説明

観覧車

【課題】複合現実感の提示範囲を地上からの視点だけでは無くより広範囲なものにさせると共に、ゴンドラの搭乗者に対し単に風景を眺めているだけでは得られなかった面白みを付与させる観覧車を提供する。
【解決手段】本発明は、複数のゴンドラ63を有する観覧車である。この観覧車は、各ゴンドラ63に設けられこのゴンドラ63外の実風景を撮る撮像部1と、各ゴンドラ63内に設けられた表示部2と、撮像部1により撮られた実画像の所定の位置に仮想画像を重ね合わせることにより合成画像を生成し、その合成画像を表示部2に表示させる制御部3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観覧車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、遊園地などに設置された観覧車が知られている(例えば、特許文献1参照)。この観覧車は、回転輪に沿って所定の間隔ごとに設けられた複数のゴンドラを有しており、このゴンドラに搭乗者を乗せた状態で回転輪をゆっくりと回転させる。ゴンドラ内の搭乗者は、ゆっくりとした移動に伴って見え方が変わってゆく風景を楽しんだり、頂上付近における周囲の眺望を楽しんだりすることができる。
【0003】
ところがこの従来の観覧車は、単に、ゴンドラ外に現に見える風景を眺めるだけに過ぎなかったので、人によっては退屈に感じることもあった。特に、その土地を熟知している人や一度乗車した人などにとっては面白みに欠けるものとなっていた。
【0004】
ところで、近年、現実空間と仮想空間とを実時間で融合する複合現実感[Mixed Reality;拡張現実感(Augmented Reality)や拡張仮想感(Augmented Virtuality)も含む]を提示する装置の研究が盛んに行なわれている(例えば、特許文献2,3参照)。この複合現実感を提示する装置は、例えば、カメラ等の撮像部によって現実空間を撮像すると共に、撮像部によって撮られた画像(実画像)に仮想画像を重ね合わせて合成画像を生成し、その合成画像を外部に出力するものであり、この合成画像を見たユーザーに実画像と仮想画像とを融合させた複合現実感を与えることができる。特許文献2,3の装置は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD;head mount display)に撮像部が取り付けられており、この撮像部で撮られた実画像にリアルタイムで仮想画像を重畳して合成画像を生成し、この合成画像をこのヘッドマウントディスプレイに映し出すようになっている。そのため、ヘッドマウントディスプレイを装着したまま歩行すると、ユーザーの視点に応じた映像に仮想画像が重畳的に表示されて、あたかも現実空間にその仮想画像が存在しているかのように感じさせることができる。
【0005】
しかし単に地上を歩行・走行するだけのユーザーが、このような複合現実感を提示する装置を用いただけであれば、ユーザーは地上から周囲の景色を見渡すことができる範囲でしか複合現実感を味わうことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−167215号公報
【特許文献2】特開2008−293209号公報
【特許文献3】特開2008−275391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複合現実感の提示範囲を地上からの視点だけでは無くより広範囲なものにさせると共に、ゴンドラの搭乗者に対し単に風景を眺めているだけでは得られなかった面白みを付与させる観覧車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の観覧車は以下の構成とする。
【0009】
本発明は、複数のゴンドラ63を有する観覧車である。この観覧車は、各ゴンドラ63に設けられこのゴンドラ63外の実風景を撮る撮像部1と、各ゴンドラ63内に設けられた表示部2と、撮像部1により撮られた実画像の所定の位置に仮想画像を重ね合わせることにより合成画像を生成し、その合成画像を表示部2に表示させる制御部3とを備えている。
【0010】
このように構成したことで、観覧車のゴンドラ63から見える広範囲な視野を利用した複合現実感(拡張現実感や拡張仮想感も含む)をゴンドラ63の搭乗者に与えることができる。しかもゴンドラ63は水平方向だけでなく、高さ方向にも常時移動しているから、地上からの視点だけでは得られなかった複合現実感を与えることが可能となる。
【0011】
