説明

計測装置及び波形計測表示方法

【課題】 トリガ機能を自由に実現し、外部情報処理装置におけるオーバーフローを防止しつつ消費電力を抑えるとともに、スムーズな波形表示を実現可能な波形計測表示方法等を提供する。
【解決手段】 波形計測表示システム1において、通信部17は、無線通信により、外部情報処理装置5の処理能力に応じて、一方的に、計測部3において計測された波形のデータを送信する。さらに、検出部15は、通信部17の処理とは独立に、通信バッファ13のサンプリングデータを利用してトリガ処理を行う。この検出部15は、プログラムを用いて実現され、さらに、通信バッファ13を利用することから、部品点数等を増加させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及び波形計測表示方法に関し、特に波形を計測する計測装置、及び、この計測装置と計測された波形を表示する外部情報処理装置とを備えた波形計測表示システムにおける波形計測表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においても、オシロスコープに代表される波形計測表示装置の必要性は増しており、ソフトウェア開発者の間でも、その利用が進んでいる。そして、アナログのオシロスコープだけでなく、特許文献1に記載のように、デジタルオシロスコープも存在している。
【0003】
一方、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置も様々な展開を見せている。例えば、スマートフォンのように、電話機能だけでなく、電子メールの通信或いはインターネットとの接続も無線通信により可能で、様々なアプリケーションプログラムが搭載可能な、高性能なものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−273247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のオシロスコープは、トリガ機能のためにトリガ条件設定部によって条件が設定されるデジタルトリガ回路を備える。このように、トリガ機能のためには専用回路を必要としていた。そのため、ハードウェアとしての回路構成上の制約があり、トリガを検出する上での自由度が十分ではなかった。また、専用回路を必要としていることから、小型化及び部品点数の削減という意味でも十分ではなかった。
【0006】
一方、スマートフォンのような高機能な情報処理装置も出てきているが、処理速度や消費可能な電力は無制限でなく、ある限られた有限なものである。情報処理装置は、その処理能力を超えてデータ通信が行われると、情報処理装置側でオーバーフローが生じ得る。そのため、一般的には、汎用コンピュータ等の情報処理装置は、送信側に対して、受信が可能であることを知らせる送信要求信号(Ready信号)を送り、送信側は、この送信要求信号に応答してデータを送信するようにしている。送信側は、この送信要求信号を受信しない間は何ら処理をしていないのと同じ状態にある。そのため、この送信要求信号の送受信により、データ通信が間欠になってしまっていた。さらに、情報処理装置も、送信要求信号の送受信に関係する処理が必要となる。これは、スマートフォンのように消費可能電力が限られている場合には、大きな問題となるものである。
【0007】
ゆえに、本発明は、波形を計測する計測装置が、無線通信を利用しつつ、計測した波形を表示する外部情報処理装置とともに用いられて、システム全体として見れば波形計測表示を行える方法等であって、外部情報処理装置において、オーバーフローを防止し、さらに、消費電力を抑えるとともに、送信要求信号による間欠通信を無くして波形表示をスムーズに行える波形計測表示方法等を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、第1の目的に加えて、トリガ機能が実行されている間も波形表示をスムーズに行える波形計測表示方法等を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、波形を計測する計測装置と前記計測装置が計測した波形を表示する外部情報処理装置とを備えた波形計測表示システムにおける波形計測表示方法であって、前記計測装置は、波形を計測する計測部と、前記計測部が計測した波形のデータを記憶するバッファと、前記外部情報処理装置へ無線通信により前記バッファに記憶されたデータを送信する送信部とを備え、前記外部情報処理装置は、前記送信部から無線通信により送られたデータを受信する受信部と、前記受信されたデータを記憶する表示用記憶部と、表示部と、前記表示用記憶部に記憶されたデータを前記表示部に表示させる制御を行う制御手段とを備え、検出手段が、前記外部情報処理装置からトリガ検出が行われるべき検出位置を表す検出位置データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された少