説明

角質剥離用シートおよび角質剥離方法

【課題】皮膚表面への糊残りを防止しつつ、皮膚表面の角質を確実に除去することができ、かつ、保管安定性にも優れた角質剥離用シートおよび角質剥離方法を提供すること。
【解決手段】角質剥離用シート10は、光線を透過する基材シート1と、基材シート1の一方の面側に積層され、光硬化性を有する粘着剤層2と、基材シート1の他方の面側に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する保護シート3と、粘着剤層2の基材シート1とは反対側の面上に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する離型シート4と、を有することを特徴とする。粘着剤層2は、光線を照射することにより、貯蔵弾性率が上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角質剥離用シートおよび角質剥離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザや麻疹等のウイルスによる病気の予防等の薬物を用いた治療には、一般に注射器を用いた薬効成分の投与が行われているが、患者に多大な苦痛を伴っていた。
【0003】
このような苦痛を伴わない薬効成分の投与方法として、経皮吸収型製剤が知られている。しかしながら、経皮吸収型製剤のみを皮膚に貼付しても、古い角質層により薬効成分の皮膚中への透過が阻害されてしまうため、高分子量の化学製剤やワクチン等の生物製剤を経皮吸収させるのが困難であった。
【0004】
このような問題を解決するため、経皮吸収型製剤の皮膚への貼付の前に、接着剤や粘着シートを用いて、角質層を除去する方法が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、薬効成分の経皮吸収を高めるためには、皮膚表面の角質をできるだけ剥離する必要があるが、皮膚表面は、最大で30μm程度の凹凸が連続した構造をしているため、このような凹凸に追従するような粘着シート(粘着剤)、すなわち、柔軟性の高い粘着剤を用いた粘着シートが必要とされる。
【0006】
しかしながら、上記のように柔軟性の高い(貯蔵弾性率が低い)粘着剤を用いた場合、皮膚表面の凹凸への追従性は高いが、柔らかいため、シートを剥がす際に、粘着剤が皮膚表面に残ってしまう、いわゆる糊残りという現象が生じるといった問題があった。このため、十分に角質を剥離できないといった問題があった。このような糊残りを抑えるために粘着剤の柔軟性を下げる(貯蔵弾性率を上げる)と皮膚表面の凹凸への追従性が低下するため、十分に角質を剥離できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−289672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、皮膚表面への糊残りを防止しつつ、皮膚表面の角質を確実に除去することができ、かつ、保管安定性にも優れた角質剥離用シートおよび角質剥離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 光線を透過する基材シートと、
前記基材シートの一方の面側に積層され、光硬化性を有する粘着剤層と、
前記基材シートの他方の面側に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する保護シートと、
前記粘着剤層の前記基材シートとは反対側の面上に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する離型シートと、を有することを特徴とする角質剥離用シート。
【0010】
(2) 前記粘着剤層は、光線を照射することにより、貯蔵弾性率が上昇する上記(1)に記載の角質剥離用シート。
【0011】
(3) 前記粘着剤層は、炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー組成物を重合してなるアクリル系重合体と、重合性不飽和モノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤と、を含有する角質剥離用粘着剤組成物で構成されている上記(1)または(2)に記載の角質剥離用シート。
【0012】
(4) 光線照射前の32℃における前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、1.0×10〜7.0×10Paであり、
光線照射後の32℃における前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、8.0×10〜2.1×10Paである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の角質剥離用シート。
【0013】
(5) 上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の角質剥離用シートから前記離型シートを除去する工程と、
前記角質剥離用シートの前記粘着剤層を皮膚に貼着する工程と、
前記基材シートから前記保護シートを除去する工程と、
前記粘着剤層に光線を照射する工程と、
