計測システム、計算装置及び構造物
【課題】第1構造物に第2構造物が接続されているときに、少ない機器で効率よく構造物の精度管理を行う。
【解決手段】精度監視システム1において、GPS基準局2は、GPS電波を良好に受信できる位置に設置され、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。GPS観測局3は、ベース構造物BC(第1構造物)及び搭状構造物TC(第2構造物)の頂部に設置され、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。GPS観測局3a及び3bは、ベース構造物BCの頂部の両端に設置される。GPS観測局3c及び3dは、搭状構造物TCの頂部の両端に設置される。精度計算装置4は、GPS基準局2及びGPS観測局3からGPS電波情報を受信し、基準座標軸を取得するとともに、基準座標軸における各GPS観測局3の位置座標を計算する。そして、計算した位置座標から、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を算出する。
【解決手段】精度監視システム1において、GPS基準局2は、GPS電波を良好に受信できる位置に設置され、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。GPS観測局3は、ベース構造物BC(第1構造物)及び搭状構造物TC(第2構造物)の頂部に設置され、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。GPS観測局3a及び3bは、ベース構造物BCの頂部の両端に設置される。GPS観測局3c及び3dは、搭状構造物TCの頂部の両端に設置される。精度計算装置4は、GPS基準局2及びGPS観測局3からGPS電波情報を受信し、基準座標軸を取得するとともに、基準座標軸における各GPS観測局3の位置座標を計算する。そして、計算した位置座標から、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の第1構造物から第2構造物を所定の方向へ伸ばすように設けるときに、第1構造物の位置と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置とを計測するシステム、装置及び第1構造物と、第2構造物とからなる構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
図10(a)〜(c)に示すように、ベース構造物BCから塔状構造物TCをリフトアップする工事がある。その工事中には、日射や風の影響により塔状構造物TCが変形するので、図11に示すような計測を行って、精度管理を実施している。すなわち、図11(a)に示すように、図10(a)の位置を基準として塔状構造物TCがベース構造物BCから上昇した高さであるリフトアップ量を、リニアエンコーダを用いて計測する。また、図11(b)に示すように、搭状構造物TCと、ベース構造物BCとの傾斜角を、4台の2軸傾斜計を用いて計測する。さらに、図11(c)に示すように、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの回転角を把握するために、搭状構造物TCの基準線にピアノ線を取り付け、ベース構造物BCの基準線からの回転量(距離)をスケール等で都度計測する。
【0003】
なお、特許文献1には、複数層の建物を構築する場合に、水平方向の位置の基準となる基準墨を下階から上階へ盛り替えるときに、基準墨の位置の誤差を測定する、基準墨の位置精度の監視システム及び監視方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塔状構造物TCをリフトアップする際の精度管理には、以下のような問題がある。
【0006】
(1)搭状構造物TCやベース構造物BCの各所に多種多量の計測機器を配置して、いろいろな方法で計測するため、非効率的である。すなわち、多種類の計測機器を利用すると、例えば、サンプリング周波数(計測頻度)がまちまちであるため、システム全体のサンプリング周波数をそれらの最小公倍数に設定しなければならないし、計測機器によっては、サンプリング周波数を大幅に下げなければならない。
【0007】
(2)2軸傾斜計のゼロ点設定は、吊点が一点なので真鉛直な状態にできる逆打支柱等であれば、比較的容易かつ正確に行うことができる。ところが、ベース構造物BCから上方に伸ばす搭状構造物TCは、真鉛直にできないため、2軸傾斜計のゼロ点設定を正確に行うことは非常に困難である。
【0008】
(3)2軸傾斜計は、設置した箇所の局所的な傾斜角を示すので、例えば、図12のように搭状構造物TCが湾曲している場合、その搭状構造物TCの頂部、中間部及び底部に傾斜計が設置されていると、3つの傾斜計がそれぞれ異なる角度を出力するため、非常に管理しにくいし、本来必要な角度が得られない。
【0009】
また、図13に示すように、ベース構造物から水平方向に板状構造物をスライドする際にも、精度管理を行っている。詳細には、トータルステーション(Total Station:TS)を用いて、板状構造物の1点までの距離及び水平方向と垂直方向の回転角を同時に計測する。例えば、3台の機器を用いて、3点の計測データを取得する。ところが、トータルステーションは、連続測定に時間がかかるため、板状構造物のスライド速度が速いと追従できず、現状では1秒間に1回計測するのが精一杯である。
【0010】
さらに、図14に示すように、スリップフォーム装置については、指令室で精度管理を行っている。詳細には、当該装置の一箇所に光波距離計を設置し、地盤面に反射プリズムを設置し、光波距離計から光波を発射し、反射プリズムに反射した光波を受光することによって、当該装置の高さを計測する。次に、当該装置の両端にレーザ受光ターゲットを設置し、地盤面にレーザ自動鉛直器を設置し、レーザ自動鉛直器からレーザ光を鉛直上方向に発射し、そのレーザ光を受光ターゲットが受光することにより、当該装置の水平位置(回転を含む)を計測する。そして、当該装置の両端にレベルセンサを設置して、当該装置の傾きを計測する。この場合も、3種類の計測機器を用いるので、非効率的である。そして、地盤面についても、地震等により動く可能性があるので、基準からのずれを計測する必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、第1構造物に第2構造物が接続されているときに、少ない機器で効率よく構造物の精度管理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計測する計測システムであって、前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、前記第2構造物に設置される第2GPS観測局と、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算し、当該計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の位置からずれる可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ1台のGPS観測局を設置し、計算装置が、2台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の位置と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置とを計算する。これによれば、ベース構造物のずれ、及び、ベース構造物に対する接続される構造物のずれを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に有用である。そして、2台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計測する計測システムであって、前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の位置からずれたり、本来の角度からねじれたりする可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ2台のGPS観測局を設置し、計算装置が、4台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の位置及び回転角と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置及び相対回転角とを計算する。これによれば、ベース構造物のずれ及びねじれ、及び、ベース構造物に対する接続される構造物のずれ及びねじれを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に非常に有用である。そして、4台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0016】
また、本発明の上記計測システムにおいて、前記計算装置は、さらに、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算することとしてもよい。
【0017】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の角度から傾く可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ2台のGPS観測局を設置し、計算装置が、4台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の傾斜角と、第1構造物に対する第2構造物の相対傾斜角とを計算する。これによれば、ベース構造物の傾き、及び、ベース構造物に対する接続される構造物の傾きを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に非常に有用である。そして、4台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計測する計測システムであって、前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明は、計算装置及び構造物を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1構造物に第2構造物が接続されているときに、少ない機器で効率よく構造物の精度管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】精度監視システム1の構成を示す図である。