なくとも2つのデータから波形の変化に関する条件が成立したことを検出するトリガ処理を行うトリガ処理ステップを含み、前記送信部が、前記検出手段が前記トリガ処理を行っていない場合に、前記制御手段の処理能力を表す処理能力データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された波形のデータを、その処理能力に応じたデータ量で前記外部情報処理装置へ無線通信により送信し、前記検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、前記波形の変化に関する条件が成立しないときは、前記バッファに記憶されたデータを送信せず、前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、前記バッファに記憶されたデータを送信することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の波形計測表示方法であって、前記波形の変化に関する条件は、前記外部情報処理装置から前記検出位置データとともに入力されるトリガ検出条件であり、前記表示記憶部が可能なデータの個数をMとし、前記検出位置を、M個のデータのうちY番目に計測されたデータとし、前記トリガ処理ステップにおいて、前記検出手段は、前記計測部が新たに計測した波形のデータ及びそれ以前に計測されたY−1個のデータのうちの少なくとも1つのデータを比較して、前記トリガ検出条件が成立したことを検出するものであり、前記送信部が、検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、検出時に前記バッファに記憶されているY個のデータを送信するとともに、新たに計測されたM−Y個のデータを送信するものであり、前記制御手段が、受信したM個のデータを前記表示部に表示させるものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の波形計測表示方法であって、前記制御手段は、アプリケーションプログラムを用いて実現されるものであって、前記処理能力データを、前記表示用記憶部に対して、前記受信部において受信されたデータ量を削除し、新たに受信されたデータを追加する処理により定めて、前記検出手段に入力するものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、波形を計測する計測装置であって、当該計測装置が計測した波形を表示する外部情報処理装置とにより波形計測表示システムを構成し、波形を計測する計測部と、前記計測部が計測した波形のデータを記憶するバッファと、前記外部情報処理装置へ無線通信により前記バッファに記憶されたデータを送信する送信部と、前記外部情報処理装置からトリガ検出が行われるべき検出位置を表す検出位置データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された少なくとも2つのデータから波形の変化に関する条件が成立したことを検出するトリガ処理を行う検出手段とを備え、前記送信部が、前記検出手段が前記トリガ処理を行っていない場合に、前記外部情報処理装置の処理能力を表す処理能力データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された波形のデータを、その処理能力に応じたデータ量で前記外部情報処理装置へ無線通信により送信し、前記検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、前記波形の変化に関する条件が成立しないときは、前記バッファに記憶されたデータを送信せず、前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、前記バッファに記憶されたデータを送信することを特徴とする。
【0012】
なお、処理能力データは、制御手段が、表示用記憶部に対して、受信部において受信されたデータ量を削除し、新たに受信されたデータを追加する処理に加えて、表示部にデータを表示する処理も含めて定めてもよい。
【0013】
また、検出手段は、プログラムにより実現するようにしてもよい。これにより、部品点数を削減し、小型化も実現し、さらに、トリガ機能の自由度を大きくすることが可能になる。さらに、トリガ検出処理は、送信部による送信処理とは独立に設計することが可能である。そのため、外部情報処理装置の処理能力に依存することなく、精度の高いトリガ検出処理を実現することが可能になる。よって、スムーズな波形表示とともに、高度なトリガ検出処理を実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外部情報処理装置の制御手段が、例えばアプリケーションプログラムを用いて実現された場合のように、外部情報処理装置が汎用コンピュータにより実現される場合であっても、計測装置における計測部が計測した波形のデータが、送信部により、外部情報処理装置の処理能力に応じたデータ量で無線通信により送信し続けることにより、外部情報処理装置における処理能力を超えることはなく、オーバーフローを防止することができる。さらに、送信部が、外部情報処理装置との信号のやり取りをすることなく、いわば「垂れ流し通信」ともいうように、一方的に波形のデータを送信することにより、送信要求信号の送受信等を省略して外部情報処理装置の消費電力を抑えるとともに、送信要求信号による間欠通信を無くして波形表示をスムーズに行うことができる。
