説明

親綱支柱

【目的】 建設現場で枠組足場上を移動する作業者の墜落防止のために親綱を張設する時に使用する親綱支柱に関するもので、高強度,軽量,短小にし取扱性を向上させることを目的とする。
【構成】 支柱本体1 は繊維強化プラスチック製の角棒とし、滑車2 はキャップ21上端を延長折曲し、互いに対向した側壁22,22 間に設け、このキャップ21を支柱本体1 上端に覆せて支柱本体1 とともに軸で貫通固定し、支柱本体1 下部は、上部に締付金具3 ,下部に掛着金具4 を設けた固定筒5 に挿入し、下端部を軸6で貫通固定した構造である。
【効果】 固定筒5 に支柱本体1 の下部を挿入することにより、落下時の強度を固定筒5 全体で受けるため高強度が得られる。又固定筒5 自体も高強度であるため最小にでき、支柱全体の長さを短くできる。又そのことにより軽量にでき、取扱性を向上させることができる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本案は、建設現場等で使用する枠組足場その他の足場の最上部で墜落防止用の水平親綱を取付けるための親綱支柱に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建設現場等で枠組足場その他の足場の組立及び解体を行う際には作業員の墜落防止のため、足場最上段に親綱を張設することが必要であり、この親綱は、一定の高さを保持するため、足場上に立設する親綱支柱間に緊張状態で取付けられる。従来より図7に示す様な、親綱支柱が開示されており、これらは支柱本体が鋼製の角パイプより、FRPの角パイプに変更して軽量にし、取付作業を容易にしたものであった。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、軽量にし、取扱性を向上させたのは良いのであるが、このため強度不足を来したものであった。
なぜかというと、締付金具の金属製輪体とFRP製角パイプとを止める軸の穴を設けるため、この部分に応力が加わる(図8の矢印部)のでFRP製角パイプの強度が低下するものであった。
又、枠組足場のいろいろな形状に対応するため、締付金具より下部の掛着金具の移動量を見込んで支柱本体を長くしておかなければならないものであった。又、この掛着金具を、予め地上において調節,固定しておかなければならないものであった。
【0004】
【課題を解決するための手段】 本案の目的は前記従来例の不都合を解消し、軽量で取扱いやすく、高強度な親綱支柱を提供することにある。
前記目的を達成するため、支柱本体は繊維強化プラスチック製の角棒とし、締付金具と掛着金具は、固定筒の上下に一体に設け、支柱本体の応力箇所には穴などは設けず、固定筒で強度をもたし、強度低下を防止するものである。
掛着金具は、足場枠の脚柱に左右より突出片を当接させるもので、枠組足場の種類に関係なく使用できると共に、従来品の様に支柱本体を長くしなくてすみ、余長分をカットし軽量にできるものである。
【0005】
【実施例】 以下、図面について本案の実施例を詳記する。
図1は本案の親綱支柱の1実施例を示す正面図であり、支柱本体1 の材質をFRP(繊維強化プラスチック)とし、上下端部にボルトの挿通孔を設けたものである。
前記FRPとしては、不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をガラス繊維で強化した材料、いわゆるGRPのみならず、熱可塑性樹脂をガラス繊維で強化したFRTP及び炭素繊維やアラミド繊維等を併用したものを含む。
この支柱本体1 には従来例と同じく滑車2 や締付金具3 や掛着金具4 を取付けるのであるが、先にこれらの部品の構成を説明する。
図2は滑車2 の取付部の斜視図で、滑車2 はキャップ21上端を延長折曲し、互いに対向した側壁22,22 間に設け、キャップ21には軸で支柱本体上端に貫通固定する。また両側壁22,22 の外側上部を延長し、逆L字形部材23を前記滑車2 の上方を囲むように相互に逆向きにかつ間隔をあけて突設する。
尚、滑車2 の材質は合成樹脂製のものでよい。
【0006】
締付金具3 は、図3,4に示すように、支柱本体1 の外径を内径とする綱製の固定筒5 の上端部外周に、先端縁に凹部311 を形成した板状のスペーサー部312 と、該スペーサー部312 端部に突設する軸支部313 を設けた固定台座31を溶着し、該軸支部313 に、近似U字状の回動台座32の一端を回動自在に軸支33し、該回動台座32の他端に鉤部34を設ける。
さらにレバー取付台35を固定筒5 の側壁に溶着し、それに貫通支持された支軸36にレバー37の一端を枢着する。このレバー37には支軸36から離隔する部位にロッド38の基端部を回動自在に軸支381 すると共に、レバー37の他端側壁間にロックピン40を摺動自在に貫通し、スプリングピン401 により抜け止めとしたものである。
ロッド38の先端部は、ネジを螺刻し、それに嵌脱駒39を螺入したものである。
嵌脱駒39にはネジ穴を設けウレタン製の短棒を挿入し、ムシネジを螺入し、嵌脱駒39に抵抗を与え、不容易な回動を防止するものである。
嵌脱駒39は、前記回動台座32の鉤部34に嵌め入れ、レバー37を固定筒側に回動すると、ロックピン40は、レバー取付台35の下部延長板に設けたロックピン嵌合孔351 に嵌合し、枠組足場の脚柱51を固定し、ロックする構造を有している。
回動台座32は、近似U字状に形成した板材を上下対称に折曲して配し、その板材間の一端は、軸支部313 に回動自在に軸支33し、中央の凹部321 には、該板材間にウレタン樹脂製のクッション材322 を軸支323 し、形状は板材の凹部321 より、いく分はみ出たもので、脚柱51の締付時の緩衝緩和を目的とするものである。
尚下部板材中央部をL字状に折曲し、クッション材322 のストッパー324 を形成している。
【0007】
掛着金具4 は、図5に示すように、固定筒5 の下部外周に、スペーサー部41を設けた三日月形の突出片42を所定間隔を開けて上下に互い違いに配し、溶着したものである。
【0008】
以上の支柱本体1 の下部を固定筒5 に挿入し、掛着金具4 の突出片42,42 間に軸6 を貫通し、固定筒5 と結合するものである。
【0009】
使用方法は、予め足場枠50に支柱本体1 を取付けるには、支柱本体1 を手で持って掛着金具4 を斜めにして脚柱51に当てがい、そして支柱本体1 を垂直にする。このようにすると、支柱本体1 の下部が左右、前後にずれることなく脚柱51に半固定される。
次に締付金具3 の回動台座32のU字状内に脚柱51を取り込み、鉤部34に嵌脱駒39を嵌合し、レバー37を回動すれば、自動的にロックピン40がロックピン嵌合孔351 に嵌合し、ロックされ、脚柱51の上部に支柱本体1 を沿設固定する。
このように取付けられた支柱本体1 の上端に取付けた逆L字形部材23に親綱7 を逢うように差し入れて親綱7を張設し、親綱7 の両端部はフック及び緊張器にて固定する。
【0010】 次に足場を上段に盛り替える場合や、足場を解体する際支柱本体1 を取外すには、まず、親綱取付けと逆の動作で取外し支柱本体1 を手で支持しながら、ロックピン40を上へ引き上げてロックピン40をロックピン嵌合孔351 より外すと同時にレバー37を回動することにより、嵌脱駒39が鉤部34より外れ、回動台座32を開放することができ、脚柱51を外し、支柱本体1 を斜めに傾けることにより、脚柱51より外すことができる。これは足場下階において行う必要はなく、その階において作業できる。
【0011】
【考案の効果】
以上述べたように本案の親綱支柱は、支柱本体がFRP製なので従来品の鋼製と比べて全体が軽量となり、足場への取付け、取外しでの取扱いも楽に行なえ、安全性を向上させることができるものである。
なぜなら、従来品では斜設補剛材や、水平補剛材の位置に掛着金具を合わすために支柱本体を長くしていたものを、本案では掛着金具は脚柱に掛着し、斜設補剛材や水平補剛材の位置に関係なく、締付金具より下部の長さを最小限にでき、余長分がいらないので軽量にできる。又支柱本体を短くしたことにより取扱い性も向上させることができた。
又従来品では掛着金具を予め地上において調節固定しておかなければならなかったが、本案はそのような調節時間を必要としない利点がある。
又、従来品は締付金具部分の金属製輪体とFRP製角パイプとを軸で貫通固定しているため、図8の矢印部に上からの荷重と横からの荷重を受けるので強度低下を来たすものであったが、本案の場合は締付金具部分の支柱本体1 には貫通孔を設けていないので強度低下を来たさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本案実施例の正面図。
【図2】本案実施例の滑車部の斜視図。
【図3】本案実施例の締付金具部の斜視図。(ロック状態)
【図4】本案実施例の締付金具部の斜視図。(開放状態)
【図5】本案実施例の掛着金具部の斜視図。
【図6】本案実施例の固定筒部の斜視図。
【図7】従来品の正面図。
【図8】従来品の取付状態説明図。
【符号の説明】
1 支柱本体
2 滑 車
3 締付金具
4 掛着金具
5 固定筒
6 軸
7 親 綱
21 キャップ
22 側 壁
23 逆L字形部材
31 固定台座
32 回動台座
33 軸 支
34 鉤 部
35 レバー取付台
36 支 軸
37 レバー
38 ロッド
39 嵌脱駒
40 ロックピン
41 スペーサー部
42 突出片
311 凹 部
312 スペーサー部
313 軸支部
321 凹 部
322 クッション材
323 軸 支
324 ストッパー
351 ロックピン嵌合孔
381 軸 支
401 スプリングピン
50 足場枠
51 脚 柱
52 斜設補剛材

