説明

解放防止具

【課題】 キャビネット等に簡便に取り付けられ、構造が簡単で安価に製造可能であるとともに、強固に引き出し等の解放を防止する解放防止具を提供する。
【解決手段】 本発明の解放防止具10は、引き出しの引き出し方向と垂直となる方向に掛け渡される帯状部40と、一方面が天板51に固着される固着部20と、一方面が固着部20に磁着され、他方面に帯状部40の一方端部側が固着される磁着部30と、を概略具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震により家具やキャビネットまたは机等の扉や引き出しの解放を防止する解放防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭の食器棚、本棚、洋服ダンス等の収納家具や、事務所の机や各種キャビネットの扉や引き出しは、頻繁に使用されるために開閉が容易な構造となっている。
【0003】
このような扉や引き出しは、この開閉容易な構造のために、地震で容易に解放してしまう。これを防止するために、例えば特許文献1に開示される引き出し飛び出し防止構造では、引き出しの側壁上面に陥凹部を設け、タンスの天井壁にストッパーを設け、傾いた状態でストッパーと係止する回動自在なシーソー部材を陥凹部内に設ける構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平9−224765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される引き出し飛び出し防止構造は、引き出し内部に取り付ける必要があり、既に所有している収納家具への取り付けるは不便であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の目的は、上述した事情に鑑みなされたもので、既存のキャビネット等の扉や引き出しに容易に設置できる解放防止具を提供することである。
【0007】
また、この発明の別の目的は、使用が簡便で、かつ確実に扉や引き出しの解放を防止できる解放防止具を提供することである。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる解放防止具は、請求項1の記載によれば、引き出しの解放を防止する解放防止具であって、前記引き出しの引き出し方向と垂直となる方向に掛け渡される帯状部と、一方面が前記引き出しに固着される固着部と、一方面が前記固着部に磁着され、他方面に前記帯状部の一方端部側が固着される磁着部と、を具備し、前記磁着部は、前記帯状部が他方端部側へ延出する方向に向かって突設される掛止爪を備え、前記固着部は、前記掛止爪を掛止する掛止受け部を備え、前記引き出しが解放されることでの前記帯状部の他方端部側への引っ張りにより、前記掛止爪と掛止受け部との掛止が保持されることを特徴とする。
【0009】
また、目的を達成するため、この発明に係わる解放防止具は、請求項2の記載によれば、前記固着部は、他方面に立設されるガイド部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、目的を達成するため、この発明に係わる解放防止具は、請求項3の記載によれば、前記磁着部は、他方面に前記帯状部を挟み止めする帯止め部を備えることを特徴とする。
【0011】
また、目的を達成するため、この発明に係わる解放防止具は、請求項4の記載によれば、前記磁着部は、前記帯状部が他方端部側へ延出する方向と反対の方向に設けられた掛止解除帯部を備えることを特徴とする。
【0012】
また、目的を達成するため、この発明に係わる解放防止具は、請求項5の記載によれば、前記固着部は強磁性体であり、前記磁着部は磁石であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、既存のキャビネット等の扉や引き出しに容易に設置できる解放防止具を提供することができる。
【0014】
また、この発明によれば、使用が簡便で、かつ確実に扉や引き出しの解放を防止できる解放防止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の解放防止具を示す斜視図
【図2】 本発明の解放防止具の正面図
【図3】 本発明の解放防止具の側面図
【図4】 本発明の解放防止具のX−X断面図
【図5】 本発明の解放防止具のY−Y断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
以下に図面を用いて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の解放防止具10を示す斜視図である。図2は、解放防止具10の正面図である。図3は、解放防止具10の側面図である。図4は、解放防止具10の図2におけるX−X断面図である。図5は、解放防止具10の図2におけるY−Y断面図である。