【0015】
さらに、本発明によれば、計測装置3においてトリガ機能を実現することにより、計測装置と外部情報処理装置の間の通信環境に依存することなく、継続した高度なトリガ機能を実現することが可能になる。そして、トリガ機能が実行されている間も波形表示をスムーズに行うことが可能になる。
【0016】
さらに、本願請求項2に係る発明によれば、外部情報処理装置の表示部において、適切な検出位置に表示することが可能になる。そのため、外部情報処理装置の利用者にとって、使い勝手のよいシステムを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態にかかる波形計測表示システムの概略ブロック図である。
【図2】図1の通信部17、外部通信部21及び制御部25による外部情報処理装置5の処理能力収集処理の一例を示すフロー図である。
【図3】図1の通信部17、外部通信部21及び制御部25による、通常モードにおける波形のデータの表示処理の一例を示すフロー図である。
【図4】図1の計測部11による波形のデータのサンプリング処理の一例を示すフロー図である。
【図5】図1の計測部11によるサンプリング処理及び検出部15によるトリガ検出処理の一例を示す図である。
【図6】図1の通信部17、外部通信部21及び制御部25による、トリガモードにおける波形のデータの表示処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態にかかる波形計測表示システムの概略ブロック図である。図1を参照して、波形計測表示システム1(本願請求項の「波形計測表示システム」の一例)は、波形を計測する計測装置3(本願請求項の「計測装置」の一例)と、計測装置3が計測した波形を表示する外部情報処理装置5(本願請求項の「外部情報処理装置」の一例)を備える。計測装置3と外部情報処理装置5は、無線通信によりデータを送受信する。
【0019】
計測装置3は、波形を計測する計測部11(本願請求項の「計測部」の一例)と、計測部11が計測した波形のデータ(以下、「サンプリングデータ」という。)を記憶する通信バッファ13(本願請求項の「バッファ」の一例)と、トリガ検出処理(所定のトリガ検出条件に合致する場合にトリガイベントを発生する処理)を行う検出部15(本願請求項の「検出手段」の一例)と、外部情報処理装置5に対して無線通信により通信バッファ13に記憶されたデータを送信する通信部17(本願請求項の「送信部」の一例)を備える。
【0020】
計測部11のハードウェア構成としては、例えば、プリアンプとAD変換器から構成される。サンプリングデータは、1バイトのデジタルデータとして説明する。計測装置3のハードウェア構成としては、マイコンから構成される。検出部15は、プログラムを用いて、このマイコンの動作により、通信バッファ13を参照してトリガ機能を実現するものである。このソフトウェアによるトリガ機能により、任意の場所で、任意の傾きの立ち下がり・立ち上がり信号等を検出することができる。検出部15の動作については、後に、図5を参照して具体的に説明する。なお、本願発明において、検出部15は、例えばFPGAなどのように、ハードウェア的に任意のトリガ機能を実現することができるものであってもよい。
【0021】
通信バッファ13は、計測装置3のマイコンのメモリ上に確保されたN個(Nは、例えば、表示用バッファ23に記憶可能なデータ数以上の自然数)のバッファである。計測部11は、計測したサンプリングデータを、通信バッファ13の1番目のアドレス(図1において一番左)からN番目のアドレス(図1において一番右)まで、順番に格納していく。(N+1)番目のサンプリングデータは、1番目のアドレスに上書きして格納され、その後は同様に上書きして格納される。
【0022】
図1の外部情報処理装置5は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォンなど、無線通信機能と表示機能を備えた情報処理装置である。外部情報処理装置5は、送信部17から無線通信により送られたデータを受信する外部通信部21(本願請求項の「受信部」の一例)と、受信したデータ(以下、「受信データ」という。)を記憶する表示用バッファ23(本願発明の「表示用記憶部」の一例)と、表示部27(本願請求項の「表示部」の一例)と、受信したデータを表示部27に表示させる制御を行う制御部25(本願請求項の「制御手段」の一例)を備える。
