説明

親環境車両のメインリレーモニタリング装置および方法

【課題】本発明は、親環境車両で高電圧バッテリとインバータの間に装着され、高電圧バッテリの出力を制御するメインリレーの融着可否を診断できる親環境車両のメインリレーモニタリング装置と方法を提供する。
【解決手段】本発明による親環境車両のメインリレーモニタリング方法は、イグニッションオフが検出されれば、インバータのスイッチング動作を中止させてメインリレーをオフにし、メインバッテリの電圧出力を遮断させる過程、メインリレーのオフが完了すれば、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させる過程、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否をモニタリングする過程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親環境車両で高電圧バッテリとインバータの間に装着され、高電圧バッテリの出力を制御するメインリレーの融着可否を診断しようとする親環境車両のメインリレーモニタリング装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に対する燃費向上の要求と排出ガス規制の強化により、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、プラグイン電気自動車などを含む親環境車両が提供されているが、親環境車両は高電圧/大電流のパワーネットを使用して要求される駆動力を生成する。親環境車両は、要求される駆動力を生成するためにモータが使用されるが、モータの駆動を制御するためにインバータが用いられ、電装負荷に電源を供給するために、メインバッテリに格納された約350V〜450Vの高電圧を電装負荷に要求される低電圧である12Vの電圧に変換させる電力変換装置(DC/DCコンバータ)が使用される。親環境車両は、メインバッテリから出力される高電圧を、インバータを使用して三相交流電圧に変換した後にモータに供給し、モータの駆動を実行させる。
【0003】
このとき、メインバッテリに格納された高電圧の出力は、メインバッテリとインバータの間に装着されるメインリレーによって制御される。例えば、親環境車両が駆動していない状態では、メインリレーがオフになってメインバッテリの出力を遮断し、親環境車両が駆動されて電力が必要な状況では、メインリレーがオンになってメインバッテリの電圧をインバータに供給する。またメインリレーは、メインバッテリまたは電力変換装置の故障が発生した場合、バッテリの出力電圧を遮断させる機能を実行する。
【0004】
しかし、メインリレーが融着したような場合、メインバッテリの出力を遮断させることができないため、周辺回路によって高電圧の出力が維持され、故障を拡散させる原因となり、車両の安全に致命的な影響を発生させる。そこで従来の親環境車両では、抵抗、トランジスタ、電界効果トランジスタ、比較器などが含まれる付加回路を構成してメインリレーの状態をモニタリングしている。
【0005】
しかしながら、上述のような別途の付加回路を設ける場合、付加回路を駆動させるための電源が必要となって不必要な電流消耗が発生し、付加回路の故障が発生する場合には、メインリレーのモニタリングに信頼性が欠如する。また、付加回路の構成のために多くの部品が消耗されるため、原価上昇を誘発させ、全体システムのサイズが大きくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−173428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、親環境車両でイグニッションオフによって高電圧バッテリとインバータの間に装着されるメインリレーの遮断が実行されると、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させた後、バッテリ電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否診断を行なう装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のよる親環境車両のメインリレーモニタリング装置は、モータと、高電圧が格納されるメインバッテリと、メインバッテリの電圧出力を制御するメインリレーと、メインリレーを通じて供給されるメインバッテリの電圧を交流電圧に変換し、モータに駆動電圧として供給するインバータと、イグニッションオフによってメインリレーを遮断した後、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させ、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否を判定する制御器と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記制御器は、メインリレーのオフが完了すればインバータをスイッチングさせ、モータの抵抗によってDCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させることが好ましい。
【0010】
前記制御器は、DCリンクキャパシタの強制放電完了後、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧が同じであるか一定値の範囲に含まれればメインリレーの融着として判定し、故障メッセージを出力した後に強制パワーオフを実行することが好ましい。
【0011】
本発明による親環境車両のメインリレーモニタリング方法は、イグニッションオフが検出されればインバータのスイッチング動作を中止させ、メインリレーをオフにしてメインバッテリの電圧出力を遮断させる過程、メインリレーのオフが完了すれば、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させる過程、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否をモニタリングする過程、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記DCリンクキャパシタの強制放電は、モータの抵抗を通じて放電させることが好ましい。
【0013】
前記メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧が同じであるか一定の電圧差以内であればメインリレーの融着として判定し、強制パワーオフを実行することが好ましい。
【0014】
前記DCリンクキャパシタの強制放電において、インバータのスイッチングによってDCリンクキャパシタに充電された電圧をモータの抵抗を通じて強制放電することが好ましい。
【0015】
前記メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧の電圧差が設定された基準電圧以上であればメインリレーが正常であると判定し、正常なパワーオフを実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明は、別途の付加回路を使用せずにメインリレーの融着可否をモニタリングすることができ、原価低減とシステムの単純化を提供することができる。また、イグニッションオフの状態でメインリレーの融着可否をモニタリングすることができるため、故障拡散を防ぐことができ、高電圧の露出による車両の安全性が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る親環境車両のメインリレーモニタリング装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る親環境車両のメインリレーモニタリングの手順を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は多様に相違した形態で実現されるため、この実施形態には限定されることはない。なお、図面において、本発明を説明するために必要でない部分は省略した。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る親環境車両のメインリレーモニタリング装置を概略的に示す図である。図1に示すように、本発明の実施形態は、メインバッテリ110、メインリレー120、インバータ130、モータ140、エンジン150、変速機160、駆動ホイール170、および制御器200を含む。
【0020】
メインバッテリ110は、約350V〜450Vの直流電圧が格納され、モータ140の駆動が要求される場合には格納された電圧を出力し、回生制動制御時に発電機として動作するモータ140で生成される電圧を充電する。メインリレー120は、メインバッテリ110とインバータ130の間に配置され、制御器200の制御によってスイッチングされ、バッテリ130とインバータ130を電気的に連結したり分離したりする。メインリレー120は、親環境車両が駆動していない状態では、制御器200の制御によってスイッチングオフとなり、インバータ130に供給されるメインバッテリ110の出力を遮断し、親環境車両が駆動して電力が必要な状況では、制御器200の制御によってスイッチングオンとなり、メインバッテリ110の電圧がインバータ130に供給される。
【0021】
また、メインリレー120は、メインバッテリまたは電力変換装置の故障が発生する場合、制御器200の制御によってスイッチングされてメインバッテリ110の出力を遮断する。インバータ130は、電力スイッチング素子が直列に連結して構成され、一対のU相アーム(U、U)、V相アーム(V、V)、W相アーム(W、W)を含む。電力スイッチング素子は、NPN型トランジスタ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFETのうちのいずれか1つで構成される。
【0022】
インバータ130は、制御器200からそれぞれのアームに印加されるPWM信号によってメインリレー120を通じて供給されるメインバッテリ110の直流電圧を三相交流電圧に変換して、モータ140に駆動電圧として供給する。モータ140は三相交流電動機であって、インバータ130から供給される三相交流電圧によって駆動トルクを発生させ、回生制動時に発電機として作動して電圧を生成する。
【0023】
エンジン150は、走行状況に応じて最適な運転点によって駆動する。変速機160は、運転モードに応じてクラッチ(図示せず)を通じて合算されて印加されるエンジン150とモータ140の出力トルクを、車両の運転状況に応じて適切な変速比で分配して駆動ホイール170に伝達し、自動車を走行させる。変速機160は、自動変速機あるいは無段変速機に適用されてもよい。
【0024】
制御器200は、イグニッションオフが検出されれば、メインリレー120をオフにしてメインバッテリ110の電圧出力を遮断し、インバータ130をスイッチングさせ、モータ140の抵抗を通じてインバータ130のDCリンクキャパシタ(Vdc)に充電された電圧を強制放電させる。DCリンクキャパシタ(Vdc)の強制放電は、例えば、次のような数式(1)によって決定されてもよい。
【0025】
【数1】