【0017】
本発明の解放防止具10は、解放を防止したい引き出しを備える机やキャビネットや扉を備える各種収納家具等に用いられる。図1は、床面に載置されるキャビネット50に取り付けられている解放防止具10を示している。このキャビネット50は、天井面となる天板51と、キャビネット50を床面に載置する床面載置部57と、天板51と床面載置部57との間に設けられた複数の引き出し52、54、56とを備えている。
【0018】
このようなキャビネット50に対して、解放防止具10は、後に説明する帯状部40が引き出し52、54、56の引き出し方向と垂直(床面に垂直)となる方向に掛け渡されている。
【0019】
なお、図1では、帯状部40は床面に垂直な方向に掛け渡されているが、床面に平行な方向に掛け渡して、例えば引き出し52のみの解放を防止するようにしても良い。また、図1では、解放防止具10はキャビネット50の引き出し52、54、56に取り付けると説明しているが、収納家具等の扉に対して床面に垂直な方向または床面に平行な方向に取り付けることも可能であることは説明するまでもない
【0020】
図1において、解放防止具10は、引き出しの引き出し方向と垂直となる方向に掛け渡される帯状部40と、一方面が天板51に固着される固着部20と、一方面が固着部20に磁着され、他方面に帯状部40の一方端部側が固着される磁着部30と、を概略具備している。また、帯状部40の他方端部側(他方端部でも良い)には、床面載置部57へ固定するための固定部48を備えている。
【0021】
固定部48は、例えば2枚の金属板の間に帯状部40の他方端部を挟み込んで該金属板の一方を床面載置部57へ両面接着テープ等で固定したものである。なお、この固定部48は、帯状部40の他方端部をキャビネット50(図1では床面載置部57)へ固定可能な形状・構造であればどのようなものでもよく、例えば後に説明する固着部20と磁着部30で構成される解放防止具本体12としても良いし、単にネジや接着剤等でキャビネット50に直接固定する方法等を採用しても良い。また、固定部48は、後に説明するように、帯状部40で引き出し52等の解放を防止可能とする位置に配置されればよく、その固定位置は床面載置部57に限定されない。
【0022】
帯状部40は、例えば綿や麻等の天然繊維、ナイロン・ポリエチレンやポリプロピレン等の化学繊維や、ガラス繊維や金属繊維、またはこれらの合成繊維を織ったベルト状部材や帯状部材、または天然ゴムや合成ゴム等、またはポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂を成形したベルト状部材や帯状部材であり、帯の軸方向以外の方向で形状自在となっている。なお、この帯状部材40は、後に説明するとおり、引き出し等の解放を防止する際に引き出し及び引き出しの中身の重量に耐えられるものであれば、その素材や形状はどのようなものを使用しても問題ない。
【0023】
この帯状部40の他方端部側は固定部48に接続されてキャビネット50に固定されている。なお、直接キャビネット50に固定されるように構成しても良いし、後に説明するとおり固着部20と磁着部30で構成される解放防止具本体12を用いても良い。
【0024】
また、帯状部40の一方端部側は固着部20と磁着部30で構成される解放防止具本体12に接続されてキャビネット50に固定されている。具体的には、固着部20は主に鉄等の強磁性体で構成され、磁着部30はフェライト磁石やネオジウム磁石等の磁石と鉄等の強磁性体とで構成されている。
【0025】
固着部20は、一方面が両面接着テープ等の各種接着剤やネジ止め等で天板51に固着され、他方面には磁着部30が磁着される略矩形の略板状部材22を備えている。
【0026】
また、固着部20は、略板状部材22の他方面の3辺に立設されるガイド部24a、24b、24cと、帯状部40の帯の軸方向と平行な方向であって、帯状部40の一方端部の方向に向かって突設する掛止受け部26とを備えている。
【0027】
ガイド部24b、24cは、略板状部材22の帯状部40の帯の軸方向と平行な二辺に設けられたガイド部であり、磁着される磁着部30が帯状部40の帯の軸方向と垂直な方向から外れることを防止している。また、ガイド部24aは、略板状部材22の帯状部40の帯の軸方向と垂直な二辺のうちの帯状部40の一方端部と反対の側の一辺に設けられたガイド部であり、帯状部40の他方端部側への引っ張りで磁着部30が帯状部40の帯の軸方向から外れることを防止している。なお、このガイド部24aによる磁着部30の固着部20からの外れ防止は、普段、キャビネット50を使用する際に手等で帯状部40を引っかけた際の外れ防止程度であり、地震での引き出し52等の解放の防止には、後に説明する掛止爪36と掛止受け部26による掛止で行われる。
【0028】