【0023】
制御部25は、アプリケーションプログラムを用いて実現されるものである。制御部25は、受信データを、表示用バッファ23に順番に格納する。表示用バッファ23において、受信データのバイト分、表示用バッファ23のデータをシフトさせて最も以前に受信したものから削除して(図1では左にシフトする)、新たに受信データを追加する(図1では右に追加する)。そして、制御部25は、表示部27(例えばディスプレイ)に対して、表示用バッファ23の受信データを波形として表示させる。これにより、表示部27には、左から右に向かって流れる波形が表示される。
【0024】
本実施例において、外部情報処理装置5は、さまざまなハードウェア構成により実現されるものである。CPUの処理速度は、機器によって違う。そのため、制御部25の処理速度も、ハードウェア構成に依存して、違うことになる。よって、制御部25は、あらかじめ処理速度を測定し、制御部25の処理能力を表す処理能力データ(以下、「性能データ」という。)を計測装置3に送信する。計測装置3は、その速度に合わせた通信を行うことで、送信要求信号(Ready信号)を無くし、送り手側での消費電力を最小限に抑え、かつスムーズで、オーバーフローや受信漏れのない安全性の高い通信が可能になる。よって、本技術を用いることにより、どの機器の処理速度にも適応し合わせることができる。
【0025】
図2は、通信部17、外部通信部21及び制御部25による外部情報処理装置5の処理能力収集処理の一例を示すフロー図である。通信部17は、通信バッファ13の十分な数のデータを十分な通信速度で送信する(ステップSTSI1)。図2では、理想的な状態を実現できるよう、通信部17の最大通信速度で送信する場合を記載している。しかし、本発明では、外部情報処理装置5の処理性能を調べることが可能な程度の通信速度であればよく、通信部17を基準として決めることに限定されない。
【0026】
本実施例は、制御部25を実現するためのアプリケーションプログラムにおいて、受信関数が一回呼び出されたときの読み出しバイト数をAバイトとする。制御部25は、様々なAの値に対して一秒あたりに呼び出された回数Bを求め、特定のAとBの組み合わせ(例えば、A×Bは、1秒間当たりの通信量であり、これが最も高い値となるAとBの組み合わせなど)を性能データとして計測装置3に送信する。
【0027】
具体的には、外部情報処理装置5において、制御部25は、受信関数を呼び出すことによりAバイトを受信する(ステップSTRI1)。制御部25は、受信バイト分、表示用バッファ23のデータをシフトする(ステップSTRI2)。制御部25は、表示用バッファ23に、受信したAバイトのデータを格納する(ステップSTRI3)。制御部25は、表示部27に対し、表示用バッファ23のデータを波形として描画する(ステップSTRI4)。そして、変数iを+1カウントアップする(ステップSTRI5)。この処理を所定の時間繰り返す。
【0028】
所定の時間内での変数iのカウントアップ値を調べることにより、特定のAの値に対して、制御部25においてアプリケーションプログラムを実行する際に、一秒間に何回受信が行われるか(何回受信関数が呼び出されるか)がわかる。制御部25は、パラメータAの各値に対応して、1秒間における繰り返し回数Bを、iのカウントアップ値を所定の時間(秒)で割ることにより決定する。
【0029】
外部情報処理装置5は、様々なAの値に対して、ステップSTRI1〜5の処理を行うことにより、各Aの値に対応するBを求める。そして、受信データ量Aと単位時間当たりの繰り返し回数Bの組み合わせの一つを、性能データとして、計測装置3に送信する。本実施例では、簡単のために、サンプリングデータは1バイトとしている。そのため、計測装置3は、A×Bバイト/秒の速度でデータを送信し、外部情報処理装置5は、受信関数を呼び出してAバイト受信して描画処理を行う。
【0030】
本実施例において、AとBの組み合わせを決定する場合は、Bに着目して、いわば、計測装置3が外部情報処理装置5に合わせるようにすることだけでなく、Aにも着目して、外部情報処理装置5の処理速度を計測装置3に合わせることも重要である。そのため、本実施例では、様々なAと、それに対応するBの組み合わせにより総合的に決定している。例えば、外部情報処理装置5において、計測装置3から速度Cでデータが転送されることが分かっている場合には、A×B=Cとなり、この式からA及びBを調整することができる。よって、外部情報処理装置5の性能データは、単位時間あたりの転送回数Bだけでなく、Aを調節して外部情報処理装置5自体の処理速度も調節して決定することにより、システム全体としての処理のバランスを取ることができる。
【0031】
図3は、検出部15がトリガ検出処理を行わない場合に(以下、「通常モード」という。)、通信部17、外部通信部21及び制御部25による計測された波形のデータの表示処理の一例を示すフロー図である。通信部17は、外部情報処理装置5に対して、計測部11が通信バッファに格納したサンプリングデータを、A×Bバイト/秒の速度で送信する(ステップSTNS1)。
