観察用基板及び液滴供給装置
【課題】 観察視野に影響を与えずに、細胞周囲の液中環境を瞬時に変化させること。
【解決手段】 細胞Aを保持可能な保持領域Sを上面の所定位置に有する基板本体10と、保持領域S内に一端側が位置した状態で基板本体10の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液Wを移動可能に支持する電極パターン11と、該電極パターン11に電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部12とを備え、電極パターン11が、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極20と第2の電極21とを有し、電気接続部12を介して外部から第1の電極20と第2の電極21との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極20、21に沿って液滴状の溶液Wを任意の方向に移動させる観察用基板2を提供する。
【解決手段】 細胞Aを保持可能な保持領域Sを上面の所定位置に有する基板本体10と、保持領域S内に一端側が位置した状態で基板本体10の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液Wを移動可能に支持する電極パターン11と、該電極パターン11に電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部12とを備え、電極パターン11が、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極20と第2の電極21とを有し、電気接続部12を介して外部から第1の電極20と第2の電極21との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極20、21に沿って液滴状の溶液Wを任意の方向に移動させる観察用基板2を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフサイエンス分野、再生医療分野やバイオ関連分野等に関連する分野において、細胞を液中観察する際に使用する観察用基板及び該観察用基板を有する液滴供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオ関連研究において、培養液等の溶液中にある細胞を液中観察して、細胞と溶液との界面に存在するタンパク質を経過観察することが行われており、特に、溶液を瞬時に交換したり、溶液を混ぜ合わせる等して液中の環境を瞬間的に変化させたときの、タンパク質の変化を観察することが重要な研究課題の1つとされている。
この溶液の環境を変化させる方法としては、様々な方法が知られているが、一般的な方法の1つとして、溶液内に化学物質等を混入することで、液中の環境を変化させる方法が知られている。具体的には、溶液が満たされた容器内に細胞が保持されており、該容器に溶液供給管を介して溶液供給ポンプが接続されている。そして、溶液供給管の途中から、例えば、シリンジ等により化学物質等を混入させることで液中の環境を変化させている。
【0003】
また、別の方法の1つとして、溶液内に保持されている細胞の近傍にシリンジ等を位置させ、該シリンジによって他の溶液を注入することで、細胞周囲の環境を変化させる方法も知られている。
また、基板上に保持された細胞に、シリンジを利用して液滴状の溶液を滴下することで、細胞を液中観察する方法も知られており、この場合には、シリンジから適時溶液を滴下することで環境を変化させている。
そして、上述した方法等により、細胞周囲の環境変化を行い、この際のタンパク質の変化を、例えば、光学顕微鏡や、微小な探針で走査して画像や情報等を取得する走査型プローブ顕微鏡(SPM)等で観察を行う。
【0004】
ここで、現在、液滴状の溶液をパターニングされた電極上に沿って移動させる液体の誘電泳動という技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、所定間隔(ギャップ)を空けた状態で平行配置された一対の電極パターンに、所定の高周波電圧を印加すると、誘電泳動現象によって、電極パターン上に配された液滴状の溶液がギャップを流路とした状態で電極パターンに沿って移動するものである。
今後、この技術を利用して液滴状の溶液を被供給対象物に供給したり、液滴状の溶液同士を容易に混ぜ合わせたりする等して、各種分野の装置に応用することが考えられている。例えば、上述した細胞周囲の溶液を瞬時に変化させることへの応用が考えられている。
【特許文献1】特表2002−503047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の方法では以下の課題が残されていた。
即ち、上述した化学物質を注入する方法、シリンジにより溶液を注入する方法では、溶液が拡散等してしまい、細胞周囲の溶液の環境を瞬時に変化させることは困難なものであった。また、シリンジを利用した方法では、注入又は滴下のいずれを行うにしても、シリンジ自身を観察領域である細胞の近傍に位置させる必要があるので、観察視野を遮ってしまい観察に影響を与えるものであった。また、シリンジを細胞近傍に正確に位置させる必要があるが、この位置合わせが難しく、手間のかかるものであった。そのため、効率良く観察を行うことができなかった。更には、シリンジで溶液を注入する場合には、注入した時点で拡散してしまうので、溶液を必要以上の量だけ注入する必要があり、コスト高を招いていた。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、観察視野に影響を与えずに、細胞周囲の液中環境を瞬時に変化させることができる観察用基板及び該観察用基板を備えた液滴供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の観察用基板は、細胞を保持可能な保持領域を上面の所定位置に有する基板本体と、前記保持領域内に一端側が位置した状態で前記基板本体の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液を移動可能に支持する電極パターンと、該電極パターンに電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部とを備え、前記電極パターンが、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極に沿って前記液滴状の溶液を任意の方向に移動させることを特徴とするものである。
【0008】
この発明に係る観察用基板においては、細胞を保持する保持領域内に、液滴状の溶液を支持するレール状の電極パターンの一端側、即ち、第1の電極及び第2の電極の一端側が位置している。ここで、電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に、所定周波数の交流電圧を印加させると、液滴状の溶液は誘電泳動力により両電極間のギャップ部分に引き込まれ、両電極に沿って移動する。これにより、保持領域に保持されている細胞に液滴状の溶液を適時供給することができる。この結果、細胞は保持領域で液滴状の溶液に包まれ、液中に存在している状態になる。そして、この状態を観察することで、細胞を液中観察することができる。つまり、保持領域が観察領域の状態になっている。
【0009】
このように、電極パターンによって液滴状の溶液を適時細胞に供給できるので、細胞周囲の環境を瞬間的に変化(例えば、種類の異なる溶液を供給して混ぜ合わせることで環境を変化)させることができる。よって、この環境変化によるタンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。この際、溶液は液滴状であるので、従来のように拡散することなく、直接的に細胞に作用(影響)する。
また、電極パターンは基板本体の上面に沿ってレール状に配されているので、細胞が保持されている保持領域の上方側は障害物が存在しない状態となっている。即ち、外部からアクセス可能な状態に開放されている状態となっている。よって、保持領域の細胞を、例えば、光学顕微鏡やSPMの探針等で観察する際に、従来のようにシリンジが干渉する等の影響を受けることはない。従って、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
【0010】
また、液滴状の溶液を供給するので、該溶液を無駄にすることがなく、必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
