説明

計測装置

【課題】落雷が発生した場合であっても濡れ時間の消失を防ぐことができる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、鉄塔周辺の温度及び湿度を測定する測定装置と、温度が所定以上であるとともに湿度が所定以上である時間の累積時間が所定の第1時間となると、累積時間が第1時間となることを判定するとともに累積時間を初期化する判定装置と、累積時間が第1時間となることを判定装置が判定した場合、累積時間が第1時間となる回数を機械的に記憶する記憶装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に設けられた鉄塔のメンテナンス時期を、鉄塔の腐食速度から求める技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。鉄塔の腐食速度は、鉄塔の濡れ時間(例えば、温度が0℃以上、かつ湿度が80%以上である時間)により変化するため、濡れ時間を正確に把握する必要がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−337838号公報
【特許文献2】特開2008−224405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、濡れ時間を計測する一般的な計測装置では、鉄塔の周辺の温度、湿度に基づいて得られる濡れ時間を電気的なメモリに記憶する。このため、例えば、鉄塔に落雷が発生した場合、メモリに記憶された濡れ時間が消失してしまうことがある。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、落雷が発生した場合であっても濡れ時間の消失を防ぐことができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る計測装置は、鉄塔周辺の温度及び湿度を測定する測定装置と、前記温度が所定以上であるとともに前記湿度が所定以上である時間の累積時間が所定の第1時間となると、前記累積時間が前記第1時間となることを判定するとともに前記累積時間を初期化する判定装置と、前記累積時間が前記第1時間となることを前記判定装置が判定した場合、前記累積時間が前記第1時間となる回数を機械的に記憶する記憶装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、落雷が発生した場合であっても濡れ時間の消失を防ぐことができる計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である計測装置10の一例を示す図である。
【図2】マイコン21の詳細を示す図である。
【図3】マイコン21の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
図1は、本発明の一実施形態である計測装置10の構成を示す図である。計測装置10は、電力系統に設けられた鉄塔100の周辺の温度、および湿度に基づいて、濡れ時間を計測する装置である。なお、ここで濡れ時間とは、例えば、温度が0℃以上、かつ湿度が80%以上となる時間である。
【0010】
計測装置10は、センサ20、マイコン21、電磁カウンタ22、電池30、及び電源回路31を含んで構成される。
【0011】
センサ20(測定装置)は、鉄塔100の周辺の温度、及び湿度を測定するセンサである。また、センサ20は、マイコン21からの指示に基づいて、測定した温度、湿度をデジタルデータに変換してマイコン21へと出力する。
【0012】
マイコン21(判定装置)は、センサ20からの出力に基づいて、温度が0℃以上であるとともに、湿度が80%以上である時間の累積時間TAが所定時間T1(例えば、1時間)となるか否かを繰り返し判定する。具体的には、マイコン21は、累積時間TAが所定時間T1となることを判定すると、累積時間TAを初期化(例えば、累積時間TAをゼロ)し、再度、累積時間TAが所定時間T1となるか否かを判定する。また、マイコン21は、累積時間TAが所定時間T1となると、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントする。なお、マイコン21の詳細については後述する。
【0013】
電磁カウンタ22(記憶装置)は、マイコン21からの指示に応じてカウント値CNT1を機械的に更新して表示するカウンタである。なお、電磁カウンタ22は、マイコン21からの指示がない場合カウント値CNT1を保持し続けるため、カウント値CNT1を記憶する記憶装置として動作する。
【0014】
電池30は、計測装置10を動作させるための電池であり、電源回路31は、センサ20、及びマイコン21を動作させるための所定の電源を生成する。
【0015】
==マイコン21の詳細==
ここで、図2を参照しつつ、マイコン21の詳細を説明する。マイコン21は、タイマ50、メモリ51、及びCPU52を含んで構成される。
【0016】
タイマ50(計時部)は、マイコン21に電源が供給されると時間の計時を開始する。メモリ51は、CPU52が実行するプログラムデータや各種データを記憶する。
【0017】
CPU52は、メモリ51に記憶されたプログラムデータを実行することにより各種機能ブロックを実現する。具体的には、CPU52は、判定部60,62、カウンタ61、制御部63、及び起動部64を実現する。
【0018】
判定部60(第1判定部)は、所定時間T1より短い所定時間T2ごとに、センサ20からの出力を取得して、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上であるか否かを判定する。なお、時間T2は、例えば鉄塔100の周辺の温度、湿度の変化が無視できる程度に十分短い時間(例えば、6分)であることとする。