【0032】
外部情報処理装置5において、制御部25は、受信関数を呼び出すことによりAバイトを受信する(ステップSTNR1)。制御部25は、受信バイト分、表示用バッファ23のデータをシフトする(ステップSTNR2)。制御部25は、表示用バッファ23に、受信したAバイトのデータを格納する(ステップSTNR3)。制御部25は、表示部27に対し、表示用バッファ23のデータを波形として描画させる(ステップSTNR4)。これを繰り返すことにより、スムーズなサンプリングデータの表示処理を実現することができる。
【0033】
図4は、通常モードにおいて、計測部11による波形のデータのサンプリング処理の一例を示すフロー図である。計測部11は、1バイトサンプリングして波形のデータを得て通信バッファ13に格納する(ステップSTN1)。計測部11は、通信バッファ13が満杯か否かを判断し(ステップSTN2)、満杯でない場合には、ステップSTN1に戻り、サンプリング処理を継続する。満杯の場合には、満杯でなくなるまでサンプリングを休止する(ステップSTN3)。なお、サンプリング処理は、XとBの値に応じた時間間隔に調整することにより、サンプリング休止(ステップSTN3)を避けることができる。
【0034】
通常モードの場合、計測部11のサンプリング速度が外部情報処理装置5の処理能力よりも小さいときは、サンプリング処理と同時にデータも送信され、通信バッファ13にデータは貯まらない。一方で、計測部11のサンプリング速度が外部情報処理装置5の処理能力よりも大きいときは、データ送信が追いつかずに、通信バッファ13にサンプリングデータが次々に貯まっていくことになり、ステップSTN3の処理が必要になる。これは、高い周波数の波形もサンプリングし、波形として表示できるようにするためである。仮に、通信速度がかなり遅くても、高速にサンプリングしたものをいったんバッファに保存して、後から遅い通信速度でゆっくり送信すれば、外部情報処理装置で通信速度を超える周波数の波形を表示できることができる。そのため、通信バッファ13は、後に説明するように、検出部15によるトリガ検出処理を実現するためのものであることに加え、通常モードで高い周波数の波形をサンプルするためのものでもある。
【0035】
本実施例により、通常モードで、外部情報処理装置5からの送信要求信号無しに、スムーズで、オーバーフローや受信漏れのない安全性の高い通信が可能になる。さらに、外部情報処理装置5は、無線通信における低消費電力化を実現することができる。
【0036】
すなわち、送信要求信号を用いると、送信要求信号の呼び出しと、モジュールへの信号の到達に時間がかかる。そのため、計測装置3は、送信要求信号を待たなければならないので、全体の通信速度が低下する。無線通信は有線に比べて通信速度が遅く、限られた通信速度を、有効に、最大限に使う必要がある。そのため、本願発明にあるように、いわば「垂れ流し通信」を実現することにより、送信要求信号の送受信なくサンプリングデータの送受信が実現でき、通信速度を有効活用することができる。
【0037】
さらに、例えばオシロスコープのような波形表示処理は、ストリームデータである。送信要求信号を用いると、送信要求信号の待ち時間によりストリームが途切れ、表示波形も途切れて表示される場合がある。本願発明にあるように「垂れ流し通信」を実現することにより、波形を途切れなしにスムーズに表示させることが可能になる。
【0038】
図5及び図6を参照して、検出部15がトリガ検出処理を行う場合に(以下、「トリガモード」という。)、計測部11によるサンプリング処理並びに通信部17及び制御部25による波形のデータの表示処理の一例を説明する。本実施例のトリガモードでは、計測装置3においてトリガ検出処理を行い、トリガ検出条件が成立した場合に、外部情報処理装置5へ波形データを送信する。これにより、効果的な(取りこぼしのない)トリガ検出処理を実現することができる。ここで、本実施例では、立ち上がり又は立ち下がりを検出するとする。その基準となる数値a及びb並びに検出位置Yは、外部情報処理装置5により指定されるものとする。以下では、表示用バッファ23が記憶可能なデータの個数をMとする。外部情報処理装置5の利用者により、検出位置として、Y番目(YはM以下の自然数)のデータが指示されたとする。また、トリガ検出条件として、新たに計測されたデータが格納されたバッファ[i](i番目のアドレスのバッファ)(iは、通信バッファ13が記憶可能なデータ数以下の自然数)と、そのj個(jは、Y−1以下の自然数)前に計測されたデータが格納されたバッファ[i−j](j個前に計測されたデータを格納するバッファ)の2つに対して、それぞれ、aより大となり、かつ、bより小となることが指定されたものとする。
【0039】