なお、同じ種類の溶液を適時供給することで、細胞の乾燥を防止しながら長期的な観察も行うことができる。また、この際、バッファ溶液を用いることで、濃度を一定にした状態で長期的な観察を行うことも可能である。また、電極パターンは、常に印加されるのではなく、溶液を移動させるときにのみ印加されるので、温度上昇を極力防止することができる。よって、溶液や細胞に対して熱の影響を与え難い。
【0011】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記電極パターンが、前記保持領域を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが放射状に複数設けられているので、各種の溶液を細胞に瞬時に効率良く混入させることができ、様々な組み合わせのもとで多角的な観察を行うことができる。
また、電極パターンが複数設けられているので、新たな溶液を供給する前に、細胞を包んでいる溶液を先に移動させ、その後、新たな溶液を供給することも可能である。即ち、溶液の交換を瞬時に行うことができる。これにより、細胞周囲の環境をより変化させることができ、タンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。
【0013】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記電極パターンが、前記一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐していることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが途中で複数に分岐されているので、例えば、種類の異なる溶液を分岐点で一旦反応(混ぜ合わせ)させた後、この反応溶液を細胞に供給することができる。よって、より多角的な観察を行うことができる。
【0015】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記電極パターンが、前記他端側に前記液滴状の溶液を一時的に保持する保持部を有していることを特徴とするものである。
【0016】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンの他端側に保持部が設けられているので、電極パターンに交流電圧を印加しない状態でも確実に溶液を液滴状のまま保持することができる。よって、交流電圧の印加時に速やかに液滴状の溶液を細胞に向けて移動させることができる。
【0017】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記基板本体の上面には、前記保持領域の周囲を囲むように前記液滴状の溶液を弾く疎水性膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る観察用基板においては、保持領域の周囲を囲むように疎水性膜が形成されているので、溶液が細胞に供給される際、仮に溶液の一部が周囲に飛沫したしても、疎水性膜に弾かれて保持領域内に戻る。よって、確実に所定量の溶液を細胞に供給することができる。
【0019】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記疎水性膜が、前記電極パターンの周囲を囲むように形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンの周囲を囲むように疎水性膜が形成されているので、溶液が電極パターン上を移動している際、仮に溶液の一部が電極パターン外に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれる。よって、確実に所定量の溶液を細胞に供給することができる。
【0021】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記電極パターンが、薄膜状の保護膜で被膜されていることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが保護膜で被膜(コーティング)されているので、外部との直接的な接触を防ぐことができる。よって、電極パターンが保護され、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0023】
また、本発明の液滴供給装置は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板と、前記電気接続部に電気的接続され、前記電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加する電圧印加手段と、該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る液滴供給装置においては、制御手段により電圧印加手段を作動させて電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加させることで、溶液を細胞に向かう方向又は細胞から離間する方向に移動させることができ、溶液の供給や交換等を行って瞬間的に環境を変化させることができる。なお、溶液は、例えば、手動で電極パターン上に滴下すれば良い。
【0025】
また、本発明の液滴供給装置は、上記本発明の液滴供給装置において、前記液滴状の溶液を前記電極パターン上に滴下すると共に、前記制御手段により作動が制御される溶液供給手段を備えていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る液滴供給装置においては、溶液供給手段を備えているので、人手をかけることなく、必要時に溶液を電極パターン上に滴下することができ、制御手段により溶液の滴下と溶液の移動とを自動的に制御できるので、使い易く利便性に優れている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る観察用基板によれば、電極パターンにより液滴状の溶液を適時細胞に供給できるので、細胞周囲の環境を瞬間的に変化させることができる。よって、タンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。また、保持領域の周囲は障害物が存在しない状態となっているので、保持領域の細胞を光学顕微鏡やSPMの探針等で何の影響も受けることなく確実に観察することができる。よって、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
また、液滴状の溶液を供給するので、該溶液を無駄にすることがなく必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る液滴供給装置によれば、溶液を細胞に向かう方向又は細胞から離間する方向に移動させることができ、溶液の供給や交換等を行って瞬間的に細胞周囲の環境を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る観察用基板及び液滴供給装置の一実施形態について、図1から図18を参照して説明する。
本実施形態の液滴供給装置1は、図1に示すように、細胞Aを載置する観察用基板2と、該観察用基板2の後述する電気接続部12に電気的接続され、後述する電極パターン11に所定周波数の交流電圧(例えば、周波数300kHz、交流電圧500Vrms)を印加する駆動用電源(電圧印加手段)3と、該駆動用電源3の作動を制御するコントローラ(制御手段)4とを備えている。
【0030】
また、本実施形態の観察用基板2は、光学顕微鏡5のステージ6上に載置されている。この光学顕微鏡5は、ステージ6の上方に配された対物レンズ7と、該対物レンズ7を介して観察用基板2に載置された細胞Aを液中観察する接眼レンズ8と、ステージ6の下方から照明光を観察用基板2に向けて照射する照明系9とを備えた正立型顕微鏡である。
【0031】
上記観察用基板2は、図2から図4に示すように、細胞Aを保持可能な保持領域Sを上面の所定位置に有するガラス基板(基板本体)10と、保持領域S内に一端側が位置した状態でガラス基板10の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液Wを移動可能に支持する電極パターン11と、該電極パターン11に電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部12とを備えている。
【0032】
上記電極パターン11は、保持領域Sを中心として放射状に4本(複数)設けられている。即ち、電極パターン11は、保持領域Sを中心として角度90度毎に、ガラス基板10の各辺に直交するよう直線状に形成されている。つまり、ガラス基板10を上方から見たときに、4つの電極パターン11が組み合わさって十字型になるように設けられている。
また、本実施形態においては、電極パターン11の他端側に、液滴状の溶液Wを一時的に保持する液貯まり(保持部)11aが形成されている。