【図2】精度計算装置4のハードウェア構成を示す図である。
【図3】精度計算装置4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図4】精度監視システム1の処理を示すフローチャートである。
【図5】ベース構造物BC及び搭状構造物TCのずれ量、回転角、高さ及び傾斜角を示す図であり、(a)はずれ量及び回転角を示し、(b)は高さ及び傾斜角を示す。
【図6】ベース構造物BCの頂部を上方から見たときの、日射による動きを示す図であり、(a)は朝の様子を示し、(b)は昼の様子を示し、(c)は夕方の様子を示し、(d)はベース構造物BCの1日の動きを示す。
【図7】スライド工法における精度管理を示す図であり、(a)はベース構造物BCから板状構造物SCをスライドさせる様子を示し、(b)は板状構造物SCの前面のロール角について示し、(c)は板状構造物SCの上面のヨー角について示す。
【図8】スリップフォーム工法における精度管理を示す図である。
【図9】橋梁の精度管理を示す図であり、(a)は橋梁の断面図を示し、(b)は橋梁の上面図を示す。
【図10】ベース構造物BCから塔状構造物TCをリフトアップする工事の様子を示す図であり、(a)はリフトアップの開始時を示し、(b)はリフトアップの途中を示し、(c)はリフトアップの終了時を示す。
【図11】リフトアップ工事における従来の精度管理を示す図であり、(a)はリフトアップ量をリニアエンコーダで計測することを示し、(b)は傾斜角を2軸傾斜計で計測することを示し、(c)は回転角をピアノ線で計測することを示す」。
【図12】搭状構造物TCの傾斜角を2軸傾斜計で計測する、従来の様子を示す図である。
【図13】板状構造物SCをスライドする際にトータルステーションで精度管理を行う、従来の様子を示す図である。
【図14】スリップフォーム装置に関する従来の精度管理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る精度監視システムは、地面上に構築され、ベースとなる第1構造物と、その第1構造物からリフトアップやスライドされる第2構造物とがあるときに、両方の構造物にGPS観測局を設置した上で、精度計算装置により、GPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいてGPS観測局の位置を計算し、そのGPS観測局の位置に基づいて両方の構造物の位置、回転角及び傾斜角を計算するものである。この場合、両方の構造物にGPS観測局を1台ずつ設置することにより、構造物の位置が求められる。また、両方の構造物にGPS観測局を2台ずつ設置することにより、構造物の位置、回転角及び傾斜角が求められる。
【0023】
これによれば、当初の位置、回転角及び傾斜角のデータと、その時に計算したデータとの差分をとることにより、当初からの(本来の位置や角度に対する)第1構造物及び第2構造物の変位(ずれ)、回転角変位(ねじれ)及び傾斜角変位(傾き)を求めることができ、少ない計測機器で効率よく、第1構造物及び第2構造物の精度を管理することができる。
【0024】
≪システムの構成と概要≫
図1は、精度監視システム1の構成を示す図である。現場では、既設のベース構造物BC(第1構造物)から搭状構造物TC(第2構造物)が上方へ伸びるように建設されている。そして、精度監視システム1は、地上のGPS基準局2、ベース構造物BCのGPS観測局3aと3b、搭状構造物TCのGPS観測局3cと3d及び精度計算装置4を備えており、GPS基準局2及びGPS観測局3と、精度計算装置4とは、無線又は有線により通信可能である。
【0025】
GPS基準局2は、現場近傍の、予め位置が正確に分かっている定点に固定して設置され、GPS衛星から電波を受信し、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。これにより、GPS観測局3の位置精度の向上を図ることができる。
【0026】
GPS観測局3a及び3bは、ベース構造物BCの頂部の両端(異なる箇所)に設置され、GPS観測局3c及び3dは、搭状構造物TCの頂部の両端(異なる箇所)に設置され、GPS衛星から電波を受信し、精度計算装置4にGPS電波情報を送信することにより、各GPS観測局3の計測位置情報を提供する。
【0027】
精度計算装置4は、例えば、東西方向をx軸、南北方向をy軸、原点を所定地点とする基準座標軸を予め設定するとともに、GPS観測局3から各局のGPS電波情報を受信し、GPS観測局3の計測位置から基準座標軸における位置座標を計算する。そして、計算した位置座標から、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を算出する。なお、GPS基準局2のGPS電波情報を受信することにより、GPS観測局3の計測位置の精度を上げることができる。精度計算装置4は、PC(Personal Computer)やサーバ等により実現される。
【0028】
図2は、精度計算装置4のハードウェア構成を示す図である。精度計算装置4は、通信部41、表示部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備え、各部がバス46を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部41は、GPS基準局2及びGPS観測局3とIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部42は、処理部44からの指示によりデータ(構造物の位置、回転角、傾斜角等)を表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部43は、オペレータがデータ(例えば、計算式プログラムのデータ等)や指示を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現される。処理部44は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、精度計算装置4全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0029】
≪データの構成≫
図3は、精度計算装置4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図である。記憶部45は、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの精度管理用として、観測局位置451、ベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453、ベース構造物回転角454、搭状構造物回転角455、ベース構造物高さ456、ベース構造物傾斜角457、リフトアップ量458及び搭状構造物傾斜角459を記憶する。
【0030】
観測局位置451は、GPS観測局3a〜3dの位置を示すデータであり、詳細には、GPS電波情報から計算された、GPS観測局3a〜3dの、基準座標軸におけるX座標、Y座標及びZ座標である。ベース構造物芯位置452は、ベース構造物BCの頂部の中心位置であり、観測局位置451のうち、ベース構造物BCに設置されたGPS観測局3a及び3bの位置を平均することにより算出、設定される。搭状構造物芯位置453は、搭状構造物TCの頂部の中心位置であり、観測局位置451のうち、搭状構造物TCに設置されたGPS観測局3c及び3dの位置を平均することにより算出、設定される。
【0031】
ベース構造物回転角454は、ベース構造物BCの基準座標軸に対する回転角であり、観測局位置451のうち、ベース構造物BCに設置されたGPS観測局3a及び3bの位置から算出、設定される。搭状構造物回転角455は、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する回転角(相対回転角)であり、観測局位置451の全GPS観測局3a〜3dの位置から算出、設定される。
【0032】
ベース構造物高さ456は、ベース構造物BCの高さであり、ベース構造物芯位置452のうち、Z座標が設定される。ベース構造物傾斜角457は、ベース構造物BCの鉛直方向に対する傾斜角であり、ベース構造物芯位置452及びベース構造物高さ456から算出、設定される。リフトアップ量458は、搭状構造物TCがベース構造物BCからリフトアップした量であり、ベース構造物芯位置452のZ座標と、搭状構造物芯位置453のZ座標との差分が設定される。搭状構造物傾斜角459は、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する傾斜角(相対傾斜角)であり、ベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453及びリフトアップ量458から算出、設定される。
【0033】
≪システムの処理≫
図4は、精度監視システム1の処理を示すフローチャートである。本処理は、精度計算装置4において、主として処理部44が、通信部41によりGPS基準局2及びGPS観測局3からGPS電波情報を受信し、記憶部45のデータを参照、更新しながら、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を計算するものである。以下、各位置座標は、基準座標軸における座標を示すものとする。
【0034】
まず、精度計算装置4は、GPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいてGPS観測局3の位置を計算し、観測局位置451として記憶部45に記憶する(S401)。GPS観測局3a、3b、3c、3dの位置座標を、それぞれ(Xa、Ya、Za)、(Xb、Yb、Zb)、(Xc、Yc、Zc)、(Xd、Yd、Zd)とする。
【0035】