本実施例において、トリガ機能は、通信バッファ13に格納された値に対してソフトウェア等により実現される。そのため、ハードウェア的な変更は必要なく部品点数を減らすことができる。また、表示用バッファ23と異なり、通信バッファ13では記憶箇所を固定している。そのため、検出部15は、計測部11による処理とは独立にトリガ検出処理を行うことができる。さらに、固定的なハードウェアによりトリガ機能を実現した場合とは異なり、トリガ検出条件の限定がなく、立ち上がりや立ち下がりの傾きを任意に設定することができ、検出位置も任意に設定することができる。外部情報処理装置5は、表示と連動した指定手段が備えられている(例えば、PCには画面のクリック機能があり、スマートフォンには画面のタッチ機能がある。)。そのため、外部情報処理装置5の利用者がクリックやタッチした場所を検出位置として、トリガイベントを検出することが可能になる。トリガ機能をソフトウェア等により実現することにより、画面の位置情報をトリガイベントに容易に反映させることができる。そのため、トリガ機能は、少なくとも、外部情報処理装置5の利用者が画面の位置情報から検出位置を指定して、この検出位置を示す検出位置データが計測装置3に対して送信された場合に実現するようにすればよい。例えば数値a及びbなどのその他のトリガ検出条件は、新たな指定がなければ、以前の値を使用したり、製造段階等で予め決められた値を使用したりするようにしてもよい。
【0040】
図5を参照して、具体的に説明する。図5は、トリガモードにおいて、計測部11によるサンプリング処理の一例を示す図である。計測部11は、Y−1バイトのサンプリング処理を行い、通信バッファ13に格納する(ステップSTT1)。さらに、新たに1バイトのサンプリング処理を行い、通信バッファ13に格納する(ステップSTT2)。これが、バッファ[i]に格納される。検出部15は、バッファ[i]の値がaよりも大きいか否かを判断する(ステップSTT3)。大きい場合には、さらに、バッファ[i−j]の値がbよりも小さいか否かを判断する(ステップSTT4)。バッファ[i]の値がaよりも大きく、かつ、バッファ[i−j]が小さい場合には、トリガイベントが発生した(すなわち、立ち上がり又は立ち下がりが生じた)と判断する。そうでない場合には、トリガイベントが発生するまで、ステップSTT2のサンプリング処理を繰り返す。このサンプリング処理は、トリガ検出条件に合致するまで続けられ、通信バッファ13には上書きしていく。
【0041】
トリガイベントが発生した場合、通信部17は、外部情報処理装置5に対し、それまでに検出されたY個のデータを送信する。計測部11は、さらに、M−Yバイトをサンプリングする(ステップSTT5)。通信部17は、新たに検出されたM−Y個のサンプリングデータも、外部情報処理装置5へ送信する。外部情報処理装置5の制御部25は、受信したM個のデータを、表示用バッファに順に記憶して表示する。これにより、表示部27において、検出結果を、適切な検出位置に、いわば「フラッシュ」的に表示することが可能になる。そして、計測部11は、通信バッファ13が満杯か否かを判断する(ステップSTT6)。満杯でない場合には、ステップSTT1に戻り、サンプリング処理及びトリガ処理を継続する。満杯の場合には、満杯でなくなるまでサンプリングを休止する(ステップSTT7)。
【0042】
図6は、トリガモードにおける、通信部17、外部通信部21及び制御部25による計測された波形のデータの表示処理の一例を示すフロー図である。計測装置3において、通信部17は、トリガ検出条件が成立するまではデータを送信しない(ステップSTTS1)。通信部17は、トリガ検出条件が成立した場合に、Mバイトのデータを送信する(ステップSTTS2)。なお、送信速度は、例えば、図2において、AをMとした場合に、対応する単位時間あたりの回数Bを測定しておき、M×Bバイト/秒により送信するようにしてもよい。
【0043】
外部情報処理装置5において、制御部25は、受信関数を呼び出すことによりMバイトを受信する(ステップSTTR1)。制御部25は、受信したMバイトを、順に表示用バッファ23に格納する(ステップSTTR2)。制御部25は、表示部27に対し、表示用バッファ23のデータを波形として描画させる(ステップSTRI4)。
【0044】
仮に計測装置3から外部情報処理装置5へ波形データを垂れ流し、外部情報処理装置5においてトリガ機能を実現した場合、例えば物理的に通信できない状況が生じたときには、波形がとりこぼされるため、トリガイベントを検出することはできない。計測装置3において、検出部15をプログラム等により実現することにより、ソフトウェア等による自由な波形検出処理を、処理を停止することなく、効果的に、取りこぼし無く実現することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 波形計測表示システム、3 計測装置、5 外部情報処理装置、11 計測部、13 通信バッファ、15 検出部、17 通信部、21 外部通信部、23 表示用バッファ、25 制御部、27 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形を計測する計測装置と前記計測装置が計測した波形を表示する外部情報処理装置とを備えた波形計測表示システムにおける波形計測表示方法であって、