また、各電極パターン11は、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極20と第2の電極21とを有し、電気接続部12を介して駆動用電源3から所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極20、21に沿って液滴状の溶液Wを任意の方向に移動できるようになっている。
この両電極20、21は、それぞれ他端側が半円形状に形成されており、これらが組み合わさることで円形状の液滴形成領域となっている。即ち、この領域が上記液貯まり11aとなっており、表面張力を利用して溶液Wを液滴状のまま保持できるようになっている。
また、電極パターン11は、薄膜状の保護膜(例えば、SiO2の絶縁膜)13で被膜されており、外部に露出しないようになっている。
【0033】
次に、上記観察用基板2の製造方法について、以下に説明する。
まず、図5に示すように、ガラス基板10の上面全体に電極パターン11となる金属材料を、例えば、蒸着法やスパッタ法等によりメタルコートして金属層15を成膜する。次いで、図6に示すように、金属層15の上面に、図2に示す電極パターン11となるようにフォトレジスト膜16をリソグラフィー技術によってパターニングする。
次いで、図7に示すように、フォトレジスト膜16をマスクとして、金属層15をエッチング加工して電極パターン11を作製する。エッチング加工後、図8に示すように、マスクとしていたフォトレジスト膜16を除去することで、ガラス基板10の上面にフォトレジスト膜16のパターニング通りの電極パターン11を形成することができる。なお、フォトレジスト膜16は、ポジ型でもネガ型でも構わない。
最後に、図9に示すように、ガラス基板10の上面全体に、例えば、スパッタ法やCVD(化学気相成長法)等により保護膜13を薄膜状に成膜する。これにより、電極パターン11が保護膜13で被膜された観察用基板2を製造することができる。
【0034】
このように構成された観察用基板2及び液滴供給装置1を利用して、光学顕微鏡5により細胞Aの経時的な変化を観察する場合について、以下に説明する。
まず、観察用基板2の保持領域Sに細胞Aを保持させると共に、所望の溶液Wを、例えば、シリンジ等で液貯まり11aに滴下する。この際、液貯まり11aは、円形状であるので、滴下された溶液Wは自身の表面張力で液滴状態で確実に保持される。
次いで、この観察用基板2を光学顕微鏡5のステージ6上に載置すると共に、保持領域Sが対物レンズ7の観察領域内に入るようにステージ6の位置調整を行う。
【0035】
次いで、コントローラ4により駆動用電源3を作動させて、溶液Wが載置された電極パターン11の第1の電極20と第2の電極21との間に、所定周波数の交流電圧を印加する。この電圧印加により、液貯まり11aに保持された溶液Wは、誘電泳動力により第1の電極20と第2の電極21との間のギャップに引き込まれ、図10に示すように、電極パターン11上を細胞Aに向けて移動する。そして、電極パターン11の一端側まで移動した溶液Wは、図11に示すように、保持領域Sに保持されている細胞Aと接触すると共に、表面張力により細胞A側に引き込まれる。その結果、図12に示すように、細胞Aを包み込んだ状態で安定する。つまり、細胞Aは、液中に存在する状態で保持領域Sに保持された状態となる。従って、対物レンズ7を介して細胞Aを液中観察することができる。
【0036】
ここで、上記溶液Wに、他の種類の溶液W’(例えば、濃度、イオン、温度が異なる溶液)を混ぜ合わせて、細胞Aの周囲の環境を変化させたときの経時的変化の観察を行う。
まず、いずれかの電極パターン11の液貯まり11a上に他の種類の溶液W’を、例えば、シリンジ17等で滴下する。そして、コントローラ4により駆動用電源3を作動させて、溶液W’が載置された電極パターン11に、所定周波数の交流電圧を印加する。この電圧印加により、上述した説明と同じように、他の溶液W’が電極パターン11上を移動して、細胞Aに供給される。
この供給により、種類の異なる溶液W、W’を混ぜ合わせることができ、細胞Aの周囲の環境を瞬時に変化させることができる。よって、観察者は、対物レンズ7及び接眼レンズ8を介して環境変化による細胞Aの周囲のタンパク質の経時的な変化を観察することができる。また、この際、溶液W、W’は液滴状であるので、従来のように拡散することなく、直接的に細胞Aに作用(影響)する。
【0037】
また、電極パターン11は、ガラス基板10の上面に沿ってレール状に設けられているので、細胞Aが保持されている保持領域Sの周囲(上方側)は障害物が存在しない状態となっている。即ち、外部からアクセス可能な状態に開放されている状態となっている。よって、従来のようにシリンジが干渉する等の影響を受けることはなく、保持領域Sの細胞Aの近傍に対物レンズ7を位置させることができ、観察する視界が妨げられることはない。従って、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
また、液滴状の溶液W、W’を供給するので、該溶液W、W’を無駄にすることなく必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
【0038】
また、同じ種類の溶液Wを適時供給することで、細胞Aの乾燥を防止しながら長期的な観察も行うことができる。この際、バッファ溶液を用いることで、濃度を一定にした状態で長期的な観察を行うことも可能である。また、電極パターン11は、常に印加されるのではなく、溶液Wを移動させるときにのみ印加されるので、溶液Wの温度上昇を極力防止することができる。よって、細胞Aに熱の影響を与え難い。
また、電極パターン11には、液貯まり11aが設けられているので、交流電圧を印加したときに、速やかに液滴状の溶液Wを細胞Aに対して供給することができ、観察を円滑に行うことができる。
また、電極パターン11は、保護膜13で被膜(コーティング)されているので、外部との直接的な接触を防ぐことができる。よって、電極パターン11が保護され、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0039】
更に、本実施形態の観察用基板2は、電極パターン11が複数設けられているので、溶液交換も行うことが可能である。
即ち、新たな溶液W’を細胞Aに供給する前に、細胞Aを包んでいる既存の溶液Wを新たな溶液W’が載置されている電極パターン11以外の電極パターン11に移動させ、その後、新たな溶液W’を細胞Aに供給することが可能である。
この溶液交換について、図13から図18を参照して以下に具体的に説明する。
【0040】
まず、図13に示すように、溶液Wに包まれた状態で保持領域Sに保持されている細胞Aに向けて、例えば、同じ種類の溶液Wを誘電泳動力を利用して移動させる。なお、この状態は、細胞Aを包んでいる溶液Wが電極パターン11に接触していない状態である。
次いで、電極パターン11の他端側に移動した溶液Wは、図14に示すように、細胞Aを包んでいる溶液Wに接触すると共に表面張力により引き込まれる。その結果、図15に示すように、細胞Aを包んでいる溶液Wの液量が増え、該溶液Wが複数の電極パターン11の一端側に接触した状態となる。
【0041】
この状態で、溶液Wを移動させたものとは別の電極パターン11に所定周波数の交流電圧を印加する。これにより、図16に示すように、液量が増えた溶液Wは、誘電泳動力により交流電圧が印加された電極パターン11に引き込まれ、図17に示すように、該電極パターン11上を液滴状に移動する。これにより、細胞Aの周囲に溶液Wが存在しない状態となる。
【0042】
また、上述した溶液Wの離脱を行っている際、図17に示すように、同時に電極パターン11に所定周波数の交流電圧を印加して、新たな溶液W’を誘電泳動力を利用して細胞Aに向けて移動させておく。その結果、図18に示すように、新たな溶液W’を細胞Aに供給して、該細胞Aを新たな溶液W’で包み込むことができる。
上述した各手順を経ることで、溶液交換を瞬時に行うことができる。よって、細胞Aの周囲の環境をより変化させることができ、タンパク質の経時的な変化をより明確に観察することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、ステージ6の上方に対物レンズ7、ステージ6の下方に照明系9を配した正立型の光学顕微鏡5を利用して細胞Aを液中観察したが、ステージ6の上方に照明系9、ステージ6の下方に対物レンズ7を配した倒立型の光学顕微鏡により観察を行っても構わない。
