説明

視認性を高めた木目模様を有する指輪

【課題】 2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪において視認性を高めた木目模様を有する指輪を提供する。
【解決手段】 2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪において、木目模様を形成する素材の中で素材色の明度が最も低い素材にタンタルを使用した事を特徴とする視認性を高めた木目模様を有する指輪。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪に関するものである。
【背景技術】
【0001】
金属にはそれぞれ固有の明度があり、2種類以上の金属を隣り合わせて配置することで、素材色の明度の違いから素材の差を視覚的に感じることができる。
【0002】
この現象から、従来技術として2種類以上の金属による多層接合素材を使用した指輪に切削を加えることで、表面に木目模様を生じさせることができた。また切削加工の後、加工面を塑性加工によって平滑化することで、平面上に木目模様を生じさせることもできた。
【0003】
2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪には、主に貴金属または貴金属合金、銅または銅合金のいずれかの素材が使用されている。
【0004】
また、上記方法によって作られた指輪の木目模様を形成する素材の内、特定の金属素材に本来の素材色よりも明度の低い酸化膜を発生させ、木目模様を形成する金属同士の明度差をより大きくすることで木目模様の視認性を高めた指輪があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では以下のような課題があった。
従来の2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪に使用されていた金属同士では、素材色の明度差が少ないために、指輪の素材色を利用して木目模様の視認性を高めた指輪を作ることは困難であった。
【0006】
また、特定の金属素材に本来の素材色よりも明度の低い酸化膜を発生させ、金属同士の明度差をより大きくすることで、木目模様の視認性を高めた指輪は、日常の使用による磨耗及び磨き直しによって、木目模様の視認性を高める効果を失ってしまう為、再度酸化膜を発生させる必要があった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決する、視認性を高めた木目模様を有する指輪を提供する。
【課題を解決する為の手段】
【0008】
この為、本発明(請求項1)は、2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪において、木目模様を形成する素材の中で素材色の明度が最も低い素材にタンタルを使用した事を特徴とする視認性を高めた木目模様を有する指輪である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来、2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪に使用されていた金属よりも、タンタルは明度が極めて低い。よって、木目模様を形成するタンタル以外の金属との明度差が大きくなり、従来よりも視認性を高めた木目模様を有する指輪を作ることができる。
【0010】
また本発明は、特定の金属素材に本来の素材色よりも明度の低い酸化膜を発生させたのではなく、金属素材本来の素材色を利用することで、木目模様を形成する金属同士の明度差をより大きくしたので、日常の使用による磨耗及び磨き直しによって、木目模様の視認性を高める効果を失ってしまうことが無い。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を説明していく。
厚み0.01〜0.2mm程度のタンタル帯板と厚み0.01〜0.2mm程度の金合金の1種であるホワイトゴールド帯板を重ね、中心軸2に重ねたまま巻きつける。
【0012】
ホワイトゴールドに限らず、金、金合金、銀、銀合金のいずれかであれば素材の置き換えも可能である。素材を置き換えた場合は、後述する固体拡散接合時の融点も同様に置き換えた素材に準ずる。また、プラチナまたはプラチナ合金を使用する場合は、重ね巻きつけた地金1の状態になった時にタンタルとプラチナまたはプラチナ合金が接しないように金、金合金、銀、銀合金のいずれかで挟むように重ねる必要がある。
【0013】
重ね巻きつけた地金1の外側に外周リング3をかぶせ、重ね巻きつけた地金1・中心軸2・外周リング3が一体となったまま、真空炉またはガス置換炉によって無酸素雰囲気中でホワイトゴールドの融点の80%前後の温度で固体拡散接合を行う。
【0014】
冷却後、重ね巻きつけた地金1・中心軸2・外周リング3が一体となった物から中心軸2、外周リング3を切削加工により除去することで、指輪4が形成される。
【0015】
次に指輪4の外側表面に1箇所以上のすり鉢状の凹部6を刻設した指輪5を制作する。凹部は指輪4の内側にも同様に刻設してもよい。この刻設によりすり鉢状の凹部6にホワイトゴールドとタンタルの明度差によって視認性を高めた木目模様を有する、本発明の指輪5が完成する。
【0016】
さらに、すり鉢状の凹部6を平滑化することで、平面上に視認性を高めた木目模様を有する本発明の指輪7を製造することもできる。
【0017】
ここで、本発明の指輪の方が、従来の指輪よりも、木目模様を形成するタンタル以外の金属素材との明度差が大きくなることを色分析によって数値を検出し比較する。
【0018】
数値の検出の仕方は次の通りである。本発明の指輪と、従来の指輪を一定の条件下で撮影した写真を元に、木目模様を形成する金属の素材色をソフトウェア処理によりLabカラーに色分解する。明度を示すL値が検出されるのでこの値によって比較した。
【0019】
図5によると、プラチナとホワイトゴールドを使用した従来の指輪の写真1では、ホワイトゴールドは65。プラチナは75と、差が10。銀と銅を使用した従来の指輪の写真2では、銀は70、銅は53。差は17。ピンクゴールドとホワイトゴールドを使用した従来の指輪の写真3では、ピンクゴールドは71、ホワイトゴールドは65。差は6。
【0020】
対して、タンタルとホワイトゴールドを使用した本発明の指輪の写真4では、タンタルは40、ホワイトゴールドは65と、差が25。タンタルとプラチナを使用した本発明の指輪の写真5では、タンタルは40、プラチナは71と、差が31。タンタルとピンクゴールドを使用した本発明の指輪の写真6では、タンタルは40、ピンクゴールドは71と、差が31。この結果、本発明の指輪によるL値の差が、従来の指輪全てにおいて上回っていることが分かる。すなわち、本発明の指輪は明らかにタンタル以外の金属との明度差が大きくなっており、木目模様の視認性が高まっている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】重ね巻きつけた地金1・中心軸2・外周リング3が一体となった図
【図2】重ね巻きつけた地金1を接合し中心軸2及び外周リング3が除去された図
【図3】指輪4にすり鉢状の凹部6を刻設した図
【図4】指輪5のすり鉢状の凹部6を平滑化した図
【図5】明度差を比較した図
【符号の説明】
【0022】
1 重ね巻きつけた地金
2 中心軸
3 外周リング
4 指輪
5 指輪
6 すり鉢状の凹部
7 指輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の金属による多層接合素材を使用した、表面に木目模様を有する指輪において、木目模様を形成する素材の中で素材色の明度が最も低い素材にタンタルを使用した事を特徴とする視認性を高めた木目模様を有する指輪。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−148517(P2009−148517A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341852(P2007−341852)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504014901)有限会社ソラ (10)
【Fターム(参考)】