前記計測装置は、
波形を計測する計測部と、
前記計測部が計測した波形のデータを記憶するバッファと、
前記外部情報処理装置へ無線通信により前記バッファに記憶されたデータを送信する送信部とを備え、
前記外部情報処理装置は、
前記送信部から無線通信により送られたデータを受信する受信部と、
前記受信されたデータを記憶する表示用記憶部と、
表示部と、
前記表示用記憶部に記憶されたデータを前記表示部に表示させる制御を行う制御手段とを備え、
検出手段が、前記外部情報処理装置からトリガ検出が行われるべき検出位置を表す検出位置データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された少なくとも2つのデータから波形の変化に関する条件が成立したことを検出するトリガ処理を行うトリガ処理ステップを含み、
前記送信部が、
前記検出手段が前記トリガ処理を行っていない場合に、前記制御手段の処理能力を表す処理能力データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された波形のデータを、その処理能力に応じたデータ量で前記外部情報処理装置へ無線通信により送信し、
前記検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、
前記波形の変化に関する条件が成立しないときは、前記バッファに記憶されたデータを送信せず、
前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、前記バッファに記憶されたデータを送信することを特徴とする、波形計測表示方法。
【請求項2】
前記波形の変化に関する条件は、前記外部情報処理装置から前記検出位置データとともに入力されるトリガ検出条件であり、
前記表示記憶部が可能なデータの個数をMとし、
前記検出位置を、M個のデータのうちY番目に計測されたデータとし、
前記トリガ処理ステップにおいて、前記検出手段は、前記計測部が新たに計測した波形のデータ及びそれ以前に計測されたY−1個のデータのうちの少なくとも1つのデータを比較して、前記トリガ検出条件が成立したことを検出するものであり、
前記送信部が、検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、検出時に前記バッファに記憶されているY個のデータを送信するとともに、新たに計測されたM−Y個のデータを送信するものであり、
前記制御手段が、受信したM個のデータを前記表示部に表示させるものである、請求項1記載の波形計測表示方法。
【請求項3】
前記制御手段は、アプリケーションプログラムを用いて実現されるものであって、前記処理能力データを、前記表示用記憶部に対して、前記受信部において受信されたデータ量を削除し、新たに受信されたデータを追加する処理により定めて、前記検出手段に入力するものである、請求項1又は2記載の波形計測表示方法。
【請求項4】
波形を計測する計測装置であって、
当該計測装置が計測した波形を表示する外部情報処理装置とにより波形計測表示システムを構成し、
波形を計測する計測部と、
前記計測部が計測した波形のデータを記憶するバッファと、
前記外部情報処理装置へ無線通信により前記バッファに記憶されたデータを送信する送信部と、
前記外部情報処理装置からトリガ検出が行われるべき検出位置を表す検出位置データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された少なくとも2つのデータから波形の変化に関する条件が成立したことを検出するトリガ処理を行う検出手段とを備え、
前記送信部が、
前記検出手段が前記トリガ処理を行っていない場合に、前記外部情報処理装置の処理能力を表す処理能力データが入力されたことに応答して、前記バッファに記憶された波形のデータを、その処理能力に応じたデータ量で前記外部情報処理装置へ無線通信により送信し、
前記検出手段が前記トリガ処理を行っている場合に、
前記波形の変化に関する条件が成立しないときは、前記バッファに記憶されたデータを送信せず、
前記波形の変化に関する条件が成立したことを検出したときは、前記バッファに記憶されたデータを送信することを特徴とする、計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−93201(P2012−93201A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240170(P2010−240170)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(800000035)株式会社産学連携機構九州 (34)