説明

解体作業補助ユニット

【課題】回転カッターの動作領域での接続部配管の段差を解消することができ、また、回転カッターの動作中に真空ポートを保護できるようにした解体作業補助ユニットを提供する。
【解決手段】一対の半筒体21,22からなり、該半筒体21,22には、半筒体同士を一体化するための締結部材23を締結可能に収納する収納部24が設けられ、接続部配管6に両半筒体21,22を被嵌させて締結部材23によって半筒体同士を一体化させたときには、突出部や段差のない外周面25が形成され、かつ、半筒体21,22の内側には、接続部配管6に外突状に存在する突出部8を嵌め込むための凹部29が形成されると共に、超電導ケーブルの断熱管3,4に接続される真空ポート11を収納するためのポート収納部30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば超電導導体を有するケーブルコア同士を接続するための接続部配管に着脱自在に被嵌される解体作業補助ユニットに関し、特に、超電導ケーブルの断熱管に接続された真空ポートを収納できるようにした解体作業補助ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブル1は、例えば図4に示すように、超電導導体2aを有する3心のケーブルコア2を二重の断熱管3,4の内側に収納して内側断熱管3内に冷却媒体を流通させると共に、内側断熱管3と外側断熱管4の間に真空層を形成して超電導導体2aを超電導状態に冷却するように構成される(例えば特許文献1参照)。このような超電導ケーブル1を長距離の電力供給用として用いる場合、製造、輸送、布設等の条件によりケーブル長が制約されるため、線路途中でケーブル同士を接続しなければならない。その中間接続部では、例えば図5に示すように、ケーブルコア同士の接続部は、熱伸縮可能なベローズ構造5によって軸方向に位置調整自在に接続される接続部配管6,6によって覆われ、さらにその外側が真空槽7によって覆われる。
【0003】
このような中間接続部では、接続部配管6,6の内部を真空状態に保持するために、接続部配管6の端部に形成された溶接用フランジ台座8に真空カバー9の端部が溶接される。この真空カバー9は、メンテナンス時には、接続部配管6の周りを回転動作する回転カッター(図示省略)等によって切断除去される。一方、二重の断熱管3,4の端部には、フレキシブル配管10を介して複数(例えば8本)の真空ポート11が接続されており、メンテナンス終了時には、外部から断熱管3,4内を真空引きできるように、各真空ポート11は、真空槽7に設けられたポート接続口12に組付けられる。尚、ポート接続口12は、真空槽7の直径方向に対向して一対設けられ、それぞれ4つの真空ポート11をまとめて収納する。
【0004】
【特許文献1】特開2006−331894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メンテナンス時等に、回転カッターを用いて真空カバー9を切断する際には、良品撤去を前提として、溶接用フランジ台座8や接続部配管6に損傷を与えることなく、真空カバー9のみを精度よく切断しなければならない。そのためには、回転カッターに精度の高い円滑な回転動作が求められる。しかしながら、溶接用フランジ台座8が接続部配管6の端部から突出しているため、接続部の構造上、回転カッターが回転動作する領域に軸方向の段差が生じる。
【0006】
このような段差があると、回転カッターのガイドローラが安定な状態に摺接動作できず、回転カッターの精度の高い切断動作を期待できないという問題があった。また、このような切断作業中に、断熱管3,4にフレキシブル配管10を介して接続された複数の真空ポート11が、回転動作する回転カッターと干渉しないように保護するための配慮も必要とされる。従来では、接続部配管6の段差の解消や真空ポート11及びフレキシブル配管10の保護については、現場で臨機応変に対処せざるを得ず煩に耐えなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされ、回転カッターの動作領域での接続部配管等の筒状部材の段差を解消することができ、また、回転カッターの動作中に真空ポートを保護できるようにした解体作業補助ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解体作業補助ユニットは、筒状部材に着脱自在に被嵌される解体作業補助ユニットであって、