本発明の観覧車は、制御部3が、仮想画像が記憶された記憶部34と、この記憶部34に記憶された仮想画像の大きさ・角度を、ゴンドラ63の位置に応じて変化させる仮想画像変形手段36と、仮想画像変形手段36により変化させた画像を、撮像部1により撮られた実画像の所定の位置に重ね合わせることにより合成画像を生成する画像合成手段33と、画像合成手段33により生成された画像を表示部に表示させる画像表示手段35とを有していることが好ましい。
【0012】
このように構成したことで、ゴンドラ63の移動に応じて仮想画像を変形させることができる。これにより合成画像をより現実のものに近づけることができる。
【0013】
また本発明の観覧車は、前記撮像部1の位置を検出する位置検出部と、撮像部1の撮像方向を検出する撮像方向検出部とをさらに備え、前記仮想画像変形手段36は、位置検出部の検出情報と撮像方向検出部の検出情報とに基づいて、前記仮想画像を変化させるものであることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、実画像と仮想画像との位置合わせを比較的精度よく行なうことができる。
【0015】
また本発明の観覧車は、前記制御部3が、前記実画像に含まれる特定の物体をマーカとして認識するマーカ認識手段30と、マーカ認識手段30により認識されたマーカの位置・姿勢を導出する位置・姿勢導出手段32とをさらに備え、前記記憶部34は、前記マーカに前記仮想画像を対応付けて予め記憶してあり、前記仮想画像変形手段36は、位置・姿勢導出手段32により導出されたマーカの位置・姿勢情報に基づいて前記仮想画像を変化させるものであり、制御部3は、前記マーカ認識手段30によりマーカが認識されると、そのマーカに対応する仮想画像を記憶部34から取得すると共にその取得した仮想画像を仮想画像変形手段36により変化させ、その変化させた画像を画像合成手段33により実画像のマーカに対応する部分に重ね合わせて合成画像を生成し、画像表示手段33によりその合成画像を表示部2に表示させるものであることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、実画像と仮想画像との位置合わせの精度を向上させることができる。
【0017】
また前記仮想画像が、現在とは異なる時代の風景を模したコンピュータグラフィックス画像であることが好ましい。
【0018】
これにより、例えば、その土地における過去の歴史上の建物や未来の予想図等を実画像に重畳させて合成画像を生成することができ、ゴンドラ63の搭乗者に対し面白みを与えることができる。
【0019】
また本発明の観覧車は、記憶部34には複数の異なる年代の仮想画像が記憶されており、前記各ゴンドラ63は、任意の年代の風景に設定可能な設定部52をさらに備え、前記制御部3は、この設定部52により設定された年代に対応する仮想画像を記憶部34から取得し前記実画像に重ね合わせることによって画像を生成し、画像表示手段35によりその合成画像を表示部2に表示させるものであることが好ましい。
【0020】
これにより、ゴンドラ63の搭乗者の所望の年代における風景を表示部2により表示することができ、搭乗者に対し一層面白みを与えることができる。
【0021】
また本発明の観覧車は、前記撮像部1が、ゴンドラ63の外部に設けられると共に撮像方向を変更可能なカメラであり、前記ゴンドラ63は、前記カメラの撮像方向を変更させる操作部5をさらに備えていることが好ましい。
【0022】
これにより、ゴンドラ63の搭乗者の所望の視点における実画像と仮想画像とを重畳させ表示させることが可能となり、より広範囲な視野を利用した複合現実感を搭乗者に与えることができる。
【0023】
また本発明の観覧車は、前記表示部2が頭部装着型表示装置に備えられていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の観覧車によれば、複合現実感の提示範囲を地上からの視点だけでは無くより広範囲なものにさせると共に、ゴンドラの搭乗者に対し単に風景だけを眺めているだけでは得られなかった面白みを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態の制御を示すブロック図である。
【図2】同上の観覧車の全体を示した正面図である。
【図3】同上のゴンドラ内を示した斜視図である。
【図4】他の実施形態のゴンドラ内を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0027】