また、光学顕微鏡5に限られず、例えば、カンチレバーの先端に探針を有する原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡を利用して観察を行っても構わない。この場合においても、保持領域Sの周囲が開放されている状態であるので、何の障害もなく探針を細胞Aの近傍に位置させることができ、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、電極パターン11を4つ設けた構成にしたが、4つに限られず、1つでも構わないし、2つ以上の複数個設けても構わない。また、電極パターン11を、保持領域S内に位置している一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐するように設けても構わない。
こうすることで、種類の異なる溶液を分岐点で一旦反応(混ぜ合わせ)させた後、この反応した溶液を細胞Aに供給することができる。よって、より多角的な観察を行うことができる。
【0046】
また、ガラス基板10の上面に、保持領域Sの周囲を囲むように溶液Wを弾く疎水性膜を形成しても構わない。こうすることで、溶液Wを細胞Aに供給させる際、仮に溶液Wの一部が周囲に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれて保持領域S内に戻る。よって、確実に所定量の溶液Wを細胞Aに供給することができる。
また、この疎水性膜を、電極パターン11の周囲を囲むように形成しても構わない。こうすることで、溶液Wが電極パターン11上を移動している際、仮に溶液Wの一部が電極パターン11外に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれる。よって、より確実に所定量の溶液Wを細胞Aに供給することができる。
【0047】
また、上記実施形態の液滴供給装置1に、液滴状の溶液Wを電極パターン11上に滴下する溶液供給手段を加え、コントローラ4が溶液供給手段の作動を制御するように構成しても構わない。
このようにすることで、人手をかけることなく、必要時に溶液Wを電極パターン11上に滴下することができる。よって、コントローラ4により溶液Wの滴下と溶液Wの移動とを自動的に制御でき、使い易く利便性に優れたものを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る液滴供給装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る観察用基板の一実施形態を示す上面図である。
【図3】図2に示す観察用基板の保持領域周辺の拡大図である。
【図4】図2に示す観察用基板の断面矢視X−X図である。
【図5】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、ガラス基板の上面全体に金属層を形成した状態を示す図である。
【図6】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図5に示す状態から、金属層に電極パターンの形状でフォトレジスト膜をパターニングした状態を示す図である。
【図7】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図6に示す状態から、フォトレジスト膜をマスクとして金属層をエッチング加工し、電極パターンを作製した状態を示す図である。
【図8】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図7に示す状態から、フォトレジスト膜を除去した状態を示す図である。
【図9】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図8に示す状態から、薄膜状の保護膜を成膜し、電極パターンを被膜した状態を示す図である。
【図10】電極パターン上の液滴状の溶液を、保持領域上に保持されている細胞に向けて誘電泳動力により移動させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図11】図10に示す状態から、溶液が細胞に接触すると共に表面張力により細胞に引き込まれている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図12】図11に示す状態から、溶液が細胞を包んで、該細胞を液中に存在させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図13】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、溶液に包まれている細胞に向けて、同じ種類の溶液を電極パターンに沿って誘電泳動力により移動させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図14】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図13に示す状態から、移動してきた溶液が細胞を包んでいる溶液に接触すると共に表面張力により引き込まれている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図15】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図14に示す状態から、移動してきた溶液が取り込まれることで、細胞を包んでいる溶液の液量が増え、該溶液と電極パターンの一端側とが接触している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図16】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図15に示す状態から、細胞を包んでいる溶液が電極パターン上に移動している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図17】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図16に示す状態から、細胞を包んでいる溶液が電極パターン上に移動して細胞から離脱していると共に、新たな溶液が電極パターン上を細胞に向けて移動している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図18】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図17に示す状態から、新たな溶液が細胞に接触して該細胞を包み込んで、溶液の交換が終了した状態を示す観察用基板の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
A 細胞
S 保持領域
1 液滴供給装置
2 観察用基板
3 駆動用電源(電圧印加手段)
4 コントローラ(制御手段)
10 ガラス基板(基板本体)
11 電極パターン
11a 液貯まり(保持部)
12 電気接続部
13 保護膜
20 第1の電極
21 第2の電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフサイエンス分野、再生医療分野やバイオ関連分野等に関連する分野において、細胞を液中観察する際に使用する観察用基板及び該観察用基板を有する液滴供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオ関連研究において、培養液等の溶液中にある細胞を液中観察して、細胞と溶液との界面に存在するタンパク質を経過観察することが行われており、特に、溶液を瞬時に交換したり、溶液を混ぜ合わせる等して液中の環境を瞬間的に変化させたときの、タンパク質の変化を観察することが重要な研究課題の1つとされている。
この溶液の環境を変化させる方法としては、様々な方法が知られているが、一般的な方法の1つとして、溶液内に化学物質等を混入することで、液中の環境を変化させる方法が知られている。具体的には、溶液が満たされた容器内に細胞が保持されており、該容器に溶液供給管を介して溶液供給ポンプが接続されている。そして、溶液供給管の途中から、例えば、シリンジ等により化学物質等を混入させることで液中の環境を変化させている。
【0003】
また、別の方法の1つとして、溶液内に保持されている細胞の近傍にシリンジ等を位置させ、該シリンジによって他の溶液を注入することで、細胞周囲の環境を変化させる方法も知られている。
また、基板上に保持された細胞に、シリンジを利用して液滴状の溶液を滴下することで、細胞を液中観察する方法も知られており、この場合には、シリンジから適時溶液を滴下することで環境を変化させている。
そして、上述した方法等により、細胞周囲の環境変化を行い、この際のタンパク質の変化を、例えば、光学顕微鏡や、微小な探針で走査して画像や情報等を取得する走査型プローブ顕微鏡(SPM)等で観察を行う。
【0004】