また、掛止受け部26は、略板状部材22のガイド部24aと反対の側の一辺を含む面を帯状部40の帯の軸方向でクランク状に折り曲げて形成した部材で、略板状部材22(及び天板51)と所定距離離間した状態で略平行となっている。
【0029】
磁着部30は、一方面が固着部20に磁着され、他方面に帯状部40の一方端部側または一方端部が固着される略直方体の磁石32と、帯状部40の一方端部側等を挟み止めする帯止め部34と、略直方体の磁石32の長辺の方向の一端であって、ガイド部24aと反対の側(略板状部材22の掛止受け部26が設けられた側)となる一端に設けられる掛止爪36とを備えている。
【0030】
掛止爪36は、略直方体の磁石32の長辺方向の一端に取り付けられるコの字状の部材で、コの字の底辺36aが磁石32の長辺方向の一端に当接し、コの字の2辺36b、36cが磁石32の一方面の側と他方面の側に配置されている。また、コの字の2辺のうち、磁石32の一方面の側に配置されるコの字の1辺36bは該一方面に当接するように配置されている。なお、掛止爪36は、コの字の底辺36aとコの字の1辺36bで磁石32に接着等で固定されている。
【0031】
また、コの字の他の1辺36cは磁石32の他方面の側で所定距離離間されて配置されており、コの字の他の1辺36cの端部が帯状部40の他方端部側へ延出する方向に向かって突設される形状となっている。
【0032】
解放防止具本体12を利用した帯状部40の掛止は、磁着部30を固着部20に磁着する際に、コの字の他の1辺36cを掛止受け部26と天板51との間に挿入することで行う。この状態で引き出し52等が解放されると、帯状部40が他方端部側へ引っ張られることで掛止爪36と掛止受け部48との掛止が保持されことになる。
【0033】
帯止め部34は、磁石32の他方面の側に配置され、帯状部40の一方端部側等を挟み込む略長方形の略板状の帯止め板部34aと、帯止め板部34aの2つの長辺(帯状部40の帯の軸方向と平行な方向の二辺)に磁石32に向かって立設される2枚の帯止め立設部34bとを有している。
【0034】
帯状部40の挟み込みは、図5に示すとおり、帯状部40の一方端部を磁石32の他方面に接着剤等で接着すると共に、帯止め板部34aを帯状部40の一方端部に接着剤等で接着することで行う。なお、図5に示すとおり、掛止爪36のコの字の1辺36bの厚みと帯状部40の帯の厚みを等しくすると共に、帯状部40の一方端部がコの字の1辺36bに重ならないように配置することで、帯止め板部34a全体が帯状部40の一方端部全体に接着されることとなり、帯状部40の磁石32への接着強度を確保することが可能となる。
【0035】
2枚の帯止め立設部34bは、その間隔と磁石32の短辺方向の幅とを略等しくし、磁石32を2枚の帯止め立設部34bの間に嵌入させることで、さらに帯状部40の磁石32への接着強度を確保することが可能となる。
【0036】
また、解放防止具本体12は、さらに磁着部30に掛止解除帯部42を備える。具体的には、掛止解除帯部42は、図5に示すとおり、帯状部40の他方端部側へ延出する方向と反対の方向に設けられており、帯状部40の一方端部と帯止め板部34aとの間に挟み込まれる掛止解除帯挟み込み部42aと、磁着部30を帯状部40の他方端部側から一方端部側に延出される掛止解除帯舌部42bとを有している。
【0037】
なお、掛止解除帯挟み込み部42aは、帯状部40の一方端部に縫い止めても良い。また、掛止解除帯挟み込み部42aは帯状部40の一方端部からコの字の1辺36bまでを覆うように配置することで、帯止め板部34a全体が掛止解除帯挟み込み部42a全体に接着されることとなり、帯状部40の磁石32への接着強度を確保することが可能となる。
【0038】
また、掛止解除帯舌部42bは、図5に示すとおり、折り返して縫い止めることで厚みを厚くし、手で持ち易くしてある。また、当該折り返しは、図5に示すとおり、コの字の底辺36aに当接する程度とすることで、帯状部40の一方端部と帯止め板部34aとの間に挟み込まれないようにしてある。この結果、帯状部40の一方端部と帯止め板部34aとは略平行を保つこととなり、帯状部40の磁石32への接着強度を確保することが可能となる。
【0039】
このように構成された掛止解除帯部42で、掛止爪36と掛止受け部48との掛止を解除するには、掛止解除帯舌部42bを手で持ち、磁着の力に抗して帯状部40の帯の軸方向と平行な方向で、他方端部側から一方端部側へ向かって引っ張ることで行う。
【0040】
以上のような構成を有する本発明の解放防止具10の使用方法について、以下に説明する。
【0041】
事務所で使用しているキャビネットや机では、引き出しの中の書類や書籍の重量が重く、地震による引き出しの解放でキャビネットの重心が移動して転倒してしまう虞があった。これを防止するのが本発明の解放防止具10であり、キャビネット50を使用していない状態では、図1に示すとおり、帯状部40の他方端部側が固定部48に接続されてキャビネット50に固定され、帯状部40の一方端部側が解放防止具本体12に接続されて天板51に固定されて、帯状部40が引き出しの引き出し方向と垂直となる方向に掛け渡されている。