前記粘着剤層および前記基材シートを前記皮膚から剥がすことにより当該皮膚の角質を剥離する工程とを有することを特徴とする角質剥離方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、皮膚表面への糊残りを防止しつつ、皮膚表面の角質を確実に除去することができ、かつ、保管安定性にも優れた角質剥離用シートおよび角質剥離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の角質剥離用シートの好適な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《角質剥離用シート》
まず、本発明の角質剥離用シートについて説明する。
【0017】
図1は、本発明の角質剥離用シートの好適な実施形態を示した断面図である。
図1に示すように、角質剥離用シート10は、基材シート1と、基材シート1の一方の面側に積層された粘着剤層(角質剥離用粘着剤層)2と、基材シート1の他方の面側に積層された保護シート3と、粘着剤層2の基材シート1とは反対側の面に設置された離型シート4とを備えている。
【0018】
基材シート1は、粘着剤層2を支持する機能および光線を透過する機能を備えている。
基材シート1に要求される光線透過性としては、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いられる光重合開始剤が近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)に吸収を有する場合には、近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)の波長範囲における光線透過率の最小値が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。また、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いる光重合開始剤が可視光線領域(380nm以上780nm以下)に吸収を有する場合には、可視光線領域(380nm以上780nm以下)の波長範囲における光線透過率の最小値が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。これにより、粘着剤層2の硬化反応をより確実に進行させることができ、皮膚表面への糊残りをより効果的に防止しつつ、皮膚表面の角質をより確実に除去することができる。
【0019】
基材シート1の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル等のポリオレフィン系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリスチレン系の熱可塑性エラストマーフィルム等の樹脂フィルム;これらの積層体;等が挙げられる。
【0020】
基材シート1の平均厚さは、特に限定されないが、通常5〜250μmであるのが好ましく、10〜100μmであるのがより好ましい。
【0021】
なお、基材シート1の粘着剤層2が形成される側の面に、粘着剤層2との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。なお、プライマー処理を行う場合には、基材シート1とプライマー処理とを併せた状態での光線透過性が、上記に示した光線透過性を有することが好ましい。
【0022】
粘着剤層2は、光硬化性を有する層であり、例えば、後述するような角質剥離用粘着剤組成物で構成されている層である。角質剥離用粘着剤組成物については後に詳述する。
【0023】
ところで、薬効成分の経皮吸収を高めるためには、皮膚表面の角質をできるだけ剥離する必要があるが、皮膚表面は、最大で30μm程度の凹凸が連続した構造をしているため、このような凹凸に追従するような粘着シート(粘着剤)、すなわち、柔軟性の高い粘着剤を用いた粘着シートが必要とされる。
【0024】
しかしながら、上記のように柔軟性の高い粘着剤を用いた場合、皮膚表面の凹凸への追従性は高いが、柔らかいため、シートを剥がす際に、粘着剤が皮膚表面に残ってしまう、いわゆる糊残りという現象が生じるといった問題があった。このため、十分に角質を剥離できないといった問題があった。このような糊残りを抑えるために粘着剤の柔軟性を下げると皮膚表面の凹凸への追従性が低下するため、十分に角質を剥離できなかった。
【0025】
本発明では、上述したように光硬化性を有する粘着剤層2を有し、かつ、後述するような、粘着剤層2の光線による硬化を防止する機能を備える保護シート3および離型シート4を備えている。このため、本発明の角質剥離用シートの粘着剤層2は、離型シート4を剥離した直後における皮膚への貼着時は柔軟性が高く、皮膚表面の凹凸への追従性が高いものとなっている。そして、本発明の角質剥離用シートは、粘着剤層2を皮膚から剥離する前に、保護シート3を剥離した後、粘着剤層2に対して光線を基材シート1側から照射して硬化させることで、粘着剤層2の柔軟性を低くすることができる。これにより、皮膚表面に糊残りが生じるのを防止することができるとともに、皮膚表面の角質を確実に剥離することができる。また、保護シート3および離型シート4を備えていることから、保管時に粘着剤層2の硬化反応が進行するのを防止することができ、保管安定性にも優れたものとなっている。
【0026】
このような粘着剤層2は、光線を照射することにより、貯蔵弾性率が上昇するよう構成されているのが好ましい。これにより、皮膚表面に糊残りが生じるのをより効果的に防止しつつ、皮膚表面の角質をより確実に剥離することができる。
【0027】