ここで、現在、液滴状の溶液をパターニングされた電極上に沿って移動させる液体の誘電泳動という技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、所定間隔(ギャップ)を空けた状態で平行配置された一対の電極パターンに、所定の高周波電圧を印加すると、誘電泳動現象によって、電極パターン上に配された液滴状の溶液がギャップを流路とした状態で電極パターンに沿って移動するものである。
今後、この技術を利用して液滴状の溶液を被供給対象物に供給したり、液滴状の溶液同士を容易に混ぜ合わせたりする等して、各種分野の装置に応用することが考えられている。例えば、上述した細胞周囲の溶液を瞬時に変化させることへの応用が考えられている。
【特許文献1】特表2002−503047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の方法では以下の課題が残されていた。
即ち、上述した化学物質を注入する方法、シリンジにより溶液を注入する方法では、溶液が拡散等してしまい、細胞周囲の溶液の環境を瞬時に変化させることは困難なものであった。また、シリンジを利用した方法では、注入又は滴下のいずれを行うにしても、シリンジ自身を観察領域である細胞の近傍に位置させる必要があるので、観察視野を遮ってしまい観察に影響を与えるものであった。また、シリンジを細胞近傍に正確に位置させる必要があるが、この位置合わせが難しく、手間のかかるものであった。そのため、効率良く観察を行うことができなかった。更には、シリンジで溶液を注入する場合には、注入した時点で拡散してしまうので、溶液を必要以上の量だけ注入する必要があり、コスト高を招いていた。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、観察視野に影響を与えずに、細胞周囲の液中環境を瞬時に変化させることができる観察用基板及び該観察用基板を備えた液滴供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の観察用基板は、細胞を保持可能な保持領域を上面の所定位置に有する基板本体と、前記保持領域内に一端側が位置した状態で前記基板本体の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液を移動可能に支持する電極パターンと、該電極パターンに電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部とを備え、前記電極パターンが、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極に沿って前記液滴状の溶液を任意の方向に移動させることを特徴とするものである。
【0008】
この発明に係る観察用基板においては、細胞を保持する保持領域内に、液滴状の溶液を支持するレール状の電極パターンの一端側、即ち、第1の電極及び第2の電極の一端側が位置している。ここで、電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に、所定周波数の交流電圧を印加させると、液滴状の溶液は誘電泳動力により両電極間のギャップ部分に引き込まれ、両電極に沿って移動する。これにより、保持領域に保持されている細胞に液滴状の溶液を適時供給することができる。この結果、細胞は保持領域で液滴状の溶液に包まれ、液中に存在している状態になる。そして、この状態を観察することで、細胞を液中観察することができる。つまり、保持領域が観察領域の状態になっている。
【0009】
このように、電極パターンによって液滴状の溶液を適時細胞に供給できるので、細胞周囲の環境を瞬間的に変化(例えば、種類の異なる溶液を供給して混ぜ合わせることで環境を変化)させることができる。よって、この環境変化によるタンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。この際、溶液は液滴状であるので、従来のように拡散することなく、直接的に細胞に作用(影響)する。
また、電極パターンは基板本体の上面に沿ってレール状に配されているので、細胞が保持されている保持領域の上方側は障害物が存在しない状態となっている。即ち、外部からアクセス可能な状態に開放されている状態となっている。よって、保持領域の細胞を、例えば、光学顕微鏡やSPMの探針等で観察する際に、従来のようにシリンジが干渉する等の影響を受けることはない。従って、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
【0010】
また、液滴状の溶液を供給するので、該溶液を無駄にすることがなく、必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
なお、同じ種類の溶液を適時供給することで、細胞の乾燥を防止しながら長期的な観察も行うことができる。また、この際、バッファ溶液を用いることで、濃度を一定にした状態で長期的な観察を行うことも可能である。また、電極パターンは、常に印加されるのではなく、溶液を移動させるときにのみ印加されるので、温度上昇を極力防止することができる。よって、溶液や細胞に対して熱の影響を与え難い。
【0011】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記電極パターンが、前記保持領域を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが放射状に複数設けられているので、各種の溶液を細胞に瞬時に効率良く混入させることができ、様々な組み合わせのもとで多角的な観察を行うことができる。
また、電極パターンが複数設けられているので、新たな溶液を供給する前に、細胞を包んでいる溶液を先に移動させ、その後、新たな溶液を供給することも可能である。即ち、溶液の交換を瞬時に行うことができる。これにより、細胞周囲の環境をより変化させることができ、タンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。
【0013】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記電極パターンが、前記一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐していることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが途中で複数に分岐されているので、例えば、種類の異なる溶液を分岐点で一旦反応(混ぜ合わせ)させた後、この反応溶液を細胞に供給することができる。よって、より多角的な観察を行うことができる。
【0015】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記電極パターンが、前記他端側に前記液滴状の溶液を一時的に保持する保持部を有していることを特徴とするものである。
【0016】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンの他端側に保持部が設けられているので、電極パターンに交流電圧を印加しない状態でも確実に溶液を液滴状のまま保持することができる。よって、交流電圧の印加時に速やかに液滴状の溶液を細胞に向けて移動させることができる。
【0017】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記基板本体の上面には、前記保持領域の周囲を囲むように前記液滴状の溶液を弾く疎水性膜が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る観察用基板においては、保持領域の周囲を囲むように疎水性膜が形成されているので、溶液が細胞に供給される際、仮に溶液の一部が周囲に飛沫したしても、疎水性膜に弾かれて保持領域内に戻る。よって、確実に所定量の溶液を細胞に供給することができる。
【0019】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明の観察用基板において、前記疎水性膜が、前記電極パターンの周囲を囲むように形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンの周囲を囲むように疎水性膜が形成されているので、溶液が電極パターン上を移動している際、仮に溶液の一部が電極パターン外に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれる。よって、確実に所定量の溶液を細胞に供給することができる。
【0021】