次に、精度計算装置4は、観測局位置451からベース構造物BCの芯位置及び搭状構造物TCの芯位置を計算し、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453として記憶部45に記憶する(S402)。図5(a)及び(b)に示すように、ベース構造物BCの頂部は、平面的に移動したり、回転したり、傾斜したりするが、その形状自体は維持されるので、当該頂部における芯と、GPS観測局3aと、GPS観測局3bの位置関係は変わらない。従って、GPS観測局3a及び3bの位置データに基づいて、芯の位置を特定することができる。これは、搭状構造物TCの頂部の芯位置についても同様である。
【0036】
式1は、観測局位置451からベース構造物芯位置452を求める計算式の一例を示す。これは、ベース構造物BCの頂部において、芯がGPS観測局3a及び3bの中間位置にある場合である。また、式2は、観測局位置451から搭状構造物芯位置453を求める計算式の一例を示す。これは、搭状構造物TCの頂部において、芯がGPS観測局3c及び3dの中間位置にある場合である。なお、このような場合に限らず、他の位置関係にある場合には、その位置関係に応じた計算式を用いればよい。
Xbc=(Xa+Xb)/2
Ybc=(Ya+Yb)/2
Zbc=(Za+Zb)/2 ・・・式1
Xtc=(Xc+Xd)/2
Ytc=(Yc+Yd)/2
Ztc=(Zc+Zd)/2 ・・・式2
【0037】
当初は、ベース構造物BCの芯が基準座標軸の原点にあったとすると、ベース構造物BCの芯のずれ量は、(Xbc、Ybc)となる。そして、当初は、搭状構造物TCの芯位置がベース構造物BCの芯位置と一致していたとすると、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する芯のずれ量は、(Xtc−Xbc、Ytc−Ybc)となる。
【0038】
続いて、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453からベース構造物BCの回転角及び搭状構造物TCの回転角を計算し、ベース構造物回転角454及び搭状構造物回転角455として記憶部45に記憶する(S403)。図5(a)に示すように、基準座標軸に対するベース構造物BCの回転角θbは、y軸と、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)とがなす角度であり、次の式3により算出される。当初は、第1線分がy軸と平行であった(Xa=Xb)とすると、回転角θbがベース構造物BCの当初からの回転角変位(ねじれ)になる。
θb=tan−1{(Xb−Xa)/(Yb−Ya)} ・・・式3
【0039】
さらに、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの回転角θtは、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とがなす角度であり、次の式4により算出される。当初は、第1線分と、第2線分とが平行であったとすると、回転角θtが搭状構造物TCの当初からの回転角変位(ねじれ)になる。
θt=tan−1{(Xd−Xc)/(Yd−Yc)}
−tan−1{(Xb−Xa)/(Yb−Ya)} ・・・式4
【0040】
なお、一般的に建物のねじれ角を計算する方法については、例えば、特許文献1(特開2010−164380号公報)の段落[0052]〜[0056]を参照のこと。
【0041】
そして、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452から、ベース構造物BCの高さを求め、ベース構造物高さ456として記憶部45に記憶するとともに、ベース構造物BCの傾斜角を計算し、ベース構造物傾斜角457として記憶部45に記憶する(S404)。ベース構造物BCの高さHは、ベース構造物BCの芯位置のz座標であり、鉛直方向に対するベース構造物BCの傾斜角φbx、φbyは、次の式5により算出される。当初は、ベース構造物BCは鉛直方向に立設されていて、傾斜角がゼロであったとすると、傾斜角φbx、φbyがベース構造物BCの当初から傾斜角変位(傾き)になる。
H=Zbc
φbx=tan−1(Xbc/H)
φby=tan−1(Ybc/H) ・・・式5
【0042】
さらに、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453から、搭状構造物TCのリフトアップ量を求め、リフトアップ量458として記憶部45に記憶するとともに、搭状構造物TCの傾斜角を計算し、搭状構造物傾斜角459として記憶部45に記憶する(S405)。搭状構造物TCのリフトアップ量hは、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの芯位置のz座標の差分であり、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの傾斜角φtx、φtyは、次の式6により算出される。当初は、搭状構造物TCはベース構造物BCと同じ方向に立設していて、傾斜角がゼロであったとすると、傾斜角φtx、φtyが搭状構造物TCの当初からの傾斜角変位(傾き)になる。なお、リフトアップ工事中に必要な搭状構造物TCの傾斜角は、当該搭状構造物TCが剛体であると仮定したときの傾斜角であり、式6により計算できる。
h=Ztc−Zbc
φtx=tan−1{(Xtc−Xbc)/h}
φty=tan−1{(Ytc−Ybc)/h} ・・・式6
【0043】
その後、精度計算装置4は、記憶部45のベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453、ベース構造物回転角454、搭状構造物回転角455、ベース構造物傾斜角457及び搭状構造物傾斜角459を表示部43に表示し、音声出力し、又は、ネットワーク経由で他の装置や端末に送信することにより、関係者に通知するようにしてもよい。また、定期的にGPS電波情報の受信、各数値の計算及び記憶を行って、時系列のデータを蓄積してもよい。
【0044】
ベース構造物BC及び搭状構造物TCは、日射による熱や風の影響により、傾斜する。図6は、ベース構造物BCの頂部を上方から見たときの、日射による動きを示す図である。図6(a)〜(d)において、上側を北の方向とする。
【0045】
図6(a)は、朝の様子を示す。ベース構造物BCの南東に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北西へ傾く。図6(b)は、昼の様子を示す。ベース構造物BCの南に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北へ傾く。図6(c)は、夕方の様子を示す。ベース構造物BCの南西に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北東へ傾く。図6(d)は、ベース構造物BCの1日の動きを示す。図6(a)〜(c)に示すように、上記した日照によるベース構造物BCの動きの変化に応じて、ベース構造物BCの頂部の芯は、北西→北→北東の順に傾斜するので、1日の変化としては、図6(d)に示すように楕円を描くように動くことになる。これは、搭状構造物TCも同様である。
【0046】
図10(a)及び(b)に示すように、搭状構造物TCはベース構造物BC内部の狭い空間をリフトアップする。そのとき、搭状構造物TCのリフトアップ方向がベース構造物BCの傾斜方向に一致していなければ、両者が干渉して、リフトアップ作業を円滑に行えない。これに対して、本実施の形態では、搭状構造物TC及びベース構造物BCの傾斜角を測定できるので、搭状構造物TCの傾斜をベース構造物BCの傾斜に合せてリフトアップすることにより、干渉の可能性を低くすることができる。これによれば、リフトアップ作業を円滑に進めることができる。このとき、必要なのは、搭状構造物TCの剛体としての傾斜角であり、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの傾斜角φtx、φtyをできる限りゼロにしつつ、リフトアップすることが望ましい。
【0047】
次に、図7〜図9を用いて、精度監視システム1をリフトアップ工事以外に適用した例について説明する。
【0048】
図7は、ベース構造物BCから板状構造物SC(例えば、橋梁)をスライドさせるスライド工法における精度管理を示す図である。図7(a)に示すように、ベース構造物BCの上面のうち、前面側の両隅にGPS観測局3a及び3bを設置する。次に、板状構造物SCの上面のうち、前面側の両隅にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、当初は、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とが平行になっているものとする。なお、GPS観測局3の計測値のデータは、1秒間に20個取得することができるので、板状構造物SCのスライド速度に追従することができる。
【0049】
図7(b)に示すように、例えば、第1線分を含む鉛直面に第2線分を投影したときの、第1線分と、投影された第2線分とがなす角度を計算することにより、板状構造物SCの前面のロール角を求めることができる。
【0050】
図7(c)に示すように、例えば、ベース構造物BCの上面に第2線分を投影したときの、第1線分と、投影された第2線分とがなす角度を計算することにより、板状構造物SCの上面のヨー角を求めることができる。
【0051】
以上によれば、板状構造物SCをベース構造物BCからスライドさせる際に、板状構造物SCの前面のロール角及び上面のヨー角をできる限りゼロにしつつ、精度よくスライド作業を進めることができる。
【0052】
図8は、スリップフォーム工法における精度管理を示す図である。スリップフォーム工法とは、鉄筋コンクリート製の塔状構造物(煙突等)を施工する場合に、側面だけの型枠に層状にコンクリートを打設しながら、この型枠を油圧ジャッキによって上昇させて、構造物を構築していく急速施工法である。精度監視システム1は、リフトアップ工事だけでなく、積み上げていく工事にも適用することができる。
【0053】