具体的には、光線照射前の32℃における粘着剤層2の貯蔵弾性率が、1.0×10〜7.0×10Paであり、かつ、光線照射後の32℃における粘着剤層2の貯蔵弾性率が、8.0×10〜2.1×10Paであるのが好ましい。これにより、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができるとともに、剥離後の皮膚表面に糊残りが発生するのをより確実に防止することができる。
【0028】
なお、光線照射前の32℃における粘着剤層2の貯蔵弾性率が、1.0×10〜7.0×10Paであるのが好ましいが、2.0×10〜6.0×10Paであるのがより好ましい。これにより、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0029】
また、光線照射後の32℃における粘着剤層2の貯蔵弾性率が、8.0×10〜2.1×10Paであるのが好ましいが、9.0×10〜2.0×10Paであるのがより好ましい。これにより、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0030】
このような粘着剤層2の平均厚さは、5〜300μmであるのが好ましく、10〜200μmであるのがより好ましい。
【0031】
保護シート3は、少なくとも1層の遮光層を有し、基材シート1の粘着剤層2とは反対側の面に積層されており、粘着剤層2に光線が照射されるのを防止する機能を有している。この保護シート3を設けることにより、粘着剤層2の不本意な硬化を防止することができ、角質剥離用シート10の保管安定性を向上させることができる。
【0032】
保護シート3に要求される遮光性としては、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いられる光重合開始剤が近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)に吸収を有する場合には、近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いる光重合開始剤が可視光線領域(380nm以上780nm以下)に吸収を有する場合には、可視光線領域(380nm以上780nm以下)の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。すなわち、保護シート3は、波長240nm以上380nm未満または380nm以上780nm以下の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であるのが好ましく、5%以下であることがより好ましい。特に、波長240nm以上780nm以下の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であるのが好ましく、5%以下であることがより好ましい。これにより、粘着剤層2の不本意な硬化をより効果的に防止することができ、角質剥離用シート10の保管安定性をより優れたものとすることができる。
【0033】
保護シート3は、例えば、図1に示すように、遮光層31と仮着層32とで構成されている。
【0034】
遮光層31としては、光線の透過を阻害するものであればいかなるものを用いてもよく、例えば、光線を反射又は吸収する材料を含有するシート、光線を反射又は吸収する材料を含有する層を有するシート、金属箔、および金属蒸着層を有するシート等の遮光層を有するシートを用いることができる。このようなシートは、紙類やポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂で構成されてもよい。光線を反射又は吸収する材料としては、白色顔料、黒色顔料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0035】
仮着層32を構成する仮着剤としては、いかなるものを用いてもよく、公知の再剥離性粘着剤、弱接着剤等を用いることができる。なお、遮光層31が、基材シート1に対してヒートシール可能でかつイージーピール性を有する材料であれば、仮着層32は無くてもよい。
【0036】
離型シート4は、角質剥離用シート10の保管時(未使用時)において、粘着剤層2の貼着面を保護する機能を有している。また、離型シート4は、少なくとも1層の遮光層(図示せず)を有し、上記保護シート3と同様に、粘着剤層2に光線が照射されるのを防止する機能を有する。
【0037】
このような離型シート4としては、上述した遮光層31と同様の遮光層を有するシートが使用できる。また、離型シート4は、必要に応じて遮光層を有するシートの片面または両面にシリコーン樹脂等により離型処理が施されたものを使用してもよい。
【0038】
離型シート4に要求される遮光性としては、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いられる光重合開始剤が近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)に吸収を有する場合には、近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、後述する角質剥離用粘着剤組成物に用いる光重合開始剤が可視光線領域(380nm以上780nm以下)に吸収を有する場合には、可視光線領域(380nm以上780nm以下)の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。すなわち、離型シート4は、波長240nm以上380nm未満または380nm以上780nm以下の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であるのが好ましく、5%以下であることがより好ましい。特に、波長240nm以上780nm以下の波長範囲における光線透過率の最大値が20%以下であるのが好ましく、5%以下であることがより好ましい。これにより、粘着剤層2の不本意な硬化をより効果的に防止することができ、角質剥離用シート10の保管安定性をより優れたものとすることができる。