【0019】
カウンタ61(記憶部)は、判定部60が、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上であると判定する毎に、カウント値CNT2をインクリメントする。したがって、カウント値CNT2が“1”増加すると、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上である時間が所定時間T2だけ増加したこととなる。このように、カウンタ61は、時間T2を累積して累積時間TAとして記憶する。
【0020】
判定部62(第2判定部)は、カウンタ61のカウント値CNT2が前述した所定時間T1を示す所定値となると、累積時間TAが所定時間T1となることを判定するとともに、カウンタ61のカウント値CNT2をリセットする。なお、本実施形態では、所定時間T2と所定値との積(T2×所定値)が所定時間T1とるように所定値が定められる。
【0021】
制御部63は、累積時間TAが所定時間T1となることが判定されると、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントする。また、制御部63は、マイコン21に電源が供給されると、電磁カウンタ22が正常に動作するか否かを利用者に判定させるためにカウント値CNT1をインクリメントする。
【0022】
起動部64は、タイマ50の出力に基づいて、所定時間T2毎に判定部60,62を起動、停止を繰り返す。具体的には、起動部64は、判定部60,62が起動させると、判定部60,62に前述した判定処理を実行させる。また、起動部64は、前述した判定処理が実行されると、判定部60,62で消費される電流がほぼゼロとなるように、判定部60,62の動作を停止させる。なお、起動部64は、タイマ50が起動したこと検出すると、判定部60,62を一旦停止させる。
【0023】
==マイコン21の動作==
ここで、図3を参照しつつ、マイコン21の動作について説明する。まず、マイコン21に電源が供給されてマイコン21が起動すると、制御部63は、電磁カウンタ22の動作が正常に動作するかを判定させるべく、カウント値CNT1をインクリメントする。(S100)。そして、タイマ50は起動して計時を開始し(S101)、起動部64は、判定部60,62を停止させる(S102)。その後、起動部64は、タイマ50の計時結果に基づいて、所定時間T2が経過したか否かを判定する(S103)。起動部64は、判定部60,62を停止させてから所定時間T2が経過するまで(S103:NO)、判定部60,62を停止させ続ける。一方、起動部64は、判定部60,62を停止させてから所定時間T2が経過すると(S103:YES)、判定部60,62を起動させる(S104)。
【0024】
判定部60は、センサ20からの出力を取得し、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上であるか否かを判定する(S105)。判定部60が、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上でないことを判定すると(S105:NO)、処理S102が実行される。一方、判定部60が、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上であることを判定すると(S105:YES)、カウンタ61は、カウント値CNT2をインクリメントする(S106)。そして、判定部62は、カウント値CNT2が、所定値であるか否か、すなわち、累積時間TAが所定時間T1となるか否かを判定する(S107)。カウント値CNT2が所定値でない場合、すなわち、累積時間TAが所定時間T1でない場合(S107:NO)、処理S102が実行される。一方、カウント値CNT2が所定値となる場合、すなわち、累積時間TAが所定時間T1となる場合(S107:YES)、制御部63は、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントし(S108)、判定部62は、カウンタ61のカウント値CNT2をリセットする(S109)。その後、処理102が再び実行される。このように、本実施形態のマイコン21は、濡れ時間の累積時間TAが所定時間T1となる毎に、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントし続ける。ところで、前述のように、本実施形態では計測装置10の起動時に、電磁カウンタ22が正常に動作するかを判定させるべくカウント値CNT1がインクリメントされる。したがって、計測装置10が起動されてからの濡れ時間の合計は、カウント値CNT1から“1”を減算した値と所定時間T1との積で表されることになる。
【0025】
以上、本実施形態の計測装置10について説明した。例えば、鉄塔100に落雷が発生した場合、マイコン21は破壊されることがある。しかしながら、電磁カウンタ22は、濡れ時間が所定時間T1となる回数を機械的に記憶している。したがって、本実施形態では、落雷が発生しても、電磁カウンタ22に記憶された濡れ時間の消失を防ぐことが可能となる。
【0026】
また、マイコン21は、所定時間T2毎にセンサ20からの出力を取得し、温度が0℃以上であるとともに湿度が80%以上であるか否かを判定している。このため、例えば常にセンサ20からの出力を取得し続けて、温度が0℃以上であるか等を判定し続ける場合と比較すると、マイコン21の消費電力を削減できる。
【0027】
また、起動部64は、所定時間T2毎に判定部60,62の起動、停止を繰り替えしているため、マイコン21の消費電力を削減できる。
【0028】