【0042】
また、解放防止具本体12は、磁着部30が固着部20に磁着されると共に、コの字の他の1辺36cが掛止受け部26と天板51との間に挿入されて掛止されている。
【0043】
この状態で地震等により引き出し52等が解放される方向、即ち引き出し52等の引き出し方向へ移動すると、引き出し52等が帯状部40に当接し、解放防止具本体12が帯状部40の他方端部側へ引っ張られる。この結果、掛止爪36のコの字の他の1辺36cと掛止受け部48との掛止が強固に保持され、引き出し52等の解放が防止されることとなる。
【0044】
また、キャビネット50を使用する場合、即ち引き出し52等を手動で解放する場合には、掛止解除帯舌部42bを手で持ち、磁着の力に抗して帯状部40の帯の軸方向と平行な方向で、他方端部側から一方端部側へ向かって引っ張り、掛止爪36と掛止受け部48との掛止を解除する。
【0045】
掛止爪36と掛止受け部48との掛止を解除後、引き出し52等の解放の邪魔にならない箇所、例えばキャビネット50が鉄製であれば、その側面のどこかに磁着部30を磁着して引き出し52等の解放を行う。なお、解放を防止したい引き出し等有するキャビネットや収納家具等が磁着不可の木製等であれば、予め鉄の小片等をその側面に両面接着テープ等で止めておくと便利である。
【0046】
このように、本発明の解放防止具10では、磁石を使用しているので、取り外した磁着部30を床面に放置することがない。この結果、地震対策で重要となる、せっかく器具を付けているのに肝心の地震の際に当該器具が取り外されている状態を回避することが可能となる。
【0047】
以上のように、本発明により、キャビネット等に簡便に取り付けられると共に、構造が簡単で安価に製造可能な引き出し等の解放防止具10を提供可能である。また、取り付け忘れの可能性が少なく、かつ、強固に引き出し等の解放を防止可能な解放防止具10を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
10・・解放防止具、12・・解放防止具本体、20・・固着部、22・・略板状部材、24a、24b、24c・・ガイド部、26・・掛止受け部、30・・磁着部、32・・磁石、34・・帯止め部、34a・・帯止め板部、34b・・帯止め立設部、36・・掛止爪、36a・・コの字の底辺、36b・・コの字の1辺、36c・・コの字の他の1辺、40・・帯状部、42・・掛止解除帯部、42a・・掛止解除帯挟み込み部、42b・・掛止解除帯舌部、48・・固定部、50・・キャビネット、51・・天板、52、54、56・・引き出し、57・・床面載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出しの解放を防止する解放防止具であって、
前記引き出しの引き出し方向と垂直となる方向に掛け渡される帯状部と、
一方面が前記引き出しに固着される固着部と、
一方面が前記固着部に磁着され、他方面に前記帯状部の一方端部側が固着される磁着部と、を具備し、
前記磁着部は、前記帯状部が他方端部側へ延出する方向に向かって突設される掛止爪を備え、
前記固着部は、前記掛止爪を掛止する掛止受け部を備え、
前記引き出しが解放されることでの前記帯状部の他方端部側への引っ張りにより、前記掛止爪と掛止受け部との掛止が保持されることを特徴とする解放防止具。
【請求項2】
前記固着部は、他方面に立設されるガイド部を備えることを特徴とする請求項1に記載の解放防止具。
【請求項3】
前記磁着部は、他方面に前記帯状部を挟み止めする帯止め部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の解放防止具。
【請求項4】
前記磁着部は、前記帯状部が他方端部側へ延出する方向と反対の方向に設けられた掛止解除帯部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の解放防止具。
【請求項5】
前記固着部は強磁性体であり、前記磁着部は磁石であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の解放防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−254266(P2012−254266A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142268(P2011−142268)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(501359412)株式会社リンテック21 (38)
【Fターム(参考)】