【0039】
また、離型シート4の平均厚さは、10〜200μmであることが好ましく、15〜100μmであることがより好ましい。
【0040】
本発明の角質剥離用シート10は、保護シート3と離型シート4のいずれの面が表になるように保管されたとしても、保護シート3と離型シート4の両方が少なくとも1層の遮光層を有するので、粘着剤層2に光線が照射されるのを防止する機能を有する。これにより、粘着剤層2の不本意な硬化をより効果的に防止することができ、角質剥離用シート10の保管安定性をより優れたものとすることができる。
【0041】
《角質剥離用粘着剤組成物》
次に、粘着剤層2を構成する角質剥離用粘着剤組成物について説明する。
【0042】
粘着剤層2を構成する角質剥離用粘着剤組成物としては、光硬化性を有するものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー組成物を重合してなるアクリル系重合体と、重合性不飽和モノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤とを含有する角質剥離用粘着剤組成物を用いるのが好ましい。これにより、皮膚への貼着時において粘着剤層2の貯蔵弾性率をより好適に低く(柔軟性を高く)することができ、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができる。また、粘着剤層2を皮膚から剥離する前に、粘着剤層2に対して光線を照射して硬化させることで、より確実に粘着層の貯蔵弾性率を高くすることができる。これにより、皮膚表面に糊残りが生じるのをより効果的に防止することができるとともに、皮膚表面の角質をより確実に剥離することができる。
【0043】
以下、角質剥離用粘着剤組成物の各構成成分について説明する。
[アクリル系重合体]
上述したように、角質剥離用粘着剤組成物の構成成分であるアクリル系重合体としては、炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー組成物を重合してなるものを用いるのが好ましい。
【0044】
炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0045】
なお、アクリル系重合体の生成に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、6〜12であるが、8〜10であるのがより好ましい。これにより、上記効果をより顕著なものとすることができる。
【0046】
なお、アクリル系重合体を形成するためのモノマー組成物中には、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外のモノマー成分が含まれていてもよい。このような成分としては、ポリビニルピロリドン、アクリル酸、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0047】
アクリル系重合体を形成するためのモノマー組成物中には、ポリマー分子内に架橋構造を導入し得る架橋型反応性単量体が含まれていることが好ましい。架橋型反応性単量体の具体例としては、分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーが挙げられる。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられ、これらのうち、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような架橋型反応性単量体を用いた場合、アクリル系共重合体の凝集力を十分に高いものとすることができる。
【0048】
分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ボリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレートなどのポリオール類のジ又はトリ(メタ)アルキル酸エステル類;ジビニルベンゼン;などが挙げられる。
【0049】
また、アクリル系共重合体における重合性不飽和基を複数有するモノマー由来の繰り返し単位の全繰り返し単位に対する割合は特に限定されないが、0.001〜0.10モル%であることが好ましく、0.01〜0.05モル%であることがより好ましい。
【0050】
アクリル系重合体の質量平均分子量(Mw)は、40万〜200万であるのが好ましく、60万〜160万であるのがより好ましい。これにより、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができる。なお、本発明において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC分析)によって測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0051】