【0026】
数式(1)により、目標放電時間、システム電圧、および放電終止電圧を決定して放電電流指令を決定する。例えば、目標放電時間が3秒であり、放電終止電圧が60Vであれば、3秒後にはインバータ130の入力電圧、すなわち、DCリンクキャパシタ(Vdc)の出力電圧は60V以下となる。
【0027】
制御器200は、インバータ130のDCリンクキャパシタ(Vdc)に充電された電圧を強制放電させた後、メインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の入力電圧、すなわち、DCリンクキャパシタ(Vdc)の出力電圧を比較してメインリレー120の融着可否を判定する。例えば、制御器200は、メインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の入力電圧が同じであるか一定値の範囲に含まれれば、メインリレーの融着によってメインバッテリ110の電圧がインバータ130に継続して供給されるものと判定する。制御器200は、メインリレー120の融着が判定されば、設定された所定の方式によって故障メッセージを出力した後、強制的にパワーオフを実行する。
【0028】
上述の機能を含む親環境車両でメインリレーのモニタリングを実行する動作は次のとおりである。親環境車両が運行される状態で(S101)、制御器200はイグニッションオフが検出されるかを判断する(S102)。S102で、制御器200は、イグニッションオフが検出されれば、インバータ130の各相別アーム(U、U)(V、V)(W、W)に印加されるPWM信号の出力を中止させ、インバータ130のスイッチング動作を中止させる(S103)。この後、メインリレー120をスイッチングオフにしてメインバッテリ110の電圧出力を遮断させる(S104)。メインリレー120のスイッチオフ制御が完了すれば(S105)、制御器200はインバータ130をスイッチング制御し、モータ140の抵抗によってインバータ130のDCリンクキャパシタ(Vdc)に充電された電圧を強制放電させる(S106)。
【0029】
DCリンクキャパシタ(Vdc)の強制放電は、上述した数式(1)によって目標放電時間、システム電圧、および放電終止電圧を決定して放電電流指令を決定する。S106で、制御器200は、インバータ130のDCリンクキャパシタ(Vdc)に充電された電圧の強制放電が完了すれば、次のメインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の入力電圧、すなわち、DCリンクキャパシタ(Vdc)の出力電圧を検出する(S107)。この後、制御器200は、検出されたメインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の電圧を比較して電圧差を検出し(S108)、電圧差が融着判定のために設定された基準電圧未満であるかを判断する(S109)。
【0030】
S109で、制御器200は、電圧差が融着判定のために設定された基準電圧未満であると判断されれば、メインリレー120の融着として判定し(S110)、設定された所定の方法によって警告メッセージを出力させた後、強制的にパワーオフを実行する(S111)。例えば、制御器200は、メインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の入力電圧の電圧差が一定の範囲に含まれるか同じであれば、メインリレーの融着によってメインバッテリ110の電圧がインバータ130に継続して供給されるものと判定する。
【0031】
すなわち、メインリレー120の融着が発生した状態では、DCリンクキャパシタを強制放電させてもメインバッテリ110の電圧が継続して供給される状態であるため、メインバッテリ110の電圧(VBAT)とインバータ130の入力電圧を同じであるか設定された基準電圧の範囲に含まれる。S109で、制御器200は、電圧差が設定された基準電圧を超えれば、メインリレー120のスイッチングオフによってメインバッテリ110の出力が安定に遮断された状態であるため、メインリレー120は融着が発生しない正常状態であると判定し(S112)、正常なパワーオフを実行する(S113)。
【0032】
以上のようにイグニッションオフが検出されれば、メインリレーの融着可否を容易にモニタリングすることができ、車両の安全性および信頼性が提供される。
【0033】
以上、本発明の実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多様な修正および変形が可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両の高電圧バッテリとインバータの間に装着され、高電圧バッテリを制御するメインリレーの融着可否を診断できる装置として好適である。
【符号の説明】
【0035】
110 メインバッテリ
120 メインリレー
130 インバータ
140 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
高電圧が格納されるメインバッテリと、
メインバッテリの電圧出力を制御するメインリレーと、
メインリレーを通じて供給されるメインバッテリの電圧を交流電圧に変換し、モータに駆動電圧として供給するインバータと、
イグニッションオフによってメインリレーを遮断した後、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させ、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否を判定する制御器と、
を含むことを特徴とする親環境車両のメインリレーモニタリング装置。