また、本発明の観察用基板は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板において、前記電極パターンが、薄膜状の保護膜で被膜されていることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る観察用基板においては、電極パターンが保護膜で被膜(コーティング)されているので、外部との直接的な接触を防ぐことができる。よって、電極パターンが保護され、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0023】
また、本発明の液滴供給装置は、上記本発明のいずれかに記載の観察用基板と、前記電気接続部に電気的接続され、前記電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加する電圧印加手段と、該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る液滴供給装置においては、制御手段により電圧印加手段を作動させて電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加させることで、溶液を細胞に向かう方向又は細胞から離間する方向に移動させることができ、溶液の供給や交換等を行って瞬間的に環境を変化させることができる。なお、溶液は、例えば、手動で電極パターン上に滴下すれば良い。
【0025】
また、本発明の液滴供給装置は、上記本発明の液滴供給装置において、前記液滴状の溶液を前記電極パターン上に滴下すると共に、前記制御手段により作動が制御される溶液供給手段を備えていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る液滴供給装置においては、溶液供給手段を備えているので、人手をかけることなく、必要時に溶液を電極パターン上に滴下することができ、制御手段により溶液の滴下と溶液の移動とを自動的に制御できるので、使い易く利便性に優れている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る観察用基板によれば、電極パターンにより液滴状の溶液を適時細胞に供給できるので、細胞周囲の環境を瞬間的に変化させることができる。よって、タンパク質の経時的な変化を明確に観察することができる。また、保持領域の周囲は障害物が存在しない状態となっているので、保持領域の細胞を光学顕微鏡やSPMの探針等で何の影響も受けることなく確実に観察することができる。よって、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
また、液滴状の溶液を供給するので、該溶液を無駄にすることがなく必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る液滴供給装置によれば、溶液を細胞に向かう方向又は細胞から離間する方向に移動させることができ、溶液の供給や交換等を行って瞬間的に細胞周囲の環境を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る観察用基板及び液滴供給装置の一実施形態について、図1から図18を参照して説明する。
本実施形態の液滴供給装置1は、図1に示すように、細胞Aを載置する観察用基板2と、該観察用基板2の後述する電気接続部12に電気的接続され、後述する電極パターン11に所定周波数の交流電圧(例えば、周波数300kHz、交流電圧500Vrms)を印加する駆動用電源(電圧印加手段)3と、該駆動用電源3の作動を制御するコントローラ(制御手段)4とを備えている。
【0030】
また、本実施形態の観察用基板2は、光学顕微鏡5のステージ6上に載置されている。この光学顕微鏡5は、ステージ6の上方に配された対物レンズ7と、該対物レンズ7を介して観察用基板2に載置された細胞Aを液中観察する接眼レンズ8と、ステージ6の下方から照明光を観察用基板2に向けて照射する照明系9とを備えた正立型顕微鏡である。
【0031】
上記観察用基板2は、図2から図4に示すように、細胞Aを保持可能な保持領域Sを上面の所定位置に有するガラス基板(基板本体)10と、保持領域S内に一端側が位置した状態でガラス基板10の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液Wを移動可能に支持する電極パターン11と、該電極パターン11に電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部12とを備えている。
【0032】
上記電極パターン11は、保持領域Sを中心として放射状に4本(複数)設けられている。即ち、電極パターン11は、保持領域Sを中心として角度90度毎に、ガラス基板10の各辺に直交するよう直線状に形成されている。つまり、ガラス基板10を上方から見たときに、4つの電極パターン11が組み合わさって十字型になるように設けられている。
また、本実施形態においては、電極パターン11の他端側に、液滴状の溶液Wを一時的に保持する液貯まり(保持部)11aが形成されている。
また、各電極パターン11は、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極20と第2の電極21とを有し、電気接続部12を介して駆動用電源3から所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極20、21に沿って液滴状の溶液Wを任意の方向に移動できるようになっている。
この両電極20、21は、それぞれ他端側が半円形状に形成されており、これらが組み合わさることで円形状の液滴形成領域となっている。即ち、この領域が上記液貯まり11aとなっており、表面張力を利用して溶液Wを液滴状のまま保持できるようになっている。
また、電極パターン11は、薄膜状の保護膜(例えば、SiO2の絶縁膜)13で被膜されており、外部に露出しないようになっている。
【0033】
次に、上記観察用基板2の製造方法について、以下に説明する。
まず、図5に示すように、ガラス基板10の上面全体に電極パターン11となる金属材料を、例えば、蒸着法やスパッタ法等によりメタルコートして金属層15を成膜する。次いで、図6に示すように、金属層15の上面に、図2に示す電極パターン11となるようにフォトレジスト膜16をリソグラフィー技術によってパターニングする。
次いで、図7に示すように、フォトレジスト膜16をマスクとして、金属層15をエッチング加工して電極パターン11を作製する。エッチング加工後、図8に示すように、マスクとしていたフォトレジスト膜16を除去することで、ガラス基板10の上面にフォトレジスト膜16のパターニング通りの電極パターン11を形成することができる。なお、フォトレジスト膜16は、ポジ型でもネガ型でも構わない。
最後に、図9に示すように、ガラス基板10の上面全体に、例えば、スパッタ法やCVD(化学気相成長法)等により保護膜13を薄膜状に成膜する。これにより、電極パターン11が保護膜13で被膜された観察用基板2を製造することができる。
【0034】
このように構成された観察用基板2及び液滴供給装置1を利用して、光学顕微鏡5により細胞Aの経時的な変化を観察する場合について、以下に説明する。
まず、観察用基板2の保持領域Sに細胞Aを保持させると共に、所望の溶液Wを、例えば、シリンジ等で液貯まり11aに滴下する。この際、液貯まり11aは、円形状であるので、滴下された溶液Wは自身の表面張力で液滴状態で確実に保持される。
次いで、この観察用基板2を光学顕微鏡5のステージ6上に載置すると共に、保持領域Sが対物レンズ7の観察領域内に入るようにステージ6の位置調整を行う。
【0035】
次いで、コントローラ4により駆動用電源3を作動させて、溶液Wが載置された電極パターン11の第1の電極20と第2の電極21との間に、所定周波数の交流電圧を印加する。この電圧印加により、液貯まり11aに保持された溶液Wは、誘電泳動力により第1の電極20と第2の電極21との間のギャップに引き込まれ、図10に示すように、電極パターン11上を細胞Aに向けて移動する。そして、電極パターン11の一端側まで移動した溶液Wは、図11に示すように、保持領域Sに保持されている細胞Aと接触すると共に、表面張力により細胞A側に引き込まれる。その結果、図12に示すように、細胞Aを包み込んだ状態で安定する。つまり、細胞Aは、液中に存在する状態で保持領域Sに保持された状態となる。従って、対物レンズ7を介して細胞Aを液中観察することができる。
【0036】
ここで、上記溶液Wに、他の種類の溶液W’(例えば、濃度、イオン、温度が異なる溶液)を混ぜ合わせて、細胞Aの周囲の環境を変化させたときの経時的変化の観察を行う。
まず、いずれかの電極パターン11の液貯まり11a上に他の種類の溶液W’を、例えば、シリンジ17等で滴下する。そして、コントローラ4により駆動用電源3を作動させて、溶液W’が載置された電極パターン11に、所定周波数の交流電圧を印加する。この電圧印加により、上述した説明と同じように、他の溶液W’が電極パターン11上を移動して、細胞Aに供給される。