上記モノマー組成物中における上記炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、70モル%以上であるのが好ましい。
【0052】
また、角質剥離用粘着剤組成物中におけるアクリル系重合体の含有量は、75〜95質量%程度であるのが好ましい。これにより、光線照射前と照射後との貯蔵弾性率をより好適なものとすることができる。その結果、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができるとともに、剥離後の皮膚表面に糊残りが発生するのをより確実に防止することができる。
【0053】
[重合性不飽和モノマーまたはオリゴマー]
角質剥離用粘着剤組成物には、上述したように重合性不飽和モノマーまたはオリゴマーが含まれているのが好ましい。このような成分と、後述する光重合開始剤とを含むことで、角質剥離用粘着剤組成物は光硬化性を有するものとなる。
【0054】
重合性不飽和モノマーまたはオリゴマーとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、重合性不飽和基を複数有するモノマーまたはオリゴマー等が挙げられる。具体的には、上述したような(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび分子内に重合性不飽和基を複数有するモノマー;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリレートオリゴマー;等が挙げられる。
【0055】
角質剥離用粘着剤組成物中における上記モノマーまたはオリゴマーの含有量は、5〜25質量%程度であるのが好ましい。これにより、光線照射前と照射後との貯蔵弾性率をより好適なものとすることができる。その結果、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができるとともに、剥離後の皮膚表面に糊残りが発生するのをより確実に防止することができる。
【0056】
[光重合開始剤]
角質剥離用粘着剤組成物には、上述したように光重合開始剤が含まれているのが好ましい。
【0057】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソフチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンジルジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパン}等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
角質剥離用粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.01〜1質量%程度であるのが好ましい。これにより、光線照射前と照射後との貯蔵弾性率をより好適なものとすることができる。その結果、皮膚表面の凹凸への追従性をより高いものとすることができるとともに、剥離後の皮膚表面に糊残りが発生するのをより確実に防止することができる。
【0059】
なお、角質剥離用粘着剤組成物(角質剥離用粘着剤組成物で構成された粘着剤層2)に照射する光線としては、近紫外線、可視光線等が挙げられる。
【0060】
上記光線の波長としては、皮膚に損傷を与えないとの観点から、240〜600nmの範囲であることが好ましい。
【0061】
[その他の成分]
また、角質剥離用粘着剤組成物は、上記成分以外の成分を含有してもよい。かかる成分としては、架橋剤、薬剤、酸化防止剤、粘度調整剤、可塑剤、無機フィラー、有機フィラー等の各種添加剤等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
《角質剥離用シート10の製造》
このような角質剥離用シート10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0063】
まず、上述した角質剥離用粘着剤組成物が溶剤に溶解した溶液を用意する。
溶剤としては、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;およびこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
【0064】
次に、離型シート4を用意し、離型シート4上に上記溶液を塗布した後、塗膜を乾燥させることにより、離型シート4上に粘着剤層2を形成する。
【0065】
次に、基材シート1を用意し、この基材シート1と上記粘着剤層2とを貼り合わせて、基材シート1/粘着剤層2/離型シート4の構成からなる角質剥離用シート中間体を作成する。
【0066】
次に、保護シート3を用意し、上記角質剥離用シート中間体の基材シート1上に貼り合わせることにより、角質剥離用シート10が得られる。
【0067】
なお、角質剥離用シート10の製造は、上記方法に限定されず、例えば、基材シート1上に粘着剤層2を設けた後、離型シート4、保護シート3と貼り合わせてもよい。
【0068】
《角質剥離方法》
次に、上記角質剥離用シートを用いた本発明の角質剥離方法について説明する。
【0069】
本実施形態に係る角質剥離方法は、上述したような角質剥離用シート10を用いた方法である。
【0070】
まず、角質剥離用シート10の離型シート4を剥がす。
次に、離型シート4を剥がした角質剥離用シート10の粘着剤層2の粘着面を皮膚に貼着する(貼着工程)。
次に、基材シート1上の保護シート3を剥がす。
【0071】