実施形態1の観覧車は、図2に示されるように、観覧車の設置面Gから1対の支持脚体60が前後に間隔をあけて立設され、1対の支持脚体60の上端間に回転軸61が水平に架設されている。この回転軸61に回転輪62が枢支されており、回転輪62は回転自在となっている。回転輪62は、支持脚体60に設けられた駆動装置(図示せず)によって回転駆動する。回転輪62は、略円形に形成された骨組み体であり、その外周端部には複数のゴンドラ63が円周方向に沿って所定間隔ごとに吊り下げられている。回転輪62の外周端部に吊持された各ゴンドラ63は、回転輪62に対し回動自在に取り付けられており、回転輪62の周囲のどの位置に移動しても常に鉛直姿勢を保持することができる。各ゴンドラ63の回転軌跡は、略円周軌跡状である。ゴンドラ63の回転軌跡の下端部位には、搭乗者がゴンドラ63に乗降するための乗降場64が設けられている。
【0028】
各ゴンドラ63は、外形が正面視略円形をしており、内部に搭乗者が搭乗するための空間を有している。各ゴンドラ63は、側面に搭乗者が出入り可能な出入り口65が設けられており、この出入り口65には開閉可能な扉66が設けられている。ゴンドラ63は、外部の下部にゴンドラ63外の風景(実風景)を撮像する撮像部1が取り付けられている。本実施形態の撮像部1は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラで構成されると共に、撮像方向駆動装置(図示せず)に取り付けられており、撮像方向が水平方向からやや下方に向いた状態のまま全方位(水平方向360°)に変更可能に構成されている。この撮像部1は、後述の制御部3を介してゴンドラ63内に設けられた操作部5と接続されており、操作部5を操作することで、その撮像方向を変更させることができる。この操作部5は、図3に示されるように、ゴンドラ63の出入り口65とは反対側の内側面に設けられており、表示部2に隣接して配置されている。操作部5は、傾倒自在な操作レバー51を有しており、この操作レバー51を傾倒させることで撮像部1の撮像方向を変更させる。表示部2は、モニターから構成されており、上方に向けてやや傾斜することでその表示面が搭乗者の顔の位置する部分に向くように配設されている。この表示部2は、制御部3に接続されており、制御部3により制御される。表示部2は、対向配置された一対の座席67の略中間部に設けられている。ゴンドラ63には座席67よりも上方に透過窓68が取り付けられており、搭乗者はこの透過窓68を通して外部の風景(実風景)を眺めることができる。
【0029】
なお操作部5としては、上記のようにゴンドラ63の内側面に固定的に取り付けられたものに限らず、他例として、例えば、表示部2の側方に配設された電気配線を介して操作部が取り付けられて、この操作部が移動自在となったものであってもよい。また、ゴンドラ63の内側面に受信部(図示せず)を新たに設けると共に、送信部を有する操作部を設け、無線により操作部を操作するようにしてもよい。
【0030】
制御部3は、撮像部1により撮られた実画像内の、ある特定の物体に対し、仮想画像を重ね合わせることにより合成画像を生成し、その合成画像を表示部2に表示させる部分である。制御部3は、撮像部1により撮像した画像(実画像)に仮想画像を重畳して新たな画像を生成し、その画像を表示部2に表示させる機能を有する、いわゆる複合現実感(拡張現実感や拡張仮想感も含む)技術を適用したシステムとなっている。本実施形態の制御部3は、風景のある特定の物体をマーカとして認識させ、そのマーカに対応する部分に仮想画像を重畳させるマーカ認識型の複合現実感技術を利用している。制御部3は、図1に示されるように、マーカ認識手段30と、マーカ記憶部31と、位置・姿勢導出手段32と、仮想画像変形手段36と、記憶部34と、画像合成手段33と、画像表示手段35とを有しており、マイクロプロセッサーを主構成要素とするコンピュータによって構成されている。本実施形態の制御部3のコンピュータは、各ゴンドラ63の座席67の内部に格納されている。
【0031】
マーカ認識手段30は、撮像部1により撮像された実風景に含まれる特定の物体をマーカとして認識する。マーカは、実風景を撮影した画像に仮想画像を重畳させる際の相対位置姿勢の基準となるマークのことであり、実風景に含まれる特定の物体(例えば城跡や展望台など)の3次元形状の特徴に基づいて認識される。この特定の物体の3次元形状の特徴の情報は、マーカ記憶部31にあらかじめ登録されている。このマーカ記憶部31は、メモリから構成されており、複数の異なるマーカの形状情報が格納されている。マーカ認識手段30は、このマーカ記憶部31に記憶された形状情報と、撮像部1により撮像された画像に含まれる特定の物体の形状情報とを照らし合わせることによって、マーカ記憶部31に記憶された複数のマーカのうちのどのマーカに該当するかを認識させる。