まず、地盤面に、GPS観測局3a及び3bを設置する。次に、スリップフォーム装置のうち、水平になるべきの2箇所(型枠でもよい)にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、当初は、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とが平行になっているものとする。以上によれば、図1に示す精度監視システム1における搭状構造物TCと同様に、地盤面に対するスリップフォーム装置の水平面における位置、高さ、回転角及び傾斜角をすべて計測することができる。また、地盤面の水平面のおける位置、高さ、回転角及び傾斜角を計測することもできる。
【0054】
図9は、橋梁の精度管理を示す図である。図9(a)は、橋梁の断面図を示す。図9(b)は、橋梁の上面図を示す。ほとんど動かないことが想定される、橋脚付近のA部にGPS観測局3a及び3bを設置する。又は、橋脚付近のB部にGPS観測局3a’及び3b’を設置する。次に、風の影響や車両の通行等により動くことが想定される、橋脚の中間点付近のC部にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、A部又はB部に対するC部の動きを計測する。図7に示したスライド工法と同様に、A部又はB部に対するC部のロール角、ヨー角を計測することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、図1に示す精度監視システム1内のGPS基準局2、GPS観測局3及び精度計算装置4を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る精度監視システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0056】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、ベース構造物BCから搭状構造物TCをリフトアップするとき、ベース構造物BCから板状構造物SCをスライドするとき、あるいは、スリップフォーム装置や橋梁の精度管理(モニタリング)を行うときに、精度監視システム1を用いることにより、少ない機器で効率よく構造物の精度を管理することができる。すなわち、工事中の構造物だけでなく、完成後の構造物に関しても、少ないセンサで効率よく、精度管理に必要な計測データが得られる。
【0057】
詳細には、少ないセンサ(1台のGPS基準局2、4台のGPS観測局3)で、搭状構造物TCをリフトアップする際の位置精度管理に必要な情報(ベース構造物BCの位置、回転角、高さ、傾斜角、搭状構造物TCの芯の位置、回転角、リフトアップ量、傾斜角)をすべて取得することができる。そして、センサが1種類(GPS電波の受信局)であるため、サンプリング周波数(計測頻度)を1つの数値に設定でき、計測用ソフトウェアの作成工数を削減することができる。
【0058】
また、リフトアップやスライドの工事を行う際には、ベースとなる構造物(ベース構造物BC)が動かないこと、及び、延設される構造物(搭状構造物TC、板状構造物SC)がベースの構造物に対してずれない、ねじれない、かつ、傾かないことが重要である。その点に関しては、精度監視システム1を用いれば、位置精度管理に必要となる最新の情報が得られるので、両方の構造物のずれ、ねじれ及び傾きを監視し、ずれ等が検出されたときには、構造物の位置や向き等を調整しながら、安全かつ精確に工事を進めることが可能になる。
【0059】
延設される構造物には、橋や煙突等、重要なものが多いので、確実な管理が必要である。一方、構造物は、日射や風、地震の影響を受けて揺れたり、変形したりすることがある。そこで、建設工事中は無論のこと、完成後についても、ベースの構造物に対して、リフトアップやスライドの構造物がどういう状態にあるかが分かるので、建設中の精度管理及び完成後の保守管理に非常に有用である。また、ベースの構造物自体がどういう状態になっているかも分かる。
【0060】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0061】
(1)上記実施の形態では、例えば、図1に示すように、ベース構造物BCの頂部及び搭状構造物TCの頂部のそれぞれにおいて、2台のGPS観測局3を設置するように説明したが、それぞれに1台のGPS観測局3(第1局、第2局)を設置するようにしてもよい。このとき、回転角や傾斜角を計測することはできないが、ベース構造物BCの頂部の所定位置に第1局を設置し、搭状構造物TCの頂部の芯位置に第2局を設置し、水平面(x−y座標)における第1局に対する第2局の当初の相対位置と、その後の相対位置との差分を計算することにより、当該芯位置のベース構造物BCに対するずれを計測することができる。なお、搭状構造物TCの頂部の芯位置でなく、任意の位置に第2局を設置しても、搭状構造物TCのベース構造物BCに対するずれを計測できる。
【0062】
(2)図7のスライド工法に(1)の実施形態を適用すると、ベース構造物BCの上面の所定位置に第1局を設置し、板状構造物SCの上面の所定位置に第2局を設置し、鉛直面(x−z座標)における第1局に対する第2局の当初の相対位置と、その後の相対位置との差分を計算することにより、板状構造物SCのベース構造物BCに対するずれを計測することができる。
【0063】
(3)上記実施の形態では、図5(a)において、当初は、ベース構造物BCの芯位置が基準座標軸の原点にあった、搭状構造物TCの芯位置がベース構造物BCの芯位置と一致していた、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分がy軸と平行であった、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分とが平行であった、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの傾斜角がゼロであったと説明したが、必ずしもそうなっていなくてもよい。ただし、そうなっていない場合には、基準となる当初の計測データ(例えば、基準座標軸におけるベース構造物BCの芯の位置、回転角及び傾斜角、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの芯の相対位置、相対回転角及び相対傾斜角)を予め記憶しておく。そして、当初の計測データと、現在の計測データとの差分を計算することにより、当初からの変位(ずれ)、回転角変位(ねじれ)や傾斜角変位(傾き)を求める。
【0064】
(4)上記実施の形態では、ベース構造物BCから鉛直上方向や水平方向へ他の構造物を延設する例(リフトアップやスライド)について説明したが、それらの方向に限らず、任意の方向へ延設するときや接続された状態にあるときに、精度監視システム1を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 精度監視システム(計測システム)
2 GPS基準局
3、3a、3b、3c、3d GPS観測局
4 精度計算装置(計算装置)
BC ベース構造物(第1構造物)
SC 板状構造物(第2構造物)
TC 搭状構造物(第2構造物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の第1構造物から第2構造物を所定の方向へ伸ばすように設けるときに、第1構造物の位置と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置とを計測するシステム、装置及び第1構造物と、第2構造物とからなる構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
図10(a)〜(c)に示すように、ベース構造物BCから塔状構造物TCをリフトアップする工事がある。その工事中には、日射や風の影響により塔状構造物TCが変形するので、図11に示すような計測を行って、精度管理を実施している。すなわち、図11(a)に示すように、図10(a)の位置を基準として塔状構造物TCがベース構造物BCから上昇した高さであるリフトアップ量を、リニアエンコーダを用いて計測する。また、図11(b)に示すように、搭状構造物TCと、ベース構造物BCとの傾斜角を、4台の2軸傾斜計を用いて計測する。さらに、図11(c)に示すように、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの回転角を把握するために、搭状構造物TCの基準線にピアノ線を取り付け、ベース構造物BCの基準線からの回転量(距離)をスケール等で都度計測する。
【0003】
なお、特許文献1には、複数層の建物を構築する場合に、水平方向の位置の基準となる基準墨を下階から上階へ盛り替えるときに、基準墨の位置の誤差を測定する、基準墨の位置精度の監視システム及び監視方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−164380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、塔状構造物TCをリフトアップする際の精度管理には、以下のような問題がある。
【0006】
(1)搭状構造物TCやベース構造物BCの各所に多種多量の計測機器を配置して、いろいろな方法で計測するため、非効率的である。すなわち、多種類の計測機器を利用すると、例えば、サンプリング周波数(計測頻度)がまちまちであるため、システム全体のサンプリング周波数をそれらの最小公倍数に設定しなければならないし、計測機器によっては、サンプリング周波数を大幅に下げなければならない。
【0007】
(2)2軸傾斜計のゼロ点設定は、吊点が一点なので真鉛直な状態にできる逆打支柱等であれば、比較的容易かつ正確に行うことができる。ところが、ベース構造物BCから上方に伸ばす搭状構造物TCは、真鉛直にできないため、2軸傾斜計のゼロ点設定を正確に行うことは非常に困難である。
【0008】
(3)2軸傾斜計は、設置した箇所の局所的な傾斜角を示すので、例えば、図12のように搭状構造物TCが湾曲している場合、その搭状構造物TCの頂部、中間部及び底部に傾斜計が設置されていると、3つの傾斜計がそれぞれ異なる角度を出力するため、非常に管理しにくいし、本来必要な角度が得られない。
【0009】
また、図13に示すように、ベース構造物から水平方向に板状構造物をスライドする際にも、精度管理を行っている。詳細には、トータルステーション(Total Station:TS)を用いて、板状構造物の1点までの距離及び水平方向と垂直方向の回転角を同時に計測する。例えば、3台の機器を用いて、3点の計測データを取得する。ところが、トータルステーションは、連続測定に時間がかかるため、板状構造物のスライド速度が速いと追従できず、現状では1秒間に1回計測するのが精一杯である。