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 支柱本体1 と、その上端に取付ける滑車2 と、中間部に取付ける締付金具3 と、下部に取付ける掛着金具4 とからなる親綱支柱において、支柱本体1 は繊維強化プラスチック製の角棒とし、滑車2 はキャップ21上端を延長折曲し、互いに対向した側壁22,22 間に設け、このキャップ21を支柱本体1 上端に覆せて支柱本体1 とともに軸で貫通固定し、支柱本体1 下部は、上部に締付金具3 ,下部に掛着金具4 を設けた固定筒5 に挿入し、下端部を軸6 で貫通固定したことを特徴とする親綱支柱。
【請求項2】 締付金具3 は、支柱本体1 の外径を内径とする鋼製の固定筒5 の上端部外周に、固定台座31と、レバー取付台35を設け、該固定台座31の一端に突設する軸支部313 を設け、近似U字状に形成した回動台座32のU字状内径部に突出する半月状のクッション材322 を設け、一端に鉤部34を設け、他端は、前記固定台座31の軸支部に軸支し、前記レバー取付台35には、先端にロックピン40を設けたレバー37の基端部を軸支し、該レバー37の支軸36から離隔する部位に、先端ネジ部に嵌脱駒39を設けたロッド38の基端部を回動自在に設け、前記回動台座32の鉤部34と、嵌脱駒39を係合し、レバー37を回動することによりロックピン40がレバー取付台35のロックピン嵌合孔351 に嵌合し、ロックすることを特徴とする請求項1に記載の親綱支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】実開平6−56320
【公開日】平成6年(1994)8月5日
【考案の名称】親綱支柱
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−93358
【出願日】平成4年(1992)12月28日
【出願人】(000223687)藤井電工株式会社 (60)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)