この供給により、種類の異なる溶液W、W’を混ぜ合わせることができ、細胞Aの周囲の環境を瞬時に変化させることができる。よって、観察者は、対物レンズ7及び接眼レンズ8を介して環境変化による細胞Aの周囲のタンパク質の経時的な変化を観察することができる。また、この際、溶液W、W’は液滴状であるので、従来のように拡散することなく、直接的に細胞Aに作用(影響)する。
【0037】
また、電極パターン11は、ガラス基板10の上面に沿ってレール状に設けられているので、細胞Aが保持されている保持領域Sの周囲(上方側)は障害物が存在しない状態となっている。即ち、外部からアクセス可能な状態に開放されている状態となっている。よって、従来のようにシリンジが干渉する等の影響を受けることはなく、保持領域Sの細胞Aの近傍に対物レンズ7を位置させることができ、観察する視界が妨げられることはない。従って、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
また、液滴状の溶液W、W’を供給するので、該溶液W、W’を無駄にすることなく必要最小限の量で済み、低コスト化を図ることができる。
【0038】
また、同じ種類の溶液Wを適時供給することで、細胞Aの乾燥を防止しながら長期的な観察も行うことができる。この際、バッファ溶液を用いることで、濃度を一定にした状態で長期的な観察を行うことも可能である。また、電極パターン11は、常に印加されるのではなく、溶液Wを移動させるときにのみ印加されるので、溶液Wの温度上昇を極力防止することができる。よって、細胞Aに熱の影響を与え難い。
また、電極パターン11には、液貯まり11aが設けられているので、交流電圧を印加したときに、速やかに液滴状の溶液Wを細胞Aに対して供給することができ、観察を円滑に行うことができる。
また、電極パターン11は、保護膜13で被膜(コーティング)されているので、外部との直接的な接触を防ぐことができる。よって、電極パターン11が保護され、耐久性、信頼性を向上することができる。
【0039】
更に、本実施形態の観察用基板2は、電極パターン11が複数設けられているので、溶液交換も行うことが可能である。
即ち、新たな溶液W’を細胞Aに供給する前に、細胞Aを包んでいる既存の溶液Wを新たな溶液W’が載置されている電極パターン11以外の電極パターン11に移動させ、その後、新たな溶液W’を細胞Aに供給することが可能である。
この溶液交換について、図13から図18を参照して以下に具体的に説明する。
【0040】
まず、図13に示すように、溶液Wに包まれた状態で保持領域Sに保持されている細胞Aに向けて、例えば、同じ種類の溶液Wを誘電泳動力を利用して移動させる。なお、この状態は、細胞Aを包んでいる溶液Wが電極パターン11に接触していない状態である。
次いで、電極パターン11の他端側に移動した溶液Wは、図14に示すように、細胞Aを包んでいる溶液Wに接触すると共に表面張力により引き込まれる。その結果、図15に示すように、細胞Aを包んでいる溶液Wの液量が増え、該溶液Wが複数の電極パターン11の一端側に接触した状態となる。
【0041】
この状態で、溶液Wを移動させたものとは別の電極パターン11に所定周波数の交流電圧を印加する。これにより、図16に示すように、液量が増えた溶液Wは、誘電泳動力により交流電圧が印加された電極パターン11に引き込まれ、図17に示すように、該電極パターン11上を液滴状に移動する。これにより、細胞Aの周囲に溶液Wが存在しない状態となる。
【0042】
また、上述した溶液Wの離脱を行っている際、図17に示すように、同時に電極パターン11に所定周波数の交流電圧を印加して、新たな溶液W’を誘電泳動力を利用して細胞Aに向けて移動させておく。その結果、図18に示すように、新たな溶液W’を細胞Aに供給して、該細胞Aを新たな溶液W’で包み込むことができる。
上述した各手順を経ることで、溶液交換を瞬時に行うことができる。よって、細胞Aの周囲の環境をより変化させることができ、タンパク質の経時的な変化をより明確に観察することができる。
【0043】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態では、ステージ6の上方に対物レンズ7、ステージ6の下方に照明系9を配した正立型の光学顕微鏡5を利用して細胞Aを液中観察したが、ステージ6の上方に照明系9、ステージ6の下方に対物レンズ7を配した倒立型の光学顕微鏡により観察を行っても構わない。
また、光学顕微鏡5に限られず、例えば、カンチレバーの先端に探針を有する原子間力顕微鏡等の走査型プローブ顕微鏡を利用して観察を行っても構わない。この場合においても、保持領域Sの周囲が開放されている状態であるので、何の障害もなく探針を細胞Aの近傍に位置させることができ、タンパク質の経時的な変化を見逃すことなく確実に観察することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、電極パターン11を4つ設けた構成にしたが、4つに限られず、1つでも構わないし、2つ以上の複数個設けても構わない。また、電極パターン11を、保持領域S内に位置している一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐するように設けても構わない。
こうすることで、種類の異なる溶液を分岐点で一旦反応(混ぜ合わせ)させた後、この反応した溶液を細胞Aに供給することができる。よって、より多角的な観察を行うことができる。
【0046】
また、ガラス基板10の上面に、保持領域Sの周囲を囲むように溶液Wを弾く疎水性膜を形成しても構わない。こうすることで、溶液Wを細胞Aに供給させる際、仮に溶液Wの一部が周囲に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれて保持領域S内に戻る。よって、確実に所定量の溶液Wを細胞Aに供給することができる。
また、この疎水性膜を、電極パターン11の周囲を囲むように形成しても構わない。こうすることで、溶液Wが電極パターン11上を移動している際、仮に溶液Wの一部が電極パターン11外に飛沫したとしても、疎水性膜に弾かれる。よって、より確実に所定量の溶液Wを細胞Aに供給することができる。
【0047】
また、上記実施形態の液滴供給装置1に、液滴状の溶液Wを電極パターン11上に滴下する溶液供給手段を加え、コントローラ4が溶液供給手段の作動を制御するように構成しても構わない。
このようにすることで、人手をかけることなく、必要時に溶液Wを電極パターン11上に滴下することができる。よって、コントローラ4により溶液Wの滴下と溶液Wの移動とを自動的に制御でき、使い易く利便性に優れたものを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る液滴供給装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る観察用基板の一実施形態を示す上面図である。
【図3】図2に示す観察用基板の保持領域周辺の拡大図である。
【図4】図2に示す観察用基板の断面矢視X−X図である。
【図5】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、ガラス基板の上面全体に金属層を形成した状態を示す図である。
【図6】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図5に示す状態から、金属層に電極パターンの形状でフォトレジスト膜をパターニングした状態を示す図である。
【図7】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図6に示す状態から、フォトレジスト膜をマスクとして金属層をエッチング加工し、電極パターンを作製した状態を示す図である。
【図8】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図7に示す状態から、フォトレジスト膜を除去した状態を示す図である。
【図9】図2に示す観察用基板の製造工程を示す図であって、図8に示す状態から、薄膜状の保護膜を成膜し、電極パターンを被膜した状態を示す図である。