【請求項2】
前記制御器は、メインリレーのオフが完了されればインバータをスイッチングさせ、モータの抵抗によってDCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させることを特徴とする請求項1に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング装置。

【請求項3】
前記制御器は、DCリンクキャパシタの強制放電完了後、メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧が同じであるか一定値の範囲に含まれればメインリレーの融着として判定し、故障メッセージを出力した後に強制パワーオフを実行することを特徴とする請求項1に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング装置。

【請求項4】
イグニッションオフが検出されればインバータのスイッチング動作を中止させ、メインリレーをオフにしてメインバッテリの電圧出力を遮断させる過程と、
メインリレーのオフが完了すれば、DCリンクキャパシタに充電された電圧を強制放電させる過程と、
メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧を比較してメインリレーの融着可否をモニタリングする過程と、
を含むことを特徴とする親環境車両のメインリレーモニタリング方法。

【請求項5】
前記DCリンクキャパシタの強制放電は、モータの抵抗を通じて放電させることを特徴とする請求項4に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング方法。

【請求項6】
前記メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧が同じであるか一定の電圧差以内であればメインリレーの融着として判定し、強制パワーオフを実行することを特徴とする請求項4に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング方法。

【請求項7】
前記DCリンクキャパシタの強制放電において、インバータのスイッチングによってDCリンクキャパシタに充電された電圧をモータの抵抗を通じて強制放電することを特徴とする請求項5に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング方法。

【請求項8】
前記メインバッテリの電圧とインバータの入力電圧の電圧差が設定された基準電圧以上であればメインリレーが正常であると判定し、正常なパワーオフを実行することを特徴とする請求項4に記載の親環境車両のメインリレーモニタリング方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−98170(P2013−98170A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143773(P2012−143773)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)