次に、次に基材シート1を介して粘着剤層2に光線を照射する(光線照射工程)。
光線の照射時間は、光線の波長によって異なるが、1〜15秒程度であるのが好ましい。
【0072】
次に、角質剥離用シート10(粘着剤層2および基材シート1)を皮膚から剥がす(剥離工程)。これにより、皮膚の角質を剥離することができる。
なお、保護シート3は、皮膚に貼着する前に剥離してもよい。
【0073】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の角質剥離用シートの具体的実施例について説明する。
[1]角質剥離用シートの作製
(実施例1)
まず、離型剤用シリコーン(信越化学社製、商品名「KS−847」)を100質量%に対して、硬化触媒(信越化学社製、商品名「PL−50T」)を0.5質量%混合し、混合液Zを得た。
【0075】
次に、平均厚さ:50μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「メタルミ−TS(♯50)」)のPET面に、上記混合液Zを乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、その後乾燥させることにより、遮光層(アルミ蒸着層)を有する離型シートを得た。
【0076】
一方、アクリル酸−2−エチルヘキシル:79.98mol%と、ビニルピロリドン:19.99mol%と、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート:0.03mol%とからなるモノマー組成物を共重合したアクリル系重合体(共重合体)Xの酢酸エチル溶液(Mw=約85万、固形分:40質量%)を用意した。
【0077】
次に、上記酢酸エチル溶液に、上記アクリル系重合体X:100質量部(固形分)に対して、多官能アクリレートオリゴマー(ポリウレタンオリゴアクリレート、大日精化工業社製、商品名「セイカビームPU−5」)を15質量%、光重合開始剤(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・ジャパン社製、商品名「IRGACURE651」)を0.47質量部を添加・混合し、混合液Y(角質剥離用粘着剤組成物が溶解した溶液)を得た。
【0078】
次に、上記離型シートの離型面に、上記混合液Yを乾燥後の平均厚さが30μmとなるように塗布した後、加熱乾燥させ、粘着剤層を形成した。
【0079】
その後、基材シートとして平均厚さ:40μmのポリプロピレン(PP)フィルム(王子特殊紙社製、商品名「アルファンPU−002」)を粘着剤層にラミネートして、基材シート/粘着剤層/離型シートの構成からなる角質剥離用シート中間体を得た。
【0080】
一方、平均厚さ:50μmのアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「メタルミ−TS(♯50)」)のアルミ蒸着面に、再剥離性粘着剤を乾燥後の膜厚が20μmとなるように塗布し、その後乾燥させることにより、再剥離性粘着剤からなる仮着層と、遮光層(アルミ蒸着層)とを有する保護シートを得た。
【0081】
上記角質剥離用シート中間体の基材シートと保護シートの仮着層とが接するように貼り合わせ、保護シート/基材シート/粘着剤層/離型シートの構成からなる角質剥離用シートを得た。
【0082】
(実施例2〜6)
アクリル系重合体に共重合するモノマーおよび添加する多官能アクリレートオリゴマー、光重合開始剤を表1に示すような種類で、表1に示すような含有量(添加量)とした以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用シートを製造した。
【0083】
(比較例1〜2)
アクリル系重合体に共重合するモノマーおよび添加する多官能アクリレートオリゴマー、光重合開始剤を表1に示すような種類で、表1に示すような含有量(添加量)とした以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用シートを製造した。
【0084】
(比較例3)
保護シートに用いたアルミ蒸着PETフィルムを、平均厚さ:40μmのポリプロピレン(PP)フィルム(王子特殊紙社製、商品名「アルファンPU−002」)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用シートを製造した。
【0085】
(比較例4)
離型シートに用いたアルミ蒸着PETフィルムを、平均厚さ:40μmのポリプロピレン(PP)フィルム(王子特殊紙社製、商品名「アルファンPU−002」)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして角質剥離用シートを製造した。
【0086】
各実施例および各比較例における粘着剤層を構成する角質剥離用粘着剤組成物の組成、保護シートおよび離型シートの近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)における光線透過率の最大値、基材シートの近紫外線領域(波長240nm以上380nm未満)における光線透過率の最小値を、紫外・可視分光光度計(島津製作所社製、装置名「UV−3600」)により測定し、その結果を表1に示した。
【0087】
なお、表中、アクリル酸−2−エチルヘキシルを2EHA、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートをHDDM、ビニルピロリドンをVP、アクリル酸ラウリルをLA、アクリル酸をAAc、アクリル酸ブチルをBA、セイカビームPU−5をPU−5と示した。