【0010】
さらに、図14に示すように、スリップフォーム装置については、指令室で精度管理を行っている。詳細には、当該装置の一箇所に光波距離計を設置し、地盤面に反射プリズムを設置し、光波距離計から光波を発射し、反射プリズムに反射した光波を受光することによって、当該装置の高さを計測する。次に、当該装置の両端にレーザ受光ターゲットを設置し、地盤面にレーザ自動鉛直器を設置し、レーザ自動鉛直器からレーザ光を鉛直上方向に発射し、そのレーザ光を受光ターゲットが受光することにより、当該装置の水平位置(回転を含む)を計測する。そして、当該装置の両端にレベルセンサを設置して、当該装置の傾きを計測する。この場合も、3種類の計測機器を用いるので、非効率的である。そして、地盤面についても、地震等により動く可能性があるので、基準からのずれを計測する必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、第1構造物に第2構造物が接続されているときに、少ない機器で効率よく構造物の精度管理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計測する計測システムであって、前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、前記第2構造物に設置される第2GPS観測局と、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算し、当該計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の位置からずれる可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ1台のGPS観測局を設置し、計算装置が、2台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の位置と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置とを計算する。これによれば、ベース構造物のずれ、及び、ベース構造物に対する接続される構造物のずれを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に有用である。そして、2台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計測する計測システムであって、前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0015】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の位置からずれたり、本来の角度からねじれたりする可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ2台のGPS観測局を設置し、計算装置が、4台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の位置及び回転角と、第1構造物に対する第2構造物の相対位置及び相対回転角とを計算する。これによれば、ベース構造物のずれ及びねじれ、及び、ベース構造物に対する接続される構造物のずれ及びねじれを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に非常に有用である。そして、4台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0016】
また、本発明の上記計測システムにおいて、前記計算装置は、さらに、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算することとしてもよい。
【0017】
ベースとなる第1構造物に第2構造物が接続されるときには、風、日射、地震等の影響を受けて両方の構造物が本来の角度から傾く可能性がある。この構成によれば、第1構造物と、第2構造物とにそれぞれ2台のGPS観測局を設置し、計算装置が、4台のGPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいて、第1構造物の傾斜角と、第1構造物に対する第2構造物の相対傾斜角とを計算する。これによれば、ベース構造物の傾き、及び、ベース構造物に対する接続される構造物の傾きを把握できるので、建設工事中の位置精度管理や完成した構造物の保守管理に非常に有用である。そして、4台のGPS観測局という少ない機器で効率よく誤差管理を行うことができる。
【0018】
また、本発明は、第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計測する計測システムであって、前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する計算装置と、を備えることを特徴とする。
【0019】
なお、本発明は、計算装置及び構造物を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1構造物に第2構造物が接続されているときに、少ない機器で効率よく構造物の精度管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】精度監視システム1の構成を示す図である。
【図2】精度計算装置4のハードウェア構成を示す図である。
【図3】精度計算装置4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図4】精度監視システム1の処理を示すフローチャートである。
【図5】ベース構造物BC及び搭状構造物TCのずれ量、回転角、高さ及び傾斜角を示す図であり、(a)はずれ量及び回転角を示し、(b)は高さ及び傾斜角を示す。
【図6】ベース構造物BCの頂部を上方から見たときの、日射による動きを示す図であり、(a)は朝の様子を示し、(b)は昼の様子を示し、(c)は夕方の様子を示し、(d)はベース構造物BCの1日の動きを示す。
【図7】スライド工法における精度管理を示す図であり、(a)はベース構造物BCから板状構造物SCをスライドさせる様子を示し、(b)は板状構造物SCの前面のロール角について示し、(c)は板状構造物SCの上面のヨー角について示す。
【図8】スリップフォーム工法における精度管理を示す図である。
【図9】橋梁の精度管理を示す図であり、(a)は橋梁の断面図を示し、(b)は橋梁の上面図を示す。
【図10】ベース構造物BCから塔状構造物TCをリフトアップする工事の様子を示す図であり、(a)はリフトアップの開始時を示し、(b)はリフトアップの途中を示し、(c)はリフトアップの終了時を示す。
【図11】リフトアップ工事における従来の精度管理を示す図であり、(a)はリフトアップ量をリニアエンコーダで計測することを示し、(b)は傾斜角を2軸傾斜計で計測することを示し、(c)は回転角をピアノ線で計測することを示す」。
【図12】搭状構造物TCの傾斜角を2軸傾斜計で計測する、従来の様子を示す図である。
【図13】板状構造物SCをスライドする際にトータルステーションで精度管理を行う、従来の様子を示す図である。
【図14】スリップフォーム装置に関する従来の精度管理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る精度監視システムは、地面上に構築され、ベースとなる第1構造物と、その第1構造物からリフトアップやスライドされる第2構造物とがあるときに、両方の構造物にGPS観測局を設置した上で、精度計算装置により、GPS観測局からGPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいてGPS観測局の位置を計算し、そのGPS観測局の位置に基づいて両方の構造物の位置、回転角及び傾斜角を計算するものである。この場合、両方の構造物にGPS観測局を1台ずつ設置することにより、構造物の位置が求められる。また、両方の構造物にGPS観測局を2台ずつ設置することにより、構造物の位置、回転角及び傾斜角が求められる。
【0023】
これによれば、当初の位置、回転角及び傾斜角のデータと、その時に計算したデータとの差分をとることにより、当初からの(本来の位置や角度に対する)第1構造物及び第2構造物の変位(ずれ)、回転角変位(ねじれ)及び傾斜角変位(傾き)を求めることができ、少ない計測機器で効率よく、第1構造物及び第2構造物の精度を管理することができる。
【0024】
≪システムの構成と概要≫
図1は、精度監視システム1の構成を示す図である。現場では、既設のベース構造物BC(第1構造物)から搭状構造物TC(第2構造物)が上方へ伸びるように建設されている。そして、精度監視システム1は、地上のGPS基準局2、ベース構造物BCのGPS観測局3aと3b、搭状構造物TCのGPS観測局3cと3d及び精度計算装置4を備えており、GPS基準局2及びGPS観測局3と、精度計算装置4とは、無線又は有線により通信可能である。
【0025】
GPS基準局2は、現場近傍の、予め位置が正確に分かっている定点に固定して設置され、GPS衛星から電波を受信し、精度計算装置4にGPS電波情報を送信する。これにより、GPS観測局3の位置精度の向上を図ることができる。
【0026】
GPS観測局3a及び3bは、ベース構造物BCの頂部の両端(異なる箇所)に設置され、GPS観測局3c及び3dは、搭状構造物TCの頂部の両端(異なる箇所)に設置され、GPS衛星から電波を受信し、精度計算装置4にGPS電波情報を送信することにより、各GPS観測局3の計測位置情報を提供する。
【0027】
精度計算装置4は、例えば、東西方向をx軸、南北方向をy軸、原点を所定地点とする基準座標軸を予め設定するとともに、GPS観測局3から各局のGPS電波情報を受信し、GPS観測局3の計測位置から基準座標軸における位置座標を計算する。そして、計算した位置座標から、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を算出する。なお、GPS基準局2のGPS電波情報を受信することにより、GPS観測局3の計測位置の精度を上げることができる。精度計算装置4は、PC(Personal Computer)やサーバ等により実現される。