このマーカ認識手段による処理は、DP(Dynamic programming)マッチングなどの画像比較アルゴリズムで実現可能である。この処理では、撮像部1の解像度を上げることで登録マーカとの比較をより詳細に行なうことが可能となるので、撮像部1の解像度を上げれば、登録マーカの数量を多くすることが可能となる。本実施形態のマーカとしては、実画像内に含まれる城・城跡・展望台・タワー・マンション・遊戯施設・駅・高速道路などが例示される。またマーカの認識は、実画像内に含まれる複数の物体をそれぞれのマーカとして複数箇所ごとに認識させてもよいし、実画像内に含まれる複数の物体を一組のマーカとして認識させるものであってもよい。このマーカ認識手段30により認識されたマーカに関する情報は、位置・姿勢導出手段32と仮想画像変形手段36に送られる。
【0032】
位置・姿勢導出手段32は、マーカ認識手段30により認識されたマーカの3次元の位置や姿勢を求める。位置・姿勢導出手段32は、例えば、マーカ認識手段30から受け取ったマーカに関する3次元形状の情報と、実画像内のそのマーカに対応した物体の3次元位置・形状とに基づいて、そのマーカの撮像部1に対する位置・姿勢を算出する。すなわち撮像部1から見たマーカに対する距離・角度を導き出すことになる。マーカに対応した物体の3次元位置・形状を特定するための情報としては、例えば、当該マーカの少なくとも3点の特徴点のマーカ内における座標値が挙げられる。なお、マーカの3次元位置・姿勢を計算する手法は、例えば「加藤博一、汐崎徳男、橘啓八郎:テクスチャー画像からオンライン生成されたテンプレートのマッチングに基づく拡張現実感のための位置合わせ手法、日本バーチャルリアリティ学会論文誌、Vol.7, No.2, pp.119-128 (2002)」などにも示されるような公知の手法が用いられる。
【0033】
また、その他のマーカの位置・姿勢を導出する方法としては、ゴンドラの位置(すなわち撮像部1の位置)を検出する位置検出部と、撮像部1の撮像方向を検出する撮像方向検出部とを設け、位置検出部の検出情報と撮像方向検出部の検出情報とに基づいて、撮像部1に対するマーカの位置・姿勢を算出する手法が挙げられる。位置検出部は、乗降場64に設けられたトリガ発信器と、各ゴンドラに設けられたトリガ受信器と、トリガ発信器から発せられた信号をトリガ受信器により受けた時点からの時間を計測するタイマとを備えたものが考えられる。タイマにより計測される時間情報と、定常速度で回転する回転輪62の回転速度情報とから、各ゴンドラ63に設けられた制御部3によって各ゴンドラ63の位置を演算することができる。撮像方向検出部としては、撮像部1に取り付ける地磁気センサー、ジャイロセンサー等のセンサーが考えられる。なお観覧車の回転輪62は連続的に回転しており、これにより各ゴンドラ63は一定の速度で移動しているため、実画像に含まれるマーカの位置・姿勢は常時変化する。
【0034】
なお、位置検出部として、いわゆるグローバル・ポジショニング・システム(GPS;Global Positioning System)を利用するものであってもよいのはもちろんである。
【0035】
この位置・姿勢導出手段32により導出された位置・姿勢情報は、仮想画像変形手段36に送られる。
【0036】
仮想画像変形手段36は、マーカ認識手段30から送られたマーカに関する情報を受け取ると、そのマーカに対応する仮想画像を記憶部34から取得する。この記憶部34は、メモリにより構成されており、特定のマーカと特定の仮想画像とを対応付けて予め記憶しておく部分である。この仮想画像としては、過去の風景(例えば城や都)を模したコンピュータグラフィックス画像(以下、CG画像という)や、未来を予想した風景を模したCG画像など、現在とは異なる時代の風景を模した種々のものが挙げられる。特に過去の風景としては、名所旧跡をマーカとして認識させた場合に、仮想画像としてその場所に以前建っていたとされる城や都などのCG画像を実画像に重畳させたり、戦国時代の戦の様子をCG画像として実画像に重畳させたりすることができる。また戦国時代の戦の様子などに関し、その戦の様子を動画で表現すれば、一層臨場感や面白みを付与することができてより好ましいものとなる。もちろん、さらに遡って、例えば石器時代の住居などをCG画像とすることも可能である。
【0037】