一体化されると円筒状になる一対の半筒体からなり、該半筒体には、半筒体同士を一体化するための締結部材を締結可能に収納する収納部が設けられ、筒状部材に両半筒体を被嵌させて締結部材によって半筒体同士を一体化させたときには、突出部や段差のない外周面が形成されることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、両半筒体を筒状部材に被嵌させて締結部材によって一体化すると、突出部や段差のない外周面が形成されるため、その外周面に回転カッターのガイドローラを周方向に支障なくガイドさせることができ回転カッターの円滑な回転動作が可能となり精度の高い切断を行うことができる。従って、例えば超電導ケーブルの中間接続部に設けられる接続部配管(筒状部材)に形成された溶接用フランジ台座や接続部配管を損傷させることなく、溶接用フランジ台座に溶接された真空カバーのみを切断することができる。また、両半筒体の外周面が突出部や段差のない状態に形成されるため、回転カッターによる切断箇所の選択の自由度が向上する。
【0010】
前記半筒体の内側には、筒状部材に外突状に存在する突出部を嵌め込むための凹部が形成されていてもよい。このようにすれば、例えば接続部配管に突設された溶接用フランジ台座等を凹部に嵌め込むことで、段差を解消することができるため、回転カッターの切断位置の選択の自由度が向上する。
【0011】
前記半筒体の内側には、超電導ケーブルの断熱管に接続される真空ポートを収納するためのポート収納部が形成されていてもよい。このようにすれば、回転カッターの動作中に、真空ポートを回転カッターに干渉させることなく保護することができる。また、回転カッターを使用しないときにも、例えばその他の部材の搬入や取り付けを行う際にも、ポート収納部に真空ポートを収納しておくことで、真空ポートを保護することができる。
【0012】
前記ポート収納部は、開閉自在な蓋体で覆われるようにしてもよい。このようにすれば、蓋体を閉じた状態で回転カッターを円滑に回転動作させて切断作業を行うことができ、切断作業の終了後には、回転カッターを撤去して、蓋体を開放すれば、真空ポートを容易に取り出すことができる。また、ポート収納部への真空ポートの収納作業も容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の解体作業補助ユニットは、両半筒体を筒状部材に被嵌させて締結部材によって一体化させると、突出部や段差のない外周面が形成されるため、その外周面に回転カッターのガイドローラを摺接させることで回転カッターの円滑な回転動作が可能となり精度の高い切断を行うことができる。また、突出部や段差がなくなるため、回転カッターによる切断箇所の選択の自由度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態に係る解体作業補助ユニットについて説明する。
図1は、解体作業補助ユニットが超電導ケーブルの接続部配管(本発明の筒状部材)に取り付けられた状態の説明図、図2(a)は作業補助ユニットUの部分破断正面図、(b)は側面図である。これらの図に示すように、この作業補助ユニットUは、一体化されると円筒状になる半割れ状に形成された一対の半筒体21,22からなり、その半筒体21,22には、半筒体21,22同士を一体化するための締結部材23,23を締結可能に収納する収納部24,24が設けられ、超電導ケーブル1の接続部を覆う接続部配管6に両半筒体21,22を被嵌させて締結部材23,23によって半筒体21,22同士を一体化させると、外側に突出部や段差のない外周面25が形成される(図2(a)参照)。
【0015】
締結状態の締結部材23を外部に突出させることなく収納する収納部24,24は、具体的には、例えば図2に示すように、両半筒体21,22の接合部を挟む外周両側に対向して穿設形成され、例えばボルト26の軸部を挿通させるボルト孔と、締結した状態のボルトヘッドとナット27を外部に突出させずに収納できる凹部を有している。そして、半筒体21,22の一端内側には、接続部配管6の端部に外突リング状に形成された溶接用フランジ台座8を嵌め込むための凹部29が形成されており、また、他端側から一端側に向けて、超電導ケーブル1の断熱管3,4にフレキシブル配管10を介して接続された真空ポート11を収納するためのポート収納部30が、筒軸方向に沿って例えば8本形成されている。
【0016】
このような構成によれば、図1に示すように、両半筒体21,22の凹部29に溶接用フランジ台座8に嵌め込み、両半筒体21,22を接続部配管6に被嵌させて締結部材23によって一体化することで、現場で作業性よく接続部配管6に組み付けて突出部や段差のない外周面25を形成することができる。その外周面25には、回転カッター31のガイドローラ32を周方向に支障なくガイドさせることができるため、回転カッター31の円滑な回転動作が可能となり精度の高い切断を行うことができる(切断箇所を矢印33で示す)。従って、接続部配管6に形成された溶接用フランジ台座8や接続部配管6を損傷させることなく、溶接用フランジ台座8に溶接された真空カバー9のみを切断撤去することができ、いわゆる良品撤去が可能となる。また、両半筒体21,22の外周面25が突出部や段差のない状態に形成されるため、回転カッター31による切断箇所33の選択の自由度が向上する。尚、このような突出部や段差のない外周面25は、解体作業補助ユニットUの外周全体に形成される必要はなく、少なくとも回転カッター31のガイドローラ32,32が摺接回転動作する領域に形成されていればよい。