【0028】
図2は、精度計算装置4のハードウェア構成を示す図である。精度計算装置4は、通信部41、表示部42、入力部43、処理部44及び記憶部45を備え、各部がバス46を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部41は、GPS基準局2及びGPS観測局3とIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部42は、処理部44からの指示によりデータ(構造物の位置、回転角、傾斜角等)を表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部43は、オペレータがデータ(例えば、計算式プログラムのデータ等)や指示を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル等によって実現される。処理部44は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、精度計算装置4全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部45は、処理部44からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0029】
≪データの構成≫
図3は、精度計算装置4の記憶部45に記憶されるデータの構成を示す図である。記憶部45は、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの精度管理用として、観測局位置451、ベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453、ベース構造物回転角454、搭状構造物回転角455、ベース構造物高さ456、ベース構造物傾斜角457、リフトアップ量458及び搭状構造物傾斜角459を記憶する。
【0030】
観測局位置451は、GPS観測局3a〜3dの位置を示すデータであり、詳細には、GPS電波情報から計算された、GPS観測局3a〜3dの、基準座標軸におけるX座標、Y座標及びZ座標である。ベース構造物芯位置452は、ベース構造物BCの頂部の中心位置であり、観測局位置451のうち、ベース構造物BCに設置されたGPS観測局3a及び3bの位置を平均することにより算出、設定される。搭状構造物芯位置453は、搭状構造物TCの頂部の中心位置であり、観測局位置451のうち、搭状構造物TCに設置されたGPS観測局3c及び3dの位置を平均することにより算出、設定される。
【0031】
ベース構造物回転角454は、ベース構造物BCの基準座標軸に対する回転角であり、観測局位置451のうち、ベース構造物BCに設置されたGPS観測局3a及び3bの位置から算出、設定される。搭状構造物回転角455は、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する回転角(相対回転角)であり、観測局位置451の全GPS観測局3a〜3dの位置から算出、設定される。
【0032】
ベース構造物高さ456は、ベース構造物BCの高さであり、ベース構造物芯位置452のうち、Z座標が設定される。ベース構造物傾斜角457は、ベース構造物BCの鉛直方向に対する傾斜角であり、ベース構造物芯位置452及びベース構造物高さ456から算出、設定される。リフトアップ量458は、搭状構造物TCがベース構造物BCからリフトアップした量であり、ベース構造物芯位置452のZ座標と、搭状構造物芯位置453のZ座標との差分が設定される。搭状構造物傾斜角459は、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する傾斜角(相対傾斜角)であり、ベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453及びリフトアップ量458から算出、設定される。
【0033】
≪システムの処理≫
図4は、精度監視システム1の処理を示すフローチャートである。本処理は、精度計算装置4において、主として処理部44が、通信部41によりGPS基準局2及びGPS観測局3からGPS電波情報を受信し、記憶部45のデータを参照、更新しながら、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの位置、回転角及び傾斜角を計算するものである。以下、各位置座標は、基準座標軸における座標を示すものとする。
【0034】
まず、精度計算装置4は、GPS電波情報を受信し、そのGPS電波情報に基づいてGPS観測局3の位置を計算し、観測局位置451として記憶部45に記憶する(S401)。GPS観測局3a、3b、3c、3dの位置座標を、それぞれ(Xa、Ya、Za)、(Xb、Yb、Zb)、(Xc、Yc、Zc)、(Xd、Yd、Zd)とする。
【0035】
次に、精度計算装置4は、観測局位置451からベース構造物BCの芯位置及び搭状構造物TCの芯位置を計算し、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453として記憶部45に記憶する(S402)。図5(a)及び(b)に示すように、ベース構造物BCの頂部は、平面的に移動したり、回転したり、傾斜したりするが、その形状自体は維持されるので、当該頂部における芯と、GPS観測局3aと、GPS観測局3bの位置関係は変わらない。従って、GPS観測局3a及び3bの位置データに基づいて、芯の位置を特定することができる。これは、搭状構造物TCの頂部の芯位置についても同様である。
【0036】
式1は、観測局位置451からベース構造物芯位置452を求める計算式の一例を示す。これは、ベース構造物BCの頂部において、芯がGPS観測局3a及び3bの中間位置にある場合である。また、式2は、観測局位置451から搭状構造物芯位置453を求める計算式の一例を示す。これは、搭状構造物TCの頂部において、芯がGPS観測局3c及び3dの中間位置にある場合である。なお、このような場合に限らず、他の位置関係にある場合には、その位置関係に応じた計算式を用いればよい。
Xbc=(Xa+Xb)/2
Ybc=(Ya+Yb)/2
Zbc=(Za+Zb)/2 ・・・式1
Xtc=(Xc+Xd)/2
Ytc=(Yc+Yd)/2
Ztc=(Zc+Zd)/2 ・・・式2
【0037】
当初は、ベース構造物BCの芯が基準座標軸の原点にあったとすると、ベース構造物BCの芯のずれ量は、(Xbc、Ybc)となる。そして、当初は、搭状構造物TCの芯位置がベース構造物BCの芯位置と一致していたとすると、搭状構造物TCのベース構造物BCに対する芯のずれ量は、(Xtc−Xbc、Ytc−Ybc)となる。
【0038】
続いて、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453からベース構造物BCの回転角及び搭状構造物TCの回転角を計算し、ベース構造物回転角454及び搭状構造物回転角455として記憶部45に記憶する(S403)。図5(a)に示すように、基準座標軸に対するベース構造物BCの回転角θbは、y軸と、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)とがなす角度であり、次の式3により算出される。当初は、第1線分がy軸と平行であった(Xa=Xb)とすると、回転角θbがベース構造物BCの当初からの回転角変位(ねじれ)になる。
θb=tan−1{(Xb−Xa)/(Yb−Ya)} ・・・式3
【0039】
さらに、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの回転角θtは、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とがなす角度であり、次の式4により算出される。当初は、第1線分と、第2線分とが平行であったとすると、回転角θtが搭状構造物TCの当初からの回転角変位(ねじれ)になる。
θt=tan−1{(Xd−Xc)/(Yd−Yc)}
−tan−1{(Xb−Xa)/(Yb−Ya)} ・・・式4
【0040】
なお、一般的に建物のねじれ角を計算する方法については、例えば、特許文献1(特開2010−164380号公報)の段落[0052]〜[0056]を参照のこと。
【0041】
そして、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452から、ベース構造物BCの高さを求め、ベース構造物高さ456として記憶部45に記憶するとともに、ベース構造物BCの傾斜角を計算し、ベース構造物傾斜角457として記憶部45に記憶する(S404)。ベース構造物BCの高さHは、ベース構造物BCの芯位置のz座標であり、鉛直方向に対するベース構造物BCの傾斜角φbx、φbyは、次の式5により算出される。当初は、ベース構造物BCは鉛直方向に立設されていて、傾斜角がゼロであったとすると、傾斜角φbx、φbyがベース構造物BCの当初から傾斜角変位(傾き)になる。
H=Zbc
φbx=tan−1(Xbc/H)
φby=tan−1(Ybc/H) ・・・式5
【0042】
さらに、精度計算装置4は、ベース構造物芯位置452及び搭状構造物芯位置453から、搭状構造物TCのリフトアップ量を求め、リフトアップ量458として記憶部45に記憶するとともに、搭状構造物TCの傾斜角を計算し、搭状構造物傾斜角459として記憶部45に記憶する(S405)。搭状構造物TCのリフトアップ量hは、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの芯位置のz座標の差分であり、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの傾斜角φtx、φtyは、次の式6により算出される。当初は、搭状構造物TCはベース構造物BCと同じ方向に立設していて、傾斜角がゼロであったとすると、傾斜角φtx、φtyが搭状構造物TCの当初からの傾斜角変位(傾き)になる。なお、リフトアップ工事中に必要な搭状構造物TCの傾斜角は、当該搭状構造物TCが剛体であると仮定したときの傾斜角であり、式6により計算できる。
h=Ztc−Zbc
φtx=tan−1{(Xtc−Xbc)/h}
φty=tan−1{(Ytc−Ybc)/h} ・・・式6