仮想画像変形手段36は、記憶部34に記憶された仮想画像のその大きさ・角度を、ゴンドラ63の位置に応じて変化させる。具体的には、位置・姿勢導出手段32により導出されたマーカの位置・姿勢情報に基づいて仮想画像を変化させる。仮想画像変形手段36は、マーカ認識手段30から送られたマーカに関する情報を受け取ると、上述のようにそのマーカに対応する仮想画像を記憶部34から取得する。そして、位置・姿勢導出手段32により算出された情報に基づいて、仮想画像の大きさ・角度を特定し、その大きさ・角度特定情報に基づいて、仮想画像を変形させる。この変形としては、地上に3次元の仮想画像が表す物体(例えば城など)が設けられているものと仮定し、空中にあるゴンドラ63の撮像部1から見た当該地上の物体の形状に一致するように、仮想画像を変化させるのが好ましい。
【0038】
また仮想画像変形手段36は、上記のように仮想画像の大きさ・角度を変形したうえで、実風景の明るさに応じてその仮想画像の明るさを補正する補正手段を有していてもよい。つまり補正手段により仮想画像の輝度を操作することで、実画像への仮想画像の重ね合わせをより違和感なく行なうことができる。
【0039】
このように仮想画像変形手段36により変形させた仮想画像の情報は、画像合成手段33に送られる。
【0040】
画像合成手段33は、仮想画像変形手段36から変形させた仮想画像の情報を取得すると、実画像のそのマーカに対応する部分に、変形後の仮想画像を重ね合わせて、新たな画像(合成画像)を生成する。ここで生成された合成画像の情報は、画像表示手段35に送られる。
【0041】
画像表示手段35は、画像合成手段33により生成された画像を表示部2に表示させる部分である。画像表示手段35は、画像合成手段33からの合成画像の情報を受け取ると、ゴンドラ63内に配設された表示部2にその合成画像を表示させる。
【0042】
このような制御部3における一連の制御は、観覧車のゴンドラ63の移動に伴って連続的に行なわれる。例えばゴンドラ63が上昇していくとマーカの相対的な姿勢も次第に変化してゆくことになるが、仮想画像変形手段36はゴンドラの位置に応じて仮想画像を変化させるため、仮想画像は、ゴンドラ63の上昇に伴って次第に小さくなると共に、上方から眺めた姿勢に変化してゆく。これにより表示部2により表示される画像は、実画像に重畳された画像が仮想画像であったとしても、実際の画像に限りなく近いものとすることができる。
【0043】
また表示部2により表示される画像は、実画像に対し仮想画像が重畳されたものであるため、天候や明るさといった周りの環境と同期する。これにより、例えば、予め収録しておいた録画画像を観覧車の動きに合わせて単に放映するものに比べて、より一層臨場感が増すものとなる。
【0044】
つまり本実施形態の観覧車は、観覧車のゴンドラ63から見える広範囲な視野を利用した複合現実感をゴンドラ63の搭乗者に与えることができる。しかもゴンドラ63は水平方向だけでなく、高さ方向にも常時移動しているから、地上からの視点だけでは得られなかった複合現実感を与えることが可能となる。
【0045】
しかも本実施形態の観覧車は、操作部5に撮像部1の撮像方向を変更自在な操作レバー51が設けられているため、搭乗者の所望の向きの風景に複合現実感を与えることができる。これにより搭乗者はより一層、面白みを感じることができる。
【0046】
ここで本実施形態の観覧車は、操作部5に、操作レバー51とは別に、仮想画像の内容を設定可能な設定部52がさらに設けられている。この設定部52は、各時代を模して作製された仮想画像のうち設定された時代の仮想画像を表示させる年代設定ボタンや、空想の世界の実在しない各種キャラクター(例えば、怪獣など)を表示させるキャラクター設定ボタンなど、さまざまな設定が可能な設定ボタンを有している。この設定部52は制御部3に接続されており、例えば、年代設定ボタンを操作すると、縄文時代,弥生時代・・・といった過去の風景や未来を表す風景などを選択して表示部2に表示させることができる。記憶部34には、各時代に対応した複数の仮想画像が予め記憶されている。例えば年代設定ボタンにより平安時代が設定されると、設定部52は、画像合成手段33に平安時代が選択された信号を送る。すると制御部3は、その平安時代に対応し且つマーカ認識手段30により認識されたマーカに対応する仮想画像(例えば平安京を模したCG画像)を記憶部34から取得する。そして、仮想画像変形手段36は、位置・姿勢導出手段32による情報に基づいて(つまりゴンドラ63の位置に応じて)その仮想画像の大きさ・姿勢(角度)を変形させ、画像合成手段33によってその変形させた仮想画像を実画像に重畳させて画像を生成する。ここで生成された画像は、画像表示手段35に送られ、表示部2に表示される。
【0047】