また、例えば、所定時間T1より短い所定時間T2ごとに電磁カウンタ22をインクリメントしても良いが、その場合、電磁カウンタ22のカウント値を更新する回数が増加する。一般に、マイコン21の内部のカウンタ61のカウント値CNT2をインクリメントさせる場合と、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントさせる場合とを比較すると、後者の方が消費電力は大きくなる。本実施形態では、所定時間T2ごとに電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントさせず、カウンタ61のカウント値CNT2をインクリメントさせている。したがって、短い所定時間T2の間隔で温度等を測定する場合であっても、マイコン21の消費電力の増加を抑制できる。
【0029】
一般に、鉄塔100の周辺においては、計測装置10を動作させる商用電源等を確保することが難しい。本実施形態の計測装置10は、電池30で動作するため、鉄塔100の周辺環境によらず計測装置10を設置することができる。
【0030】
例えば、濡れ時間の累積時間TAが所定時間T1となる回数のみを記憶させる場合、一般的な機械式カウンタを用いても良い。その場合は、マイコン21の出力に基づいて、機械式カウンタのカウント値を変化させる装置が必要となる。しかしながら、本実施形態では電磁カウンタ22を用いているため、部品点数が削減できる。
【0031】
また、マイコン21は、電源が供給されると、電磁カウンタ22のカウント値CNT1をインクリメントする。このため、例えば計測装置10を設置した際に電磁カウンタ22が正常に動作するか否かの確認をすることができる。本実施形態では、カウント値CNT1をインクリメントさせたが、例えば、インクリメントさせた後にデクリメントさせても良い。つまり、電磁カウンタ22が正常に動作するか否かが確認できるようカウント値CNT1を変化させれば良い。
【0032】
前述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されるとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10 計測装置
20 センサ
21 マイコン
22 電磁カウンタ
30 電池
31 電源回路
50 タイマ
51 メモリ
52 CPU
60,62 判定部
61 カウンタ
63 制御部
64 起動部
100 鉄塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔周辺の温度及び湿度を測定する測定装置と、
前記温度が所定以上であるとともに前記湿度が所定以上である時間の累積時間が所定の第1時間となると、前記累積時間が前記第1時間となることを判定するとともに前記累積時間を初期化する判定装置と、
前記累積時間が前記第1時間となることを前記判定装置が判定した場合、前記累積時間が前記第1時間となる回数を機械的に記憶する記憶装置と、
を備えることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置であって、
前記判定装置は、
前記第1時間より短い第2時間毎に、前記温度が所定以上であるとともに前記湿度が所定以上であるか否かを判定する第1判定部と、
前記温度が所定以上であるとともに前記湿度が所定以上であると前記第1判定部が判定する毎に、前記第2時間を累積した時間を前記累積時間として記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記累積時間が前記第1時間となることを判定するとともに、前記記憶部に記憶された前記累積時間を初期化する第2判定部と、
を含むことを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計測装置であって、
前記判定装置は、
時間を計時する計時部と、
前記計時部が前記第2時間を計時する毎に前記第1及び第2判定部を起動させる起動部と、
を更に含むことを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の計測装置であって、
前記記憶部は、
前記温度が所定以上であるとともに前記湿度が所定以上であると前記第1判定部が判定する毎に、前記累積時間を示すカウント値を更新して電気的に記憶するカウンタであり、
前記第2判定部は、
前記カウント値が前記第1時間を示す所定値となると、前記第2時間が累積された時間が前記第1時間となることを判定するとともに、前記カウント値をリセットすること、
を特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の計測装置であって、
前記測定装置及び前記判定装置を動作させる電池を更に備えること、
を特徴とする計測装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の計測装置であって、
前記記憶装置は、
前記累積時間が前記第1時間となることが判定された場合、カウント値が更新される電磁カウンタであること、
を特徴とする計測装置。
【請求項7】
請求項6に記載の計測装置であって、
前記判定装置は、
前記判定装置を動作させるための電源が供給されると起動し、前記電磁カウンタに表示される回数を変更させること、
を特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202954(P2012−202954A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70581(P2011−70581)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】