【図10】電極パターン上の液滴状の溶液を、保持領域上に保持されている細胞に向けて誘電泳動力により移動させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図11】図10に示す状態から、溶液が細胞に接触すると共に表面張力により細胞に引き込まれている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図12】図11に示す状態から、溶液が細胞を包んで、該細胞を液中に存在させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図13】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、溶液に包まれている細胞に向けて、同じ種類の溶液を電極パターンに沿って誘電泳動力により移動させている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図14】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図13に示す状態から、移動してきた溶液が細胞を包んでいる溶液に接触すると共に表面張力により引き込まれている状態を示す観察用基板の断面図である。
【図15】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図14に示す状態から、移動してきた溶液が取り込まれることで、細胞を包んでいる溶液の液量が増え、該溶液と電極パターンの一端側とが接触している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図16】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図15に示す状態から、細胞を包んでいる溶液が電極パターン上に移動している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図17】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図16に示す状態から、細胞を包んでいる溶液が電極パターン上に移動して細胞から離脱していると共に、新たな溶液が電極パターン上を細胞に向けて移動している状態を示す観察用基板の断面図である。
【図18】細胞を包んでいる溶液を交換する際の工程を示す図であって、図17に示す状態から、新たな溶液が細胞に接触して該細胞を包み込んで、溶液の交換が終了した状態を示す観察用基板の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
A 細胞
S 保持領域
1 液滴供給装置
2 観察用基板
3 駆動用電源(電圧印加手段)
4 コントローラ(制御手段)
10 ガラス基板(基板本体)
11 電極パターン
11a 液貯まり(保持部)
12 電気接続部
13 保護膜
20 第1の電極
21 第2の電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を保持可能な保持領域を上面の所定位置に有する基板本体と、
前記保持領域内に一端側が位置した状態で前記基板本体の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液を移動可能に支持する電極パターンと、
該電極パターンに電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部とを備え、
前記電極パターンは、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極に沿って前記液滴状の溶液を任意の方向に移動させることを特徴とする観察用基板。
【請求項2】
請求項1記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記保持領域を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とする観察用基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐していることを特徴とする観察用基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記他端側に前記液滴状の溶液を一時的に保持する保持部を有していることを特徴とする観察用基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記基板本体の上面には、前記保持領域の周囲を囲むように前記溶液を弾く疎水性膜が形成されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項6】
請求項5記載の観察用基板において、
前記疎水性膜は、前記電極パターンの周囲を囲むように形成されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、薄膜状の保護膜で被膜されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の観察用基板と、
前記電気接続部に電気的接続され、前記電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加する電圧印加手段と、
該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする液滴供給装置。
【請求項9】
請求項8記載の液滴供給装置において、
前記液滴状の溶液を前記電極パターン上に滴下すると共に、前記制御手段により作動が制御される溶液供給手段を備えていることを特徴とする液滴供給装置。
【請求項1】
細胞を保持可能な保持領域を上面の所定位置に有する基板本体と、
前記保持領域内に一端側が位置した状態で前記基板本体の上面に沿ってレール状に設けられ、液滴状の溶液を移動可能に支持する電極パターンと、
該電極パターンに電気的接続され、外部と電気接続可能な電気接続部とを備え、
前記電極パターンは、所定間隔を空けた状態で平行配置された第1の電極と第2の電極とを有し、前記電気接続部を介して外部から第1の電極と第2の電極との間に所定周波数の交流電圧が印加されたときに、誘電泳動力により両電極に沿って前記液滴状の溶液を任意の方向に移動させることを特徴とする観察用基板。
【請求項2】
請求項1記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記保持領域を中心として放射状に複数設けられていることを特徴とする観察用基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記一端側から他端側に向かう途中で複数に分岐していることを特徴とする観察用基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、前記他端側に前記液滴状の溶液を一時的に保持する保持部を有していることを特徴とする観察用基板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記基板本体の上面には、前記保持領域の周囲を囲むように前記溶液を弾く疎水性膜が形成されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項6】
請求項5記載の観察用基板において、
前記疎水性膜は、前記電極パターンの周囲を囲むように形成されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の観察用基板において、
前記電極パターンは、薄膜状の保護膜で被膜されていることを特徴とする観察用基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の観察用基板と、
前記電気接続部に電気的接続され、前記電極パターンに所定周波数の交流電圧を印加する電圧印加手段と、
該電圧印加手段の作動を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする液滴供給装置。
【請求項9】
請求項8記載の液滴供給装置において、
前記液滴状の溶液を前記電極パターン上に滴下すると共に、前記制御手段により作動が制御される溶液供給手段を備えていることを特徴とする液滴供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−217808(P2006−217808A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31458(P2005−31458)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/物性・生体情報ナノマッピングシステム(機能性プローブ)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)/物性・生体情報ナノマッピングシステム(機能性プローブ)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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