このように設定部52によって、表示部2に表示される画像を搭乗者の所望の時代のものに設定することが可能となるので、観覧車から景色を眺めるだけでは得られなかったその土地の歴史に関する学習ができ、また歴史に対する興味を喚起することも可能である。さらに、歴史上の建物などを上方から眺めることができるようになるため、搭乗者は従来にはない面白みを感じることができる。
【0048】
また本実施形態の観覧車は、コンテンツの変更に当たって、記憶部34に記憶された仮想画像を修正・変更するだけでよいので、定期的に内容の変更を行なえばリピータの獲得も可能である。
【0049】
また仮想画像として、マーカに対応する特定の物体(名所旧跡,有名なスポットなど)の名称を示すような画像や、その特定の物体の観光情報や説明文が記載された画像などを適用すれば、表示部2による表示を観覧車による映像ガイドとして利用することもできる。また、仮想画像は、建物の前に企業名を表示させたり、空中へ浮かぶアドバルーンに企業名や商品名やブランド名を記載したりする、いわゆるデジタルサイネージ(電子広告)として利用することも可能である。
【0050】
さらに仮想画像は、海中・水中の様子や地中の様子を表したものをCG画像として作成したものを利用したり、実風景が夜となった場合に使用するものとして、オーロラ・稲妻・宇宙・星座といった画像をCG画像として作成したものを利用したりしてもよい。
【0051】
次に、実施形態2について図4に基づいて説明する。本実施形態は上記実施形態1と大部分において同じであるため、同じ部分においては同じ符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0052】
本実施形態の観覧車は、表示部2が頭部装着型表示装置7に備えられている点で上記実施形態と異なっている。この頭部装着型表示装置7は、ヘッドマウントディスプレイ70(Head Mounted Display;HMD)によって構成されている。ヘッドマウントディスプレイ70は、頭部に装着可能なディスプレイであって、搭乗者に装着されると表示部2となるディスプレイが搭乗者の目の前方を覆うようになっている。
【0053】
本実施形態の観覧車は、操作部5にこのヘッドマウントディスプレイ70を接続するためのコネクタ部71が設けられている。このコネクタ部71は制御部3に接続されている。ヘッドマウントディスプレイ70は、このコネクタ部71に接続されると、制御部3の画像表示手段35から送られた画像信号を受信し、目の前方を覆う表示部2に合成画像を表示する。
【0054】
これにより、過去の風景や未来の風景を表示するようにすれば、あたかもタイムマシーンに乗車したかのような時空を超えた景観等を眺めることが可能となる。
【0055】
また、ヘッドマウントディスプレイ70の表示部2に表示される内容を、搭乗者が奥行きや立体感を認知できるようにする3D方式を適用したものとしてもよい。すなわち、右目で見える内容と左目で見える内容とで異ならせた画像を生成し、搭乗者に表示部2の表示内容が立体的なものと認知させるための画像を生成する3D画像形成手段を制御部3に設けてもよい。これにより一層臨場感に富んだ観覧車とすることができる。
【0056】
以上、本発明の観覧車を、マーカ認識型の複合現実感技術を利用した観覧車に基づいて説明したが、本発明の観覧車は、任意の画像的特徴点をマーカの代用とする、いわゆるマーカレストラッキング(例えば特開2007−207251に例示される)技術を用いたものであってもよい。この場合には、実施形態1におけるマーカ認識手段30は必ずしも必要な構成ではない。
【0057】
また本発明の仮想画像変形手段は、ゴンドラの位置に応じて画像を変形するものであればよいため、観覧車のゴンドラの定常的な移動に対応させて、仮想画像の大きさ・角度を特定してもよい。このため実施形態1の位置・姿勢導出手段32は、本発明では必ずしも必要な構成ではない。
【0058】
また、実施形態2のヘッドマウントディスプレイ70を用いるものにおいて、各ゴンドラ63に設けられたヘッドマウントディスプレイ70に撮像部1を設け、この撮像部1の撮像方向を視線と一致させるようにし、この撮像部1に位置検出部と、撮像方向検出部とを設けるように構成してもよい。このようにすれば、搭乗者が実際に向いている方向に対応した複合現実感を提示することができる。なおこの場合、ヘッドマウントディスプレイ70に設けられた撮像部1は、本発明でいう「各ゴンドラに設けられ」た範疇に含まれるのはもちろんである。またヘッドマウントディスプレイ70としては、ワイヤレスのものを用いてもよい。
【0059】