【0043】
その後、精度計算装置4は、記憶部45のベース構造物芯位置452、搭状構造物芯位置453、ベース構造物回転角454、搭状構造物回転角455、ベース構造物傾斜角457及び搭状構造物傾斜角459を表示部43に表示し、音声出力し、又は、ネットワーク経由で他の装置や端末に送信することにより、関係者に通知するようにしてもよい。また、定期的にGPS電波情報の受信、各数値の計算及び記憶を行って、時系列のデータを蓄積してもよい。
【0044】
ベース構造物BC及び搭状構造物TCは、日射による熱や風の影響により、傾斜する。図6は、ベース構造物BCの頂部を上方から見たときの、日射による動きを示す図である。図6(a)〜(d)において、上側を北の方向とする。
【0045】
図6(a)は、朝の様子を示す。ベース構造物BCの南東に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北西へ傾く。図6(b)は、昼の様子を示す。ベース構造物BCの南に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北へ傾く。図6(c)は、夕方の様子を示す。ベース構造物BCの南西に当たる部分が日射の影響を受けて伸びる結果、頂部が北東へ傾く。図6(d)は、ベース構造物BCの1日の動きを示す。図6(a)〜(c)に示すように、上記した日照によるベース構造物BCの動きの変化に応じて、ベース構造物BCの頂部の芯は、北西→北→北東の順に傾斜するので、1日の変化としては、図6(d)に示すように楕円を描くように動くことになる。これは、搭状構造物TCも同様である。
【0046】
図10(a)及び(b)に示すように、搭状構造物TCはベース構造物BC内部の狭い空間をリフトアップする。そのとき、搭状構造物TCのリフトアップ方向がベース構造物BCの傾斜方向に一致していなければ、両者が干渉して、リフトアップ作業を円滑に行えない。これに対して、本実施の形態では、搭状構造物TC及びベース構造物BCの傾斜角を測定できるので、搭状構造物TCの傾斜をベース構造物BCの傾斜に合せてリフトアップすることにより、干渉の可能性を低くすることができる。これによれば、リフトアップ作業を円滑に進めることができる。このとき、必要なのは、搭状構造物TCの剛体としての傾斜角であり、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの傾斜角φtx、φtyをできる限りゼロにしつつ、リフトアップすることが望ましい。
【0047】
次に、図7〜図9を用いて、精度監視システム1をリフトアップ工事以外に適用した例について説明する。
【0048】
図7は、ベース構造物BCから板状構造物SC(例えば、橋梁)をスライドさせるスライド工法における精度管理を示す図である。図7(a)に示すように、ベース構造物BCの上面のうち、前面側の両隅にGPS観測局3a及び3bを設置する。次に、板状構造物SCの上面のうち、前面側の両隅にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、当初は、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とが平行になっているものとする。なお、GPS観測局3の計測値のデータは、1秒間に20個取得することができるので、板状構造物SCのスライド速度に追従することができる。
【0049】
図7(b)に示すように、例えば、第1線分を含む鉛直面に第2線分を投影したときの、第1線分と、投影された第2線分とがなす角度を計算することにより、板状構造物SCの前面のロール角を求めることができる。
【0050】
図7(c)に示すように、例えば、ベース構造物BCの上面に第2線分を投影したときの、第1線分と、投影された第2線分とがなす角度を計算することにより、板状構造物SCの上面のヨー角を求めることができる。
【0051】
以上によれば、板状構造物SCをベース構造物BCからスライドさせる際に、板状構造物SCの前面のロール角及び上面のヨー角をできる限りゼロにしつつ、精度よくスライド作業を進めることができる。
【0052】
図8は、スリップフォーム工法における精度管理を示す図である。スリップフォーム工法とは、鉄筋コンクリート製の塔状構造物(煙突等)を施工する場合に、側面だけの型枠に層状にコンクリートを打設しながら、この型枠を油圧ジャッキによって上昇させて、構造物を構築していく急速施工法である。精度監視システム1は、リフトアップ工事だけでなく、積み上げていく工事にも適用することができる。
【0053】
まず、地盤面に、GPS観測局3a及び3bを設置する。次に、スリップフォーム装置のうち、水平になるべきの2箇所(型枠でもよい)にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、当初は、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分(第1線分)と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分(第2線分)とが平行になっているものとする。以上によれば、図1に示す精度監視システム1における搭状構造物TCと同様に、地盤面に対するスリップフォーム装置の水平面における位置、高さ、回転角及び傾斜角をすべて計測することができる。また、地盤面の水平面のおける位置、高さ、回転角及び傾斜角を計測することもできる。
【0054】
図9は、橋梁の精度管理を示す図である。図9(a)は、橋梁の断面図を示す。図9(b)は、橋梁の上面図を示す。ほとんど動かないことが想定される、橋脚付近のA部にGPS観測局3a及び3bを設置する。又は、橋脚付近のB部にGPS観測局3a’及び3b’を設置する。次に、風の影響や車両の通行等により動くことが想定される、橋脚の中間点付近のC部にGPS観測局3c及び3dを設置する。そして、A部又はB部に対するC部の動きを計測する。図7に示したスライド工法と同様に、A部又はB部に対するC部のロール角、ヨー角を計測することができる。
【0055】
なお、上記実施の形態では、図1に示す精度監視システム1内のGPS基準局2、GPS観測局3及び精度計算装置4を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る精度監視システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0056】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、ベース構造物BCから搭状構造物TCをリフトアップするとき、ベース構造物BCから板状構造物SCをスライドするとき、あるいは、スリップフォーム装置や橋梁の精度管理(モニタリング)を行うときに、精度監視システム1を用いることにより、少ない機器で効率よく構造物の精度を管理することができる。すなわち、工事中の構造物だけでなく、完成後の構造物に関しても、少ないセンサで効率よく、精度管理に必要な計測データが得られる。
【0057】
詳細には、少ないセンサ(1台のGPS基準局2、4台のGPS観測局3)で、搭状構造物TCをリフトアップする際の位置精度管理に必要な情報(ベース構造物BCの位置、回転角、高さ、傾斜角、搭状構造物TCの芯の位置、回転角、リフトアップ量、傾斜角)をすべて取得することができる。そして、センサが1種類(GPS電波の受信局)であるため、サンプリング周波数(計測頻度)を1つの数値に設定でき、計測用ソフトウェアの作成工数を削減することができる。
【0058】
また、リフトアップやスライドの工事を行う際には、ベースとなる構造物(ベース構造物BC)が動かないこと、及び、延設される構造物(搭状構造物TC、板状構造物SC)がベースの構造物に対してずれない、ねじれない、かつ、傾かないことが重要である。その点に関しては、精度監視システム1を用いれば、位置精度管理に必要となる最新の情報が得られるので、両方の構造物のずれ、ねじれ及び傾きを監視し、ずれ等が検出されたときには、構造物の位置や向き等を調整しながら、安全かつ精確に工事を進めることが可能になる。
【0059】
延設される構造物には、橋や煙突等、重要なものが多いので、確実な管理が必要である。一方、構造物は、日射や風、地震の影響を受けて揺れたり、変形したりすることがある。そこで、建設工事中は無論のこと、完成後についても、ベースの構造物に対して、リフトアップやスライドの構造物がどういう状態にあるかが分かるので、建設中の精度管理及び完成後の保守管理に非常に有用である。また、ベースの構造物自体がどういう状態になっているかも分かる。
【0060】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0061】
(1)上記実施の形態では、例えば、図1に示すように、ベース構造物BCの頂部及び搭状構造物TCの頂部のそれぞれにおいて、2台のGPS観測局3を設置するように説明したが、それぞれに1台のGPS観測局3(第1局、第2局)を設置するようにしてもよい。このとき、回転角や傾斜角を計測することはできないが、ベース構造物BCの頂部の所定位置に第1局を設置し、搭状構造物TCの頂部の芯位置に第2局を設置し、水平面(x−y座標)における第1局に対する第2局の当初の相対位置と、その後の相対位置との差分を計算することにより、当該芯位置のベース構造物BCに対するずれを計測することができる。なお、搭状構造物TCの頂部の芯位置でなく、任意の位置に第2局を設置しても、搭状構造物TCのベース構造物BCに対するずれを計測できる。
【0062】
(2)図7のスライド工法に(1)の実施形態を適用すると、ベース構造物BCの上面の所定位置に第1局を設置し、板状構造物SCの上面の所定位置に第2局を設置し、鉛直面(x−z座標)における第1局に対する第2局の当初の相対位置と、その後の相対位置との差分を計算することにより、板状構造物SCのベース構造物BCに対するずれを計測することができる。
【0063】