【0088】
【表1】

【0089】
[2]貯蔵弾性率の測定
製造直後の粘着剤層の32℃における貯蔵弾性率、および、フュージョン製Hバルブを光源とする紫外線を5秒間、照度:400mW/cm、光量:400mJ/cmの照射条件で照射した後の粘着剤層の32℃における貯蔵弾性率を、粘弾性測定装置(Rheometrics社製、装置名「DYNAMIC ANALYZER RDAII」)により測定し、その測定結果を表2に示した。
【0090】
[3]耐光安定性試験(保管安定性評価)
各実施例および各比較例の角質剥離用シートを、蛍光灯下に1ヶ月放置し、角質剥離用シートの耐光安定性(保管安定性)を下記評価基準で評価し、その結果を表2に示した。なお、各実施例および比較例1〜3は保護シート側に光が当たるように蛍光灯下に静置し、比較例4は離型シート側に光が当たるように蛍光灯下に静置した。なお、粘着力の測定は、25℃の環境下、被着体としてベークライト板を使用し、角質剥離用シートを貼付後20分後に、300mm/minの引き剥がし速度で、180°ピール法により行った。
【0091】
◎:耐光安定性試験前の粘着力に対する耐光安定性試験後の粘着力の比が、80%以上である。
【0092】
○:耐光安定性試験前の粘着力に対する耐光安定性試験後の粘着力の比が、80%未満50%以上である。
【0093】
×:耐光安定性試験前の粘着力に対する耐光安定性試験後の粘着力の比が、50%未満である。
【0094】
[4]角質剥離量の評価
タンパク質定量法(Lowry法)に準拠し、以下のようにして角質剥離量の評価を行った。
【0095】
まず、上記耐光安定性試験と同様に蛍光灯下に1ヶ月放置した実施例1〜6および比較例1〜4の角質剥離用シートから離型シートを除去し、粘着剤層をブタ皮膚(ユカタンマイクロピッグ(YMPスキンキット)、日本チャールズ・リバー社より購入)に5分間貼着した後、保護シートを除去し、フュージョン製Hバルブを光源とする紫外線をPETフィルム側から、5秒間、照度:400mW/cm、光量:400mJ/cmの照射条件で照射した。
その後、角質剥離用シートを180°ピールにて剥離した。
【0096】
剥離した角質剥離用シートを12mmφに打ち抜き、DCプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリーズ社製)にて角質剥離量を測定し、その結果を表2に示した。
【0097】
【表2】

【0098】
表2からわかるように、本発明の角質剥離用シートでは、糊残りもなく、また、剥離量も多く、優れた結果が得られた。また、保管安定性にも優れていた。これに対して、比較例では、満足行く結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0099】
10 角質剥離用シート
1 基材シート
2 粘着剤層(角質剥離用粘着剤層)
3 保護シート
31 遮光層
32 仮着層
4 離型シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を透過する基材シートと、
前記基材シートの一方の面側に積層され、光硬化性を有する粘着剤層と、
前記基材シートの他方の面側に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する保護シートと、
前記粘着剤層の前記基材シートとは反対側の面上に積層され、少なくとも1層の遮光層を有する離型シートと、を有することを特徴とする角質剥離用シート。
【請求項2】
前記粘着剤層は、光線を照射することにより、貯蔵弾性率が上昇する請求項1に記載の角質剥離用シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、炭素数が6〜12のアルキル基を備えた(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー組成物を重合してなるアクリル系重合体と、重合性不飽和モノマーまたはオリゴマーと、光重合開始剤と、を含有する角質剥離用粘着剤組成物で構成されている請求項1または2に記載の角質剥離用シート。
【請求項4】
光線照射前の32℃における前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、1.0×10〜7.0×10Paであり、
光線照射後の32℃における前記粘着剤層の貯蔵弾性率は、8.0×10〜2.1×10Paである請求項1ないし3のいずれかに記載の角質剥離用シート。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の角質剥離用シートから前記離型シートを除去する工程と、
前記角質剥離用シートの前記粘着剤層を皮膚に貼着する工程と、
前記基材シートから前記保護シートを除去する工程と、
前記粘着剤層に光線を照射する工程と、
前記粘着剤層および前記基材シートを前記皮膚から剥がすことにより当該皮膚の角質を剥離する工程とを有することを特徴とする角質剥離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219391(P2011−219391A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88098(P2010−88098)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】