なお実施形態1の観覧車は、制御部3が各ゴンドラ63に設けられていたが、本発明の観覧車は、制御部がゴンドラとは離れた場所(例えば建物の部屋など)に設けられ、各ゴンドラの表示部を遠隔制御するものであってもよい。また実施形態1の観覧車は、設定部52の年代設定ボタンが縄文時代,弥生時代・・・といった各時代に対応するものとなっていたが、本発明の観覧車の設定部は、西暦や歴史上の出来事を選択させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 撮像部
2 表示部
3 制御部
30 マーカ認識手段
31 マーカ記憶部
32 位置・姿勢導出手段
33 画像合成手段
34 記憶部
35 画像表示手段
36 仮想画像変形手段
5 操作部
51 操作レバー
52 設定部
60 支持脚体
61 回転軸
62 回転輪
63 ゴンドラ
64 乗降場
65 出入り口
66 扉
67 座席
68 透過窓
G 設置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゴンドラを有する観覧車であって、
各ゴンドラに設けられこのゴンドラ外の風景を撮る撮像部と、
各ゴンドラ内に設けられた表示部と、
撮像部により撮られた実画像の所定の位置に仮想画像を重ね合わせることにより合成画像を生成し、その合成画像を表示部に表示させる制御部と
を備えていることを特徴とする、観覧車。
【請求項2】
前記制御部は、
仮想画像が記憶された記憶部と、
この記憶部に記憶された仮想画像の大きさ・角度を、ゴンドラの位置に応じて変化させる仮想画像変形手段と、
仮想画像変形手段により変化させた画像を、撮像部により撮られた実画像の所定の位置に重ね合わせることにより合成画像を生成する画像合成手段と、
画像合成手段により生成された画像を表示部に表示させる画像表示手段と
を有するものである、請求項1記載の観覧車。
【請求項3】
前記撮像部の位置を検出する位置検出部と、
撮像部の撮像方向を検出する撮像方向検出部と
をさらに備え、
前記仮想画像変形手段は、位置検出部の検出情報と撮像方向検出部の検出情報とに基づいて、前記仮想画像を変化させるものである、
請求項2記載の観覧車。
【請求項4】
前記制御部は、
前記実画像に含まれる特定の物体をマーカとして認識するマーカ認識手段と、
マーカ認識手段により認識されたマーカの位置・姿勢を導出する位置・姿勢導出手段と
をさらに備え、
前記記憶部は、前記マーカに前記仮想画像を対応付けて予め記憶してあり、
前記仮想画像変形手段は、位置・姿勢導出手段により導出されたマーカの位置・姿勢情報に基づいて前記仮想画像を変化させるものであり、
制御部は、
前記マーカ認識手段によりマーカが認識されると、そのマーカに対応する仮想画像を記憶部から取得すると共にその取得した仮想画像を仮想画像変形手段により変化させ、その変化させた画像を画像合成手段により実画像のマーカに対応する部分に重ね合わせて合成画像を生成し、画像表示手段によりその合成画像を表示部に表示させるものである、
請求項2記載の観覧車。
【請求項5】
前記仮想画像が、現在とは異なる時代の風景を模したコンピュータグラフィックス画像である、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の観覧車。
【請求項6】
前記記憶部には複数の異なる年代の仮想画像が記憶されており、
前記各ゴンドラは、任意の年代の風景に設定可能な設定部をさらに備え、
前記制御部は、この設定部により設定された年代に対応する仮想画像を前記記憶部から取得し前記実画像に重ね合わせることによって画像を生成し、画像表示手段によりその合成画像を表示部に表示させるものである、
請求項5記載の観覧車。
【請求項7】
前記撮像部は、ゴンドラの外部に設けられると共に撮像方向を変更可能なカメラであり、
前記ゴンドラは、前記カメラの撮像方向を変更させる操作部をさらに備えている、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の観覧車。
【請求項8】
前記表示部が頭部装着型表示装置に備えられている、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の観覧車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229679(P2011−229679A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102691(P2010−102691)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(390002196)泉陽興業株式会社 (28)