(3)上記実施の形態では、図5(a)において、当初は、ベース構造物BCの芯位置が基準座標軸の原点にあった、搭状構造物TCの芯位置がベース構造物BCの芯位置と一致していた、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分がy軸と平行であった、GPS観測局3a及び3bを結ぶ線分と、GPS観測局3c及び3dを結ぶ線分とが平行であった、ベース構造物BC及び搭状構造物TCの傾斜角がゼロであったと説明したが、必ずしもそうなっていなくてもよい。ただし、そうなっていない場合には、基準となる当初の計測データ(例えば、基準座標軸におけるベース構造物BCの芯の位置、回転角及び傾斜角、ベース構造物BCに対する搭状構造物TCの芯の相対位置、相対回転角及び相対傾斜角)を予め記憶しておく。そして、当初の計測データと、現在の計測データとの差分を計算することにより、当初からの変位(ずれ)、回転角変位(ねじれ)や傾斜角変位(傾き)を求める。
【0064】
(4)上記実施の形態では、ベース構造物BCから鉛直上方向や水平方向へ他の構造物を延設する例(リフトアップやスライド)について説明したが、それらの方向に限らず、任意の方向へ延設するときや接続された状態にあるときに、精度監視システム1を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 精度監視システム(計測システム)
2 GPS基準局
3、3a、3b、3c、3d GPS観測局
4 精度計算装置(計算装置)
BC ベース構造物(第1構造物)
SC 板状構造物(第2構造物)
TC 搭状構造物(第2構造物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計測する計測システムであって、
前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、
前記第2構造物に設置される第2GPS観測局と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算し、当該計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計測する計測システムであって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、
前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の計測システムであって、
前記計算装置は、さらに、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項4】
第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計測する計測システムであって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、
前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項5】
第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計算する計算装置であって、
前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、前記第2構造物に設置される第2GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項6】
第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計算する計算装置であって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の計算装置であって、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する手段と
をさらに備えることを特徴とする計算装置。
【請求項8】
第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計算する計算装置であって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項9】
1台のGPS観測局が設置された第1構造物と、
前記第1構造物に接続されるとともに、1台のGPS観測局が設置された第2構造物と、
からなることを特徴とする構造物。
【請求項10】
2台のGPS観測局が異なる箇所に設置された第1構造物と、
前記第1構造物に接続されるとともに、2台のGPS観測局が異なる箇所に設置された第2構造物と、
からなることを特徴とする構造物。
【請求項1】
第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計測する計測システムであって、
前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、
前記第2構造物に設置される第2GPS観測局と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算し、当該計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計測する計測システムであって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、
前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の計測システムであって、
前記計算装置は、さらに、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する
ことを特徴とする計測システム。
【請求項4】
第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計測する計測システムであって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、
前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局からGPS電波情報を受信し、前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算し、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算し、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する計算装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項5】
第1構造物の位置と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置とを計算する計算装置であって、
前記第1構造物に設置される第1GPS観測局と、前記第2構造物に設置される第2GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記計算した各位置に基づいて、前記第1構造物の位置と、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置とを計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項6】
第1構造物の位置及び角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対位置及び相対角度を計算する計算装置であって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の位置及び回転角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対位置及び相対回転角を計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の計算装置であって、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する手段と
をさらに備えることを特徴とする計算装置。
【請求項8】
第1構造物の角度と、当該第1構造物に接続される第2構造物の、前記第1構造物に対する相対角度を計算する計算装置であって、
前記第1構造物の異なる箇所に設置される第1GPS観測局及び第2GPS観測局と、前記第2構造物の異なる箇所に設置される第3GPS観測局及び第4GPS観測局とからGPS電波情報を受信する手段と、
前記受信したGPS電波情報に基づいて、前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置を計算する手段と、
前記第1GPS観測局及び前記第2GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物の傾斜角を計算する手段と、
前記第1GPS観測局、前記第2GPS観測局、前記第3GPS観測局及び前記第4GPS観測局の位置に基づいて、前記第1構造物に対する前記第2構造物の相対傾斜角を計算する手段と、
を備えることを特徴とする計算装置。
【請求項9】
1台のGPS観測局が設置された第1構造物と、
前記第1構造物に接続されるとともに、1台のGPS観測局が設置された第2構造物と、
からなることを特徴とする構造物。
【請求項10】
2台のGPS観測局が異なる箇所に設置された第1構造物と、
前記第1構造物に接続されるとともに、2台のGPS観測局が異なる箇所に設置された第2構造物と、
からなることを特徴とする構造物。
【図2】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図1】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図4】
【図7】
【図9】
【図1】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−154912(P2012−154912A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2011−141962(P2011−141962)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141962(P2011−141962)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
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