【0017】
そして、ポート収納部30に真空ポート11及びフレキシブル配管10の先端部分を収納しておくことによって、回転カッター31の動作中に、真空ポート11及びフレキシブル配管10を干渉させることなく保護することができる。尚、真空ポート11とフレキシブル配管10の先端部分は、ポートカバー13によって覆った状態でポート収納部30に収納するのが好ましい。また、ポート収納部30は、例えば図3に示すように、開閉自在な蓋体34で覆うように構成することもできる。尚、図示は省略するが、蓋体34は、一端側をピン軸等で回動自在に枢支させる一方、他端側にワンタッチ式のラッチ機構(凹凸嵌合等)を設ければよい。このようにすれば、蓋体34を閉じた状態で回転カッター31を回転動作させて切断作業を行うことができ、切断作業の終了後には、回転カッター31を撤去して、蓋体34を開放すれば、真空ポート11を容易に取り出すことができる。また、ポート収納部30への真空ポート11の収納作業も容易となる。尚、本発明の解体作業用補助ユニットは、実施の形態に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、適宜、必要に応じて改良、変更等は自由であり、超電導ケーブルの中間接続部に限定されることなく、その他の配管接続部等にも広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の解体作業補助ユニットは、現場で作業性よく筒状部材に組み付けて回転カッターによる精度の高い切断を可能ならしめ良品撤去が可能となるため、例えば超電導ケーブルの中間接続部の解体作業に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る解体作業補助ユニットが筒状部材に取り付けられた状態の説明図である。
【図2】(a)は同作業補助ユニットの部分破断正面図、(b)は側面図である。
【図3】(a)は同ポート収納部に開閉自在な蓋体を設けた場合の半筒体の要部正面図、(b)は縦断側面図である。
【図4】超電導ケーブルの構成を示す断面図である。
【図5】従来の超電導ケーブルの中間接続部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 超電導ケーブル 2 ケーブルコア 2a 超電導導体
3 内側断熱管(断熱管) 4 外側断熱管(断熱管) 5 ベローズ構造
6 筒状部材(接続部配管) 7 真空槽 8 溶接用フランジ台座
9 真空カバー 10 フレキシブル配管 11 真空ポート
12 ポート接続口13 ポートカバー
21,22 半筒体 23 締結部材 24 収納部 25 外周面
26 ボルト 27 ナット 29 凹部 30 ポート収納部
31 回転カッター 32 ガイドローラ 33 切断箇所 34 蓋体
U 解体作業補助ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材に着脱自在に被嵌される解体作業補助ユニットであって、
一体化されると円筒状になる一対の半筒体からなり、該半筒体には、半筒体同士を一体化するための締結部材を締結可能に収納する収納部が設けられ、筒状部材に両半筒体を被嵌させて締結部材によって半筒体同士を一体化させたときには、突出部や段差のない外周面が形成されることを特徴とする解体作業補助ユニット。
【請求項2】
前記半筒体の内側には、筒状部材に外突状に存在する突出部を嵌め込むための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の解体作業補助ユニット。
【請求項3】
前記半筒体の内側には、超電導ケーブルの断熱管に接続される真空ポートを収納するためのポート収納部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の解体作業補助ユニット。
【請求項4】
前記ポート収納部は、開閉自在な蓋体で覆われることを特徴とする請求項3に記載の解体作業補助ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39830(P2009−39830A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208540(P2007−208540)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】