者座標に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形における、前記視線位置の前記観察者座標に対応する部位の部分図形を抽出する部分図形抽出部と、
前記図形と世界座標との関係が予め記憶された記憶部と、
抽出された前記部分図形と記憶された前記図形とをマッチングすることによって、抽出された前記部分図形が記憶された前記図形のどこに該当するかを判定し、判定結果に基づいて前記図形と前記世界座標との関係を参照することによって、前記視線位置の前記世界座標を推定する世界座標推定部と、
を備えることを特徴とする視線位置推定システム。
【請求項2】
前記図形は、非可視光を特異的に反射する素材によって前記表示装置に描画されている
ことを特徴とする請求項1に記載の視線位置推定システム。
【請求項3】
非可視光を照射することによって、前記図形を前記表示装置に表示させる非可視光照射装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の視線位置推定システム。
【請求項4】
前記図形は、当該図形の一部から当該図形全体における位置を特定することが可能な局所的唯一図形である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の視線位置推定システム。
【請求項5】
前記局所的唯一図形は、サーキュラーゾーンプレートである
ことを特徴とする請求項4に記載の視線位置推定システム。
【請求項6】
前記局所的唯一図形は、サーキュラーゾーンプレートと格子模様とを組み合わせた図形である
ことを特徴する請求項4に記載の視線位置推定システム。
【請求項7】
前記記憶部には、前記図形における前記観察者の複数の視線位置と、前記眼球撮影部によって撮影された眼球方向と、の関係が予め記憶されており、
前記観察者座標算出部は、予め記憶された前記関係を用いて、前記図形における前記観察者の視線位置を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の視線位置推定システム。
【請求項8】
観察者の視野に設けられており、図形が表示される表示装置と、
前記観察者に装着され、前記観察者の眼球を撮影する眼球撮影装置と、
前記観察者に装着され、前記観察者の視野を撮影する視野撮影装置と、
を備える視線位置推定システムにおいて前記観察者の視線位置の世界座標を推定するために、コンピュータを、
前記眼球撮影装置の撮影画像に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形に対する前記観察者の視線位置の観察者座標を算出する観察者座標算出部、
前記視線位置の観察者座標に基づいて、前記視野撮影装置の撮影画像に含まれる前記図形における、前記視線位置の前記観察者座標に対応する部位の部分図形を抽出する部分図形抽出部、及び、
抽出された前記部分図形と記憶部に予め記憶された前記図形とをマッチングすることによって、抽出された前記部分図形が記憶された前記図形のどこに該当するかを判定し、判定結果に基づいて前記記憶部に予め記憶された前記図形と前記世界座標との関係を参照することによって、前記視線位置の前記世界座標を推定する世界座標推定部、
として機能させることを特徴とする視線位置推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−170546(P2012−170546A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33534(P2011−33534)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)